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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042325
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】米取引システム及び米取引プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240321BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146971
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】516035013
【氏名又は名称】北川 昌昭
(71)【出願人】
【識別番号】592072584
【氏名又は名称】株式会社長崎鉄工所
(71)【出願人】
【識別番号】512288813
【氏名又は名称】株式会社丸宮穀粉
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】北川 昌昭
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】
米の提供者と購入者のいずれもが価格面において納得感を得やすい米取引システムを提供する。
【解決手段】
米の取引を行うための米取引システム10において、米の品質に関する測定値である品質関連測定値に基づいて、米の価格を決定する価格決定手段14を備えるようにした。この米取引システム10においては、米の品質に関する測定値である品質関連測定値に基づいて米の価格が決定される。このため、米の出品者は、高品質(高付加価値)な米を出品した場合には、その品質(価値)に見合う高価格において、納得感を持って取引を行うことができる。一方、米の購入者は、購入しようとする米の価格が高かったとしても、それはすなわちその米が高品質(高付加価値)であるということであるから、納得感を持って米を購入することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米の取引を行うための米取引システムであって、
米の品質に関する測定値である品質関連測定値に基づいて、米の価格を決定する価格決定手段と、
価格決定手段によって決定された米の価格を、米の購入者が操作する購入者端末を介して購入者に提示する購入者価格提示手段と
を備えた米取引システム。
【請求項2】
予め測定された品質関連測定値を含む米登録情報を記憶する米登録情報記憶手段と、
米登録情報記憶手段に品質関連測定値を記憶された米(以下「登録米」という。)の中から、出品される米(以下「出品米」という。)に対応する登録米を特定する登録米特定手段と
をさらに備え、
価格決定手段は、登録米特定手段によって特定された前記登録米の品質関連測定値に基づいて、前記出品米の価格を決定する
請求項1記載の米取引システム。
【請求項3】
品質関連測定値が、米の美味しさに関する測定値である味関連測定値を含む請求項1記載の米取引システム。
【請求項4】
品質関連測定値が、米の安全性に関する測定値である安全性関連測定値を含む請求項1記載の米取引システム。
【請求項5】
米の品種に応じて品質関連測定値を補正する測定値補正手段をさらに備え、
価格決定手段は、測定値補正手段によって補正された品質関連測定値に基づいて、米の価格を決定する請求項1記載の米取引システム。
【請求項6】
価格決定手段は、品質関連測定値と、米の生い立ちに関する情報である生い立ち情報とに基づいて、米の価格を決定するものである請求項1記載の米取引システム。
【請求項7】
購入者価格提示手段が購入者に対して米の価格を提示する際に、その価格の決定に用いられた品質関連測定値に関する情報を、購入者端末を介して購入者に提供する価格決定情報提供手段をさらに備えた請求項1記載の米取引システム。
【請求項8】
電子計算装置を、
米の品質に関する測定値である品質関連測定値に基づいて、米の価格を決定する価格決定手段と、
価格決定手段によって決定された米の価格を、米の購入者が操作する購入者端末を介して購入者に提示する購入者価格提示手段と
として機能させることができる米取引プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米の取引を行うための米取引システムに関する。本発明はまた、この米取引システムを実現することができる米取引プログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
米(コメ)は、我が国の主食として人々の生活を長年支えてきた、極めて重要な食品である。ところが、近年、米の消費低迷が大きな問題となっており、米農家の収支悪化や離農も深刻化している。このため、米の生産者の中には、市場における競争力を高めようと、栽培方法の工夫や新たな品種開発等を精力的に行い、有機無農薬・自然栽培にも取り組み、豊かな自然環境の中、美味しく安全・安心な米を育てることに心血を注いでいる者も多い。
【0003】
ところが、米は、その性質上、購入時に品質の良し悪しを外観で判断しにくい。というのも、米は、炊飯してみなければ、その味や香りの違いを判断することができないからである。また、米の味は、米自体の品質だけでなく炊飯方法によっても大きく左右されるという事情も、より判断を難しくしている。さらに、米は通常、米袋に入った状態で販売されるため、野菜等と異なり外観による判断も難しい。
【0004】
このため、一般の消費者は、ごく一握りのブランド米や受賞米等を購入する場合を除けば、せいぜい米の品種(例えば、「コシヒカリ」や「あきたこまち」等)と産地程度の情報を頼りに、どの米を買うかを判断しているのが現状である。換言すると、品種と産地が同じであれば、工夫を凝らして育てた美味しい(高品質な)米も、特段工夫をせずに育てた米も、消費者からは同じような米に見えてしまっているのが現状である。また、環境面でも「清流が流れ込む棚田米」も「掘り返すとドブの匂いのする干拓地で育ったお米」も表示されていなければ消費者には全く見分けがつかない。そうであれば、消費者としては価格の安い米を選択するのが当然であり、「工夫をせずに平野部の大規模農業で育てた米」の方が、コストをかけていない(すなわち値段を下げやすい)分、市場において有利になりがちであり、両者を仲卸業者が同じ価格で農家から購入するのは当然な行為かもしれない。しかし、今の中山間の生産者らが、せっかく努力・苦労をしても報われず、棚田の生産性の低い圃場で手間暇掛けて生産された米と、平野部の大規模圃場で大型機械により効率よく生産された米とが、全く同じ価格で売買されている現状は、余りにも不平等といわざるをえない。
【0005】
この点、特許文献1には、米穀の仕入れを行う小売店向けの米穀の選定システムであって、米の評価数値や食味官能情報に基づいて米穀を選定する米穀の選定システムが記載されている。同システムにおいては、同文献の段落0027~0028等に記載されているように、例えば米の格付け数値(品種、生産地区、稲の生育状況、米の成分分析結果等に基づく数値評価)の範囲を指定すると、その条件に該当する米が、その時点の相場価格とともに表示装置に表示される。表示された各種の米のうち、食味官能試験の結果に基づく数値補正がなされたものがあれば、補正後の数値である実評価格付け数値が表示される。小売店は、これらの情報に基づき、選定すべき米を決定する。これにより、米の小売店は、品質と価格が釣り合いのとれた米の仕入れを行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-67402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、米の価格は、現状、仲卸業者等によって任意に決定されたり、市場価格や在庫の量等に応じて決定されたりすることがほとんどであり、米本来の価値と価格とが必ずしも連動していない。この点、本願発明者は、日本の稲作を健全に持続させていくためには、[1]豊かな自然環境の中、[2]手間暇を掛け、[3]工夫を凝らして育てた、[4]高品質で、[5]食べても美味しい米が、相応の高値で取引されることが肝要であると考えている。[1]~[5]の高付加価値な米に対して相応の対価が支払われるようになれば、その米を生産した米農家の収支を改善することができるだけでなく、より高付加価値の米を作るためのモチベーションを高めることもでき、我が国の米作りの活性化にもつながり、中山間の稲作の持続可能性を向上させ、離農を防ぎ耕作放棄地の削減や食料自給率向上に貢献する。しかし、この[1]~[5]の高付加価値、特に「美味しさ」に対する購入者側の納得感が乏しいと、高付加価値な米の消費自体が喚起されず、上記の効果が得られにくくなる。したがって、米の提供者(多くの場合、生産者)と購入者のいずれもが価格面において納得感を得やすい米の取引システムが必要である。
【0008】
ところが、特許文献1に記載の選定システムは、上記の課題を解決することができるものではなかった。というのも、特許文献1のシステムは、購入者が設定した、ある条件に適合する米穀を単に選びやすくするだけのものであり、米の価格を左右できるような性質のものではないからである。特許文献1のシステムでは、米を選定する際の情報の1つとして、米の相場価格(同文献の段落0025等を参照。)が提示されるに過ぎない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、米の提供者と購入者のいずれもが価格面において納得感を得やすい米取引システムを提供するものである。また、この米取引システムを実現することができる米取引プログラムを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
米の取引を行うための米取引システムであって、
米の品質に関する測定値である品質関連測定値に基づいて、米の価格を決定する価格決定手段と、
価格決定手段によって決定された米の価格を、米の購入者が操作する購入者端末を介して購入者に提示する購入者価格提示手段と
を備えた米取引システム
を提供することによって解決される。
【0011】
上記の米取引システムは、
電子計算装置を、
米の品質に関する測定値である品質関連測定値に基づいて、米の価格を決定する価格決定手段と、
価格決定手段によって決定された米の価格を、米の購入者が操作する購入者端末を介して購入者に提示する購入者価格提示手段と
として機能させることができる米取引プログラム
によって実現することができる。
【0012】
ここで、「測定値」とは、科学的手法により得られる測定値のことをいう。「測定値」としては、科学的手法により直接的に得られた値(生データ)だけでなく、生データに所定の演算を加えて得られた値を用いることもできる。したがって、本明細書における「測定値」という語には、当該測定値に演算を加えて得られた値も含まれる。また、「品質関連測定値に基づいて、米の価格を決定する」とは、品質関連測定値を入力値として用いて、所定の演算処理を行うことにより米の価格を決定することを意味している。したがって、「品質関連測定値に基づいて、米の価格を決定する」には、米の価格を決定する際の入力値として、品質関連測定値に加えて別の値(例えば、後述する安全性関連測定値や、お米が育った環境の育て方そのものである生い立ち情報に基づく値)も用いる場合も含まれるものとする。以下においても同様とする。
【0013】
本発明に係る米取引システムにおいては、品質に関する測定値である品質関連測定値に基づいて、米の価格が決定され、購入者に対して提示される。米の提供者は、より高付加価値の米を提供することができるよう努力し、実際に高付加価値の米を提供することができれば、その米は米取引システムにおいて相応の高値で取引され、その提供者は納得感を持って対価を受け取ることができる。一方、購入者は、提示された米の価格が多少高かったとしても、それはすなわち、その米が高付加価値米であるということであるから、納得感を持ってその米を購入することができる。このように、本発明に係る米取引システムを用いることで、米の提供者と購入者のいずれもが価格面において納得感を得やすい状態で、米を取引することができる。
【0014】
品質関連測定値は、いつどのようにして測定されたものであるかを特に限定されない。品質関連測定値は、例えば、米を実際に本米取引システムで運用される販売サイト等へ出品するときに、都度測定するようにしてもよい。ただし、この場合には、出品作業が煩雑になりすぎるおそれがある。また、測定に使用する測定機器や測定者・測定環境により誤差を生じ安くなるため、品質関連測定値や、これに基づいて決定される米の価格の客観性を損なう可能性もある。このため、本発明に係る米取引システムにおいては、予め測定された品質関連測定値を含む米登録情報を記憶する米登録情報記憶手段と、米登録情報記憶手段に品質関連測定値を記憶された米(以下「登録米」という。)の中から、出品される米(以下「出品米」という。)に対応する登録米を特定する登録米特定手段とをさらに備え、価格決定手段は、登録米特定手段によって特定された前記登録米の品質関連測定値に基づいて、前記出品米の価格を決定する(すなわち、前記登録米の品質関連測定値を、前記出品米の品質関連測定値とみなす)ようにすることが好ましい。これにより、予め測定しておいた品質関連測定値を用いて米の価格を決定することができるため、例えば、米の出品作業を簡略化することができる。また、後で詳しく説明するように、ある程度統一された条件下において品質関連測定値をまとめて測定しやすくなるため、品質関連測定値や米の価格の客観性を高めることができ、米の提供者や購入者の納得感をより高めることができる。
【0015】
品質関連測定値は、米の品質に関する測定値であれば、その具体的内容を特に限定されない。しかし、米の品質のうち、購入者の関心が最も高いのは、米の美味しさであることが多い。このため、品質関連測定値は、米の美味しさに関する測定値である味関連測定値を含むことが好ましい。味関連測定値としては、例えば、成分分析値と味度値とのいずれか又は両方を含むことができる。ここで、本明細書における「美味しさ」とは、人の口腔内に食べ物を入れたときに、その人が知覚することができるその食べ物の性質全般を意味するものとする。したがって、本明細書における「美味しさ」には、味覚によって感知される性質(例えば、「甘さ」や「苦さ」等)だけでなく、口腔周辺の触覚によって感知される性質(例えば、「柔らかさ」や「粘り」、「弾力」等)や、嗅覚によって感知される性質等も含まれるものとする。
【0016】
なお、健康意識の高まりから、米の安全性(例えば、どのような肥料や農薬が使われた米か、それがどの程度残留しているか等)について関心の高い購入者も増えている。このため、品質関連測定値は、米の安全性に関する測定値である安全性関連測定値を含むことも好ましい。安全性関連測定値の具体的な内容については、後で詳しく説明する。
【0017】
ところで、科学的手法により米の測定値を得る場合においては、米の品種によって測定値に偏りが出ることがある。すなわち、特定の品種では高スコアが過度に出やすく、別の品種では低スコアが過度に出やすいということが起こり得る。米の価格を決定するうえでは、このような偏りを補正することが好ましい。すなわち、米の品種に応じて品質関連測定値を補正する測定値補正手段をさらに備えるとともに、価格決定手段が、測定値補正手段によって補正された品質関連測定値に基づいて、米の価格を決定するようにすることが好ましい。これにより、取引の公平性をより高めることができる。
【0018】
また近年、お米の美味しさだけでなく、そのお米が育った環境やどんな肥料や農薬を使用したかというお米の育て方にも関心が高まっている。このため、価格決定手段は、品質関連測定値と、米の生い立ちに関する情報である生い立ち情報とに基づいて、米の価格を決定するものであることが好ましい。すなわち、品質関連測定値に加えて、生い立ち情報に基づく数値を、米の価格を決定する際の入力値として用いることが好ましい。生い立ち情報の具体的な内容については、後で詳しく説明する。
【0019】
本発明に係る米取引システムにおいては、購入者価格提示手段が購入者に対して米の価格を提示する際に、その価格の決定に用いられた品質関連測定値に関する情報を、購入者端末を介して購入者に提供する価格決定情報提供手段をさらに備えることが好ましい。これにより、米の購入者は、米の価格がどのような品質関連測定値に基づいて決定されたかを知ることができる。したがって、購入者がより納得感を持って米を購入しやすくすることができる。また、価格決定情報提供手段は、品質関連測定値に関する情報だけでなく、これを元に算出される米の価格の算出方法も提供するようにしてもよい。これにより、購入者は、米の価格がどの様に算出されたのかも知ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によって、米の提供者と購入者のいずれもが価格面において納得感を得やすい米取引システムを提供することが可能になる。また、この米取引システムを実現することができる米取引プログラムを提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態の米取引システムのネットワーク環境を模式的に示す図である。
図2】登録米検索画面の一例を示す図である。
図3】登録米選択画面の一例を示す図である。
図4】出品条件確認画面の一例を示す図である。
図5】購入用情報表示画面の一例を示す図である。
図6】米登録情報記憶手段に記憶された米登録情報テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、以下で述べる実施形態に限定されない。
【0023】
1.本実施形態の概要
図1は、本実施形態の米取引システム10のネットワーク環境を模式的に示す図である。本実施形態の米取引システム10は、米の出品者が出品した米を、購入者がオンラインで購入することができるEC(Electronic Commerce)サイトを提供するものである。以下、このECサイトを、「本実施形態におけるECサイト」と呼ぶことがある。本実施形態の米取引システム10は、図1に示すように、米の出品者が操作することができる出品者端末Sと、米の購入者が操作することができる購入者端末Bとのそれぞれに対し、ネットワークNを介して接続されている。出品者は、出品者端末Sを操作することによって、本実施形態におけるECサイトに米を出品することができる(以下、出品に係る米を「出品米」と呼ぶことがある。)。購入者は、購入者端末Bを操作することによって、複数の出品者により出品された種々の出品米の中から、自分の好みに合った米を選択し必要数量を一度に購入することができる。
【0024】
本実施形態におけるECサイトでは、予め登録された米登録情報に基づいて、米の価格が決定される。この米登録情報は、米の品質に関する測定値である品質関連測定値と、米の生い立ちに関する情報である生い立ち情報と、その他米の特徴を含む情報と、を含んでいる。
【0025】
まず品質関連測定値について説明する。品質関連測定値は、科学的手法により得られた客観性の高い値で構成されている。具体的に、科学的手法によって得られた値とは、人間の嗜好によらず各種計測装置で計測測定された値をさす。品質関連測定値は、所定の機関や団体等により、略統一された条件下において同時期に測定されたものであることが好ましく、米取引システム10の運営者や、その協力者の管理下で測定されたものであることがより好ましい。この品質関連測定値に基づいて価格を決定することで、米の提供者と購入者のいずれもが価格面において納得感を得ながら取引を行うことができる。本実施形態においては、米の出品者に支払われる価格である出品者価格と、米の購入者に請求される価格である購入者価格とが、共に、品質関連測定値に基づいて決定されるようになっている。
【0026】
品質関連測定値は、米の品質に関する測定値であれば、その具体的内容を特に限定されない。品質関連測定値は、例えば、米の美味しさに関する測定値である味関連測定値と、米の安全性に関する測定値である安全性関連測定値とを含む。
【0027】
味関連測定値としては、例えば、成分分析値、食味スコア、味度値、整粒値及び千粒重量値からなる群より選択される1又は2以上の測定値等が挙げられる。成分分析値としては、例えば、水分、タンパク質、アミロース、脂肪酸、アミノ酸及び糖類からなる群より選択される1又は2以上の成分の含有値等が挙げられる。成分分析値は、例えば、成分分析装置(例えば、静岡製機株式会社製の食味分析計)を用いて測定する。また、味度値としては、通常、炊飯した米の表面の「保水膜」の量(厚さ)の測定値(100点満点で点数換算したものを用いることもできる)が用いられる。味度値は、例えば、東洋ライス株式会社製の味度計装置を用いて測定される。さらに、整粒値としては、通常、米粒全体のうち、着色粒、死米、胴割粒、砕米、白未熟粒等を除いた整粒米の割合が用いられる。整粒値は、整粒測定装置(例えば、静岡製機株式会社製の穀粒判別器)を用いて測定することができる。
【0028】
安全性関連測定値としては、例えば、土壌汚染に関する測定値、水質汚染に関する測定値及び残留農薬に関する測定値からなる群より選択される1又は2以上の測定値等を用いることができる。
【0029】
品質関連測定値は、白米の状態で測定されたものであっても、玄米の状態で測定されたものであってもよい。味度値や、残留農薬に関する測定値は、通常、同一精米機の同一歩留まりで精米された白米の状態で測定される。品質関連測定値は、1種類の測定値のみで構成されていてもよいし、2種類以上の測定値を含んでいてもよい。
【0030】
次に、米の生い立ち情報について説明する。
米の生い立ち情報は、その具体的内容を特に限定されないが、例えば、米が育った環境や育て方等を数値化したものを用いることができる。より具体的には、生い立ち情報として、例えば、以下の(a)~(m)からなる群より選択される1又は2以上の情報を用いることができる。
(a)圃場地理的周辺環境指標
(b)圃場で使用する水環境指標
(c)圃場に生息する水中生物・雑草、来訪する動物・飛来する野鳥による生物指標
(d)農法指標
(e)圃場の規模指標
(f)米の保管方法指標
(g)種籾の処理指標
(h)播種・田植え方法指標
(i)除草方法指標
(j)施肥方法指標
(k)水管理方法指標
(l)刈り取り・乾燥・調整方法指標
(m)袋材質・袋詰め方法指標
【0031】
(a)圃場地理的周辺環境指標としては、例えば
(a1)海抜10m以下の干拓地の圃場
(a2)1辺でもコンクリートの畦がある平野部の圃場
(a3)全ての辺に雑草が生えている畦がある平野部の圃場
(a4)緩傾斜地(田:1/100以上1/20未満)の中山間
(a5)急傾斜地(田:1/20以上)の中山間
(a6)棚田と呼ばれている圃場
(a7)さらに棚田100選に選ばれた田圃
【0032】
(b)圃場で使用する水環境指標としては、例えば
(b1)産廃処分場・工場排水・生活排水が多い川の水
(b2)産廃処分場はなく工場排水・生活排水も少ない川の水
(b3)産廃も工場もなく、生活排水も極めて少ない川の水
(b4)産廃も工場も生活排水も全くない溜池から直接来る水
(b5)産廃や工場がある井戸水
(b6)産廃や工場がない井戸水
【0033】
(c)圃場に生息する水中生物・雑草、来訪する動物・飛来する野鳥による生物指標としては、例えば
(c1)サギ類
(c2)カブトエビ類
(c3)アシナガグモ類
(c4)イトトンボ類成虫
(c5)水生コウチュウ類成虫
(c6)指標植物
(c7)希少生物
【0034】
(d)農法指標としては、例えば
(d1)慣行農法
(d2)特別栽培米
(d3)有機JAS転換中
(d4)有機JAS
(d5)完全有機無農薬(岡山有機等)
(d6)無肥料無農薬(自然栽培)
(d7)自然農法
【0035】
(e)圃場の規模指標としては、例えば
(e1)1a未満の圃場
(e2)1a以上2a未満の圃場
(e3)2a以上3a未満の圃場
(e4)3a以上5a未満の圃場
(e5)5a以上10a未満の圃場
(e6)10a以上20a未満の圃場
(e7)20a以上30a未満の圃場
(e8)30a以上50a未満の圃場
(e9)50a以上1ha未満の圃場
(e10)1ha以上の圃場
【0036】
(f)米の保管方法指標としては、例えば
(f1)もみ常温保管
(f2)もみ冷蔵保管
(f3)もみ氷温保管
(f4)玄米常温保管
(f5)玄米冷蔵保管
(f6)玄米氷温保管
【0037】
(g)種籾の処理指標としては、例えば
(g1)籾選別(あり・なし)
(g2)塩水選(なし・1.13・1.15・1.17)
(g3)浸漬(なし・常温・低温)
(g4)ヤロビゼーション(なし・低温・氷温・1週間以内・2週間以内・1ヶ月以内・それ以上)
【0038】
(h)播種・田植え方法指標としては、例えば
(h1)植え付け本数(1粒本植え・2~3本植え・3~4本植え・それ以上)
(h2)育苗場所(温室・路地)
(h3)苗代方法(水苗代・畑苗代・鎮圧苗代・プール育苗・筏育苗・温室水苗代)
(h4)育苗方法(乾田直播・湿田直播・苗代手撒・ポット育苗・マット育苗)
(h5)田植方法(手植え・機械植え)
【0039】
(i)除草方法指標としては、例えば
(i1)除草剤の使用(なし・1回・2回・3回以上)
(i2)除草作業(手・田車・八反ずり・歩行型動力除草機・乗用除草機)
【0040】
(j)施肥方法指標としては、例えば
(j1)肥料の使用(なし・自家ぼかし・有機JAS・その他有機)
(j2)肥料時期(元肥・茎肥・穂肥・実肥・味肥・一発)
【0041】
(k)水管理方法指標としては、例えば
(k1)監視回数(リアルタイム・毎日・週4日以上・週2日・週1日・月2回・月1回・それ以下)
(k2)流入水路(溝板土嚢・溝塩ビ菅・蛇口)
(k3)排水路(溝板土嚢・溝塩ビ菅)
【0042】
(l)刈り取り・乾燥・調整方法指標としては、例えば
(l1)刈り取り方法(手刈り・草刈り機・バインダー・コンバイン)
(l2)乾燥方法(ハゼ干し・常温乾燥・除湿乾燥・遠赤乾燥・温風乾燥)
(l3)玄米選別(なし・1.80・1.85・1.90・1.95・2.00・2.05・2.10・2.15)
(l4)玄米色選(なし・あり)
(l5)精米方法(研削・摩擦)
(l6)精米色選(なし・あり)
(l7)無洗米処理(タピオカ・水洗・布拭き)
【0043】
(m)袋詰め材質・方法指標としては、例えば
(m1)袋材質(紙・布・OPP・CPP・ONY・LLDPE・RET)
(m2)残留空気(常圧・脱気・真空)
(m3)脱酸素剤(あり・なし)
【0044】
次に、その他米の特徴を含む情報について説明する。その他米の特徴を含む情報には、品質関連測定値や米の生い立ち情報以外の情報であって、例えば見た目や炊飯時の匂い、試食した結果を含む官能試験から得られる情報を含んでもよい。また、その米に適した調理用途等の情報を含んでもよい。ただしこのような官能試験の結果等を含める場合には、客観性を高めるための基準を明確化した上で数値化することが好ましい。その他、米の特徴を含む情報としては、例えば、登録米の品種に関する品種情報(例えば、コシヒカリや、あきたこまち等の品種そのものや、品種ごとに一意に定められた品種コード等)、それぞれの登録米を一意に識別することができる登録米識別情報(例えば、登録米識別コード)、登録米の生産者名、産地、栽培方法の詳細、生産者のこだわり、生産者からのメッセージ等の各種の情報を含むことができる。
【0045】
米の価格は、米登録情報に含まれる情報のうち、例えば、品質関連測定値だけに基づいて決定するようにしてもよい。品質関連測定値は、科学的に客観性の高い情報であるため、この品質関連測定値だけに基づいて米の価格を決定するようにした場合には、米の価格の客観性をより高めることができる。一方、本実施形態においては、品質関連測定値と、米の生い立ちに関する情報である生い立ち情報とに基づいて、米の価格を決定するようにしている。生い立ち情報を含めて評価することで購入者により深い情報に基づく価格を提供することができる。特に、これにより、味が美味しいだけでなく、安全安心な環境で手間暇かけて育てられた米を、より高値で取引することができるようになっている。米の価格は、さらに、その他米の特徴を含む情報に基づき決定するようにしてもよい。
【0046】
2.米の出品方法
以下、本実施形態におけるECサイトに米を出品するための手順について、詳しく説明する。
【0047】
2.1 事前登録
本実施形態におけるECサイトに米を出品するためには、その米について事前登録を行う必要がある。事前登録は、その米の品質関連測定値や生い立ち情報を含む「米登録情報」を、米取引システム10(図1)に登録することによって行う(以下、事前登録された米を「登録米」と呼ぶことがある。)。本実施形態においては、この米登録情報を用いて、米の価格を決定する。
【0048】
事前登録は、例えば、米の出品者が行うようにしてもよい。しかし、その場合には、品質関連測定値を恣意的に操作することも可能になってしまうため、品質関連測定値や、これに基づいて決定される米の価格の客観性を高めにくくなるおそれがある。このため、事前登録は、米取引システム10の運営者や管理者が行うことが好ましい。
【0049】
事前登録に用いる品質関連測定値は、通常、事前登録よりも前に予め測定されたものを用いる。米取引システム10には、通常、多数の登録米が登録されるところ、それぞれの登録米の品質関連測定値が、異なる測定機器や測定条件・測定者等によって測定されたものであると、品質関連測定値や米の価格の客観性を高めにくくなるおそれがある。このため、事前登録に用いる品質関連測定値は、所定の測定機器を用いて、略統一された条件下において同時期に測定されたものであることが好ましい。これにより、品質関連測定値や米の価格の客観性をより高めることができる。品質関連測定値は、米取引システム10の運営者や、その協力者の管理下で測定されたものであることがより好ましい。
【0050】
本実施形態においては、事前登録する米の品質関連測定値として、民間団体が主催するコンクール(米・食味分析鑑定コンクール)で得られた測定値を採用している。当該コンクールは、年に一度開催され、数千件もの米が一堂に会してその品質を競うコンクールである。当該コンクールに参加する全ての米は、同一の測定機器を用いて、略統一された条件下において、同一担当者によりその品質をまとめて測定される。これにより、多数の米について、非常に客観性の高い品質関連測定値を一度に得ることができる。当該コンクールは、毎年秋頃に開催され、その年の年末までに結果が発表される。このため、本実施形態においては、年に一度、コンクールの結果が揃う年末頃に、米取引システム10の運営者や管理者がコンクールの主催者(運営者の協力者)から品質関連測定値のデータを受け取り、その年度のコンクールに参加した米の事前登録をまとめて行うようにしている。これにより、事前登録にかかる手間を大幅に削減することができる。
【0051】
ところで、上述した米・食味分析鑑定コンクールに参加した全ての米には、その年に参加したそれぞれの米に通し番号が付される。本実施形態においては、この通し番号を、登録米を一意に識別するための登録米識別情報の一部として利用している。すなわち、本実施形態においては、コンクールの開催年を示す文字列(例えば、西暦、和暦又はコンクールの開催回数を示す文字列)と、その開催年のコンクールにおいてその米に付された通し番号とを含む登録米識別コードを、登録米識別情報として採用している。これにより、登録米識別情報(登録米識別コード)をシンプルで使いやすいものとすることができる。ただし、登録米識別情報は、登録米を一意に識別することができれば、その形式を上記のものに限定されない。
【0052】
なお、年に一度のコンクールに参加しなかった米(すなわち、運営側による年に一度の事前登録に含まれなかった米)をECサイトへ出品したい場合には、追加登録を行うことができる。この場合には、米の出品者による依頼を受けた測定機関(好ましくは、コンクールにおいて品質関連測定値の測定を行った測定機関)が、出品しようとする米の品質関連測定値を測定し、米取引システム10の運営者に提出する。米取引システム10の運営者又は管理者は、事前登録を行う場合と同様にして、受け取った品質関連測定値を米取引システム10に追加登録する。これにより、当該米を出品することができるようになる。
【0053】
2.2 出品
以下、本実施形態におけるECサイトに米を実際に出品する際の具体的な手順について説明する。以下においては、米の出品者(限定されないが、米の生産者であることが多い。)が出品手続きを行う場合を例に挙げて説明する。図2は、登録米検索画面100の一例を示す図である。図3は、登録米選択画面200の一例を示す図である。図4は、出品条件確認画面300の一例を示す図である。
【0054】
2.2.1 登録米検索
図2に示す登録米検索画面100は、登録米の検索を行うための画面である。米を出品しようとする出品者は、まず、事前登録された登録米の中から、出品しようとする米(出品米)に対応する登録米を検索する。すなわち、まず、出品者端末S(図1)を用いて登録米検索画面100にアクセスし、表示される検索用入力フォーム110に、出品しようとする米の情報(以下「検索用米情報」と呼ぶことがある。)を入力する。検索用米情報は、その具体的な種類を特に限定されない。検索用米情報としては、例えば、コンクールの参加年及びコンクールにおける出品番号(すなわち、登録米識別情報に含まれる情報)や、生産者名や、産地や、品種や、栽培方法等を用いることができる。検索用米情報は、検索用入力フォーム110に入力可能な全ての項目を入力する必要はなく、いくつかを入力するだけでもよい。出品者が、検索用米情報を入力後、検索ボタン120を押すと、登録米の検索が行われ、図3に示す登録米選択画面200が表示される。
【0055】
2.2.2 登録米選択
図3に示す登録米選択画面200は、登録米の検索結果を表示するとともに、検索された登録米から出品米に該当する米を選択するための画面である。登録米選択画面200には、候補登録米リスト210が表示される。候補登録米リスト210では、登録米検索画面100(図2)の検索用入力フォーム110に入力された検索用米情報に基づいて検索された登録米の情報(米登録情報の少なくとも一部)が、リスト状に表示されている。候補登録米リスト210には、登録米ごとに選択ボタン211が設けられている。出品者は、出品しようとする米(出品米)に該当する登録米を選んで、その選択ボタン211を押す。すると、図4に示す出品条件確認画面300が表示される。なお、選択ボタン211の代わりに、チェックボックスやラジオボタン等を採用してもよい(すなわち、一度に複数の登録米を選択できるようにしてもよい)。
【0056】
2.2.3 出品条件確認
図4に示す出品条件確認画面300は、選択された登録米(すなわち出品米)の出品条件を確認するための画面である。出品条件確認画面300には、出品者価格提示部310と、出品条件入力フォーム320とが表示される。出品者価格提示部310には、その出品米の対価として米の出品者に支払われる価格である出品者価格が表示される。この出品者価格は、後で詳しく説明するように、登録米選択画面200(図3)で選択された登録米の品質関連測定値に基づいて決定されたものである。出品条件確認画面300(図4)においては、出品者価格に加えて、出品者価格の決定に用いられた品質関連測定値を合わせて表示するようにしてもよい。出品者は、出品者価格を確認し、その出品者価格に納得できる場合には、出品条件入力フォーム320に出品条件(例えば、出品数量、出品期間、最小注文単位等)を入力して出品ボタン330を押す。すると、本実施形態のECサイトに、当該出品米が出品される。出品者は、出品条件を後日変更することはできるが、出品者価格を操作することはできない。
【0057】
なお、本実施形態においては、事前登録された生い立ち情報(登録米の生い立ち情報)を用いて、出品米の価格を決定するようにしている。しかし、生い立ち情報は、事前登録せず、出品段階において別途入力するようにしてもよい。すなわち、例えば、図4の出品条件確認画面等に入力フォームを設け、出品者端末Sを介して生い立ち情報の入力を受け付けるようにしてもよい。これにより、事前登録に要する労力を少なくすることができる。この場合、入力された生い立ち情報は、その出品米が出品された時点で、後述する米登録情報記憶手段11に記憶されるようにすると好ましい。
【0058】
3.米の購入方法
続いて、本実施形態におけるECサイトで米を購入する際の手順について説明する。図5は、購入用情報表示画面400の一例を示す図である。米を購入しようとする購入者は、購入者端末B(図1)を用いて、本実施形態におけるECサイトにアクセスし、複数の出品米が表示された購入用米選択画面(図示省略)の中から、好みの出品米を選択する。すると、図5に示す購入用情報表示画面400(選択した出品米の販売ページ)が表示される。
【0059】
購入用情報表示画面400には、購入者価格提示部410と、価格決定情報提供部420とが設けられている。購入者価格提示部410には、その購入用情報表示画面400で販売されている出品米の購入者価格(その米の対価として米の購入者に請求される価格)が表示される。この購入者価格は、その出品米に対応する登録米の品質関連測定値に基づいて決定されたものである。価格決定情報提供部420には、購入者価格提示部410に表示された購入者価格の決定に用いられた品質関連測定値に関する情報が表示される。価格決定情報提供部420には、購入者価格の決定に用いられた品質関連測定値を、そのまま数値として表示してもよいし、例えばグラフ化する等して視覚に訴えやすい状態で表示してもよい。この価格決定情報提供部420により、米の購入者は、購入者価格提示部410に表示された購入者価格が、どのような米本来の価値に基づいて決定されたのかを知ることができる。したがって、もし購入者価格が多少高かったとしても、納得感を持ってその出品米を購入することができる。購入者価格と米本来の価値とに納得した場合には、購入者は、その出品米を仮想ショッピングカートに入れ、所定の決済手続きを行うことによってその出品米を購入することができる。
【0060】
この購入用情報表示画面400では、複数の種類の米を同時に購入していろいろな品種や同じ品種で違う米など少量ずつ購入して食べ比べが出来やすくする事が望ましい。また、食べ比べでは人気商品を配送センターに集めることが好ましい。これにより、運賃を削減することができる。将来的には配送センターで精米・袋づめができる様になるのが望ましい。
【0061】
なお、本実施形態においては、購入者価格提示部410及び価格決定情報提供部420を購入用情報表示画面400(図5)に設けているが、購入者価格提示部や価格決定情報提供部は、購入用米選択画面(図示省略)にも設けることが好ましい。これにより、購入者は、米の価格と、その価格の決定に用いられた品質関連測定値との両方を参照しながら、米を選択することができる。
【0062】
4.本実施形態の米取引システムの構成
本実施形態の米取引システム10は、図1に示すように、米登録情報記憶手段11と、登録米特定手段12と、測定値補正手段13と、価格決定手段14と、出品者価格提示手段15と、購入者価格提示手段16と、価格決定情報提供手段17とを備えている。米取引システム10の各手段は、通常、電子計算装置によって実現される。ここで、本明細書における「電子計算装置」という語には、コンピュータを1台だけ備えた装置に加えて、ネットワーク(無線か有線かを問わない)を介して接続された複数台のコンピュータを備えた装置も含まれるものとする。以下においても同様とする。
【0063】
4.1 米登録情報記憶手段
米登録情報記憶手段11は、事前登録された登録米の米登録情報を記憶するための手段である。図6は、米登録情報記憶手段11に記憶された米登録情報テーブル20の一例を示す図である。米登録情報記憶手段11は、米取引システム10が受け取った米登録情報を内部に記憶する。米登録情報記憶手段11は、米登録情報をどのような形式で記憶するのかを特に限定されない。本実施形態における米登録情報記憶手段11は、図6に示すように、テーブル形式で(米登録情報テーブル20として)米登録情報を記憶している。米登録情報は、1つのテーブルにまとめた状態で記憶することもできるし、複数のテーブルに分けた状態で記憶することもできる。1つのデータは数字や文字列だけでなく、写真・動画・位置情報など、電子計算装置が扱える全てのデータが対象となる。
【0064】
米登録情報記憶手段11に記憶される米登録情報は、通常、品質関連測定値を含んでいる。品質関連測定値には、既に述べたように、味関連測定値や安全性関連測定値等を含むことができる。
【0065】
本実施形態における米登録情報テーブル20には、図6に示すように、登録米識別コードと、生産者名と、産地と、品種情報と、栽培方法と、品質関連測定値とが含まれている。品質関連測定値としては、いずれも味関連測定値である、整粒値と、食味スコア(食味分析計により得られた、水分、蛋白、アミロース、脂肪酸の成分分析値に基づくスコア)と、味度値とが含まれている。
【0066】
前述した事前登録は、これらの米登録情報を、米登録情報記憶手段11が記憶することを指す。米登録情報記憶手段11に記憶される米登録情報のうち、少なくとも品質関連測定値は、通常、米取引システム10の運営者や管理者の管理下に置かれる。米の出品者や購入者は、米登録情報記憶手段11に記憶された品質関連測定値に変更を加える(編集する)ことはできない。これにより、品質関連測定値の客観性と公平性を高めることができる。
【0067】
4.2 登録米特定手段
登録米特定手段12は、米登録情報記憶手段11に記憶された米登録情報(品質関連測定値を含む)の中から、出品米に対応する登録米を特定するための手段である。登録米特定手段12は、通常、出品米に関する情報に基づいて登録米を特定するが、その具体的な手順を特に限定されない。本実施形態における登録米特定手段12は、登録米検索手順と、候補登録米情報提示手順と、登録米決定手順とを経ることにより、出品米に対応する登録米を特定することができるものとなっている。
【0068】
登録米特定手段12は、登録米検索手順を行うための登録米検索手段と、候補登録米情報提示手順を行うための候補登録米情報提示手段と、登録米決定手順を行うための登録米決定手段とを備えている。
【0069】
登録米検索手段は、出品者端末Sを介して入力された検索用米情報(図2の登録米検索画面100における検索用入力フォーム110に入力された出品米の情報)に基づいて、米登録情報記憶手段11に記憶された登録米の中から、出品米(入力された検索用米情報に係る米)に対応する可能性のある登録米を検索する。候補登録米情報提示手段は、登録米検索手段により検索された登録米の情報(米登録情報の少なくとも一部)を、出品者端末Sを介して(図3の登録米選択画面200における候補登録米リスト210に表示して)提示する。登録米決定手段は、候補登録米情報提示手段において出品者に提示された登録米の中から、出品者端末Sを介して行われた選択に基づいて、出品米に対応する登録米を決定する。登録米特定手段12は、これらの手段により、出品者の意図に沿った状態で、出品米に対応する登録米を特定する。
【0070】
本実施形態においては、登録米特定手段12によって特定された登録米の品質関連測定値(米登録情報記憶手段11に記憶された品質関連測定値)に基づいて、価格決定手段14が、出品米の価格を決定する。換言すると、価格決定手段14は、登録米特定手段12によって特定された登録米の品質関連測定値を、出品米の品質関連測定値とみなして、出品米の価格を決定する。これにより、出品米の品質関連測定値を都度測定しなくとも、出品米の価格を決定することができる。また、予めまとめて測定し、米登録情報記憶手段11に記憶させておいた登録米の品質関連測定値を用いて価格を決定することができ、品質関連測定値の測定環境や測定者・測定機器による測定誤差を最小限に抑えることもできるため、価格の公平性を高めることができる。
【0071】
4.3 測定値補正手段
測定値補正手段13は、品質関連測定値を、米の品種に応じて補正するための手段である。後述する価格決定手段14は、品質関連測定値に直接基づいて、出品米の価格を決定するようにしてもよい。ただし、品質関連測定値には、米の品種による偏りが出ることがある。すなわち、特定の品種の米では高スコアが過度に出やすく、別の品種の米では低スコアが過度に出やすいということがあり得る。この偏りを解消しないまま米の価格を決定すると、特定の品種の価格が他の品種の価格に比べて過度に高く(又は低く)なりすぎるおそれがある。このため、本実施形態においては、測定値補正手段13を設けて、米の品種に応じた補正を品質関連測定値に加えるようにしている。これにより、米の品種による品質関連測定値の偏りを解消することができ、米の価格に対する納得感をさらに高めることができる。
【0072】
測定値補正手段13による具体的な補正方法は、特に限定されない。本実施形態における測定値補正手段13は、登録米特定手段12によって特定された登録米の品質関連測定値(米登録情報記憶手段11に記憶された品質関連測定値)に対し、当該登録米の品種情報(米登録情報記憶手段11に記憶された品種情報)に基づいて選択される所定の演算を加えることにより、品質関連測定値の補正を行っている。
【0073】
4.4 価格決定手段
価格決定手段14は、品質関連測定値に基づいて、米の価格を決定するための手段である。本実施形態における価格決定手段14は、登録米特定手段12によって特定された登録米の品質関連測定値を、測定値補正手段13によって補正した値(以下「補正後品質関連測定値」と呼ぶことがある。)に基づいて、出品米商品の価格を決定する。
【0074】
価格決定手段14は、品質関連測定値(補正後品質関連測定値)のみに基づいて米の価格を決定するようにしてもよい。あるいは、品質関連測定値に加えて、別の要素(例えば、米の生い立ち情報に基づいて決定される数値等)にも基づいて、米の価格を決定するようにしてもよい。別の要素としては、生い立ち情報以外にも、米の相場価格や、米の豊作度や、景気指数等を用いることができる。別の要素は、1つだけ用いても、2つ以上を用いてもよい。
【0075】
価格決定手段14が、品質関連測定値や別の要素に基づいてどのように価格を決定するのかについては、特に限定されない。価格決定手段14は、例えば、所定の数式に、品質関連測定値や、別の要素に基づく数値等を直接代入することによって米の価格を決定するようにしてもよい。しかし、例えば、安全性関連測定値(例えば、土壌汚染に関する測定値や、水質汚染に関する測定値や、残留農薬に関する測定値等)の中には、所定の基準値を満たしてさえいれば、その値自体は特段の意味を有しないような測定値も含まれる。このような場合には、例えば、出品米の測定値が所定の基準値を満たす場合(又は満たさない場合)に、米の価格に所定の演算を加えるようにしてもよい。すなわち、例えば、所定の安全性関連測定値が基準値以下である場合には、米の価格が高くなるような演算を行うようにすることや、所定の安全性関連測定値が基準値を超える場合には、米の価格が低くなるような演算を行うようにすることができる。各測定値の基準値としては、政府や自治体が発行している公式な値を用いることが好ましい。このような演算をスムーズに行うため、品質関連測定値として安全性関連測定値を用いる場合には、それぞれの安全性関連測定値の基準値を記憶する基準値記憶手段を設けることが好ましい。
【0076】
本実施形態における価格決定手段14は、米の出品者に支払われる価格である出品者価格と、米の購入者に請求される価格である購入者価格とをそれぞれ決定することができるようになっている。同一の出品米に係る出品者価格と購入者価格とは、通常、同一の品質関連測定値に基づいて決定される。この場合において、同一の出品米に係る出品者価格と購入者価格とは、一方を先に決定し、その決定された価格に基づいて他方を決定するようにしてもよいし、別々に決定するようにしてもよい。本実施形態においては、まず出品者価格を決定し、その出品者価格に基づいて購入者価格を決定するようにしている。
【0077】
4.5 出品者価格提示手段
出品者価格提示手段15は、価格決定手段14によって決定された出品者価格を、米の出品者が操作する出品者端末Sを介して(例えば、図4の出品条件確認画面300における出品者価格提示部310によって)出品者に提示するための手段である。出品者価格提示手段15に加えて、出品者価格提示手段15が出品者価格を提示する際に、その出品者価格の決定に用いられた品質関連測定値に関する情報や、出品者価格の算出方法等を、出品者端末Sを介して出品者に提供するための手段を設けてもよい。これにより、出品者は、米の出品者価格がどのような品質関連測定値に基づいて決定されたかや、その算出方法を知ることができ、より納得感を持って米を出品することができる。
【0078】
4.6 購入者価格提示手段
購入者価格提示手段16は、価格決定手段14によって決定された購入者価格を、米の購入者が操作する購入者端末Bを介して(例えば、図5の購入用情報表示画面400における購入者価格提示部410によって)購入者に提示するための手段である。
【0079】
4.7 価格決定情報提供手段
価格決定情報提供手段17は、購入者価格提示手段16が購入者価格を提示する際に、その購入者価格の決定に用いられた品質関連測定値に関する情報を、購入者端末Bを介して(例えば、図5の購入用情報表示画面400における価格決定情報提供部420によって)購入者に提供するための手段である。価格決定手段14が、前述したように、品質関連測定値(例えば、味関連測定値や安全性関連測定値等)に加えて、別の要素(例えば、生い立ち情報等)にも基づいて米の価格を決定する場合には、価格決定情報提供手段17が、その別の要素に関する情報も購入者に提供するようにしてもよい。これにより、購入者は、より納得感を持って米を購入することができる。
【0080】
5.米取引プログラム
米取引システム10は、電子計算装置に米取引プログラムを実行させることによって実現することができる。本実施形態における米取引プログラムは、電子計算装置を上述した米登録情報記憶手段11として機能させることができる米登録情報記憶プログラムと、電子計算装置を上述した登録米特定手段12として機能させることができる登録米特定プログラムと、電子計算装置を上述した測定値補正手段13として機能させることができる測定値補正プログラムと、電子計算装置を上述した価格決定手段14として機能させることができる価格決定プログラムと、電子計算装置を上述した出品者価格提示手段15として機能させることができる出品者価格提示プログラムと、電子計算装置を上述した購入者価格提示手段16として機能させることができる購入者価格提示プログラムと、電子計算装置を上述した価格決定情報提供手段17として機能させることができる価格決定情報提供プログラムとを含んでいる。米取引プログラムは、これを実行するための電子計算装置に記憶されていてもよいし、それとは別の記憶装置に記憶されていてもよい。また、米取引プログラムは、1台の電子計算装置や記憶装置に記憶されていてもよいし、複数台の電子計算装置や記憶装置に分けて記憶されていてもよい。
【0081】
6.他の実施形態
以上で説明した実施形態においては、米の提供者(例えば生産者)が出品者端末S(図1)を用いて米の出品を行うようにしていた。しかし、米の出品を誰が行うかは限定されない。米の出品は、例えば、米取引システム10の運営者や管理者が行うようにしてもよい。この場合の出品作業は、前述した出品者端末Sのように、ネットワークNに接続された端末(管理者端末)を用いて行うこともできるし、米取引システム10を直接操作することによって行うこともできる。
【符号の説明】
【0082】
10 米取引システム
11 米登録情報記憶手段
12 登録米特定手段
13 測定値補正手段
14 価格決定手段
15 出品者価格提示手段
16 購入者価格提示手段
17 価格決定情報提供手段
20 米登録情報テーブル
100 登録米検索画面
110 検索用入力フォーム
120 検索ボタン
200 登録米選択画面
210 候補登録米リスト
211 選択ボタン
300 出品条件確認画面
310 出品者価格提示部
320 出品条件入力フォーム
330 出品ボタン
400 購入用情報表示画面
410 購入者価格提示部
420 価格決定情報提供部
N ネットワーク
S 出品者端末
B 購入者端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6