(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042331
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】そばに由来するタンパク質の加水分解物を含むDPPIV阻害剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/185 20160101AFI20240321BHJP
【FI】
A23L33/185
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146980
(22)【出願日】2022-09-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月25日にウェブサイト(http://www.jsfcs.org/2022/05/28-202251920.html)にて発表 令和4年5月19日に日本食品化学学会 第28回総会・学術大会要旨集にて発表 令和4年5月20日に日本食品化学学会 第28回総会・学術大会にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】塩野 弘二
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018MD22
4B018MD48
4B018ME03
4B018MF01
4B018MF12
(57)【要約】
【課題】安価で入手しやすいDPPIV阻害剤を提供すること。
【解決手段】そばに由来するタンパク質の加水分解物を含む、DPPIV阻害剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
そばに由来するタンパク質の加水分解物を含む、DPPIV阻害剤。
【請求項2】
前記そばが、そばの実である、請求項1に記載のDPPIV阻害剤。
【請求項3】
前記加水分解物が、タンパク質分解酵素による加水分解物である、請求項1に記載のDPPIV阻害剤。
【請求項4】
前記タンパク質分解酵素が、エンドペプチダーゼ及び/又はエキソペプチダーゼである、請求項1に記載のDPPIV阻害剤。
【請求項5】
前記タンパク質分解酵素が、アルカラーゼ、パンチダーゼ、サモアーゼ、アロアーゼ、ニューラーゼ、プロテアックス、ペプチダーゼR、エスペラーゼ、ニュートラーゼ、フレーバーザイム及びペプシンからなる群から選択される1種以上である、請求項4に記載のDPPIV阻害剤。
【請求項6】
前記加水分解物が、アルコール系有機溶媒を用いた逆相クロマトグラフィーにおいて、10~50%アルコール溶媒を用いて溶出される画分に由来する、請求項1に記載のDPPIV阻害剤。
【請求項7】
前記加水分解物が、ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量分布分析において、溶出時間50~60分に溶出される画分に由来する、請求項1に記載のDPPIV阻害剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のDPPIV阻害剤を含む、飲食品。
【請求項9】
そばに由来するタンパク質の加水分解物を含む、DPPIVを阻害するための飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そばに由来するタンパク質の加水分解物を含む、DPPIV阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、空腹時の血糖値が高いこと、すなわち高血糖により特徴づけられる病気である。糖尿病は、その発症に、遺伝的な要因に加えて、食事の内容や、過食、肥満、ストレスといった日常的な要因が関係することから、生活習慣病の一つとされる。クオリティ・オブ・ライフを改善する観点からも、血糖値を適正にコントロールして糖尿病をはじめとした生活習慣病の予防をすることは重要である。
【0003】
高血糖は、血糖値の調節メカニズムに異常をきたすこと等により誘発され、生体内における他の代謝に関与する病気を発症させる病態としても知られる。例えば、高血糖を特徴とする糖尿病患者が併発する病気や病態としては、高血圧、動脈硬化、狭心症や心筋梗塞等の心臓病、脳梗塞や脳出血等の脳卒中、免疫低下、脂質異常症、骨粗鬆症、歯周病等が挙げられる。合併症は、ひとたび発症すると治療が困難であることから、血糖値をコントロールして合併症を予防することや、進行を遅らせることも重要である。
【0004】
DPP(ジペプチジルペプチダーゼ)IVは、血液中に存在し、ペプチドのN末端から2番目のプロリン又はアラニンを認識して、N末端からジペプチドを遊離させるプロテアーゼである。DPPIVを阻害することによりインクレチンホルモンの働きを円滑化することが可能であり、DPPIV阻害による糖尿病治療薬が認可されている。インクレチンホルモンとは、2種類のペプチドホルモンからなるホルモンであり、インスリンの分泌を促進する性質や、グルカゴンの分泌を抑制する性質を有し、働きを円滑化することにより、高血糖状態を予防することや、改善することができる。
【0005】
近年、食品をタンパク質加水分解させた成分の機能性が注目されている。そばは、その栄養価の高さから日本を始め、ロシア、中国、ウクライナといった様々な国で栽培されている作物である。そば、安価で世界中で栽培されている植物であり、タンパク質含量が豊富であるにもかかわらず、そばに由来するタンパク質の加水分解物の機能性評価に関する報告は少なく、検討がなされていなかった。
【0006】
特許文献1には、魚介類の白子に由来するタンパク質の加水分解物を含むDPPIV阻害剤に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、安価で入手しやすいDPPIV阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、安価かつ世界中で栽培されているそばに由来するタンパク質の加水分解物が、DPPIV阻害効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、以下の(1)~(9)に関する。
(1)
そばに由来するタンパク質の加水分解物を含む、DPPIV阻害剤。
(2)
前記そばが、そばの実である、(1)に記載のDPPIV阻害剤。
(3)
前記加水分解物が、タンパク質分解酵素による加水分解物である、(1)に記載のDPPIV阻害剤。
(4)
前記タンパク質分解酵素が、エンドペプチダーゼ及び/又はエキソペプチダーゼである、(1)に記載のDPPIV阻害剤。
(5)
前記タンパク質分解酵素が、アルカラーゼ、パンチダーゼ、サモアーゼ、アロアーゼ、ニューラーゼ、プロテアックス、ペプチダーゼR、エスペラーゼ、ニュートラーゼ、フレーバーザイム及びペプシンからなる群から選択される1種以上である、(4)に記載のDPPIV阻害剤。
(6)
前記加水分解物が、アルコール系有機溶媒を用いた逆相クロマトグラフィーにおいて、10~50%アルコール溶媒を用いて溶出される画分に由来する、(1)に記載のDPPIV阻害剤。
(7)
前記加水分解物が、ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量分布分析において、溶出時間50~60分に溶出される画分に由来する、(1)に記載のDPPIV阻害剤。
(8)
(1)~(7)のいずれか1項に記載のDPPIV阻害剤を含む、飲食品。
(9)
そばに由来するタンパク質の加水分解物を含む、DPPIVを阻害するための飲食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、そばに由来するタンパク質の加水分解物のDPPIV阻害効果により、安価で入手しやすいDPPIV阻害剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、F3画分の逆相HPLCクロマトグラムと、各画分のDPPIV活性阻害率を示す。
【
図2】
図2は、R画分のゲルろ過HPLCクロマトグラムと、各画分のDPPIV活性阻害率を示す。
【
図3】
図3は、S画分の親水性相互作用HPLCクロマトグラムと、各画分のDPPIV活性阻害率を示す。
【
図4】
図4は、H画分のLC-Q-TOF MS MSスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
【0014】
本発明は、そばに由来するタンパク質の加水分解物を含む、DPPIV阻害剤に関する。
【0015】
1.そば
本実施形態において、「そば」とは、ソバ(Fagopyrum)属に属する植物を意味する。そばの品種や収穫時期は、特に限定されないが、例えば、夏吉、キタミツキ、にじゆたか、ルチキング、コバルトの力、ガンマの彩、レラノカオリ、さちいずみ、春のいぶき、なつみ、そば中間母体農1号、とよむすめ、キタノマシュウ、常陸秋そば、韃靼そば等が挙げられる。
【0016】
本実施形態において、「そばに由来するタンパク質」という場合、そばから得られるタンパク質やペプチド(ポリペプチドを含む。以下同様。)を意味する。タンパク質源となるそばとしては、特に限定されるものではないが、例えば、タンパク質を含むことで知られるそばの実を用いることができる。
【0017】
そばの実は、例えば、粉状にしたものであっても、焙煎加工と湯抽出の後に粉砕したものであってもよい。そばの実を粉状にしたものとしては、例えば、そば粉等が挙げられる。そばの実を焙煎加工と湯抽出の後に粉砕したものとしては、例えば、そば茶の茶殻粉砕物等が挙げられる。
【0018】
そば粉は、当業者が適宜公知の手法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。そば粉の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、収穫したそばを乾燥調製し、果皮(殻)を取り除いた後に低温製粉装置により粉末化する手法等が挙げられる。そば粉の粒径や、水分含量は、タンパク質加水分解に供することが可能である限り、特に限定されない。そば粉の市販品としては、特に限定されないが、例えば、そば粉(桝田屋食品株式会社)、石臼挽きそば粉(大西製粉)等が挙げられる。
【0019】
そば茶の茶殻粉砕物は、特に限定されないが、例えば、市販されているそば茶用に焙煎加工されたそばの実を用いて、湯抽出によりそば茶を調製後に残る茶殻を、粉砕すること等により入手可能である。粉砕の程度や、粉砕物の水分含量は、タンパク質加水分解に供することが可能である限り、特に限定されない。そば茶用に焙煎加工されたそばの実の市販品としては、特に限定されないが、例えば、香ばしいそば茶(奈良屋)、国産そば茶(出雲茶三代一)等が挙げられる。
【0020】
2.加水分解酵素
加水分解には、酸加水分解やアルカリ加水分解等の化学的加水分解、酵素的加水分解等が知られる。本実施形態においては、酵素的加水分解の例を取り上げて説明するが、化学的加水分解を適用してもよい。本実施形態において、「タンパク質加水分解酵素」という場合、タンパク質やペプチドのペプチド結合に対して作用する加水分解酵素であるプロテアーゼ、プロテイナーゼ、ペプチダーゼを含む意味で使用され得る。タンパク質加水分解酵素としては、そばに由来するタンパク質を加水分解することができるものであれば特に限定されるものではないが、食品添加物等としても用いられているものが好ましい。
【0021】
本実施形態において、タンパク質加水分解酵素としては、各種加水分解酵素、これらの各種加水分解酵素を含む粗精製物、又はこれらの各種加水分解酵素を含む菌体破砕物等を用いることもできる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
タンパク質加水分解酵素としては、特に限定されないが、例えば、アルカラーゼ、フレーバーザイム、パンチダーゼ、サモアーゼ、アロアーゼ、ニューラーゼ、プロテアックス、ペプチダーゼR、エスペラーゼ、ニュートラーゼ、ペプシン等の微生物由来タンパク質加水分解酵素が挙げられる。なかでも、アルカラーゼ、フレーバーザイムが好ましい。
【0023】
タンパク質加水分解酵素の市販品としては、特に限定されないが、例えば、アルカラーゼ(登録商標)2.4 L FG(ノボザイムズジャパン株式会社)、フレーバーザイム(登録商標)(ノボザイムズジャパン株式会社)、パンチダーゼ(登録商標)NP-2、パンチダーゼMP、パンチダーゼP(以上、ヤクルト薬品工業株式会社)、サモアーゼ(登録商標)(天野エンザイム株式会社)、アロアーゼ(登録商標)XA-10、アロアーゼAP-10、アロアーゼNP-10(以上、ヤクルト薬品工業株式会社)、ニューラーゼ(登録商標)F 3 G(天野エンザイム株式会社)、プロテアックス(登録商標)(天野エンザイム株式会社)、ペプチダーゼR(天野エンザイム株式会社)、エスペラーゼ(登録商標)(ノボザイムズジャパン株式会社)、ニュートラーゼ(登録商標)(ノボザイムズジャパン株式会社)等の市販品が挙げられる。
【0024】
タンパク質加水分解酵素は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。限定することを意図するものではないが、タンパク質に対して平均に加水分解を行う観点からは、タンパク質加水分解酵素が切断部位に対する広い基質特異性を有することが好ましい。例えば、セリンプロテアーゼは、広い基質特異性を有することで知られており、好ましい。例えば、アルカラーゼ、エスペラーゼ等は、セリンプロテアーゼである。例えば、ペプチド結合をランダムに加水分解し得る加水分解酵素は、好ましい。例えば、ニュートラーゼは、ペプチド結合をランダムに加水分解し得る。
【0025】
タンパク質加水分解酵素には、タンパク質やペプチドの非末端のペプチド結合を加水分解するエンドペプチダーゼ(「エンド型プロテアーゼ」とも呼ばれる。)と、タンパク質やペプチドの末端からペプチド結合を加水分解するエキソペプチダーゼ(「エキソ型プロテアーゼ」とも呼ばれる。)があることが知られる。エンドペプチダーゼとしては、特に限定されないが、例えば、アルカラーゼ、フレーバーザイム、ペプシン等が挙げられる。エキソペプチダーゼとしては、特に限定されないが、例えば、ニュートラーゼ、フレーバーザイム、プロテアックス、ペプチダーゼR等が挙げられる。
【0026】
本実施形態において、タンパク質加水分解酵素は、エンドペプチダーゼ又はエキソペプチダーゼのいずれかのみを用いてもよく、両方を用いてもよい。限定することを意図するものではないが、タンパク質やペプチドに対して平均に加水分解を行う観点からは、エンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼの両方を用いることが好ましい。タンパク質加水分解酵素として、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼを用いる場合、用いるエンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼの種類、数及び組み合わせは、特に限定されない。例えば、エンドペプチダーゼとしてアルカラーゼ、及びエキソペプチダーゼとしてフレーバーザイムを用いてもよく、エンドペプチダーゼとしてペプシン、及びエキソペプチダーゼとしてフレーバーザイムを用いてもよく、エンドペプチダーゼとしてアルカラーゼ、及びエキソペプチダーゼとしてプロテアックスを用いてもよく、エンドペプチダーゼとしてアルカラーゼ、及びエキソペプチダーゼとしてペプチダーゼRを用いてもよい。なかでも、エンドペプチダーゼとしてアルカラーゼ、及びエキソペプチダーゼとしてフレーバーザイムを用いることが好ましい。
【0027】
加水分解の条件は、用いるタンパク質加水分解酵素に応じて当業者が適宜設定してよい。例えば、当業者は、用いるタンパク質加水分解酵素の製造会社が発行する指示書に基づいて適宜設定してよい。
【0028】
3.加水分解物
本実施形態において、「加水分解物」とは、加水分解酵素の作用によって得られる生成物を意味する。本実施形態において、そばに由来するタンパク質の加水分解物は、ペプチドを含む。
【0029】
加水分解物の形態は、特に限定されるものではないが、加水分解の工程において添加された溶媒等を含む液状の形態であってもよく、凍結乾燥等の処理に供されることにより粉状の形態であってもよい。
【0030】
DPPIV阻害剤における加水分解物の含有量は、特に限定されるものではなく、共に含まれる他の成分の種類や含有量等により一律に規定されるものではないが、0.01質量%~90質量%程度、例えば0.1質量%~70質量%程度である。
【0031】
加水分解物中の成分は、特に限定されないが、例えば、分離精製法や分子量分布分析等により分画することができる。分離精製法や分子量分布分析は、当業者が適宜公知の手法により行うことができるが、例えば、クロマトグラフィーを用いた分離等が挙げる。クロマトグラフィーとしては、特に限定されないが、例えば、逆相クロマトグラフィー、親水性相互作用クロマトグラフィー等の順相クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。分析手法としてクロマトグラフィーは、1種のみを行ってもよく、1種以上を組み合わせて行ってもよい。特に限定することを意図するものではないが、分離精製法としてクロマトグラフィーの1種以上を組み合わせて行う場合を例示すると、クロマトグラフィーで得られた各画分のDPPIV活性阻害率を確認し、阻害率の高い活性画分を回収し、これを次のクロマトグラフィーに供すること等を行ってもよい。例えば、加水分解物を、逆相クロマトグラフィーに供し、逆相クロマトグラフィーで得られた各画分のDPPIV阻害活性を確認し、DPPIV活性阻害率の高い活性画分を回収する。次いで、回収した活性画分を、ゲルろ過クロマトグラフィーに供し、得られた各画分のDPPIV活性阻害率を確認し、DPPIV活性阻害率の高い活性画分を回収する。次いで、回収した活性画分を、親水性相互作用クロマトグラフィーに供し、得られた各画分のDPPIV活性阻害率を確認し、DPPIV活性阻害率が高い活性画分を回収すること等も可能である。
【0032】
クロマトグラフィーに用いる分離カラムや装置は、当業者が適宜公知のものを用いてもよい。特に限定することを意図するものではないが、分離カラムとしては、例えば、シリカゲル、ポリマー、カーボン、ガラス、チタニア等を充填剤とするカラムや、これら充填剤にアルキル基等を付与したカラム等が挙げられる。
【0033】
逆相クロマトグラフィーの移動相に用いられる溶媒としては、緩衝液やアルコール系有機溶媒等が挙げられる。移動相に用いられる緩衝液としては、特に限定されないが、例えば、重炭酸アンモニウム緩衝液(例えば、150mM)、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ギ酸緩衝液、炭酸緩衝液等が挙げられる。移動相に用いられるアルコール系有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトニトリル、メタノール、アセトニトリルとメタノールの混合液(例えば、10~50%アルコール濃度)等が挙げられる。用いられる分離カラムとしては、特に限定されないが、例えば、オクタデシルシリル化シリカゲル充填剤を充填した分離カラム(ODSカラム、C18カラム等)等が挙げられる。
【0034】
ゲルろ過クロマトグラフィーの移動相に用いられる水溶液としては、特に限定されないが、例えば、重炭酸アンモニウム緩衝液(例えば、150mM)や、アセトニトリル、メタノール、クロロホルム、アセトニトリルとメタノールの混合液等が挙げられる。用いられる分離カラムとしては、特に限定されないが、例えば、アガロース充填剤を充填した分離カラム(Sperdexシリーズ)等が挙げられる。
【0035】
親水性相互作用クロマトグラフィーの移動相に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア水溶液(例えば、0.01%)やアセトニトリル等が挙げられるが、逆相クロマトグラフィーにおいて用いられ得る溶媒を用いてもよい。用いられる分離カラムとしては、特に限定されないが、例えば、オクタデシルシリル化シリカゲル充填剤を充填した分離カラム(ODSカラム、C18カラム等)等が挙げられる。
【0036】
分離精製の手法として、液体クロマトグラムと質量分析計を連携させて分析を行う液体クロマトグラフィーを行ってもよい。このような液体クロマトグラフィーの装置としては、例えば、液体クロマトグラフ四重極飛行時間型質量分析装置(LC/Q-TOF-MS)等が挙げられる。
【0037】
分離等の条件は、用いる分離カラムやクロマトグラフィー装置に応じて当業者が適宜設定してよい。例えば、当業者は、用いる分離カラムやクロマトグラフィー装置の製造会社が発行する指示書に基づいて適宜設定してよい。
【0038】
本実施形態において、加水分解物は、各種分析等によって得られる画分に由来してもよい。上述のクロマトグラフィーを含む各種分析等によって得られる画分に由来することにより、加水分解物中に目的の効果を有する成分が含まれる割合を高めることができて、好ましい。
【0039】
各種分析等によって得られる画分としては、例えば、逆相クロマトグラフィーにおいて回収される特定の画分であってもよく、ゲルろ過クロマトグラフィーにおいて回収される特定の画分であってもよい。
【0040】
逆相クロマトグラフィーにおいて回収される特定の画分としては、例えば、逆相クロマトグラフィーにおいて指定の溶媒を用いて溶出される画分であってもよい。逆相クロマトグラフィーにおいて指定の溶媒を用いて溶出される画分としては、例えば、逆相クロマトグラフィーにおいてアセトニトリルとメタノールの混合液等の10~50%アルコール溶媒を用いて溶出される画分等が挙げられる。このとき、分離カラムは、例えば、本実施形態の分離カラムを用いてもよい。
【0041】
ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量分布分析において回収される特定の画分としては、例えば、オリゴペプチド画分や、指定の溶出時間に溶出される画分であってもよい。
【0042】
本実施形態において、「オリゴペプチド画分」という場合、2~20個のアミノ酸からなるペプチド(ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド等を含む)を含む画分を意味し、ペプチド以外の成分が含まれていてもよい。オリゴペプチド画分は、2~20個のアミノ酸からなるペプチドを含む画分であってもよく、2~18個のアミノ酸からなるペプチドを含む画分であってもよく、2~16個のアミノ酸からなるペプチドを含む画分であってもよく、2~14個のアミノ酸からなるペプチドを含む画分であってもよく、2~12個のアミノ酸からなるペプチドを含む画分であってもよく、2~10個のアミノ酸からなるペプチドを含む画分であってもよく、2~8個のアミノ酸からなるペプチドを含む画分であってもよく、2~6個のアミノ酸からなるペプチドを含む画分であってもよく、2~5個のアミノ酸からなるペプチドを含む画分であってもよく、2~4個のアミノ酸からなるペプチドを含む画分であってもよく、2又は3個のアミノ酸からなるペプチドを含む画分であってもよい。
【0043】
ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量分布分析において指定の溶出時間に溶出される画分における指定の溶出時間としては、例えば、本実施形態の移動相及び分離カラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーにおける溶出時間が挙げられ、溶出時間50~60分、溶出時間54~60分、溶出時間50~56分等が挙げられる。
【0044】
上述したとおり、分析手法としてクロマトグラフィーは、1種のみを行ってもよく、1種以上を組み合わせて行ってもよい。すなわち、例えば、逆相クロマトグラフィーにおいて回収される特定の画分を、さらにゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量分布分析に供し、特定の画分を回収してもよい。
【0045】
4.DPPIV阻害活性
生体における糖代謝のメカニズムとして、血液中のグルコース濃度(血糖値)の調節機能がある。食事を摂取すると、炭水化物・タンパク質・脂肪は、各分解酵素等による消化工程を経て、ブドウ糖(グルコース)・ペプチドやアミノ酸・脂肪酸に変換され、消化管(腸管)で吸収される。腸管で吸収されたグルコースは、血中に放出され、一時的に血液中のグルコース濃度を上昇させるため、膵臓の細胞が血糖値の上昇を感知して、分泌ホルモンであるインスリンを血液中に放出し、インスリンは肝臓細胞や脂肪細胞、筋肉組織に血液中のグルコースを取り込むよう働きかけ、グルコースをグリコーゲンに変換して細胞内に貯えさせ、血糖値を低下させる。また、運動時等に血糖値が低下すると、グリコーゲンがグルコースに変換されて血液中に放出される。こうして血糖値を一定に保つ、血糖値の調節メカニズムが知られる。血糖値の調節メカニズムが正常に機能しないと、肥満や糖尿病等を含む生活習慣病を発症することが知られる。
【0046】
血糖値の調節メカニズムにおいて、腸管から血液中に分泌されるインクレチンホルモンが関与することが知られる。インクレチンホルモンは、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)及びグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)の2種類のペプチドホルモンからなる。これらのペプチドは、食事を摂取に伴い血糖値が上昇すると、膵臓の細胞に作用して、インスリンの分泌を促進する性質を有する。また、グリコーゲンをグルコースに変換して血液中に放出することによって血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑制する性質を有する。
【0047】
インクレチンホルモンは、膵臓以外にも、GLP-1は中枢神経系や胃等の消化管に作用して、食欲の抑制や消化管運動を抑制する性質があり、GIPは脂肪細胞に作用して、血液中のグルコースの取り込みを促進する性質があることが知られる。
【0048】
一方、インクレチンホルモンは、分泌後、その分解酵素であるDPPIVの作用によって速やかに分解され、活性を失うことも知られる。よって、DPPIVを阻害することにより、インクレチンホルモンの働きを円滑にすることが可能である。インクレチンホルモンの働きを円滑にすることにより、食後に上昇した血糖値を下げやすくしたり、食後の血糖値上昇をおだやかにしたり、空腹時の血糖値を下げ過ぎないようにしたりする効果が得られる。近年、インクレチンホルモンに関連した作用機序を有する糖尿病治療薬の開発がなされている。例えば、血糖値が高い場合にのみインスリン分泌効果等を発揮するGLP-1受動態作動薬であるリラグルチドやエキセナチド、DPPIV阻害薬であるビルダグリプチンやアログリプチン等が知られる。
【0049】
本実施形態において、「DPPIV阻害」という場合、DPPIVの活性を阻害することを意味する。DPPIV活性阻害率は、当業者が適宜公知の手法により調べることができる。例えば、当業者は、DPPIVの基質(例えば、Gly-Pro-MCA)を添加し、蛍光プレートリーダーを用いて蛍光波長を測定することにより、DPPIV活性阻害率を調べることができる。
【0050】
5.DPPIV阻害剤
本発明のDPPIV阻害剤は、飲食品、食品添加物、医薬品、医薬部外品、飼料等の一部として使用することができる。なかでも、特に限定することを意図するものではないが、経口組成物の形態とすることが好ましい。
【0051】
本発明のDPPIV阻害剤を配合する経口組成物の形態は、特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、ドリンク剤、カプセル剤等が挙げられる。経口組成物におけるDPPIV阻害剤の含有量は、経口組成物の形態や、共に含まれる他の成分の種類や含有量等により一律に規定されるものではないが、0.01質量%~90質量%程度、例えば、0.1質量%~70質量%程度である。
【0052】
本発明のDPPIV阻害剤を摂取する形態は、特に限定されないが、例えば、一般的な飲食による摂取や投与が挙げられる。なかでも、経口的に摂取又は投与されることが好ましい。
【0053】
本発明のDPPIV阻害剤を摂取する量の目安は、特に限定されず、当業者が適宜設定してよい。
【0054】
6.飲食品
本発明は、本発明のDPPIV阻害剤を含む、飲食品にも関する。
【0055】
本実施形態において、「飲食品」という場合、一般食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の保健機能食品、病者用食品、健康食品(栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品等といった表示が付された食品を含む)サプリメント等を含む意味で使用される。飲食品の形態は、特に限定されないが、例えば、蕎麦、うどん、即席麺等の麺類、そば粉、ケーキミックス等の粉もの類、飴、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、ゼリー等の菓子類、パン類、かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品類、加工乳、発酵乳等の乳製品、マーガリン、ドレッシング、マヨネーズ等の油脂加工食品類、茶飲料、清涼飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、そば茶等の湯抽出飲料等が挙げられる。サプリメントの形態は、特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、ドリンク剤、カプセル剤等が挙げられる。飲食品は、保存剤、防腐剤、香料、色素等の食品添加物を含んでもよい。
【0056】
本発明のDPPIV阻害剤を含む飲食品は、当業者が適宜公知の手法によって製造してよく、一般的な飲食によって摂取されてよい。
【0057】
本発明のDPPIV阻害剤を含む飲食品の具体的な用途としては、例えば、食後の血糖値の上昇をおだやかにする、糖の吸収をおだやかにする、食後に上昇した血糖値を下げやすくする、空腹時の血糖値を下げ過ぎないようにする、空腹時の血糖値を正常に近づけることをサポートする、血糖コントロールをサポートする、等が挙げられる。本発明のDPPIV阻害剤を含む飲食品は、例えば、血糖値が気になる方に適する、食後の血糖値が気になる方に適する、血糖値が高めの方に適する、糖が多い食事をとりがちな方に適する、といった表示等を付した飲食品として提供されてもよい。
【実施例0058】
1.加水分解液の調製
そば粉(そば粉(商品名)、桝田屋食品株式会社)を、秤で10.0g秤量し、0.1Mリン酸水素二ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社)及び0.1Mリン酸二水素ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社)を混合し、pH8.0に調製したもの150mLに分散させた。ここに、アルカラーゼ(アルカラーゼ2.4 L FG、ノボザイムズジャパン株式会社)500μLと、フレーバーザイム(フレーバーザイム500MG、ノボザイムズジャパン株式会社)10mgとを添加し、ホットスターラーで50℃、450rpm、17時間加熱し、酵素反応させた。得られた反応液は、遠心分離(4℃、4,000g、10分間)後、吸引ろ過(使用ろ紙:No.5A)を行った。得られたろ液は、ホットスターラーで125℃、450rpm、1時間加熱し、酵素失活させた。得られた反応液は、遠心分離(4℃、4,000g、10分間)後、吸引ろ過(使用ろ紙:No.5A)を行った。得られたろ液は、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)で200mLにメスアップし、そばに由来するタンパク質の加水分解物を含む加水分解液として得た。また、酵素ブランクとして、0.1Mリン酸緩衝液に、上記のアルカラーゼと、フレーバーザイムを添加したものを調製した。具体的には、上記と同様に0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)150mLにアルカラーゼ500μLと、フレーバーザイム10mgとを添加し、ホットスターラーで50℃、450rpm、17時間加熱し、遠心分離(4℃、4,000g、10分間)後、吸引ろ過を行った。得られたろ液は、ホットスターラーで125℃、450rpm、1時間加熱し、遠心分離(4℃、4,000g、10分間)後、吸引ろ過(使用ろ紙:No.5A)を行った。得られたろ液は、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)で200mLにメスアップし、酵素ブランクとした。
【0059】
2.加水分解液のDPPIV阻害活性測定
調製した加水分解液20μLに、50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)(Tris(富士フィルム和光純薬株式会社)を純水に溶解させ、塩酸(富士フィルム和光純薬株式会社)を用いてpHを7.5に調製したものを使用した)150μLと、0.3mM Gly-Pro-MCA(株式会社ペプチド研究所)20μLとを混合し、DPPIV(ヒト由来)(DPPIV(human),(recombinant)(製品名)、Enzo Life Science)を10μL加え、蛍光プレートリーダー(Infinite 200PRO M Nano(装置名)、テカンジャパン株式会社)(励起波長360nm、蛍光波長465nm)を用いて、37℃、45分間加温後、測定した。DPPIV阻害率は、加水分解液無添加の蛍光強度を100として、加水分解液を加えた際の蛍光強度から百分率を算出した。コントロールとして、加水分解酵素を添加していない試験液についても、同様にDPPIV阻害活性測定を行った。また、酵素ブランクについても、同様にDPPIV阻害活性測定を行った。
【0060】
結果を表1に示す。酵素ブランクのDPPIV阻害活性率は測定下限値未満であった。
【0061】
【0062】
3.オープンカラムクロマトグラフィーの各画分に由来する加水分解液のDPPIV阻害活性測定
調製した加水分解液は、COSMOSIL(登録商標)75C18-OPN(ナカライテスク株式会社)を充填したオープンカラムクロマトグラフィーへ全量通液し、純水100mLで洗浄した通過液を、F1画分として回収した。溶出液には、純水とメタノールの溶液を用いた。20%メタノールによる溶出液はF2画分として回収し、40%メタノールによる溶出液はF3画分として回収し、100%メタノールによる溶出液はF4画分として回収した。その後、F1画分は、凍結乾燥を行った。F2~F4画分は、ロータリーエバポレーター(N-1300(製品名)、東京理化器械株式会社)にてメタノールを減圧留去した後、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後のF1~F4画分は、10mg/mLになるように純水に溶解させ、F1~F4画分それぞれに由来する加水分解物を含む加水分解液を調製した。F1~F4画分それぞれに由来する加水分解液について、「2.加水分解液のDPPIV阻害活性測定」に記載の方法と同様の方法にて、DPPIV阻害活性を算出した。
【0063】
結果を表2に示す。
【0064】
【0065】
4.オープンカラムクロマトグラフィーのF3画分に由来する加水分解液のDPPIV阻害活性測定
「3.」の方法によって得られたF3画分を逆相HPLCに供した。条件は以下のとおりである。
機種:Alliance HPLC e2695(Waters)
カラム:Xselect(登録商標)Peptide CSHTM C18(4.6×150mm)
温度:40℃
流速:0.7mL/min、3.5mL/tube分画
A液:150mM重炭酸アンモニウム緩衝液
B液:アセトニトリル:メタノール=1:1
波長:215nm
【0066】
【0067】
結果を
図1に示す。保持時間15~20分の画分(R画分)で約63%と最も高いDPPIV阻害活性率を示した。
【0068】
5.逆相HPLCのR画分に由来する加水分解液のDPPIV阻害活性率測定
「4.」の方法によって得られたR画分を回収後、濃縮した。濃縮は、吹付け式試験管濃縮装置(MG-3100、東京理化器械株式会社)を用いて窒素ガスを吹き付けながら50℃で加温し有機溶媒を除去したのち、凍結乾燥によって濃縮を行った。その後、ゲルろ過HPLCに供した。条件は以下のとおりである。
機種:Alliance HPLC e2695(Waters)
カラム:Superdex(商標)30 Increase 10/300 GL(10×300mm)
温度:室温(加温無し)
流速:0.3mL/min、3.0mL/tube分画
A液:150mM重炭酸アンモニウム緩衝液
B液:アセトニトリル:メタノール=1:1
波長:215nm
A:B=80:20のアイソクラティック溶出
【0069】
結果を
図2に示す。通液時間50~60分の画分(S画分)で約49%と最も高いDPPIV阻害活性率を示した。
【0070】
DPPIV阻害活性成分として、そばが含有するフラボノイドであるルチンの関与が推察されたため、ルチン標準品(ルチン(製品名)、ナカライテスク株式会社)を上述の条件と同様の条件でゲルろ過HPLCに供し、フラボノイドを測定する波長である350nmで測定し、ルチンの溶出位置を確認したところ、ルチンはS画分とは大きく異なる通液時間(105~115分)に溶出され、本阻害活性効果は、ルチンとは異なる成分に由来することが推察された(
図2参照)。
【0071】
6.ゲルろ過HPLCのS画分に由来する加水分解液のDPPIV阻害活性率測定
S画分を数回分取し、減圧乾固を行った。減圧乾固は、吹付け式試験管濃縮装置(MG-3100、東京理化器械株式会社)を用いて窒素ガスを吹き付けながら50℃で加温し有機溶媒を除去した後、凍結乾燥によって濃縮を行った。減圧乾固させたものを0.01%アンモニア水:アセトニトリル=1:9の溶液に溶解させ、遠心分離(4℃、15,000g、5分間)を行った上澄液を親水性相互作用HPLCに供した。条件は以下のとおりである。
機種:Alliance HPLC e2695(Waters)
カラム:Inertsustain(登録商標)Amide(4.6×150mm)
温度:40℃
流速:0.8mL/min、0.8mL/tube分画
A液:0.01%アンモニア
B液:アセトニトリル
波長:215nm
【0072】
【0073】
結果を
図3に示す。保持時間7~8分の画分(H画分)で約65%と最も高いDPPIV阻害活性率を示した。
【0074】
7.親水性相互作用HPLCのH画分に由来する加水分解液の解析
H画分をAccQ・Tag(商標)にて誘導体化させ、LC-Q-TOFに供し、H画分中のペプチド配列の推定を行った。条件は以下のとおりである。
機種:Xevo G2-XS Qtof(Waters)
カラム:Poroshell 120 EC-C18(4.6×100mm)
温度:37℃
流速:0.3mL/min
A液:0.1%ギ酸
B液:0.1%ギ酸含むアセトニトリル
【0075】
【0076】
結果を
図4に示す。VPI、VPLの2種類の候補トリペプチドが推定された。
【0077】
IleとLeuは精密質量が同じであることから、VPIとVPLのそれぞれについて、VPI合成品(ユーロフィンジェノミクス株式会社に合成を委託)及びVPL合成品(Diprotin B、BioVison)を入手し、各々のIC50値を算出したところ、表6に示す結果を得た。
【0078】
【0079】
9.人工消化試験後のDPPIV阻害活性の残存率測定
VPIに0.1M塩酸を含むペプシン溶液(Pepsin 1:10000, from Porcine Stomach Mucosa、富士フィルム和光株式会社)を加え、37℃で1時間加温し、酵素反応させた(VPI:ペプシン=35:1)。得られた反応液は、0.1M塩酸と等量の水酸化ナトリウムを加えpH試験紙にてpHがおよそ7-8になることを確認することによって中和した後、0.1Mリン酸緩衝液を含むパンクレアチン溶液(パンクレアチン、富士フィルム和光株式会社)を加え、37℃で2時間加温し、酵素反応させた(VPI:パンクレアチン=25:1)。得られた反応液は、100℃で10分間加熱し、酵素失活させ、試験液として得た。試験液について、「2.加水分解液のDPPIV阻害活性測定」に記載した方法と同様の方法にて、DPPIV阻害活性を測定した。
【0080】
結果を表7に示す。
【0081】