(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042335
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】研削砥粒及びビトリファイド研削工具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240321BHJP
B24D 3/14 20060101ALI20240321BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20240321BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24D3/14
B24D3/00 320B
B24D3/00 330D
C09K3/14 550D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146987
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000116781
【氏名又は名称】旭ダイヤモンド工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595142288
【氏名又は名称】アサヒ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】小松 祐介
(72)【発明者】
【氏名】市川 寛之
(72)【発明者】
【氏名】藤本 俊一
【テーマコード(参考)】
3C063
5F057
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB05
3C063BA02
3C063BB02
3C063BC05
3C063EE10
3C063EE15
3C063FF23
3C063FF30
5F057AA14
5F057BA11
5F057BB09
5F057CA11
5F057DA11
5F057EB16
5F057EB18
(57)【要約】
【課題】炭化ケイ素の被研削材を研削する研削加工において、加工ダメージ層を薄くしつつ適切に研削する。
【解決手段】炭化ケイ素の被研削材を研削する研削砥粒4は、研削砥粒4の中央部に位置して、モース硬度が炭化ケイ素以下のコア砥粒5と、コア砥粒5を囲むようにコア砥粒5に結合された機能性結合物6と、を備える。機能性結合物6は、被研削材に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性成分である二酸化マンガンと、メカノケミカル効果を促進させる反応促進成分である炭酸カルシウムと、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素の被研削材を研削する研削砥粒であって、
前記研削砥粒の中央部に位置して、モース硬度が炭化ケイ素以下のコア砥粒と、
前記コア砥粒を囲むように前記コア砥粒に結合された機能性結合物と、を備え、
前記機能性結合物は、
前記被研削材に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性成分である二酸化マンガンと、
前記メカノケミカル効果を促進させる反応促進成分である炭酸カルシウムと、を有する、
研削砥粒。
【請求項2】
前記機能性結合物は、メカニカルアロイング処理により前記コア砥粒に結合されている、
請求項1に記載の研削砥粒。
【請求項3】
前記コア砥粒は、アルミナである、
請求項1に記載の研削砥粒。
【請求項4】
前記研削砥粒における前記コア砥粒の重量比率は、30wt%以上である、
請求項1に記載の研削砥粒。
【請求項5】
前記コア砥粒の粒径は、0.1μm以上である、
請求項1に記載の研削砥粒。
【請求項6】
前記機能性結合物は、
前記化学反応性成分を有する化学反応性粒子と、
前記反応促進成分を有する反応促進粒子と、を有する、
請求項1に記載の研削砥粒。
【請求項7】
前記化学反応性粒子の粒径及び前記反応促進粒子の粒径は、前記コア砥粒の粒径の90%以下である、
請求項6に記載の研削砥粒。
【請求項8】
一つの前記コア砥粒に結合する前記化学反応性粒子及び前記反応促進粒子の合計数は、8個以上である、
請求項6に記載の研削砥粒。
【請求項9】
前記機能性結合物は、前記コア砥粒の少なくとも一部を被覆する層状に形成されている、
請求項1に記載の研削砥粒。
【請求項10】
前記コア砥粒に対する前記機能性結合物の被覆率は、25%以上である、
請求項9に記載の研削砥粒。
【請求項11】
前記機能性結合物の層厚は、前記コア砥粒の粒径の0.1%以上である、
請求項9に記載の研削砥粒。
【請求項12】
台金と、
前記台金に接合された砥粒層と、を備え、
前記砥粒層は、
請求項1~11の何れか一項に記載の研削砥粒と、
前記研削砥粒を結合するガラス質のビトリファイドボンドと、を有する、
ビトリファイド研削工具。
【請求項13】
前記砥粒層は、100nm未満の粒径を有するダイヤモンドを更に備える、
請求項12に記載のビトリファイド研削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素の被研削材を研削する研削砥粒及びビトリファイド研削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
SiC(炭化ケイ素)ウェーハの表面加工では、カップ型ホイールを用いてSiCウェーハの表面を研削する研削加工を行い、その後、遊離砥粒を用いたCMP(化学機械研磨)によりSiCウェーハの表面を研磨する研磨加工を行う。SiCは、材料的に硬く、化学的にも安定しているため、SiCウェーハの表面加工は、Si(シリコン)ウェーハの表面加工に比べて非常に難しいとされている。このため、研削加工では、カップ型ホイールとしてダイヤモンドホイールが用いられている。また、研磨加工では、遊離砥粒として、ダイヤモンド砥粒、軟質砥粒、特許文献1に記載された複合砥粒等が用いられている。特許文献1に記載された複合砥粒は、被研磨材よりもモース硬度が低い機械的研磨材と、研磨時に発生する摩擦熱によって被研磨材を化学的に変質させる化学反応性研磨材と、研磨時に発生する摩擦熱によって化学的研磨作用を促進する反応促進剤と、がメカニカルアロイング処理により結合された砥粒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、研削加工では、被研削材よりも硬い(モース硬度が高い)砥粒を用いて被研削材を研削する。しかしながら、研削加工は強制的に切り込みを行うために、SiCよりも硬い(モース硬度が高い)ダイヤモンド砥粒を用いてSiCウェーハを研削すると、SiCウェーハの表層に加工ダメージが残る。加工ダメージが残った層を加工ダメージ層という。加工ダメージ層が厚いと、次工程である研磨加工の加工代が多くなるため、SiCウェーハの表面加工時間が長くなるという問題がある。
【0005】
そこで、研削加工により生じる加工ダメージ層を薄くするために、ダイヤモンド砥粒の粒径を小さくすることが考えられる。しかしながら、ダイヤモンド砥粒の粒径が小さすぎると、切り込みが行えずSiCウェーハの研削加工を適切に行うことができない。また、研磨加工で用いる遊離砥粒を固定砥粒砥石にしてSiCウェーハの表面を研削加工することが考えられる。しかしながら、研磨加工を行う遊離砥粒では、SiCウェーハへの切り込みが行えないため、SiCウェーハの表面の研削加工を行うことができない。
【0006】
ここで、特許文献1に記載された複合砥粒は、機械的研磨材、化学反応性研磨材、及び反応促進剤が無秩序な配置で結合されている。また、機械的研磨材、化学反応性研磨材、及び反応促進剤は、同じような粒径を有しており、機械的研磨材よりも遥かに粒径の大きい反応促進剤も含まれている。このため、特許文献1に記載された複合砥粒を固定砥粒砥石にしてSiCウェーハの表面を研削しても、研削加工としては十分な効果が得られない。
【0007】
そこで、本発明は、炭化ケイ素の被研削材を研削する研削加工において、被研削材に生じる加工ダメージ層を薄くしつつ適切に被研削材を研削することができる研削砥粒及びビトリファイド研削工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る研削砥粒は、以下の通りである。
【0009】
[1]
炭化ケイ素の被研削材を研削する研削砥粒であって、前記研削砥粒の中央部に位置して、モース硬度が炭化ケイ素以下のコア砥粒と、前記コア砥粒を囲むように前記コア砥粒に結合された機能性結合物と、を備え、前記機能性結合物は、前記被研削材に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性成分である二酸化マンガンと、前記メカノケミカル効果を促進させる反応促進成分である炭酸カルシウムと、を有する、研削砥粒。
【0010】
この研削砥粒では、炭化ケイ素の被研削材に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性成分である二酸化マンガンと、メカノケミカル効果を促進させる反応促進成分である炭酸カルシウムと、を有する機能性結合物を備えるため、被研削材に対してメカノケミカル効果を発生及び促進して炭化ケイ素の被研削材の表面を変質させることができる。しかも、コア砥粒が研削砥粒の中央部に位置し、化学反応性成分及び反応促進成分を有する機能性結合物がコア砥粒を囲むようにコア砥粒に結合されているため、化学反応性成分及び反応促進成分によるメカノケミカル効果の発生及び促進を効果的に行って、炭化ケイ素の被研削材の表面を効果的に変質させることができる。これにより、モース硬度が炭化ケイ素以下のコア砥粒により炭化ケイ素の被研削材を切り込むことができるため、炭化ケイ素の被研削材を研削する研削加工において、被研削材に生じる加工ダメージ層を薄くしつつ適切に被研削材を研削することができる。
【0011】
[2]
前記機能性結合物は、メカニカルアロイング処理により前記コア砥粒に結合されている、[1]に記載の研削砥粒。この研削砥粒では、機能性結合物がメカニカルアロイング処理によりコア砥粒に結合されていることで、大きな結合エネルギーで機能性結合物がコア砥粒に結合された状態となっているとともに、化学反応性成分及び反応促進成分の物質固有の性質を保持したまま機能性結合物がコア砥粒に結合された状態となっている。このため、研削加工において、機能性結合物がコア砥粒から脱落するのを抑制することができるとともに、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる。
【0012】
[3]
前記コア砥粒は、アルミナである、[1]又は[2]に記載の研削砥粒。この研削砥粒では、コア砥粒が、モース硬度が炭化ケイ素以下のアルミナであることで、被研削材に生じる加工ダメージ層を薄くすることができる。
【0013】
[4]
前記研削砥粒における前記コア砥粒の重量比率は、30wt%以上である、[1]~[3]の何れか一つに記載の研削砥粒。この研削砥粒では、研削砥粒におけるコア砥粒の重量比率が30wt%以上であることで、被研削材への切り込みをより適切に行うことができる。
【0014】
[5]
前記コア砥粒の粒径は、0.1μm以上である、[1]~[4]の何れか一つに記載の研削砥粒。この研削砥粒では、コア砥粒の粒径が0.1μm以上であることで、被研削材への切り込みをより適切に行うことができる。
【0015】
[6]
前記機能性結合物は、前記化学反応性成分を有する化学反応性粒子と、前記反応促進成分を有する反応促進粒子と、を有する、[1]~[5]の何れか一つに記載の研削砥粒。この研削砥粒では、機能性結合物が化学反応性粒子及び反応促進粒子を有することで、コア砥粒を囲むように機能性結合物を配置することができるとともに、機能性結合物の間からコア砥粒を露出させることもできる。これにより、メカノケミカル効果の発生及び促進を効果的に行うことができるとともに、被研削材への切り込みをより適切に行うことができる。
【0016】
[7]
前記化学反応性粒子の粒径及び前記反応促進粒子の粒径は、前記コア砥粒の粒径の90%以下である、[6]に記載の研削砥粒。この研削砥粒では、化学反応性粒子の粒径及び反応促進粒子の粒径がコア砥粒の粒径の90%以下であることで、コア砥粒が化学反応性粒子及び反応促進粒子よりも大きくなるため、被研削材への切り込みをより適切に行うことができる。
【0017】
[8]
一つの前記コア砥粒に結合する前記化学反応性粒子及び前記反応促進粒子の合計数は、8個以上である、[6]又は「7」に記載の研削砥粒。この研削砥粒では、一つのコア砥粒に結合する化学反応性粒子及び反応促進粒子の合計数が8個以上であることで、コア砥粒の化学反応性粒子及び反応促進粒子により囲まれる領域が多くなるため、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる。
【0018】
[9]
前記機能性結合物は、前記コア砥粒の少なくとも一部を被覆する層状に形成されている、[1]~[5]の何れか一つに記載の研削砥粒。この研削砥粒では、機能性結合物がコア砥粒の少なくとも一部を被覆する層状に形成されていることで、コア砥粒を囲むように機能性結合物が配置されるため、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる。
【0019】
[10]
前記コア砥粒に対する前記機能性結合物の被覆率は、25%以上である、[9]に記載の研削砥粒。この研削砥粒では、コア砥粒に対する機能性結合物の被覆率が25%以上であることで、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる。
【0020】
[11]
前記機能性結合物の層厚は、前記コア砥粒の粒径の0.1%以上である、[9]又は[10]に記載の研削砥粒。この研削砥粒では、機能性結合物の層厚がコア砥粒の粒径の0.1%以上であることで、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる。
【0021】
本発明に係るビトリファイド研削工具は、以下の通りである。
【0022】
[12]
台金と、前記台金に接合された砥粒層と、を備え、前記砥粒層は、[1]~[11]の何れか一つに記載の研削砥粒と、前記研削砥粒を結合するガラス質のビトリファイドボンドと、を有する、ビトリファイド研削工具。
【0023】
このビトリファイド研削工具では、上述した研削砥粒がビトリファイドボンドにより結合された砥粒層を備えるため、炭化ケイ素の被研削材を研削する研削加工において、被研削材に生じる加工ダメージ層を薄くしつつ適切に被研削材を研削することができる。また、研削砥粒がビトリファイドボンドにより結合されているため、研削砥粒の保持力が強く、長期にわたって炭化ケイ素の被研削材の研削を良好に行うことができる。
【0024】
[13]
前記砥粒層は、100nm未満の粒径を有するダイヤモンドを更に備える、[12]に記載のビトリファイド研削工具。このビトリファイド研削工具では、砥粒層が100nm未満の粒径を有するダイヤモンドを更に備えることで、被研削材の加工ダメージ層を薄くしつつ、被研削材への切り込みを更に良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、炭化ケイ素の被研削材を研削する研削加工において、加工ダメージ層を薄くしつつ適切に研削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本実施形態のビトリファイド研削工具を示す断面図である。
【
図2】
図2は、ビトリファイド研削工具によりSiCウェーハを研削加工している状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の研削砥粒の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の研削砥粒の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す研削砥粒の一例を示すSEM写真である。
【
図6】
図6は、
図3に示す研削砥粒の一例を示すSEM写真である。
【
図7】
図7は、
図4に示す研削砥粒の一例を示すSEM写真である。
【
図8】
図8は、研削加工したSiCウェーハの表面を示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すSiCウェーハの表面の一部を拡大した拡大平面図である。
【
図10】
図10は、粗研削加工したSiCウェーハの
図9に示す切断位置で切断した切断面を撮像したTEM写真である。
【
図11】
図11は、比較例1のビトリファイド研削工具で研削加工したSiCウェーハの
図9に示す切断位置で切断した切断面を撮像したTEM写真である。
【
図12】
図12は、実施例1のビトリファイド研削工具で研削加工したSiCウェーハの
図9に示す切断位置で切断した切断面を撮像したTEM写真である。
【
図13】
図13は、実施例2のビトリファイド研削工具で研削加工したSiCウェーハの
図9に示す切断位置で切断した切断面を撮像したTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
図1は、本実施形態のビトリファイド研削工具1を示す断面図である。
図2は、ビトリファイド研削工具1によりSiCウェーハ10を研削加工している状態を示す斜視図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態のビトリファイド研削工具1は、炭化ケイ素(SiC)の被研削材であるSiCウェーハ10を研削する研削工具である。ビトリファイド研削工具1は、特にSiCウェーハ10のC面を研削する。ビトリファイド研削工具1は、台金2と、台金2に接合された砥粒層3と、を備える。
【0029】
台金2は、ビトリファイド研削工具1をSiCウェーハ10に押し付けながら回転させることでSiCウェーハ10を研削できるように、ホイール状に形成されている。但し、台金2の形状は、ビトリファイド研削工具1をSiCウェーハ10に押し付けながら回転させることでSiCウェーハ10を研削できれば、ホイール状に限定されるものではない。
【0030】
砥粒層3は、SiCウェーハ10を研削するための層であり、台金2の一方の先端面に接合されている。砥粒層3は、複数の研削砥粒4(
図3及び
図4参照)と、複数の研削砥粒4を結合するガラス質のビトリファイドボンド(不図示)と、を有する。つまり、砥粒層3では、複数の研削砥粒4が、ガラス質のビトリファイドボンドにより結合されている。
【0031】
図3及び
図4は、本実施形態の研削砥粒4の一例を示す模式図である。
図3及び
図4に示すように、研削砥粒4は、コア砥粒5と、コア砥粒5に結合された機能性結合物6と、を備える。
【0032】
コア砥粒5は、SiCウェーハ10への切り込みを行ってSiCウェーハ10を研削する砥粒である。コア砥粒5は、研削砥粒4の中央部に位置している。つまり、コア砥粒5は、研削砥粒4のコアを成す砥粒である。研削砥粒4の中央部に位置するコア砥粒5は一つである。コア砥粒5のモース硬度は、SiC以下、つまり、SiCのモース硬度以下である。コア砥粒5は、モース硬度が9以下又は修正モース硬度が13以下の砥粒であってもよい。コア砥粒5は、例えば、Al2O3(アルミナ)である。Al2O3のモース硬度は、SiCのモース硬度以下となる9であり、Al2O3の修正モース硬度は、SiCの修正モース硬度以下となる12である。SiCの修正モース硬度は、13である。なお、ダイヤモンドのモース硬度は、SiCのモース硬度よりも高い10であり、ダイヤモンドの修正モース硬度は、SiCの修正モース硬度よりも高い15である。
【0033】
機能性結合物6は、コア砥粒5を囲むようにコア砥粒5に結合されている。コア砥粒5に対する機能性結合物6の結合は、例えば、メカニカルアロイング処理により行うことができる。
【0034】
機能性結合物6は、SiCウェーハ10に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性成分であるMnO2(二酸化マンガン)と、メカノケミカル効果を促進させる反応促進成分であるCaCO3(炭酸カルシウム)と、を有する。MnO2は、メカノケミカル効果として、研削により発生する摩擦熱により反応して、SiCウェーハ10のC面を酸化する。酸化されたSiCウェーハ10のC面は、モース硬度がSiC以下の砥粒により研削することが可能である。つまり、メカノケミカル効果とは、モース硬度がSiC以下の砥粒により研削することが可能となるように、SiCウェーハ10のC面を酸化することをいう。CaCO3は、研削により発生する摩擦熱により、MnO2によるメカノケミカル効果であるウェーハのC面の酸化を促進する。
【0035】
研削砥粒4におけるコア砥粒5の重量比率は、特に限定されるものではない。例えば、SiCウェーハ10への切り込みをより効果的に行う観点から、研削砥粒4におけるコア砥粒5の重量比率は、好ましくは30wt%以上、より好ましくは40wt%以上、更に好ましくは50wt%以上である。一方、SiCウェーハ10の表面粗さが過大となるのを抑制する観点から、研削砥粒4におけるコア砥粒5の重量比率は、好ましくは90wt%以下、より好ましくは80wt%以下、更に好ましくは75wt%以下である。これらの観点から、研削砥粒4におけるコア砥粒5の重量比率は、好ましくは30wt%以上90wt%以下、より好ましくは40wt%以上80wt%以下、更に好ましくは50wt%以上75wt%以下である。
【0036】
コア砥粒5の粒径は、特に限定されるものではない。例えば、SiCウェーハ10への切り込みをより適切に行う観点から、コア砥粒5の粒径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上である。一方、SiCウェーハ10の表面粗さが過大となるのを抑制する観点から、コア砥粒5の粒径は、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下、更に好ましくは2.0μm以下である。これらの観点から、コア砥粒5の粒径は、好ましくは0.1μm以上10.0μm以下、より好ましくは0.3μm以上5.0μm以下、更に好ましくは0.5μm以上2.0μm以下である。
【0037】
コア砥粒5の粒径は、コア砥粒5の最大粒径とすることができる。コア砥粒5の粒径は、例えば、SEM(走査電子顕微鏡)でコア砥粒5を撮像し、この撮像したSEM写真からコア砥粒5の粒径を求めることができる。研削砥粒4が複数ある場合、コア砥粒5の粒径は、複数の研削砥粒4におけるコア砥粒5の平均粒径であってもよい。この場合、コア砥粒5の平均粒径は、例えば、走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製、SU3500形)により計測することができる。
【0038】
図3に示す研削砥粒4は、機能性結合物6が、化学反応性成分のMnO
2を有する化学反応性粒子7と、反応促進成分のCaCO
3を有する反応促進粒子8と、を有する構造となっている。つまり、
図3に示す研削砥粒4では、機能性結合物6である化学反応性粒子7と反応促進粒子8とが、コア砥粒5を囲むようにコア砥粒5に接合されている。化学反応性粒子7は、MnO
2を有することで、SiCウェーハ10に対してメカノケミカル効果を生じさせることができる。反応促進粒子8は、CaCO
3を有することで、メカニカル効果を促進することができる。
【0039】
図3に示す研削砥粒4では、化学反応性粒子7の粒径及び反応促進粒子8の粒径は、特に限定されるものではない。例えば、コア砥粒5のSiCウェーハ10への切り込みをより適切に行う観点から、化学反応性粒子7の粒径及び反応促進粒子8の粒径は、好ましくはコア砥粒5の粒径の90%以下、より好ましくはコア砥粒5の粒径の75%以下、更に好ましくはコア砥粒5の粒径の50%以下である。一方、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行う観点から、化学反応性粒子7の粒径及び反応促進粒子8の粒径は、好ましくはコア砥粒5の粒径の1%以上、より好ましくはコア砥粒5の粒径の3%以上、更に好ましくはコア砥粒5の粒径の5%以上である。これらの観点から、化学反応性粒子7の粒径及び反応促進粒子8の粒径は、好ましくはコア砥粒5の粒径の1%以上90%以下、より好ましくはコア砥粒5の粒径の3%以上75%以下、更に好ましくはコア砥粒5の粒径の5%以上50%以下である。
【0040】
化学反応性粒子7の粒径及び反応促進粒子8の粒径は、化学反応性粒子7の最大粒径及び反応促進粒子8の最大粒径とすることができる。化学反応性粒子7の粒径及び反応促進粒子8の粒径は、例えば、SEM(走査電子顕微鏡)でコア砥粒5を撮像し、この撮像したSEM写真からコア砥粒5の粒径を求めることができる。研削砥粒4が複数ある場合、化学反応性粒子7の粒径及び反応促進粒子8の粒径は、複数の研削砥粒4におけるコア砥粒5の平均粒径であってもよい。この場合、コア砥粒5の平均粒径は、例えば、走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製、SU3500形)により計測することができる。
【0041】
また、
図3に示す研削砥粒4では、一つのコア砥粒5に結合する化学反応性粒子7及び反応促進粒子8の合計数は、特に限定されるものではない。例えば、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる観点から、一つのコア砥粒5に結合する化学反応性粒子7及び反応促進粒子8の合計数は、好ましくは8個以上、より好ましくは10個以上、更に好ましくは12個以上である。一方、製造容易性の観点から、一つのコア砥粒5に結合する化学反応性粒子7及び反応促進粒子8の合計数は、好ましくは100個以下、より好ましくは80個以下、更に好ましくは50個以下である。これらの観点から、一つのコア砥粒5に結合する化学反応性粒子7及び反応促進粒子8の合計数は、好ましくは8個以上100個以下、より好ましくは10個以上80個以下、更に好ましくは12個以上50個以下である。
【0042】
図4に示す研削砥粒4は、機能性結合物6が、コア砥粒5の少なくとも一部を被覆する層状に形成された構造となっている。つまり、
図4に示す研削砥粒4では、化学反応性成分のMnO
2及び反応促進成分のCaCO
3を有する機能性結合物6が、コア砥粒5の少なくとも一部を被覆する層状に形成されている。
【0043】
図4に示す研削砥粒4では、コア砥粒5に対する機能性結合物6の被覆率は、特に限定されるものではない。例えば、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行う観点から、コア砥粒5に対する機能性結合物6の被覆率は、好ましくは25%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上である。一方、製造容易性の観点から、コア砥粒5に対する機能性結合物6の被覆率は、好ましくは95%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。これらの観点から、コア砥粒5に対する機能性結合物6の被覆率は、好ましくは25%以上95%以下、より好ましくは40%以上80%以下、更に好ましくは50%以上75%以下である。なお、機能性結合物6が無い場合の被覆率は0%となり、機能性結合物6がコア砥粒5の全面を覆っている場合の被覆率は100%となる。
【0044】
また、
図4に示す研削砥粒4では、機能性結合物6の層厚は、特に限定されるものではない。例えば、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる観点から、機能性結合物6の層厚は、好ましくはコア砥粒5の粒径の0.1%以上、より好ましくはコア砥粒5の粒径の0.5%以上、更に好ましくはコア砥粒5の粒径の1.0%以上である。一方、製造容易性の観点から、機能性結合物6の層厚は、好ましくはコア砥粒5の粒径の20.0%以下、より好ましくはコア砥粒5の粒径の10.0%以下、更に好ましくはコア砥粒5の粒径の5.0%以下である。これらの観点から、機能性結合物6の層厚は、好ましくはコア砥粒5の粒径の0.1%以上20.0%以下、より好ましくはコア砥粒5の粒径の0.5%以上10.0%以下、更に好ましくはコア砥粒5の粒径の1.0%以上5.0%以下である。
【0045】
ここで、研削砥粒4の製造方法の一例について説明する。
【0046】
まず、コア砥粒5となるAl2O3の原砥粒と、MnO2の化学反応性粒子7と、CaCO3の反応促進粒子8と、を混合する。原砥粒は、コア砥粒5に比べて十分に粒径の大きいものとする。そして、この混合物に対してメカニカルアロイング処理を行う。
【0047】
メカニカルアロイング処理では、原砥粒が砕かれて小径化及び球形化することでコア砥粒5となる。球形化するとは、球形になるということではなく、大きな角が取れて全体として球形に近づいて行くことをいう。そして、複数の化学反応性粒子7及び反応促進粒子8が、コア砥粒5を覆うようにコア砥粒5に接合される。これにより、
図3に示す研削砥粒4が製造される。なお、コア砥粒5には、化学反応性粒子7及び反応促進粒子8だけでなく、砕かれて小さくなった原砥粒の欠片も接合されている。
【0048】
原砥粒の小径化及び球形化の度合いは、メカニカルアロイング処理の処理時間が長いほど大きくなる。このため、メカニカルアロイング処理の処理時間を変えることで、コア砥粒5の粒径及び形状を変えることができ、メカニカルアロイング処理の処理時間を長くすることで、コア砥粒5の粒径を小さくすることができるとともに、コア砥粒5を球形化することができる。
図5及び
図6は、
図3に示す研削砥粒4の一例を示すSEM写真である。
図6の研削砥粒4は、
図5の研削砥粒4よりも、メカニカルアロイング処理の処理時間を長くして製造されたものである。このため、
図6の研削砥粒4は、
図5の研削砥粒4よりも小径化及び球形化している。
【0049】
また、メカニカルアロイング処理では、コア砥粒5に接合された化学反応性粒子7及び反応促進粒子8は、強い力でコア砥粒5に押し付けられることで扁平する。つまり、化学反応性粒子7及び反応促進粒子8の扁平化の度合いは、メカニカルアロイング処理の処理時間が長いほど大きくなる。このため、メカニカルアロイング処理の処理時間を変えることで、化学反応性粒子7及び反応促進粒子8の扁平度合いを変えることができ、メカニカルアロイング処理の処理時間を長くすることで、化学反応性粒子7及び反応促進粒子8を、コア砥粒5の少なくとも一部を被覆する層状になるまで変形させることができる。これにより、
図4に示す研削砥粒4が製造される。
図7は、
図4に示す研削砥粒4の一例を示すSEM写真である。
図7に示す研削砥粒4では、化学反応性粒子7及び反応促進粒子8が、扁平化の進行により一体となって、コア砥粒5の全面を被覆する層状となっている。
【0050】
なお、メカニカルアロイング処理を行う混合物における、原砥粒、化学反応性粒子7、及び反応促進粒子8の粒径及び配合割合、メカニカルアロイング処理の処理時間等を変更することで、研削砥粒4におけるコア砥粒5の重量比率、コア砥粒5の粒径、コア砥粒5の粒径に対する化学反応性粒子7の粒径及び反応促進粒子8の粒径の割合、コア砥粒5に対する機能性結合物6の被覆率、コア砥粒5の粒径に対する機能性結合物6の層厚の割合等を、適宜変更することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る研削砥粒4では、SiCウェーハ10に対してメカノケミカル効果を生じさせる化学反応性成分であるMnO2と、メカノケミカル効果を促進させる反応促進成分であるCaCO3と、を有する機能性結合物6を備えるため、SiCウェーハ10に対してメカノケミカル効果を発生及び促進してSiCウェーハ10の表面を変質させることができる。しかも、コア砥粒5が研削砥粒4の中央部に位置し、化学反応性成分及び反応促進成分を有する機能性結合物6がコア砥粒5を囲むようにコア砥粒5に結合されているため、化学反応性成分及び反応促進成分によるメカノケミカル効果の発生及び促進を効果的に行って、炭化ケイ素の被研削材の表面を効果的に変質させることができる。これにより、モース硬度がSiC以下のコア砥粒5によりSiCウェーハ10を切り込むことができるため、SiCウェーハ10を研削する研削加工において、SiCウェーハ10に生じる加工ダメージ層を薄くしつつ適切にSiCウェーハ10を研削することができる。なお、SiCウェーハ10に生じる加工ダメージ層とは、加工歪み(欠陥、き裂)や結晶歪み(乱れ)などの加工変質層が残っている層であり、SiCウェーハ10に生じる加工ダメージ層が薄いとは、加工歪み(欠陥、き裂)や結晶歪み(乱れ)などの加工変質層の最大深さが浅いことをいう。
【0052】
また、この研削砥粒4では、機能性結合物6がメカニカルアロイング処理によりコア砥粒5に結合されていることで、大きな結合エネルギーで機能性結合物6がコア砥粒5に結合された状態となっているとともに、化学反応性成分及び反応促進成分の物質固有の性質を保持したまま機能性結合物6がコア砥粒5に結合された状態となっている。このため、研削加工において、機能性結合物6がコア砥粒5から脱落するのを抑制することができるとともに、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる。
【0053】
また、この研削砥粒4では、コア砥粒5が、モース硬度がSiC以下のアルミナであることで、SiCウェーハ10を研削した際に、SiCウェーハ10に生じる加工ダメージ層を薄くすることができる。
【0054】
また、この研削砥粒4では、研削砥粒4におけるコア砥粒5の重量比率が30wt%以上、40wt%以上、又は50wt%以上であることで、SiCウェーハ10への切り込みをより適切に行うことができる。一方、研削砥粒4におけるコア砥粒5の重量比率が90wt%以下、80wt%以下、又は75wt%以下であることで、SiCウェーハ10の表面粗さが過大となるのを抑制することができる。
【0055】
また、
図3に示す研削砥粒4では、コア砥粒5の粒径が0.1μm以上、0.3μm以上、又は0.5μm以上、であることで、SiCウェーハ10への切り込みをより適切に行うことができる。一方、コア砥粒5の粒径が10.0μm以下、5.0μm以下、又は2.0μm以下であることで、SiCウェーハ10の表面粗さが過大となるのを抑制することができる。
【0056】
また、
図3に示す研削砥粒4では、機能性結合物6が化学反応性粒子7及び反応促進粒子8を有することで、コア砥粒5を囲むように機能性結合物6を配置することができるとともに、機能性結合物6の間からコア砥粒5を露出させることもできる。これにより、メカノケミカル効果の発生及び促進を効果的に行うことができるとともに、SiCウェーハ10への切り込みをより適切に行うことができる。
【0057】
また、
図3に示す研削砥粒4では、化学反応性粒子7の粒径及び反応促進粒子8の粒径がコア砥粒5の粒径の90%以下、75%以下、又は50%以下であることで、コア砥粒が化学反応性粒子7及び反応促進粒子8よりも大きくなるため、コア砥粒5のSiCウェーハ10への切り込みをより適切に行わせることができる。一方、化学反応性粒子7の粒径及び反応促進粒子8の粒径がコア砥粒5の粒径の1%以上、3%以上、又は5%以上であることで、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる。
【0058】
また、
図3に示す研削砥粒4では、一つのコア砥粒5に結合する化学反応性粒子7及び反応促進粒子8の合計数が8個以上、10個以上、又は12個以上であることで、コア砥粒5の化学反応性粒子7及び反応促進粒子8により囲まれる領域が多くなるため、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる。一方、一つのコア砥粒5に結合する化学反応性粒子7及び反応促進粒子8の合計数が100個以下、80個以下、又は50個以下であることで、研削砥粒4を容易に製造することができる。
【0059】
また、
図4に示す研削砥粒4では、機能性結合物6がコア砥粒5の少なくとも一部を被覆する層状に形成されていることで、コア砥粒5を囲むように機能性結合物6が配置されるため、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる。
【0060】
また、
図4に示す研削砥粒4では、コア砥粒5に対する機能性結合物6の被覆率が25%以上、40%以上、又は50%以上であることで、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる。一方、コア砥粒5に対する機能性結合物6の被覆率が95%以下、80%以下、又は75%以下であることで、研削砥粒4を容易に製造することができる。
【0061】
また、
図4に示す研削砥粒4では、機能性結合物6の層厚がコア砥粒5の粒径の0.1%以上、0.5%以上、又は1.0%以上であることで、メカノケミカル効果の発生及び促進をより効果的に行うことができる。一方、機能性結合物6の層厚がコア砥粒5の粒径の20.0%以下、10.0%以下、又は5.0%以下であることで、研削砥粒4を容易に製造することができる。
【0062】
本実施形態に係るビトリファイド研削工具1では、上述した複数の研削砥粒4がビトリファイドボンドにより結合された砥粒層3を備えるため、SiCウェーハ10を研削する研削加工において、SiCウェーハ10に生じる加工ダメージ層を薄くしつつ適切にSiCウェーハ10を研削することができる。また、複数の研削砥粒4がビトリファイドボンドにより結合されているため、研削砥粒4の保持力が強く、長期にわたってSiCウェーハ10の研削を良好に行うことができる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態では、被研削材がSiCウェーハであるものとして説明したが、被研削材は、SiCを素材とするものであれば、ウェーハに限定されるものではない。
【0065】
また、ビトリファイド研削工具の砥粒層は、100nm未満、99nm以下、50nm以下、又は30nm以下の粒径を有するダイヤモンドを更に備えていてもよい。このビトリファイド研削工具では、砥粒層が100nm未満、99nm以下、50nm以下、又は30nm以下の粒径を有するダイヤモンドを更に備えることで、被研削材の加工ダメージ層を薄くしつつ、被研削材への切り込みを更に良好に行うことができる。
【実施例0066】
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
(比較例1)
平均粒径が0.4μmのダイヤモンド砥粒をガラス質のビトリファイドボンドにより結合した砥粒層をホイール状の台金に接合して、比較例1のビトリファイド研削工具を得た。
【0068】
(実施例1)
Al2O3の原砥粒を75wt%、MnO2の化学反応性粒子を12.5wt%、CaCO3の反応促進粒子を12.5wt%の重量割合で配合した混合物に対してメカニカルアロイング処理を行うことで、Al2O3のコア砥粒にMnO2の化学反応性粒子及びCaCO3の反応促進粒子を接合させた研削砥粒を作製した。コア砥粒の平均粒径は、1μmであった。コア砥粒の平均砥粒は、走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製、SU3500形)により計測した。そして、作製した研削砥粒をガラス質のビトリファイドボンドにより結合した砥粒層をホイール状の台金に接合して、実施例1のビトリファイド研削工具を得た。
【0069】
(実施例2)
実施例1と同じ条件で研削砥粒を作製した。そして、作製した研削砥粒に平均粒径が30nmのダイヤモンドを副砥粒として2.0wt%の重量割合で加え、これらをガラス質のビトリファイドボンドにより結合した砥粒層をホイール状の台金に接合して、実施例2のビトリファイド研削工具を得た。
【0070】
(評価)
平均粒径が6μmのダイヤモンド砥粒がガラス質のビトリファイドボンドにより結合された粗加工用のビトリファイド研削工具を用いて、SiCウェーハのC面を粗研削加工した。粗加工用のビトリファイド研削工具は、ダイヤモンド砥粒の平均粒径を除き、比較例1のビトリファイド研削工具と同じものとした。粗研削加工では、株式会社タカトリ製のGLP-150(研削機)を用い、送り速度1.0μm/secの条件で、
図2に示すように、SiCウェーハ及びビトリファイド研削工具をそれぞれ回転させることにより行った。その後、実施例1、実施例2、及び比較例1のビトリファイド研削工具を用いて、粗研削加工したSiCウェーハのC面を仕上げ研削加工した。仕上げ研削加工では、株式会社タカトリ製のGLP-150(研削機)を用い、送り速度0.1μm/secの条件で、
図2に示すように、SiCウェーハ及びビトリファイド研削工具をそれぞれ回転させることにより行った。
【0071】
粗研削加工を行ったSiCウェーハのC面及び仕上げ研削加工を行ったSiCウェーハのC面は、
図8に示すように、放射状に延びる条痕が形成される。そこで、
図9に示すように、この条痕と直交する切断位置CでSiCウェーハを切断し、切断面と直交する撮像方向Dから切断面を透過電子顕微鏡(TEM)により撮像した。粗研削加工後のTEM写真を
図10に示し、比較例1のTEM写真を
図11に示し、実施例1のTEM写真を
図12に示し、実施例2のTEM写真を
図13に示す。そして、各SiCウェーハのC面について、表面粗さSa(算術平均高さ)及び加工ダメージ層の深さを計測及び評価した。表面粗さSaの評価は、表面粗さSaが1.0nm未満の場合をA、表面粗さSaが1.0nm以上の場合をBとした。ダメージ層の深さの評価は、ダメージ層の深さが50nm未満の場合をA、ダメージ層の深さが50nm以上の場合をBとした。評価結果を
図14に示す。
【0072】
図10~
図14に示すように、表面粗さSaは、実施例1、実施例2、及び比較例1の何れも評価Aとなったが、ダメージ層の深さは、比較例1が評価Bとなったのに対し、実施例1及び実施例2が評価Aとなった。このような結果から、Al
2O
3のコア砥粒にMnO
2の化学反応性粒子及びCaCO
3の反応促進粒子が接合された研削砥粒を用いることで、SiCウェーハのC面を研削する研削加工において、SiCウェーハに生じる加工ダメージ層を薄くしつつ適切にSiCウェーハを研削することができることが分かった。