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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042337
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】トラクタの制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240321BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G08G1/16 C
A01B69/00 303J
A01B69/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146990
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 広夢
(72)【発明者】
【氏名】山下 智志
【テーマコード(参考)】
2B043
5H181
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BB01
2B043EA37
2B043EB04
2B043EB18
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE05
2B043EE06
5H181AA07
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL11
(57)【要約】
【課題】走行車線の白線を認識して車線幅や車線の曲率、自車の方位角の推定を行い、対向車を認識して、車線から逸脱の恐れがあるときに警報を鳴らす技術が公知である。しかし、作業機を付け替えて走行するトラクタにおいては作業機の幅により走行車体全体の幅が変化するため、車線内を走行するだけでは安全に走行することが困難であった。そこで、道路を安全に走行できるトラクタの制御システムを提供する。
【解決手段】前方を撮影するカメラ9と障害物15,16の相対位置を認識する障害物センサ10と制御装置を装備したトラクタ1に作業機7を装着し、制御装置は作業機7の左右幅の情報を記憶し、カメラ9の映像データを解析して道路11の幅と走行位置を取得し、作業機7が認識した障害物15,16と接触する恐れがある場合に警報を発するトラクタの制御システム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方を撮影するカメラ(9)と障害物(15,16)の相対位置を認識する障害物センサ(10)と制御装置を装備したトラクタ(1)に作業機(7)を装着し、制御装置は作業機(7)の左右幅(L)の情報を記憶し、カメラ(9)の映像データを解析して道路(11)の幅(W)と走行位置を取得し、作業機(7)が、認識した障害物(15,16)と接触する恐れがある場合に警報を発することを特徴とするトラクタの制御システム。
【請求項2】
道路(11)の幅(W)と中央線(12)を認識し、障害物(15)を中央線(12)に対して反対側に検知しているとき、作業機(7)が中央線(12)から反対側にはみ出している場合に警報を発することを特徴とする請求項1記載のトラクタの制御システム。
【請求項3】
トラクタ(1)に設けたモニタまたはディスプレイに道路(11)の中央線(12)及び路側線(13)、トラクタ(1)の位置表示、作業機(7)のはみ出し量及び障害物(15,16)の有無と障害物までの距離を表示することを特徴とする請求項1または請求項2記載のトラクタの制御システム。
【請求項4】
制御装置がカメラ(9)の映像データを画像解析して、道路(11)の中央線(12)と路側線(13)を認識して道路(11)の幅(W)を算出すると共に、トラクタ(1)の道路(11)の幅(W)内の走行位置を算出することを特徴とする請求項1記載のトラクタの制御システム。
【請求項5】
制御装置がカメラ(9)の映像データを画像解析して、道路(11)の中央線(12)と路側の畔14を認識して道路(11)の幅(W)を算出すると共に、トラクタ(1)の道路(11)の幅(W)内の走行位置を算出することを特徴とする請求項1記載のトラクタの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を安全に走行するトラクタの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行車線の白線を認識して車線幅や車線の曲率、自車の方位角の推定を行い、対向車を認識して、車線から逸脱の恐れがあるときに警報を鳴らす技術が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-085805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、作業機を付け替えて走行するトラクタにおいては作業機の幅により走行車体全体の幅が変化するため、車線内を走行するだけでは安全に走行することが困難であった。
【0005】
本発明では、道路を安全に走行できるトラクタの制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、前方を撮影するカメラ9と障害物15,16の相対位置を認識する障害物センサ10と制御装置を装備したトラクタ1に作業機7を装着し、制御装置は作業機7の左右幅Lの情報を記憶し、カメラ9の映像データを解析して道路11の幅Wと走行位置を取得し、作業機7が、認識した障害物15,16と接触する恐れがある場合に警報を発するトラクタの制御システムである。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、トラクタ1より左右幅Lが広い作業機7を装着している場合に障害物15,16と接触の危険性を低減できる。
【0008】
請求項2記載の発明は、道路11の幅Wと中央線12を認識し、障害物15を中央線12に対して反対側に検知しているとき、作業機7が中央線12から反対側にはみ出している場合に警報を発する請求項1記載のトラクタの制御システムである。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、接触の危険性を適切に認識して安全に対処できる。
【0010】
請求項3記載の発明は、トラクタ1に設けたモニタまたはディスプレイに道路11の中央線12及び路側線13、トラクタ1の位置表示、作業機7のはみ出し量及び障害物15,16の有無と障害物までの距離を表示する請求項1または請求項2記載のトラクタの制御システムである。
【0011】
請求項4記載の発明は、制御装置がカメラ9の映像データを画像解析して、道路11の中央線12と路側線13を認識して道路11の幅Wを算出すると共に、トラクタ1の道路11の幅W内の走行位置を算出する請求項1記載のトラクタの制御システムである。
【0012】
請求項5記載の発明は、制御装置がカメラ9の映像データを画像解析して、道路11の中央線12と路側の畔14を認識して道路11の幅Wを算出すると共に、トラクタ1の道路11の幅W内の走行位置を算出する請求項1記載のトラクタの制御システムである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態にかかるトラクタの制御システムの構成を示す模式図である。
図2】同上トラクタの制御システムの構成を示す模式図である。
図3】同上トラクタの制御システムにおける道路11の幅Wを算出する模式図である。
図4】同上トラクタの制御システムにおける道路11の幅Wを算出する模式図である。
図5】同上トラクタの制御システムにおける道路11の幅Wを算出する模式図である。
図6】同上トラクタの制御システムにおける道路11の幅Wを算出する模式図である。
図7】同上トラクタの制御システムにおけるモニタの表示例である。
図8】同上モニタの表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態として、一般道路を走行するトラクタの制御システムについて説明する。
【0015】
<トラクタ1>
図1に示すように、トラクタ1は、前後四輪駆動車両であって、車体の四隅部に左右前輪2L,2Rと左右後輪3L,3Rを備えている。左右前輪2L,2Rを支持する前輪軸ケースは前フレームの下側に取り付けられ、左右後輪3L,3Rを支持する後輪軸ケースはミッションケースの後部左右側面に取り付けられている。
【0016】
前フレームの中央上部にはボンネット4内にエンジンが搭載されていて、エンジンの前方にラジエータ,冷却ファン,ファンベルトなどが配設されている。
【0017】
キャビン5内には、操縦パネル、ハンドル及び座席が設けられ、ハンドルを左右に回転させると、操向アクチュエータを作動させて左右前輪2L,2Rが左右に操向される。
【0018】
車体の後部には、昇降油圧シリンダで上下回動させる昇降装置6が設けられ、該昇降装置6にロータリ耕耘作業機等のトラクタ1の車幅よりも左右幅が広い作業機7が装着されている。
【0019】
なお、作業機7は、ロータリ耕耘作業機以外に播種作業機や防除作業機や施肥作業機や苗移植作業機や草刈り機や収穫作業機や集草作業機等の様々な左右幅のものがある。
【0020】
エンジンの回転動力は、主クラッチを経由してミッションケースに入力される。ミッションケースの入り口部には前後進クラッチが設けられ、伝動を入りきりすると共に前進と後進を切り替える構成となっている。また、前後進クラッチを経た動力は、左右前輪2L,2R及び左右後輪3L,3Rを駆動する走行駆動力と外部取り出し動力のPTO駆動力の二系統に伝動分岐される。
【0021】
走行駆動力は、前後進変速部,主変速部,副変速装置からなる走行変速装置を経て後車輪軸ケースの後輪デフ装置に伝達され、左右後輪3L,3Rを駆動し、後車輪軸ケースには左右ブレーキ装置を設けている。また、走行変速装置で変速された後の動力は、2WD/4WD切換え装置を経由し、ミッションケースの前面部に取り出され、更に前輪伝動軸により前車軸ケース内の前輪デフ装置に伝動され、左右前輪2L,2Rを駆動する。
【0022】
また、PTO駆動力は、PTOクラッチとPTO変速装置を経由し、ミッションケースの背面部から後方に突出するPTO軸に取り出される。PTO軸の突出部にロータリ耕耘作業機7への伝動軸8が着脱自在に伝動連結するようになっている。
【0023】
図2に示すように、トラクタ1には、操縦パネル下方内部に制御装置が設けられ、キャビン5前上部にカメラ9及び障害物センサとしてのLiDAR10が設けられており、カメラ9の映像データ及びLiDAR10の検出情報が制御装置に入力される。
【0024】
図3に示すように、制御装置は、カメラ9の映像データを画像解析して、道路11の白線である中央線12と路側線13を認識して道路11の幅Wを算出すると共に、トラクタ1の道路11の幅W内の走行位置を算出する。
【0025】
なお、図4に示すように、制御装置は、カメラ9の映像データを画像解析して、道路11の白線である左右両路側線13,13を認識して道路11全幅を算出し、その1/2を道路11の幅Wと算出すると共に、トラクタ1の道路11の幅W内の走行位置を算出しても良い。
【0026】
また、図5に示すように、制御装置は、カメラ9の映像データを画像解析して、道路11の白線である中央線12と路側の道路11とは異なる色(緑や茶色)である畔14を認識して道路11の幅Wを算出すると共に、トラクタ1の道路11の幅W内の走行位置を算出しても良い。
【0027】
また、図6に示すように、制御装置は、カメラ9の映像データを画像解析して、道路11の左右両畦14,14を認識して道路11全幅を算出し、その1/2を道路11の幅Wと算出すると共に、トラクタ1の道路11の幅W内の走行位置を算出しても良い。
【0028】
そして、制御装置は、LiDAR10の検出情報から対向車等の路上の障害物15やガードレール等の道路外の障害物16を検出し、障害物15,16までの距離を算出する。
【0029】
そして、操縦パネルに設けたタッチパネルにて装着している作業機7の左右幅Lを運転者が実測して入力し、制御装置は該入力値を記憶する。
【0030】
なお、タッチパネルにて作業機の型式を入力すると、制御装置に登録されている型式データファイルから左右幅を自動的に決定して記憶するようにしても良い。
【0031】
また、制御装置は、操向アクチュエータを作動させて左右前輪2L,2Rを左右操向して車体を自動操向制御し、変速アクチュエータを作動させて走行変速装置を自動変速制御し、主クラッチ及び左右ブレーキ装置を主クラッチアクチュエータ及びブレーキアクチュエータにて作動させて車体を自動停止制御する。
【0032】
<トラクタの制御システム>
図1及び図2は、トラクタ1が路上走行する時のトラクタの制御システムの作用を示す模式図である。
【0033】
トラクタ1の後部には、昇降装置6にトラクタ1の車幅よりも左右幅が広い作業機7を装着している。
【0034】
運転者は、装着している作業機7の左右幅Lを実測して操縦パネルに設けたタッチパネルにて入力し、制御装置が作業機7の左右幅Lの入力値を記憶する。
【0035】
なお、制御装置が型式毎の各種数値データを保存した型式データファイルを持っている場合は、運転者はタッチパネルにて作業機の型式を入力すると、自動的に制御装置は作業機7の左右幅Lを自動的に記憶する。
【0036】
運転者は、昇降装置6にて作業機7を最上昇位置にしてトラクタ1に搭乗して道路11を走行する。
【0037】
すると、トラクタ1に装備されたカメラ9の映像データ及びLiDAR10の検出情報が制御装置に入力される。
【0038】
制御装置は、カメラ9の映像データを画像解析して、道路11の白線である中央線12と路側線13を認識して道路11の幅Wを算出すると共に、トラクタ1の道路11の幅W内の走行位置を算出し、道路11の幅Wと作業機7の左右幅Lと走行位置から作業機7が中央線12から反対車線にはみ出している長さを算出する。
【0039】
同時に、制御装置は、LiDAR10の検出情報から対向車等の路上の障害物15やガードレール等の道路外の障害物16を検出し、障害物15,16までの距離を算出すると共にトラクタ1がこのまま走行すると障害物15と接触する危険性を算出する。
【0040】
そして、図7に示すように、操縦パネルに設けたモニタまたはフロントガラスに設けたヘッドアップディスプレイに道路11の中央線12及び路側線13、トラクタ1の位置表示、作業機7のはみ出し量及び障害物15,16の有無と障害物までの距離を表示して、運転者に報知し注意を促す。
【0041】
特に、トラクタ1がこのまま走行すると障害物15,16と接触する危険性を算出し、障害物15,16と接触する恐れがあると判断した場合には、図8に示すように、操縦パネルに設けたモニタまたはフロントガラスに設けたヘッドアップディスプレイに警報表示をし、「障害物に接触の危険性あり、注意」等の音声警報を発するか警報ブザーを鳴らす。
【0042】
また、道路11の幅Wと中央線12を認識し、障害物15を中央線12に対して反対側に検知している時に、作業機7が中央線12から反対側にはみ出している場合には、操縦パネルに設けたモニタまたはフロントガラスに設けたヘッドアップディスプレイに警報表示をし、「障害物に接触の危険性あり、注意」等の音声警報を発するか警報ブザーを鳴らすと、運転者は事前に接触の危険性を適切に認識して安全に対処できる。
【0043】
なお、トラクタ1がこのまま走行すると障害物15,16と接触する危険性を算出し、障害物15,16と接触する恐れがあると判断した場合に、制御装置が操向アクチュエータを作動させて左右前輪2L,2Rを左右操向して車体を自動操向制御して、障害物15,16を回避するようにしても良い。
【0044】
その場合、制御装置は、変速アクチュエータを作動させて走行変速装置を自動変速制御して車速を低速にするか、主クラッチ及び左右ブレーキ装置を主クラッチアクチュエータ及びブレーキアクチュエータにて作動させて車体を自動停止制御して車体を停止しても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 トラクタ
7 作業機
9 カメラ
10 障害物センサ
11 道路
12 中央線
13 路側線
14 路側の畔
15 障害物(対向車等の路上の障害物)
16 障害物(ガードレール等の道路外の障害物)
L 作業機7の左右幅
W 道路11の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8