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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042342
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
H02P9/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146997
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】山本 恒三
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 允泰
(72)【発明者】
【氏名】浪越 博道
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590AB15
5H590CA14
5H590CE01
5H590CE05
5H590EA05
5H590EB13
5H590FC21
5H590HA02
5H590HA04
5H590HA27
(57)【要約】
【課題】短絡により発生するトルクだけでロータの回転を停止できないほど風速が大きい場合であってもロータの回転を低下させられる出力制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置4は、風力発電装置100の制御装置である。風力発電装置100は、ロータ2及び発電機3を有する。制御装置4は、制御器50と、電圧検出部43と、を備える。電圧検出部43は、発電機3の出力電圧を検出する。制御器50は、電流算出部45と、モード制御部10と、を有する。電流算出部は45、電圧検出部43によって検出される発電機3の出力電圧と、風速に応じて決定される発電機3の最大発電出力と、に基づいて、第1電流値を算出する。モード制御部10は、発電モード及び第1制動モードを有する。モード制御部10は、発電モードにおいて、第1電流値となるように発電機出力電流を制御する。モード制御部10は、第1制動モードにおいて、発電機出力電流値が第1電流値よりも大きくなるように指示値を出して発電機出力電流を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ及び発電機を有する風力発電装置の制御装置であって、
制御器と、
前記発電機の出力電圧を検出する電圧検出部と、
を備え、
前記制御器は、
前記電圧検出部によって検出される前記発電機の出力電圧と、風速に応じて決定される前記発電機の最大発電出力と、に基づいて、第1電流値を算出する電流算出部と、
発電モード及び第1制動モードを有するモード制御部と、を有し、
前記モード制御部は、
前記発電モードにおいて前記第1電流値となるように発電機出力電流を制御し、
前記第1制動モードにおいて前記発電機出力電流値が前記第1電流値よりも大きくなるような指示値を出して前記発電機出力電流を制御する、
制御装置。
【請求項2】
前記モード制御部は、
前記発電機を短絡させるように前記発電機出力電流の経路を制御する第2制動モードをさらに有する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記モード制御部は、前記発電機出力電流を抵抗器回路へ流すように前記発電機出力電流の経路を制御する第3制動モードをさらに有する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記モード制御部は、前記発電機が出力する発電出力の値が前記発電機の出力電圧の3乗に比例するように前記発電機出力電流の制御を行う、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御器は、最大発電出力点追従型制御により、ある風速における最大発電出力である初期値を決定する初期値決定部をさらに備える、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御装置に接続される蓄電装置をさらに備え、
前記モード制御部は、前記第1制動モードを実行して発電出力を下げて前記風力発電装置が充電を行うように前記発電機出力電流を制御する充電モードをさらに有し、
前記モード制御部は、前記蓄電装置の充電電圧の数値が閾値以上のとき、前記充電モードを実行する、
請求項1に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
強風時や、風力発電装置に異常が生じた場合、風力発電装置の強度的な安全のため、風力発電装置のロータの回転を停止させる必要がある。
【0003】
風力発電装置のロータの回転を停止させる方法として、風力発電装置の発電機の三相交流線を短絡させる方法がある。詳細には、風力発電装置の三相交流線を短絡させることで回転負荷を大きくし、ロータの回転を抑制するトルク(以下、短絡により発生するトルクを短絡トルクという)を発生させる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-199473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
風速が大きい場合、ロータの回転により発電機の回転子に入力されるトルク(以下、風車トルクという)が短絡トルクを上回ってしまう場合がある。この場合、風車トルクよりも大きな短絡トルクを得るために大型の発電機を準備する等の特別な手段が必要となるという問題がある。しかし、この手段では、通常の発電時においては大型の発電機は不要であり、短絡時だけの仕様となるため、通常の発電時に無駄となる。したがって、このような大型の発電機を短絡ブレーキのためだけに用いることは現実的に好ましいことではない。
【0006】
本発明の課題は、短絡により発生するトルクだけでロータの回転を停止できないほど風速が大きい場合であってもロータの回転を低下させられる風力発電装置の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る制御装置は、風力発電装置の制御装置である。風力発電装置は、ロータ及び発電機を有する。制御装置は、制御器と、電圧検出部と、を備える。電圧検出部は、発電機の出力電圧を検出する。制御器は、電流算出部と、モード制御部と、を有する。電流算出部は、電圧検出部によって検出される発電機の出力電圧と、風速に応じて決定される発電機の最大発電出力と、に基づいて、第1電流値を算出する。モード制御部は、発電モード及び第1制動モードを有する。モード制御部は、発電モードにおいて、第1電流値となるように発電機出力電流を制御する。モード制御部は、第1制動モードにおいて、発電機出力電流値が第1電流値よりも大きくなるように指示値を出して発電機出力電流を制御する。
【0008】
発電機の出力電圧は、風力発電装置のロータの回転速度に比例する。第1制動モードでは、モード制御部は、指示値が発電中の第1電流値よりも大きくなるように発電機出力電流を制御する。発電機出力電流が大きくなると、発電機の回転速度と発電出力が低下する。したがって、短絡トルクだけでロータの回転を停止できないほど風速が大きい場合であってもロータの回転を低下させることができる。
【0009】
(2)(1)に記載の制御装置であって、モード制御部は、第2制動モードをさらに有する。第2制動モードは、発電機を短絡させるように発電機出力電流の経路を制御する。
【0010】
(3)(1)又は(2)に記載の制御装置であって、モード制御部は、第3制動モードをさらに有する。第3制動モードは、発電機出力電流を抵抗器回路へ流すように発電機出力電流の経路を制御する。
【0011】
(4)(1)~(3)のいずれか1つに記載の制御装置であって、モード制御部は、発電機が出力する発電出力の値が発電機の出力電圧の3乗に比例するように発電機出力電流の制御を行う。
【0012】
(5)(4)に記載の制御装置であって、制御器は、初期値決定部をさらに備える。初期値決定部は、最大発電出力点追従型制御により、ある風速における最大発電出力である初期値を決定する。
【0013】
(6)(1)~(5)のいずれか1つに記載の制御装置であって、制御装置に接続される蓄電装置をさらに備える。モード制御部は、充電モードをさらに備える。充電モードは、第1制動モードを実行して発電出力を下げて風力発電装置が充電を行うように発電機出力電流を制御する。モード制御部は、蓄電装置の充電電圧の数値が閾値以上のとき、充電モードを実行する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、短絡により発生するトルクだけでロータの回転を停止できないほど風速が大きい場合であってもロータの回転を低下させられる風力発電装置の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る制御装置を備えた風力発電装置の概略構成を示すブロック図。
図2】本発明の一実施形態に係る制御装置の概略構成を示すブロック図。
図3】風車トルクと短絡トルクとの関係を示す図。
図4】最大発電出力を説明するためのロータの回転速度と発電出力との関係を示す図。
図5】充電中のフローを示すブロック図。
図6】第1制動モードを説明するためのロータの回転速度と発電出力との関係を示す図。
図7】充電時の充電電流と充電電圧との関係を示す図。
図8】発電モード、及び、制動モードを説明するためのフローチャート。
図9】充電モード、及び、制動モードを説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係る風力発電装置100の制御装置4について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
[全体構成]
図1及び図2に示すように、風力発電装置100は、ロータ2と、発電機3と、制御装置4と、蓄電装置48と、を有している。
【0018】
[ロータ]
ロータ2は、風のエネルギーを回転エネルギーに変換する。ロータ2は、複数のブレード21と、回転軸部材22と、ハブ23と、を有する。ブレード21は、回転軸部材22の回りに径方向に延びる。ハブ23は、ロータ2の回転中心でブレード21を結合する。ハブ23は、回転軸部材22へ回転力を伝達する。回転軸部材22は、ハブ23を支持する。回転軸部材22は発電機3の回転子に結合され、回転子を回転駆動する。なお、回転軸部材22と回転子との間には増速機(図示せず)が接続されていてもよい。増速機は、ギヤなどで構成され、ロータ2の回転速度を発電機3に適した回転速度に増速する。
【0019】
[発電機]
発電機3は、ロータ2のブレード21で受けた風を利用して発電するように構成されている。つまり、発電機3は、ロータ2の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。発電機3は、回転軸部材22に連結されている。
【0020】
発電機3としては、誘導発電機、永久磁石型発電機、同期発電機、二次励磁型発電機などが利用される。発電機3の回転子の周囲には円筒形状の固定子が配置されている。回転子が回転されると、固定子の三相巻線(電機子巻線)に三相交流電力が誘起され、この発電出力が制御装置4へ供給される。すなわち、ブレード21の回転エネルギーは、発電機3で電気エネルギーに変換された後、制御装置4へ供給される。なお、発電出力とは、発電機3から出力される電力である。
【0021】
[制御装置]
図2に示すように、制御装置4は、回転速度検出部41と、整流回路42と、電圧検出部43と、短絡回路46と、抵抗器回路47と、変換回路49と、制御器50と、を有する。
【0022】
<回転速度検出部>
回転速度検出部41は、ロータ2の回転速度を検出する。回転速度検出部41は、ロータ2の回転速度を検出し、その検出値を示す信号を初期値決定部44と、モード制御部10と、に出力する。回転速度検出部41としては、たとえば、発電機3の出力電圧の波形(3相交流)の周波数、ロータリーエンコーダ、電磁ピックアップ、磁界センサ、および光センサなどを採用することができる。なお、ロータ2の回転速度は、風速に比例する。
【0023】
<整流回路>
整流回路42は、発電機3の三相電力線に連結されている。整流回路42は、ブリッジ回路と、コンデンサと、を有する。ブリッジ回路は、6つのダイオードを有する。ダイオードは、発電機3の3つの出力端子に接続されている。コンデンサは、ブリッジ回路の出力側において、ブリッジ回路に並列に接続されている。
【0024】
発電機3の出力端子から出力された三相交流電圧は、ブリッジ回路により整流され、コンデンサにより平滑化されて出力される。つまり、整流回路42において、直流電圧が生成される。
【0025】
<電圧検出部>
電圧検出部43は、発電機3の出力電圧を検出する。発電機3の出力電圧(以下、発電機出力電圧という)とは、発電機3から出力される電圧をいう。詳細には、発電機出力電圧は、整流回路42通過後のDC電圧である。電圧検出部43は、検出した発電機出力電圧を電流算出部45と、モード制御部10と、に出力する。なお、発電機出力電圧は、風速、及び、ロータ2の回転速度に比例する。
【0026】
<短絡回路>
短絡回路46は、発電機3の3つの出力端子を短絡させる。短絡回路46により出力端子が短絡されると、発電機3の回転を妨げる短絡トルクが発生する。短絡回路46は、三相電力線に設けられた短絡用スイッチにより構成される。短絡用スイッチは半導体スイッチで構成されていても良い。半導体スイッチとしては、例えばトライアックやトランジスタが使用できる。
【0027】
短絡用スイッチは、開閉接点を有するスイッチである機械的スイッチで構成されていてもよい。機械的スイッチとしてはリレーまたは電磁接触器等が使用できる。
【0028】
三相交流線の各相を短絡することにより、短絡電流が発電機3に流れる。これにより、発電機3に短絡トルクが発生し、ロータ2の回転が制動される。詳細には、短絡回路46が、発電機3の3つの出力端子を短絡させる。短絡回路46により出力端子が短絡されると、発電機3に短絡トルクが発生し、発電機3の回転が妨げられる。これにより、ロータ2の回転を停止させることができる。
【0029】
図3に示すように、短絡トルクは、ロータ2の回転速度が高くなるにつれて、ゆるやかに上昇し、ある点で最大となり、やがてゆるやかに減少する。一方、ロータ2の回転により発電機3の回転子に入力される風車トルクは、ロータ2の回転速度が高くなるにつれて上昇し続ける。そのため、ロータ2の回転速度が低いときには短絡トルクが風車トルクを上回っているため、短絡トルクを用いてロータ2の回転を停止させることができる。
【0030】
<抵抗器回路>
抵抗器回路47は、発電機出力電圧に並列に配置した抵抗器にモード制御部10の指令で、必要な割合で、発電出力を消費する。これにより、ロータ2の回転速度が低下する。抵抗器は、メタルクラッド巻線抵抗やホーロー抵抗である。
【0031】
<蓄電装置>
蓄電装置48は、変換回路49、及び、整流回路42を介して発電機3に接続される。蓄電装置48は、発電機3からの電気を充電し、また、外部へ電気を供給する。蓄電装置48は、バッテリーである。
【0032】
<変換回路>
変換回路49は、モード制御部10からの指令に従い、整流回路42から出力された発電機出力電圧の大きさを変化させて出力する。変換回路49の電流を大きくすると、変換回路49に整流回路42を介して接続された発電機3の電流も大きくなり、発電機3の回転を妨げる制動トルクが発生する。発電機3に流れる電流が大きくなるほど、発電機3に発生する制動トルクは大きくなる。
【0033】
変換回路49は、DC/DCコンバータである。変換回路49は、変換した充電電圧で、蓄電装置48に出力する。
【0034】
<制御器>
制御器50は、CPU(Central Processing Unit)、作業領域となるRAM(Random Access Memory)、不揮発性記憶部などで構成される。制御器50は、初期値決定部44と、電流算出部45と、及びモード制御部10と、を有する。
【0035】
<初期値決定部>
初期値決定部44は、最大発電出力点追従型制御により、ある風速における最大発電出力を決定する。初期値を決定した後、マップ作成部がロータ2の回転速度と最大発電出力との関係を示すマップを作成してもよい。以下に詳細を記載する。
【0036】
まず、そのときの風速における最大の発電出力を知る必要がある。図4に示すように、風速が一定のとき、ロータ2の回転速度を変化させると、発電出力は曲線Aのように変化する。曲線Aは、風速が8m/sの場合の発電出力の変化を示す。すなわち、ロータ2の回転速度が高くなるにつれて、発電出力はゆるやかに上昇し、点M1で最大となり、やがてゆるやかに減少する。つまり、点M1は、最大発電出力点である。発電機3からできるだけ大きな発電出力を得るためには、この風速の場合、点M1で発電出力を得る必要がある。
【0037】
曲線Bは、風速が13m/sの場合の発電出力の変化を示す。風速が13m/sの場合も、発電出力は風速が8m/sの場合と同様に変化する。曲線Bでは、点M2が最大発電出力点である。
【0038】
曲線Xは、風速が異なった場合の最大発電出力点の軌跡を示す最大発電出力線である。風力発電装置100へ入力される風の風速は絶えず変化するものであるが、その風速の変化に対応しつつ最大発電出力を発電し続けるためには、風力発電装置100からの発電出力を、常に最大発電出力線Xに乗って動くように制御する必要がある。最大発電出力線Xは、ある風速における最大発電出力を示す曲線である。
【0039】
ここで、最大発電出力線Xは、(係数α)×(風速)3の式で表すことができる。なお、風速は、ロータ回転速度,発電機出力電圧に比例する。上記式はつまり、発電出力の理論最大値は、風速の3乗に比例することを意味する。そのため、最大発電出力線X上の一点が決まれば、最大発電出力線Xのマップを得ることができる。そこで、初期値決定部44は、係数αの初期値を決定する。決定方法として、変換回路49への電流指示値をダイヤル入力できるようにして、ある風速の時に最大発電出力点になるようにダイヤル値を調整する方法で初期値入力する、または、プログラムに初期値を記述しても良い。これらの場合は風力発電機の種類が変わる度に初期値を変更する必要がある。そこで最大発電出力点追従型制御(MPPT制御:Maximum Power Point Tracking制御)により、ある風速における最大発電出力点を決定し、係数αの初期値入力とすることができる。
【0040】
最大発電出力点追従型制御は、一般的な山登り法で行う。制御開始時点で発電出力W0及び発電機出力電流I0であったとすると、発電機出力電流IをΔIだけ変化させて発電出力Wを求める。W>W0の場合、ΔIの符号は変更せずに、発電機出力電流IをさらにΔIだけ変化させて発電出力Wを求める。W<W0の場合、ΔIの符号を反転し、発電機出力電流IをΔIだけ変化させて発電出力Wを求める。これらを繰り返すことで、最大電力が得られる発電機出力電流を探索することができる。このようにして、ある風速における最大発電出力点決定し、係数αの初期値を入力する。なお、発電機出力電流とは、発電機3から出力される電流をいう。
【0041】
決定した係数αの初期値に基づいて、マップ作成部は、ロータ2の回転速度と最大発電出力との関係を示すマップを作成する。つまり、マップ作成部は、最大発電出力線Xを作成する。
【0042】
<電流算出部>
電流算出部45は、電圧検出部43によって検出される発電機出力電圧と、風速に応じて決定される発電機3の最大発電出力と、に基づいて、第1電流値を算出する。
【0043】
詳細には、風力発電装置100に風が入力されると、ロータ2が回転し、発電機3が回転して交流電圧を生成する。整流回路42においてこの交流電圧が直流電圧に変換されるため、風速に比例して、ロータ2の回転速度及び発電機出力電圧が決まる。この発電機出力電圧を電圧検出部43が検出する。
【0044】
電流算出部45は、電圧検出部43で検出された発電機出力電圧(風速及びロータ2の回転速度に比例)と、マップ作成部で作成したマップに基づいて、その風速における最大発電出力を決定する。電流算出部45は、決定した最大発電出力と、発電機出力電圧と、に基づいて、その最大発電出力を得るための第1電流値を算出する。
【0045】
<モード制御部>
モード制御部10は、発電機3の発電機出力電流を制御する。発電機3の発電機出力電流とは、発電機3から出力される電流である。詳細には、発電機出力電流とは、発電機3から出力され、整流回路42を通った後の電流である。
【0046】
モード制御部10は、変換回路49、短絡回路46、及び/又は、抵抗器回路47に指令を出すことにより発電機出力電流を制御する。モード制御部10は、発電モードと、第1制動モードと、第2制動モードと、第3制動モードと、第1充電モードと、第2充電モードと、を有する。
【0047】
風力発電装置100において通常の発電を行っているとき、モード制御部10は、そのときの風速における最大効率で発電機3が発電できるように、風速に応じて最適な発電機出力電流となるように発電機出力電流を制御する。通常の発電中、モード制御部10は発電モードを実行する。発電モードでは、発電機出力電圧に基づいて、発電機3が出力する発電出力の値が発電機出力電圧の3乗に比例するように発電機出力電流の制御を行う。以下に詳細を記載する。
【0048】
通常の発電中、風力発電装置100は発電モードを実行する。発電モードでは、モード制御部10は、第1電流値となるように発電機出力電流を制御する。
【0049】
図5に示すように、モード制御部10は、電流算出部45で算出した第1電流値となるように発電機出力電流を制御する。詳細には、モード制御部10は、発電機出力電流が電流算出部45で算出した第1電流値となるように変換回路49に指令を出す。変換回路49は、モード制御部10からの指令に従い、発電機出力電流の大きさを変化させて出力する。
【0050】
以上のようにして、風力発電装置100は、通常発電する。
【0051】
風力発電装置100において何らかの異常が検出された場合、モード制御部10は、第1制動モード、第2制動モード、及び/又は第3制動モードを実行して、ロータ2の回転速度を低下、又は、停止させる。異常とは、ロータ2の回転速度が過大、発電出力が過出力、発電機出力電圧が過電圧、充電電圧(変換回路49からの発電機出力電圧)が過電圧や過少電圧、等である。例として回転速度が過大の場合で示す。より具体的には、異常とは、ロータ2の回転速度が第1閾値を超えた場合を意味する。
【0052】
ロータ2の回転速度が第1閾値以上のときは、モード制御部10は、第1制動モードを実行して、ロータ2の回転速度を低下させる。詳細には、まず、回転速度検出部41がロータ2の回転速度を検知する。モード制御部10は、回転速度検出部41で検出されたロータ2の回転速度が第1閾値以上のときは第1制動モードを実行する。
【0053】
図6に示すように、通常の発電時は、ある風速における最大発電出力点M3となるように、モード制御部10は発電機出力電流を制御している。一方、第1制御モードでは、モード制御部10は、発電機出力電流値が第1電流値よりも大きくなるように指示値を出して、発電機出力電流を制御する。指示値とは、モード制御部10が変換回路49に対して指示する電流値である。詳細には、モード制御部10は、変換回路49に対して、第1電流値よりも大きい指示値を出して、発電機出力電流値が第1電流値よりも大きくなるような発電出力電流を流すよう指令を出す。変換回路49の電流が大きくなると、変換回路49に整流回路42を介して接続された発電機3の電流も大きくなり、発電機3の回転を妨げる制動トルクが発生する。すると、発電出力は、最大発電出力点M3よりも低い発電出力点P0にまで下がる。同時にロータ2の回転速度も低下する。変換回路49に流れる電流が大きくなり、発電機3に流れる電流が大きくなるほど、発電機3に発生する制動トルクは大きくなる。
【0054】
第1制御モードを行った後に、ロータ2の回転速度が第2閾値以上となった場合は、モード制御部10は、第3制動モードを実行し、ロータ2回転速度、発電出力を低下させてから、第2制動モードを実行する。第3制動モード無しに第2制動モードを実行する場合もある。第2制動モードでは、モード制御部10は、発電機3を短絡させるように発電機出力電流の経路を制御する。モード制御部10は、短絡回路46の三相交流線の出力端子間を短絡させるよう指令を出す。三相交流線の各相を短絡することにより、短絡電流が発電機3に流れる。これにより、発電機3に短絡トルクが発生し、ロータ2の回転が制動される。ロータ2の回転速度が第1閾値未満となった場合は、元の発電モードに戻す。
【0055】
また、ロータ2の回転を低下させる方法として、抵抗器回路47の抵抗器を用いる方法もある。抵抗器回路47を用いて回転を低下させる方法が第3制動モードである。風車トルクが短絡トルクを上回っている場合、抵抗器回路47を用いてロータ2の回転を低下させることも考えられる。しかしながら、ロータ2の回転速度が大きくなるほど、ロータ2の回転速度を低下させるためには、大きな抵抗器が必要となる。
【0056】
本実施形態においては、第1制動モードを行った後、モード制御部10は、第1制動モードを実行後のロータ2の回転速度が第2閾値以上であるかを判断する。第2閾値は第1閾値よりも高い。ロータ2の回転速度が第2閾値よりも高いときは、モード制御部10は、第3制動モードを実行する。第3制動モードでは、モード制御部10は、発電機出力電流を抵抗器へ流すように発電機出力電流の経路を制御してロータの回転速度と発電出力を低下させる。その後にモード制御部10は、短絡回路46の三相交流線の出力端子間を短絡させるよう指令を出す。三相交流線の各相を短絡することにより、発電機3に短絡トルクが発生し、ロータ2の回転が制動される。
【0057】
次に、蓄電装置48の充電時について説明する。図7に示すように、蓄電装置48が満充電に近い状態、つまり、蓄電装置48の充電電圧が第3閾値となるまでは、モード制御部10は、第1充電モードを実行する。モード制御部10は、第1充電モードでは、上記の発電モードと同様の電流制御を行う。すなわち、第1充電モードでは、発電機3は、発電出力が発電機出力電圧の3乗に比例するように蓄電装置48を充電する。
【0058】
蓄電装置48の充電電圧が第3閾値以上のとき、モード制御部10は、第2充電モードを実行する。第2充電モードでは、モード制御部10は、第1制動モードを実行して発電出力を下げて風力発電装置100が充電を行うように発電機出力電流を制御する。その結果、蓄電装置48に入力される充電電流が低下する。また、充電電圧が第4の閾値以上のとき、前出の第3制動モード、第2制動モードを実行し回転低下及び、短絡停止させる。
【0059】
<制御方法>
制御装置4のモード制御部10による制御方法について図8及び図9を用いて説明する。
【0060】
図8に示すように、モード制御部10は、異常指令の有無を検出する。異常指令については、例えば、モード制御部10は、ロータ2の回転速度を参照して、ロータ2の回転速度が第1閾値以上であるかどうかを判断する。そのほかの異常指令は、発電出力が過出力、発電機出力電圧が過電圧、充電電圧が過電圧や過少電圧、等である。
【0061】
異常指令が検出されない場合、モード制御部10は、発電モードを実行する。
【0062】
モード制御部10は、ロータ2の回転速度が第1閾値以上かどうかで異常指令と判断する。ロータ2の回転速度が第1閾値以上ではない場合、モード制御部10は、発電モードを実行する。
【0063】
ロータ2の回転速度が第1閾値以上である場合、モード制御部10は、第1制動モードを実行する。第1制動モードでは、段階的に発電機出力電流の指示値を増加させていく。モード制御部10は、発電機出力電流を増加させるごとにロータ2の回転速度が第1閾値以上かどうかを判断し、ロータ2の回転速度が第1閾値以上であれば、継続して発電機出力電流の指示値を増加させていく。ロータ2の回転速度が第2閾値以上の場合、モード制御部10は、第3制動モードを実行する。これにより、制御装置4は、ロータ2の回転速度、発電出力を更に低下させることができる。第3制動モード実行後、第2制動モードを実行し短絡停止させる。この後、ある時間経過後に、短絡停止を解除し風力発電装置100を再起動させる。第3制動モードを省略する場合もある。また、第1制動モード実行後にロータ2の回転速度が第1閾値未満であるときは、モード制御部10は、第1制動モードを実施せず発電モードに戻す。
【0064】
以上に説明した実施の形態によると、風車トルクが短絡トルクより上回るような風速が大きい場合であっても、大きな短絡トルクを得るための特別な対策を講じなくても、制御装置4は、ロータ2の回転を低下させることができる。
【0065】
第1制動モードを実行して、ロータ2の回転速度が第2閾値以上である場合、モード制御部10は、第3制動モードを実行する。この場合、制御装置4は、ロータ2の回転速度を十分に低下させてから、抵抗器回路47を用いた制動を行うため、小さな抵抗器を用いることができる。
【0066】
次に、風力発電装置100から蓄電装置48に充電する場合について説明する。
【0067】
図9に示すように、モード制御部10は、蓄電装置48の充電電圧が第3閾値以上かどうかを判断する。蓄電装置48の充電電圧が第3閾値以上である場合、モード制御部10は、第2充電モードを実行する。また、第3閾値未満となった場合は、第1充電モードを実行する。第1充電モードでは、上記の発電モードを実行する。また第2充電モードでは、段階的に発電機出力電流の指示値を増加させていく。また、第2充電モード実行後に、第4閾値以上となった場合は、第3制動モードで、ロータ2回転速度を低下、発電出力を低下させる。その後、第2制動モードで短絡停止させる。ある時間経過後に、短絡停止を解除し風力発電装置100を再起動させる。第3制動モードは省略する場合もある。
【0068】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0069】
変形例1
上記実施形態では、発電機3を用いたが、単相交流発電機や三相以外の多相交流発電機を用いてもよい。
【0070】
変形例2
上記実施形態では、制動手段として短絡回路46、及び、抵抗器回路47を用いたが、これに限定されない。例えば、制動手段として発電機3の回転速度を低下させる機械的なブレーキなどを設けてもよい。
【0071】
変形例3
制動手段は、上記実施形態及び上記変形例2に限定されない。例えば、制動装置は、ブレード21のピッチ角、ナセルの方向などを制御してロータ2の回転速度を低下させる手段であってもよい。
【0072】
変形例4
上記実施形態では、発電機3は、いわゆる水平軸風車であったが、発電機3の構成はこれに限定されず、垂直軸風車であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
2 ロータ
3 発電機
4 制御装置
10 モード制御部
41 回転速度検出部
42 整流回路
43 電圧検出部
44 初期値決定部
45 電流算出部
46 短絡回路
47 抵抗器回路
48 蓄電装置
49 変換回路
50 制御器
100 風力発電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9