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特開2024-42347オイルシール保護キャップ及びオイルシール保護構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042347
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】オイルシール保護キャップ及びオイルシール保護構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/00 20060101AFI20240321BHJP
   B60K 17/30 20060101ALI20240321BHJP
   B25B 27/06 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F16J15/00 Z
B60K17/30 C
B25B27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147008
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭織
【テーマコード(参考)】
3C031
3D043
【Fターム(参考)】
3C031DD08
3D043CC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オイルシールの保護及び作業性を向上可能なオイルシール保護キャップを提供する。
【解決手段】オイルシール保護キャップは、ドライブシャフト挿入口310を閉塞する蓋部110、蓋部110の径方向外側に設けられ、縁部320と当接する外周部及び外周部から径方向外側に向けて延びる把持部130を備え、蓋部110及び外周部は、切欠部を有する。把持部130は、外周部からドライブシャフト400の挿入方向上流側に向けて立ち上がるようにオフセット形成された立ち上がり部132、立ち上がり部132から径方向外側に延びる延在部133、及び延在部133における先端からユニットケース200に向けて延びる係合部134を備え、ドライブシャフト挿入口310を蓋部110によって閉塞した状態において、係合部134が、ユニットケース200と当接により係合できる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニットケースに取り付けられたオイルシールのドライブシャフト挿入口に対してドライブシャフトが挿入される際に、前記オイルシールを保護するオイルシール保護キャップであって、
前記オイルシールの前記ドライブシャフト挿入口を閉塞する蓋部と、
前記蓋部の径方向外側に設けられ、前記オイルシールにおける前記ドライブシャフトの挿入方向上流側の縁部と当接する外周部と、
前記外周部から径方向外側に向かって延びるように形成された把持部と、を備え、
前記蓋部及び前記外周部には、前記蓋部の中心から径方向外側に向かって切り欠かれた切欠部が形成されており、
前記把持部は、
前記外周部から前記ドライブシャフトの挿入方向上流側に向けて立ち上がるようにオフセットされて形成された立ち上がり部と、
前記立ち上がり部から径方向外側に延びるように形成された延在部と、
前記延在部における先端から前記ユニットケースに向けて延びるように形成された係合部と、を備え、
前記ドライブシャフト挿入口を前記蓋部によって閉塞した状態において、前記係合部が、前記ユニットケースに当接することにより係合可能であること、を特徴とするオイルシール保護キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルシール保護キャップを用いたオイルシール保護構造であって、
前記ユニットケースは、前記ドライブシャフト挿入口を前記蓋部によって閉塞した状態において、前記係合部を下方側から支持可能な被係合部を有すること、を特徴とするオイルシール保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルシール保護キャップ及びオイルシール保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルシール保護キャップが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、トランスミッションケースに取り付けられたオイルシールのドライブシャフト挿入口に対してドライブシャフトが挿入される際に、オイルシールを保護するオイルシール保護キャップが開示されている。上記特許文献1に開示されたオイルシール保護キャップは、挿入口を閉塞する蓋部と、挿入口の縁部に嵌合される外周部とを備えている。
【0004】
また、上記特許文献1に開示されたオイルシール保護キャップの蓋部には、中心から外周側に向かって放射状で、他の部位よりも強度の低い破断部が形成されている。これにより、ドライブシャフトがオイルシール保護キャップに挿入される際に、ドライブシャフトによって破断部が破断されて、ドライブシャフトがオイルシール保護キャップと共にトランスミッションケースに取り付けられる。
【0005】
また、上記特許文献1に開示されたオイルシール保護キャップの外周部には、径方向外側に向かって突出した把持部が設けられている。オイルシール保護キャップがオイルシールに取り付けられた状態から、把持部が径方向外側に引き抜かれることにより、オイルシール保護キャップがオイルシールから取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-156490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されたオイルシール保護キャップは、ドライブシャフトがオイルシール保護キャップを介してトランスミッションケースの挿入口に対して挿入された後に、オイルシール保護キャップを真下方向(径方向外側)に引き抜く作業を行うことにより、オイルシール保護キャップがオイルシールから取り外される。しかしながら、ドライブシャフトとオイルシールとの間の隙間が狭い場合には、ドライブシャフトによってオイルシールを傷つけてしまうことにより十分に保護できないことや、引き抜き性が悪化することにより作業性が低下するという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消すべくなされたものであって、オイルシールの保護及び作業性を向上することが可能なオイルシール保護キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、次のように構成されている。
【0010】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明のオイルシール保護キャップは、ユニットケースに取り付けられたオイルシールのドライブシャフト挿入口に対してドライブシャフトが挿入される際に、前記オイルシールを保護するオイルシール保護キャップであって、前記オイルシールの前記ドライブシャフト挿入口を閉塞する蓋部と、前記蓋部の径方向外側に設けられ、前記オイルシールにおける前記ドライブシャフトの挿入方向上流側の縁部と当接する外周部と、前記外周部から径方向外側に向かって延びるように形成された把持部と、を備え、前記蓋部及び前記外周部には、前記蓋部の中心から径方向外側に向かって切り欠かれた切欠部が形成されており、前記把持部は、前記外周部から前記ドライブシャフトの挿入方向上流側に向けて立ち上がるようにオフセットされて形成された立ち上がり部と、前記立ち上がり部から径方向外側に延びるように形成された延在部と、前記延在部における先端から前記ユニットケースに向けて延びるように形成された係合部と、を備え、前記ドライブシャフト挿入口を前記蓋部によって閉塞した状態において、前記係合部が、前記ユニットケースに当接することにより係合可能であること、を特徴とするものである。
【0011】
上述したオイルシール保護キャップは、把持部が、ドライブシャフトの挿入方向上流側に向かってオフセットされた立ち上がり部と、当該立ち上がり部から径方向外側に延びる延在部と、を有している。したがって、上述したオイルシール保護キャップは、オイルシール保護キャップの把持部とドライブシャフトとの間に十分な間隔を形成できる。これにより、上述したオイルシール保護キャップは、ドライブシャフトを挿入する際に、立ち上がり部の位置に合わせてドライブシャフトの挿入を止めることができるので、オイルシール保護キャップをドライブシャフト及びオイルシールから容易に引き抜くことができる。
【0012】
ここで、上述したようにオイルシール保護キャップは、把持部における立ち上がり部が、ドライブシャフトの挿入方向上流側に向かってオフセットされている。そのため、オイルシール保護キャップのドライブシャフト及びオイルシールからの引き抜き性は確保できるものの、ドライブシャフトの組み付け時にオイルシール保護キャップが自重で回転する懸念があった。このように、オイルシール保護キャップが自重で回転すると、例えば、把持部とユニットケースとの間隔が狭くなって、作業者が把持部を掴みにくくなり、作業性が低下する懸念があった。
【0013】
そこで、上述したオイルシール保護キャップでは、把持部に、ユニットケースに向けて延びるように形成された係合部が形成されている。また、上述したオイルシール保護キャップでは、前記係合部がユニットケースに当接することにより係合可能なものとされている。これにより、上述したオイルシール保護キャップは、把持部の自重による回転を抑制できるので、ドライブシャフトの組み付け時における作業性を向上させることができる。
【0014】
(2)上述した本発明のオイルシール保護キャップは、前記係合部が、前記延在部における先端に対して、鈍角となるように屈曲されていること、を特徴とするとよい。
【0015】
上述したオイルシール保護キャップは、かかる構成とすることにより、容易に形成することができる。ここで、係合部は、延在部における先端に対して、例えば92~98度(鈍角)に形成するとよい。このように、係合部の延在部に対する角度(抜き勾配とも称する)を鈍角に設定することにより、上述したオイルシール保護キャップは、例えば、成型時の金型からの離型性を向上させることができる。また、上述したオイルシール保護キャップは、係合部の延在部に対する角度を鈍角に設定することにより、係合部を被係合部に係合させる際の懐(作業代)を広げることができるので、ドライブシャフトの組み付け時における作業性が向上する。
【0016】
(3)上述した課題を解決すべく提供される本発明のオイルシール保護構造は、上述したオイルシール保護キャップを用いるものであり、前記ユニットケースは、前記ドライブシャフト挿入口を前記蓋部によって閉塞した状態において、前記係合部を下方側から支持可能な被係合部を有すること、を特徴とするものである。
【0017】
上述したオイルシール保護構造は、かかる構成とすることにより、ドライブシャフトをユニットケースに組み付ける際の作業者の作業性を向上させることができる。すなわち、上述したオイルシール保護構造によれば、ドライブシャフトの組み付け作業時に、作業者がオイルシール保護キャップの係合部をユニットケース側の被係合部に容易に引っ掛けることができる。そのため、作業者による作業性の向上が期待できる。
【0018】
(4)上述した本発明のオイルシール保護構造は、前記ユニットケースが、一対の前記ドライブシャフト挿入口を有すると共に、一対の前記ドライブシャフト挿入口と対応する一対の前記被係合部を有しており、一対の前記ドライブシャフト挿入口をそれぞれ一対の前記蓋部によって閉塞した状態において、一対の前記把持部が、前記ドライブシャフトの周方向に対して、同一方向で係止されるように一対の前記被係合部が配されていること、を特徴とするとよい。
【0019】
上述したオイルシール保護構造は、かかる構成とすることにより、一対のドライブシャフト挿入口を一対のオイルシール保護キャップ(蓋部)によって閉塞したときに、一対の把持部を、ドライブシャフトの周方向に対して、同一方向でそれぞれの被係合部に係止させることができる。これにより、上述したオイルシール保護構造は、左右一対のオイルシール保護キャップの構成を共通化することができるので、例えば、金型費用や管理費用等のコスト低減効果が期待できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る態様によれば、オイルシールの保護及び作業性を向上することが可能なオイルシール保護キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るオイルシール保護キャップの全体斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るオイルシール保護キャップの平面図である。
図3】(a)はオイルシール保護キャップの正面図であり、(b)は図2のA-A線に沿った断面図である。
図4】(a)は本発明のオイルシール保護キャップの一部切省略右側面図であり、(b)は図2のB-B線に沿った断面図である。
図5】ユニットケースに対するドライブシャフトの組立状態を示す一部切欠き断面図である。
図6】ユニットケース左側のドライブシャフト挿入口に本発明のオイルシール保護キャップを挿入した状態を示す一部省略斜視図である。
図7】ユニットケース右側のドライブシャフト挿入口に本発明のオイルシール保護キャップを挿入した状態を示す一部省略斜視図である。
図8】ユニットケース両側に一対のオイルシール保護キャップ及び一対のドライブシャフトを組み付けた状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るオイルシール保護キャップ100を説明する。これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付して示す。
【0023】
図1図8を参照して、オイルシール保護キャップ100の一実施形態について説明する。まず、オイルシール保護キャップ100の詳細を説明するのに先立ち、ドライブシャフト400が組み付けられるユニットケース200(図5及び図8参照)、及びオイルシール保護キャップ100で保護されるオイルシール300の構成について説明する。
【0024】
図8は、車両等に搭載されたトランスミッションケースとしてのユニットケース200を車両後方側から見た状態を表す概略断面図である。本実施形態では、ユニットケース200の左右両側にドライブシャフト400,400を挿入するための開口205,205が形成されている。
【0025】
開口205,205におけるドライブシャフト400,400の挿入方向上流側には、オイルシール取付部210,210が形成されている。オイルシール取付部210,210には、オイルシール300,300が設けられており、オイルシール300,300には、ドライブシャフト挿入口310,310が形成されている。また、詳細は後述するが、ユニットケース200は、オイルシール保護キャップ100における係合部134と係合可能な一対の被係合部202L,202Rを有している。なお、本実施形態では、一対のオイルシール保護キャップ100,100が略左右対称に設けられているので、以下の説明では、一方側のオイルシール保護キャップ100について説明する。
【0026】
図5に示すように、ユニットケース200の内部には、支持部220が設けられている。また、ドライブシャフト400の先端部440には、径方向外側に向けて突出する突起部441が形成されている。突起部441は、ドライブシャフト400の周方向に沿って形成されている。支持部220には、突起部441が回転可能に支持される。ドライブシャフト400をユニットケース200に挿入した際に、突起部441が、ユニットケース200の支持部220に回転可能に係合すると共に、ドライブシャフト400がユニットケース200に対して回転可能に支持される。
【0027】
オイルシール300は、ユニットケース200のオイルシール取付部210に取り付けられている。オイルシール取付部210は、ユニットケース200における挿入方向上流側の端部に設けられている。
【0028】
オイルシール300は、外周面330と、リップ部340とを有している。オイルシール300の外周面330が、ユニットケース200のオイルシール取付部210に取り付けられている。
【0029】
オイルシール300のリップ部340は、挿入方向上流側の端部に設けられている。オイルシール300のリップ部340は、挿入方向上流側に向かって拡径している。オイルシール保護キャップ100がオイルシール300に取り付けられた状態で、オイルシール300のリップ部340は、後述するオイルシール保護キャップ100の外周部120に当接する。
【0030】
次に、本発明のオイルシール保護キャップ100の一実施形態について説明する。
【0031】
オイルシール保護キャップ100は、トランスミッションケース等のユニットケース200に取り付けられたオイルシール300のドライブシャフト挿入口310に対してドライブシャフト400が挿入される際に、オイルシール300を保護するものである。ドライブシャフト400は、挿入方向下流側から上流側に沿って、第一軸部410と、第二軸部420と、第三軸部430とを有しており、この順に軸径が徐々に大きくなるように構成されている。なお、以下の説明では、ドライブシャフト400の挿入方向下流側を単に「挿入方向下流側」と称する場合があり、ドライブシャフト400の挿入方向上流側を単に「挿入方向上流側」と称する場合がある。
【0032】
図1及び図2に示すように、オイルシール保護キャップ100は、蓋部110と、外周部120と、把持部130とを備えている。オイルシール保護キャップ100は、主に樹脂を素材として略円盤形状に形成されている。
【0033】
蓋部110は、オイルシール300(図5及び図8参照)のドライブシャフト挿入口310を閉塞する部分である。また、蓋部110の内周側には、ドライブシャフト400が挿入される。図3(a)及び図3(b)に示すように、蓋部110は、テーパ部111と、直線状部112とを有している。蓋部110は、テーパ部111及び直線状部112を備える鉢形状に一体的に形成されている。
【0034】
テーパ部111は、挿入方向上流側から下流側に向かって縮径している。テーパ部111の挿入方向下流側には、直線状部112が設けられている。
【0035】
直線状部112は、ドライブシャフト400の挿入方向に沿って直線状に延びるように形成されている。すなわち、直線状部112は、ドライブシャフト400の挿入方向に沿って同径である。また、直線状部112は、オイルシール300のドライブシャフト挿入口310に嵌合するように形成されている。直線状部112の挿入方向下流側の端部には、径方向外側に向かって突出するようにフランジ部113が形成されている。フランジ部113は、直線状部112の周方向に沿って環状に形成されている。
【0036】
外周部120は、テーパ部111における挿入方向上流側に設けられている。また、外周部120は、蓋部110における径方向外側に広がるように設けられている。外周部120における挿入方向下流側の面は、オイルシール300における挿入方向上流側の縁部320(図5参照)と当接する。
【0037】
図2及び図3(a)に示すように、蓋部110のテーパ部111、直線状部112、及び外周部120には、切欠部150が形成されている。切欠部150は、蓋部110の中心C(図2参照)から径方向外側に向かって切り欠かれている。切欠部150は、蓋部110の中心Cに対して、把持部130側とは反対側に設けられている。切欠部150は、蓋部110の中心Cに対して、蓋部110及び外周部120のうち約90度の角度範囲で切り欠かれている。蓋部110の直線状部112における切欠部150の近傍には、周方向に突出する突出部112aが設けられている。
【0038】
図1及び図2に示すように、把持部130は、外周部120の周方向の一部分から径方向外側(外周部120から離れる方向)に向かって、所定の幅で延びるように形成されている。図4及び図5に示すように、把持部130は、階段状に形成された段差部131を有している。段差部131は、立ち上がり部132と、延在部133と、係合部134(図5参照)等を有している。
【0039】
図5に示すように、段差部131は、挿入方向上流側に向かってオフセットされている。段差部131におけるドライブシャフト400の挿入方向のオフセット量LAは、蓋部110におけるドライブシャフト400の挿入方向の長さLB以上である。
【0040】
把持部130は、立ち上がり部132と、延在部133と、係合部134等を有している。立ち上がり部132、延在部133、及び係合部134は、径方向外側に向かって変形可能な材質により形成されている。変形可能な材質とは、例えば、樹脂、金属、及びゴム等であるが、特に限定されない。
【0041】
立ち上がり部132は、外周部120の縁部から挿入方向上流側に向けて立ち上がる(屈曲する)ように形成されている。例えば、外周部120と立ち上がり部132とは約85度以上95度以下の角度範囲(本実施形態では90度)で屈曲している。
【0042】
図5に示すように、蓋部110の中心Cと立ち上がり部132との間の長さL1は、ドライブシャフト400の径方向の長さL2(軸半径)よりも大きい。これにより、ドライブシャフト400をオイルシール保護キャップ100に挿入する際に、ドライブシャフト400がオイルシール保護キャップ100の把持部130に当接しないものとされている。
【0043】
延在部133は、立ち上がり部132におけるドライブシャフト400の挿入方向の上流側の端部から径方向外側に延びるように形成されている。立ち上がり部132と延在部133とは、例えば、約85度以上95度以下の角度範囲(本実施形態では90度)で屈曲している。図1及び図2に示すように、延在部133における径方向外側の端部には、楕円形状の孔部133aが設けられている。孔部133aは、延在部133を径方向外側に向かって引き抜き易くするために設けられている。
【0044】
係合部134は、延在部133における先端からユニットケース200に向けて延びるように形成されている。延在部133と係合部134とは、例えば、約82度以上98度以下となる角度範囲で屈曲している。より好ましくは、延在部133と係合部134とは、例えば、約92度以上98度以下の鈍角となる角度範囲(本実施形態では95度)で屈曲している。このように、段差部131は、外周部120と立ち上がり部132との屈曲、立ち上がり部132と延在部133との屈曲、及び延在部133と係合部134との屈曲により構成されている。
【0045】
また、係合部134は、ドライブシャフト挿入口310を蓋部110によって閉塞した状態において、係合部134が、ユニットケース200に当接することにより係合可能なものとされている。
【0046】
ここで、ユニットケース200には、図8に示すように、ユニットケース200の外側に向けて突出する左右一対の被係合部202L,202Rが形成されている。なお、特に区別する必要がない場合は、被係合部202L,202Rは、それぞれ被係合部202として記載する場合があることに留意されたい。また、被係合部202L,202Rは、ほぼ左右対称に形成されており、左右同様の構成であるため、同様部分の構成の説明は省略する。また、同一の部材については、同一の符号を付していることに留意されたい。
【0047】
図6は、ユニットケース200の左側に位置するオイルシール300のドライブシャフト挿入口310(被係合部202L)周辺の斜視図であり、図7は、ユニットケース200の右側に位置するオイルシール300のドライブシャフト挿入口310(被係合部202R)周辺の斜視図である。
【0048】
被係合部202L,202Rは、ドライブシャフト挿入口310の近傍に設けられている。具体的には、被係合部202L,202Rは、ドライブシャフト挿入口310の周囲において、ドライブシャフト400の軸線方向に沿って突出するように形成されている。また、被係合部202L,202Rは、それぞれ略平面(本実施形態では、係合部134に沿った傾斜面)に形成されている。したがって、左右一対の係合部134,134は、それぞれの内側の面が、ユニットケース200に当接することにより、被係合部202,202と係合することができる。言い換えれば、係合部134,134は、それぞれ被係合部202,202に引っ掛けることができる。さらに言い換えれば、ユニットケース200(被係合部202,202)は、左右一対のドライブシャフト挿入口310,310を一対の蓋部110,110によって閉塞した状態において、係合部134,134を下方側から支持可能な被係合部202,202を有している。これにより、オイルシール保護キャップ100を用いた本発明のオイルシール保護構造が形成される。
【0049】
上述したように、本発明のオイルシール保護構造は、ユニットケース200が、一対のドライブシャフト挿入口310,310を有すると共に、一対のドライブシャフト挿入口310,310と対応する一対の被係合部202,202を有している。また、本実施形態のオイルシール保護構造では、一対のドライブシャフト挿入口310,310をそれぞれ一対の蓋部110,110によって閉塞した状態において、一対の把持部130,130が、ドライブシャフト400の周方向に対して、同一方向で係止されるように一対の被係合部202、202が配されている。
【0050】
以上が、オイルシール保護キャップ100及びオイルシール保護構造の構成であり、次に、図5を参照しつつ、ユニットケース200に対するドライブシャフト400の組み付け手順について説明する。
【0051】
まず、組立ラインにおいて、オイルシール300が取り付けられた状態のユニットケース200が流れてくる。次に、オイルシール300にオイルシール保護キャップ100が取り付けられる。このとき、オイルシール保護キャップ100における係合部134が、ユニットケース200における被係合部202に当接することで、係合部134は、ドライブシャフト挿入口310を蓋部110によって閉塞した状態において、被係合部202によって下方側から支持される。このとき、本実施形態のオイルシール保護構造では、図8に示すように、一対のドライブシャフト挿入口310,310をそれぞれ一対の蓋部110,110によって閉塞した状態において、一対の把持部130,130が、ドライブシャフト400の周方向に対して、同一方向で一対の被係合部202L,202Rに係止される。
【0052】
その後、図5に示すように、オイルシール保護キャップ100にドライブシャフト400が挿入される。その際、ドライブシャフト400の第三軸部430がオイルシール保護キャップ100の把持部130の立ち上がり部132又は延在部133に当接するまで、ドライブシャフト400が挿入される。
【0053】
次に、オイルシール保護キャップ100の把持部130の延在部133が径方向外側に引っ張られ、延在部133及び立ち上がり部132が径方向外側に変形される(図5に示す二点鎖線部分)。延在部133及び立ち上がり部132は、変形された状態で、挿入方向上流側に向かって移動される。その後、オイルシール保護キャップ100の蓋部110の直線状部112が、オイルシール300のリップ部340よりも挿入方向上流側に移動した際に、オイルシール保護キャップ100全体を径方向外側に向かって引き抜く。このようにして、オイルシール保護キャップ100の引抜作業を行える軌跡を確保することが可能である。その結果、オイルシール300の傷付き保護性と作業性が向上する。
【0054】
次に、ドライブシャフト400が、さらにユニットケース200側に挿入されて、ドライブシャフト400の先端部440の突起部441がユニットケース200の支持部220に係合する。これにより、ユニットケース200に対するドライブシャフト400の組み付け作業が完了する。
【0055】
上記説明した第一実施形態によれば、以下の効果(1)~(4)を得ることができる。
【0056】
(1)上述したオイルシール保護キャップ100は、把持部130が、ドライブシャフト400の挿入方向上流側に向かってオフセットされた立ち上がり部132と、当該立ち上がり部132から径方向外側に延びる延在部133と、を有している。したがって、上述したオイルシール保護キャップ100は、オイルシール保護キャップ100の把持部130とドライブシャフト400との間に十分な間隔を形成できる。これにより、上述したオイルシール保護キャップ100は、ドライブシャフト400を挿入する際に、立ち上がり部132の位置に合わせてドライブシャフト400の挿入を止めることができるので、オイルシール保護キャップ100をドライブシャフト400及びオイルシール300から容易に引き抜くことができる。
【0057】
また、上述したオイルシール保護キャップ100では、把持部130に、ユニットケース200に向けて延びるように形成された係合部134が形成されている。また、上述したオイルシール保護キャップ100では、係合部134がユニットケース200に当接することにより係合可能なものとされている。これにより、上述したオイルシール保護キャップ100は、把持部130の自重による回転を抑制できるので、ドライブシャフト400の組み付け時における作業性を向上させることができる。
【0058】
(2)上述したオイルシール保護キャップ100は、係合部134が、延在部133における先端に対して、鈍角となるように屈曲されている。そのため、上述したオイルシール保護キャップ100は、容易に形成することができる。また、係合部134は、延在部133における先端に対して、例えば92~98度(鈍角、本実施形態では95度)に形成されている。このように、係合部134の延在部133に対する角度(抜き勾配とも称する)を鈍角に設定することにより、上述したオイルシール保護キャップ100は、例えば、成型時の金型からの離型性を向上させることができる。また、上述したオイルシール保護キャップ100は、係合部134の延在部133に対する角度を鈍角に設定することにより、係合部134を被係合部202に係合させる際の懐(作業代)を広げることができるので、ドライブシャフト400の組み付け時における作業性が向上する。
【0059】
(3)上述したオイルシール保護構造は、オイルシール保護キャップ100を用いるものであり、ユニットケース200は、ドライブシャフト挿入口310を蓋部110によって閉塞した状態において、係合部134を下方側から支持可能な被係合部202を有するものとされている。これにより、上述したオイルシール保護構造は、ドライブシャフト400をユニットケース200に組み付ける際の作業者の作業性を向上させることができる。すなわち、上述したオイルシール保護構造によれば、ドライブシャフト400の組み付け作業時に、作業者がオイルシール保護キャップ100の係合部134をユニットケース200側の被係合部202に容易に引っ掛けることができる。そのため、作業者による作業性の向上が期待できる。
【0060】
(4)上述した本発明のオイルシール保護構造は、ユニットケース200が、一対のドライブシャフト挿入口310,310を有すると共に、一対のドライブシャフト挿入口310,310と対応する一対の被係合部202,202を有している。また、上述したオイルシール保護構造は、一対のドライブシャフト挿入口310,310をそれぞれ一対の蓋部110,110によって閉塞した状態において、一対の把持部130,130が、ドライブシャフト400の周方向に対して、同一方向で係止されるように一対の被係合部202,202が配されている。
【0061】
したがって、上述したオイルシール保護構造は、ドライブシャフト挿入口310,310をオイルシール保護キャップ100,100(蓋部110,110)によって閉塞したときに、一対の把持部130,130を、ドライブシャフト400,400の周方向に対して、同一方向でそれぞれの被係合部202,202に係止させることができる。これにより、上述したオイルシール保護構造は、左右一対のオイルシール保護キャップ100,100の構成を共通化することができるので、例えば、金型費用や管理費用等のコスト低減効果が期待できる。
【0062】
以上が、本発明の一実施形態に係るオイルシール保護キャップ100、及びオイルシール保護構造の構成及び作用効果であるが、本発明のオイルシール保護キャップ100、及びオイルシール保護構造は、上述した実施形態には限定されず、各種の変形を行うことができる。
【0063】
オイルシール保護キャップ100における蓋部110、外周部120は、オイルシール300、ドライブシャフト挿入口310、及びドライブシャフト400の形状や大きさに応じて、各種の形状や大きさに形成することができる。また、本実施形態では、蓋部110及び外周部120に切欠部150が形成されているが、切欠部150の形成角度や形状、大きさなどは、使用する態様に応じて各種のものに変更することができる。また、蓋部110及び外周部120には、切欠部150に代えて、その部分の強度を弱めた破断部が形成されていてもよい。
【0064】
また、把持部130における段差部131は、各種の形状や大きさに形成でき、段差部131が複数設けられた構成とすることも可能である。また、立ち上がり部132のオフセット量LAは、ドライブシャフト400及び把持部130の間のスペース等に応じて、各種の値に設定できる。また、把持部130における立ち上がり部132や延在部133は、ドライブシャフト挿入口310やユニットケース200の形状や大きさ等に応じて、各種の形状や大きさに形成することができる。また、把持部130における係合部134は、ドライブシャフト挿入口310を蓋部110によって閉塞した状態において、ユニットケース200に当接することにより係合可能なものであれば、各種の形状や大きさに形成することができる。
【0065】
本実施形態では、係合部134が、延在部133における先端に対して、鈍角となるように屈曲されているものを例示したが、本発明はこれには限定されない。例えば、係合部134が、延在部133における先端に対して90度で屈曲させることも可能である。また、係合部134の延在部133に対する屈曲角度は、被係合部202の形状や大きさ等に合わせて各種の角度(88~92度を含む)に変更することができる。
【0066】
また、本実施形態に係るオイルシール保護構造では、ドライブシャフト挿入口310,310を蓋部110によって閉塞した状態において、ユニットケース200が、係合部134を下方側から支持可能な被係合部202を有しているが、本発明はこれには限定されない。被係合部202は、係合部134を下方側から支持可能なものだけではなく、ドライブシャフト400の組み付けと干渉しない範囲で、各種の方向から支持可能なように配することができる。例えば、被係合部202が、係合部134を斜め下方側から支持するものとすることも可能である。また、係合部134と被係合部202との係合は、引っ掛けて係合させるものだけではなく、挿入等によって係合させるものなど各種の形態のものが利用できる。また、本実施形態では、係合部134及び被係合部202が面として当接するように構成されているが、係合部134及び被係合部202は、凹凸が形成されているものや、波状に形成されているものなど各種の形状に形成することができる。
【0067】
また、本実施形態では、ユニットケース200が、一対のドライブシャフト挿入口310,310を有すると共に、一対のドライブシャフト挿入口310,310と対応する一対の被係合部202,202を有しているが、本発明はこれには限定されない。例えば、ユニットケース200に対して単一のドライブシャフト400が設けられているものや3つ以上のドライブシャフト400が設けられているものなど、本発明は、各種の形態のユニットケース200に利用できる。また、本実施形態では、一対の把持部130,130が、ドライブシャフト400の周方向に対して、同一方向で係止されるように一対の被係合部202,202が配されているが、本発明はこれには限定されない。一対の把持部130,130における係合部134,134のそれぞれが、形状を変更することなく、それぞれの被係合部202,202に係合可能なものであれば各種の配置で被係合部202,202を配することができる。また、被係合部202,202は、左右対称のものだけではなく、左右非対称に形成されていてもよい。
【0068】
以上が、本発明に係るオイルシール保護キャップ及びオイルシール保護構造の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のオイルシール保護キャップは、自動車等の各種の車両におけるドライブシャフトの組み付け時に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 :オイルシール保護キャップ
110 :蓋部
120 :外周部
130 :把持部
132 :立ち上がり部
133 :延在部
134 :係合部
150 :切欠部
200 :ユニットケース
202 :被係合部
300 :オイルシール
310 :ドライブシャフト挿入口
400 :ドライブシャフト
図1
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図7
図8