(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042364
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ヘッド交換方法、インクジェット印刷装置、およびヘッド交換支援プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240321BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240321BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 307
B41J2/18
B41J2/175 121
B41J2/175 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147034
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀明
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB50
2C056EB59
2C056EC26
2C056HA07
2C056KB16
2C056KB37
2C056KC16
(57)【要約】
【課題】インクジェット印刷装置に関し、印字を行うことなく配管接続の異常を検知することのできるヘッド交換方法を提供する。
【解決手段】ヘッド交換方法は、ユーザーが新しいヘッドの配管接続を行う配管接続ステップ(S320)と、循環流路でのインクの循環を開始させるインク循環開始ステップ(S400)と、回収タンクおよび供給タンクの少なくとも一方におけるインク液面の高さを表すインク液面位置に基づいてインク排出配管と回収枝配管との接続およびインク流入配管と供給枝配管との接続を含む配管接続が正しく行われているかを判定する接続状態判定ステップ(S410、S415、S500)とを含む。
【選択図】
図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に向けてインクを吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッドを保持するヘッド保持プレートと、前記複数のヘッドにインクを供給するためのインク供給機構とを備えるインクジェット印刷装置において前記複数のヘッドの中の一部のヘッドである交換対象ヘッドを交換するヘッド交換方法であって、
前記インク供給機構は、前記複数のヘッドに供給するためのインクを蓄積する供給タンクと、前記複数のヘッドから回収されたインクを蓄積する回収タンクと、前記供給タンクから前記複数のヘッドへと供給されるインクの流路を形成する供給配管と、前記複数のヘッドから前記回収タンクへと回収されるインクの流路を形成する回収配管と、前記回収タンクから前記供給タンクへとインクを還流させるための還流配管と、前記供給配管から各ヘッドへと流れるインクの流路を形成する供給枝配管と、各ヘッドから前記回収配管へと流れるインクの流路を形成する回収枝配管とを含み、
各ヘッドは、
インク排出配管と、
前記インク排出配管と前記回収枝配管とを接続するための第1コネクタと、
インク流入配管と、
前記インク流入配管と前記供給枝配管とを接続するための第2コネクタと、
を含み、
前記供給タンクと前記供給配管と前記供給枝配管と前記インク流入配管と前記インク排出配管と前記回収枝配管と前記回収配管と前記回収タンクと前記還流配管とによって、インクが循環する循環流路が形成され、
前記ヘッド交換方法は、
前記交換対象ヘッドに含まれる前記インク流入配管を前記供給枝配管から取り外すとともに前記交換対象ヘッドに含まれる前記インク排出配管を前記回収枝配管から取り外す配管取り外しステップと、
前記交換対象ヘッドを前記ヘッド保持プレートから取り外すヘッド取り外しステップと、
前記交換対象ヘッドに代えて使用されるべき新ヘッドを前記ヘッド保持プレートに取り付けるヘッド取り付けステップと、
前記新ヘッドに含まれる前記インク排出配管を前記第1コネクタを介して前記回収枝配管に接続するとともに前記新ヘッドに含まれる前記インク流入配管を前記第2コネクタを介して前記供給枝配管に接続する配管接続ステップと、
前記ヘッド取り付けステップおよび前記配管接続ステップの後に、前記循環流路でのインクの循環を開始させるインク循環開始ステップと、
前記インク循環開始ステップの後に、前記回収タンクおよび前記供給タンクの少なくとも一方におけるインク液面の高さを表すインク液面位置に基づいて、前記第1コネクタを介した前記インク排出配管と前記回収枝配管との接続および前記第2コネクタを介した前記インク流入配管と前記供給枝配管との接続を含む配管接続が前記配管接続ステップで正しく行われているかを判定する接続状態判定ステップと
を含むことを特徴とする、ヘッド交換方法。
【請求項2】
前記接続状態判定ステップは、前記回収タンクにおけるインク液面の高さを表す第1のインク液面位置を継続的に確認する第1のインク液面位置確認ステップを含み、
前記接続状態判定ステップでは、前記第1のインク液面位置確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化があれば前記配管接続が正しく行われている旨の判定が行われることを特徴とする、請求項1に記載のヘッド交換方法。
【請求項3】
前記インク循環開始ステップでは、前記複数のヘッドのうち前記新ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でのインクの循環が開始され、
前記第1のインク液面位置確認ステップでは、前記複数のヘッドのうち前記新ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でインクが循環している状態で、前記第1のインク液面位置が継続的に確認されることを特徴とする、請求項2に記載のヘッド交換方法。
【請求項4】
前記インク供給機構は、前記第1のインク液面位置を検出する第1の液面センサを含み、
前記接続状態判定ステップは、前記第1のインク液面位置確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化がなければ前記複数のヘッドのうちの交換されなかったヘッドである非交換対象ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でインクを循環させた状態で前記第1のインク液面位置を継続的に確認するインク液面位置再確認ステップを含み、
前記接続状態判定ステップでは、前記インク液面位置再確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化があれば前記第1コネクタを介した前記インク排出配管と前記回収枝配管との接続に異常がある旨の判定が行われ、前記インク液面位置再確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化がなければ前記第1の液面センサに異常がある旨の判定が行われることを特徴とする、請求項2に記載のヘッド交換方法。
【請求項5】
前記ヘッド取り付けステップおよび前記配管接続ステップの後、かつ、前記インク循環開始ステップの前に、前記循環流路において前記供給タンクから前記供給配管および前記供給枝配管を介した前記インク流入配管へのインクの流れのみが生じるようにした状態で、前記供給タンクにおけるインク液面の高さを表す第2のインク液面位置に基づいて前記第2コネクタを介した前記インク流入配管と前記供給枝配管との接続が前記配管接続ステップで正しく行われているかを判定する供給側接続状態判定ステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載のヘッド交換方法。
【請求項6】
前記供給側接続状態判定ステップは、
前記供給タンクで大気開放が行われた状態での前記第2のインク液面位置を記憶する第2のインク液面位置記憶ステップと、
前記第2のインク液面位置記憶ステップの後で、前記供給タンクの内部を加圧する加圧ステップと、
前記加圧ステップの後で、前記供給タンクで大気開放が行われた状態での前記第2のインク液面位置を確認する第2のインク液面位置確認ステップと
を含み、
前記供給側接続状態判定ステップでは、前記第2のインク液面位置記憶ステップで記憶された前記第2のインク液面位置よりも前記第2のインク液面位置確認ステップで確認された前記第2のインク液面位置の方が低ければ、前記第2コネクタを介した前記インク流入配管と前記供給枝配管との接続が正しく行われている旨の判定が行われることを特徴とする、請求項5に記載のヘッド交換方法。
【請求項7】
前記インク供給機構は、前記第2のインク液面位置を検出する第2の液面センサを含み、
前記接続状態判定ステップは、前記第2のインク液面位置記憶ステップで記憶された前記第2のインク液面位置よりも前記第2のインク液面位置確認ステップで確認された前記第2のインク液面位置の方が低くなければ前記複数のヘッドのうちの交換されなかったヘッドである非交換対象ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でインクを循環させた状態で前記第2のインク液面位置を継続的に確認するインク液面位置再確認ステップを含み、
前記接続状態判定ステップでは、前記インク液面位置再確認ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化があれば前記第2コネクタを介した前記インク流入配管と前記供給枝配管との接続に異常がある旨の判定が行われ、前記インク液面位置再確認ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化がなければ前記第2の液面センサに異常がある旨の判定が行われることを特徴とする、請求項6に記載のヘッド交換方法。
【請求項8】
前記配管取り外しステップおよび前記ヘッド取り外しステップよりも前に、前記複数のヘッドのうち前記交換対象ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でインクを循環させた状態で前記インク液面位置を継続的に確認するインク液面位置事前確認ステップを含み、
前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記インク液面位置に変化がある場合にのみ前記配管取り外しステップ、前記ヘッド取り外しステップ、前記ヘッド取り付けステップ、前記配管接続ステップ、前記インク循環開始ステップ、および前記接続状態判定ステップが実行されることを特徴とする、請求項1に記載のヘッド交換方法。
【請求項9】
前記インク供給機構は、前記インク液面位置を検出する液面センサと、前記供給枝配管におけるインクの流れを制御する供給制御バルブと、前記回収枝配管におけるインクの流れを制御する回収制御バルブとを含み、
前記ヘッド交換方法は、前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記インク液面位置に変化がなければ前記複数のヘッドのうちの交換されなかったヘッドである非交換対象ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でインクを循環させた状態で前記インク液面位置を継続的に確認する液面センサ検査ステップを含み、
前記液面センサ検査ステップで確認される前記インク液面位置に変化があれば前記交換対象ヘッドに対応する前記供給制御バルブまたは前記交換対象ヘッドに対応する前記回収制御バルブに異常がある旨の判定が行われ、前記液面センサ検査ステップで確認される前記インク液面位置に変化がなければ前記液面センサに異常がある旨の判定が行われることを特徴とする、請求項8に記載のヘッド交換方法。
【請求項10】
前記インク供給機構は、前記液面センサとして、前記回収タンクにおけるインク液面の高さを表す第1のインク液面位置を検出する第1の液面センサと前記供給タンクにおけるインク液面の高さを表す第2のインク液面位置を検出する第2の液面センサとを含み、
前記インク液面位置事前確認ステップおよび前記液面センサ検査ステップでは、前記インク液面位置として、前記第1のインク液面位置と前記第2のインク液面位置とが確認され、
前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化がなく、かつ、前記液面センサ検査ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化があれば、前記交換対象ヘッドに対応する前記回収制御バルブに異常がある旨の判定が行われ、
前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化がなく、かつ、前記液面センサ検査ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化がなければ、前記第1の液面センサに異常がある旨の判定が行われ、
前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化がなく、かつ、前記液面センサ検査ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化があれば、前記交換対象ヘッドに対応する前記供給制御バルブに異常がある旨の判定が行われ、
前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化がなく、かつ、前記液面センサ検査ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化がなければ、前記第2の液面センサに異常がある旨の判定が行われることを特徴とする、請求項9に記載のヘッド交換方法。
【請求項11】
前記インク供給機構は、前記回収タンクにおけるインク液面の高さを表す第1のインク液面位置を検出する第1の液面センサと前記供給タンクにおけるインク液面の高さを表す第2のインク液面位置を検出する第2の液面センサとを含み、
前記接続状態判定ステップでは、前記第1の液面センサによって検出された前記第1のインク液面位置および前記第2の液面センサによって検出された前記第2のインク液面位置の少なくとも一方に基づいて、前記配管接続が正しく行われているかが判定されることを特徴とする、請求項1に記載のヘッド交換方法。
【請求項12】
前記インクジェット印刷装置は、前記複数のヘッドおよび前記インク供給機構の動作を制御する制御装置を備え、
前記配管取り外しステップ、前記ヘッド取り外しステップ、前記ヘッド取り付けステップ、および前記配管接続ステップは、作業者によって実行され、
前記インク循環開始ステップおよび前記接続状態判定ステップは、前記制御装置によって実行されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載のヘッド交換方法。
【請求項13】
前記制御装置は、表示部を有し、
前記接続状態判定ステップでは、前記配管接続が正しく行われているかの判定結果が前記表示部に表示されることを特徴とする、請求項12に記載のヘッド交換方法。
【請求項14】
印刷媒体に向けてインクを吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッドにインクを供給するためのインク供給機構と、前記複数のヘッドおよび前記インク供給機構の動作を制御する制御装置とを備えたインクジェット印刷装置であって、
前記インク供給機構は、前記複数のヘッドに供給するためのインクを蓄積する供給タンクと、前記複数のヘッドから回収されたインクを蓄積する回収タンクと、前記供給タンクから前記複数のヘッドへと供給されるインクの流路を形成する供給配管と、前記複数のヘッドから前記回収タンクへと回収されるインクの流路を形成する回収配管と、前記回収タンクから前記供給タンクへとインクを還流させるための還流配管と、前記供給配管から各ヘッドへと流れるインクの流路を形成する供給枝配管と、各ヘッドから前記回収配管へと流れるインクの流路を形成する回収枝配管とを含み、
各ヘッドは、
インク排出配管と、
前記インク排出配管と前記回収枝配管とを接続するための第1コネクタと、
インク流入配管と、
前記インク流入配管と前記供給枝配管とを接続するための第2コネクタと、
を含み、
前記供給タンクと前記供給配管と前記供給枝配管と前記インク流入配管と前記インク排出配管と前記回収枝配管と前記回収配管と前記回収タンクと前記還流配管とによって、インクが循環する循環流路が形成され、
前記制御装置は、
ヘッドの交換を促すメッセージを出力するメッセージ出力ステップと、
ヘッドの交換が完了した旨の入力を受け付ける交換完了受け付けステップと、
交換後のヘッドである新ヘッドにインクが供給されるよう前記循環流路でのインクの循環を開始させるインク循環開始ステップと、
前記回収タンクおよび前記供給タンクの少なくとも一方におけるインク液面の高さを表すインク液面位置に基づいて、前記新ヘッドに含まれる前記インク排出配管と前記回収枝配管との前記第1コネクタを介した接続および前記新ヘッドに含まれる前記インク流入配管と前記供給枝配管との前記第2コネクタを介した接続を含む配管接続が正しく行われているかを判定する接続状態判定ステップと
をこの順序で実行することを特徴とする、インクジェット印刷装置。
【請求項15】
印刷媒体に向けてインクを吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッドにインクを供給するためのインク供給機構と、前記複数のヘッドおよび前記インク供給機構の動作を制御する制御装置とを備えたインクジェット印刷装置において、前記制御装置に含まれるコンピュータに、
ヘッドの交換を促すメッセージを出力するメッセージ出力ステップと、
ヘッドの交換が完了した旨の入力を受け付ける交換完了受け付けステップと、
ヘッドの交換が正しく行われているかを検査する交換作業結果検査ステップと
を実行させ、
前記インク供給機構は、前記複数のヘッドに供給するためのインクを蓄積する供給タンクと、前記複数のヘッドから回収されたインクを蓄積する回収タンクと、前記供給タンクから前記複数のヘッドへと供給されるインクの流路を形成する供給配管と、前記複数のヘッドから前記回収タンクへと回収されるインクの流路を形成する回収配管と、前記回収タンクから前記供給タンクへとインクを還流させるための還流配管と、前記供給配管から各ヘッドへと流れるインクの流路を形成する供給枝配管と、各ヘッドから前記回収配管へと流れるインクの流路を形成する回収枝配管とを含み、
各ヘッドは、
インク排出配管と、
前記インク排出配管と前記回収枝配管とを接続するための第1コネクタと、
インク流入配管と、
前記インク流入配管と前記供給枝配管とを接続するための第2コネクタと、
を含み、
前記供給タンクと前記供給配管と前記供給枝配管と前記インク流入配管と前記インク排出配管と前記回収枝配管と前記回収配管と前記回収タンクと前記還流配管とによって、インクが循環する循環流路が形成され、
前記交換作業結果検査ステップは、
交換後のヘッドである新ヘッドにインクが供給されるよう前記循環流路でのインクの循環を開始させるインク循環開始ステップと、
前記回収タンクおよび前記供給タンクの少なくとも一方におけるインク液面の高さを表すインク液面位置に基づいて、前記新ヘッドに含まれる前記インク排出配管と前記回収枝配管との前記第1コネクタを介した接続および前記新ヘッドに含まれる前記インク流入配管と前記供給枝配管との前記第2コネクタを介した接続を含む配管接続が正しく行われているかを判定する接続状態判定ステップと
を含むことを特徴とする、ヘッド交換支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関し、特に、インクジェット印刷装置におけるヘッド交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱や圧力によってインクを印刷用紙などの印刷媒体(基材)に噴射することにより印刷媒体への印字を行うインクジェット印刷装置が知られている。インクジェット印刷装置は、インクを吐出する多数のノズルを有する複数のヘッド(印刷ヘッド)からなるヘッドユニットを備えている。ヘッドユニットを構成する複数のヘッドは、1つのヘッド保持プレートに保持されている。1つのヘッドユニットは、例えば5個のヘッドによって構成されている。この場合、それら5個のヘッドが1つのヘッド保持プレートに保持されている。
【0003】
カラー印刷用の典型的なインクジェット印刷装置には、少なくとも、C色(シアン色)用のヘッドユニット、M色(マゼンタ色)用のヘッドユニット、Y色(黄色)用のヘッドユニット、およびK色(黒色)用のヘッドユニットが設けられている。このように、典型的には、色毎にヘッドユニットが設けられている。また、ヘッドユニットを構成する複数のヘッドにインクを供給するためのインク供給機構(インク循環系)が色毎に設けられている。インク供給機構にはヘッドに供給するためのインクを蓄積する供給タンクとヘッドから回収されたインクを蓄積する回収タンクとが設けられており、供給タンク内の気圧と回収タンク内の気圧との差(差圧)によって供給タンクからヘッドを経由して回収タンクへとインクが流れる。なお、本明細書では、インク供給機構を構成する配管とヘッド内の配管とによってインクが循環する循環流路が形成されているインクジェット印刷装置に着目する。印刷媒体への印字が行われる時には、インクは循環流路を循環する。
【0004】
上記のようなインクジェット印刷装置に関し、長期間の不使用によるインクの固形化(乾燥)などに起因して、インクの吐出不良が生じることがある。インクの吐出不良が生じた状態で印刷が実行された場合、高品質の印刷物は得られない。そこで、インクの吐出不良への対策として、クリーニングやフラッシングが行われている。しかしながら、クリーニングやフラッシングが行われてもインクの吐出不良が十分に解消されないこともある。そのような場合には、インクの吐出不良が生じているヘッドの交換が行われる。また、インクの吐出不良以外の理由によってヘッド交換が行われることもある。なお、通例、新しいヘッドユニットはその内部に洗浄液等の液体が充填された状態で印刷装置メーカー等から提供される。
【0005】
ところで、ヘッド交換は、通常、インクジェット印刷装置のユーザーによる手作業で行われる。すなわち、インクジェット印刷装置の構造等に精通したメーカーの作業者によってヘッド交換が行われるのではない。そのため、ヘッド交換の際に、インク供給機構を構成する配管とヘッド内の配管との接続(以下、単に「配管接続」という。)が正しく行われないことがある。なお、以下においては、配管接続に関し、供給タンクからヘッドへとインクを供給するための配管とヘッド内の配管との接続を「供給側配管接続」といい、ヘッドから回収タンクへとインクを回収するための配管とヘッド内の配管との接続を「回収側配管接続」という。
【0006】
ヘッド交換後には、供給タンク内の気圧が高い正圧に設定されることによって本来的には交換後のヘッド(新しいヘッド)内の洗浄液はヘッドクリーニング用のキャップへと排出される。しかしながら、ヘッド交換後の供給側配管接続に異常があると、洗浄液はヘッドクリーニング用のキャップへと排出されず、循環流路でのインクの循環が再開されたときに洗浄液がインクに混ざってしまう。その結果、印字不良が発生する上、循環流路内のインクを除去する必要性が生じる。また、ヘッド交換後の回収側配管接続に異常があると、循環流路でのインクの循環が再開されたときにヘッドに好適に負圧がかからず、各ノズルにおいてメニスカスが正常に形成されない。その結果、印刷が実行された時に各ノズルから期せずして印刷媒体にインクが落下する、いわゆる「インクのぼた落ち」が発生する。
【0007】
特開2005-297279号公報には、配管接続の異常(不良)に起因するヘッドの損傷を防止する技術が開示されている。その技術によれば、データラッチ部における印字データの更新が正常に行われているか否かを検査する検査手段がヘッドに設けられる。そして、印字データの更新が途絶えたことが検査手段によって検知されると、印字動作は停止し、エラー信号が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特開2005-297279号公報に開示された技術によれば、ヘッド交換後に実際に印刷媒体への印字を行わなければ配管接続の異常を検知することはできない。それ故、配管接続に異常があった場合には印刷媒体およびインクの無駄が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、インクジェット印刷装置に関し、印字を行うことなく配管接続の異常を検知することのできるヘッド交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、印刷媒体に向けてインクを吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッドを保持するヘッド保持プレートと、前記複数のヘッドにインクを供給するためのインク供給機構とを備えるインクジェット印刷装置において前記複数のヘッドの中の一部のヘッドである交換対象ヘッドを交換するヘッド交換方法であって、
前記インク供給機構は、前記複数のヘッドに供給するためのインクを蓄積する供給タンクと、前記複数のヘッドから回収されたインクを蓄積する回収タンクと、前記供給タンクから前記複数のヘッドへと供給されるインクの流路を形成する供給配管と、前記複数のヘッドから前記回収タンクへと回収されるインクの流路を形成する回収配管と、前記回収タンクから前記供給タンクへとインクを還流させるための還流配管と、前記供給配管から各ヘッドへと流れるインクの流路を形成する供給枝配管と、各ヘッドから前記回収配管へと流れるインクの流路を形成する回収枝配管とを含み、
各ヘッドは、
インク排出配管と、
前記インク排出配管と前記回収枝配管とを接続するための第1コネクタと、
インク流入配管と、
前記インク流入配管と前記供給枝配管とを接続するための第2コネクタと、
を含み、
前記供給タンクと前記供給配管と前記供給枝配管と前記インク流入配管と前記インク排出配管と前記回収枝配管と前記回収配管と前記回収タンクと前記還流配管とによって、インクが循環する循環流路が形成され、
前記ヘッド交換方法は、
前記交換対象ヘッドに含まれる前記インク流入配管を前記供給枝配管から取り外すとともに前記交換対象ヘッドに含まれる前記インク排出配管を前記回収枝配管から取り外す配管取り外しステップと、
前記交換対象ヘッドを前記ヘッド保持プレートから取り外すヘッド取り外しステップと、
前記交換対象ヘッドに代えて使用されるべき新ヘッドを前記ヘッド保持プレートに取り付けるヘッド取り付けステップと、
前記新ヘッドに含まれる前記インク排出配管を前記第1コネクタを介して前記回収枝配管に接続するとともに前記新ヘッドに含まれる前記インク流入配管を前記第2コネクタを介して前記供給枝配管に接続する配管接続ステップと、
前記ヘッド取り付けステップおよび前記配管接続ステップの後に、前記循環流路でのインクの循環を開始させるインク循環開始ステップと、
前記インク循環開始ステップの後に、前記回収タンクおよび前記供給タンクの少なくとも一方におけるインク液面の高さを表すインク液面位置に基づいて、前記第1コネクタを介した前記インク排出配管と前記回収枝配管との接続および前記第2コネクタを介した前記インク流入配管と前記供給枝配管との接続を含む配管接続が前記配管接続ステップで正しく行われているかを判定する接続状態判定ステップと
を含むことを特徴とする。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
前記接続状態判定ステップは、前記回収タンクにおけるインク液面の高さを表す第1のインク液面位置を継続的に確認する第1のインク液面位置確認ステップを含み、
前記接続状態判定ステップでは、前記第1のインク液面位置確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化があれば前記配管接続が正しく行われている旨の判定が行われることを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、
前記インク循環開始ステップでは、前記複数のヘッドのうち前記新ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でのインクの循環が開始され、
前記第1のインク液面位置確認ステップでは、前記複数のヘッドのうち前記新ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でインクが循環している状態で、前記第1のインク液面位置が継続的に確認されることを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、第2の発明において、
前記インク供給機構は、前記第1のインク液面位置を検出する第1の液面センサを含み、
前記接続状態判定ステップは、前記第1のインク液面位置確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化がなければ前記複数のヘッドのうちの交換されなかったヘッドである非交換対象ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でインクを循環させた状態で前記第1のインク液面位置を継続的に確認するインク液面位置再確認ステップを含み、
前記接続状態判定ステップでは、前記インク液面位置再確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化があれば前記第1コネクタを介した前記インク排出配管と前記回収枝配管との接続に異常がある旨の判定が行われ、前記インク液面位置再確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化がなければ前記第1の液面センサに異常がある旨の判定が行われることを特徴とする。
【0015】
第5の発明は、第2の発明において、
前記ヘッド交換方法は、前記ヘッド取り付けステップおよび前記配管接続ステップの後、かつ、前記インク循環開始ステップの前に、前記循環流路において前記供給タンクから前記供給配管および前記供給枝配管を介した前記インク流入配管へのインクの流れのみが生じるようにした状態で、前記供給タンクにおけるインク液面の高さを表す第2のインク液面位置に基づいて前記第2コネクタを介した前記インク流入配管と前記供給枝配管との接続が前記配管接続ステップで正しく行われているかを判定する供給側接続状態判定ステップを含むことを特徴とする。
【0016】
第6の発明は、第5の発明において、
前記供給側接続状態判定ステップは、
前記供給タンクで大気開放が行われた状態での前記第2のインク液面位置を記憶する第2のインク液面位置記憶ステップと、
前記第2のインク液面位置記憶ステップの後で、前記供給タンクの内部を加圧する加圧ステップと、
前記加圧ステップの後で、前記供給タンクで大気開放が行われた状態での前記第2のインク液面位置を確認する第2のインク液面位置確認ステップと
を含み、
前記供給側接続状態判定ステップでは、前記第2のインク液面位置記憶ステップで記憶された前記第2のインク液面位置よりも前記第2のインク液面位置確認ステップで確認された前記第2のインク液面位置の方が低ければ、前記第2コネクタを介した前記インク流入配管と前記供給枝配管との接続が正しく行われている旨の判定が行われることを特徴とする。
【0017】
第7の発明は、第6の発明において、
前記インク供給機構は、前記第2のインク液面位置を検出する第2の液面センサを含み、
前記接続状態判定ステップは、前記第2のインク液面位置記憶ステップで記憶された前記第2のインク液面位置よりも前記第2のインク液面位置確認ステップで確認された前記第2のインク液面位置の方が低くなければ前記複数のヘッドのうちの交換されなかったヘッドである非交換対象ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でインクを循環させた状態で前記第2のインク液面位置を継続的に確認するインク液面位置再確認ステップを含み、
前記接続状態判定ステップでは、前記インク液面位置再確認ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化があれば前記第2コネクタを介した前記インク流入配管と前記供給枝配管との接続に異常がある旨の判定が行われ、前記インク液面位置再確認ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化がなければ前記第2の液面センサに異常がある旨の判定が行われることを特徴とする。
【0018】
第8の発明は、第1の発明において、
前記ヘッド交換方法は、前記配管取り外しステップおよび前記ヘッド取り外しステップよりも前に、前記複数のヘッドのうち前記交換対象ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でインクを循環させた状態で前記インク液面位置を継続的に確認するインク液面位置事前確認ステップを含み、
前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記インク液面位置に変化がある場合にのみ前記配管取り外しステップ、前記ヘッド取り外しステップ、前記ヘッド取り付けステップ、前記配管接続ステップ、前記インク循環開始ステップ、および前記接続状態判定ステップが実行されることを特徴とする。
【0019】
第9の発明は、第8の発明において、
前記インク供給機構は、前記インク液面位置を検出する液面センサと、前記供給枝配管におけるインクの流れを制御する供給制御バルブと、前記回収枝配管におけるインクの流れを制御する回収制御バルブとを含み、
前記ヘッド交換方法は、前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記インク液面位置に変化がなければ前記複数のヘッドのうちの交換されなかったヘッドである非交換対象ヘッドのみにインクが供給されるよう前記循環流路でインクを循環させた状態で前記インク液面位置を継続的に確認する液面センサ検査ステップを含み、
前記液面センサ検査ステップで確認される前記インク液面位置に変化があれば前記交換対象ヘッドに対応する前記供給制御バルブまたは前記交換対象ヘッドに対応する前記回収制御バルブに異常がある旨の判定が行われ、前記液面センサ検査ステップで確認される前記インク液面位置に変化がなければ前記液面センサに異常がある旨の判定が行われることを特徴とする。
【0020】
第10の発明は、第9の発明において、
前記インク供給機構は、前記液面センサとして、前記回収タンクにおけるインク液面の高さを表す第1のインク液面位置を検出する第1の液面センサと前記供給タンクにおけるインク液面の高さを表す第2のインク液面位置を検出する第2の液面センサとを含み、
前記インク液面位置事前確認ステップおよび前記液面センサ検査ステップでは、前記インク液面位置として、前記第1のインク液面位置と前記第2のインク液面位置とが確認され、
前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化がなく、かつ、前記液面センサ検査ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化があれば、前記交換対象ヘッドに対応する前記回収制御バルブに異常がある旨の判定が行われ、
前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化がなく、かつ、前記液面センサ検査ステップで確認される前記第1のインク液面位置に変化がなければ、前記第1の液面センサに異常がある旨の判定が行われ、
前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化がなく、かつ、前記液面センサ検査ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化があれば、前記交換対象ヘッドに対応する前記供給制御バルブに異常がある旨の判定が行われ、
前記インク液面位置事前確認ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化がなく、かつ、前記液面センサ検査ステップで確認される前記第2のインク液面位置に変化がなければ、前記第2の液面センサに異常がある旨の判定が行われることを特徴とする。
【0021】
第11の発明は、第1の発明において、
前記インク供給機構は、前記回収タンクにおけるインク液面の高さを表す第1のインク液面位置を検出する第1の液面センサと前記供給タンクにおけるインク液面の高さを表す第2のインク液面位置を検出する第2の液面センサとを含み、
前記接続状態判定ステップでは、前記第1の液面センサによって検出された前記第1のインク液面位置および前記第2の液面センサによって検出された前記第2のインク液面位置の少なくとも一方に基づいて、前記配管接続が正しく行われているかが判定されることを特徴とする。
【0022】
第12の発明は、第1から第11までのいずれかの発明において、
前記インクジェット印刷装置は、前記複数のヘッドおよび前記インク供給機構の動作を制御する制御装置を備え、
前記配管取り外しステップ、前記ヘッド取り外しステップ、前記ヘッド取り付けステップ、および前記配管接続ステップは、作業者によって実行され、
前記インク循環開始ステップおよび前記接続状態判定ステップは、前記制御装置によって実行されることを特徴とする。
【0023】
第13の発明は、第12の発明において、
前記制御装置は、表示部を有し、
前記接続状態判定ステップでは、前記配管接続が正しく行われているかの判定結果が前記表示部に表示されることを特徴とする。
【0024】
第14の発明は、印刷媒体に向けてインクを吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッドにインクを供給するためのインク供給機構と、前記複数のヘッドおよび前記インク供給機構の動作を制御する制御装置とを備えたインクジェット印刷装置であって、
前記インク供給機構は、前記複数のヘッドに供給するためのインクを蓄積する供給タンクと、前記複数のヘッドから回収されたインクを蓄積する回収タンクと、前記供給タンクから前記複数のヘッドへと供給されるインクの流路を形成する供給配管と、前記複数のヘッドから前記回収タンクへと回収されるインクの流路を形成する回収配管と、前記回収タンクから前記供給タンクへとインクを還流させるための還流配管と、前記供給配管から各ヘッドへと流れるインクの流路を形成する供給枝配管と、各ヘッドから前記回収配管へと流れるインクの流路を形成する回収枝配管とを含み、
各ヘッドは、
インク排出配管と、
前記インク排出配管と前記回収枝配管とを接続するための第1コネクタと、
インク流入配管と、
前記インク流入配管と前記供給枝配管とを接続するための第2コネクタと、
を含み、
前記供給タンクと前記供給配管と前記供給枝配管と前記インク流入配管と前記インク排出配管と前記回収枝配管と前記回収配管と前記回収タンクと前記還流配管とによって、インクが循環する循環流路が形成され、
前記制御装置は、
ヘッドの交換を促すメッセージを出力するメッセージ出力ステップと、
ヘッドの交換が完了した旨の入力を受け付ける交換完了受け付けステップと、
交換後のヘッドである新ヘッドにインクが供給されるよう前記循環流路でのインクの循環を開始させるインク循環開始ステップと、
前記回収タンクおよび前記供給タンクの少なくとも一方におけるインク液面の高さを表すインク液面位置に基づいて、前記新ヘッドに含まれる前記インク排出配管と前記回収枝配管との前記第1コネクタを介した接続および前記新ヘッドに含まれる前記インク流入配管と前記供給枝配管との前記第2コネクタを介した接続を含む配管接続が正しく行われているかを判定する接続状態判定ステップと
をこの順序で実行することを特徴とする。
【0025】
第15の発明は、ヘッド交換支援プログラムであって、
印刷媒体に向けてインクを吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッドにインクを供給するためのインク供給機構と、前記複数のヘッドおよび前記インク供給機構の動作を制御する制御装置とを備えたインクジェット印刷装置において、前記制御装置に含まれるコンピュータに、
ヘッドの交換を促すメッセージを出力するメッセージ出力ステップと、
ヘッドの交換が完了した旨の入力を受け付ける交換完了受け付けステップと、
ヘッドの交換が正しく行われているかを検査する交換作業結果検査ステップと
を実行させ、
前記インク供給機構は、前記複数のヘッドに供給するためのインクを蓄積する供給タンクと、前記複数のヘッドから回収されたインクを蓄積する回収タンクと、前記供給タンクから前記複数のヘッドへと供給されるインクの流路を形成する供給配管と、前記複数のヘッドから前記回収タンクへと回収されるインクの流路を形成する回収配管と、前記回収タンクから前記供給タンクへとインクを還流させるための還流配管と、前記供給配管から各ヘッドへと流れるインクの流路を形成する供給枝配管と、各ヘッドから前記回収配管へと流れるインクの流路を形成する回収枝配管とを含み、
各ヘッドは、
インク排出配管と、
前記インク排出配管と前記回収枝配管とを接続するための第1コネクタと、
インク流入配管と、
前記インク流入配管と前記供給枝配管とを接続するための第2コネクタと、
を含み、
前記供給タンクと前記供給配管と前記供給枝配管と前記インク流入配管と前記インク排出配管と前記回収枝配管と前記回収配管と前記回収タンクと前記還流配管とによって、インクが循環する循環流路が形成され、
前記交換作業結果検査ステップは、
交換後のヘッドである新ヘッドにインクが供給されるよう前記循環流路でのインクの循環を開始させるインク循環開始ステップと、
前記回収タンクおよび前記供給タンクの少なくとも一方におけるインク液面の高さを表すインク液面位置に基づいて、前記新ヘッドに含まれる前記インク排出配管と前記回収枝配管との前記第1コネクタを介した接続および前記新ヘッドに含まれる前記インク流入配管と前記供給枝配管との前記第2コネクタを介した接続を含む配管接続が正しく行われているかを判定する接続状態判定ステップと
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
上記第1の発明によれば、ユーザーによるヘッドの交換の終了後、回収タンクおよび供給タンクの少なくとも一方におけるインク液面位置に基づいて、インク排出配管と回収枝配管との接続およびインク流入配管と供給枝配管との接続を含む配管接続が正しく行われているか否かの判定が行われる。循環流路でのインクの循環が開始されても配管接続に異常があればインク液面位置は変化しないので、印刷媒体への印字を行うことなく配管接続の異常が検知される。以上のように、インクジェット印刷装置に関し、印字を行うことなく配管接続の異常を検知することのできるヘッド交換方法を提供することが可能となる。
【0027】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0028】
上記第3の発明によれば、非交換対象ヘッドにはインクが循環されない状態で第1のインク液面位置が確認されるので、新ヘッドの配管接続の状態を精度良く検出することが可能となる。
【0029】
上記第4の発明によれば、異常が検出されたときにインク排出配管と回収枝配管との接続の異常と第1の液面センサの異常とを区別することが可能となる。
【0030】
上記第5の発明によれば、印字を行うことなく、インク流入配管と供給枝配管との接続が正しく行われているかを検出することが可能となる。
【0031】
上記第6の発明によれば、上記第5の発明と同様の効果が得られる。
【0032】
上記第7の発明によれば、異常が検出されたときにインク流入配管と供給枝配管との接続の異常と第2の液面センサの異常とを区別することが可能となる。
【0033】
上記第8の発明によれば、実際にヘッドの交換が行われる前に既存の構成要素(液面センサやバルブなど)の異常を検知することが可能となる。
【0034】
上記第9の発明によれば、異常が検出されたときにバルブの異常と液面センサの異常とを区別することが可能となる。
【0035】
上記第10の発明によれば、異常が検出されたときに回収制御バルブの異常と供給制御バルブの異常と第1の液面センサの異常と第2の液面センサの異常とを区別することが可能となる。
【0036】
上記第11の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0037】
上記第12の発明によれば、ユーザーに特別な操作負担を課すことなく、ヘッドの交換に伴う配管接続の異常を検知することが可能となる。
【0038】
上記第13の発明によれば、ユーザーは、ヘッド交換後に、配管接続が正しく行われているか否かを印字を行うことなく速やかに把握することが可能となる。
【0039】
上記第14の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0040】
上記第15の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置の一構成例を示す模式図である。
【
図2】上記実施形態における印刷部の一構成例を示す平面図である。
【
図3】上記実施形態において、1つのヘッドユニットに対応するインク供給機構の構成を示す模式図である。
【
図4】上記実施形態におけるヘッド(印刷ヘッド)の外観を模式的に示す斜視図である。
【
図5】上記実施形態において、ヘッドを保持するヘッド保持プレートについて説明するための図である。
【
図6】上記実施形態において、ヘッドのクリーニングが行われる際のヘッドとクリーニング機構との位置関係を模式的に示す図である。
【
図7】上記実施形態において、印刷用紙への印刷が実行される際のヘッドとクリーニング機構との位置関係を模式的に示す図である。
【
図8】上記実施形態における印刷制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図9】上記実施形態において、インク供給機構の制御に関わる構成について説明するためのブロック図である。
【
図10】ヘッド交換前に循環流路でのインクの循環が通常どおりに行われている時のインク供給機構の状態を示す図である。
【
図11】循環流路でのインクの循環が停止している時のインク供給機構の状態を示す図である。
【
図12】ヘッド保持プレートから古いヘッドが取り外された時のインク供給機構の状態を示す図である。
【
図13】クリーニングが行われる時のインク供給機構の状態を示す図である。
【
図14】クリーニングの実行後に供給タンクで大気開放が行われる時のインク供給機構の状態を示す図である。
【
図15】ヘッド交換後に循環流路でのインクの循環が再開された時のインク供給機構の状態を示す図である。
【
図16】上記実施形態におけるヘッド交換処理の手順を示すフローチャートである。
【
図17】上記実施形態におけるヘッド交換処理の手順を示すフローチャートである。
【
図18】上記実施形態において、交換対象ヘッドに対応するバルブのみを開状態に設定することについて説明するための図である。
【
図19】上記実施形態において、ヘッド交換画面の一例を示す図である。
【
図20】上記実施形態において、ユーザーによるヘッドの取り替え作業の手順を示すフローチャートである。
【
図21】上記実施形態において、配管接続促進画面の一例を示す図である。
【
図22】上記実施形態の第1の変形例におけるヘッド交換処理の手順を示すフローチャートである。
【
図23】上記実施形態の第2の変形例におけるヘッド交換処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
【0043】
<1.インクジェット印刷装置の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置10の一構成例を示す模式図である。このインクジェット印刷装置10は、印刷制御装置100と印刷機本体200とによって構成されている。印刷機本体200は、印刷媒体である印刷用紙(例えばロール紙)PAを供給する用紙送出部21と、印刷用紙PAへの印刷を行う印刷機構20と、印刷後の印刷用紙PAを巻き取る用紙巻取部29とを備えている。印刷機構20は、印刷用紙PAを内部へと搬送するための第1の駆動ローラ22と、印刷機構20の内部で印刷用紙PAを搬送するための複数個の支持ローラ23と、インクを吐出することにより印刷用紙PAへの印字を行う印刷部24と、印刷部24のクリーニングを行うクリーニング機構25と、印刷後の印刷用紙PAを乾燥させる乾燥部26と、印刷画像(印刷後の印刷用紙PA)を撮像し、印刷画像の良否や後述するノズルからのインク吐出状態を確認するための撮像部27と、印刷用紙PAを印刷機構20の内部から出力するための第2の駆動ローラ28とを備えている。なお、撮像部27による印刷画像の撮像によって得られた撮像データDcは印刷制御装置100に送られ、当該撮像データDcを用いた検査が行われる。
【0044】
印刷制御装置100は、以上のような構成の印刷機本体200の動作を制御する。印刷制御装置100に印刷出力の指示コマンドが与えられると、印刷制御装置100は、印刷用紙PAが用紙送出部21から用紙巻取部29へと搬送されるよう、印刷機本体200の動作を制御する。そして、まず印刷部24によって印刷用紙PAへの印刷が行われ、次に乾燥部26によって印刷用紙PAの乾燥が行われ、最後に必要に応じて撮像部27による印刷画像の撮像が行われる。また、必要に応じて、クリーニング機構25による印刷部24のクリーニングが行われる。
【0045】
図2は、印刷部24の一構成例を示す平面図である。
図2に示すように、印刷部24は、印刷用紙PAの搬送方向に列置されたC色(シアン色)、M色(マゼンタ色)、Y色(黄色)、およびK色(黒色)のヘッドユニット2C、2M、2Y、および2Kから構成されている。各ヘッドユニットは、千鳥状に配置された複数個(本実施形態では5個)のヘッド(印刷ヘッド)240により構成されている。各ヘッド240には、インクを吐出する多数のノズルが含まれている。C色のヘッドユニット2Cに含まれるヘッド240の各ノズルはC色のインクを吐出し、M色のヘッドユニット2Mに含まれるヘッド240の各ノズルはM色のインクを吐出し、Y色のヘッドユニット2Yに含まれるヘッド240の各ノズルはY色のインクを吐出し、K色のヘッドユニット2Kに含まれるヘッド240の各ノズルはK色のインクを吐出する。
【0046】
<2.インク供給機構>
図3は、1つのヘッドユニットに対応するインク供給機構の構成を示す模式図である。インク供給機構は、5個のヘッド240(1)~240(5)に供給するためのインクを蓄積する供給タンク52と、5個のヘッド240(1)~240(5)から回収されたインクを蓄積する回収タンク51と、回収タンク51内の気圧を調整する第1の圧力調整機構512と、供給タンク52内の気圧を調整する第2の圧力調整機構522と、回収タンク51におけるインク液面の高さを表す第1のインク液面位置を検出する第1の液面センサ511と、供給タンク52におけるインク液面の高さを表す第2のインク液面位置を検出する第2の液面センサ521と、供給タンク52から5個のヘッド240(1)~240(5)へと供給されるインクの流路を形成する供給配管(供給マニホールド)53と、5個のヘッド240(1)~240(5)から回収タンク51へと回収されるインクの流路を形成する回収配管(回収マニホールド)54と、回収タンク51から供給タンク52へとインクを還流させるための還流配管55と、供給配管53から5個のヘッド240(1)~240(5)のそれぞれへと流れるインクの流路を形成する5本の供給枝配管530(1)~530(5)と、5個のヘッド240(1)~240(5)のそれぞれから回収配管54へと流れるインクの流路を形成する5本の回収枝配管540(1)~540(5)と、5個のヘッド240(1)~240(5)にそれぞれ対応して設けられた5個の供給制御バルブ531(1)~531(5)と、5個のヘッド240(1)~240(5)にそれぞれ対応して設けられた5個の回収制御バルブ541(1)~541(5)と、還流配管55に設けられたポンプ551と、還流配管55に設けられたリターン制御バルブ552とを含んでいる。各供給制御バルブ531は、対応する供給枝配管530におけるインクの流れを制御し、各回収制御バルブ541は、対応する回収枝配管540におけるインクの流れを制御し、リターン制御バルブ552は、還流配管55におけるインクの流れを制御する。ポンプ551は、回収タンク51から供給タンク52に向けてインクを送液する。なお、供給制御バルブ531、回収制御バルブ541、およびリターン制御バルブ552は、典型的には、電気のオン/オフによりインクの流れを制御する電磁弁である。
【0047】
上記構成において、「供給タンク52~供給配管53~供給枝配管531~ヘッド240~回収枝配管541~回収配管54~回収タンク51~還流配管55~供給タンク52」の順にインクが循環する循環流路が形成される。
【0048】
<3.ヘッドの構成>
図4は、ヘッド(印刷ヘッド)240の外観を模式的に示す斜視図である。
図4に示すように、ヘッド240は、本体部241と、ベース板242と、駆動信号用の通信ケーブルに接続するための通信コネクタ243と、インク排出配管244と、インク排出配管244を回収枝配管540に接続するためのコネクタとして機能する第1のノンスピル245と、インク流入配管246と、インク流入配管246を供給枝配管530に接続するためのコネクタとして機能する第2のノンスピル247とを含んでいる。インク排出配管244およびインク流入配管246は、上述した循環流路を形成する構成要素となる。なお、第1のノンスピル245によって第1コネクタが実現され、第2のノンスピル247によって第2コネクタが実現される。
【0049】
本体部241には、内部タンク(不図示)が含まれている。ベース板242には、インク流入配管246から内部タンクへと流れるインクの流路および内部タンクからインク排出配管244へと流れるインクの流路が含まれている。本体部241には、また、ベース板242の裏面側に露出する多数のノズルが設けられている。各ノズルと内部タンクとの間にはインクが貯留するキャビティが設けられ、キャビティには圧電素子(ピエゾ素子)が設けられている。このような構成において、所定の駆動波形を有する駆動信号が圧電素子に与えられると、その駆動信号に基づいて圧電素子が変形する。これにより、インクがキャビティから押し出されて、ノズルからインクが吐出される。
【0050】
図5は、ヘッド240を保持するヘッド保持プレート40について説明するための図である。ヘッド保持プレート40は、板状の部材であって、本実施形態においては5個のヘッド240を保持するための5個のヘッド保持部41が設けられている。ヘッド240をヘッド保持プレート40に取り付ける際には、符号49を付した矢印で示すように、ヘッド240のベース板242がヘッド保持部41の位置に配置される。ところで、各ヘッド保持部41には貫通孔42が形成されている。このようにヘッド保持部41に貫通孔42が形成されていることにより、ヘッド240がヘッド保持部41に保持されると、当該ヘッド240に設けられている多数のノズルはヘッド保持プレート40の裏面側に露出する。これにより、ヘッド240から印刷用紙PAに対してインクを吐出することが可能となっている。
【0051】
<4.クリーニング機構>
図6および
図7を参照しつつ、クリーニング機構25の構成および動作について説明する。
図6は、ヘッド240のクリーニングが行われる際のヘッド240とクリーニング機構25との位置関係を模式的に示す図であり、
図7は、印刷用紙PAへの印刷が実行される際のヘッド240とクリーニング機構25との位置関係を模式的に示す図である。なお、本実施形態においては、印刷制御装置100による制御によりクリーニング機構25の位置の移動が可能となっている。以下、便宜上、クリーニングが行われる際のクリーニング機構25の位置(
図6参照)を「ホーム位置」といい、印刷用紙PAへの印刷が実行される際のクリーニング機構25の位置(
図7参照)を「アウェイ位置」という。
【0052】
クリーニング機構25は、複数個のキャップ252を含むキャップユニット251とワイパー254を含むワイパーユニット253とによって構成されている。クリーニングが行われる際には、
図6に示すように、各キャップ252がそれに対応するヘッド240の印字面を覆って当該印字面を密閉する。このような状態で、ヘッド240内の内部タンクの気圧を高めることによりノズル内に残存しているインクをキャップ252に向けて強制的に吐出させるパージ処理(加圧パージ)が行われる。クリーニングが終了すると、クリーニング機構25はホーム位置からアウェイ位置へと移動する。クリーニング機構25がホーム位置からアウェイ位置へと移動する際、ワイパー254がヘッド240の印字面の汚れを拭き取るワイピング処理が行われる。
【0053】
<5.制御のための構成>
<5.1 印刷制御装置のハードウェア構成>
図8は、印刷制御装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8に示すように、印刷制御装置100は、本体110、補助記憶装置121、光ディスクドライブ122、表示部123、キーボード124、およびマウス125などを備えている。本体110は、CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、および通信インタフェース部117を含んでいる。CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、および通信インタフェース部117は、システムバスを介して互いに接続されている。第1ディスクインタフェース部113には補助記憶装置121が接続されている。第2ディスクインタフェース部114には光ディスクドライブ122が接続されている。表示制御部115には、表示部(表示装置)123が接続されている。入力インタフェース部116には、キーボード124およびマウス125が接続されている。通信インタフェース部117には、通信ケーブルを介して印刷機本体200が接続されている。また、通信インタフェース部117はLAN4に接続されている。補助記憶装置121は磁気ディスク装置などである。光ディスクドライブ122には、CD-ROMやDVD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体としての光ディスク5が挿入される。表示部123は液晶ディスプレイなどである。表示部123は、オペレータが所望する情報を表示するために使用される。キーボード124およびマウス125は、この印刷制御装置100に対して作業者が指示を入力するために使用される。
【0054】
補助記憶装置121には、印刷制御プログラム(印刷機本体200による印刷処理の実行を制御するためのプログラム)18が格納されている。印刷制御プログラム18には、サブプログラムとして、ユーザーによるヘッド240の交換を支援するためのヘッド交換支援プログラム19が含まれている。CPU111は、補助記憶装置121に格納された印刷制御プログラム18をメモリ112に読み出して実行することにより、印刷制御装置100の各種機能を実現する。メモリ112は、RAMおよびROMを含んでいる。メモリ112は、補助記憶装置121に格納された印刷制御プログラム18をCPU111が実行するためのワークエリアとして機能する。なお、印刷制御プログラム18は、上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過性の記録媒体)に格納されて提供される。すなわち、ユーザーは、例えば、印刷制御プログラム18の記録媒体としての光ディスク5を購入して光ディスクドライブ122に挿入し、光ディスク5から印刷制御プログラム18を読み出して補助記憶装置121にインストールする。
【0055】
<5.2 インク供給機構の制御に関わる構成>
図9は、上述したインク供給機構の制御に関わる構成について説明するためのブロック図である。
図9から把握されるように、ヘッド240、クリーニング機構25、第1の液面センサ511、第1の圧力調整機構512、第2の液面センサ521、第2の圧力調整機構522、供給制御バルブ531、回収制御バルブ541、ポンプ551、およびリターン制御バルブ552の動作は、印刷制御装置100で印刷制御プログラム18が実行されることによって実現される制御部150によって制御される。
【0056】
<6.ヘッドの交換方法>
<6.1 ヘッド交換の基本的な流れ>
本実施形態におけるヘッド交換の手順について説明する前に、ヘッド交換の基本的な流れについて説明する。ここでは、従来の手順で何ら異常が生じることなくヘッド交換が正常に行われるケースの各構成要素の状態等に着目する。なお、
図10~
図15では、交換対象ヘッド以外のヘッドおよびそれに対応する構成要素の図示を省略している。また、以下においては、複数のヘッド240のうちの特定のヘッドのみにインクが供給されるように循環流路でインクを循環させることを「単体循環」という。
【0057】
ヘッド交換前に循環流路でのインクの循環が通常どおりに行われている時のインク供給機構の状態は、
図10に示すような状態である。この時、交換対象ヘッドに対応する供給制御バルブ531、交換対象ヘッドに対応する回収制御バルブ541、およびリターン制御バルブ552は開状態であり、ポンプ551は稼働状態である。なお、交換対象ヘッド以外のヘッドに対応する供給制御バルブ531および交換対象ヘッド以外のヘッドに対応する回収制御バルブ541も開状態である。また、回収タンク51内の気圧は第1の圧力調整機構512によって負圧に設定され、供給タンク52内の気圧は第2の圧力調整機構522によって正圧に設定されている。循環流路でインクが循環しているので、第1のインク液面位置(第1の液面センサ511によって検出される、回収タンク51におけるインク液面の高さ)および第2のインク液面位置(第2の液面センサ521によって検出される、供給タンク52におけるインク液面の高さ)は、随時、変化している。
【0058】
古いヘッドを新しいヘッドに実際に取り替えるのに先立って、循環流路でのインクの循環が停止される。循環流路でのインクの循環が停止している時のインク供給機構の状態は、
図11に示すような状態である。この時、全ての供給制御バルブ531、全ての回収制御バルブ541、およびリターン制御バルブ552は閉状態であり、ポンプ551は停止状態である。循環流路でのインクの循環が停止しているので、回収タンク51へのインクの流入および回収タンク51からのインクの流出はなく、かつ、供給タンク52へのインクの流入および供給タンク52からのインクの流出はない。従って、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置は変化しない。
【0059】
循環流路でのインクの循環が停止している状態で、古いヘッドを新しいヘッドに実際に取り替える作業が行われる。その際、まず、古いヘッドの通信コネクタ243(
図4参照)から駆動信号用の配線(通信ケーブル)が取り外され、次に、古いヘッドの第1のノンスピル245および第2のノンスピル247のそれぞれから回収枝配管540および供給枝配管530が取り外される。そして、ヘッド保持プレート40から古いヘッドが取り外される。この時のインク供給機構の状態は、
図12に示すような状態である。その後、ヘッド保持プレート40への新しいヘッドの取り付け、新しいヘッドの第1のノンスピル245および第2のノンスピル247のそれぞれへの回収枝配管540および供給枝配管530の接続、新しいヘッドの通信コネクタ243への駆動信号用の配線(通信ケーブル)の接続が行われる。
【0060】
その後、新しいヘッドに対応する供給制御バルブ531が開状態に設定され、第2の圧力調整機構522によって供給タンク52内の気圧が大きく高められる(供給タンク52内に大きな加圧がかけられる)。これにより、供給タンク52内のインクが供給配管53および供給枝配管530を介して新しいヘッド240へと流れ、新しいヘッド240内の洗浄液がヘッドクリーニング用のキャップ252へと排出される。このようにして、クリーニング(加圧パージ)が行われる。この時のインク供給機構の状態は、
図13に示すような状態である。この時、第1のインク液面位置は変化しないが、第2のインク液面位置は低下する。
【0061】
次に、新しいヘッドに対応する供給制御バルブ531が閉状態に設定され、第2の圧力調整機構522により供給タンク52で大気開放が行われる。この時のインク供給機構の状態は、
図14に示すような状態である。第2のインク液面位置は、大気開放により上昇するが、クリーニング前の位置よりは低い位置となる。なお、第1のインク液面位置は変化しない。
【0062】
供給タンク52で大気開放が行われた後、新しいヘッドに対応する供給制御バルブ531を含む全ての供給制御バルブ531、新しいヘッドに対応する回収制御バルブ541を含む全ての回収制御バルブ541、およびリターン制御バルブ552が開状態に設定され、ポンプ551が稼働状態に設定される。また、回収タンク51内の気圧は第1の圧力調整機構512によって負圧に設定され、供給タンク52内の気圧は第2の圧力調整機構522によって正圧に設定される。以上のようにして、循環流路でのインクの循環が再開される。この時のインク供給機構の状態は、
図15に示すような状態である。循環流路でインクが循環するので、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置は、随時、変化する。
【0063】
<6.2 ヘッド交換処理>
以上を踏まえ、本実施形態におけるヘッド交換処理(古いヘッドを新しいヘッドに実際に取り替える作業を含むヘッド交換に関わる一連の処理)について説明する。
図16および
図17は、本実施形態におけるヘッド交換処理の手順を示すフローチャートである。
【0064】
制御部150は、撮像部27による印刷画像の撮像結果等に基づいて、ヘッド交換の要否判定と、ヘッド交換が必要な場合は交換対象ヘッドの特定とを、順次実行する。制御部150は、ヘッド交換が必要とされた場合には、ヘッド交換処理を開始する。まず、交換対象ヘッドへのインクの単体循環が行われる(ステップS100)。詳しくは、供給制御バルブ531(1)~531(5)および回収制御バルブ541(1)~541(5)のうち交換対象ヘッドに対応するバルブのみを開状態に設定してインクの循環が行われる。例えば、ヘッド240(3)が交換対象ヘッドであれば、
図18に示すように、供給制御バルブ531(1)~531(5)および回収制御バルブ541(1)~541(5)のうち供給制御バルブ531(3)および回収制御バルブ541(3)のみが開状態に設定される。また、回収タンク51内の気圧は負圧に設定され、供給タンク52内の気圧は正圧に設定される。なお、リターン制御バルブ552は開状態であり、ポンプ551は稼働状態である。以上のようにして、ヘッドユニット2を構成する複数のヘッド240のうち交換対象ヘッドのみにインクが供給されるように循環流路でのインクの循環が行われる。
【0065】
次に、交換対象ヘッドへのインクの単体循環が行われている状態で第1のインク液面位置および第2のインク液面位置が継続的に確認され、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の双方に変化があるか否かが判定される(ステップS110)。その結果、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の双方に変化があれば処理はステップS300に進み、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の少なくとも一方に変化がなければ処理はステップS200に進む。
【0066】
ステップS200では、非交換対象ヘッドへのインクの循環が行われる。詳しくは、供給制御バルブ531(1)~531(5)および回収制御バルブ541(1)~541(5)のうち交換対象ヘッドに対応するバルブのみを閉状態に設定してインクの循環が行われる。
【0067】
次に、非交換対象ヘッドへのインクの循環が行われている状態で第1のインク液面位置および第2のインク液面位置が確認され、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の双方に変化があるか否かが判定される(ステップS210)。その結果、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の双方に変化があれば、交換対象ヘッドに対応するバルブに異常がある旨の判定が行われ(ステップS220)、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の少なくとも一方に変化がなければ、液面センサに異常がある旨の判定が行われる(ステップS230)。ステップS220あるいはステップS230で異常の判定が行われた場合には、異常が生じている機器の修理あるいは交換がサービスマン等によって行われた後、ステップS100から処理のやり直しが行われる。ところで、ステップS220では、詳しくは次のように判定が行われる。ステップS110において第1のインク液面位置に変化がなかった場合には、交換対象ヘッドに対応する回収制御バルブ541に異常がある旨の判定が行われ、ステップS110において第2のインク液面位置に変化がなかった場合には、交換対象ヘッドに対応する供給制御バルブ531に異常がある旨の判定が行われる。また、ステップS230では、詳しくは次のように判定が行われる。ステップS110において第1のインク液面位置に変化がなかった場合には、第1の液面センサ511に異常がある旨の判定が行われ、ステップS110において第2のインク液面位置に変化がなかった場合には、第2の液面センサ521に異常がある旨の判定が行われる。
【0068】
ステップS300では、循環流路でのインクの循環が停止される。詳しくは、供給制御バルブ531(1)~531(5)、回収制御バルブ541(1)~541(5)、およびリターン制御バルブ552は閉状態に設定され、かつ、ポンプ551は停止状態に設定されることによって、循環流路でのインクの循環が停止される。
【0069】
その後、ユーザーに対してヘッドの交換(取り替え)を促すメッセージを含む例えば
図19に示すようなヘッド交換画面600が印刷制御装置100の表示部123に表示される(ステップS310)。なお、
図19における「N番」は交換対象となる古いヘッドを特定するための仮の番号である。ヘッド交換画面600には、ユーザーによるヘッドの取り替え作業の終了後にユーザーが押下するための完了ボタン610が含まれている。
【0070】
ヘッド交換画面の表示後、ユーザーによるヘッドの取り替え作業が行われる(ステップS320)。すなわち、実際にヘッドユニット2から古いヘッドを取り外して当該ヘッドユニット2に新しいヘッドを取り付ける作業がユーザーによって行われる。
【0071】
図20は、ユーザーによるヘッドの取り替え作業の手順を示すフローチャートである。ユーザーは、まず、交換対象ヘッドの通信コネクタ243(
図4参照)から駆動信号用の配線を取り外す(ステップS11)。次に、ユーザーは、インク供給用の配管の取り外しを行う(ステップS12)。詳しくは、ユーザーは、交換対象ヘッドの第1のノンスピル245および第2のノンスピル247のそれぞれから回収枝配管540および供給枝配管530を取り外す。すなわち、交換対象ヘッドに含まれるインク排出配管244が回収枝配管540から取り外され、交換対象ヘッドに含まれるインク流入配管246が供給枝配管530から取り外される。次に、ユーザーは、ヘッド保持プレート40から交換対象ヘッドである古いヘッドを取り外す(ステップS13)。その後、ユーザーは、ヘッド保持プレート40に新しいヘッドを取り付ける(ステップS14)。次に、ユーザーは、インク供給用の配管の接続を行う(ステップS15)。詳しくは、ユーザーは、新しいヘッドの第1のノンスピル245および第2のノンスピル247にそれぞれ回収枝配管540および供給枝配管530を接続する。すなわち、新しいヘッドに含まれるインク排出配管244が回収枝配管540に接続され、新しいヘッドに含まれるインク流入配管246が供給枝配管530に接続される。最後に、ユーザーは、新しいヘッドの通信コネクタ243に駆動信号用の配線を接続する(ステップS16)。
【0072】
なお、本実施形態においては、ステップS12によって配管取り外しステップが実現され、ステップS13によってヘッド取り外しステップが実現され、ステップS14によってヘッド取り付けステップが実現され、ステップS15によって配管接続ステップが実現されている。
【0073】
以上のようにしてユーザーによるヘッドの取り替え作業が行われた後、印刷制御装置100の表示部123に表示されているヘッド交換画面600(
図19参照)に含まれている上述した完了ボタン610がユーザーによって押下される(ステップS330)。このようにして、印刷制御装置100は、ヘッドの交換(取り替え)が完了した旨の入力を受け付ける。
【0074】
完了ボタン610が押下された後、第2の圧力調整機構522により供給タンク52で大気開放が行われる。そして、大気開放状態での供給タンク52のインク液面位置(第2のインク液面位置)が第2の液面センサ521によって検出され、その検出されたインク液面位置が記憶される(ステップS340)。なお、このとき、供給制御バルブ531(1)~531(5)、回収制御バルブ541(1)~541(5)、およびリターン制御バルブ552は閉状態に設定されている。
【0075】
次に、新しいヘッドのクリーニングが行われる(ステップS350)。このステップS350では、まず、クリーニング機構25がアウェイ位置からホーム位置へと移動する。そして、新しいヘッドに対応する供給制御バルブ531のみが開状態に設定された後、第2の圧力調整機構522によって供給タンク52内の気圧が大きく高められる(供給タンク52内に大きな加圧がかけられる)。これにより、供給タンク52から新しいヘッドへとインクが流れ、新しいヘッド内の洗浄液が当該新しいヘッドを覆うキャップ252へと排出される。なお、新しいヘッドに対応する回収制御バルブ531のみを開状態に設定して第1の圧力調整機構512により回収タンク51内の気圧を大きく高めることによって新しいヘッドのクリーニングを行うようにしても良い。また、本実施形態においては加圧パージによって新しいヘッド内の洗浄液がキャップ252へと排出されるが、本発明はこれに限定されず、キャップ252に接続された吸引ポンプを用いた吸引パージによって新しいヘッド内の洗浄液がキャップ252へと排出されるようにしても良い。
【0076】
次に、新しいヘッドに対応する供給制御バルブ531が閉状態に設定された後、第2の圧力調整機構522により供給タンク52で大気開放が行われる。そして、大気開放状態での供給タンク52のインク液面位置(第2のインク液面位置)が第2の液面センサ521によって検出される(ステップS360)。
【0077】
次に、ステップS360で検出されたインク液面位置がステップS340で記憶されたインク液面位置から変化しているか否かが判定される(ステップS370)。より詳しくは、ステップS360で検出されたインク液面位置がステップS340で記憶されたインク液面位置よりも低いか否かが判定される。その結果、ステップS360で検出されたインク液面位置がステップS340で記憶されたインク液面位置よりも低ければ処理はステップS400に進み、ステップS360で検出されたインク液面位置がステップS340で記憶されたインク液面位置よりも低くなければ処理はステップS600に進む。なお、異常が生じていなければ、ステップS360で検出されたインク液面位置はステップS340で記憶されたインク液面位置よりも低くなる。
【0078】
ステップS400では、新しいヘッドへのインクの単体循環が行われる(ステップS400)。詳しくは、供給制御バルブ531(1)~531(5)および回収制御バルブ541(1)~541(5)のうち新しいヘッドに対応するバルブのみを開状態に設定してインクの循環が行われる。なお、このとき、回収タンク51内の気圧は負圧に設定され、供給タンク52内の気圧は正圧に設定され、リターン制御バルブ552は開状態に設定され、ポンプ551は稼働状態に設定される。
【0079】
その後、新しいヘッドへのインクの単体循環が行われている状態で第1のインク液面位置が継続的に確認され、第1のインク液面位置に変化があるか否かが判定される(ステップS410)。その結果、第1のインク液面位置に変化があれば、ヘッドの交換が正常に行われた旨の判定が行われ(ステップS500)、このヘッド交換処理は終了する。一方、第1のインク液面位置に変化がなければ、処理はステップS600に進む。
【0080】
ステップS600では、ステップS200と同様、非交換対象ヘッドへのインクの循環が行われる。次に、非交換対象ヘッドへのインクの循環が行われている状態で第1のインク液面位置および第2のインク液面位置が確認され、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の双方に変化があるか否かが判定される(ステップS610)。その結果、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の双方に変化があれば、処理はステップS700に進む。一方、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の少なくとも一方に変化がなければ、液面センサに異常がある旨の判定が行われ(ステップS800)、ヘッド交換処理は一旦終了する。このとき、異常が生じている液面センサの修理あるいは交換がサービスマン等によって行われた後、例えばステップS340から処理のやり直しが行われる。なお、ステップS800では、詳しくは次のように判定が行われる。ステップS410において第1のインク液面位置に変化がなかった場合には、第1の液面センサ511に異常がある旨の判定が行われ、ステップS370において第2のインク液面位置に変化がなかった場合には、第2の液面センサ521に異常がある旨の判定が行われる。
【0081】
ステップS700では、配管接続に異常がある旨の判定が行われる。詳しくは、ステップS410において第1のインク液面位置に変化がなかった場合には、新しいヘッドに関して第1のノンスピル245を介したインク排出配管244と回収枝配管540との接続に異常がある旨の判定が行われ、ステップS370において第2のインク液面位置に変化がなかった場合には、新しいヘッドに関して第2のノンスピル247を介したインク流入配管246と供給枝配管530との接続に異常がある旨の判定が行われる。
【0082】
その後、ユーザーに対して配管接続のやり直しを促すメッセージを含む例えば
図21に示すような配管接続促進画面700が印刷制御装置100の表示部123に表示される(ステップS710)。配管接続促進画面700には、ユーザーによる配管接続作業の終了後にユーザーが押下するための完了ボタン710が含まれている。なお、
図21には、新しいヘッドに関して第2のノンスピル247を介したインク流入配管246と供給枝配管530との接続に異常がある場合のメッセージの例を示している。
【0083】
配管接続促進画面700の表示後、ユーザーによる配管接続(新しいヘッドに関して、第1のノンスピル245を介したインク排出配管244と回収枝配管540との接続および第2のノンスピル247を介したインク流入配管246と供給枝配管530との接続)のやり直しが行われる(ステップS720)。
【0084】
ユーザーによる配管接続のやり直しが行われた後、印刷制御装置100の表示部123に表示されている配管接続促進画面700(
図21参照)に含まれている上述した完了ボタン710がユーザーによって押下される(ステップS730)。
【0085】
ステップS730の終了後、処理はステップS340またはステップS400に戻る。これに関し、ステップS370において第2のインク液面位置に変化がなかった場合には、処理はステップS340に戻り、ステップS410において第1のインク液面位置に変化がなかった場合には、処理はステップS400に戻る。
【0086】
なお、ステップS500、ステップS600、およびステップS700での判定結果は、印刷制御装置100の表示部123に表示される。すなわち、配管接続が正しく行われているか否かの判定結果が表示部123に表示される。従って、ユーザーは、ヘッド交換後に、配管接続が正しく行われているか否かを速やかに把握することができる。
【0087】
本実施形態においては、ステップS100およびステップS110によってインク液面位置事前確認ステップが実現され、ステップS200およびステップS210によって液面センサ検査ステップが実現され、ステップS310によってメッセージ出力ステップが実現され、ステップS330によって交換完了受け付けステップが実現され、ステップS340、ステップS350、ステップS360、およびステップS370によって供給側接続状態判定ステップが実現され、ステップS400によってインク循環開始ステップが実現され、ステップS410、ステップS500、ステップS600、ステップS610、ステップS700、およびステップS800によって接続状態判定ステップが実現されている。また、ステップS340によって第2のインク液面位置記憶ステップが実現され、ステップS350によって加圧ステップが実現され、ステップS360およびステップS370によって第2のインク液面位置確認ステップが実現され、ステップS410によって第1のインク液面位置確認ステップが実現され、ステップS600およびステップS610によってインク液面位置再確認ステップが実現されている。
【0088】
<7.効果>
本実施形態によれば、ユーザーによるヘッド240の交換の終了後、回収タンク51や供給タンク52におけるインク液面位置(インク液面の高さ)に基づいて、インク排出配管244と回収枝配管540との接続およびインク流入配管246と供給枝配管530との接続を含む配管接続が正しく行われているか否かの判定が行われる。循環流路でのインクの循環が開始されても配管接続に異常があればインク液面位置は変化しないので、本実施形態の構成により、印刷媒体への印字を行うことなく配管接続の異常を検知することが可能となる。また、印刷媒体への印字前に配管接続の異常を検知することができることから、インクや印刷媒体の無駄な消費が抑制される。このように、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献することが可能となる。以上のように、本実施形態によれば、インクジェット印刷装置に関し、印字を行うことなく配管接続の異常を検知することのできるヘッド交換方法を提供することが可能となる。また、本実施形態によれば、ヘッド交換によって異常が生じたときに、異常の原因(不良箇所)を速やかに特定することが可能となる。具体的には、インク排出配管244と回収枝配管540との接続、インク流入配管246と供給枝配管530との接続、第1の液面センサ511、第2の液面センサ521、回収制御バルブ541、および供給制御バルブ542のうちのいずれに異常があるのかを特定することが可能となる。
【0089】
<8.変形例>
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0090】
<8.1 第1の変形例>
図22は、上記実施形態の第1の変形例におけるヘッド交換処理の手順を示すフローチャートである。本変形例においては、ヘッド交換処理の開始後、まず、循環流路でのインクの循環が停止される(ステップS300)。その後、上記実施形態と同様のステップS310~ステップS360の処理が行われる。そして、ステップS370では、ステップS360で検出されたインク液面位置がステップS340で記憶されたインク液面位置よりも低いか否かが判定される。その結果、ステップS360で検出されたインク液面位置がステップS340で記憶されたインク液面位置よりも低ければ、処理はステップS400に進む。一方、ステップS360で検出されたインク液面位置がステップS340で記憶されたインク液面位置よりも低くなければ、何らかの異常がある旨の判定が行われ(ステップS375)、ヘッド交換処理は一旦終了する。
【0091】
ステップS400では、新しいヘッドへのインクの単体循環が行われる。そして、新しいヘッドへのインクの単体循環が行われている状態で第1のインク液面位置が継続的に確認され、第1のインク液面位置に変化があるか否かが判定される(ステップS410)。その結果、第1のインク液面位置に変化があれば、ヘッドの交換が正常に行われた旨の判定が行われ(ステップS500)、このヘッド交換処理は終了する。一方、第1のインク液面位置に変化がなければ、何らかの異常がある旨の判定が行われ(ステップS415)、ヘッド交換処理は一旦終了する。
【0092】
なお、ステップS375あるいはステップS415で何らかの異常がある旨の判定が行われた場合には、異常原因の特定および処置(例えば、機器の修理や交換)がサービスマン等によって行われた後、適宜のステップからヘッド交換処理のやり直しが行われる。
【0093】
本変形例においては、ステップS310によってメッセージ出力ステップが実現され、ステップS330によって交換完了受け付けステップが実現され、ステップS340、ステップS350、ステップS360、およびステップS370によって供給側接続状態判定ステップが実現され、ステップS400によってインク循環開始ステップが実現され、ステップS410、ステップS415、およびステップS500によって接続状態判定ステップが実現されている。また、ステップS340によって第2のインク液面位置記憶ステップが実現され、ステップS350によって加圧ステップが実現され、ステップS360およびステップS370によって第2のインク液面位置確認ステップが実現され、ステップS410によって第1のインク液面位置確認ステップが実現されている。
【0094】
以上のように、本変形例においては、上記実施形態におけるステップS100~ステップS230の処理(
図16参照)が設けられていない。すなわち、本変形例においては、循環流路でのインクの循環の停止(ステップS300)前に交換対象ヘッド(古いヘッド)へのインクの単体循環を行ってバルブや液面センサの異常の有無を確認する処理が行われない。また、本変形例においては、上記実施形態におけるステップS600~ステップS800の処理(
図17参照)が設けられていない。すなわち、本変形例においては、ヘッド240の交換後にインク液面位置が正常に変化しなかったときに非交換対象ヘッドへのインクの循環を行って液面センサに異常があるのか配管接続に異常があるのかを確認する処理が行われない。
【0095】
本変形例によれば、ヘッド交換の際に生じた異常の原因を速やかに特定することはできないが、ヘッド交換が正常に行われたか否かを印字を行うことなく判定することが可能となる。
【0096】
<8.2 第2の変形例>
図23は、上記実施形態の第2の変形例におけるヘッド交換処理の手順を示すフローチャートである。本変形例においては、ヘッド交換処理の開始後、まず、交換対象ヘッド(古いヘッド)へのインクの単体循環が行われる(ステップS100)。そして、交換対象ヘッドへのインクの単体循環が行われている状態で第1のインク液面位置および第2のインク液面位置が継続的に確認され、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の双方に変化があるか否かが判定される(ステップS110)。その結果、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の双方に変化があれば、処理はステップS300に進む。一方、第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の少なくとも一方に変化がなければ、液面センサまたは交換対象ヘッドに対応するバルブに異常がある旨の判定が行われ(ステップS115)、ヘッド交換処理は一旦終了する。ステップS300以降の処理については、上記第1の変形例と同様である。但し、ステップS110において第1のインク液面位置および第2のインク液面位置の双方に変化があった場合には交換対象ヘッドに対応するバルブ(回収制御バルブ541および供給制御バルブ542)に異常がない旨が把握されるので、ステップS375では第2の液面センサ521に異常がある旨の判定が行われ、ステップS415では第1の液面センサ511に異常がある旨の判定が行われる。なお、ステップS115で液面センサまたは交換対象ヘッドに対応するバルブに異常がある旨の判定が行われた場合には、異常原因の特定および処置(例えば、機器の修理や交換)がサービスマン等によって行われた後、ステップS100からヘッド交換処理のやり直しが行われる。
【0097】
本変形例においては、ステップS100およびステップS110によってインク液面位置事前確認ステップが実現され、ステップS310によってメッセージ出力ステップが実現され、ステップS330によって交換完了受け付けステップが実現され、ステップS340、ステップS350、ステップS360、およびステップS370によって供給側接続状態判定ステップが実現され、ステップS400によってインク循環開始ステップが実現され、ステップS410、ステップS415、およびステップS500によって接続状態判定ステップが実現されている。また、ステップS340によって第2のインク液面位置記憶ステップが実現され、ステップS350によって加圧ステップが実現され、ステップS360およびステップS370によって第2のインク液面位置確認ステップが実現され、ステップS410によって第1のインク液面位置確認ステップが実現されている。
【0098】
以上のように、本変形例においては、上記実施形態におけるステップS600~ステップS800の処理(
図17参照)が設けられていない。すなわち、本変形例においては、ヘッド240の交換後にインク液面位置が正常に変化しなかったときに非交換対象ヘッドへのインクの循環を行って液面センサに異常があるのか配管接続に異常があるのかを確認する処理が行われない。
【0099】
本変形例によれば、ヘッドの交換後に異常が生じたときに異常の原因がバルブであるという可能性を排除することが可能となる。また、上記第1の変形例と同様、ヘッド交換の際に生じた異常の原因を速やかに特定することはできないが、ヘッド交換が正常に行われたか否かを印字を行うことなく判定することが可能となる。
【0100】
<9.その他>
本発明は、上記実施形態(変形例を含む)に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態(変形例を含む)では、一度に1個のヘッドを交換していたが、一度に複数個(例えば2個)のヘッドを交換するケースであっても本発明は成立する。この場合、当該複数個のヘッドが本発明における「交換対象ヘッド」となる。また、例えば、上記実施形態ではカラー印刷を行うインクジェット印刷装置10の構成を例示したが、モノクロ印刷を行うインクジェット印刷装置が採用されている場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
2…ヘッドユニット
10…インクジェット印刷装置
19…ヘッド交換支援プログラム
20…印刷機構
24…印刷部
25…クリーニング機構
40…ヘッド保持プレート
51…回収タンク
52…供給タンク
53…供給配管
54…回収配管
55…還流配管
100…印刷制御装置
123…表示部
200…印刷機本体
240、240(1)~240(5)…ヘッド(印刷ヘッド)
244…インク排出配管
245…第1のノンスピル(第1コネクタ)
246…インク流入配管
247…第2のノンスピル(第2コネクタ)
511…第1の液面センサ
512…第2の液面センサ
530,530(1)~530(5)…供給枝配管
540,540(1)~540(5)…回収枝配管
541…回収制御バルブ
542…供給制御バルブ