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  • 特開-異常推定システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042375
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】異常推定システム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20240321BHJP
【FI】
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147047
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】村上 協司
(72)【発明者】
【氏名】相良 文彦
(72)【発明者】
【氏名】花田 功治
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フィルム状物の異常を精度良く推定する異常推定システムを提供する。
【解決手段】異常推定システム1において、推定装置2は、フィルム状物の撮影画像データと、フィルム状物の異常に関する分類ラベルで分類した分類データとのデータセットを複数使用し、データセットごとに教師データとして機械学習し、複数の学習モデルを生成する機械学習部10と、フィルム状物を撮影する撮影装置3の撮影部21と、複数の学習モデルを用いて、撮影部21による撮影画像データからフィルム状物の異常を推定する推定部12と、を備える。複数の学習モデルは、分類ラベル毎に複数のクラスに分類され、上位のクラスの学習モデルから順に異常の推定に使用される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状物の異常を推定する異常推定システムであって、
前記フィルム状物の撮影画像データと、前記フィルム状物の異常に関する分類ラベルで分類した分類データとのデータセットを複数使用し、データセットごとに教師データとして機械学習し、複数の学習モデルを生成する機械学習部と、
前記フィルム状物を撮影する撮影部と、
前記複数の学習モデルを用いて、前記撮影部による撮影画像データから前記フィルム状物の異常を推定する推定部を備えており、
前記複数の学習モデルは、前記分類ラベルごとに複数のクラスに分類され、上位のクラスの学習モデルから順に異常の推定に使用される、異常推定システム。
【請求項2】
下位のクラスの学習モデルでは、上位のクラスの分類ラベルに分類される撮影画像データを教師データから除外する、請求項1に記載の異常推定システム。
【請求項3】
前記学習モデルは、前記撮影画像データから算出した特徴量を閾値と比較して分類するものであり、
前記分類ラベルには、重要ラベルと誤認警戒ラベルがあり、
前記重要ラベルが属するクラスは、前記誤認警戒ラベルが属するクラスよりも上位のクラスであり、
前記機械学習部は、前記フィルム状物の撮影画像データと、少なくとも前記重要ラベルと前記誤認警戒ラベルとで分類した分類データとのデータセットを、教師データとして機械学習して救済用学習モデルを生成可能であり、
前記救済用学習モデルは、前記重要ラベルに対応する学習モデルよりも前記閾値が小さいものであり、
前記推定部は、前記誤認警戒ラベルに対応する学習モデルにおいて前記誤認警戒ラベルに該当する異常と分類された場合に、前記救済用学習モデルに基づいて、前記重要ラベルに該当する異常と、前記重要ラベル以外に該当する異常に分類する、請求項1又は2に記載の異常推定システム。
【請求項4】
前記分類ラベルには、重要ラベルと、高精度ラベルがあり、
前記高精度ラベルは、対応する学習モデルの正解率が99.9%以上であって、かつ、前記重要ラベルよりも上位のクラスに分類される、請求項1又は2に記載の異常推定システム。
【請求項5】
前記推定部は、上位のクラスの学習モデルから順に、前記学習モデルによって分類していき、陽性となった時点で、陽性となった学習モデルに対応する異常を前記フィルム状物の異常と推定する、請求項1又は2に記載の異常推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子フィルム等のフィルム状物の異常を推定する異常推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工知能の発達により、機械学習によってフィルム製品の欠陥の種別を識別する欠陥検査システムが知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1では、輝度合計、輝度平均、輝度中央値、輝度分散、輝度勾配方向、輝度勾配の大きさ、欠陥の面積、欠陥の周囲長、欠陥の円形度、欠陥のフェレ径及び欠陥の縦横比のいずれかを特徴量とする機械学習により欠陥の種別を識別できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-215277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フィルムの欠陥は、多数の種類があり、フィルムの欠陥の中には、よく似た形状の欠陥がある。
そのため、特許文献1の欠陥検査システムのように、一つの学習モデルを用いて撮影画像から欠陥の種別を識別すると、正解率(Accuracy)に限界があり、精度良く欠陥の種別を識別できない問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来に比べて、精度良く異常を推定できる異常推定システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、フィルム状物の異常を推定する異常推定システムであって、前記フィルム状物の撮影画像データと、前記フィルム状物の異常に関する分類ラベルで分類した分類データとのデータセットを複数使用し、データセットごとに教師データとして機械学習し、複数の学習モデルを生成する機械学習部と、前記フィルム状物を撮影する撮影部と、前記複数の学習モデルを用いて、前記撮影部による撮影画像データから前記フィルム状物の異常を推定する推定部を備えており、前記複数の学習モデルは、前記分類ラベルごとに複数のクラスに分類され、上位のクラスの学習モデルから順に異常の推定に使用される、異常推定システムである。
【0007】
本様相によれば、各学習モデルによって個別に異常を推定するので、従来に比べて精度良く異常を推定できる。
本様相によれば、上位のクラスで異常が推定されると、下位のクラスで異常の判断をする必要がないため、計算量を少なくできるとともに、精度を向上できる。
【0008】
好ましい様相は、下位のクラスの学習モデルでは、上位のクラスの分類ラベルに分類される撮影画像データを教師データから除外する。
【0009】
本様相によれば、余分な学習を省くことができ、計算量を少なくできるとともに、精度を向上できる。
【0010】
ここで、フィルム状物の異常の中には、存在すると製品として成立しない重大な異常が存在する。本発明者は、この重大な異常について検討したところ、重大な異常の分類において誤解答となるものは、特定の異常と分類されることが多いことが発見した。
【0011】
そこで、好ましい様相は、前記学習モデルは、前記撮影画像データから算出した特徴量を閾値と比較して分類するものであり、前記分類ラベルには、重要ラベルと誤認警戒ラベルがあり、前記重要ラベルが属するクラスは、前記誤認警戒ラベルが属するクラスよりも上位のクラスであり、前記機械学習部は、前記フィルム状物の撮影画像データと、少なくとも前記重要ラベルと前記誤認警戒ラベルとで分類した分類データとのデータセットを、教師データとして機械学習して救済用学習モデルを生成可能であり、前記救済用学習モデルは、前記重要ラベルに対応する学習モデルよりも前記閾値が小さいものであり、前記推定部は、前記誤認警戒ラベルに対応する学習モデルにおいて前記誤認警戒ラベルに該当する異常と分類された場合に、前記救済用学習モデルに基づいて、前記重要ラベルに該当する異常と、前記重要ラベル以外に該当する異常に分類する。
【0012】
本様相によれば、誤解答しやすい誤認警戒ラベルに対応する学習モデルにおいて誤認警戒ラベルと分類された場合に、救済用学習モデルにおいて再度重要ラベルの分類を行うので、より精度良く重要ラベルの分類が可能である。
【0013】
ここで、フィルム状物の異常の中には、ほぼ100%の精度で分類が可能な異常が存在する。そこで、本発明者は、この分類精度が極めて高い異常を上位のクラスにすることで計算の負荷を小さくすることを考えた。
【0014】
そこで、好ましい様相は、前記分類ラベルには、重要ラベルと、高精度ラベルがあり、前記高精度ラベルは、対応する学習モデルの正解率が99.9%以上であって、かつ、前記重要ラベルよりも上位のクラスに分類される。
【0015】
本様相によれば、重要ラベルよりも先に、正解率が極めて高い高精度ラベルを分類するので、より精度良く異常を推定できる。
【0016】
好ましい様相は、前記推定部は、上位のクラスの学習モデルから順に、前記学習モデルによって分類していき、陽性となった時点で、陽性となった学習モデルに対応する異常を前記フィルム状物の異常と推定する。
【0017】
本様相によれば、陽性となった時点で異常を推定するので、より効率的に異常を推定できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の異常推定システムによれば、従来に比べて、精度良く異常を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の異常推定システムの説明図であり、(a)は異常推定システムのブロック図であり、(b)は撮影装置を模式的に示した側面図である。
図2】第1実施形態の異常推定プログラムの説明図であり、(a)は異常推定プログラムにおける各分類モデルの学習時の説明図であり、(b)は多段分類モデルの説明図である。
図3】第1実施形態の異常推定プログラムにおける多段分類モデルの説明図であり、重要ラベルを太線で囲んでいる。
図4】第2実施形態の異常推定プログラムにおける多段分類モデルの説明図であり、重要ラベルを太線で囲んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明の第1実施形態の異常推定システム1は、異常推定プログラムによって、過去のフィルム状物100の撮影画像データと、当該フィルム状物100の異常に関する分類ラベルで分類した分類データとのデータセットを複数使用して、データセットごとに教師データとして機械学習し、複数の学習モデルを生成するものである。
また、異常推定システム1は、異常推定プログラムによって、現在の撮影画像から分類木のように各学習モデルを直列的につなぎ、各学習モデルで分類していき、フィルム状物100の異常を推定するものである。
【0022】
異常推定システム1は、図1(a)のように、主要構成部材として、推定装置2と、撮影装置3が、有線又は無線により、インターネットやイントラネットなどのネットワーク5によって接続されて構成されている。
推定装置2は、ハードウェア構成として、各装置を制御する制御装置とデータに対する演算を行う演算装置で構成される中央処理装置と、データを記憶する記憶装置、外部からデータを入力する入力装置、外部にデータを出力する出力装置を備えたコンピュータである。
推定装置2は、図1(a)のように、主要構成部位として、機械学習部10と、データ蓄積部11と、推定部12と、通信部13を備えている。
【0023】
機械学習部10は、異常推定プログラムによって、いわゆる教師あり学習で学習する機能があり、畳み込みニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムに則して教師あり学習を行うことが可能となっている。
ここで、「教師あり学習」とは、教師データ、すなわち、ある入力(説明変数)と結果(目的変数)のデータの組を大量に機械学習部10に与えることで、それらのデータセットにある特徴を学習し、入力から結果を推定するモデル(誤差モデル)、すなわち、入力と結果の関係性を帰納的に獲得するものである。
すなわち、機械学習部10は、図2(a)のように、入力部と、出力部を有しており、教師データをもとに機械学習することによって、入力部に入力された説明変数から出力部から出力される目的変数を算出する学習モデルを構築可能となっている。
【0024】
データ蓄積部11は、過去及び現在の撮影画像データや、各分類ラベルに対応する学習モデル、過去及び現在の推定部12による推定の結果などのデータを蓄積するものである。
データ蓄積部11は、推定動作を推定装置2に実行させる異常推定プログラムが格納されている。
【0025】
推定部12は、機械学習部10で構築された各学習モデルを用いて、撮影画像データからフィルム状物100の異常を推定する部位である。
【0026】
通信部13は、直接又はルーター等を介してネットワーク5と相互通信可能な部位である。
【0027】
(撮影装置3)
撮影装置3は、図1(a)のように、主に搬送部20と、撮影部21と、照明部22と、通信部23で構成されている。
搬送部20は、図1(b)のように、一対の搬送ローラ30,31を含み、搬送ローラ30,31に懸架されたフィルム状物100を搬送方向に搬送するものである。
撮影部21は、搬送ローラ30,31間を通過するフィルム状物100を撮影し、撮影画像データを生成する部位である。
照明部22は、搬送ローラ30,31間を通過するフィルム状物100に光を照射する部位である。
通信部23は、直接又はルーター等を介してネットワーク5と相互通信可能な部位である。
【0028】
続いて、本実施形態の異常推定プログラムによる異常推定方法について説明する。
【0029】
本実施形態の異常推定方法は、主に、学習モデル作成工程と、評価工程によって構成され、学習モデル作成工程で作成された学習モデルを使用して評価工程で異常を推定するものである。
【0030】
(学習モデル作成工程)
学習モデル作成工程は、撮影画像データと当該撮影画像データの分類結果をもとに機械学習し、評価工程で使用する学習モデルを作成する工程である。
具体的には、まず、フィルム状物100の各種の異常に対して分類ラベルL1~L16を割り当て、分類ラベルL1~L16ごとに複数のクラスに分類する。
そして、分類ラベルL1~L16ごとに、過去の撮影画像データと、フィルム状物100の異常を分類ラベルL1~L16で分類した分類データとのデータセットを教師データとして機械学習し、学習モデルをそれぞれ作成し、図3のような多段分類モデルを作成する。
すなわち、学習モデル作成工程では、撮影画像データを説明変数とし、分類ラベルに該当するかどうかを目的変数として機械学習部10が機械学習を行い、各学習モデルを構築していき、構築した学習モデルを図2(b)のように直列的につないで分類木のような多段分類モデルを構築する。
【0031】
異常に関する分類ラベルの中には、重要ラベルL2,L4,L5と、誤認警戒ラベルL8,L9と、高精度ラベルL1,L3,L6,L7がある。
重要ラベルL2,L4,L5は、該当すると製品として成立しない重大な異常(欠陥)に対応するラベルであり、例えば、虫や穴、発泡などである。
誤認警戒ラベルL8,L9は、重要ラベルで誤解答しやすい分類ラベルであり、例えば、茶点や凝縮などである。
高精度ラベルL1,L2,L3,L6,L7は、対応する学習モデルによって99.9%以上の精度で分類可能なラベルであり、例えば、白点や虫、キラ、食込、ゲルなどである。
本実施形態の高精度ラベルL1,L2,L3,L6,L7は、対応する学習モデルによって100%の精度で分類可能なラベルであり、一つの学習モデルによって全ての分類ラベルによる多値分類を行った場合でも、100%の精度で分類可能なラベルである。
なお、分類ラベルL2は、重要ラベルであって、かつ高精度ラベルである。
【0032】
また、下位のクラスの学習モデルでは、上位のクラスの分類ラベルに分類される撮影画像データを教師データから除外することが好ましい。すなわち、上位のクラスにおいて分類ラベルに該当すると分類された教師データは、下位のクラスにおいて教師データとして使用しないことが好ましい。こうすることで、明らかな誤解答となる組み合わせを減らすことができ、機械学習の効率化が可能である。
各学習モデルは、二値分類を行う分類モデルであり、撮影画像データから算出した特徴量を判定閾値と比較して分類モデルに該当するか否かを分類するものである。
すなわち、各学習モデルは、特徴量が判定閾値以上の場合に分類ラベルに該当すると判定し、判定閾値未満の場合に分類ラベルに該当しないと判定する。
学習モデルは、基本学習モデルと、誤認警戒ラベルL8,L9に対応する救済用学習モデルがある。
これらの学習モデルは、活性化関数としてシグモイド関数を用いることが好ましい。
シグモイド関数を用いた場合の分類の判定閾値は、適宜設計可能であるが、基本学習モデルの場合には0.4~0.6であることが好ましく、救済用学習モデルの場合には基本学習モデルより低く設定され、基本学習モデルの判定閾値の1/100以下である。
本実施形態の基本学習モデルの分類の判定閾値は、0.5であり、救済用学習モデルの分類の判定閾値は、0.0001である。
【0033】
学習モデル作成工程に用いられる機械学習アルゴリズムは、分類評価可能な教師あり学習アルゴリズムであれば、特に限定されるものではないが、例えば、線形回帰モデル(Linear model)、ロジスティック回帰、ラッソ回帰(Lasso)、ランダムフォレスト(RandomForest)、ニューラルネットワーク(Neural net)、線形カーネルのサポートベクターマシン(SVM (linear))などのアルゴリズムが挙げられ、その中でも畳み込みニューラルネットワークが好ましい。
本実施形態の機械学習アルゴリズムは、畳み込みニューラルネットワークであり、畳み込み層と、プーリング層、全結合層を含むニューラルネットワークである。
畳み込みニューラルネットワークとしては、例えば、GoogLeNetなどの公知のアルゴリズムなどが使用できる。
【0034】
(評価工程)
評価工程は、学習モデル作成工程で作成した多段分類モデルを用いて撮影部21による撮影画像データから異常の種類を推定し、評価する工程である。
すなわち、評価工程は、図2(b)のように、撮影部21による撮影画像を多段分類モデルの入力部に入力することで、各学習モデルを経て推定される異常が多段分類モデルの出力部から出力される。
【0035】
具体的には、まず、撮影部21による撮影画像を多段分類モデルの入力部に入力すると、ステップS1にて、撮影画像内の異常が高精度ラベルたる分類ラベルL1(白点)に該当するかどうか判定する。
【0036】
特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL1に該当しない場合(白点でない場合)には(ステップS1でNo)、ステップS2にて、撮影画像内の異常が重要ラベルたる分類ラベルL2(虫)に該当するかどうかを判定する。
【0037】
特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL2に該当しない場合(虫でない場合)には(ステップS2でNo)、ステップS3にて、撮影画像内の異常が高精度ラベルたる分類ラベルL3(キラ)に該当するかどうかを判定する。
【0038】
特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL3に該当しない場合(キラでない場合)には(ステップS3でNo)、ステップS4にて、撮影画像内の異常が重要ラベルたる分類ラベルL4(穴)に該当するかどうかを判定する。
【0039】
特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL4に該当しない場合(穴でない場合)には(ステップS4でNo)、ステップS5にて、撮影画像内の異常が重量ラベルたる分類ラベルL5(発泡)に該当するかどうかを判定する。
【0040】
特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL5に該当しない場合(発泡でない場合)には(ステップS5でNo)、ステップS6にて、撮影画像内の異常が高精度ラベルたる分類ラベルL6(食込)に該当するかどうかを判定する。
【0041】
異特徴量が判定閾値未満であり、常が分類ラベルL6に該当しない場合(食込でない場合)には(ステップS6でNo)、ステップS7にて、撮影画像内の異常が高精度ラベルたる分類ラベルL7(ゲル)に該当するかどうかを判定する。
【0042】
特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL7に該当しない場合(ゲルでない場合)には(ステップS7でNo)、ステップS8にて、撮影画像内の異常が誤認警戒ラベルたる分類ラベルL8(茶点)に該当するかどうかを判定する。
【0043】
特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL8に該当しない場合(茶点でない場合)には(ステップS8でNo)、ステップS9にて、撮影画像内の異常が誤認警戒ラベルたる分類ラベルL9(凝縮)に該当するかどうかを判定する。
【0044】
特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL9に該当しない場合(凝縮でない場合)には(ステップS9でNo)、ステップS10にて、撮影画像内の異常が分類ラベルL10(繊維)に該当するかどうかを判定する。
【0045】
特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL10に該当しない場合(繊維でない場合)には(ステップS10でNo)、ステップS11にて、撮影画像内の異常が分類ラベルL11(フィルムカス)に該当するかどうかを判定する。
ここで、ゲル状もしくはオリゴマーの塊の内、光透過度の低いものやフィルムの主成分の平均的な屈折率とは異なる屈折率のものなど、さらにはフィルムの微細な破砕物等をまとめて、フィルムカスとする。
【0046】
異特徴量が判定閾値未満であり、常が分類ラベルL11に該当しない場合(フィルムカスでない場合)には(ステップS11でNo)、ステップS12にて、撮影画像内の異常が分類ラベルL12(異物)に該当するかどうかを判定する。
【0047】
特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL12に該当しない場合(異物でない場合)には(ステップS12でNo)、推定不能と判定し、出力部から推定結果(推定不能)が出力される。
【0048】
また、ステップS1にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL1(白点)に該当する場合には(ステップS1でYes)、ステップS13に移行し、分類ラベルL13(核あり)に該当するかどうかを判定する。
ステップS13にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL13(核あり)に該当する場合には(ステップS13でYes)、撮影画像内の異常が核あり白点であると推定し、出力部から推定結果(核あり白点)が出力される。
一方、ステップS13にて、特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL13(核あり)に該当しない場合には(ステップS13でNo)、撮影画像内の異常が核なし白点であると推定し、出力部から推定結果(核なし白点)が出力される。
【0049】
ステップS2にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL2(虫)に該当する場合には(ステップS2でYes)、撮影画像内の異常が虫であると推定し、出力部から推定結果(虫)が出力される。
【0050】
ステップS3にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL3(キラ)に該当する場合には(ステップS3でYes)、撮影画像内の異常がキラであると推定し、出力部から推定結果(キラ)が出力される。
【0051】
ステップS4にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL4(穴)に該当する場合には(ステップS4でYes)、撮影画像内の異常が穴であると推定し、出力部から推定結果(穴)が出力される。
【0052】
ステップS5にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL5(発泡)に該当する場合には(ステップS5でYes)、撮影画像内の異常が発泡であると推定し、出力部から推定結果(発泡)が出力される。
【0053】
ステップS6にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL6(食込)に該当する場合には(ステップS6でYes)、撮影画像内の異常が食込であると推定し、出力部から推定結果(食込)が出力される。
【0054】
ステップS7にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL7(ゲル)に該当する場合には(ステップS7でYes)、ステップS14に移行し、分類ラベルL14(核)に該当するかどうかを判定する。
ステップS14にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL14(核あり)に該当する場合には(ステップS14でYes)、撮影画像内の異常が核ありゲルであると推定し、出力部から推定結果(核ありゲル)が出力される。
一方、ステップS14にて、特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL14(核あり)に該当しない場合には(ステップS14でNo)、撮影画像内の異常が核なしゲルであると推定し、出力部から推定結果(核なしゲル)が出力される。
【0055】
ステップS8にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が誤認警戒ラベルたる分類ラベルL8(茶点)に該当する場合には(ステップS8でYes)、ステップS15に移行し、判定閾値が小さい救済用学習モデルにより分類ラベルL15(発泡)に該当するかどうかを判定する。
ステップS15にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL15(発泡)に該当する場合には(ステップS15でYes)、撮影画像内の異常が重要ラベルに対応する発泡であると推定し、出力部から推定結果(発泡)が出力される。
一方、ステップS15にて、特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL15(発泡)に該当しない場合には(ステップS15でNo)、撮影画像内の異常が茶点であると推定し、出力部から推定結果(茶点)が出力される。
【0056】
ステップS9にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が誤認警戒ラベルたる分類ラベルL9(凝縮)に該当する場合には(ステップS9でYes)、ステップS16に移行し、判定閾値が小さい救済用学習モデルにより分類ラベルL16(穴)に該当するかどうかを判定する。
ステップS16にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL16(穴)に該当する場合には(ステップS16でYes)、撮影画像内の異常が重要ラベルに対応する穴であると推定し、出力部から推定結果(穴)が出力される。
一方、ステップS16にて、特徴量が判定閾値未満であり、異常が分類ラベルL16(穴)に該当しない場合には(ステップS16でNo)、撮影画像内の異常が凝縮であると推定し、出力部から推定結果(凝縮)が出力される。
【0057】
ステップS10にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL10(繊維)に該当する場合には(ステップS10でYes)、撮影画像内の異常が繊維であると推定し、出力部から推定結果(繊維)が出力される。
【0058】
ステップS11にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL11(フィルムカス)に該当する場合には(ステップS10でYes)、撮影画像内の異常がフィルムカスであると推定し、出力部から推定結果(フィルムカス)が出力される。
【0059】
ステップS12にて、特徴量が判定閾値以上であり、異常が分類ラベルL12(異物)に該当する場合には(ステップS12でYes)、撮影画像内の異常が異物であると推定し、出力部から推定結果(異物)が出力される。
【0060】
本実施形態の異常推定システム1によれば、各学習モデルによって、分類木のごとく、個別に二値分類するので、従来に比べて小さな特徴量でも判定でき、精度良く異常を推定できる。
【0061】
本実施形態の異常推定システム1によれば、下位のクラスの学習モデルでは、上位のクラスの分類ラベルに分類される撮影画像データを教師データから除外するので、余分な学習を省くことができ、計算量を少なくできるとともに、精度を向上できる。
本実施形態の異常推定システム1によれば、上位のクラスで異常が推定されると、下位のクラスで異常の判断をする必要がないため、計算量を少なくできるとともに、精度を向上できる。
【0062】
本実施形態の異常推定システム1によれば、誤解答しやすい誤認警戒ラベルに対応する学習モデルにおいて誤認警戒ラベルと分類された場合に、救済用学習モデルにおいて再度重要ラベルの分類を行うので、誤解答が許されない重要ラベルの推定漏れを抑制でき、より精度良く重要ラベルの分類が可能である。
【0063】
本実施形態の異常推定システム1によれば、重要ラベルL2,L4,L5よりも先に、正解率が極めて高い高精度ラベルL1,L2,L3(分類ラベルL2は重要ラベルであってかつ高精度ラベル)を分類するので、より精度良く異常を推定できる。
【0064】
本実施形態の異常推定システム1によれば、陽性となった時点(該当すると判定された時点)で異常を推定するので、より効率的に異常を推定できる。
【0065】
続いて、本発明の第2実施形態の異常推定方法について説明する。
【0066】
第2実施形態の異常推定方法は、多段分類モデルが第1実施形態の多段分類モデルと異なる。
第2実施形態の多段分類モデルは、図4のように、ステップS15の分類ラベルL15とステップS16の分類ラベルL16による判定がなく、ステップS8で分類ラベルL8(茶点)に該当すると、そのまま茶点と推定し、ステップS9で分類ラベルL9(凝縮)に該当すると、そのまま凝縮と推定する。
【0067】
上記した実施形態では、重要ラベルに対応する学習モデルにおいて他の分類ラベルの学習モデルと同様の判定閾値を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。重要ラベルに対応する学習モデルにおいて判定閾値を低く設定してもよい。
【0068】
上記した実施形態では、それぞれの分類ラベルに対して二値分類を行っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。部分的に多値分類を行ってもよい。例えば、高精度ラベルに対して多値分類を行い、残りの分類ラベルに対して二値分類を行ってもよい。
【0069】
上記した実施形態では、重要ラベルが属する各クラスと高精度ラベルが属する各クラスがランダムに配置されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。重要ラベルが属する各クラスをまとめて配置し、高精度ラベルが属する各クラスをまとめて配置してもよい。
【0070】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【実施例0071】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
まず、フィルムの欠陥の撮影画像データと、分類ラベルのデータのデータセットを用いて、分類ラベルごとに機械学習を行って各学習モデルを生成し、図3のような分類木型の多段分類モデルを作成し、これを実施例1とした。
なお、機械学習は、GoogLeNetworkを用い、trainNetwork関数によって行った。また、各学習モデルの特徴量をシグモイド関数で規格化し、救済用学習モデルの判定閾値を0.0001とし、その他の学習モデルの判定閾値を0.5とした。
【0073】
(実施例2)
実施例1において、図4のような分類木型の多段分類モデルを作成したこと以外は同様にしてこれを実施例2とした。すなわち、実施例2では、救済用学習モデルを使用せずに、分類を行った。
また、各学習モデルの特徴量をシグモイド関数で規格化し、各学習モデルの判定閾値をいずれも0.5とした。
【0074】
(比較例1)
フィルムの欠陥の撮影画像データと、分類ラベルのデータのデータセットを用いて、機械学習を行って一つの学習モデルを生成し、これを比較例1とした。
なお、機械学習は、GoogLeNetworkを用い、trainNetwork関数によって行った。また、学習モデルの特徴量をシグモイド関数で規格化し、学習モデルの判定閾値を0.5とした。
【0075】
(モデル評価)
既知の欠陥が収まった744枚の撮影画像データに対して、実施例1,2及び比較例1の各モデルを用いて欠陥を推定し、その正解率を算出した。
なお、正解率の算出に当たっては、分類ラベルをそれぞれ個別に判定し、判定対象の分類ラベルを判定対象の分類ラベルと正しく推定した場合に正解と判定し、判定対象の分類ラベル以外の分類ラベルと推定した場合に不正解と判定した。そして、正解率は、下記の式(1)によって算出した。
【0076】
【数1】
【0077】
実施例1,2及び比較例1の各分類ラベルの正解率(%)を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例1,2は、各分類ラベルにおける正解率が、多値分類の比較例1に比べて高くなり、精度が大きく向上した。
また、実施例1は、凝縮の正解率が実施例2に比べて下がったものの、重要ラベルである虫、穴、及び発泡の正解率がいずれも100%となった。
【符号の説明】
【0080】
1 異常推定システム
10 機械学習部
12 推定部
21 撮影部
100 フィルム状物
図1
図2
図3
図4