(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042378
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】インシュレータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147050
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友久
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604BB01
5H604CC01
5H604CC05
5H604PB03
5H604QA01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、コイルの巻き乱れを抑制し得る、インシュレータ、これを用いたステータ、及び、これらを用いたモータを提供する。
【解決手段】本発明のインシュレータ45は、コイルが巻かれる筒状部43と、筒状部43の内周面43-1から外周面43-2に向かう方向に突出する板状の凸部46と、を備え、凸部46は、中間部43aにおける筒状部43の外周面43-2に設けられている。また、本発明のステータは、インシュレータ45、該インシュレータ45の筒状部43に巻かれたコイル、及び、インシュレータ45の筒状部43に囲まれた磁性体を備え、筒状部43の軸方向cdにおいて、筒状部43における凸部46の一方の側に前記コイルの一部が巻かれ、凸部46の他方の側に前記コイルの他の一部が巻かれている。さらに、本発明のモータは、前記ステータとロータとを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻かれる筒状部と、当該筒状部の内周面から外周面に向かう方向に突出する板状の凸部と、を備え、
前記筒状部は、当該筒状部の軸方向において、一方の端部と、他方の端部と、当該一方の端部と他方の端部の間で、前記コイルが巻かれる領域にある中間部と、を備え、
前記板状の凸部は、前記中間部における前記筒状部の外周面に設けられている、インシュレータ。
【請求項2】
前記凸部に凹部が形成されており、
前記凹部は、前記筒状部の外周面から内周面に向かう方向に凹んでいる、請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項3】
前記筒状部の内周面から外周面に向かう方向において、前記凸部の端部に前記凹部が形成されている、請求項2に記載のインシュレータ。
【請求項4】
請求項1に記載のインシュレータ、該インシュレータの前記筒状部に巻かれたコイル、及び、前記インシュレータの前記筒状部に囲まれた磁性体を備え、
前記筒状部の軸方向において、前記筒状部における前記凸部の一方の側に前記コイルの一部が巻かれ、当該凸部の他方の側に前記コイルの他の一部が巻かれている、ステータ。
【請求項5】
請求項2に記載のインシュレータ、該インシュレータの前記筒状部に巻かれたコイル、及び、前記インシュレータの前記筒状部に囲まれた磁性体を備え、
前記筒状部の軸方向において、前記筒状部における前記凸部の一方の側に前記コイルの一部が巻かれ、当該凸部の他方の側に前記コイルの他の一部が巻かれており、
前記筒状部に巻かれた前記コイルを形成する導線の一部分が、前記凹部を通過している、ステータ。
【請求項6】
前記凹部を通過する前記導線の一部分は、前記凸部の面に対して交差する方向に延在している、請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
ロータと、請求項4または5に記載のステータと、を有する、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インシュレータ及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータとコイルとの間の絶縁を確保するため、インシュレータを用いたモータが知られている(例えば、特許文献1参照)。インシュレータは、内周面の内側にステータが収容され、かつ、外周面にコイルが巻かれた筒状部を備えたものである。
【0003】
ステータは、モータの回転軸を中心にして、放射状に複数設けられ、それら複数のステータのそれぞれに、インシュレータが装着される。そのため、筒状部の軸方向において、インシュレータは、隣接するインシュレータとの距離が、回転軸側の一方の端部から他方の端部へと漸次、広がっている。
【0004】
コイルの占積率を高めるためには、筒状部の軸方向において、一方の端部寄りの領域よりも他方の端部寄りの領域の巻き線の数を大きくすることが望まれる。即ち、筒状部の軸方向において、巻き線の積層に偏りが生じる。この偏りにより、コイルを巻き回す際、あるいは、長期間の使用によるモータの経時劣化等により、巻き線に乱れが生じる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡易な構成で、コイルの巻き乱れを抑制し得る、インシュレータ、及び、これを用いたモータを提供することを課題の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、例えば、以下の本発明の一態様により解決される。即ち、本発明の一態様は、コイルが巻かれる筒状部と、当該筒状部の内周面から外周面に向かう方向に突出する板状の凸部と、を備え、
前記筒状部は、当該筒状部の軸方向において、一方の端部と、他方の端部と、当該一方の端部と他方の端部の間で、前記コイルが巻かれる領域にある中間部と、を備え、
前記板状の凸部は、前記中間部における前記筒状部の外周面に設けられている、インシュレータである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一例である実施形態にかかるモータの斜視図である。
【
図2】本発明の一例である実施形態にかかるモータの縦断面図であり、
図4におけるA-A断面図に相当する。
【
図3】本発明の一例である実施形態にかかるモータの断面斜視図であり、
図2におけるB-B断面図に相当する。
【
図4】本発明の一例である実施形態にかかるモータの横断面図であり、
図2におけるB-B断面図に相当する。
【
図5】本発明の一例である実施形態にかかるモータにおけるステータの一部を拡大した部分拡大斜視図である。
【
図6】本発明の一例である実施形態にかかるモータから、本発明の一例である実施形態にかかるインシュレータのみを抜き出した拡大斜視図である。
【
図7】本発明の一例である実施形態にかかるモータから、本発明の一例である実施形態にかかるインシュレータのみを抜き出した縦断面図であり、
図6におけるC-C断面図に相当する。
【
図8】本発明の一例である実施形態にかかるモータから、本発明の一例である実施形態にかかるインシュレータのみを抜き出した上面図である。
【
図9】本発明の一例である実施形態にかかるモータから、インシュレータとコイルとを抜き出した拡大斜視図である。
【
図10】本発明の一例である実施形態にかかるモータにおけるステータコアの1つの磁極部における縦断面図であり、
図5におけるD-D断面図に相当する。
【
図11】本発明の一例である実施形態にかかるインシュレータにコイルが巻き回された状態を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態にかかるインシュレータ、ステータ及びモータについて、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明の一例である実施形態にかかるモータ1の斜視図であり、
図2は、モータ1の縦断面図であり、
図3は、モータ1の断面斜視図であり、
図4は、
図3と同じ断面における横断面図である。
図2は、
図4におけるA-A断面図に相当し、
図3及び
図4は、
図2におけるB-B断面図に相当する。
【0011】
本実施形態の説明において、モータ1の回転軸である軸線x方向において、矢印a方向の側を上側aとし、矢印b方向の側を下側bとする。なお、本実施形態の説明において、上側乃至下側と云う時は、図面における上下関係を意味し、重力方向における上下関係とは、必ずしも一致しない。
【0012】
また、本実施形態の説明において、軸線xに垂直な径方向において、軸線xから遠ざかる方向(矢印c方向)の側を外側cとし、軸線xに向かう方向(矢印d方向)の側を内側dとする。さらに、軸線xを中心とする円周方向(以下、「周方向ef」ともいう。)において、時計周りの方向を時計回り方向eとし、反時計周りの方向を反時計回り方向fとする。
【0013】
図1~
図4に示されるように、本実施形態にかかるモータ1は、回転軸となるシャフト2と、シャフト2に固定されて共に回転するロータ3と、ロータ3を取り囲むように配置されたステータ4と、モータ1の構成部品の一部又は全部を内部に収容するハウジング5と、を備えてなる。
【0014】
ロータ3は、磁性体で形成されたロータコア33内にマグネット31が配置されてなる。ステータ4は、磁性体で形成されたステータコア41にコイル42が巻回されてなり、ハウジング5に固定されている。本実施形態におけるモータ1は、インナーロータタイプのブラシレスモータの一種であり、IPMモータと称されるモータである。IPMモータとは、ロータ3にマグネット31を埋め込んだものであり、埋込マグネット型モータとも呼ばれている。
【0015】
ハウジング5は、ロータ3やステータ4等のモータ1の構成部品の一部又は全部を内部に収容している。このハウジング5は、ステータ4を支持するハウジング本体51と、ハウジング本体51の上部の開口を覆うカバー52とを有する。ハウジング本体51は、環状の底部51aと、底部51aの内周に連なって筒状に下側bに突出する突出部51bと、底部51aの外周に連なる外周部51cと、を備える。
【0016】
カバー52は、環状の平板部52aと、平板部52aの内周に連なって筒状に下側bに突出する突出部52bと、平板部52aの外周に連なる外周部52cと、を備える。環状の平板部52aは、ハウジング5の天面を形成している。カバー52の突出部52bは、シャフト2の長手方向(軸線x方向)において、ロータ3に向かう方向(下側b方向)に突出している。
【0017】
ハウジング本体51の外周部51cとカバー52の外周部52cとが嵌合され、かつ、固定(締結)されて、モータ1の全部または一部がハウジング5の内部に収容されることで、モータ1として完成する。
【0018】
図1に示されるように、カバー52の平板部52aには、その中心に円形の開口部52eと、開口部52eの周囲の一部を取り囲む一対の開口部52dが設けられている。一対の開口部52の平面形状は湾曲している。不図示ではあるが、ハウジング本体51の底部51aにも開口部が設けられている。この底部51aの開口部によって、開口部52dとともにモータ1の内外が連通され、空気の流れが生じるため、モータ1の内部が冷却されるようになっている。
【0019】
モータ1には、シャフト2をハウジング5に対して回転可能に支持する2つの軸受61,62が設けられている。
ハウジング本体51の突出部51bは、軸線x方向において、下側bに向かって円筒状に突出しており、その内部に、複数の軸受61,62のうち一方の軸受61が取り付けられている。軸受61は、圧入などにより、突出部51bの内部に固定されている。
【0020】
カバー52の突出部52bは、軸線x方向において、下側bに向かって円筒状に突出しており、その内部に、複数の軸受61,62のうち他方の軸受62が取り付けられている。軸受62は、圧入などにより、突出部52bの内部に固定されている。
【0021】
径方向(cd方向)において、一方の軸受61の外径及び内径と他方の軸受62の外径及び内径は、それぞれ略同じとなっている。なお、一方の軸受61の外径及び内径と他方の軸受62の外径及び内径とは略同じであるが、一方の軸受61の外径または内径あるいはその両方より、他方の軸受62の外径または内径あるいはその両方を大きくしても、小さくしても構わない。
【0022】
シャフト2は、2つの端部2a,2bを備えており、ハウジング本体51側にある一方の端部2bが一方の軸受61によりハウジング本体51に対して回転可能に支持され、カバー52側にある他方の端部2a寄りの位置で他方の軸受62に回転可能に支持されている。
【0023】
よって、シャフト2は、軸受61を介してハウジング本体51、及び、軸受62を介してカバー52に、それぞれ周方向efに回転自在に固定されており、カバー52の開口部52eからシャフト2の一方の端部2aが突き出している。
【0024】
シャフト2はロータ3に固定されており、ステータ4とロータ3との電磁気的作用によってロータ3が周方向efに回転すると、ロータ3とともにシャフト2が周方向efに回転するようになっている。そして、モータ1においては、シャフト2の一方の端部2a近傍から回転力を外部に取り出すことができるようになっている。
【0025】
ロータ3は、ロータコア33及びマグネット31を有する。ロータコア33は、複数の磁性体の積層体であり、軸線x方向に複数の磁性体が積み重なっている。かかるロータコア33は、孔部34を形成する環状の内周部33aと、内周部33aの外周面からステータ4に向けて放射状に形成された複数(本実施形態では20本)のスポーク33bと、複数のスポーク33bの外周端と連結する環状の外周部33cと、を有する。孔部34には、シャフト2が挿入されている。
【0026】
外周部33cには、径方向の外側cに複数(本実施形態では20個)のマグネット31が埋め込まれている。複数のマグネット31は、磁極を径方向の両側cdに向けて、周方向に等間隔で配置されている。マグネット31の磁極の向きは、外側cを向く磁極が、N極とS極とが交互になるように周方向efに並べられている。
【0027】
外周部33cは、径方向において、ステータ4に向かって延在する複数の凸部33dを備えている。複数の凸部33dは、複数のマグネット31のそれぞれを取り囲む枠を備えている(以下、当該凸部を「ロータ凸部」と称する。)。ロータ凸部33dの枠は薄肉に形成され、枠の内部には矩形の空間33d1を備えている。また、外周部33cにおける、ロータ凸部33dの空間33d1それぞれに対応する位置に、径方向において内側dに向けて凹んだ凹部(以下、「ロータ凹部」と称する。)33eが形成されている。
【0028】
これら空間33d1と空間33e1が合わさった略矩形の空間Sに、マグネット31が埋め込まれている。具体的には、軸線x方向を長手方向とする略矩形の空間Sに、軸線x方向を長手方向とする形状を有するマグネット31が収容されることで、マグネット31がロータコア33に埋め込まれる(以上、
図4参照。)。
【0029】
なお、周方向efにおいて、空間33d1の外側c側の端部の長さは、空間33e1の内側d側の端部の長さに比べて、僅かに大きくなっている。
【0030】
ステータ4は、インシュレータ45と、ステータコア(磁性体)41と、コイル42を有する。ステータコア41は、珪素鋼板等の磁性体の積層体となっている。かかるステータコア41は、シャフト2と同軸上に配置された環状部(以下、「円環部」と称する。)41aと、円環部41aからシャフト2側(矢印d方向側)へ向かって延びるように形成された複数(本実施形態では24本)の磁極部41bと、を備える。
【0031】
複数の磁極部41bは円環部41aから分割可能である。即ち、ステータコア41は、円環部41aと、複数の磁極部41bとで構成された分割コアである。円環部41aと複数の磁極部41bは、境界線Rで分割されている。
【0032】
また、磁極部41bの内側dの端部は、周方向efの両側に張り出した部分を有する突出部41cとなっている。径方向cdにおいて、ステータコア41の突出部41cと、ロータコア33のロータ凸部33dとは、磁気ギャップGを介して対向している。
【0033】
コイル42は、複数の磁極部41bの各々の周囲に巻き回されている。ステータコア41とコイル42との間には、絶縁体で形成されたインシュレータ45が介在しており、インシュレータ45によってステータコア41とコイル42とが絶縁されている。
【0034】
図5に、モータ1におけるステータ4の一部を拡大した部分拡大斜視図を示す。
図5は、軸線xの上側aから見た斜視図である。ステータコア41の個々の磁極部41b(
図5においては、インシュレータ45の内部に隠れている。)は、インシュレータ45に囲まれて、そのインシュレータ45にコイル42が巻き回されている。
【0035】
図6は、ステータコア41の1つの磁極部41bに取り付けられているインシュレータ45のみを抜き出した拡大斜視図であり、
図7は、インシュレータ45の縦断面図である。
図7は、
図6におけるC-C断面図に相当する。また、
図8は、インシュレータ45の上側aから見た平面図(上面図)である。
【0036】
さらに、
図9は、ステータコア41の1つの磁極部41bに取り付けられているインシュレータ45と、当該インシュレータ45に巻き回されたコイル42と、を抜き出した拡大斜視図である。
図9は、
図6で示されるインシュレータ45にコイル42が巻き回された状態を示すものである。
【0037】
また、
図10は、ステータコア41の1つの磁極部41bにおける縦断面図であり、
図5におけるD-D断面図に相当する。
なお、
図9及び
図10においては、巻き回された個々の導線が認識できるようにコイル42が描かれている(ただし、模式的な図であることに変わりはない。)が、その他の図面においては、巻き回された個々の導線が認識できない塊としてコイル42が描かれている。
【0038】
図6~
図8に示されるように、インシュレータ45は、筒状部43と、板状の凸部46と、を備える。
図5に示されるように、筒状部43には、その内周面の内側にステータコア41の磁極部(磁性体)41bが収容され、かつ、外周面にコイル42が巻かれている。
【0039】
筒状部43は、筒状部43の軸方向(筒状部43の両端開口の中心を結んだ線分の方向。筒状部43の内側を通る径方向cdと同じ。以下、「軸方向cd」と表記する場合がある。)において、一方の端部43dと、他方の端部43cと、当該一方の端部43dと他方の端部43cの間にある中間部43aと、を備える。中間部43aは、筒状部43において、コイル42が巻かれる領域に当たる。
【0040】
なお、
図6~
図8に示されるように、筒状部43の軸方向cdにおいて、筒状部43の一方の端部43dには壁部44dが、他方の端部43cには壁部44cが、それぞれ連なっている。この一対の壁部44c,44dは、筒状部43の軸方向cdと交差する方向(本実施形態では、特に直交する方向)に延びて広がった形状をしている。
【0041】
板状の凸部46は、筒状部43の内周面43-1から外周面43-2に向かう方向、即ち上側aに向けて突出している。なお、本実施形態において、凸部46は、コイル42の導線と接触する内周面43-1から外周面43-2に向かう方向に突出している。即ち、筒状部43の外周面43-2から垂直方向若しくは回転軸方向に突出している。また、凸部46は、一対の壁部44c,44dと対向し、かつ、一対の壁部44c,44dと平行な面を両面に有する。なお、凸部46が突出する方向は、内周面43-1と外周面43-2との間の距離が最も小さくなるような、内周面43-1から外周面43-2に向かう方向であってもよい。
【0042】
凸部46は、筒状部43の中間部43aにおける外周面43-2に設けられている。より詳しくは、筒状部43の軸方向cdにおいて、中間部43aの中央よりも、他方の端部43c寄りの位置の外周面43-2に凸部46が設けられている。
【0043】
凸部46には、凹部48が形成されている。この凹部48は、コイル42を形成する導線47が嵌合可能な大きさ並びに形状を備えており、少なくとも導線の外周面の半分を収容可能な空間を有している。ただし、導線47の外形よりも大きい空間を有する凹状の形状であっても構わない。
【0044】
凹部48は、筒状部43の外周面43-2から内周面43-1に向かう方向、即ち下側bに向けて凹んでいる。また、凹部48は、筒状部43の内周面43-1から外周面43-2に向かう方向において、凸部46の端部(即ち、上側aの端部)に形成されている。
【0045】
図9及び
図10に示されるように、筒状部43の軸方向cdにおいて、筒状部43における凸部46の一方の側(外側c)にコイル42の一部が巻かれ、凸部46の他方の側(内側d)にコイル42の他の一部が巻かれている。換言すれば、筒状部43の軸方向cdにおいて、筒状部43の中途に位置する凸部46の両側(外側c及び内側d)に渡ってコイル42が巻かれている。
【0046】
そのため、筒状部43の軸方向cdにおいて、コイル42の巻き線の積層に偏りを生じさせても、凸部46によって巻き線の移動が抑止される。そのため、コイル42を巻き回す際、あるいは、長期間の使用によるモータ1の経時劣化等による、コイル42の巻き線の乱れを抑制することができる。
【0047】
また、
図5や
図9、あるいは
図10に示されるように、本実施形態においては、筒状部43に巻かれたコイル42を形成する導線47の一部分が、凹部48を通過している。この凹部48を通過する導線47の一部分は、凸部46の面に対して交差する方向に延在している。
【0048】
図11に、ステータコア41における1つの磁極部(41b)のインシュレータ45にコイル42が巻き回された状態を模式的に示す上側aからの平面図(上面図)を示す。
図11において、中に番号n(nは1から19までの自然数。)が付された円形の図形は。コイル42の個々の巻き線(導線)を示し、数字nはインシュレータ45への巻き回しの通算回数(n周目)を示すものである。
【0049】
図11に示されるように、筒状部43の軸方向cdにおいて、隣接するインシュレータ45間の距離が、一方の端部43d寄りの両矢印wdに比して他方の端部43c寄りの両矢印wcの方が大きい。即ち、隣接するインシュレータ45間の距離は、回転軸x側(内側d)の一方の端部43dから他方の端部43cへと漸次、広がっている。
【0050】
そのため、コイル42の占積率を高めるため、筒状部43の軸方向cdにおいて、一方の端部43d寄りの領域よりも他方の端部43c寄りの領域の巻き線の数を大きくしても構わない。
図11に模式的に示す例において、一方の端部43d寄りの領域では2層、他方の端部43c寄りの領域では3層の巻き線の積層状態とされる。
【0051】
インシュレータ45にコイル42を巻き回す際、
図11に模式的に示す例では、まず、一方の端部43dからコイル42の巻き線を巻き始め(番号1)、順次他方の端部43cに向けて巻き回される。9周目で他方の端部43c近傍に達し、ここで折り返されて10週目以降は2層目が積層される。そして、順次一方の端部43dに向けて巻き回され、17周目で他方の端部43c近傍に達する。
【0052】
既述の通り3層目は他方の端部43c寄りの領域にのみ積層される。そのため、18周目で3層目を積層しようとした場合、単に折り返して18周目から他方の端部43cに向けて巻き回すのではなく、
図11中に矢印47jで示されるように、17周目と18周目との間で、他方の端部43c寄りの領域に大きく移動させるように、巻き線を取り回さなければならない。
【0053】
このとき、そのまま
図11中に矢印47jで示されるように、17周目と18周目との間で、大きく移動させるように巻き線を取り回した場合、巻き線の巻き崩れが生じやすい。仮に、巻き線の巻き崩れが生じなかったとしても、巻き線の耐久性が不十分になりやすく、長期間の使用によるモータ1の経時劣化等により、巻き線の乱れを引き起こす場合がある。
【0054】
そこで、本実施形態では、17周目の巻き回しが終わった導線47を
図11中に矢印47kで示されるように、凸部46に形成された凹部48を通過させて、18周目の巻き回しに適した位置に取り回している。筒状部43の軸方向cdにおいて、18周目の巻き回しに適した位置に近い位置に固定された凹部48にいったん導線47を通過させているので、2層目と3層目との間の積層が安定し強固ななるため、巻き線の巻き崩れが生じにくい。
【0055】
したがって、筒状部43の軸方向cdにおいて、巻き線の積層に偏りがあるコイル42を安定的に巻き回すことができる。その結果、
図9及び
図10に示されるような、占積率の高いコイル42を容易かつ強固に形成することができる。したがって、本実施形態によれば、ステータ4の、延いてはモータ1の生産性向上を図ることができる。
【0056】
また、モータ1の長期間の使用によっても巻き崩れしにくい強固なコイル42が形成されていることから、ステータ4の、延いてはモータ1の信頼性の向上に繋がる。さらに、占積率の高いコイル42を形成することができることから、モータ1としての特性向上も期待できる。
【0057】
以上、本発明のインシュレータ、ステータ及びモータについて、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明のインシュレータ、ステータ及びモータは、上記の実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態においては、筒状部43の軸方向cdにおいて、中間部43aの中央よりも、他方の端部43c寄りの位置の外周面43-2に凸部46が設けられている例を挙げているが、本発明においてはこれに限定されない。
【0058】
筒状部43の軸方向cdにおいて、コイル42が巻かれる領域である中間部43aの何れの位置に凸部46が設けられてさえいれば、当該凸部46の両側(外側c及び内側d)に渡ってコイル42を巻き回すことができ、凸部46による巻き線の移動を抑止できる。
【0059】
また、例えば、筒状部43の軸方向cdにおいて、凸部46が一方の端部43d寄りに位置していたとしても、コイル42の巻き線を一方の端部43d近傍から他方の端部43c側に移動させる際に、コイル42を形成する導線47の一部分を凹部48に通過させることで巻き線の取り回しが容易となり、巻き線の乱れが生じにくい。
【0060】
また、上記の実施形態においては、凸部46が、筒状部43の外周面43-2における上側aを向く面に設けられた例を挙げているが、本発明においてはこれに限定されない。凸部46は、例えば、筒状部43の外周面43-2における下側bを向く面は勿論、時計回り方向eを向く面や反時計回り方向fを向く面等何れの位置に設けられていても構わない。
【0061】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のインシュレータ、ステータ及びモータを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1…モータ、2…シャフト、3…ロータ、4…ステータ、5…ハウジング、31…マグネット、33…ロータコア、33a…内周部、33b…スポーク、33c…外周部、33d…ロータ凸部、33d1,33e1…空間、33e…ロータ凹部、34…孔部、41…ステータコア(磁性体)、41a…円環部、41b…磁極部(磁性体)、41c…突出部、42…コイル、43…筒状部、43-1:内周面、43-2:外周面、43a…中間部、43d…一方の端部、43c…他方の端部、44c,44d…壁部、45…インシュレータ、46…凸部、47…導線、48…凹部、51…ハウジング本体、51a…底部、51b…突出部、51c…外周部、52…カバー、52a…平板部、52b…突出部、52c…外周部、61,62…軸受