(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042381
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20240321BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147057
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友久
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622PP10
(57)【要約】
【課題】IPMモータ(埋込マグネット型モータ)において、埋め込まれたマグネットの磁気特性に優れたモータを提供すること。
【解決手段】本発明のモータは、回転軸2と、ステータ4と、孔部33hを備えるロータコア33、並びに、孔部33hに収容されたマグネット31及び磁性体32を有するロータ3と、を備え、径方向cdにおいて、マグネット31と磁性体32とが並んでおり、マグネット31に対して磁性体32が回転軸2側(内側d)にある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
ステータと、
孔部を備えるロータコア、並びに、前記孔部に収容されたマグネット及び磁性体を有するロータと、
を備え、
径方向において、前記マグネットと前記磁性体とが並んでおり、
前記マグネットに対して前記磁性体が前記回転軸側にある、モータ。
【請求項2】
径方向において、前記マグネットは前記孔部の前記ステータ側における内面に接触している、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ロータコアは、前記孔部を複数備え、
前記複数の孔部は周方向に並んでいる、請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
周方向において、前記孔部の側面と前記マグネットの間には空隙がある、請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
前記磁性体の前記回転軸側における面は、前記孔部の前記回転軸側における内面に連結している、請求項1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁鋼板が積層されたロータヨーク内にマグネットを埋め込んだロータを用いたモータ(以下、「IPMモータ」と称する場合がある。)が知られている(例えば、特許文献1参照)。IPMモータにおいて、ステータとの磁気的相互作用を効率的に発現させるためには、埋め込まれたマグネットとロータヨークのステータ側の内壁との間にエアギャップが極力生じていないことが望まれる。
【0003】
IPMモータにおいては、例えば、磁性体であるロータヨーク内に設けられたマグネットの埋め込み用の孔(以下、「埋め込み用孔」と称する。)に、着磁されたマグネットを軸方向から挿入し、固定することでロータが得られる。電磁鋼板が積層されたロータヨークの埋め込み用孔は、内面に凹凸があり摩擦抵抗が大きくなりやすい。
【0004】
したがって、マグネットを傷つけることなくスムースに挿入できるようにするため、埋め込まれるマグネットと埋め込み用孔との間のクリアランスを確保することが望まれる。また、電磁鋼板を積層した際の累積公差をも加味して、埋め込み用孔は、埋め込まれるマグネットに対するクリアランスが大きくなりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、IPMモータにおいて、埋め込まれたマグネットの磁気特性に優れたモータを提供することを課題の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、例えば、以下の本発明の一態様により解決される。即ち、本発明の一態様は、回転軸と、
ステータと、
孔部を備えるロータコア、並びに、前記孔部に収容されたマグネット及び磁性体を有するロータと、
を備え、
径方向において、前記マグネットと前記磁性体とが並んでおり、
前記マグネットに対して前記磁性体が前記回転軸側にある、モータである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一例である実施形態にかかるモータの斜視図である。
【
図2】本発明の一例である実施形態にかかるモータの縦断面図であり、
図4におけるA-A断面図に相当する。
【
図3】本発明の一例である実施形態にかかるモータの断面斜視図であり、
図2におけるB-B断面図に相当する。
【
図4】本発明の一例である実施形態にかかるモータの横断面図であり、
図2におけるB-B断面図に相当する。
【
図5】本発明の一例である実施形態にかかるモータのロータ及びステータの一部を拡大した部分拡大断面図であり、
図4と同じ断面にかかる断面図である。
【
図6】本発明の一例である実施形態にかかるモータのロータにおけるマグネット及び磁性体並びにその周辺を拡大した部分拡大断面図であり、
図4と同じ断面にかかる断面図である。
【
図7】本発明の一例である実施形態にかかるモータからロータコアのみを抜き出し、一部を拡大した部分拡大断面図であり、
図4と同じ断面にかかる断面図である。
【
図8】本発明の一例である実施形態にかかるモータから、マグネット及び磁性体のみを抜き出した斜視図である。
【
図9】本発明の一例である実施形態にかかるモータにおいて、貼り合わされたマグネット及び磁性体をロータの空間に収容する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態にかかるモータについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一例である実施形態にかかるモータ1の斜視図であり、
図2は、モータ1の縦断面図であり、
図3は、モータ1の断面斜視図であり、
図4は、
図3と同じ断面における横断面図である。
図2は、
図4におけるA-A断面図に相当し、
図3及び
図4は、
図2におけるB-B断面図に相当する。
【0010】
本実施形態の説明において、モータ1の回転軸である軸線x方向において、矢印a方向の側を上側aとし、矢印b方向の側を下側bとする。なお、本実施形態の説明において、上側乃至下側と云う時は、図面における上下関係を意味し、重力方向における上下関係とは、必ずしも一致しない。
【0011】
また、本実施形態の説明において、軸線xに垂直な径方向において、軸線xから遠ざかる方向(矢印c方向)の側を外側cとし、軸線xに向かう方向(矢印d方向)の側を内側dとする。さらに、軸線xを中心とする円周方向(以下、「周方向ef」ともいう。)において、時計周りの方向を時計回り方向eとし、反時計周りの方向を反時計回り方向fとする。
【0012】
図1~
図4に示されるように、本実施形態にかかるモータ1は、回転軸となるシャフト2と、シャフト2に固定されて共に回転するロータ3と、ロータ3を取り囲むように配置されたステータ4と、モータ1の構成部品の一部又は全部を内部に収容するハウジング5と、を備えてなる。
【0013】
ロータ3は、磁性体で形成されたロータコア33内にマグネット31が配置されてなる。ステータ4は、磁性体で形成されたステータコア41にコイル42が巻回されてなり、ハウジング5に固定されている。本実施形態におけるモータ1は、インナーロータタイプのブラシレスモータの一種であり、IPMモータと称されるモータである。IPMモータとは、ロータ3にマグネット31を埋め込んだものであり、埋込マグネット型モータとも呼ばれている。
【0014】
ハウジング5は、ロータ3やステータ4等のモータ1の構成部品の一部又は全部を内部に収容している。このハウジング5は、ステータ4を支持するハウジング本体51と、ハウジング本体51の上部の開口を覆うカバー52とを有する。ハウジング本体51は、環状の底部51aと、底部51aの内周に連なって筒状に下側bに突出する突出部51bと、底部51aの外周に連なる外周部51cと、を備える。
【0015】
カバー52は、環状の平板部52aと、平板部52aの内周に連なって筒状に下側bに突出する突出部52bと、平板部52aの外周に連なる外周部52cと、を備える。環状の平板部52aは、ハウジング5の天面を形成している。カバー52の突出部52bは、シャフト2の長手方向(軸線x方向)において、ロータ3に向かう方向(下側b方向)に突出している。
【0016】
ハウジング本体51の外周部51cとカバー52の外周部52cとが嵌合され、かつ、固定(締結)されて、モータ1の全部または一部がハウジング5の内部に収容されることで、モータ1として完成する。
【0017】
図1に示されるように、カバー52の平板部52aには、その中心に円形の開口部52eと、開口部52eの周囲の一部を取り囲む一対の開口部52dが設けられている。一対の開口部52の平面形状は湾曲している。不図示ではあるが、ハウジング本体51の底部51aにも開口部が設けられている。この底部51aの開口部によって、開口部52dとともにモータ1の内外が連通され、空気の流れが生じるため、モータ1の内部が冷却されるようになっている。
【0018】
図2に示されるように、モータ1には、シャフト2をハウジング5に対して回転可能に支持する2つの軸受61,62が設けられている。
ハウジング本体51の突出部51bは、軸線x方向において、下側bに向かって円筒状に突出しており、その内部に、複数の軸受61,62のうち一方の軸受61が取り付けられている。軸受61は、圧入などにより、突出部51bの内部に固定されている。
【0019】
カバー52の突出部52bは、軸線x方向において、下側bに向かって円筒状に突出しており、その内部に、複数の軸受61,62のうち他方の軸受62が取り付けられている。軸受62は、圧入などにより、突出部52bの内部に固定されている。
【0020】
径方向(cd方向)において、一方の軸受61の外径及び内径と他方の軸受62の外径及び内径は、それぞれ略同じとなっている。なお、一方の軸受61の外径及び内径と他方の軸受62の外径及び内径とは略同じであるが、一方の軸受61の外径または内径あるいはその両方より、他方の軸受62の外径または内径あるいはその両方を大きくしても、小さくしても構わない。
【0021】
シャフト2は、2つの端部2a,2bを備えており、ハウジング本体51側にある一方の端部2bが一方の軸受61によりハウジング本体51に対して回転可能に支持され、カバー52側にある他方の端部2a寄りの位置で他方の軸受62に回転可能に支持されている。
【0022】
よって、シャフト2は、軸受61を介してハウジング本体51、及び、軸受62を介してカバー52に、それぞれ周方向efに回転自在に固定されており、カバー52の開口部52eからシャフト2の一方の端部2aが突き出している。
【0023】
シャフト2はロータ3に固定されており、ステータ4とロータ3との電磁気的作用によってロータ3が周方向efに回転すると、ロータ3とともにシャフト2が周方向efに回転するようになっている。そして、モータ1においては、シャフト2の一方の端部2a近傍から回転力を外部に取り出すことができるようになっている。
【0024】
ロータ3は、ロータコア33と、マグネット31と、磁性体32と、を有する。ロータコア33は、複数の磁性体の積層体であり、軸線x方向に複数の磁性体が積み重なっている。かかるロータコア33は、孔(以下、「シャフト孔」と称する。)34を形成する環状の内周部33aと、内周部33aの外周面からステータ4に向けて放射状に形成された複数(本実施形態では20本)のスポーク33bと、複数のスポーク33bの外周端と連結する環状の外周部33cと、を有する。シャフト孔34には、シャフト2が挿入されている。
【0025】
外周部33cには、径方向の外側cに複数(本実施形態では20個)のマグネット31が磁性体32とともに埋め込まれている。複数のマグネット31は、磁極を径方向の両側cdに向けて、周方向efに等間隔で配置されている。マグネット31の磁極の向きは、外側cを向く磁極が、N極とS極とが交互になるように周方向efに並べられている。本実施形態におけるマグネット31及び磁性体32並びにその周辺の構造については、後に詳しく説明する。
【0026】
ステータ4は、インシュレータ45と、ステータコア(磁性体)41と、コイル42を有する。ステータコア41は、珪素鋼板等の磁性体の積層体となっている。かかるステータコア41は、シャフト2と同軸上に配置された環状部(以下、「円環部」と称する。)41aと、円環部41aからシャフト2側(矢印d方向側)へ向かって延びるように形成された複数(本実施形態では24本)の磁極部(「ティース」ともいう。)41bと、を備える。
【0027】
複数の磁極部41bは円環部41aから分割可能である。即ち、ステータコア41は、円環部41aと、複数の磁極部41bとで構成された分割コアである。円環部41aと複数の磁極部41bは、境界線Rで分割されている。
【0028】
また、磁極部41bの内側dの端部は、周方向efの両側に張り出した部分を有する突出部41cとなっている。径方向cdにおいて、ステータコア41の突出部41cと、ロータコア33のロータ凸部33dとは、磁気ギャップGを介して対向している。
【0029】
コイル42は、複数の磁極部41bの各々の周囲に巻き回されている。ステータコア41とコイル42との間には、絶縁体で形成されたインシュレータ45が介在しており、インシュレータ45によってステータコア41とコイル42とが絶縁されている。
【0030】
図5に、本実施形態にかかるモータ1のロータ3及びステータ4の一部を拡大した部分拡大断面図を示す。また、
図6に、本実施形態にかかるモータ1のロータ3におけるマグネット31及び磁性体32並びにその周辺を
図5よりもさらに拡大した部分拡大断面図を示す。さらに、
図7に、本実施形態にかかるモータ1からロータコア33のみを抜き出し、一部を拡大した部分拡大断面図を示す。
図5、
図6及び
図7は、
図4と同じ断面にかかる断面図である。なお、
図5においては、ステータ4のコイル42について、図示を省略している。
【0031】
図5~
図7に示すように、ロータコア33の外周部33cは、径方向cdにおいて、ステータ4に向かって延在する複数の凸部(以下、当該凸部を「ロータ凸部」と称する。)33dを備えている。複数のロータ凸部33dは、複数のマグネット31のそれぞれを取り囲む枠33fを備えている。言い換えれば、ロータコア33は複数の凸部33dを外周部として、複数の凸部33dのうち隣接する2つの凸部33dの間に所定の間隙が形成されている。この間隙が形成されていることで、ロータコア33の外周部には複数の凹部が形成されている。以下、ロータコア33の外周部33cが複数の凸部33dを備えることでロータ33の構成を説明する。
【0032】
ロータ凸部33dの枠33fは薄肉に形成され、枠33fの内側には、軸線x方向を長手方向とする矩形の空間33hcが形成されている。また、外周部33cには、径方向において内側dに向けて凹んだ凹部(以下、「ロータ凹部」と称する。)33eが形成されている。このロータ凹部33eは、ロータ凸部33dの空間33hcそれぞれに対応する位置に形成されている。ロータ凹部33eの内側には、軸線x方向を長手方向とする矩形の空間33hdが形成されている。
【0033】
径方向cdにおいて、ロータ33は、ロータ凸部33dとロータ凹部33hdとの境界となる段差部33kから外側cに向かって延びる部分を足部33jとして備えている。足部33jは、中間部において、2つに分岐している。この分岐した足部33jの2つの枝は、周方向efに隣り合う2つのロータ凸部33dの枠33fに連なっている。足部33jは、足部33jから2つの枠33fへの分岐点近傍であって、空間33hcに向き合う側面を備え、この足部33jの側面には、一対の凸部33gが形成されている。この一対の凸部33gは、周方向efに向かって延びている。
【0034】
周方向efにおいて、空間33hcの長さは、空間33hdの長さに比べて、大きくなっている。これら空間33hcと空間33hdとが合わさって、軸線x方向を長手方向とする孔部33hが形成されている(以上、特に
図7を参照)。ロータコア33は、孔部33hを複数備え、この複数の孔部33hは、周方向efに並んでいる。
【0035】
孔部33hに、軸線x方向を長手方向とする直方体の形状を有するマグネット31及び磁性体32が収容され、マグネット31及び磁性体32がロータコア33に埋め込まれている。このとき、径方向cdにおいて、マグネット31と磁性体32とが並んでおり、マグネット31に対して磁性体32が回転軸2側(内側dに等しい)にある。
【0036】
図8は、ロータコア33の孔部33hに収容されるマグネット31及び磁性体32のみを抜き出した斜視図である。
図8に示されるように、マグネット31と磁性体32とは、長手方向を含む一面同士(マグネット31における面31d及び磁性体32における面32c)が貼り合わされた状態になっている。
【0037】
図8に示すように、マグネット31及び磁性体32は、長手方向(軸線x方向に等しい)の長さHが等しい。また、マグネット31と磁性体32とが貼り合わされた面31d,32cにおける短手方向(周方向efに略等しい)の長さ(幅)は、マグネット31(W1)より磁性体32(W2)の方が短い(W1>W2)。さらに、マグネット31と磁性体32との貼り合わせの方向(径方向cdに等しい)の長さ(厚み)は、マグネット31(D1)より磁性体32(D2)の方が僅かに長い(D1<D2)。これら長さの大小関係は、あくまでも一例であり、本実施形態の関係に限定されるものではない。
【0038】
マグネット31は、磁性体32と貼り合わせる前の段階では、着磁していなくてもよい。着磁していないマグネット31を磁性体32に固定するには、接着剤により固定すればよい。即ち、マグネット31における面31dと、磁性体32における面32cと、を貼り合わせて固定させた後にマグネット31を着磁すればよい。
【0039】
このとき、マグネット31における磁性体32と貼り合わせた面31dと、径方向において面31dに対して反対側の面31cとが、N極及びS極の何れかになるように着磁する(以下、「面31c」,「面31d」をそれぞれ「磁極面31c」,「磁極面31d」と称する場合がある。)。貼り合わせる前の段階で着磁していないマグネット31を用いることで、磁性体32に対するマグネット31の位置合わせが容易になる。
【0040】
磁性体32と貼り合わせる前の段階で、マグネット31を着磁しておいても構わない。予め着磁されたマグネット31を用いることで、マグネット31における磁極面31dと磁性体32における面32cとの固定に、接着剤を用いる必要がなくなる。勿論、予め着磁されたマグネット31を用いる場合に、マグネット31における磁極面31dと磁性体32における面32cとの固定に、接着剤を用いても構わない。
【0041】
磁性体32は、ロータコア33と同じ材料、又は同じ材料を含む磁性体で形成されている。磁性体32は、ロータコア33と同様に、複数の磁性体の積層体であり、軸線x方向に複数の磁性体が積み重なっている。なお、本実施形態において、磁性体32は、ロータコア33と同じ材料で同様の構成としたが、必要に応じて、材料あるいは部材の一部または全部を異ならせても構わない。
【0042】
図9は、貼り合わされたマグネット31及び磁性体32をロータコア33の孔部33hに収容する様子を示す斜視図である。
図9に示すように、貼り合わされたマグネット31及び磁性体32の長手方向における一端を矢印J方向に移動させて、ロータコア33の孔部33hに挿し込む。
【0043】
マグネット31及び磁性体32をロータコア33の孔部33hに挿し込む際に、径方向の外側cに向けて押さえ付けて、マグネット31における磁極面31cを孔部33hの内面33fcに接着させるようにすることが好ましい。あるいは、マグネット31及び磁性体32を孔部33hに挿入後、スティック状あるいは楔状の部材を、磁性体32における面32dとロータコア33の孔部33hの内面33edとの間に圧入することによって、マグネット31における磁極面31cを孔部33hの内面33edに接着させるようにしてもよい。
【0044】
以上の操作を全ての孔部33hに対して行うことで、本実施形態におけるロータ3が得られる。このとき、周方向efにおいて、隣り合うマグネット31における磁極(N極、S極)の向きが、異なるようにする。
【0045】
孔部33hに収容されたマグネット31は、磁極を有する一方の磁極面31dが磁性体32と貼り合わされ、他方の磁極面31cが外側cを向いている。即ち、外側cを向いた他方の磁極面31cからの磁力が直接、ロータコア33の孔部33hの内面33fcに作用している。これに対して、マグネット31における内側dを向いた一方の磁極面31dからの磁力は、貼り付いた磁性体32を介して、ロータコア33の孔部33hの内面33edに作用している。
【0046】
つまり、磁性体32における面32dとロータコア33の孔部33hの内面33edとの間に働く引力よりも、マグネット31における磁極面31cとロータコア33の孔部33hの内面33fcとの間に働く引力の方が大きい。そのため、マグネット31における磁極面31cとロータコア33の孔部33hの内面33fcと、が磁力によって吸着し、安定的に固定される。
【0047】
したがって、本実施形態によれば、マグネット31における磁極面31cがロータコア33の孔部33hの内面33fcに、磁力によって吸着するので、磁極面31cと内面33fcとの間にエアギャップが生じにくい。
【0048】
以上より、本実施形態におけるロータ3では、マグネット31における磁極面31cと、対向する孔部33hの内面33fcと、が接触している。そのため、マグネット31において、ステータ4に対向する磁極面31cがステータ4から一定の距離を保つので、磁気特性の減少を抑制することができる。また、マグネット31の磁極面31cと孔部33hの内面33fcとの間にエアギャップが生じておらず、マグネット31の磁束が内面33fcから枠33fへと流れ、良好な状態で維持されるため、磁束量の減少が抑制される。
【0049】
本実施形態におけるロータ3では、孔部33hに形成された一対の凸部33gによって、マグネット31の周方向efにおける位置が規制されている。即ち、周方向efにおいて、一対の凸部33gは、マグネット31の側面31e,31fと接触してマグネット31を固定している。そのため、孔部33hの空間33hcにおける側面33he,33hfとマグネット31の両側面31e,31fとが所定の距離だけ離れている。したがって、周方向efにおいて、孔部33hの側面33he,33hfと、マグネット31の側面31e,31fとの間には空隙がある。
【0050】
マグネット31の側面31e,31fが、磁性体であるロータコア33と接触していると、この接触部から磁束の漏れが生じる。マグネット31の側面31e,31fからの磁束は、磁性体32へと流れてしまい(磁束の漏洩)、磁気効率が低下する場合がある。
【0051】
しかし、本実施形態では、周方向efにおいて、孔部33hの側面33he,33hfと、マグネット31の側面31e,31fとの間に空隙があるため、マグネットの側面31e、31fから磁性体32へ磁束が流れることを抑止できる。マグネット31の側面31e,31fと接触する一対の凸部33gの長さがマグネット31の側面31e、31fに比べて短いため、磁束の漏れが少ない。さらに、一対の凸部33gは、マグネット31における外側cに向く磁極面31cとの距離が離れているため、一対の凸部33gから漏えいする磁束がロータ凸部33dとステータ41との間における磁気ギャップGにおける磁束密度に与える影響が少ない。
【0052】
また、周方向において、マグネット31の角部の一部と孔部33hの角部の一部とが接触すると、マグネット31の角部から孔部33hの角部へと磁束が流れ、磁気ギャップGにおける磁束密度に影響が生じる場合がある。そのため、磁気効率が低減してしまう。
【0053】
しかし、本実施形態では、周方向において、マグネット31の側面31e,31fとの間に空隙があり、磁極となる磁極面31c,31dの角部の一部は、孔部33hの角部の一部と離れているため、磁気効率の低下が抑制される。
【0054】
本実施形態において、磁性体32の回転軸2側(内側dと同じ)における面32dは、孔部33hの回転軸2側(内側d)における内面33edと所定の距離だけ離れている。このため、マグネット31の磁束が内面33edを通って磁性体32の内面32dへと流れることを抑止でき、磁気効率の低下を抑止できる。また、ロータ3の回転に伴い、マグネット31と磁性体32には遠心力が作用するが、ロータ凸部33dによりロータ3に安定して固定される。よって、磁気効率の低下が抑止されるとともに、マグネット31と磁性体32の物理的な安定性を確保することができる。
【0055】
本発明者らは、マグネット31における磁極面31cと、対向する孔部33hの内面33fcと、の間に、強制的に0.2mmのエアギャップを設定した比較用のモータを作製し、この比較用のモータと本実施形態のモータ1について、逆起電力BEMFを測定する実験を行った。
【0056】
その結果、比較用のモータの逆起電力BEMFを100とした場合に、本実施形態のモータ1では逆起電力BEMFが110となった。比較用のモータを従来のモータとすると、本実施形態のモータではおよそ10%の逆起電力BEMFの向上が確認された。従来のモータでは、実際には、エアギャップが0.2mmよりも大きくなることがみられることから、本実施形態のモータ1によれば、より一層の逆起電力BEMFの向上効果が見込まれる。
【0057】
以上、本発明のモータについて、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明のモータは、上記の実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態においては、特定の極数及びスロット数で特定の構成のモータを例に挙げて説明しているが、本発明においてはこれに限定されない。本発明において、極数並びにスロット数は、適宜選択できる。また、その他のモータの構成についても特に限定されず、いわゆるIPMモータであれば、本発明を適用することができる。
【0058】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
1…モータ、2…シャフト、3…ロータ、4…ステータ、5…ハウジング、31…マグネット、31c,31d…面(磁極面)、31e,31f…側面、32…磁性体、33…ロータコア、33a…内周部、33b…スポーク、33c…外周部、33d…ロータ凸部、33e…ロータ凹部、33f…枠、33fc…内面、33g…凸部、33h…孔部、33hc,33hd…空間、33he,33hf…側面、33j…足部、33k…段差部、34…シャフト孔、41…ステータコア、41a…円環部、41b…磁極部、41c…突出部、42…コイル、45…インシュレータ、51…ハウジング本体、51a…底部、51b…突出部、51c…外周部、52…カバー、52a…平板部、52b…突出部、52c…外周部61,62…軸受