(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042385
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】制振構造体、及び制振構造体を組み込んだ装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
F16F15/02 R
F16F15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】42
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147065
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水上 孝一
(72)【発明者】
【氏名】千賀 岳人
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AD07
3J048BF07
3J048CB22
3J048EA07
(57)【要約】
【課題】高い制振機能を発揮する制振構造体及び制振構造体を組み込んだ装置を提供すること。
【解決手段】本制振構造体は、第1の支持部材と第2の支持部材と1以上の制振ユニットとを具備する。1以上の制振ユニットは、第1の支持部材及び第2の支持部材との間に接続され第1の支持部材及び第2の支持部材に作用する第1の方向の振動を抑制する。1以上の制振ユニットの各々は、ヒンジを介して第1の支持部に接続される第1の制振コアユニットと、ヒンジを介して第2の支持部材に接続される第2の制振コアユニットとを含む。第1及び第2の制振コアユニットもヒンジを介して接続される。また第1及び第2の制振コアユニットの各々は4つの回転部材を有し、各回転部材は第1の方向から見た場合の位置が適宜規定されたヒンジを介して他の部材と接続される。ヒンジの位置は、第1の方向の振動が作用した際に各回転部材が回転可能となるように適宜規定されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の支持部材と、
前記第1の支持部材に対して第1の方向に沿って対向して配置される第2の支持部材と、
前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材との間に接続され、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材に作用する前記第1の方向の振動を抑制する1以上の制振ユニットと
を具備し、
前記1以上の制振ユニットの各々は、
第1のヒンジを介して前記第1の支持部材に接続される第1の回転部材と、
第2のヒンジを介して前記第1の支持部材に接続される第2の回転部材と、
前記第1の方向から見た場合に、前記第1のヒンジとは異なる位置に配置される第3のヒンジを介して、前記第1の回転部材に接続される第3の回転部材と、
前記第1の方向から見た場合に、前記第2のヒンジとは異なる位置に配置される第4のヒンジを介して、前記第2の回転部材に接続される第4の回転部材と
を有する第1の制振コアユニットと、
第5のヒンジを介して前記第2の支持部材に接続される第5の回転部材と、
第6のヒンジを介して前記第2の支持部材に接続される第6の回転部材と、
前記第1の方向から見た場合に、前記第5のヒンジとは異なる位置に配置される第7のヒンジを介して、前記第5の回転部材に接続される第7の回転部材と、
前記第1の方向から見た場合に、前記第6のヒンジとは異なる位置に配置される第8のヒンジを介して、前記第6の回転部材に接続される第8の回転部材と
を有する第2の制振コアユニットと
を含み、
前記第1の制振コアユニットと、前記第2の制振コアユニットとは、
前記第1の方向から見た場合に前記第3のヒンジとは異なる位置に配置され前記第3の回転部材に接続される第9のヒンジと、
前記第1の方向から見た場合に前記第4のヒンジとは異なる位置に配置され前記第4の回転部材に接続される第10のヒンジと、
前記第1の方向から見た場合に前記第7のヒンジとは異なる位置に配置され前記第7の回転部材に接続される第11のヒンジと、
前記第1の方向から見た場合に前記第8のヒンジとは異なる位置に配置され前記第8の回転部材に接続される第12のヒンジと
を介して、互いに接続される
制振構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の制振構造体であって、
前記1以上の制振ユニットの各々は、前記第9のヒンジを介して前記第3の回転部材に接続され、前記第10のヒンジを介して前記第4の回転部材に接続され、前記第11のヒンジを介して前記第7の回転部材に接続され、前記第12のヒンジを介して前記第8の回転部材に接続される制振駆動部材を含む
制振構造体。
【請求項3】
請求項2に記載の制振構造体であって、
前記第1の方向の振動の作用により発生する、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の前記第1の方向における第1の向きへの変位を第1の振動変位とし、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の前記第1の方向における前記第1の向きとは反対側の第2の向きへの変位を第2の振動変位とすると、
前記第1の制振コアユニットは、前記第1の振動変位に応じて前記第1の方向において伸張変形されるように、かつ前記第2の振動変位に応じて前記第1の方向に沿って圧縮変形されるように構成され、
前記第2の制振コアユニットは、前記第1の振動変位に応じて前記第1の方向に沿って圧縮変形されるように、かつ前記第2の振動変位に応じて前記第1の方向に沿って伸張変形されるように構成される
制振構造体。
【請求項4】
請求項3に記載の制振構造体であって、
前記制振駆動部材は、前記第1の振動変位に応じて前記第2の向きに変位し、かつ前記第2の振動変位に応じて前記第1の向きに変位するように構成される
制振構造体。
【請求項5】
請求項1に記載の制振構造体であって、
前記1以上の制振ユニットの各々は、制振対象となる前記第1の方向の振動の周波数を基準として、共振周波数が設定されている
制振構造体。
【請求項6】
請求項5に記載の制振構造体であって、
制振対象となる前記1の方向の振動の周波数は、20Hz以上1000Hz以下の範囲に含まれる
制振構造体。
【請求項7】
請求項1に記載の制振構造体であって、
前記1以上の制振ユニットの各々は、前記第1の支持部材に設定される第1の接続基準位置と、前記第2の支持部材に設定され前記第1の方向から見て前記第1の接続基準位置と同じ位置となる第2の接続基準位置を基準として、前記第1の支持部材及び第2の支持部材との間に接続される
制振構造体。
【請求項8】
請求項7に記載の制振構造体であって、
前記1以上の制振ユニットの各々は、前記第1の接続基準位置と前記第2の接続基準位置とを結ぶ前記第1の方向に延在する基準線に対して対称に構成される
制振構造体。
【請求項9】
請求項1に記載の制振構造体であって、
前記1以上の制振ユニットの各々において、
前記第1の回転部材、前記第2の回転部材、前記第3の回転部材、及び前記第4の回転部材は、前記第1の制振コアユニットの中心に対して対称に配置され、
前記第5の回転部材、前記第6の回転部材、前記第7の回転部材、及び前記第8の回転部材は、前記第2の制振コアユニットの中心に対して対称に配置される
制振構造体。
【請求項10】
請求項1に記載の制振構造体であって、
前記第1の方向から見た場合に、前記第1のヒンジ、前記第5のヒンジ、前記第9のヒンジ、及び前記第11のヒンジは、同じ位置に配置され、
前記第1の方向から見た場合に、前記第2のヒンジ、前記第6のヒンジ、前記第10のヒンジ、及び前記第12のヒンジは、同じ位置に配置され、
前記第1の方向から見た場合に、前記第3のヒンジ、及び前記第7のヒンジは、同じ位置に配置され、
前記第1の方向から見た場合に、前記第4のヒンジ、及び前記第8のヒンジは、同じ位置に配置される
制振構造体。
【請求項11】
請求項1に記載の制振構造体であって、
前記第1のヒンジ、前記第2のヒンジ、前記第3のヒンジ、前記第4のヒンジ、前記第5のヒンジ、前記第6のヒンジ、前記第7のヒンジ、前記第8のヒンジ、前記第9のヒンジ、前記第10のヒンジ、前記第11のヒンジ、及び前記第12のヒンジの各々は、前記第1の方向に延在し、前記第1の方向に直交する断面のサイズが相対的に小さい薄肉部材により構成される
制振構造体。
【請求項12】
請求項11に記載の制振構造体であって、
前記第1のヒンジ、前記第2のヒンジ、前記第3のヒンジ、前記第4のヒンジ、前記第5のヒンジ、前記第6のヒンジ、前記第7のヒンジ、前記第8のヒンジ、前記第9のヒンジ、前記第10のヒンジ、前記第11のヒンジ、及び前記第12のヒンジの各々は、制振対象となる前記第1の方向の振動の周波数を基準として、前記第1の方向に直交する断面のサイズが設定される
制振構造体。
【請求項13】
請求項11に記載の制振構造体であって、
前記第1のヒンジ、前記第2のヒンジ、前記第3のヒンジ、前記第4のヒンジ、前記第5のヒンジ、前記第6のヒンジ、前記第7のヒンジ、前記第8のヒンジ、前記第9のヒンジ、前記第10のヒンジ、前記第11のヒンジ、及び前記第12のヒンジの少なくとも1つは、他の部材との接続部分にR面取り部が構成される
制振構造体。
【請求項14】
請求項13に記載の制振構造体であって、
前記R面取り部の半径は、1mm以上である
制振構造体。
【請求項15】
請求項1に記載の制振構造体であって、
前記1以上の制振ユニットの各々には、1以上の錘が配置される
制振構造体。
【請求項16】
請求項15に記載の制振構造体であって、
前記1以上の錘は、
前記第1の制振コアユニットの前記第1の回転部材に配置される第1の錘、前記第2の回転部材に配置される第2の錘、前記第3の回転部材に配置される第3の錘、及び前記第4の回転部材に配置される第4の錘と、
前記第2の制振コアユニットの前記第5の回転部材に配置される第5の錘、前記第6の回転部材に配置される第6の錘、前記第7の回転部材に配置される第7の錘、及び前記第8の回転部材に配置される第8の錘と
を含む
制振構造体。
【請求項17】
請求項16に記載の制振構造体であって、
前記第1の錘、前記第2の錘、前記第3の錘、及び前記第4の錘は、前記第1の制振コアユニットの中心に対して対称に配置され、
前記第4の錘、前記第5の錘、前記第6の錘、及び前記第7の錘は、前記第2の制振コアユニットの中心に対して対称に配置される
制振構造体。
【請求項18】
請求項15に記載の制振構造体であって、
前記1以上の錘は、制振対象となる前記第1の方向の振動の周波数を基準として、数、重量、形状、及び配置位置の少なくとも1つが設定される
制振構造体。
【請求項19】
請求項1に記載の制振構造体であって、さらに、
前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の間に前記1以上の制振ユニットを囲むように接続され、前記制振構造体の剛性を補強する補強部材を有する
制振構造体。
【請求項20】
請求項19に記載の制振構造体であって、
前記1以上の制振ユニットの各々と、前記補強部材との間には、少なくとも1mm以上の間隙が設けられている
制振構造体。
【請求項21】
請求項19に記載の制振構造体であって、
前記補強部材は、前記第1の支持部材、及び前記第2の支持部材のいずれか一方に接続され、前記基準線に対して互いに対称となるように前記第1の方向に対して斜め方向に延在する2つの斜めフレーム部材のペアを含む
制振構造体。
【請求項22】
請求項19に記載の制振構造体であって、
前記補強部材は、トラス構造により構成される
制振構造体。
【請求項23】
請求項19に記載の制振構造体であって、
前記補強部材は、トポロジー最適化により構成される
制振構造体。
【請求項24】
請求項19に記載の制振構造体であって、
前記補強部材は、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の間の前記1以上の制振ユニットの周囲の領域に配置される板状の部材により構成される
制振構造体。
【請求項25】
請求項22に記載の制振構造体であって、
前記補強部材は、前記第1の方向に対して斜め方向に延在する筋交い部材を含む複数のフレーム部材を有し、前記第1の支持部材と前記複数のフレーム部材との接続部分、前記第2の支持部材と前記複数のフレーム部材との接続部分、及び前記複数のフレーム部材に含まれるフレーム部材同士の接続部分の少なくとも1つに、R面取り部が構成される
制振構造体。
【請求項26】
請求項25に記載の制振構造体であって、
前記補強部材は、前記筋交い部材同士の接続部分に、前記R面取り部が構成される
制振構造体。
【請求項27】
請求項24に記載の制振構造体であって、
前記補強部材は、前記第1の支持部材と前記板状の部材との接続部分、前記第2の支持部材と前記板状の部材との接続部分、及び前記板状の部材の端面に構成される隅部の少なくとも1つに、R面取り部が構成される
制振構造体。
【請求項28】
請求項27に記載の制振構造体であって、
前記補強部材は、前記1以上の制振ユニットの各々に対向する対向面に構成される隅部に、前記R面取り部が構成される
制振構造体。
【請求項29】
請求項25に記載の制振構造体であって、
前記R面取り部の半径は、2mm以上である
制振構造体。
【請求項30】
請求項1に記載の制振構造体であって、
前記第1の制振コアユニットは、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材とを互いに接続する第1の内部補強部材と、前記第3の回転部材と前記第4の回転部材とを互いに接続する第2の内部補強部材との少なくとも一方を有し、
前記第2の制振コアユニットは、前記第5の回転部材と前記第6の回転部材とを互いに接続する第3の内部補強部材と、前記第7の回転部材と前記第8の回転部材とを互いに接続する第4の内部補強部材との少なくとも一方を有する
制振構造体。
【請求項31】
請求項1に記載の制振構造体であって、
前記第1の支持部材の所定の位置に振動入力点が設定される
制振構造体。
【請求項32】
請求項32に記載の制振構造体であって、
前記第1の支持部材の前記振動入力点から離間した位置に、振動出力点が設定される
制振構造体。
【請求項33】
請求項1に記載の制振構造体であって、
前記1以上の制振ユニットは、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って並んで配置される複数の制振ユニットである
制振構造体。
【請求項34】
請求項32に記載の制振構造体であって、
前記振動入力点は、前記第1の支持部材の前記第2の方向における一方の端部の位置に設定される
制振構造体。
【請求項35】
請求項32に記載の制振構造体であって、
前記振動入力点は、前記第1の支持部材の前記第2の方向における中央の位置に設定される
制振構造体。
【請求項36】
請求項1に記載の制振構造体であって、
前記第1の方向が鉛直方向に沿うように、かつ前記第1の支持部材が前記第2の支持部材よりも上方側に位置するように構成される
制振構造体。
【請求項37】
請求項1に記載の制振構造体であって、
メタマテリアル構造体として構成される
制振構造体。
【請求項38】
1以上の制振構造体を具備し、第1の部材と、第2の部材との間に接続される制振構造体を組み込んだ装置であって、
前記1以上の制振構造体の各々は、請求項1に記載の制振構造体であり、前記第1の支持部材の所定の位置が第1の振動作用点となるように前記第1の部材に接続され、前記第1の支持部材の前記第1の振動作用点から離間した位置が第2の振動作用点となるように前記第2の部材に接続される
制振構造体を組み込んだ装置。
【請求項39】
請求項36に記載の制振構造体を組み込んだ装置であって、さらに、
前記第1の部材から前記第1の方向の振動が発生した場合に、前記第1の振動作用点に前記第1の部材から発生した前記振動が入力するように、前記第1の部材と前記1以上の制振構造体の各々とを接続する第1の接続用機構と、
前記第2の部材から前記第1の方向の振動が発生した場合に、前記第2の振動作用点に前記第2の部材から発生した前記振動が入力するように、前記第2の部材と前記1以上の制振構造体の各々とを接続する第2の接続用機構と
を具備する制振構造体を組み込んだ装置。
【請求項40】
請求項36に記載の制振構造体を組み込んだ装置であって、
前記1以上の制振構造体の各々は、
前記1以上の制振ユニットとして、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って並んで配置される複数の制振ユニットを有し、
前記第1の支持部材の前記第2の方向における一方の端部の位置が前記第1の振動作用点となるように前記第1の部材に接続され、
前記第1の支持部材の前記第2の方向における他方の端部の位置が前記第2の振動作用点となるように前記第2の部材に接続される
制振構造体を組み込んだ装置。
【請求項41】
請求項38に記載の制振構造体を組み込んだ装置であって、
前記1以上の制振構造体は、前記第1の方向及び前記第2の方向の各々に直交する第3の方向に沿って並ぶように、かつ前記第3の方向から見た場合に、前記第2の方向における2つの端部の位置がそろうように配置される複数の制振構造体であり、
前記複数の制振構造体は、前記第3の方向から見た場合に、第1の側の端部の位置が前記第1の振動作用点となるように前記第1の部材に接続され、前記第1の側とは反対側の第2の側の端部の位置が前記第2の振動作用点となるように前記第2の部材に接続される第1の制振構造体と、前記第2の側の端部の位置が前記第1の振動作用点となるように前記第1の部材に接続され、前記第1の側の端部の位置が前記第2の振動作用点となるように前記第2の部材に接続される第2の制振構造体とが、前記第3の方向に沿って交互に配置される
制振構造体を組み込んだ装置。
【請求項42】
請求項36に記載の制振構造体を組み込んだ装置であって、
前記1以上の制振構造体の各々は、
前記1以上の制振ユニットとして、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って並んで配置される複数の制振ユニットを有し、
前記第1の支持部材の前記第2の方向における中央の位置が前記第1の振動作用点となるように前記第1の部材に接続され、
前記第1の部材の前記第2の方向における少なくとも一方の端部の位置が前記第2の振動作用点となるように前記第2の支持部材に接続される
制振構造体を組み込んだ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動の減衰に適用可能な制振構造体、及び制振構造体を組み込んだ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活において、振動はごく身近に発生し、例えば電車や車等の乗り物、チェーンソーや草刈り機等の振動工具、ラジオや楽器等の音楽機器等から発生する。例えば、乗り物や振動工具等から直接的に振動が伝わる場合や、音波により振動が伝わる場合もある。
【0003】
一般的に固体に伝わる振動の振動数(周波数)は、20~1000Hzの範囲と言われており、例えば建物や家具等に対して振動(物的影響)を発生させる。このような振動により、機器が強い揺れを受けて壊れてしまったり、印刷や加工等の細かな作業を行う上でズレが発生してしまったりといった問題が生じることも多い。
【0004】
振動は、物や作業に対してだけではなく、人間に対して直接的な心身への影響(生理的な影響)を及ぼす場合も多い。例えば、振動が発生する時間帯によっては、睡眠へ影響を及ぼし、長期間それらの振動にさらされていると心理的な影響も大きくなる。このように振動は、人間生活における環境を構成する大きな要因となり、快適でトラブルの少ない環境づくりを行う上で、振動を抑えることは非常に重要となる。
【0005】
振動を減衰させる制振方法として、例えば、ばねを用いるダンパ等の減衰機構(制振構造体)を用いる方法や、スポンジやゴム等の減衰材料を利用する方法等が挙げられる。
【0006】
また、近年では、メタマテリアルという直接的に制御可能なスケールで微細な周期構造が構成された部材の研究が盛んに行われている。このようなメタマテリアル構造体では、微細な周機構造により、材料の本来持っている特性だけでは発現し得ない特性を発現させることが可能となる。
【0007】
このようなメタマテリアル構造体を利用して伝搬する音波や振動を制御することも考えられており、音響メタマテリアルとも呼ばれている。微細な周期構造を変えることで、特定の周波数を吸収したり、伝搬する音波や振動を減衰したりすることが可能となる。
【0008】
特許文献1には、動吸振器を備えた制振構造体について開示されている。当該動吸振器は、一端側が骨格から延在する棒状の支持部と、支持部の他端側に連なり支持部よりも拡張している振動部を有する微細な周期構造を持っていることを特徴としており、制振させたい対象の共振周波数が分散され、振動エネルギーが抑えられる。
【0009】
特許文献2には、界壁に配置可能であり、一体成形可能な音響メタマテリアルから構成される遮音材について開示されている。当該遮音材は、錘部を含む複数の共振部を有しており、遮音材に伝わる振動と異なる振動を共振部が発生するため振動が減衰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-3059号公報
【特許文献2】特開2021-152584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように高い制振機能を発揮することが可能な制振構造体が求められている。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、高い制振機能を発揮することが可能な制振構造体、及び制振構造体を組み込んだ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る制振構造体は、第1の支持部材と、第2の支持部材と、1以上の制振ユニットとを具備する。
前記第2の支持部材は、前記第1の支持部材に対して第1の方向に沿って対向して配置される。
前記1以上の制振ユニットは、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材との間に接続され、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材に作用する前記第1の方向の振動を抑制する。
また、前記1以上の制振ユニットの各々は、第1の制振コアユニットと、第2の制振コアユニットとを含む。
前記第1の制振コアユニットは、
第1のヒンジを介して前記第1の支持部材に接続される第1の回転部材と、
第2のヒンジを介して前記第1の支持部材に接続される第2の回転部材と、
前記第1の方向から見た場合に、前記第1のヒンジとは異なる位置に配置される第3のヒンジを介して、前記第1の回転部材に接続される第3の回転部材と、
前記第1の方向から見た場合に、前記第2のヒンジとは異なる位置に配置される第4のヒンジを介して、前記第2の回転部材に接続される第4の回転部材と
を有する。
前記第2の制振コアユニットは、
第5のヒンジを介して前記第2の支持部材に接続される第5の回転部材と、
第6のヒンジを介して前記第2の支持部材に接続される第6の回転部材と、
前記第1の方向から見た場合に、前記第5のヒンジとは異なる位置に配置される第7のヒンジを介して、前記第5の回転部材に接続される第7の回転部材と、
前記第1の方向から見た場合に、前記第6のヒンジとは異なる位置に配置される第8のヒンジを介して、前記第6の回転部材に接続される第8の回転部材と
を有する。
前記第1の制振コアユニットと、前記第2の制振コアユニットとは、
前記第1の方向から見た場合に前記第3のヒンジとは異なる位置に配置され前記第3の回転部材に接続される第9のヒンジと、
前記第1の方向から見た場合に前記第4のヒンジとは異なる位置に配置され前記第4の回転部材に接続される第10のヒンジと、
前記第1の方向から見た場合に前記第7のヒンジとは異なる位置に配置され前記第7の回転部材に接続される第11のヒンジと、
前記第1の方向から見た場合に前記第8のヒンジとは異なる位置に配置され前記第8の回転部材に接続される第12のヒンジと
を介して、互いに接続される。
【0014】
この制振構造体では、第1の支持部材と第2の支持部材との間に1以上の制振ユニットが接続される。1以上の制振ユニットの各々は、第1の制振コアユニットと、第2の制振コアユニットとを含む。
第1の制振コアユニットは、第1及び第2のヒンジを介して第1の支持部材に接続され、第2の制振コアユニットは第5及び第6のヒンジを介して第2の支持部材に接続される。また、第1の制振コアユニットと、第2の制振コアユニットとは、第9~第12のヒンジを介して、互いに接続される。
第1の制振コアユニットは、第1~第4の回転部材を有する。このうち、第1の回転部材と第3の回転部材とは、第3のヒンジを介して互いに接続されている。また第2の回転部材と第4の回転部材とは、第4のヒンジを介して互いに接続されている。
第2の制振コアユニットは、第5~第8の回転部材を有する。このうち、第5の回転部材と第7の回転部材とは、第7のヒンジを介して互いに接続されている。また第6の回転部材と第8の回転部材とは、第8のヒンジを介して互いに接続されている。
第1~第12のヒンジは、上記のように第1の方向から見た場合の位置が適宜設定されている。
第1の支持部材及び第2の支持部材に第1の方向の振動が作用すると、各回転部材がヒンジを基点に回転する。第1の制振コアユニットと第2制振コアユニットとの接続部分は、第1の支持部材及び第2の支持部材に作用する第1の方向の振動を打ち消す向きに変位する。これにより、第1の支持部材及び第2の支持部材に作用する振動を抑制することが可能となる。この結果、高い制振機能を発揮することが可能となる。
【0015】
前記1以上の制振ユニットの各々は、前記第9のヒンジを介して前記第3の回転部材に接続され、前記第10のヒンジを介して前記第4の回転部材に接続され、前記第11のヒンジを介して前記第7の回転部材に接続され、前記第12のヒンジを介して前記第8の回転部材に接続される制振駆動部材を含んでもよい。
【0016】
前記第1の方向の振動の作用により発生する、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の前記第1の方向における第1の向きへの変位を第1の振動変位とし、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の前記第1の方向における前記第1の向きとは反対側の第2の向きへの変位を第2の振動変位とすると、前記第1の制振コアユニットは、前記第1の振動変位に応じて前記第1の方向において伸張変形されるように、かつ前記第2の振動変位に応じて前記第1の方向に沿って圧縮変形されるように構成されてもよい。この場合、前記第2の制振コアユニットは、前記第1の振動変位に応じて前記第1の方向に沿って圧縮変形されるように、かつ前記第2の振動変位に応じて前記第1の方向に沿って伸張変形されるように構成されてもよい。
【0017】
前記制振駆動部材は、前記第1の振動変位に応じて前記第2の向きに変位し、かつ前記第2の振動変位に応じて前記第1の向きに変位するように構成されてもよい。
【0018】
前記1以上の制振ユニットの各々は、制振対象となる前記第1の方向の振動の周波数を基準として、共振周波数が設定されていてもよい。
【0019】
制振対象となる前記1の方向の振動の周波数は、20Hz以上1000Hz以下の範囲に含まれてもよい。
【0020】
前記1以上の制振ユニットの各々は、前記第1の支持部材に設定される第1の接続基準位置と、前記第2の支持部材に設定され前記第1の方向から見て前記第1の接続基準位置と同じ位置となる第2の接続基準位置を基準として、前記第1の支持部材及び第2の支持部材との間に接続されてもよい。
【0021】
前記1以上の制振ユニットの各々は、前記第1の接続基準位置と前記第2の接続基準位置とを結ぶ前記第1の方向に延在する基準線に対して対称に構成されてもよい。
【0022】
前記1以上の制振ユニットの各々において、前記第1の回転部材、前記第2の回転部材、前記第3の回転部材、及び前記第4の回転部材は、前記第1の制振コアユニットの中心に対して対称に配置されてもよい。この場合、前記第5の回転部材、前記第6の回転部材、前記第7の回転部材、及び前記第8の回転部材は、前記第2の制振コアユニットの中心に対して対称に配置されてもよい。
【0023】
前記第1の方向から見た場合に、前記第1のヒンジ、前記第5のヒンジ、前記第9のヒンジ、及び前記第11のヒンジは、同じ位置に配置されてもよい。この場合、前記第1の方向から見た場合に、前記第2のヒンジ、前記第6のヒンジ、前記第10のヒンジ、及び前記第12のヒンジは、同じ位置に配置されてもよい。また、前記第1の方向から見た場合に、前記第3のヒンジ、及び前記第7のヒンジは、同じ位置に配置されてもよい。また、前記第1の方向から見た場合に、前記第4のヒンジ、及び前記第8のヒンジは、同じ位置に配置されてもよい。
【0024】
前記第1のヒンジ、前記第2のヒンジ、前記第3のヒンジ、前記第4のヒンジ、前記第5のヒンジ、前記第6のヒンジ、前記第7のヒンジ、前記第8のヒンジ、前記第9のヒンジ、前記第10のヒンジ、前記第11のヒンジ、及び前記第12のヒンジの各々は、前記第1の方向に延在し、前記第1の方向に直交する断面のサイズが相対的に小さい薄肉部材により構成されてもよい。
【0025】
前記第1のヒンジ、前記第2のヒンジ、前記第3のヒンジ、前記第4のヒンジ、前記第5のヒンジ、前記第6のヒンジ、前記第7のヒンジ、前記第8のヒンジ、前記第9のヒンジ、前記第10のヒンジ、前記第11のヒンジ、及び前記第12のヒンジの各々は、制振対象となる前記第1の方向の振動の周波数を基準として、前記第1の方向に直交する断面のサイズが設定されてもよい。
【0026】
前記第1のヒンジ、前記第2のヒンジ、前記第3のヒンジ、前記第4のヒンジ、前記第5のヒンジ、前記第6のヒンジ、前記第7のヒンジ、前記第8のヒンジ、前記第9のヒンジ、前記第10のヒンジ、前記第11のヒンジ、及び前記第12のヒンジの少なくとも1つは、他の部材との接続部分にR面取り部が構成されてもよい。
【0027】
前記R面取り部の半径は、1mm以上であってもよい。
【0028】
前記1以上の制振ユニットの各々には、1以上の錘が配置されてもよい。
【0029】
前記1以上の錘は、前記第1の制振コアユニットの前記第1の回転部材に配置される第1の錘、前記第2の回転部材に配置される第2の錘、前記第3の回転部材に配置される第3の錘、及び前記第4の回転部材に配置される第4の錘と、前記第2の制振コアユニットの前記第5の回転部材に配置される第5の錘、前記第6の回転部材に配置される第6の錘、前記第7の回転部材に配置される第7の錘、及び前記第8の回転部材に配置される第8の錘とを含んでもよい。
【0030】
前記第1の錘、前記第2の錘、前記第3の錘、及び前記第4の錘は、前記第1の制振コアユニットの中心に対して対称に配置されてもよい。この場合、前記第4の錘、前記第5の錘、前記第6の錘、及び前記第7の錘は、前記第2の制振コアユニットの中心に対して対称に配置されてもよい。
【0031】
前記1以上の錘は、制振対象となる前記第1の方向の振動の周波数を基準として、数、重量、形状、及び配置位置の少なくとも1つが設定されてもよい。
【0032】
前記制振構造体は、さらに、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の間に前記1以上の制振ユニットを囲むように接続され、前記制振構造体の剛性を補強する補強部材を有してもよい。
【0033】
前記1以上の制振ユニットの各々と、前記補強部材との間には、少なくとも1mm以上の間隙が設けられてもよい。
【0034】
前記補強部材は、前記第1の支持部材、及び前記第2の支持部材のいずれか一方に接続され、前記基準線に対して互いに対称となるように前記第1の方向に対して斜め方向に延在する2つの斜めフレーム部材のペアを含んでもよい。
【0035】
前記補強部材は、トラス構造により構成されてもよい。
【0036】
前記補強部材は、トポロジー最適化により構成されてもよい。
【0037】
前記補強部材は、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の間の前記1以上の制振ユニットの周囲の領域に配置される板状の部材により構成されてもよい。
【0038】
前記補強部材は、前記第1の方向に対して斜め方向に延在する筋交い部材を含む複数のフレーム部材を有し、前記第1の支持部材と前記複数のフレーム部材との接続部分、前記第2の支持部材と前記複数のフレーム部材との接続部分、及び前記複数のフレーム部材に含まれるフレーム部材同士の接続部分の少なくとも1つに、R面取り部が構成されてもよい。
【0039】
前記補強部材は、前記筋交い部材同士の接続部分に、前記R面取り部が構成されてもよい。
【0040】
前記補強部材は、前記第1の支持部材と前記板状の部材との接続部分、前記第2の支持部材と前記板状の部材との接続部分、及び前記板状の部材の端面に構成される隅部の少なくとも1つに、R面取り部が構成されてもよい。
【0041】
前記補強部材は、前記1以上の制振ユニットの各々に対向する対向面に構成される隅部に、前記R面取り部が構成されてもよい。
【0042】
前記R面取り部の半径は、2mm以上であってもよい。
【0043】
前記第1の制振コアユニットは、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材とを互いに接続する第1の内部補強部材と、前記第3の回転部材と前記第4の回転部材とを互いに接続する第2の内部補強部材との少なくとも一方を有してもよい。この場合、前記第2の制振コアユニットは、前記第5の回転部材と前記第6の回転部材とを互いに接続する第3の内部補強部材と、前記第7の回転部材と前記第8の回転部材とを互いに接続する第4の内部補強部材との少なくとも一方を有してもよい。
【0044】
前記第1の支持部材の所定の位置に振動入力点が設定されてもよい。
【0045】
前記第1の支持部材の前記振動入力点から離間した位置に、振動出力点が設定されてもよい。
【0046】
前記1以上の制振ユニットは、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って並んで配置される複数の制振ユニットであってもよい。
【0047】
前記振動入力点は、前記第1の支持部材の前記第2の方向における一方の端部の位置に設定されてもよい。
【0048】
前記振動入力点は、前記第1の支持部材の前記第2の方向における中央の位置に設定されてもよい。
【0049】
前記制振構造体は、前記第1の方向が鉛直方向に沿うように、かつ前記第1の支持部材が前記第2の支持部材よりも上方側に位置するように構成されてもよい。
【0050】
前記制振構造体は、メタマテリアル構造体として構成されてもよい。
【0051】
本発明の一形態に係る制振構造体を組み込んだ装置は、1以上の制振構造体を具備し、第1の部材と、第2の部材との間に接続される。
前記1以上の制振構造体の各々は、請求項1に記載の制振構造体であり、前記第1の支持部材の所定の位置が第1の振動作用点となるように前記第1の部材に接続され、前記第1の支持部材の前記第1の振動作用点から離間した位置が第2の振動作用点となるように前記第2の部材に接続される。
【0052】
前記制振構造体を組み込んだ装置は、さらに、第1の接続用機構と、第2の接続用機構とを具備してもよい。
前記第1の接続用機構は、前記第1の部材から前記第1の方向の振動が発生した場合に、前記第1の振動作用点に前記第1の部材から発生した前記振動が入力するように、前記第1の部材と前記1以上の制振構造体の各々とを接続する。
前記第2の接続用機構は、前記第2の部材から前記第1の方向の振動が発生した場合に、前記第2の振動作用点に前記第2の部材から発生した前記振動が入力するように、前記第2の部材と前記1以上の制振構造体の各々とを接続する。
【0053】
前記1以上の制振構造体の各々は、前記1以上の制振ユニットとして、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って並んで配置される複数の制振ユニットを有してもよい。この場合、前記1以上の制振構造体の各々は、前記第1の支持部材の前記第2の方向における一方の端部の位置が前記第1の振動作用点となるように前記第1の部材に接続されてもよい。また、前記1以上の制振構造体の各々は、前記第1の支持部材の前記第2の方向における他方の端部の位置が前記第2の振動作用点となるように前記第2の部材に接続されてもよい。
【0054】
前記1以上の制振構造体は、前記第1の方向及び前記第2の方向の各々に直交する第3の方向に沿って並ぶように、かつ前記第3の方向から見た場合に、前記第2の方向における2つの端部の位置がそろうように配置される複数の制振構造体であってもよい。この場合、前記複数の制振構造体は、前記第3の方向から見た場合に、第1の側の端部の位置が前記第1の振動作用点となるように前記第1の部材に接続され、前記第1の側とは反対側の第2の側の端部の位置が前記第2の振動作用点となるように前記第2の部材に接続される第1の制振構造体と、前記第2の側の端部の位置が前記第1の振動作用点となるように前記第1の部材に接続され、前記第1の側の端部の位置が前記第2の振動作用点となるように前記第2の部材に接続される第2の制振構造体とが、前記第3の方向に沿って交互に配置されてもよい。
【0055】
前記1以上の制振構造体の各々は、前記1以上の制振ユニットとして、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って並んで配置される複数の制振ユニットを有してもよい。この場合、前記1以上の制振構造体の各々は、前記第1の支持部材の前記第2の方向における中央の位置が前記第1の振動作用点となるように前記第1の部材に接続されてもよい。また、前記1以上の制振構造体の各々は、前記第1の部材の前記第2の方向における少なくとも一方の端部の位置が前記第2の振動作用点となるように前記第2の支持部材に接続されてもよい。
【発明の効果】
【0056】
以上のように、本発明によれば、高い制振機能を発揮することが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明の一実施形態に係る制振構造体を奥行方向(Y方向)に沿って見た場合の模式図である。
【
図2】
図1に示す制振構造体の一部の部位を図示した図である。
【
図3】3つの制振ユニットのうち、左側の最端に位置する制振ユニットを示す模式図である。
【
図4】制振構造体により、上下方向(Z方向)の振動が減衰される動作を示す模式図である(第1の振動変位)。
【
図5】制振ユニットにより、上下方向(Z方向)の振動が減衰される動作を示す模式図である(第2の振動変位)。
【
図6】制振構造体により、上下方向(Z方向)の振動が減衰される動作を示す模式図である(第1の振動変位)。
【
図7】振動ユニットにより、上下方向(Z方向)の振動が減衰される動作を示す模式図である(第2の振動変位)。
【
図8】制振ユニットに対する錘の配置例を示す模式図である。
【
図9】制振ユニットに対する錘の配置例を示す模式図である。
【
図10】制振ユニットに対する錘の配置例を示す模式図である。
【
図11】
図8~
図10に示す制振ユニットを用いた場合の、上下方向(Z方向)の振動の周波数に対する、振動減衰を示すグラフである。
【
図12】制振ユニットに対する錘の他の配置例を示す模式図である。
【
図13】制振ユニットに対する錘の他の配置例を示す模式図である。
【
図14】制振ユニットに対する錘の他の配置例を示す模式図である。
【
図15】制振ユニットに対する錘の他の配置例を示す模式図である。
【
図16】第1~第12のヒンジの、左右方向(X方向)におけるサイズを変更した場合の、上下方向(Z方向)の振動の周波数に対する、振動減衰を示すグラフである。
【
図17】補強部材の他の構成例を示す模式図である。
【
図18】補強部材の他の構成例を示す模式図である。
【
図19】制振ユニットの他の構成例を示す模式図である。
【
図20】補強部材の他の構成例を示す模式図である。
【
図21】補強部材の他の構成例を示す模式図である。
【
図22】本発明の一実施形態に係る振動減衰装置の概略的な構成例を示す模式図である。
【
図23】振動減衰装置の他の構成例を示す模式図である(斜視図)。
【
図24】振動減衰装置の他の構成例を示す模式図である(正面図)。
【
図25】振動減衰装置の他の構成例を示す模式図である(側面図)。
【
図26】振動減衰装置の他の構成例を示す模式図である(正面図)。
【
図27】複数の振動減衰装置の設置例を示す模式図である。
【
図28】制振構造体の他の構成例を示す模式図である。
【
図29】制振構造体の他の構成例を示す模式図である。
【
図30】制振構造体の他の構成例を示す模式図である。
【
図31】第3のヒンジの部分を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0059】
[制振構造体の構成]
図1~
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る制振構造体の構成について説明する。制振構造体を、制振機構と呼ぶことも可能である。
【0060】
以下、説明の理解を容易とするために、制振構造体1に対して、左右方向、奥行方向、上下方向を便宜的に規定する。具体的には、図中のX方向を左右方向(X軸の正側が右側、負側が左側)とし、図中のY方向を奥行方向(Y軸の正側が奥側、負側が手前側)とする。また図中のZ方向を、上下方向(Z軸の正側が上方側、負側が下方側)とする。
【0061】
もちろん、本技術の適用について、制振構造体1が配置される向き等が限定される訳ではない。また制振構造体1に対して、どの部位を正面側の部位として、どの部位を側面側の部位とするかといった点についても限定される訳ではない。
【0062】
図1は、制振構造体1を奥行方向(Y方向)から見た場合の模式図である。
図2は、
図1に示す制振構造体1のうち、所定の部位だけを図示した図である。具体的には、
図2には、制振構造体1が有する部位のうち、第1の支持部材2、第2の支持部材3、及び3つの制振ユニット4(4a~4c)が図示されている。
図3は、3つの制振ユニット4のうち、左側の最端に位置する制振ユニット4aを示す模式図である。
【0063】
本実施形態において、上下方向(Z方向)は、本技術に係る第1の方向の一実施形態に相当する。左右方向(X方向)は、第1の方向に直交する第2の方向の一実施形態に相当する。奥行方向(Y方向)は、第1の方向及び第2の方向の各々に直交する第3の方向の一実施形態に相当する。
3つの制振ユニット4a~4cは、本技術に係る1以上の制振ユニットの一実施形態に相当する。
【0064】
図1及び
図2に示すように、制振構造体1は、第1の支持部材2と、第2の支持部材3と、3つの制振ユニット4a~4cと、補強部材5と、上方スキン部材6と、下方スキン部材7とを有する。
第1の支持部材2は、X方向に延在する板状の部材である。
第2の支持部材3は、第1の支持部材2と等しい長さでX方向に延在する板状の部材であり、第1の支持部材2に対してZ方向に沿って対向して配置される。第1の支持部材2と第2の支持部材3とは、互いに等しい形状を有する。
【0065】
第1の支持部材2及び第2の支持部材3は、互いに等しい板状の部材が、Z方向に沿って対向するように、またX方向に沿って互いに平行となるように配置された構成となる。
【0066】
第1の支持部材2及び第2の支持部材3の奥行方向(Y方向)におけるサイズ(厚み)は限定されず、任意に設計することが可能である。本実施形態では、
図1に示す制振構造体1の上下方向(Z方向)のサイズの1/8程度の厚みで、制振構造体1が構成されている。従って、制振構造体1のおおよその外形は、板状の部材となる。
【0067】
これに限定されず、制振構造体1の厚み(Y方向におけるサイズ)を、制振構造体1の上下方向(Z方向)のサイズと同程度に設計することも可能である。この場合、制振構造体1のおおよその外形は、直方体形状(ブロック形状)となる。
【0068】
3つの制振ユニット4a~4cは、第1の支持部材2及び第2の支持部材3との間に配置され、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に作用する上下方向(Z方向)の振動を抑制する。
例えば、外力等により、第1の支持部材2及び第2の支持部材3が、上下方向(Z方向)に沿って、所定の振動数(周波数)で振動するとする。3つの制振ユニット4a~4cは、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)の振動に応じて変形し、当該上下方向(Z方向)の振動を減衰することが可能である。
【0069】
本実施形態では、3つの制振ユニット4a~4cの厚み(Y方向におけるサイズ)は、第1の支持部材2及び第2の支持部材3と同じ厚みで設計される。もちろん、制振ユニット4の厚みを、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の厚みと異なるように設計してもよい。
【0070】
補強部材5は、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の間に、3つの制振ユニット4a~4cを囲むように接続され、制振構造体1の剛性を補強する。補強部材5を、外壁部と呼ぶことも可能である。
図1及び
図3に示すように、本実施形態では、補強部材5は、トラス構造により構成される。なお、トラス構造とは、構造力学に基づいた構造形式の一種であり、構造で三角形を形成することで、外力による応力を軽減させる構造のことである。
【0071】
本実施形態では、補強部材5の厚み(Y方向におけるサイズ)は、第1の支持部材2及び第2の支持部材3と同じ厚みで設計される。もちろん、補強部材5の厚みを、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の厚みと異なるように設計してもよい。
例えば、第1の支持部材2、第2の支持部材3、制振ユニット4、及び補強部材5の各々の厚みが、全て異なるように設計することも可能である。
【0072】
上方スキン部材6は、板状の部材からなり、第1の支持部材2の上方側に接続される。
下方スキン部材7は、板状の部材からなり、第2の支持部材3の下方側に接続される。
上方スキン部材6及び下方スキン部材7を、制振構造体1の上下に張り付けることで、制振構造体1の剛性を補強することが可能である。
【0073】
[第1の支持部材2及び第2の支持部材3]
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、左右方向(X方向)において、第1の支持部材2の左端部2aの位置と、第2の支持部材3の左端部3aの位置とがそろえられる。またX方向において、第1の支持部材2の右端部2bの位置と、第2の支持部材3の右端部3bの位置とがそろえられる。
【0074】
制振構造体1を上下方向(Z方向)から見た場合に、第1の支持部材2の左端部2aと、第2の支持部材3の左端部3aとが、互いに同じ位置となる。また上下方向(Z方向)から見た場合に、第1の支持部材2の右端部2bと、第2の支持部材3の右端部3bとが、互いに同じ位置となる。
【0075】
第1の支持部材2には、3つの制振ユニット4a~4cを接続する際に基準となる3つの第1の接続基準位置9(9a~9c)が設定される。本実施形態では、第1の接続基準位置9a~9cは、第1の支持部材2の左端部2aから等間隔になるように設定される。
【0076】
左側の最端に位置する第1の接続基準位置9aは、左側の最端に位置する制振ユニット4aを接続するための基準位置となる。中央に位置する第1の接続基準位置9bは、中央に位置する制振ユニット4bを接続するための基準位置となる。右側の最端に位置する第1の接続基準位置9cは、右側の最端に位置する制振ユニット4cを接続するための基準位置となる。
【0077】
なお本開示における部材同士の「接続」は、接続対象となる部材に対して直接的に接続する場合に限定されず、物理的な他の部材を介して接続する場合を含むものとする。例えば、部材Aと部材Bとの接続は、ヒンジ等の他の部材を介して部材Aと部材Bとを接続する形態も含まれる。すなわち、部材Aと部材Bとの間にヒンジ等の他の部材が介在する接続形態も含まれる。また、「接続」は、接着剤やビス等を介して部材同士が固定される形態のみならず、部材の上に他の部材が載置されているような状況等の、部材同士の接触や当接も含むものとする。
【0078】
第2の支持部材3には、3つの制振ユニット4a~4cを接続する際に基準となる3つの第2の接続基準位置10(10a~10c)が設定される。本実施形態では、第2の接続基準位置10a~10cは、第2の支持部材3の左端部3aから等間隔になるように設定される。
【0079】
左側の最端に位置する第2の接続基準位置10aは、左側の最端に位置する制振ユニット4aを接続するための基準位置となる。中央に位置する第2の接続基準位置10bは、中央に位置する制振ユニット4bを接続するための基準位置となる。右側の最端に位置する第1の接続基準位置10cは、右側の最端に位置する制振ユニット4cを接続するための基準位置となる。
【0080】
図1~
図3に示すように、左右方向(X方向)において、第1の接続基準位置9aと、第2の接続基準位置10aとが同じ位置となる。また、左右方向(X方向)において、第1の接続基準位置9bと、第2の接続基準位置10bとが同じ位置となる。左右方向(X方向)において、第1の接続基準位置9cと、第2の接続基準位置10cとが同じ位置となる。
【0081】
制振構造体1を上下方向(Z方向)から見た場合に、(第1接続基準位置9a、第2の接続基準位置10a)、(第1接続基準位置9b、第2の接続基準位置10b)、(第1接続基準位置9c、第2の接続基準位置10c)の各ペアは、互いに同じ位置となる。
【0082】
図1~
図3に示すように、(第1接続基準位置9a、第2の接続基準位置10a)、(第1接続基準位置9b、第2の接続基準位置10b)、(第1接続基準位置9c、第2の接続基準位置10c)の各ペアを結ぶ仮想的な線を、基準線RLa~RLcとする。基準線RLa~RLcの各々は、上下方向(Z方向)に延在する線となる。
【0083】
[3つの制振ユニット4a~4c]
図1及び
図2に示すように、3つの制振ユニット4a~4cは、上下方向(Z方向)に直交する左右方向(X方向)に並んで配置される。本実施形態では、3つの制振ユニット4a~4cは、互いに同じ形状を有する。以下、3つの制振ユニット4a~4cを代表して、左側の最端に位置する制振ユニット4aについて説明する。
以下に記載する制振ユニット4aの説明は、3つの制振ユニット4a~4cの各々に対しても適用される。
【0084】
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、制振ユニット4aは、基準線RLaに対して対称となるように構成される。すなわち、制振ユニット4aは、基準線RLaを基準として線対称となるように構成される。
【0085】
図2及び
図3に示すように、制振ユニット4aは、第1の制振コアユニット12と、第2の制振コアユニット13と、制振駆動部材14とを有する。
【0086】
第1の制振コアユニット12と、第2の制振コアユニット13とは、互いに等しい形状を有する。制振駆動部材14は、第1の制振コアユニット12と、第2の制振コアユニット13との間に配置され、第1の制振コアユニット12及び第2の制振コアユニット13の各々に接続される。
図1~
図3に示すように、制振駆動部材14は、制振構造体1の上下方向(Z方向)における中央の位置(仮想的な中央線CLの位置)に配置される。
【0087】
[第1の制振コアユニット12]
図3に示すように、第1の制振コアユニット12は、奥行方向(Y方向)から見たおおよその外形が、上下方向(Z方向)を長軸方向とし、左右方向(X方向)を短軸方向とするひし形に構成される。また、第1の制振コアユニット12は、4つの回転部材15(第1~第4の回転部材15a~15d)から構成される。第1~第4の回転部材15a~15dは、第1の制振コアユニット12の中心CP1に対して、対称となるように配置される。
【0088】
図3に示すように、第1~第4の回転部材15a~15dの各々は、奥行方向(Y方向)から見たおおよその外形が、三角形に近い台形となる。第1~第4の回転部材15a~15dの各々は、互いに等しい形状を有し、上下左右の向きが適宜設定されて、中心CP1に対して対称となるように配置される。
【0089】
図3に示すように、第1の回転部材15aは、奥行方向(Y方向)から見て右上の位置に配置される。第1の回転部材15aは、左右方向(X方向)に延在する第1の辺部16a-1と、同じく左右方向(X方向)に延在し、第1の辺部16a-1と上下方向(Z方向)に沿って対向する第2の辺部16b-1とを有する。なお、第1の辺部16a-1は、第1の制振コアユニット12の上辺部となる。
【0090】
第1の辺部16a-1及び第2の辺部16b-1は、ともに左端部が左右方向(X方向)において同じ位置になるように配置される。そして、第2の辺部16b-1の右端部が、第1の辺部16a-1の右端部よりも右側に位置している。
【0091】
また第1の回転部材15aは、上下方向(Z方向)に沿って延在し、第1の辺部16a-1の左端部と、第2の辺部16b-1の左端部とを接続する第3の辺部16c-1とを有する。また第1の回転部材15aは、第1の辺部16a-1の右端部と、第2の辺部16b-1の右端部とを接続し、右下方側に斜めに延在する第4の辺部16d-1とを有する。
【0092】
第1の回転部材15aを奥行方向(Y方向)に沿って見た場合、第1の辺部16a-1が台形の上辺部に相当し、第2の辺部16b-1が下辺部に相当する。また第3の辺部16c-1が台形の左辺部に相当し、第4の辺部16d-1が右辺部に相当する。
【0093】
第2の回転部材15bは、第1の回転部材15aの左右を反転させて、左側に平行移動させた場合と同様の構成を有する。
【0094】
第2の回転部材15bの第1の辺部16a-2は、左右方向(X方向)に延在し、第1の回転部材15aの第1の辺部16a-1と同一直線状に位置する。従って、第2の回転部材15bの第1の辺部16a-2も、第1の制振コアユニット12の上辺部となる。
第2の回転部材15bの第2の辺部16b-2は、左右方向(X方向)に延在し、第1の回転部材15aの第2の辺部16b-1と同一直線状に位置する。
【0095】
第2の回転部材15bの第3の辺部16c-2は、上下方向(Z方向)に延在し、第1の回転部材15の第3の辺部16c-1に対して、左右方向(X方向)に沿って所定の距離の間隔(クリアランス)をあけて対向する位置に配置される。
第3の辺部16c-2は、基準線Rlaを基準として、第3の辺部16c-1と線対称となる位置に配置される。従って、左右方向(X方向)において、第3の辺部16c-1から基準線RLaまでの距離と、第3の辺部16c-2から基準線RLaまでの距離とは、互いに等しくなる。
【0096】
第2の回転部材15bの第4の辺部16d-2は、第1の辺部16a-2の左端部と、第2の辺部16b-2の左端部とを接続し、左下方側に斜めに延在する。
【0097】
第2の回転部材15bを奥行方向(Y方向)に沿って見た場合、第1の辺部16a-2が台形の上辺部に相当し、第2の辺部16b-2が下辺部に相当する。また第3の辺部16c-2が台形の右辺部に相当し、第4の辺部16d-2が左辺部に相当する。
【0098】
第3の回転部材15cは、第1の回転部材15aの上下を反転させて、下方側に平行移動させた場合と同様の構成を有する。
【0099】
第3の回転部材15cの第1の辺部16a-3は、左右方向(X方向)に延在し、第1の制振コアユニット12の下辺部となる。
第3の回転部材15cの第2の辺部16b-3は、左右方向(X方向)に延在し、第1の回転部材15aの第2の辺部16b-1に対して、上下方向(Z方向)に沿って所定の距離の間隔をあけて対向する位置に配置される。
第2の辺部16b-3は、第1の制振コアユニット12の中心CP1を通って左右方向(X方向)に延在する仮想的な線(図示は省略)を基準として、第2の辺部16b-1と線対称となる位置に配置される
【0100】
第3の回転部材15cの第3の辺部16c-3は、上下方向(Z方向)に延在し、第1の回転部材15aの第3の辺部16c-1と同一直線状に位置する。第3の回転部材15cの第4の辺部16d-3は、第1の辺部16a-3の右端部と、第2の辺部16b-3の右端部とを接続し、右上方側に斜めに延在する。
【0101】
第3の回転部材15cを奥行方向(Y方向)に沿って見た場合、第1の辺部16a-3が台形の下辺部に相当し、第2の辺部16b-3が上辺部に相当する。また第3の辺部16c-3が台形の左辺部に相当し、第4の辺部16d-3が右辺部に相当する。
【0102】
第4の回転部材15dは、第3の回転部材15cの左右を反転させて、左側に平行移動させた場合と同様の構成を有する。
【0103】
第4の回転部材15dの第1の辺部16a-4は、左右方向(X方向)に延在し、第3の回転部材15cの第1の辺部16a-3と同一直線状に位置する。第4の回転部材15dの第1の辺部16a-1も、第1の制振コアユニット12の下辺部となる。
【0104】
第4の回転部材15dの第2の辺部16b-4は、左右方向(X方向)に延在し、第3の回転部材15cの第2の辺部16b-3と同一直線状に位置する。また第4の回転部材15dの第2の辺部16b-4は、第2の回転部材15bの第2の辺部16b-2に対して、上下方向(Z方向)に沿って間隔をあけて対向する位置に配置される。
第4の回転部材15dの第2の辺部16b-4と、第2の回転部材15bの第2の辺部16b-2との間の距離は、第1の回転部材15aの第2の辺部16b-1と、第3の回転部材15cの第2の辺部16b-3との間の距離と等しい。
【0105】
第4の回転部材15dの第3の辺部16c-4は、上下方向(Z方向)に延在し、第3の回転部材15cの第3の辺部16c-3に対して、左右方向(X方向)に沿って間隔をあけて対向する位置に配置される。また第4の回転部材15dの第3の辺部16c-4は、第2の回転部材15bの第3の辺部16c-2と同一直線状に位置する。
第4の回転部材15dの第3の辺部16c-4と、第3の回転部材15cの第3の辺部16c-2との間の距離は、第1の回転部材15aの第3の辺部16c-1と、第2の回転部材15bの第2の辺部16b-2との間の距離と等しい。
【0106】
第4の回転部材15dの第4の辺部16d-4は、第1の辺部16a-4の左端部と、第2の辺部16b-4の左端部とを接続し、左上方側に斜めに延在する。
【0107】
第4の回転部材15dを奥行方向(Y方向)に沿って見た場合、第1の辺部16a-4が台形の下辺部に相当し、第2の辺部16b-4が上辺部に相当する。また第3の辺部16c-4が台形の右辺部に相当し、第4の辺部16d-4が左辺部に相当する。
【0108】
[第2の制振コアユニット13]
本実施形態に係る第2の制振コアユニット13は、第1の制振コアユニット12と等しい形状を有し、4つの回転部材17(第5~第8の回転部材17a~17d)から構成される。第5~第8の回転部材17a~17dは、第2の制振コアユニット13の中心CP2に対して、対称となるように配置される。
【0109】
第2の制振コアユニット13は、第1の制振コアユニット12を、下方に平行移動させた場合と同様の構成を有する。
【0110】
図3に示すように、第1の制振コアユニット12を下方に平行移動したと想定した場合、第1の制振コアユニット12の第1の回転部材15aと、第2の制振コアユニット13の第7の回転部材17cとが対応する。第1の制振コアユニット1の第2の回転部材15bと、第2の制振コアユニット13の第8の回転部材17dとが対応する。
【0111】
また第1の制振コアユニット12の第3の回転部材15cと、第2の制振コアユニット13の第5の回転部材17aとが対応する。第1の制振コアユニット12の第4の回転部材15dと、第2の制振コアユニット13の第6の回転部材17bとが対応する。
【0112】
第7の回転部材17cの第1の辺部18a-7と、第8の回転部材17dの第1の辺部18a-8とが、第2の制振コアユニット13の上辺部となる。第5の回転部材17aの第1の辺部18a-5と、第6の回転部材17bの第1の辺部18a-6とが、第2の制振コアユニット13の下辺部となる。
【0113】
第1の制振コアユニット12と、第2の制振コアユニット13は、制振構造体1の上下方向(Z方向)における中央の位置(仮想的な中央線CLの位置)に対して、対称となる位置に配置される。
従って第1の制振コアユニット12の下辺部(第1の辺部16a-3及び16a-4)と、第2の制振コアユニット13の上辺部(第1の辺部18a-7及び18a-8)との中間の位置に、制振駆動部材14が配置される。
言い換えると、第1の制振コアユニット12の下辺部(第1の辺部16a-3及び16a-4)と制振駆動部材14との距離と、第2の制振コアユニット13の上辺部(第1の辺部18a-7及び18a-8)と制振駆動部材14との距離とが、互いに等しくなる。
【0114】
[ヒンジ機構]
図3に示すように、第1の制振コアユニット12、及び第2の制振コアユニット13は、ヒンジ機構を介して、他の部材と接続される。すなわち、第1の制振コアユニット12は、ヒンジ機構を介して、第1の支持部材2と制振駆動部材14との間に接続される。第2の制振コアユニット13も、ヒンジ機構を介して、第2の支持部材3と制振駆動部材14との間に接続される。
【0115】
従って、
図3に示す制振構造体1は、第1の制振コアユニット12と、第2の制振コアユニット13とが、制振駆動部材14と、ヒンジ機構とを介して、互いに接続されている構成を有している。
【0116】
本実施形態では、ヒンジ機構は、12個のヒンジ20(第1~第12のヒンジ20a~20l)により構成される。
【0117】
図3に示すように、第1のヒンジ20a、第2のヒンジ20b、第3のヒンジ20c、第4のヒンジ20d、第5のヒンジ20e、第6のヒンジ20f、第7のヒンジ20g、第8のヒンジ20h、第9のヒンジ20i、第10のヒンジ20j、第11のヒンジ20k、及び第12のヒンジ20lの各々は、上下方向(Z方向)に延在し、上下方向(Z方向)に直交する断面(XY平面で切断した場合の断面)のサイズが相対的に小さい薄肉部材により構成される。
【0118】
図3に示すように、第1の制振コアユニット12の第1の回転部材15aは、第1のヒンジ20aを介して、第1の支持部材2と接続される。また第2の回転部材15bは、第2のヒンジ20bを介して、第1の支持部材2と接続される。
【0119】
第1のヒンジ20a及び第2のヒンジ20bは、第1の接続基準位置9aを基準として、互いに近傍となる位置にそれぞれ接続される。具体的には、第1の接続基準位置9a(基準線RLaの位置)が中間となるように、第1の接続基準位置9aの近傍に、第1のヒンジ20a及び第2のヒンジ20bが接続される。
【0120】
第1の接続基準位置9aの右側に第1のヒンジ20aが接続され、第1の接続基準位置9bの左側に第2のヒンジ20bが接続される。第1のヒンジ20a及び第2のヒンジ20bは、第1の接続基準位置9aに対して、互いに対称となる位置に接続される。
【0121】
なお本実施形態では、第1の支持部材2の第1の接続基準位置9aの下方側に、接続用部材21aが構築されている。従って、第1のヒンジ20a及び第2のヒンジ20bは、接続用部材21aを介して第1の支持部材2に接続されるともいえる。もちろん、接続用部材21aを、第1の支持部材2に含まれる構成要素と見做すことも可能である。
【0122】
第1のヒンジ20aは、第1の回転部材15aの第1の辺部16a-1の左端部に接続される。第2のヒンジ20bは、第2の回転部材15bの第1の辺部16a-2の右端部に接続される。
【0123】
第3の回転部材15cは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第1のヒンジ20aとは異なる位置に配置される第3のヒンジ20cを介して、第1の回転部材15aに接続される。第3のヒンジ20cは、第1の回転部材15aの第2の辺部16b-1の右端部の近傍の位置、及び第3の回転部材15c第2の辺部16b-3の右端部の近傍の位置との間に接続される。
【0124】
本実施形態では、第1のヒンジ20a及び第3のヒンジ20cは、左右方向(X方向)における位置が互いに異なるように配置される。具体的には、第1のヒンジ20aよりも右側の位置に、第3のヒンジ20cが配置される。
【0125】
第4の回転部材15dは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第2のヒンジ20bとは異なる位置に配置される第4のヒンジ20dを介して、第2の回転部材15bに接続される。第4のヒンジ20dは、第2の回転部材15bの第2の辺部16b-2の左端部の近傍の位置、及び第4の回転部材15dの第2の辺部16b-4の左端部の近傍の位置との間に接続される。
【0126】
本実施形態では、第2のヒンジ20b及び第4のヒンジ20dは、左右方向(X方向)における位置が互いに異なるように配置される。具体的には、第2のヒンジ20bよりも左側の位置に、第4のヒンジ20dが配置される。
また第3のヒンジ20c及び第4のヒンジ20dは、第1の接続基準位置9a(基準線CLaの位置)に対して、互いに対称となる位置に配置される。
【0127】
第3の回転部材15cには、上下方向(Z方向)から見た場合に第3のヒンジ20cとは異なる位置に配置される第9のヒンジ20iが接続される。第3の回転部材15cは、第9のヒンジ20iを介して、制振駆動部材14に接続される。
【0128】
図3に示すように、第9のヒンジ20iは、第3の回転部材15cの第1の辺部16a-3の左端部に接続される。すなわち、第9のヒンジ20iは、左右方向(X方向)において、第3のヒンジ20cと異なる位置に配置される。
一方で、第9のヒンジ20iは、左右方向(X方向)において、第1のヒンジ20aと同じ位置に配置される。すなわち、第9のヒンジ20iは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第1のヒンジ20aと同じ位置に配置される。
【0129】
第4の回転部材15dには、上下方向(Z方向)から見た場合に第4のヒンジ20cとは異なる位置に配置される第10のヒンジ20jが接続される。第4の回転部材15dは、第10のヒンジ20jを介して、制振駆動部材14に接続される。
【0130】
図3に示すように、第10のヒンジ20jは、第4の回転部材15dの第1の辺部16a-4の右端部に接続される。すなわち、第10のヒンジ20jは、左右方向(X方向)において、第4のヒンジ20cと異なる位置に配置される。
一方で、第10のヒンジ20jは、左右方向(X方向)において、第2のヒンジ20bと同じ位置に配置される。すなわち、第10のヒンジ20jは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第2のヒンジ20bと同じ位置に配置される。
【0131】
従って、第9のヒンジ20i及び第10のヒンジ20jは、第1の接続基準位置9a(基準線CLaの位置)に対して、互いに対称となる位置に配置される。
【0132】
図3に示すように、第2の制振コアユニット13の第5の回転部材17aは、第5のヒンジ20eを介して、第2の支持部材3と接続される。また第6の回転部材17bは、第6のヒンジ20fを介して、第2の支持部材3と接続される。
【0133】
第5のヒンジ20e及び第6のヒンジ20fは、第2の接続基準位置10a(基準線CLaの位置)を基準として、互いに近傍となる位置にそれぞれ接続される。具体的には、第2の接続基準位置10a(基準線CLの位置)が中間となるように、第2の接続基準位置10aの近傍に、第5のヒンジ20e及び第6のヒンジ20fが接続される。
【0134】
第2の接続基準位置10aの右側に第5のヒンジ20eが接続され、第2の接続基準位置の左側に第6のヒンジ20fが接続される。第5のヒンジ20e及び第6のヒンジ20fは、第2の接続基準位置10aに対して、互いに対称となる位置に接続される。
【0135】
また第5のヒンジ20eは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第1のヒンジ20a及び第9のヒンジ20iと同じ位置に配置される。
また第6のヒンジ20fは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第2のヒンジ20b及び第10のヒンジ20jと同じ位置に配置される。
【0136】
なお本実施形態では、第2の支持部材3の第2の接続基準位置10aの上方側に、接続用部材21bが構築されている。従って、第5のヒンジ20e及び第6のヒンジ20fは、接続用部材21bを介して第2の支持部材3に接続されるともいえる。もちろん、接続用部材21bを、第2の支持部材3に含まれる構成要素と見做すことも可能である。
【0137】
第5のヒンジ20eは、第5の回転部材17aの第1の辺部18a-5の左端部に接続される。第6のヒンジ20fは、第6の回転部材17bの第1の辺部18a-6の右端部に接続される。
【0138】
第7の回転部材17cは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第5のヒンジ20eとは異なる位置に配置される第7のヒンジ20gを介して、第5の回転部材17aに接続される。第7のヒンジ20gは、第5の回転部材17aの第2の辺部18b-5の右端部の近傍の位置、及び第7の回転部材17cの第2の辺部18b-7の右端部の近傍の位置との間に接続される。
【0139】
本実施形態では、第5のヒンジ20e及び第7のヒンジ20gは、左右方向(X方向)における位置が互いに異なるように配置される。具体的には、第5のヒンジ20eよりも右側の位置に、第7のヒンジ20gが配置される。また第7のヒンジ20gは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第3のヒンジ20cと同じ位置に配置される。
【0140】
第8の回転部材17dは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第6のヒンジ20fとは異なる位置に配置される第8のヒンジ20hを介して、第6の回転部材17bに接続される。第8のヒンジ20hは、第6の回転部材17bの第2の辺部18b-6の左端部の近傍の位置、及び第8の回転部材17dの第2の辺部18b-8の左端部の近傍の位置との間に接続される。
【0141】
本実施形態では、第6のヒンジ20f及び第8のヒンジ20hは、左右方向(X方向)における位置が互いに異なるように配置される。具体的には、第6のヒンジ20fよりも左側の位置に、第8のヒンジ20hが配置される。また第8のヒンジ20hは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第4のヒンジ20cと同じ位置に配置される。
【0142】
また第7のヒンジ20g及び第8のヒンジ20hは、第2の接続基準位置10a(基準線CLaの位置)に対して、互いに対称となる位置に配置される。
【0143】
第7の回転部材17cには、上下方向(Z方向)から見た場合に第7のヒンジ20gとは異なる位置に配置される第11のヒンジ20kが接続される。第7の回転部材17cは、第11のヒンジ20kを介して、制振駆動部材14に接続される。
【0144】
図3に示すように、第11のヒンジ20kは、第7の回転部材17cの第1の辺部18a-7の左端部に接続される。すなわち、第11のヒンジ20kは、左右方向(X方向)において、第7のヒンジ20gと異なる位置に配置される。
一方で、第11のヒンジ20kは、左右方向(X方向)において、第5のヒンジ20eと同じ位置に配置される。すなわち、第11のヒンジ20kは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第5のヒンジ20eと同じ位置に配置される。
【0145】
第8の回転部材17dには、上下方向(Z方向)から見た場合に第8のヒンジ20hとは異なる位置に配置される第12のヒンジ20lが接続される。第8の回転部材17dは、第12のヒンジ20lを介して、制振駆動部材14に接続される。
【0146】
図3に示すように、第12のヒンジ20lは、第8の回転部材17dの第1の辺部18a-8の右端部に接続される。すなわち、第12のヒンジ20lは、左右方向(X方向)において、第8のヒンジ20hと異なる位置に配置される。
一方で、第12のヒンジ20lは、左右方向(X方向)において、第6のヒンジ20fと同じ位置に配置される。すなわち、第12のヒンジ20lは、上下方向(Z方向)から見た場合に、第6のヒンジ20fと同じ位置に配置される。
【0147】
従って、第11のヒンジ20k及び第12のヒンジ20jは、第2の接続基準位置10a(基準線CLaの位置)に対して、互いに対称となる位置に配置される。
【0148】
制振駆動部材14は、左右方向(X方向)に延在する板状の部材であり、第1の接続基準位置9a及び第2の接続基準位置10a(基準線CLaの位置)が、中心位置となるように配置される。
【0149】
制振駆動部材14の右端部の上方側に第9のヒンジ20iが接続され、右端部の下方側に第11のヒンジ20kが接続される。
制振駆動部材14の左端部の上方側に第10のヒンジ20jが接続され、左端部の下方側に第12のヒンジ20lが接続される。
【0150】
第1の制振コアユニット12と、第2の制振コアユニット13とは、第9及び第10のヒンジ20i及び20j、制振駆動部材14、及び第11及び第12のヒンジ20k及び20lを介して、互いに接続されることになる。
【0151】
図3に示すように、第1の制振コアユニット12の第3のヒンジ20cと第4のヒンジ20dとの間には、左右方向(X方向)に延在する開口部(空洞部)22aが構成される。また第1の制振コアユニット12において、第1の接続基準位置9a(接続用部材21a)から制振駆動部材14までの間には、上下方向(Z方向)に延在する開口部22bが構成される。
開口部22a及び22bは、第1の制振コアユニット12の中心CP1にて直角に交差する。従って、第1の制振コアユニット12の内側の領域には、十字形状の開口が構成される。
【0152】
図3に示すように、第2の制振コアユニット13の第7のヒンジ20gと第8のヒンジ20hとの間には、左右方向(X方向)に延在する開口部23aが構成される。また第2の制振コアユニット13において、第2の接続基準位置10a(接続用部材21b)から制振駆動部材14までの間には、上下方向(Z方向)に延在する開口部23bが構成される。
開口部23a及び23bは、第2の制振コアユニット13の中心CP2にて直角に交差する。従って、第2の制振コアユニット13の内側の領域には、十字形状の開口が構成される。
【0153】
本実施形態では、制振ユニット4aは、上下方向(Z方向)に延在する基準線CLaに対して対称に構成される。
また、上下方向(Z方向)から見た場合に、第1のヒンジ20a、第5のヒンジ20e、第9のヒンジ20i、及び第11のヒンジ20kは、同じ位置に配置される。
また、上下方向(Z方向)から見た場合に、第2のヒンジ20b、第6のヒンジ20f、第10のヒンジ20j、及び第12のヒンジ20lは、同じ位置に配置される。
また、上下方向(Z方向)から見た場合に、第3のヒンジ20c、及び第7のヒンジ20gは、同じ位置に配置される。
また、上下方向(Z方向)にから見た場合に、第4のヒンジ20d、及び第8のヒンジ20hは、同じ位置に配置される。
【0154】
このように、制振ユニット4aを、中心となる基準線CLaに対して、線対称となるように構成することで、構造の簡素化を図ることが可能となり、容易に制振ユニット4aを作成することが可能となる。
【0155】
[補強部材]
補強部材5は、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の間に、3つの制振ユニット4a~4cを囲むように接続され、制振構造体1の剛性を補強する。
図1及び
図3に示すように、本実施形態では、補強部材5は、トラス構造により構成される。
【0156】
本実施形態では、補強部材5は、上下方向(Z方向)に延在する縦フレーム部材25と、左右方向(Z方向)に延在する横フレーム部材26と、トラス構造の三角形を構成するための斜めフレーム部材(筋交い部材)27とを含む。
【0157】
縦フレーム部材25は、第1の支持部材2の左端部2aと、第2の支持部材3の左端部3aとを接続する左側フレーム部材25aと、第1の支持部材2の右端部2bと、第2の支持部材3の右端部3bとを接続する右側フレーム部材25bとを有する。
【0158】
また縦フレーム部材25は、左右方向(X方向)沿って並ぶ制振ユニット4の間の位置に配置される中間フレーム部材25c及び25dを有する。中間フレーム部材25cは、制振ユニット4a及び4bの間に配置される。中間フレーム部材25dは、制振ユニット4b及び4cの間に配置される。
【0159】
図1に示すように、上下方向(Z方向)において、4つの縦フレーム部材25の中央の位置と、略1/4の長さの位置に、トラス構造の三角形を構成するための基準点RP1が設定される。
また上下方向(Z方向)における中央の位置(仮想的な中央線CLの位置)上であって、各制振ユニット4の制振駆動部材14の左右から所定の距離離れた位置に、トラス構造の三角形を構成するための基準点RP2が設定される。
【0160】
さらに、第1の支持部材2及び第2の支持部材3上であって、第1の接続基準位置9(第2の接続基準位置10)の左右の位置に、基準点RP3が設定される。上下方向(Z方向)から見た場合、制振駆動部材14の左右に設定される基準点RP2と、第1の接続基準位置9(第2の接続基準位置10)の左右に設定される基準点RP3とは、互いに同じ位置となる。
これら基準点RP1~RP3がトラス構造の三角形の頂点となるように、横フレーム部材26と、斜めフレーム部材27が配置され、縦フレーム部材25に接続される。
【0161】
図3に示すように、1つの制振ユニット4の左右の領域に構成される補強部材5(トラス構造)は、左右方向(X方向)において、制振ユニット4の中央を通る基準線CLに対して、対称となるように構成される。
補強部材5を、トラス構造により構成することで、制振構造体1の剛性を維持しつつ、軽量化を実現することが可能である。
【0162】
第1の支持部材2、第2の支持部材3、制振ユニット4、ヒンジ20、及び補強部材5の材料としては、例えば、エポキシ樹脂(EP)、アクリル樹脂(PMMA)、ウレタン樹脂、ポリカーボネート(PC)、ナイロン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ABS樹脂、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、フェノール樹脂(PF)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ガラス繊維複合体、炭素繊維複合体等の樹脂材料を用いることが可能である。
【0163】
これらの樹脂材料を用いて、射出成形や押出成形等の樹脂成形により、第1の支持部材2、第2の支持部材3、制振ユニット4、ヒンジ20、及び補強部材5を作成することも可能である。これらの各要素が別材料により別工程で作成されてもよい。あるいは同じ材料で、一度の工程で一体的に作成されてもよい。
また、3Dプリンタを用いて、第1の支持部材2、第2の支持部材3、制振ユニット4、ヒンジ20、及び補強部材5を作成することも可能である。
これらに限定されず、他の材料や、他の作成方法が採用されてもよい。
【0164】
図1に示す上方スキン部材6、及び下方スキン部材7の材料としては、高い剛性を発揮することが可能な材料が用いられる。例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFPR)等を用いることが可能である。もちろんこれに限定されず、他の任意の材料が用いられてもよい。
【0165】
図1に示す例では、3つの制振ユニット4a~4cが配置される構成が図示されている。制振構造体1に配置される制振ユニット4の数は限定されず、より多くの制振ユニット4が配置されてもよい。
複数の制振ユニット4(第1の制振コアユニット12及び第2の制振コアユニット13)により微細な周機構造を構成することで、メタマテリアル構造体として、本技術に係る制振構造体1を構成することも可能である。もちろん、
図1に示すような3つの制振ユニット4a~4cを含む制振構造体1も、メタマテリアル構造体に含まれ得る。
【0166】
[制振メカニズム]
制振構造体1による制振メカニズムについて説明する。
【0167】
上記したように、本実施形態に係る制振構造体1では、制振ユニット4a~4cにより、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に作用する上下方向(Z方向)の振動を抑制することが可能である。
【0168】
例えば、
図1に示す制振構造体1の左右方向(X方向)における任意の位置にて、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に上下方向(Z方向)の振動が入力されたとする。上下方向(Z方向)の振動が入力された位置が、制振構造体1の左右方向(X方向)においていずれの位置であっても、制振構造体を発揮することが可能である。
【0169】
第1の支持部材2及び第2の支持部材3に対して上下方向(Z方向)の振動が入力される形態としては、様々な形態が考えられる。例えば、第1の支持部材2に振動源が接続され、接続部分から上下方向(Z方向)の振動が入力される。これにより、第1の支持部材2及び第2の支持部材3が上下方向(Z方向)に振動する。
【0170】
または、第2の支持部材3に振動源が接続され、接続部分から上下方向(Z方向)の振動が入力される。これにより、第1の支持部材2及び第2の支持部材3が上下方向(Z方向)に振動する。
【0171】
または、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の両方に振動源が接続され、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に上下方向(Z方向)の振動が入力される場合もあり得る。
【0172】
また、
図1に示す制振構造体1の左端部に上下方向(Z方向)の振動が入力される場合もあり得る。この場合、例えば左側フレーム部材25aのいずれかの位置(左端部2a及び3aを含む)に振動源が接続されて、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に上下方向(Z方向)の振動が入力される。もちろん、左側フレーム部材25aの全体に振動源が接続される場合もあり得る。
【0173】
また、
図1に示す制振構造体1の右端部に上下方向(Z方向)の振動が入力される場合もあり得る。この場合、例えば右側フレーム部材25bのいずれかの位置(右端部2b及び3bを含む)に振動源が接続されて、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に上下方向(Z方向)の振動が入力される。もちろん、右側フレーム部材25bの全体に振動源が接続される場合もあり得る。
【0174】
また、音波(空気等の振動)を介して、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に対して上下方向(Z方向)の振動が入力される場合もあり得る。この場合でも、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)の振動に対して、制振機能を発揮することが可能である。
【0175】
以下、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に対して、上下方向(Z方向)の振動が入力される位置を、振動入力点VIと記載する。例えば、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に作用する上下方向(Z方向)の振動の変位(振幅)が最大となる位置を振動入力点VIとして規定することが可能である。振動入力点VIは、上下方向(Z方向)の振動の振動エネルギーが最大となる位置ともいえる。
【0176】
振動入力点VIは、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)において互いに同じ位置に設定されるパラメータとなる。以下では、振動入力点VIは、第1の支持部材2に対して規定される位置として説明を行う。
【0177】
もちろん、以下の説明は、振動入力点VIを、第2の支持部材3に対して規定される位置としても同様に成り立つ。また以下の説明は、振動入力点VIを、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)における同じ位置の両方に規定される場合にも同様に成り立つ。
【0178】
従って、以下の説明では、第1の支持部材2の所定の位置に振動入力点VIを設定することは、第2の支持部材3に対して振動入力点VIを設定すること、及び第1の支持部材2及び第2の支持部材3の両方に振動入力点VIを設定することと同義となる。もちろん、設定される振動入力点VIは、上下方向(Z方向)において同じ位置となる。
【0179】
図4~
図7は、制振構造体1により、上下方向(Z方向)の振動が減衰される動作を示す模式図である。ここでは、制振構造体1の左端部の位置、すなわち第1の支持部材2の左端部2aの位置が、上下方向(Z方向)の振動が入力される振動入力点VIとして設定されている。
また、
図4~
図7では、上方スキン部材6、及び下方スキン部材7の図示は省略している。
【0180】
図4及び
図6は、上下方向(Z方向)の振動が作用することで、第1の支持部材2及び第2の支持部材3が上下方向(Z方向)における上方側の向きに変位した場合の図である。このような、上下方向(Z方向)の振動の作用により発生する、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)における上方側の向きへの変位を第1の振動変位とする。
【0181】
図5及び
図7は、上下方向(Z方向)の振動が作用することで、第1の支持部材2及び第2の支持部材3が上下方向(Z方向)における下方側の向きに変位した場合の図である。このような、上下方向(Z方向)の振動の作用により発生する、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)における下方側の向きへの変位を第2の振動変位とする。
【0182】
また
図4~
図7において、白色から黒色までの濃淡は、制振構造体1の各位置(各部位)における変位量を表す。白色から黒色に近づくほど、その部分は大きく変位していることになる。すなわち、変位量が大きくなるほど、その部分は黒色が濃くなるように図示されている。
【0183】
各制振ユニット4に含まれる第1の制振コアユニット12(第2の制振コアユニット13)において、黒色が濃い部分を多く含む場合には、上下方向(Z方向)の振動により、当該第1の制振コアユニット12(第2の制振コアユニット13)が大きく変形していることになる。なお、
図4~
図7に示す変位量は、コンピュータシミュレーションにより算出されている。
【0184】
振動入力点VIに最も近い位置、すなわち左側の最端に位置する制振ユニット4aに着目する。
図4及び
図6に示すように、上下方向(Z方向)の振動により第1の振動変位が発生した場合には、制振ユニット4aの第1の制振コアユニット12は、第1の振動変位に応じて上下方向(Z方向)に沿って伸張変形され、左右方向(X方向)に沿って圧縮変形される。第1の制振コアユニット12は、第1の振動変位に応じて、このような変形のモードを持っている。
【0185】
図6に示すように、奥行方向(Y方向)から見た場合に、第1の制振コアユニット12の第1の回転部材15aは、第1のヒンジ20a及び第3のヒンジ20cを基準として、右回りに回転する。第2の回転部材15bは、第2のヒンジ20b及び第4のヒンジ20dを基準として、左回りに回転する。第3の回転部材15cは、第3のヒンジ20c及び第9のヒンジ20iを基準として、左回りに回転する。第4の回転部材15dは、第4のヒンジ20d及び第10のヒンジ20jを基準として、右回りに回転する。
【0186】
第1の回転部材15a及び第2の回転部材15bの回転量(変位量)と、第3の回転部材15c及び第4の回転部材15dの回転量とを比較すると、制振駆動部材14に近い側の第3の回転部材15c及び第4の回転部材15dの回転量の方が大きくなる。
【0187】
第1の制振コアユニット12の左右方向(X方向)に延在する開口部22aは、上下方向(Z方向)に沿って広げられるように変形する。第1の制振コアユニット12の上下方向(Z方向)に延在する開口部22bは、左右方向(X方向)に沿って狭められるように変形する。すなわち、開口部22aは開くように変形し、開口部22bは閉じるように変形する。
【0188】
図4及び
図6に示すように、上下方向(Z方向)の振動により第1の振動変位が発生した場合に、制振ユニット4aの第2の制振コアユニット13は、第1の振動変位に応じて上下方向(Z方向)に沿って圧縮変形され、左右方向(X方向)に沿って伸張変形される。第2の制振コアユニット13は、第1の振動変位に応じて、このような変形のモードを持っている。
【0189】
図6に示すように、奥行方向(Y方向)から見た場合に、第2の制振コアユニット13の第5の回転部材17aは、第5のヒンジ20e及び第7のヒンジ20gを基準として、右回りに回転する。第6の回転部材17bは、第6のヒンジ20f及び第8のヒンジ20hを基準として、左回りに回転する。第7の回転部材17cは、第7のヒンジ20g及び第11のヒンジ20kを基準として、左回りに回転する。第8の回転部材17dは、第8のヒンジ20h及び第12のヒンジ20lを基準として、右回りに回転する。
【0190】
第5の回転部材17a及び第6の回転部材17bの回転量(変位量)と、第7の回転部材17c及び第8の回転部材17dの回転量とを比較すると、制振駆動部材14に近い側の第7の回転部材17c及び第8の回転部材17dの回転量の方が大きくなる。
【0191】
第2の制振コアユニット13の左右方向(X方向)に延在する開口部23aは、上下方向(Z方向)に沿って狭められるように変形する。第2の制振コアユニット13の上下方向(Z方向)に延在する開口部23bは、左右方向(X方向)に沿って広げられるように変形する。すなわち、開口部23aは閉じるように変形し、開口部23bは開くように変形する。
【0192】
図4及び
図6に示すように、制振駆動部材14は、第1の振動変位に応じて、上下方向(Z方向)における下方側の向きに変位する。すなわち、第1の支持部材2及び第2の支持部材3が上方側の向きに変位した場合に、制振駆動部材14は、当該上方側の向きを打ち消すように、下方側の向きに変位する。
【0193】
図5及び
図7に示すように、上下方向(Z方向)の振動により第2の振動変位が発生した場合には、制振ユニット4aの第1の制振コアユニット12は、第2の振動変位に応じて上下方向(Z方向)に沿って圧縮変形され、左右方向(X方向)に沿って伸張変形される。第1の制振コアユニット12は、第2の振動変位に応じて、このような変形のモードを持っている。
【0194】
図7に示すように、奥行方向(Y方向)から見た場合に、第1の制振コアユニット12の第1の回転部材15aは、第1のヒンジ20a及び第3のヒンジ20cを基準として、左回りに回転する。第2の回転部材15bは、第2のヒンジ20b及び第4のヒンジ20dを基準として、右回りに回転する。第3の回転部材15cは、第3のヒンジ20c及び第9のヒンジ20iを基準として、右回りに回転する。第4の回転部材15dは、第4のヒンジ20d及び第10のヒンジ20jを基準として、左回りに回転する。
【0195】
第1の回転部材15a及び第2の回転部材15bの回転量(変位量)と、第3の回転部材15c及び第4の回転部材15dの回転量とを比較すると、制振駆動部材14に近い側の第3の回転部材15c及び第4の回転部材15dの回転量の方が大きくなる。
【0196】
第1の制振コアユニット12の左右方向(X方向)に延在する開口部22aは、上下方向(Z方向)に沿って狭められるように変形する。第1の制振コアユニット12の上下方向(Z方向)に延在する開口部22bは、左右方向(X方向)に沿って広げられるように変形する。すなわち、開口部22aは閉じるように変形し、開口部22bは開くように変形する。
【0197】
図5及び
図7に示すように、上下方向(Z方向)の振動により第2の振動変位が発生した場合に、制振ユニット4aの第2の制振コアユニット13は、第2の振動変位に応じて上下方向(Z方向)に沿って伸張変形され、左右方向(X方向)に沿って圧縮変形される。第2の制振コアユニット13は、第2の振動変位に応じて、このような変形のモードを持っている。
【0198】
図7に示すように、奥行方向(Y方向)から見た場合に、第2の制振コアユニット13の第5の回転部材17aは、第5のヒンジ20e及び第7のヒンジ20gを基準として、左回りに回転する。第6の回転部材17bは、第6のヒンジ20f及び第8のヒンジ20hを基準として、右回りに回転する。第7の回転部材17cは、第7のヒンジ20g及び第11のヒンジ20kを基準として、右回りに回転する。第8の回転部材17dは、第8のヒンジ20h及び第12のヒンジ20lを基準として、左回りに回転する。
【0199】
第5の回転部材17a及び第6の回転部材17bの回転量(変位量)と、第7の回転部材17c及び第8の回転部材17dの回転量とを比較すると、制振駆動部材14に近い側の第7の回転部材17c及び第8の回転部材17dの回転量の方が大きくなる。
【0200】
第2の制振コアユニット13の左右方向(X方向)に延在する開口部23aは、上下方向(Z方向)に沿って広げられるように変形する。第2の制振コアユニット13の上下方向(Z方向)に延在する開口部23bは、左右方向(X方向)に沿って狭められるように変形する。すなわち、開口部23aは開くように変形し、開口部23bは閉じるように変形する。
【0201】
図5及び
図7に示すように、制振駆動部材14は、第2の振動変位に応じて、上下方向(Z方向)における上方側の向きに変位する。すなわち、第1の支持部材2及び第2の支持部材3が下方側の向きに変位した場合に、制振駆動部材14は、当該下方側の向きを打ち消すように、上方側の向きに変位する。
【0202】
このように本実施形態に係る制振構造体1では、第1の支持部材2及び第2の支持部材3が上下方向(Z方向)で振動した場合に、第1の制振コアユニット12と、第2の制振コアユニット13とが、互いに相補的な変形をする。
【0203】
具体的には、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)の振動に応じて、第1の制振コアユニット12及び第2の制振コアユニット13の各々は、上下方向(Z方向)に沿った伸張変形と圧縮変形とを繰り返す。
【0204】
第1の制振コアユニット12が上下方向(Z方向)に沿って伸張変形した場合には、第2制振コアユニット13は、上下方向(Z方向)に沿って圧縮変形する。第1の制振コアユニット12が上下方向(Z方向)に沿って圧縮変形した場合には、第2制振コアユニット13は、上下方向(Z方向)に沿って伸張変形する。
【0205】
また、第1の制振コアユニット12の伸張変形及び圧縮変形は、第1~第4の回転部材15a~15dの回転により実現される。第2の制振コアユニット13の伸張変形及び圧縮変形は、第5~第8の回転部材17a~17dの回転により実現される。
【0206】
また、第1の制振コアユニット12、及び第2の制振コアユニット13の間に配置される制振駆動部材14は、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)の振動を打ち消す向きに変位する。
【0207】
これら、第1の制振コアユニット12及び第2の制振コアユニット13の相補的な変形、各回転部材(第1~第8の回転部材15a~15及び17a~17dの回転)、及び制振駆動部材14の変位により、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に作用する振動を効率的に抑制することが可能となる。
【0208】
第1の支持部材2及び第2の支持部材3に上下方向(Z方向)の振動が加わると、制振ユニット4(第1の制振コアユニット12、第2の制振コアユニット13、及び制振駆動部材14)が、特定の周波数帯で局部的に共振する。エネルギーの観点では加振のエネルギーがその共振に使われ、力の観点では局所共振しているコアが隣接するコアの変位を打ち消すように力を発生する。
【0209】
以下、上下方向(Z方向)の振動を減衰するための制振ユニット4の変形を、振動減衰動作と記載する場合がある。振動減衰動作は、上下方向(Z方向)の振動の振動数(周波数)に対応する、制振ユニット4の振動と見做すことが可能である。
【0210】
図4及び
図5に示すように、中央に位置する制振ユニット4b、及び右側の最端に位置する制振ユニット4dも、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の第1の振動変位及び第2の振動変位に応じて、
図6及び
図7に示す制振減衰動作を行う。
【0211】
一方で、
図4及び
図5に示すように、中央に位置する制振ユニット4bの第1の制振コアユニット12及び第2の制振コアユニット13の各部位の変位量は、左端の制振ユニット4aと比べて小さくなっている。また、右端の制振ユニット4cでは、さらに各部位の変位量は少なくなっている。
【0212】
これにより、制振構造体1の左端部に入力される上下方向(Z方向)の振動は、3つの制振ユニット4a~4cの振動減衰動作により左側から右側にかけて減衰される。そして、制振構造体1の右端部、すなわち右側フレーム部材25bの部分では、上下方向(Z方向)の振動は、十分に抑制されている。
【0213】
図4及び
図5に示すように、振動入力点VIに最も近い制振ユニット4aが、上下方向(Z方向)の振動の作用により発生する、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)における変位に応じて、最も大きく変形する。そして、左右方向(X方向)に沿って振動入力点VIから離れるほど、上下方向(Z方向)の振動は減衰される。従って、左右方向(X方向)に沿って振動入力点VIから離れる位置に配置される制振ユニット4ほど、変形量は少なくなる。
【0214】
例えば、左右方向(X方向)における任意の位置に振動入力点VIを設定する。
図3等の示すように、第1の支持部材3の左右方向(X方向)における一方の端部の位置に振動入力点VIが設定されてもよい。これに限定されず、第1の支持部材3の左右方向(X方向)における中央の位置に振動入力点VIが設定されてもよい。
【0215】
設定された振動入力点VIに最も近い制振ユニット4が最も大きく変形するように振動減衰動作を行う。振動入力点VIから左右方向(X方向)に沿って離れるほど、上下方向(Z方向)の振動を減衰することが可能となる。
【0216】
例えば、第1の支持部材2の所定の位置に振動入力点VIを設定する。第1の支持部材2の振動入力点VIから離間した位置に、振動出力点を設定する。例えば、
図4及び
図5に示す例では、第1の支持部材2の右端部2bの位置が、振動出力点VOとして設定される。当該振動出力点VOでは、上下方向(Z方向)の振動は十分に減衰されている。
【0217】
なお、第1の支持部材2に振動出力点VOを設定することは、第2の支持部材3に対して振動出力点VOを設定すること、及び第1の支持部材2及び第2の支持部材3の両方に振動出力点VOを設定することと同義となる。もちろん、設定される振動出力点VOは、上下方向(Z方向)において同じ位置となる。
【0218】
[共振周波数の調整]
図4~
図7に示す振動減衰動作は、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に作用する上下方向(Z方向)の振動の振動数(周波数)が所定の値となる場合に、第1の制振コアユニット12及び第2の制振コアユニット13の変形量が最も大きくなるように発生し、振動の減衰効果がピークを示す。
当該、振動減衰動作が最も大きい変形量で発生する上下方向(Z方向)の振動の振動数(周波数)を、制振ユニット4の共振周波数とする。制振ユニット4の共振周波数を調整することで、制振対象(制振のターゲット)となる上下方向(Z方向)の振動を適宜変更することが可能となる。
【0219】
例えば、制振対象となる上下方向(Z方向)の振動の周波数を基準として、制振ユニットの共振周波数を設定する。これにより、制振対象となる上下方向(Z方向)の振動を、十分に抑制することが可能となる。
【0220】
例えば、
図1等に示す複数の制振ユニット4の各々の共振周波数を、制振対象となる上下方向(Z方向)の振動の周波数と一致させる。これにより、制振対象となる上下方向(Z方向)の振動を、十分に抑制することが可能となる。
【0221】
あるいは、複数の制振ユニット4の各々の共振周波数を、あえて微妙にずらして設計するといったことも可能である。これにより、制振可能となる上下方向(Z方向)の振動の幅を大きくすることが可能となる。すなわち、制振可能となる上下方向(Z方向)の振動の周波数帯域を広げることが可能となる。
その他、制振ユニット4の共振周波数の設定方法として、制振対象となる上下方向(Z方向)の振動の周波数を基準とした任意の方法が採用されてよい。
【0222】
例えば、制振ユニット4の慣性モーメントを高くすれば、制振ユニット4の共振周波数を低く設定することが可能となり、制振対象となる上下方向(Z方向)の振動の振動数を低くすることが可能となる。
例えば、周波数が20Hz以上1000Hz以下の範囲に含まれる上下方向(Z方向)の振動を、制振対象として、制振ユニット4を構成することも可能である。すなわち、本技術を適用することで、低周波とされる100Hz以下の周波数の振動に対して、十分な制振効果を発揮することが可能となる。
【0223】
制振ユニット4の共振周波数を調整する方法として、様々な方法が採用されてよい。
【0224】
[錘(マス)の設置]
制振構造体1に配置される1以上の制振ユニット4の各々に、1以上の錘を配置することで、制振ユニット4の共振周波数を調整することが可能である。
【0225】
錘として機能させるためには重量が必要であるため、比重が重い金属を用いることが好ましいが、例えば鉄やタングステンなど比較的比重が重く、入手しやすい金属材料を用いることが可能である。これらの金属材料に限定されず、所望する共振周波数によってはアルミニウム等の比較的軽い金属を用いることも可能である。その他、任意の材料からなる錘が用いられてもよい。
【0226】
図8~
図10は、制振ユニット4に対する錘29の配置例を示す模式図である。
図8~
図10に示す例では、1以上の錘29として、第1~第8の錘29a~29hが配置される。
【0227】
第1~第4の錘29a~29dは、第1の制振コアユニット12に配置される。具体的には、以下のように配置される。
第1の錘29aは、第1の回転部材15aに配置される。
第2の錘29bは、第2の回転部材15bに配置される。
第3の錘29cは、第3の回転部材15cに配置される。
第4の錘29dは、第4の回転部材15dに配置される。
【0228】
第5~第8の錘29e~29hは、第2の制振コアユニット13に配置される。具体的には、以下のように配置される。
第5の錘29eは、第5の回転部材17aに配置される。
第6の錘29fは、第6の回転部材17bに配置される。
第7の錘29gは、第7の回転部材17cに配置される。
第8の錘29hは、第8の回転部材17dに配置される。
【0229】
図8~
図10に示す例では、第1~第8の錘29a~29hとして、同じ材料であり同じ形状からなる部材が用いられる。具体的には、奥行方向(Y方向)から見た場合に、第1~第8の錘29a~29hは、円形状を有する。
【0230】
共振周波数を低く設定し、減衰する周波数を低くしたい場合には、制振ユニット4内に存在する錘29の総重量を重くすることが有利となる。従って、
図8~
図10に示すように、複数の錘29を配置することが有効である。
【0231】
図8~
図10に示す例では、第1の錘29a、第2の錘29b、第3の錘29c、及び第4の錘29dは、第1の制振コアユニット12の中心CP1に対して対称に配置される。また第4の錘29e、第5の錘29f、第6の錘29g、及び第7の錘29hは、第2の制振コアユニット13の中心CP2に対して対称に配置される。
【0232】
図8に示す例では、第1~第4の錘29a~29dは、第1の制振コアユニット12の中心CP1に近い位置に配置される。すなわち、第1~第4の回転部材15a~15dの、第2の辺部16b(
図3参照)と第3の辺部16c(
図3参照)との間の頂点の近傍の位置に、第1~第4の錘29a~29dの各々が配置される。
【0233】
また
図8に示す例では、第5~第8の錘29e~29hは、第2の制振コアユニット13の中心CP2に近い位置に配置される。すなわち、第5~第8の回転部材17a~17dの、第2の辺部18b(
図3参照)と第3の辺部18c(
図3参照)との間の頂点の近傍の位置に、第5~第8の錘29e~29hの各々が配置される。
【0234】
図9に示す例では、第1~第4の錘29a~29dは、第1の制振コアユニット12の左右の端部側に配置される。すなわち、第1~第4の回転部材15a~15dの、第2の辺部16b(
図3参照)と第4の辺部16d(
図3参照)との間の頂点の近傍の位置に、第1~第4の錘29a~29dの各々が配置される。
【0235】
また
図9に示す例では、第5~第8の錘29e~29hは、第2の制振コアユニット13の左右の端部側に配置される。すなわち、第5~第8の回転部材17a~17dの、第2の辺部18b(
図3参照)と第4の辺部18d(
図3参照)との間の頂点の近傍の位置に、第5~第8の錘29e~29hの各々が配置される。
【0236】
図10に示す例では、第1~第4の錘29a~29dは、第1の制振コアユニット12の上下の端部側に配置される。すなわち、第1~第4の回転部材15a~15dの、第1の辺部16a(
図3参照)と第3の辺部16c(
図3参照)との間の頂点の近傍の位置に、第1~第4の錘29a~29dの各々が配置される。
【0237】
また
図10に示す例では、第5~第8の錘29e~29hは、第2の制振コアユニット13の上下の端部側に配置される。すなわち、第5~第8の回転部材17a~17dの、第1の辺部18a(
図3参照)と第3の辺部18c(
図3参照)との間の頂点の近傍の位置に、第5~第8の錘29e~29hの各々が配置される。
【0238】
図11は、
図8~
図10に示す制振ユニット4を用いた場合の、上下方向(Z方向)の振動の周波数に対する、振動減衰を示すグラフである。
【0239】
図中の「中央寄せ」と記載された実線は、
図8に示す制振ユニット4を用いた場合のグラフである。
図中の「左右寄せ」と記載された波線は、
図9に示す制振ユニットを用いた場合のグラフである。
図中の「上下寄せ」と記載された波線は、
図10に示す制振ユニットを配置した場合のグラフである。
【0240】
図11に示すように、第1~第8の錘29a~29hの配置位置に応じて、最も減衰することが可能な周波数を異ならせることが可能となる。すなわち、制振ユニット4の共振周波数を調整することが可能となる。
【0241】
図8に示す「中央寄せ」の構成が、共振周波数を最も低く設定することが可能である。
図9に示す「左右寄せ」の構成は、「中央寄せ」の構成よりも共振周波数を高く設定することが可能である。
図10に示す「上下寄せ」の構成は、さらに共振周波数を高く設定することが可能である。
【0242】
このように、錘29の位置を調整することで、制振ユニット4の共振周波数を容易に調整することが可能である。上記したように、共振周波数と慣性モーメントとは相関関係があると考えられる。例えば、各ヒンジ20と錘29との距離に着目して、慣性モーメントの調整、すなわち共振周波数の調整を行うことが可能である。
【0243】
各回転部材15(17)が回転する基準となるヒンジ20から錘29を離すほど、回転部材15(17)の慣性モーメントは大きくなる。従って、ヒンジ20から離れた位置に錘29を配置することで、制振ユニット4の共振周波数を低くすることが可能となる。もちろん、制振した振動の周波数を高めたい場合には、錘29をヒンジ20に近づけて設計するといったことも可能である。
【0244】
なお、
図11に示すように、上下方向(Z方向)の振動に対して、減衰効果が低下する周波数も存在する。この点からみても分かるように、制振対象となる上下方向(Z方向)の振動の周波数を基準として、制振ユニット4の共振周波数を適切に設定することが重要である。
【0245】
図12~
図15は、制振ユニット4に対する錘29の他の配置例を示す模式図である。
図12に示す例では、奥行方向(Y方向)から見た場合に、面積が小さい円形状の錘31が3つを1セットとして、各回転部材15(17)に配置される。3つの錘31からなるセットが、第1の制振コアユニット12、及び第2の制振コアユニット13の、左右の端部側に配置される。3つの錘31のセットを、第1~第8の錘と見做すことも可能である。
【0246】
図13に示す例では、奥行方向(Y方向)から見た場合に、長円の形状を有する錘29が、各回転部材15(17)に配置される。各回転部材15(17)の、中心CP1(CP2)に最も近い位置の頂点から上下方向(Z方向)に対して45度の角度で交差する方向で、第4の辺部16d(18d)(
図3参照)に向けて仮想的な線Lを引く。各錘29は、長辺の長軸が当該仮想線L上に位置するように配置される。
【0247】
図14に示す例では、奥行方向(Y方向)から見た場合に、正六角形の形状を有する錘29が、各回転部材15(17)の中央の位置に配置される。
図15に示す例では、奥行方向(Y方向)から見た場合に、星形の形状を有する錘29が、各回転部材15(17)の中央の位置に配置される。
【0248】
制振ユニット4に対して配置される1以上の錘29の、数、重量、形状、及び配置位置等は限定されず、任意に設定されてよい。例えば、制振対象となる上下方向(Z方向)の振動の周波数を基準として、1以上の錘29の数、重量、形状、及び配置位置等を設定することが可能である。これらのパラメータのうち1つのみが設定されてもよい。
【0249】
奥行方向(Y方向)から見た場合の錘29の形状として、高い自由度で様々な形状を採用することが可能である。例えば、量産性に向いた円、矩形、星型等を採用することが可能である。また、長辺部を持つ矩形、長軸を持つ楕円形、円弧状の形状、様々な角度の扇型等の形状を採用可能である。
【0250】
第1の制振コアユニット12の第1~第4の回転部材15a~15dのいずれか1つに錘29が配置されてもよい。第2の制振コアユニット12の第5~第8の回転部材17a~17dのいずれか1つに錘29が配置されてもよい。
【0251】
奥行方向(Y方向)から見た場合に、形状の異なる複数の錘29や、材料の異なる複数の錘29が配置されてもよい。また、第1の制振コアユニット12(第2の制振コアユニット13)の中心CP1(CP2)に対して、対称とならない位置に錘29が配置されてもよい。
【0252】
奥行方向(Y方向)において、各回転部材15(17)よりもサイズ(厚み)が大きい錘29が配置されてもよい。例えば、各回転部材15(17)に貫通孔を形成し、当該貫通孔に錘29が挿入されてもよい。この場合、奥行方向(Y方向)における錘29の両端部を、貫通孔よりもサイズが大きくなるように設計する。これにより、錘29が貫通孔から簡単に外れない構成を実現することが可能となる。また錘29の総重量を大きくすることが可能となるので、制振対象となる振動の周波数を低くすることが容易に実現される。
【0253】
なお、典型的には、各回転部材15(17)の各々の共振周波数がそろうように制振ユニット4が設計される。また典型的には、また第1の制振コアユニット12及び第2の制振コアユニット13の各々の共振周波数がそろうように制振ユニット4が設計される。
一方で、これに限定されず、各回転部材15(17)の各々の共振周波数を異ならせて制振ユニット4が設計されてもよい。第1の制振コアユニット12及び第2の制振コアユニット13の各々の共振周波数を異ならせて制振ユニット4が設計されてもよい。
【0254】
[各ヒンジ20(薄肉部材)のサイズの調整]
薄肉部材からなる第1~第12のヒンジ20a~20lの太さを調整することで、制振ユニット4の共振周波数を調整することが可能である。
【0255】
例えば、
図3に示す第1のヒンジ20a、第2のヒンジ20b、第3のヒンジ20c、第4のヒンジ20d、第5のヒンジ20e、第6のヒンジ20f、第7のヒンジ20g、第8のヒンジ20h、第9のヒンジ20i、第10のヒンジ20j、第11のヒンジ20k、及び第12のヒンジ20lの各々について、制振対象となる上下方向(Z方向)の振動の周波数を基準として、上下方向(Z方向)に直交する断面(XY平面で切断した場合の断面)のサイズを設定することが可能である。
【0256】
図16は、第1~第12のヒンジ20a~20lの、左右方向(X方向)におけるサイズを1.1mm、1.3mm、1.4mm、1.5mmとした場合の、上下方向(Z方向)の振動の周波数に対する、振動減衰を示すグラフである。
【0257】
図16に示すように、第1~第12のヒンジ20a~20lの断面積が小さいほど、共振周波数を低く設定することが可能となり、減衰可能な上下方向(Z方向)の振動の周波数を低くすることが可能となる。本例では、左右方向(X方向)におけるサイズを1.1mm~1.5mmまで変化させることで、振動減衰が-40dBを下回る領域の周波数を、約44Hzから約64Hz程度まで変化させることができた。
【0258】
これは、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)の振動に応じて、各ヒンジ20から第1の制振コアユニット12及び第2の制振コアユニット13に作用するばね力の違いによるものと考えられる。
【0259】
このようにヒンジ20の断面積を調整することで、制振ユニット4の共振周波数を容易に調整することが可能である。
【0260】
なお、ヒンジ20の構成は限定されず、ねじりばねを用いた蝶番等が用いられてもよい。この場合でも、ねじりばねのばね定数等を調整することで、制振ユニット4の共振周波数を調整することが可能である。
【0261】
その他、制振ユニット4の材料、形状、サイズ等を調整することで、制振ユニット4の共振周波数を調整することが可能である。また制振ユニット4の周囲に構成される補強部材の材料、形状、サイズ等を調整することでも、制振ユニット4の共振周波数を調整することが可能である。
【0262】
[補強部材のバリエーション]
図17は、補強部材5の他の構成例を示す模式図である。
図17に示す例では、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の間の、3つの制振ユニット4a~4cの周囲の領域が、板状の部材33で構成される。当該板状の部材33が、補強部材5として用いられる。
【0263】
図17に示す例では、第1の支持部材2及び第2の支持部材3と、板状の部材33とが一体的に構成されている。もちろん、第1の支持部材2及び第2の支持部材3と、板状の補強部材5(33)とが個別に作成され、接続されてもよい。
【0264】
図17に示す制振構造体1の作成方法として、上下方向(Z方向)を短辺方向とし、左右方向(X方向)を長辺方向とする矩形状の板部材を準備する。板部材の第1の長辺部35aに第1の接続基準位置9a~9cを設定し、第2の長辺部35bに第2の接続基準位置10a~10cを設定する。
なお、第1の長辺部35aが第1の支持部材2として機能し、第2の長辺部35bが第2の支持部材3として機能する。
【0265】
上下方向(Z方向)において互いに対向する第1の接続基準位置9と第2の接続基準位置10との間の領域に、制振ユニット4を配置するための開口部36(36a~36c)を作成する。開口部36の内部に、制振ユニット4を配置して、第1の接続基準位置9及び第2の接続基準位置10に対して、ヒンジ機構(第1のヒンジ20a、第2のヒンジ20b、第5のヒンジ20e、第6のヒンジ20f)を介して接続する。
【0266】
図17に示す制振構造体1では、各制振ユニット4の左側に、補強部材5との間のクリアランス(間隙)となる左側開口部37aが形成される。また各制振ユニット4の右側に、補強部材5との間のクリアランスとなる右側開口部37bが形成される。左側開口部37aと、右側開口部37bは、基準線CLに対して対称となるように形成される。
【0267】
例えば、矩形状の板部材から、左側開口部37a、右側開口部37b、第1の制振コアユニット12の開口部22a及び22b、第2の制振コアユニット13の開口部23a及び23bを切りぬく。これにより、板状の部材から一体的に制振構造体1を作成することが可能である。
【0268】
図18は、補強部材5の他の構成例を示す模式図である。
図18では、制振ユニット4の図示は省略されている。
【0269】
図18に示す例では、トポロジー最適化により、補強部材5の形状が算出されている。
制振構造体1の質量増加を抑えつつ、隣り合う制振ユニット4の間の空いた領域に適切な補強を入れることによって剛性を向上させることを目標とする。そして、限られた体積の材料で剛性を最大化するという要求に対し、制振構造体1に適用できるトポロジー最適化を行った。なお、制振ユニット4が配置される開口部が必要であること、また振動減衰性能の観点から、補強部材5の構成の最適解が周期構造になること、という2つの条件を満足するように最適化を行った。
トポロジー最適化により、軽量化及び剛性に有利な補強部材5を実現することが可能である。なお、最適化のアルゴリズムは限定されず、任意の最適化アルゴリズムを採用することが可能である。
【0270】
第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向の振動に応じて、1以上の制振ユニット4により適切に振動減衰動作が行われるために、1以上の制振ユニット4の各々と補強部材5との間には、間隙(クリアランス)が設けられる。本実施形態では、1以上の制振ユニット4の各々と、補強部材5との間には、少なくとも1mm以上の間隙が設けられる。
【0271】
すなわち、1以上の制振ユニット4の各々と、補強部材5とが最も近接する位置との間の間隙のサイズは、少なくとも1mm以上に設計される。
図1~
図3に示す例では、回転部材15(17)の第4の辺部16d(18d)と、斜めフレーム部材27との間の間隙が、少なくとも1mm以上に設計される。
【0272】
図17に示す例においても同様に、回転部材15(17)の第4の辺部16d(18d)(
図3参照)と、これに対向する板状の部材33の端面との間の間隙が、少なくとも1mm以上に設計される。これにより、1以上の制振ユニット4により適切に振動減衰動作が行われ、上下方向(Z方向)の振動を適切に抑制することが可能となる。
【0273】
1以上の制振ユニット4の各々と、補強部材5との間に、2mm以上の間隙を設ける。これにより、1以上の制振ユニット4と補強部材5との接触をさらに防止することが可能となる。この結果、1以上の制振ユニット4の振動減衰動作による制振機能を十分に発揮させることが可能となる。
【0274】
図1に示すトラス構造により構成される補強部材5や、
図18に示すトポロジー最適化により構成される補強部材5の特徴として、以下の点を挙げることが可能である。
すなわち、
図1や
図18に示す補強部材5は、第1の支持部材2、及び第2の支持部材3のいずれか一方に接続され、基準線RLに対して互いに対称となるように上下方向(Z方向)に対して斜め方向に延在する2つの斜めフレーム部材のペアを含む。
【0275】
図1に示すトラス構造により構成される補強部材5では、第1の接続基準位置9aの左右の位置から、基準線RLaに対して互いに対称となるように下方側に斜めに延在する2つの斜めフレーム部材27のペアが構成されている。第1の接続基準位置9b及び9cの各々に対しても同様に、基準線RLb及びRLccに対して互いに対称となるように下方側に斜めに延在する2つの斜めフレーム部材27のペアがそれぞれ構成されている。
【0276】
また、
図1に示す補強部材5では、第2の接続基準位置10aの左右の位置から、基準線RLaに対して互いに対称となるように上方側に斜めに延在する2つの斜めフレーム部材27のペアが構成されている。第2の接続基準位置10b及び10cの各々に対しても同様に、基準線RLb及びRLcに対して互いに対称となるように上方側に斜めに延在する2つの斜めフレーム部材27のペアがそれぞれ構成されている。
【0277】
図18に示すトポロジー最適化により構成される補強部材5では、左側フレーム部材25a、右側フレーム部材25b、及び3つの中間フレーム部材25c~25eが構成される。
【0278】
左側フレーム部材25aから左側の中間フレーム部材25cまでの間の領域、左側の中間フレーム部材25cから中央の中間フレーム部材25dまでの間の領域、中央の中間フレーム部材25dから右側の中間フレーム部材25eまでの間の領域、右側の中間フレーム部材25eから右側フレーム部材25bまでの間の領域には、基準線RLa~RLdの各々に対して対称となるように補強部材5が構成されている。
【0279】
当該各領域にて構成される補強部材5のうち、第1の支持部材2及び第3の支持部材3に接続されている部分に着目すると、基準線RLに対して互いに対称となるように上下方向(Z方向)に対して斜め方向に延在する2つの斜めフレーム部材のペアが存在することが分かる。
【0280】
例えば、
図18中の〇で囲った領域44a及び44bに着目する。補強部材5の領域44a内の部分と、領域44b内の部分とは、基準線RLaに対して互いに対称となるように構成されている。従って、領域44aに含まれるフレーム部材に対して、領域44b内に基準線RLaに対して互いに対称となるフレーム部材が存在する。これらのフレーム部材のペアが、第1の支持部材2、及び第2の支持部材3のいずれか一方に接続され、基準線RLに対して互いに対称となるように上下方向(Z方向)に対して斜め方向に延在する2つの斜めフレーム部材のペアに相当する。
【0281】
図1に示す構成とは異なる構成で、トラス構造が実現される場合もあり得る。またトポロジー最適化により、
図18とは異なる構成が算出される場合もあり得る。いずれの場合でも、第1の支持部材2、及び第2の支持部材3のいずれか一方に接続され、基準線RLに対して互いに対称となるように上下方向(Z方向)に対して斜め方向に延在する2つの斜めフレーム部材のペアが少なくとも1つ存在する場合は、本発明に係る1つの特徴を有する補強部材5であるということができる。もちろん、当該特徴はあくまで1つの特徴であり、本発明に係る補強部材5を構成する上で必須の構成要素というわけではない。
【0282】
[内部補強部材]
図19は、制振ユニット4の他の構成例を示す模式図である。
図19に示す制振ユニット4では、第1の制振コアユニット12、及び第2の制振コアユニット13の各々に対して、内部補強部材39が配置されている。内部補強部材39は、隣接する回転部材15(17)同士を接続する部材である。
【0283】
図19に示す例では、第1の制振コアユニット12に、第1の回転部材15aと第2の回転部材15bとを互いに接続する第1の内部補強部材39aと、第3の回転部材15cと第4の回転部材15dとを互いに接続する第2の内部補強部材39bとが配置される。
【0284】
また
図19に示す例では、第2の制振コアユニット13に、第5の回転部材17と第6の回転部材17bとを互いに接続する第3の内部補強部材39cと、第7の回転部材17cと第8の回転部材17dとを互いに接続する第4の内部補強部材39dが配置される。
【0285】
奥行方向(Y方向)から見た場合に、第1~第4の内部補強部材39a~39dの各々は、クランク形状を有する。
【0286】
第1の内部補強部材39aは、第1の回転部材15aの第3の辺部16c-1の下端部の位置から左右方向(X方向)に沿って延在する第1の基体部40aと、第2の回転部材15bの第3の辺部16c-2の上端部の位置から左右方向(X方向)に沿って延在する第2の基体部40bと、上下方向(Z方向)に沿って延在し、第1の基体部40aと第2の基体部40bとを接続する接続部40cとを有する。
【0287】
第2の制振コアユニット13の第7の回転部材17c及び第8の回転部材17dとの間に配置される第4の内部補強部材39dは、第1の内部補強部材39aと同様の構成を有し、第1の基体部40aと、第2の基体部40bと、接続部40cとを有する。
【0288】
第2の内部補強部材39bは、第3の回転部材15cの第3の辺部16c-3の上端部の位置から左右方向(X方向)に沿って延在する第3の基体部40dと、第4の回転部材15dの第3の辺部16c-4の下端部の位置から左右方向(X方向)に沿って延在する第4の基体部40eと、上下方向(Z方向)に沿って延在し、第3の基体部40dと第4の基体部40eとを接続する接続部40fとを有する。
【0289】
第2の制振コアユニット13の第5の回転部材17a及び第6の回転部材17bとの間に配置される第3の内部補強部材39cは、第2の内部補強部材39bと同様の構成を有し、第3の基体部40dと、第4の基体部40eと、接続部fとを有する。
【0290】
このようにクランク形状の内部補強部材39を配置することで、制振構造体1の剛性を向上させることが可能となる。特に、第1の制振コアユニット12及び第3の制振コアユニット13の剛性を向上させることが可能である。
【0291】
図19に示す構成は、第1の制振コアユニット12の上下方向(Z方向)に延在する開口部22b、及び第2の制振コアユニット13の上下方向(Z方向)に延在する開口部23b内に、補強部材を配置する構成ともいえる。
【0292】
これにより、制振構造体1の上下方向(Z方向)における剛性を向上される。例えば、上下方向(Z方向)の下方側に荷重が作用するような状況で、制振構造体1が用いられる場合もあり得る。例えば、床下や天井等において、制振構造体1が梁として用いられ、上下方向(Z方向)にて荷重を支えるように配置される場合もあり得る。
【0293】
このような場合に、
図19に例示するようなクランク形状の内部補強部材39を、開口部22b及び23b内に構成する。これにより、上方からの荷重により制振構造体1が撓んでしまったり曲がってしまったりすることを十分に抑制することが可能となる。この結果、梁としての機能を十分に果たすことが可能となる。
【0294】
また、クランク形状の内部補強部材39は、制振ユニット4の振動減衰動作による振動メカニズムへ影響を及ぼすことなく、制振ユニット4の剛性を向上させるのに有利な構成である。もちろん、内部補強部材39の形状として、クランク形状以外の形状が採用されてもよい。
【0295】
もちろん、第1の制振コアユニット12の左右方向(X方向)に延在する開口部22a、及び第2の制振コアユニット13の左右方向(X方向)に延在する開口部23a内に、内部補強部材が構成されてもよい。これにより、左右方向(X方向)における剛性を向上させることが可能となる。
【0296】
[R面取り加工(フィレット加工)]
図20及び
図21は、補強部材5の他の構成例を示す模式図である。
図20及び
図21に示す制振ユニット4では、第1の支持部材2及び第2の支持部材3と補強部材5との接続部分や、補強部材5内にR面取り部(フィレット部)46が構成される。R面取り部46は、R面取り加工(フィレット加工)が行われることで構成される。
【0297】
図20に示す例では、補強部材5は、トラス構造により構成される。すなわち、補強部材5は、上下方向(Z方向)に対して斜め方向に延在する斜めフレーム部材27(筋交い部材)を含む複数のフレーム部材を有する。具体的には、複数のフレーム部材として、上下方向(Z方向)に延在する縦フレーム部材25(左側フレーム部材25a、中間フレーム部材25c)、左右方向(X方向)に延在する横フレーム部材26(26a、26b)、及び斜めフレーム部材27(27a~27h)が配置される。
【0298】
R面取り部46は、第1の支持部材2と複数のフレーム部材との接続部分、第2の支持部材3と複数のフレーム部材との接続部分、及び複数のフレーム部材に含まれるフレーム部材同士の接続部分に構成される。
【0299】
図20に示す例では、第1の支持部材2と斜めフレーム部材27(27a及び27b)との接続部分に4つのR面取り部46aが構成される。また第1の支持部材2と縦フレーム部材25(左側フレーム部材25a、中間フレーム部材25c)との接続部分に2つのR面取り部46bが構成される。
【0300】
第2の支持部材3と斜めフレーム部材27(27g及び27h)との接続部分に4つのR面取り部46cが構成される。また第2の支持部材3と縦フレーム部材25(左側フレーム部材25a、中間フレーム部材25c)との接続部分に2つのR面取り部46dが構成される。
【0301】
左側フレーム部材25aと、斜めフレーム部材27(27a、27c、27e、27g)との接続部分に、4つのR面取り部46eが構成される。また、中間フレーム部材25cと、斜めフレーム部材27(27b、27d、27f、27h)との接続部分に、4つのR面取り部46fが構成される。
【0302】
横フレーム部材26(26a及び26b)と、縦フレーム部材25(左側フレーム部材25a、中間フレーム部材25c)との接続部分に4つのR面取り部46gが構成される。また、横フレーム部材26(26a及び26b)と、斜めフレーム部材27(27c~27f)との接続部分に4つのR面取り部46hが構成される。
【0303】
斜めフレーム部材27同士の接続部分(27aと27cとの接続部分、27bと27dとの接続部分、27eと27gとの接続部分、27fと27hとの接続部分)に、4つのR面取り部46iが構成される。
【0304】
図21に示す例では、補強部材5は、板状の部材33により構成される。
R面取り部46は、第1の支持部材2と板状の部材33との接続部分、第2の支持部材3と板状の部材33との接続部分、及び板状の部材33の端面(側面)に構成される隅部の少なくとも1つに構成される。
【0305】
図21に示す例では、第1の支持部材2と板状の部材33との接続部分に2つのR面取り部46jが構成される。また第2の支持部材3と板状の部材33との接続部分に2つのR面取り部46kが構成される。
【0306】
板状の部材33の端面であり、制振ユニット4に対向する対向面47a及び47bに構成される隅部に、4つのR面取り部46lが構成される。
【0307】
図20及び
図21に例示するように、各部材の接続部分や、板状の部材の端面の隅部にR面取り部46を構成することで、応力集中を抑制することが可能となり、部材の破損等を防止することが可能となる。従って、制振構造体1の剛性を向上させることが可能となる。
【0308】
図20及び
図21に示すR面取り部46の全てが構成されてもよいし、一部の箇所の面取り部46が構成されてもよい。例えば、1箇所のみにR面取り部46を構成するといったことも可能である。
【0309】
図1、
図17、
図20及び
図21等において、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の間の1以上の制振ユニット4の周囲の領域、すなわち補強部材5を構成する対象となる領域を補強対象領域とする。上下方向(Z方向)に沿って、補強対象領域の上下方向(Z方向)に直交する断面(XY平面で切断した場合の断面)のサイズの変化が大きい部分に、より大きい応力が発生する。
【0310】
図20及び
図21に示す例では、補強部材5の上下方向(Z方向)において第1の制振コアユニット12(第2の制振コアユニット13)の中心CP1(CP2)と同じ位置となる部分が、上下方向(Z方向)に直交する断面のサイズの変化が大きい部分となり、大きい応力が発生する。従って、
図20に示すR面取り部46i、
図21に示すR面取り部46lを構成することで、応力集中による破損等を防止することに有利となる。
【0311】
本実施形態では、R面取り部46の半径は、2mm以上となるように設計されている。これにより、応力集中を十分に抑制することが可能である。なお、この値に限定されず、半径が2mmよりも小さくなるように、R面取り部46が構成されてもよい。
【0312】
以上、本実施形態に係る制振構造体1では、第1の支持部材2と第2の支持部材3との間に1以上の制振ユニット4が接続される。1以上の制振ユニット4の各々は、第1の制振コアユニット12と、第2の制振コアユニット13とを含む。
【0313】
第1の制振コアユニット12は、第1及び第2のヒンジ20a及び20bを介して第1の支持部材2に接続され、第2の制振コアユニット13は第5及び第6のヒンジ20e及び20fを介して第2の支持部材3に接続される。また、第1の制振コアユニット12と、第2の制振コアユニット13とは、第9~第12のヒンジ20i~20lを介して、互いに接続される。
【0314】
第1の制振コアユニット12は、第1~第4の回転部材15a~15dを有する。このうち、第1の回転部材15aと第3の回転部材15cとは、第3のヒンジ20cを介して互いに接続されている。また第2の回転部材15bと第4の回転部材15dとは、第4のヒンジ20dを介して互いに接続されている。
【0315】
第2の制振コアユニット13は、第5~第8の回転部材17a~17dを有する。このうち、第5の回転部材17aと第7の回転部材17cとは、第7のヒンジ20gを介して互いに接続されている。また第6の回転部材17bと第8の回転部材17dとは、第8のヒンジ20hを介して互いに接続されている。
【0316】
第1~第12のヒンジ20a~20lは、上記のように上下方向(Z方向)から見た場合の位置が適宜設定されている。
【0317】
第1の支持部材2及び第2の支持部材3に上下方向(Z方向)の振動が作用すると、各回転部材15(17)がヒンジ20を基点に回転する。第1の制振コアユニット12と第2制振コアユニット13との接続部分は、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に作用する上下方向(Z方向)の振動を打ち消す向きに変位する。これにより、第1の支持部材2及び第2の支持部材3に作用する振動を抑制することが可能となる。この結果、高い制振機能を発揮することが可能となる。
【0318】
振動を減衰させる制振方法として、ダンパ等の減衰機構を用いる方法や、スポンジ等の減衰材料を利用する方法等が採用される場合について考察する。例えば、減衰機構を追加すると質量の増加を招き、除震したい物体自身が重くなる場合も多い。また減衰材料は多孔性、あるいは、材料を構成する分子同士が十分に結合しておらず分子鎖が絡まっているだけの構造であるため、減衰材料を使用している部分は、強度が低下するという問題もある。すなわち、振動を減衰する機能を持たせつつ、軽量化と高い強度とを両立することは、解決が難しい課題であるといえる。
【0319】
例えば、上記した特許文献1に記載の技術では、片持ち梁の構造を基本としており、振動する梁が支持されているのは片側だけで動吸振器自身がもろく、かつ当該梁は中空に浮いた構造のため、部材の剛性に寄与しない。
【0320】
特許文献2に記載の技術は、錘がある共振部が部材からは中空に浮いた構造であるため、部材の剛性に寄与しない。また剛性に寄与しない共振部は部材の半分以上の体積を占めていることから、当該遮音材の剛性は低くなってしまう。
【0321】
本技術に係る制振構造体1では、第1の支持部材2と第2の支持部材3との間に、振動懸垂動作を行う制振ユニット4が配置される。従って、いわゆる片手持ちの構造ではなく、制振ユニット4の両側が支持されるので、制振構造体1の剛性は高いものとなっている。
【0322】
補強部材5をトラス構造により構成することや、トポロジー最適化により構成することで、制振構造体1の軽量化及び剛性に有利な補強部材5を実現することが可能である。
【0323】
また、本制振構造体1では、制振ユニット4の共振周波数を容易に調整することが可能であるので、減衰可能な周波数を容易に制御することが可能である。例えば、100Hz以下の低周波振動を制振できる制振構造体1を容易に実現することが可能である。
【0324】
[振動減衰装置]
本発明に係る制振構造体1を有する振動減衰装置について説明する。振動減衰装置は、本発明に係る、制振構造体を組み込んだ装置の一実施形態に相当する。
【0325】
図22は、本発明の一実施形態に係る振動減衰装置50の概略的な構成例を示す模式図である。
図22では、制振構造体1の内部の構成に関して、制振ユニット4(第1の制振コアユニット12、第2の制振コアユニット13、ヒンジ20)が簡略化して図示されている。
【0326】
振動減衰装置50は、1以上の制振構造体1を具備し、第1の部材51と、第2の部材52との間に接続される。第1の部材51及び第2の部材52は、1以上の制振構造体1の各々に対して直接的、あるいは他の部材を介して間接的に接続される。
【0327】
1以上の制振構造体1の各々は、第1の支持部材2の所定の位置が第1の振動作用点VA1となるように第1の部材51に接続され、第1の支持部材2の当該第1の振動作用点VA1から離間した位置が第2の振動作用点VA2となるように第2の部材52に接続される。
【0328】
第1の振動作用点VA1は、第1の部材51から上下方向(Z方向)の振動が発生した場合に、当該上下方向(Z方向)の振動が入力する位置である。すなわち、第1の部材51が上下方向(Z方向)に振動した場合に振動入力点VI(
図4等参照)となる位置が、第1の振動作用点VA1となる。
【0329】
第1の支持部材2の所定の位置が第1の振動作用点VA1となるように、すなわち第1の部材51から上下方向(Z方向)の振動が発生した場合にその位置が振動入力点VIとなるように、制振構造体1に対して第1の部材51が接続される。
【0330】
第2の振動作用点VA2は、第2の部材52から上下方向(Z方向)の振動が発生した場合に、当該上下方向(Z方向)の振動が入力する位置である。すなわち、第2の部材52が上下方向(Z方向)に振動した場合に振動入力点VI(
図4等参照)となる位置が、第2の振動作用点VA2となる。
【0331】
第1の支持部材2の第1の振動作用点VA1から離間した位置が第2の振動作用点VA2となるように、すなわち第2の部材52から上下方向(Z方向)の振動が発生した場合に第1の振動作用点VA1から離間した位置が振動入力点VIとなるように、制振構造体1に対して第2の部材52が接続される。
【0332】
図22に示す例では、振動減衰装置50に、さらに、第1の接続用機構53と、第2の接続用機構54とが設けられる。
第1の接続用機構53は、第1の部材51から上下方向(Z方向)の振動が発生した場合に、第1の振動作用点VA1に第1の部材51から発生した振動が入力するように、第1の部材51と1以上の制振構造体1の各々とを接続する。
第2の接続用機構54は、第2の部材52から上下方向(Z方向)の振動が発生した場合に、第2の振動作用点VA2に第2の部材52から発生した振動が入力するように、第2の部材52と1以上の制振構造体1の各々とを接続する。
第1の接続用機構53、及び第2の接続用機構54の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0333】
図22に示す例では、第1の支持部材2の左端部2aが第1の振動作用点VA1となるように、制振構造体1と第1の部材51とが接続される。また第1の支持部材2の右端部2bが第2の振動作用点VA2となるように、制振構造体1と第2の部材52とが接続される。
【0334】
なお、第1の支持部材2に対して第1の振動作用点VA1及び第2の振動作用点VA2を設定することは、第2の支持部材3に対して第1の振動作用点VA1及び第2の振動作用点VA2を設定すること、及び第1の支持部材2及び第2の支持部材3の両方に対して第1の振動作用点VA1及び第2の振動作用点VA2を設定することと同義となる。
【0335】
図22に示すように、第1の部材51が振動源となり上下方向(Z方向)に振動した場合、第1の振動作用点VA1に上下方向(Z方向)の振動が入力される。入力された振動が第1の支持部材2及び第2の支持部材3に作用するのに応じて、4つの制振ユニット4により振動減衰動作が行われる。これにより、上下方向(Z方向)の振動は減衰され、第2の振動作用点VA2では、上下方向(Z方向)の振動は十分に抑制される。この結果、第1の部材51で発生した上下方向(Z方向)の振動が、第2の部材52に伝達することを十分に抑制することが可能となる。なお、この場合、第2の振動作用点VA2を、振動出力点VO(
図4等参照)と見做すことも可能である。
【0336】
第2の部材52が振動源となり上下方向(Z方向)に振動した場合、第2の振動作用点VA2に上下方向(Z方向)の振動が入力される。入力された振動が第1の支持部材2及び第2の支持部材3に作用するのに応じて、4つの制振ユニット4により振動減衰動作が行われる。これにより、上下方向(Z方向)の振動は減衰され、第1の振動作用点VA1では、上下方向(Z方向)の振動は十分に抑制される。この結果、第2の部材52で発生した上下方向(Z方向)の振動が、第1の部材52に伝達することを十分に抑制することが可能となる。なお、この場合、第1の振動作用点VA1を、振動出力点VO(
図4等参照)と見做すことも可能である。
【0337】
このように振動減衰装置50を配置することで、第1の部材51及び第2の部材52の間で、上下方向(Z方向)の振動が伝達することを十分に抑制することが可能となり、高い制振機能が発揮される。振動減衰装置50の利用方法として、例えば、振動源となる部材と、当該振動源で発生する振動を伝達させたくない部材との間に振動減衰装置50を配置する方法が挙げられる。これに限定されず、各々が振動源となり得る2つの部材の間に、各々で発生する振動が伝達しないように、振動減衰装置50を配置する方法も挙げられる。
【0338】
なお、2つの部材の間に振動減衰装置50を配置する場合に限定されず、3以上の部材に対して振動減衰装置50を配置することも可能である。この場合、3以上の部材のうち少なくとも2つの部材に対して、第1の支持部材2の互いに離間した位置が第1の振動作用点VA1及び第2の振動作用点VA2となるように、各制振構造体1が接続されればよい。このような第1の部材51及び第2の部材52に対する制振構造体1の接続方法は、本技術に係る接続方法ともいえる。もちろん、3以上の部材の任意の2つの部材に対して、本技術に係る接続方法が実現されてもよい。
【0339】
図23~
図25は、振動減衰装置50の他の構成例を示す模式図である。
図23は、振動減衰装置50を、手前側の右上方から斜めに見た場合の斜視図である。
図24は、振動減衰装置50を、奥行方向(Y方向)から見た場合の図である。
図25は、振動減衰装置50を、左側(X軸の負側)から見た場合の側面図である。
【0340】
振動減衰装置50は、4つの制振構造体1と、上面部材55と、下面部材56と、上方側柱部材57(57a~57d)と、下方側柱部材58(58a~58d)と、支持脚部材59とを含む。
【0341】
上面部材55は、上下方向(Z方向)から見た場合に矩形状を有する板状の部材であり、上下方向(Z方向)に垂直となるように配置される。
下面部材56は、上面部材55と略等しい形状を有する板状の部材の部材であり、上下方向(Z方向)に沿って上面部材55と対向する位置に配置される。上下方向(Z方向)から見た場合に、上面部材55と上面部材55とは、互いに重なり合う位置関係で配置される。
支持脚部材59は、下面部材56の下方側の4隅に配置され、設置面に当接して振動減衰装置50を支持する。
【0342】
本実施形態では、上面部材55上に、第1の物体が接続される。従って、上面部材55は、第1の接続用機構53の一部として機能する。さらにいえば、上面部材55と、上方側柱部材57と、上方側柱部材57に接続される接続用部材60とにより、第1の接続用機構53が構成される。
【0343】
また本実施形態では、支持脚部材59と当接する設置面が、第2の物体に相当する。従って、下面部材56及び支持脚部材59は、第2の接続用機構54の一部として機能する。さらにいえば、下面部材56と、下方側柱部材58と、下方側柱部材58に接続される接続用部材60とにより、第2の接続用機構54が構成される。なお、設置面とは異なる他の物体が、第2の物体として下面部材56に接続されてもよい。
【0344】
本実施形態に係る振動減衰装置50により、上面部材55上に配置される物体と、設置面との間で、上下方向(Z方向)の振動の伝達を十分に抑制することが可能となっている。
【0345】
4つの制振構造体1は、上面部材55と下面部材56との間の空間に、奥行方向(Y方向)に沿って重なり合う位置関係で並ぶように配置される。
図24に示すように、奥行方向(Y方向)から見た場合に、各制振構造体1の左側フレーム部材25aは、上面部材55と下面部材56との間の空間の左側の位置に互いに重なり合うように配置される。各制振構造体1の右側フレーム部材25bは、上面部材55と下面部材56との間の空間の右側の位置に互いに重なり合うように配置される。
もちろん、奥行方向(Y方向)から見た場合に、各制振構造体1の第1の支持部材2、第2の支持部材3、及び各制振ユニット4も、互いに重なり合うように配置される。
【0346】
上方側柱部材57は、上下方向(Z方向)を長辺方向とする板状の部材であり、上端部が上面部材55に接続される。
図25に示すように、上方側柱部材57の下端部は、下面部材56とは接続されず、上方側柱部材57と下面部材56との間には間隙が形成される。
【0347】
下方側柱部材58は、上方側柱部材57と略等しい形状を有する板状の部材であり、下端部が下面部材56に接続される。
図25に示すように、下方側柱部材58の上端部は、上面部材55とは接続されず、下方側柱部材58と上面部材55との間には間隙が形成される。
【0348】
図23~
図25に示すように、4つの制振構造体1の各々は、左側フレーム部材25aに、上方側柱部材57及び下方側柱部材58のいずれか一方に接続される。そして、右側フレーム部材25bには、上方側柱部材57及び下方側柱部材58の他方が接続される。すなわち、4つの制振構造体1の各々は、(上方側柱部材57、下方側柱部材58)のペアにより、左右から挟まれるように接続される。
なお、本実施形態では、上方側柱部材57及び下方側柱部材58は、接続用部材60を介して、制振構造体1に接続される。
【0349】
4つの制振構造体1を、手前側から順番に、制振構造体1a~1dと記載する。本実施形態では、奥行方向(Y方向)の最も手前側(Y軸の負側)に配置される制振構造体1aの左側フレーム部材25aに、上方側柱部材57aが接続される。右側フレーム部材25bには、下方側柱部材58aが接続される。
【0350】
従って
図24に示すように、制振構造体1aは、第1の支持部材2の左端部2aの位置が第1の振動作用点VA1となるように、上面部材55に、上方側柱部材57aを介して接続される。また、制振構造体1aは、第1の支持部材2の右端部2bの位置が第2の振動作用点VA2となるように、下面部材56に、下方側柱部材58aを介して接続される。
【0351】
奥行方向(Y方向)の手前側から2番目に配置される制振構造体1bの左側フレーム部材25aには、下方側柱部材58bが接続される。右側フレーム部材25bには、上方側柱部材57bが接続される。
【0352】
従って、制振構造体1bは、第1の支持部材2の左端部2aの位置が第2の振動作用点VA2となるように、下面部材56に、下方側柱部材58bを介して接続される。また、制振構造体1bは、第1の支持部材2の右端部2bの位置が第1の振動作用点VA1となるように、上面部材55に、上方側柱部材57bを介して接続される。
【0353】
奥行方向(Y方向)の手前側から3番目に配置される制振構造体1cの左側フレーム部材25aには、上方側柱部材57cが接続される。右側フレーム部材25bには、下方側柱部材58cが接続される。
【0354】
従って、制振構造体1cは、第1の支持部材2の左端部2aの位置が第1の振動作用点VA1となるように、上面部材55に、上方側柱部材57cを介して接続される。また、制振構造体1cは、第1の支持部材2の右端部2bの位置が第2の振動作用点VA2となるように、下面部材56に、下方側柱部材58cを介して接続される。
【0355】
奥行方向(Y方向)の最も奥側に配置される制振構造体1dの左側フレーム部材25aには、下方側柱部材58dが接続される。右側フレーム部材25bには、上方側柱部材57dが接続される。
【0356】
従って、制振構造体1dは、第1の支持部材2の左端部2aの位置が第2の振動作用点VA1となるように、下面部材56に、下方側柱部材58dを介して接続される。また、制振構造体1dは、第1の支持部材2の右端部2bの位置が第1の振動作用点VA1となるように、上面部材55に、上方側柱部材57dを介して接続される。
【0357】
従って、本振動減衰装置50では、奥行方向(Y方向)から見た場合に、第1の支持部材2の左端部2aの位置が第1の振動作用点VA1となるように上面部材55に接続され、左端部2aとは反対側の右端部2bの位置が第2の振動作用点VA2となるように下面部材56に接続される制振構造体1(1a及び1c)と、第1の支持部材2の右端部2bの位置が第1の振動作用点VA1となるように上面部材55に接続され、左端部2aの位置が第2の振動作用点VA2となるように下面部材56に接続される制振構造体1(1b及び1d)とが、奥行方向(Y方向)に沿って交互に配置される。
【0358】
図25に示すように、振動減衰装置50の左側面には、手前側から上方側柱部材57aを先頭に、上方側柱部材57と下方側柱部材58とが交互に並ぶように配置される。
図23に示すように、振動減衰装置50の右側面には、手前側から下方側柱部材58aを先頭に、下方側柱部材58と上方側柱部材57とが交互に並ぶように配置される。
【0359】
第1の部材から発生する上下方向(Z方向)の振動が上面部材55に作用すると、最も手前側の制振構造体1aの左側フレーム部材25a、2番目の制振構造体1bの右側フレーム部材25b、3番目の制振構造体1cの左側フレーム部材25a、及び最も奥側の制振構造体1dの右側フレーム部材25bに、上方側柱部材57aを介して上下方向(Z方向)の振動が入力される。
【0360】
各制振構造体1の3つの制振ユニット4が振動減衰動作を行うことにより、上下方向(Z方向)の振動が減衰される。従って、最も手前側の制振構造体1aの右側フレーム部材25b、2番目の制振構造体1bの左側フレーム部材25a、3番目の制振構造体1cの右側フレーム部材25b、及び最も奥側の制振構造体1dの左側フレーム部材25aでは、上下方向(Z方向)の振動は十分に抑えられる。
【0361】
従って、最も手前側の制振構造体1aの右側フレーム部材25b、2番目の制振構造体1bの左側フレーム部材25a、3番目の制振構造体1cの右側フレーム部材25b、及び最も奥側の制振構造体1dの左側フレーム部材25aに対して、下方側柱部材58を介して接続される下面部材56に作用する上下方向(Z方向)の振動は十分に抑えられる。この結果、下面部材56の下方に接続される4つの支持脚部材59に当接している設置面に作用する上下方向(Z方向)の振動は十分に抑えられる。
【0362】
本振動減衰装置50により、上面部材55に作用する上下方向(Z方向)の振動が下面部材56に伝達することを十分に抑制することが可能となり、高い制振機能が発揮される。この結果、上面部材55に接続される振動源から発生する上下方向(Z方向)の振動が、下面部材56の設置された支持脚部材59に当接する設置面に伝達することを十分に抑制することが可能となる。
【0363】
なお、設置面から発生する上下方向(Z方向)の振動が支持脚部材59を介して下面部材56に作用した場合にも、高い制振機能を発揮することが可能であり、上面部材55に接続された物体に上下方向(Z方向)の振動が伝達することを十分に抑制することが可能である。
【0364】
上面部材55又は下面部材56が上下方向(Z方向)に振動した場合、左側から振動が入力する制振構造体1と、右側から振動が入力する制振構造体1とが、奥行方向(Y方向)に沿って交互に並ぶように配置されているので、バランスよく安定して振動を減衰することが可能となる。
【0365】
図23~
図25に示す振動減衰装置50において、4つの制振構造体1の各々が有する3つの制振ユニット4は、上下方向(Z方向)に直交する左右方向(X方向)に沿って並んで配置される複数の制振ユニットの一実施形態に相当する。
【0366】
4つの制振構造体1は、上下方向(Z方向)に及び左右方向(X方向)の各々に直交する奥行方向(Y方向)に沿って並ぶように、かつ奥行方向(Y方向)から見た場合に、左右方向(X方向)における2つの端部(左端部2a及び右端部2b)の位置がそろうように配置される複数の制振構造体の一実施形態に相当する。
【0367】
制振構造体1a及び1cは、第1の支持部材2の左右方向(X方向)における一方の端部(左端部2a)の位置が第1の振動作用点VA1となるように上面部材55に接続され、第1の支持部材2の左右方向(X方向)における他方の端部(右端部2b)の位置が第2の振動作用点VA2となるように下面部材56に接続される制振構造体であり、「第1の制振構造体」の一実施形態に相当する。なお、左端部2aは「第1の側の端部」の一実施形態に相当し、右端部2bは、「第1の側とは反対側の第2の端部」の一実施形態に相当する。
【0368】
制振構造体1b及び1dは、第1の支持部材2の左右方向(X方向)における一方の端部(右端部2b)の位置が第1の振動作用点VA1となるように上面部材55に接続され、第1の支持部材2の左右方向(X方向)における他方の端部(左端部2a)の位置が第2の振動作用点VA2となるように下面部材56に接続される制振構造体であり、「第2の制振構造体」の一実施形態に相当する。なお、左端部2aは「第1の側の端部」の一実施形態に相当し、右端部2bは、「第1の側とは反対側の第2の端部」の一実施形態に相当する。
【0369】
図26及び
図27は、振動減衰装置50の他の構成例を示す模式図である。
図26は、振動減衰装置50を、奥行方向(Y方向)から見た場合の図である。
図27は、複数の振動減衰装置50の設置例を示す模式図である。
【0370】
図26に示すように、本実施形態に係る振動減衰装置50は、制振構造体1と、上方側支持部材62と、接続用部材63と、支持脚部材64とを有する。
【0371】
図27に示すように、制振構造体1は、奥行方向(Y方向)のサイズが大きいブロック形状で構成される。従って、上下方向(Z方向)から見た場合に、第1の支持部材2及び第2の支持部材3は、矩形状からなる板状の部材となる。また制振構造体1には、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の間に、左右方向(X方向)に沿って8個の制振ユニット4が並んで配置される。
【0372】
図27に示すように、接続用部材63は、奥行方向(Y方向)に沿って延在する細長い板状の部材からなり、第1の支持部材2の上面側の左右方向(X方向)における中央の位置に配置される。上方側支持部材62は、上下方向(Z方向)から見た場合に矩形状からなる板状の部材からなり、接続用部材63の上方に接続される。上下方向(Z方向)から見た場合に、第1の支持部材2、接続用部材63、及び上方側支持部材62の、左右方向(X方向)における中心の位置は、互いに一致している。
【0373】
図27に示すように、左右方向(X方向)及び奥行方向(Y方向)の各々に沿って、振動減衰装置50が一定の間隔で配置される。本実施形態では、左右方向(X方向)に沿って6個、奥行方向(Y方向)に沿って6個、合計36個の振動減衰装置50が配置される。もちろん、配置される振動減衰装置50の数は限定されない。
【0374】
36個の振動減衰装置50は、二重床構造の内部に配置され、上方側支持部材62に床部材66が配置される。当該床部材66が、各振動減衰装置50において、第1の部材に相当する。従って、接続用部材63及び上方側支持部材62は、第1の接続用機構54として機能する。
【0375】
支持脚部材64は、第2の支持部材3の下方側の4隅に配置され、二重床構造の基体部材に当接して振動減衰装置50を支持する。本実施形態では、支持脚部材64と当接する基体部材が、第2の物体に相当する。従って、支持脚部材64は、第2の接続用機構54の一部として機能する。
【0376】
図26に示すように、制振構造体1は、第1の支持部材2の左右方向(X方向)における中央の位置が第1の振動作用点VA1となるように、第1の接続用機構53により、床部材66に接続される。また、制振構造体1は、第1の支持部材2の左右方向(X方向)に両端部(左端部2a及び右端部2b)の位置が第2の振動作用点VA2となるように、第2の接続用機構54を介して、基体部材に接続される。
なお、左端部2a及び右端部2bの少なくとも一方の端部が第2の振動作用点VA2となるように、制振構造体1と基体部材とが接続されてもよい。
【0377】
床部材66が上下方向(Z方向)に振動すると、制振構造体1の第1の振動作用点VA1に、上下方向(Z方向)の振動が入力される。制振構造体1の左側の4つの制振ユニット4による振動抑制動作により、制振構造体1の左端の第2の振動作用点VA2の位置に作用する上下方向(Z方向)の振動は十分に抑制される。また、制振構造体1の右側の4つの制振ユニット4による振動抑制動作により、制振構造体1の右端の第2の振動作用点VA2の位置に作用する上下方向(Z方向)の振動も十分に抑制される。
【0378】
従って、制振構造体1の第2の支持部材3の左右の端部に接続された4つの支持脚部材64に当接している基体部材に作用する上下方向(Z方向)の振動は十分に抑えられる。
【0379】
本振動減衰装置50により、二重床構造において、上方側の床部材66から発生する上下方向(Z方向)の振動が、下方側の基体部材に伝達することを十分に抑制することが可能となり、高い制振機能が発揮される。なお、下方側の基体部材から発生する上下方向(Z方向)の振動が発生した場合にも、高い制振機能を発揮することが可能であり、上方側の床部材66に上下方向(Z方向)の振動が伝達することを十分に抑制することが可能である。
【0380】
例えば、マンション等の集合住宅において、上階から発生する振動(音)に関して、60Hz等の低周波数の振動が問題となることが多い。本振動減衰装置50を適用することで、低周波数の振動の抑制に非常に有利となる。
【0381】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0382】
図28~
図30は、制振構造体1の他の構成例を示す模式図である。
図28~
図30では、上下方向(Z方向)の上方側から見た場合の、第1の支持部材2が図示されている。図中の波線を用いて区画した領域FAに、紙面奥側に向かって、制振ユニット4が構成されている。なお、第2の支持部材3は、第1の支持部材2と同じ形状で設計されている。
【0383】
図28に示す例では、第1の支持部材2は、上下方向(Z方向)から見た場合に、中心CP3から放射状に同じ長さで延在する6つの直線部材70(70a~70f)から構成される。6つの直線部材70は、中心CP3で、互いに接続されている。
【0384】
直線部材70a及び70dは、奥行方向(Y方向)に沿って、中心CP3から互いに反対向きに延在する。直線部材70b及び70eは、奥行方向(Y方向)に対して左回りに60度の角度で交差する方向に沿って、中心CP3から互いに反対向きに延在する。直線部材70c及び70fは、奥行方向(Y方向)に対して右回りに60度の角度で交差する方向に沿って、中心CP3から互いに反対向きに延在する。従って、6つの直線部材70は、中心CP3を中心に、60度の角度で等間隔に配置される。当該形状を、アスタリスク形状と呼ぶことも可能である。
【0385】
各直線部材70に対して、上下方向(Z方向)に沿って3個の制振ユニット4が配置される。従って、
図28に示す制振構造体1では、合計18個の制振ユニット4が配置される。
【0386】
図29に示す例では、第1の支持部材3は、上下方向(Z方向)から見た場合に、略円形状を有する円形部材71により構成される。
図29に示す制振構造体1では、上下方向(Z方向)に沿って12個の制振ユニット4が配置される。
【0387】
図30に示す例では、第1の支持部材3は、上下方向(Z方向)から見た場合に、左右方向(X方向)に対して奥側に45度の角度で交差する方向に延在する直線部材72aと、左右方向(X方向)に対して手前側に45度の角度で交差する方向に延在する直線部材72bとが、左右方向(X方向)に沿って交互に連結された形状を有する。上下方向(Z方向)から見た第1の支持部材2の形状を、V字形状からなる凹凸形状と呼ぶことも可能である。
【0388】
直線部材72a及び72bの1つに対して、上下方向(Z方向)に沿って1つの制振ユニット4が配置される。従って、
図30に示す制振構造体1では、合計8個の制振ユニット4が配置される。
【0389】
図28~
図30に示す制振構造体1に対して、互いに離間した位置が第1の振動作用点VA1及び第2の振動作用点VA2となるように、第1の部材51及び第2の部材52が接続される。これにより、第1の部材51及び第2の部材52の間で、上下方向(Z方向)の振動が伝達することを十分に抑制することが可能となる。
【0390】
例えば、
図28に示す構成において、中心CP3の位置が第1の振動作用点V1となるように、上方側から第1の部材51が接続される。そして、6個の直線部材の先端部の位置が第2の振動作用点VA2となるように、下方側から第2の物体が接続される。このような構成を採用することが可能である。また、6個の直線部材の先端部の位置が第2の振動作用点VA2となるように、6個の第2の物体が接続されてもよい。
【0391】
また、制振対象となる上下方向(Z方向)の振動の周波数を基準として、制振ユニット4の共振周波数を調整する上で、制振ユニット4の数を増やすことや、各制振ユニット4のサイズを大きくすることが有利となる場合もあり得る。また第1の支持部材3の上下方向(Z方向)から見た場合の長さ(全長)を大きくすることが有利となる場合もあり得る。
【0392】
一方で、制振構造体1を配置するスペースの大きさ等が制限されている場合等において、制振構造体1の設計に制約がかかってしまう場合もあり得る。本技術に係る制振構造体1では、
図28~
図29に例示するように、様々な形状を採用することが可能である。従って、設計の制約に対しても柔軟に対応することが可能となる。
【0393】
また、本技術に係る制振構造体1では、様々な形状を採用することが可能であるので、第1の部材(複数の場合もあり得る)と、第2の部材(複数の場合もあり得る)との様々な配置関係等に対しても、柔軟に対応することが可能である。
【0394】
図31は、第3のヒンジ20cの部分を拡大して示す拡大図である。
図31に示す例では、第3のヒンジ20cは、他の部材との接続部分にR面取り部74が構成される。具体的には、第3のヒンジ20cの第1の回転部材15aとの接続部分、及び第3のヒンジ20cの第3の回転部材15cとの接続部分に、R面取り部74が構成される。
【0395】
これにより、第3のヒンジ20cと他の部材(第1の回転部材15a、第3の回転部材15c)との接続部分において、応力集中を抑制することが可能となり、破損等を防止することが可能となる。従って、制振構造体1の剛性を向上させることが可能となる。
【0396】
例えば、
図3等に示す、第1のヒンジ20a、第2のヒンジ20b、第3のヒンジ20c、第4のヒンジ20d、第5のヒンジ20e、第6のヒンジ20f、第7のヒンジ20g、第8のヒンジ20h、第9のヒンジ20i、第10のヒンジ20j、第11のヒンジ20k、及び第12のヒンジ20lの各々について、他の部材との接続部分にR面取り部74が構成されてもよい。すなわち、全てのヒンジに対して、他の部材との接続部分にR面取り部74が構成されてもよい。
【0397】
第1~第12のヒンジ20a~20lから任意に選択されたヒンジのみに、R面取り部74が構成されてもよい。もちろん1つのヒンジのみにR面取り部74が構成されてもよい。すなわち、第1~第12のヒンジ20a~20lの少なくとも1つにR面取り部74が構成されてもよい。
【0398】
また、各ヒンジにおいて、他の部材との接続部分の全て(例えば上下方向(Z方向)における両端部等)にR面取り部74が構成されてもよい。これに限定されず、他の部材との接続部分の一部(1箇所のみ等)に、R面取り部74が構成されてもよい。
【0399】
例えば、両端部に回転部材15(17)が接続されるヒンジに対して、R面取り部74が構成されてもよい。
具体的には、第3のヒンジ20cの第1の回転部材15aとの接続部分、第3のヒンジ20cの第3の回転部材15cとの接続部分、第4のヒンジ20dの第2の回転部材15bとの接続部分、第4のヒンジ20dの第4の回転部材15dとの接続部分、第7のヒンジ20gの第5の回転部材17aとの接続部分、第7のヒンジ20gの第7の回転部材17cとの接続部分、第8のヒンジ20hの第6の回転部材17bとの接続部分、及び第8のヒンジ20hの第8の回転部材17dとの接続部分に、R面取り部74が構成されてもよい。
【0400】
もちろん、第1の支持部材2に接続される第1のヒンジ20a及び第2のヒンジ20bに対して、R面取り部74が構成されてもよい。
すなわち、第1のヒンジ20aの第1の支持部材2(接続用部材21a)との接続部分、第1のヒンジ20aの第1の回転部材15aとの接続部分、第2のヒンジ20bの第1の支持部材2(接続用部材21a)との接続部分、及び第2のヒンジ20bの第2の回転部材15bとの接続部分に、R面取り部74が構成されてもよい。
【0401】
また、第2の支持部材2に接続される第5のヒンジ20e及び第6のヒンジ20fに対して、R面取り部74が構成されてもよい。
すなわち、第5のヒンジ20eの第2の支持部材3(接続用部材21b)との接続部分、第5のヒンジ20eの第5の回転部材17aとの接続部分、第6のヒンジ20fの第2の支持部材3(接続用部材21b)との接続部分、及び第6のヒンジ20fの第6の回転部材17bとの接続部分に、R面取り部74が構成されてもよい。
【0402】
各ヒンジに対して、他の部材との接続部分にR面取り部74を構成することで、応力集中を抑制することが可能となり、ヒンジの破損等を防止することが可能となる。従って、制振構造体1の剛性を向上させることが可能となる。
本実施形態では、R面取り部74の半径は、1mm以上となるように設計されている。これにより、応力集中を十分に抑制することが可能である。なお、この値に限定されず、半径が1mmよりも小さくなるように、R面取り部74が構成されてもよい。
【0403】
上記では、
図3等に示すように、制振ユニット4として、制振駆動部材14が配置される構成を説明した。一方で、制振駆動部材14が配置されず、第9のヒンジ20iと第11のヒンジ20kとが直接的に接続され、第10のヒンジ20jと第12のヒンジ20lとが直接的に接続されてもよい。この場合でも、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)の振動に応じて、振動減衰動作による制振機能を発揮することが可能である。
【0404】
第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)の振動に応じて、振動減衰動作を行うことが可能であるのならば、制振ユニット4の構成は任意に設計されてよい。すなわち、第1の支持部材2及び第2の支持部材3の上下方向(Z方向)の振動に応じて、各回転部材15(17)が回転動作を行って制振機能を発揮可能であるのならば、各回転部材15(18)の形状は任意に設計されてよい。例えば、各回転部材15(17)の形状が全て異なっていてもよい。
【0405】
また、各ヒンジ20の上下方向(Z方向)から見た場合の位置も、任意に設計可能である。
図3に示す例では、ヒンジ20同士を上下方向(Z方向)から見た場合に異なる位置に配置する形態として、ヒンジ20同士を左右方向(X方向)において異なる位置に配置する構成を説明した。これに限定されず、ヒンジ20同士を奥行方向(Y方向)において異なる位置に配置する構成が採用されてもよい。すなわち、各回転部材15(17)に接続される2つのヒンジが、上下方向(Z方向)から見た場合に互いに異なる位置となる任意の構成を採用し得る。
【0406】
図2に示すような、補強部材5が設けられない構成でも制振機能を発揮させることも可能である。
第1の支持部材2と第3の支持部材とが連結している構成もあり得る。例えば、円形状のフレームの上方側の半円部分が第1の支持部材2として機能させ、下方側の半円部分が第2の支持部材3として機能させる場合もあり得る。
1つの制振ユニット4に、3以上の制振コアユニットが配置されてもよい。すなわち、1つの制振ユニット4に、第1の制振コアユニット12及び第2の制振コアユニット13に加えて、第3の制振コアユニット、第4の制振コアユニット、・・・・配置されてもよい。この場合、第1の制振コアユニット12が、他の制振コアユニットを介して第1の支持部材2に接続される場合や、第2の制振コアユニット13が、他の制振コアユニットを介して第2の支持部材3に接続される場合もあり得る。
【0407】
図22~
図27に示す振動減衰装置50では、制振構造体1は、「第1の方向」に相当する上下方向が鉛直方向に沿うように、かつ第1の支持部材2が第2の支持部材3よりも上方側に位置するように構成されている。これに限定されず、「第1の方向」に相当する上下方向を、任意の方向に沿うように、制振構造体1が配置されてもよい。
例えば、上下方向が水平方向に沿うように横向きに制振構造体1が配置されてもよい。例えば、鉛直方向に沿って配置された除震台の支柱に対して、水平方向に沿って互いに直交する4方向から、横向きに配置された4つの制振構造体1が接続されてもよい。これにより、水平方向に沿った振動が除振台に伝達することを抑制することが可能となり、微細な作業や顕微鏡を用いた観察等を、ずれが無い状態で非常に高精度に行うことが可能となる。
【0408】
各図面を参照して説明した振動機構、第1の支持部材、第2の支持部材、制振ユニット、第1及び第2の制振コアユニット、回転部材、ヒンジ、補強部材、振動減衰装置等の各構成はあくまで一実施形態であり、本技術の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本技術を実施するための他の任意の構成が採用されてよい。
【0409】
本開示において、説明の理解を容易とするために、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が適宜使用されている。一方で、これら「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言を使用する場合と使用しない場合とで、明確な差異が規定されるわけではない。
すなわち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円柱形状」「円筒形状」「リング形状」「円環形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円柱形状」「実質的に円筒形状」「実質的にリング形状」「実質的に円環形状」等を含む概念とする。
例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円柱形状」「完全に円筒形状」「完全にリング形状」「完全に円環形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。
従って、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現され得る概念が含まれ得る。反対に、「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現された状態について、完全な状態が必ず排除されるというわけではない。
【0410】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含なまい概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。
本技術を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0411】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0412】
CL1…第1の制振コアユニットの中心
CL2…第2の制振コアユニットの中心
RL…基準線
VA1…第1の振動作用点
VA2…第1の振動作用点
VI…振動入力点
VO…振動出力点
2…第1の支持部材
3…第2の支持部材
4…制振ユニット
5…補強部材
9…第1の接続基準位置
10…第2の接続基準位置
12…第1の制振コアユニット
13…第2の制振コアユニット
14…制振駆動部材
15a~15d…第1~第4の回転部材
17a~17d…第5~第8の回転部材
20a~20l…第1~第12のヒンジ
27…斜めフレーム部材(筋交い部材)
29…錘(マス)
33…板状の部材
39…内部補強部材
46、74…R面取り部
47a、47b…板状の部材の対向面
50…振動減衰装置
51…第1の部材
52…第2の部材
53…第1の接続用機構
54…第2の接続用機構