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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042386
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】搬送装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147066
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】高杉 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智博
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641GG02
5H641GG26
5H641GG28
5H641HH03
(57)【要約】
【課題】可動子を精度よく位置決めすることができる搬送装置およびその制御方法を提案する。
【解決手段】実施形態に係る搬送装置は、固定子と、固定子に対向して配設され、固定子に対して移動可能に設けられている複数の可動子と、固定子と通信可能に接続された制御部とを備える。複数の可動子は、それぞれ目盛りを有するスケール部と、互いに逆極性の第1磁極部および第2磁極部を含む複数の磁極対とを備える。固定子は、複数の可動子を移動させる磁力を発生させるコイル部と、複数の磁極対の極性を検知する磁極検知部と、スケール部の目盛りを読み取るスケール検出部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、
前記固定子に対向して配設され、前記固定子に対して移動可能に設けられている複数の可動子と、
前記固定子と通信可能に接続された制御部とを備える搬送装置であって、
前記複数の可動子は、
それぞれ目盛りを有するスケール部と、
互いに逆極性の第1磁極部および第2磁極部を含む複数の磁極対と、を備え、
前記固定子は、
前記複数の可動子を移動させる磁力を発生させるコイル部と、
前記複数の磁極対の極性を検知する磁極検知部と、
前記スケール部の前記目盛りを読み取るスケール検出部とを備える、
搬送装置。
【請求項2】
前記スケール部および前記複数の磁極対は、それぞれ前記複数の可動子の移動方向に対して略平行に、該可動子に設けられており、
1つの前記可動子に設けられた前記スケール部の前記移動方向における長さは、該可動子に設けられた前記複数の磁極対の前記移動方向における配列の長さと同じかそれよりも長い、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記複数の可動子のそれぞれにおいて、前記複数の磁極対の配列の一端には前記第1磁極部が配置され、該配列の他端には前記第2磁極部が配置されている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記磁極検知部は、前記第1磁極部または前記第2磁極部の磁極をそれぞれ検知する第1~3磁極センサを備え、
前記第1~3磁極センサは、前記複数の可動子の移動方向に第1、第2および第3磁極センサの順番あるいはこれとは逆の順番に配列されており、前記可動子の移動によって三相信号を出力する、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記第1磁極センサと前記第2磁極センサとの間の距離と、前記第2磁極センサと前記第3磁極センサとの間の距離とがほぼ等しい、
請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第1~3磁極センサは、前記第1磁極部を検知した場合第1論理信号を出力し、前記第2磁極部を検知した場合第2論理信号を出力する、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1~3磁極センサのいずもが前記第1論理信号を出力している状態において、前記第1磁極センサの出力が最初に前記第2論理信号に変化した場合、
前記可動子が前記第1磁極センサから前記第3磁極センサへ向かう第1方向に移動していることを示す第1移動情報を生成し、かつ、前記可動子を検出したことを示す第1フラグを活性化する、
請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1~3磁極センサのいずもが前記第2論理信号を出力している状態において、前記第3磁極センサの出力が最初に前記第1論理信号に変化した場合、
前記可動子が前記第1方向の反対方向である第2方向に移動していることを示す第2移動情報を生成し、かつ、前記可動子を検出したことを示す第1フラグを活性化する、
請求項7に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記第1移動情報または前記第2移動情報を生成した場合、前記スケール検出部により検出されている前記スケール部の位置情報を有効にする、
請求項7に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記コイル部は、前記第1磁極センサの前記第2方向側に隣接して配置されており、
前記制御部は、
前記第1移動情報を生成し、前記第1フラグを活性化した後、前記第3磁極センサが前記第2論理信号を出力したときに、前記コイル部に磁力を発生させる第1制御指令を活性化する、請求項8に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1制御指令の活性化後、前記第1~3磁極センサのいずれもが(M-g-1)回(Mは前記可動子に配設された前記磁極対の数、gは前記可動子の移動方向における前記コイル部の長さに対応する前記磁極対の数)の前記第2論理信号を出力し、または、予め設定された回数の前記第2論理信号を出力したときに、前記第1制御指令を不活性化する、
請求項10に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記コイル部は、前記第1磁極センサの前記第2方向側に隣接して配置されており、
前記制御部は、
前記第2移動情報を生成し、前記第1フラグを活性化した後、前記第3磁極センサが前記第1論理信号を出力したときに、前記コイル部に磁力を発生させる第2制御指令を活性化する、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記第2制御指令の活性化後、前記第1~3磁極センサのいずれもが(M-1)回(Mは前記可動子に配設された前記磁極対の数)の前記第1論理信号を出力し、または、予め設定された回数の前記第1論理信号を出力したときに、
前記第2制御指令を不活性化する、
請求項12に記載の搬送装置。
【請求項14】
固定子と、前記固定子に対向して配設され、前記固定子に対して移動可能に設けられている複数の可動子と、前記固定子と通信可能に接続された制御部とを備える搬送装置の制御方法であって、
前記複数の可動子は、それぞれ目盛りを有するスケール部と、互いに逆極性の第1磁極部および第2磁極部を含む複数の磁極対と、を備え、前記固定子は、前記複数の可動子を移動させる磁力を発生させるコイル部と、前記複数の磁極対の極性を検知する磁極検知部と、前記スケール部の前記目盛りを読み取るスケール検出部とを備えており、
前記第1~3磁極センサのいずもが前記第1論理信号を出力することと、
前記第1磁極センサの出力を最初に前記第2論理信号に変化させることと、
前記可動子が前記第1磁極センサから前記第3磁極センサへ向かう第1方向に移動していることを示す第1移動情報を生成し、前記可動子を検出したことを示す第1フラグを活性化することとを備える、
搬送装置の制御方法。
【請求項15】
前記第1~3磁極センサのいずもが前記第2論理信号を出力することと、
前記第3磁極センサの出力を最初に前記第1論理信号に変化させることと、
前記可動子が前記第1方向の反対方向である第2方向に移動していることを示す第2移動情報を生成し、前記可動子を検出したことを示す第1フラグを活性化することとを備える、請求項14に記載の搬送装置の制御方法。
【請求項16】
前記第1移動情報または前記第2移動情報を生成することと、
前記スケール検出部により検出されている前記スケール部の位置情報を有効にすることとを備える、請求項14に記載の搬送装置の制御方法。
【請求項17】
前記コイル部は、前記第1磁極センサの前記第2方向側に隣接して配置されており、
前記第1移動情報を生成し、前記第1フラグを活性化することと、
前記第3磁極センサが前記第2論理信号を出力したときに、前記コイル部に磁力を発生させる第1制御指令を活性化することとを備える、請求項14に記載の搬送装置の制御方法。
【請求項18】
前記第1制御指令の活性化後、前記第1~3磁極センサのいずれもが(M-g-1)回(Mは前記可動子に配設された前記磁極対の数、gは前記可動子の移動方向における前記コイル部の長さに対応する前記磁極対の数)の前記第2論理信号を出力し、または、予め設定された回数の前記第2論理信号を出力したときに、前記第1制御指令を不活性化すること、
を備える請求項17に記載の搬送装置の制御方法。
【請求項19】
前記コイル部は、前記第1磁極センサの前記第2方向側に隣接して配置されており、
前記第2移動情報を生成し、前記第1フラグを活性化したすることと、
前記第3磁極センサが前記第1論理信号を出力したときに、前記コイル部に磁力を発生させる第2制御指令を活性化することとを備える、請求項14に記載の搬送装置の制御方法。
【請求項20】
前記第2制御指令の活性化後、前記第1~3磁極センサのいずれもが(M-1)回(Mは前記可動子に配設された前記磁極対の数)の前記第1論理信号を出力し、または、予め設定された回数の前記第1論理信号を出力したときに、
前記第2制御指令を不活性化すること、
を備える請求項19に記載の搬送装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、搬送装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータを動力とする搬送装置が知られており、このような搬送装置においては、磁極センサを用いて、可動子の停止位置を位置決めする手法が知られている。しかしながら、磁極センサで位置決めする手法では、可動子を精度よく位置決めすることができなかった。また、リニアスケールにより位置決めする手法もある。しかし、リニアスケールにより位置決めする手法では、マルチスライダーのように複数の可動子を正確に制御することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2010-142033号公報
【特許文献2】特開第2005-341632号公報
【特許文献3】特開第2016-82653号公報
【特許文献4】特開第2010-130740号公報
【特許文献5】特開第2010-263681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、可動子を精度よく位置決めすることができる搬送装置およびその制御方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る搬送装置は、固定子と、固定子に対向して配設され、固定子に対して移動可能に設けられている複数の可動子と、固定子と通信可能に接続された制御部とを備える。複数の可動子は、それぞれ目盛りを有するスケール部と、互いに逆極性の第1磁極部および第2磁極部を含む複数の磁極対とを備える。固定子は、複数の可動子を移動させる磁力を発生させるコイル部と、複数の磁極対の極性を検知する磁極検知部と、スケール部の目盛りを読み取るスケール検出部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る搬送装置の構成を示すブロック図である。
図2A】第1実施形態に係る固定子の構成を示すブロック図である。
図2B】第1実施形態に係る第1~3磁極センサの構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る可動子の構成を示すブロック図である。
図4】第1実施形態に係る可動子と固定子との構成を示すブロック図である。
図5】第1実施形態に係る第1~3磁極センサが出力する第1および第2論理信号の波形を示す図である。
図6】第1実施形態に係る第1~3磁極センサが出力する第1および第2論理信号の波形を示す図である。
図7】第1実施形態に係るスケール検出部が出力するスケール検出値の積算値、および、制御部によるセンサ有効フラグを示す図である。
図8】第1実施形態に係る制御部による磁極センサ有効の判断、および、可動子移動方向の判断の処理を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態に係る制御部によるスケール情報有効の判断、および、制御座標更新の判断の処理を示すフローチャートである。
図10】第1実施形態に係る制御部による可動子制御の開始の判断、および、可動子制御の終了の判断の処理を示すフローチャートである。
図11】第1実施形態の具体例に係る第1~3磁極センサが出力する第1および第2論理信号の波形、および、制御部による磁極センサ有効の判断、可動子移動方向の判断ならびに可動子制御の開始と終了との判断を示す図である。
図12】第1実施形態の具体例に係る第1~3磁極センサが出力する第1および第2論理信号の波形、および、制御部による磁極センサ有効の判断、可動子移動方向の判断ならびに可動子制御の開始と終了との判断を示す図である。
図13】第1実施形態の具体例に係る第1~3磁極センサの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0008】
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
(搬送装置100の構成)
図1は、第1実施形態に係る搬送装置100の構成の一例を示す図である。搬送装置100は、複数の固定子10A~10D、複数の可動子20A、20B、移動路30、複数のサーボアンプ40A~40D、コントローラ50、動力線61、センサ線62~64、および、通信線71~72を備える。
【0010】
複数の固定子10A~10Dは、それぞれ同一の構成を有してもよい。尚、固定子10A~10Dには、スケール検出部13が設けられていない場合もある。複数の可動子20A~20Bは、それぞれ同一の構成を有する。複数のサーボアンプ40A~40Dは、それぞれ同一の構成を有する。したがって以下では、固定子10A、可動子20A、および、サーボアンプ40Aを説明する。
【0011】
固定子10Aは、コイル部11、磁極検知部12、スケール検出部13、および、筐体14を備える。コイル部11は、サーボアンプ40Aから動力線61を介して交流電流が供給され、複数の可動子20を移動させる推力を発生させる。コイル部11は、例えば、三相の交流電流を受けるためにそれぞれ120度ずつ位相がずれた3つの電磁コイルから構成されてもよい。磁極検知部12は、可動子20に設けられた複数の磁極対の極性を検知する。スケール検出部13は、可動子20Aに設けられた目盛りを有するスケール部を読み取る。磁極検知部12およびスケール検出部13の構成は、後に図2Aおよび図2Bを参照して詳述する。筐体14は、コイル部11、磁極検知部12、および、スケール検出部13を筐体上面に載置または筐体内部に収容する。
【0012】
可動子20Aは、固定子10Aに対向して配設され、固定子10Aに対して移動可能に設けられている。可動子20Aは、スケール部、および、複数の磁極対を備える。図1では、2つの可動子20Aおよび可動子20Bが図示されているが、本実施形態はこれに限られず、任意の数の可動子20を備えていてもよい。可動子20Aの構成は、後に図3を参照して詳述する。
【0013】
移動路30は、可動子20Aが移動する経路である。移動路30は、図1に示すように直線状に形成されてもよく、カーブするように曲線状に形成されてもよい。移動路30が3次元的な立体経路である場合、移動路30の両端または途中に可動子20Aを上下に移動させるエレベータ(図示せず)を備えてもよい。なお、図1に示す様に、移動路30は可動子20Aの上方に設けられ、移動路30に可動子20Aが吊下げられて移動してもよい。また、移動路30は可動子20Aの下方に設けられ、移動路30に可動子20Aが載置されて移動してもよい。さらに、移動路30は可動子20Aの側面に設けられ、移動路30に可動子20Aが側面から保持されて移動してもよい。
【0014】
サーボアンプ40Aは、動力線61を介してコイル部11に交流電流を供給する。また、サーボアンプ40Aは、センサ線62~64を介して磁極検知部12およびスケール検出部13と通信可能に接続されている。なお、サーボアンプ40A~40Dは、通信線71~72を介して、コントローラ50から制御を受ける。サーボアンプ40A~40Dは、通信線71~72を介して、相互に信号の送受信を行ってもよい。
【0015】
コントローラ50は、通信線71~72を介して、サーボアンプ40A~40Dと各種信号の送受信を行う。サーボアンプ40A~40Dおよびコントローラ50は、制御部の例である。サーボアンプ40A~40Dおよびコントローラ50は、後述するように、コイル部11、磁極検知部12、および、スケール検出部13を制御し、可動子20Aおよび可動子20Bの移動を含めた搬送装置100の全体を制御する。なお、サーボアンプ40A~40D、および、コントローラ50は、図1に示すように、それぞれ別の構成として設けられるほか、例えば、コントローラ50およびサーボアンプ40A~40Dを統合して一体の構成として設けられてもよい。
【0016】
動力線61はコイル部11に接続され、該コイル部11への交流電流を送る。センサ線62は磁極検知部12に接続され、該磁極検知部12とサーボアンプ40Aとの間の各種信号を伝送する。センサ線63はスケール検出部13に接続され、該スケール検出部13とサーボアンプ40Aとの間の各種信号を伝送する。通信線71~72は、サーボアンプ40A~40Dおよびコントローラ50を接続し、各種信号の伝送を行う。センサ線62~64および通信線71~72は、図1に示すような有線ケーブルなどのほか、無線通信に置き換えてもよい。
【0017】
図2Aは、固定子10Aを詳細に示している。図2Aに示すように、磁極検知部12は、第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121Cを備える。第1~第3磁極センサ121A~121Cは、それぞれ可動子20の複数の磁極対についての磁極を検知する。例えば、第1~第3磁極センサ121A~121Cは、磁極に応じたデジタル値を出力する。より詳細には、第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121Cは、N極を検知した場合にオフ論理信号(ロウレベル電圧)を出力し、S極を検知した場合にオン論理信号(ハイレベル電圧)を出力してもよく、あるいは、その逆でもよい。また、第1~第3磁極センサ121A~121Cは、可動子20の移動方向(移動路30が配置された方向)に、121A、121B、121Cの順番で配列されている。一方、第1~第3磁極センサ121A~121Cは、この逆の順番(121C、121B、121A)で配列されてもよい。第1~第3磁極センサ121A~121Cは、可動子20の移動によって約120度ずつ位相がずれた三相信号を出力するように配置されている。例えば、第1~第3磁極センサ121A~121Cは、ホール素子でそれぞれ構成されてもよい。この場合、第1~第3磁極センサ121A~121Cは、最後に検出した磁極に従った論理信号を保持し出力し続ける。
【0018】
図2Bは、磁極検知部12を詳細に示している。図2Bに示すように、第1磁極センサ121Aと第2磁極センサ121Bとの距離はL2であり、第2磁極センサ121Bと第3磁極センサ121Cとの距離はL3である。距離L2、L3は、第1~第3磁極センサ121A~121Cが可動子20の移動によって約120度ずつ位相がずれた三相信号を出力するように設定されている。距離L2と距離L3とはほぼ等しく、例えば約10mmでよい。なお、以下で第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121Cをまとめて磁極センサ121ともよぶ。
【0019】
磁極検知部12およびスケール検出部13は、固定子10Aの略同一箇所に設けられる。図2Aに示すように、筐体14上部に磁極検知部12が設けられ、筐体14中部にスケール検出部13が設けられる。これにより、磁極検知部12による複数の磁極対の検知と、スケール検出部13によるスケール部の読み取りとが略同一箇所から行われる。言い換えると、磁極検知部12による複数の磁極対を検知と、スケール検出部13によるスケール部の読み取りについての空間的/時間的な差異が低減される。したがって、サーボアンプ40Aは、精度よく可動子20Aの位置を認識することができる。また、可動子20の移動方向Y1、Y2におけるコイル部11の長さはL1であり、磁極対の数(g)に対応するの長さに設定されている。例えば、L1が1つの磁極対に対応する長さ(g=1)であり、後述するように、1の磁極対の長さが約30mmである場合、L1は約30mmである。
【0020】
図3は、可動子20Aを詳細に示している。可動子20Aは、目盛りを有するスケール部21と、複数の磁極対22とを備える。スケール部21の目盛りは、スケール検出部13により読み取られ、可動子20Aの位置情報としてスケール検出部13からサーボアンプ40Aへ出力される。スケール部21の目盛りを読み取る場合、スケール検出部13は赤外線やレーザーなどを用いてよい。複数の磁極対22は、それぞれ同一構成を有する磁極対221~227から構成されている。以下では磁極対221を用いて説明する。磁極対221は、互いに逆極性のN磁極部221NおよびS磁極部221Sを含む。N磁極部221Nは第1磁極部の例であり、S磁極部221Sは第2磁極部の例である。1対の磁極対の長さL6は、約30mmでよい。なお、図3では磁極対の数が7(M=7)であるが、本実施形態はこれに限られず磁極対の数(M)は任意である。
【0021】
可動子20Aにおいては、図3に示すように、複数の磁極対22が配列されており、N磁極部とS磁極部とが交互に配列されている。複数の磁極対22の配列の一端にはN磁極部221Nが配置され、他端にはS磁極部227Sが配置されている。
【0022】
スケール部21および複数の磁極対22は、それぞれ可動子20Aの移動方向(移動路30が配置された方向)に略平行に可動子20Aに設けられている。スケール部21の長さL4は、複数の磁極対22の配列の長さL5と同じかそれよりも長くてもよい。これにより、磁極検知部12が複数の磁極対22を検知した時点で、スケール検出部13がスケール部21の読み取りを行える状態であるため、精度よく可動子20Aの位置を認識することができる。
【0023】
図4は、固定子10A、可動子20A、および、移動路30を示している。磁極センサ121は、それぞれの対応する箇所にある磁極対の極性を検知する。そして、N極性を検知した場合はオフ論理信号(ロウレベル電圧)を出力し、S極性を検知した場合はオン論理信号(ハイレベル電圧)を出力する。オフ論理信号は第1論理信号の例であり、オン論理信号は第2論理信号の例である。図4では、第1磁極センサ221AはS磁極部221Sを検知しオン論理信号を出力し、第2磁極センサ221BはN磁極部221Nを検知しオフ論理信号を出力する。
【0024】
上述したように、1対の磁極対の長さL6は約30mmであるため、1対の磁極対の位相の1周期(360度)が約30mmとなる。一方、第1磁極センサ121Aと第2磁極センサ121Bとの間の距離L2は約10mmであり、第2磁極センサ121Bと第3磁極センサ121Cとの間の距離L3は約10mmであり、それぞれの磁極センサの間の距離は、1対の磁極対の長さL6の3分の1の長さである。このため、磁極センサ間の磁極の位相差は、360度÷3=120度となる。これにより磁極センサ121は、オン論理信号およびオフ論理信号を、約120度ずつ位相のずれた三相信号として出力する。
【0025】
可動子20Aは、移動路30を矢印Y1方向または矢印Y2方向へ移動する。矢印Y1方向は第1方向の例であり、矢印Y2方向は第2方向の例である。可動子20Aは、コイル部11が発生させた磁力を動力として移動するため、コイル部11と複数の磁極対22との間の距離D1は、磁極対221~227を通じて一定であることが好ましい。距離D1は、例えば、約1mmである。コイル部11は第1磁極センサ121Aの矢印Y2方向側に隣接して配置されている。
【0026】
可動子20Aが矢印Y1方向へ移動する場合は、第1~第3磁極センサ121A~121Cは、第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、第3磁極センサ121Cの順で、それぞれ複数の磁極対22を検知する。可動子20Aが矢印Y2方向へ移動する場合は、第1~第3磁極センサ121A~121Cは、第3磁極センサ121C、第2磁極センサ121B、第1磁極センサ121Aの順で、それぞれ複数の磁極対22を検知する。
【0027】
次にサーボアンプ40Aの動作について詳細に説明する。
【0028】
図5および図6を参照して、サーボアンプ40Aによる磁極センサ121の有効判断、および、可動子20Aの進入方向の判断について説明する。
【0029】
(可動子20Aが矢印Y1方向へ移動)
図5は、可動子20Aが矢印Y1方向へ移動するときの、それぞれの磁極センサが出力するオン論理信号/オフ論理信号の連続した波形を示すタイミング図である。図6は、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動するときの、それぞれの磁極センサが出力するオン論理信号/オフ論理信号の連続した波形を示すタイミング図である。図5および図6に示す、A相は第1磁極センサ121Aが出力する信号を示し、B相は第2磁極センサ121Bが出力する信号を示し、C相は第3磁極センサ121Cが出力する信号を示す。
【0030】
図5(a)は、搬送装置100の起動後に、可動子20Aが矢印Y1方向へ移動し、磁極センサ121に検知される場合を示す。なお、搬送装置100の起動直後(図5(a)における左端)は、初期状態としてA相~C相のいずれもがオフ論理信号を示すものとする。
【0031】
可動子20Aが矢印Y1方向に移動し、固定子10Aの上方へ進入してきた場合、N磁極部221Nが最初に第1磁極センサ121Aに検知される。従って、第1磁極センサ121Aは、図5(a)に示すように、オフ論理信号(オフ信号S1)を出力する。次に、N磁極部221Nが第2磁極センサ121Bに検知され、第2磁極センサ121Bはオフ論理信号(オフ信号S2)を出力する。次に、N磁極部221Nが第3磁極センサ121Cに検知され、第3磁極センサ121Cはオフ論理信号(オフ信号S3)を出力する。このとき、A相~C相の初期状態がオフ論理信号であるので、サーボアンプ40Aは、N磁極部221Nの通過を認識することができない。
【0032】
さらに、可動子20Aが、矢印Y1方向へ移動すると、S磁極部221Sが第1磁極センサ121Aに検知される。従って、第1磁極センサ121Aはオン論理信号(オン信号H1)を出力する(t1)。このとき、A相は、初期状態のオフ論理信号からオン論理信号へ立ち上がるのでので、サーボアンプ40Aは、S磁極部221Sが第1磁極センサ121A上を最初に通過していることを認識することができる。次に、S磁極部221Sが第2磁極センサ121Bに検知され、第2磁極センサ121Bはオン論理信号(オン信号H2)を出力する。次に、S磁極部221Sが第3磁極センサ121Cに検知され、第3磁極センサ121Cはオン論理信号(オン信号H3)を出力する。このように、S磁極部221Sが第1磁極センサ121A上を最初に通過することで、サーボアンプ40Aは、可動子20Aが矢印Y1方向へ移動していることを認識することができる。
【0033】
さらに、可動子20Aが、矢印Y1方向へ移動すると、磁極対222~227のN磁極部とS磁極部とが、磁極センサ121により交互に検知される。よって、図5(a)に示すように、オフ論理信号およびオン論理信号が交互に出力される。可動子20Aが、固定子10Aを矢印Y1方向へ通過した場合、S磁極部227Sが最後に検知される。従って、可動子20Aの通過後、A相~C相は、オン論理信号のままで終了している。
【0034】
サーボアンプ40Aは、第1~第3磁極センサ121A~121Cがオフ論理信号(オフ信号S1~S3)を出力している初期状態において、第1磁極センサ121Aの出力が最初にオン論理信号(オン信号H1)に変化したとき(t1)に、可動子20Aが矢印Y1方向へ移動していると判断し、第1移動情報を生成する。例えば、初期状態からA相が最初にオン論理信号に立ち上がった場合、サーボアンプ40Aは、S磁極部221Sが矢印Y1方向へ移動して、第1磁極センサ121A上を最初に通過していると判断できる。従って、このとき、サーボアンプ40Aは、可動子20Aが矢印Y1方向へ移動していることを示す第1移動情報を生成する。
【0035】
サーボアンプ40Aは、t1において第1移動情報の生成をすると同時に、第1磁極センサ121Aが可動子20Aを検出したことを受けて、センサ有効フラグを活性化する。センサ有効フラグは、第1フラグの例である。
【0036】
上述のように、サーボアンプ40Aは、最初のN磁極部221Nの通過を認識することができない。従って、サーボアンプ40Aは、最初の磁極部(N磁極部221N)によるオフ論理信号を受信したときでなく、2番目の磁極部(S磁極部221S)によるオン論理信号を受信したときに、可動子20Aの移動方向の判断(第1移動情報の生成)を行っている。
【0037】
図5(a)の動作は、搬送装置100の起動時だけでなく、可動子20Aが、矢印Y1方向に固定子10Aを通過した後、一旦、元の位置に戻って、再度、矢印Y1方向から固定子10Aへ進入する場合にも同様である。例えば、可動子20Aが、一旦、元の位置に戻る場合、N磁極部221Nが最後に固定子10Aを矢印Y2方向へ通過する。このとき、A相~C相は、初期状態と同様に、全てオフ論理信号になる。従って、その後、可動子20Aが、矢印Y1方向から固定子10Aへ再度進入するときには、図5(a)の動作と同じ動作が実行される。
【0038】
図5(b)は、可動子20Aが固定子10Aの上方を矢印Y1方向へ通過したのちに、別の可動子20(例えば、可動子20B)が矢印Y1方向へ移動し磁極センサ121に検知される場合を示す図である。
【0039】
可動子20Aが固定子10Aの上方を矢印Y1方向へ通過する際、S磁極部227Sが最後に検知される。従って、図5(b)に示すように、S磁極部227Sが第1~第3磁極センサ121A~121Cに順番に検知され、第1~第3磁極センサ121A~121Cは、全てオン論理信号(オン信号H4、H5、H6)を出力する。
【0040】
その後、次の可動子20Bが矢印Y1方向へ移動し、固定子10Aの上方へ進入してきた場合、可動子20BのN磁極部221Nが最初に第1磁極センサ121Aに検知される。従って、第1磁極センサ121Aは、図5(b)に示すように、オフ論理信号(オフ信号S4)を出力する。次に、N磁極部221Nが第2磁極センサ121Bに検知され、第2磁極センサ121Bはオフ論理信号(オフ信号S5)を出力する。次に、N磁極部221Nが第3磁極センサ121Cに検知され、第3磁極センサ121Cはオフ論理信号(オフ信号S6)を出力する。
【0041】
さらに可動子20Bが、矢印Y1方向へ移動した場合、S磁極部221Sが第1磁極センサ121Aに検知される。従って、第1磁極センサ121Aはオン論理信号(オン信号H7)を出力する。次に、S磁極部221Sが第2磁極センサ121Bに検知され、第2磁極センサ121Bはオン論理信号(オン信号H8)を出力する。次に、S磁極部221Sが第3磁極センサ121Cに検知され、第3磁極センサ121Cはオン論理信号(オン信号H9)を出力する。
【0042】
さらに、可動子20Bが、矢印Y1方向へ移動すると、磁極対222~227のN磁極部とS磁極部とが、磁極センサ121により交互に検知される。よって、図5(b)に示すように、オフ論理信号およびオン論理信号が交互に出力される。可動子20Bが、固定子10Aを矢印Y1方向へ通過した場合、可動子20BのS磁極部227Sが最後に検知される。従って、可動子20Bの通過後、A相~C相は、オン論理信号のままで終了している。
【0043】
したがって、図5(b)の場合においても、サーボアンプ40Aは、第1~第3磁極センサ121A~121Cがオフ論理信号(オフ信号S4~S6)を出力している状態において、第1磁極センサ121Aの出力が最初にオン論理信号(オン信号H7)に変化したとき(t3)に、可動子20Bが矢印Y1方向へ移動していると判断し、第1移動情報を生成する。
【0044】
サーボアンプ40Aは、第1移動情報の生成にあわせて、第1磁極センサ121Aが可動子20Bを検出したことを示すセンサ有効フラグを活性化する(t3)。
【0045】
(可動子20Aが矢印Y2方向へ移動)
図6(a)は、搬送装置100を起動した後に、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動し磁極センサ121に検知される場合を示す。あるいは、図6(a)は、可動子20Aが矢印Y2方向に通過したのちに、他の可動子20Bが矢印Y2方向に移動し磁極センサ121に検知される場合を示す。
【0046】
なお、搬送装置100の起動直後(図6(a)における左端)は、初期状態としてA相~C相のいずれもがオフ論理信号を示すものとする。また、可動子20Aが矢印Y2方向へ通過した場合、N磁極部221Nが磁極センサ121に最後に検知される。従って、A相~C相は全てオフ論理信号(オフ信号S7~S9)を示す。
【0047】
可動子20Aが矢印Y2方向に移動し、固定子10Aの上方へ進入してきた場合、S磁極部227Sが最初に第3磁極センサ121Cに検知される。従って、第3磁極センサ121Cは、図6(a)に示すように、オン論理信号(オン信号H10)を出力する。次に、S磁極部227Sが第2磁極センサ121Bに検知され、第2磁極センサ121Bはオン論理信号(オン信号H11)を出力する。次に、S磁極部227Sが第1磁極センサ121Aに検知され、第1磁極センサ121Aはオン論理信号(オン信号H12)を出力する。
【0048】
さらに、可動子20Aが、矢印Y2方向へ移動すると、N磁極部227Nが第3磁極センサ121Cに検知される。そして、第3磁極センサ121Cはオフ論理信号(オフ信号S10)を出力する。次に、N磁極部227Nが第2磁極センサ121Bに検知され、第2磁極センサ121Bはオフ論理信号(オフ信号S11)を出力する。次に、N磁極部227Nが第1磁極センサ121Aに検知され、第1磁極センサ121Aはオフ論理信号(オフ信号S12)を出力する。
【0049】
その後、可動子20Aが、矢印Y2方向へ移動すると、磁極対226~221のN磁極部とS磁極部とが、磁極センサ121により交互に検知される。よって、図6(a)に示すように、オフ論理信号およびオン論理信号が交互に出力される。可動子20Aが、固定子10Aを矢印Y2方向へ通過した場合、N磁極部221Nが最後に検知される。従って、可動子20Aの通過後、A相~C相は、オフ論理信号のままで終了している。これは、起動後の初期状態と同じである。従って、次の可動子20Bが矢印Y2方向へ移動して、固定子10Aに進入してきた場合にも、サーボアンプ40Aは、図6(a)の動作と同じ動作が実行される。
【0050】
サーボアンプ40Aは、第1~第3磁極センサ121A~121Cがオン論理信号(オン信号H10~H12)を出力している状態において、第3磁極センサ121Cの出力が最初にオフ論理信号(オフ信号S10)に変化したとき(t5)に、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動していると判断し、第2移動情報を生成する。
【0051】
サーボアンプ40Aは、第2移動情報の生成にあわせて、第3磁極センサ121Cが可動子20Aを検出したことを示すセンサ有効フラグを活性化する(t5)。
【0052】
図6(b)は、可動子20Aが固定子10Aの上方を矢印Y1方向へ通過したのちに、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動して磁極センサ121に、再度検知される場合を示す。例えば、可動子20Aが、矢印Y2方向に固定子10Aを通過した後、一旦、元の位置に戻って、再度、矢印Y2方向から固定子10Aへ進入する場合がある。このとき、可動子20Aが、一旦、元の位置に戻る場合、S磁極部227Sが最後に固定子10Aを矢印Y1方向へ通過する。このとき、A相~C相は、全てオン論理信号になる。従って、その後、可動子20Aが、矢印Y2方向から固定子10Aへ再度進入するときには、図6(b)の動作が実行される。
【0053】
可動子20Aが固定子10Aの上方を矢印Y1方向へ通過する際、S磁極部227Sが最後に検知される。従って、図6(b)に示すように、S磁極部227Sが第1~第3磁極センサ121A~121Cに順番に検知され、第1~第3磁極センサ121A~121Cは、全てオン論理信号(オン信号H13~H15)を出力する。
【0054】
その後、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動すると、N磁極部227Nが第3磁極センサ121Cに検知される。従って、第3磁極センサ121Cは、図6(b)に示すように、オフ論理信号(オフ信号S14)を出力する(t7)。このとき、C相は、初期状態のオン論理信号からオフ論理信号へ立ち下がるので、サーボアンプ40Aは、N磁極部227Nが第3磁極センサ121C上を最初に通過していることを認識することができる。次に、N磁極部227Nが第2磁極センサ121Bに検知され、第2磁極センサ121Bはオフ論理信号(オフ信号S15)を出力する。次に、N磁極部227Nが第1磁極センサ121Aに検知され、第1磁極センサ121Aはオフ論理信号(オフ信号S16)を出力する。このように、N磁極部221Nが第3磁極センサ121C上を最初に通過することで、サーボアンプ40Aは、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動していることを認識することができる。
【0055】
さらに、可動子20Aが、矢印Y2方向へ移動すると、磁極対226~221のN磁極部とS磁極部とが、磁極センサ121により交互に検知される。よって、図6(b)に示すように、オフ論理信号およびオン論理信号が交互に出力される。可動子20Aが、固定子10Aを矢印Y2方向へ通過した場合、N磁極部221Nが最後に検知される。従って、可動子20Aの通過後、A相~C相は、オフ論理信号で終了している。
【0056】
サーボアンプ40Aは、第1~第3磁極センサ121A~121Cがオン論理信号(オン信号H13~H15)を出力している状態において、第3磁極センサ121Cの出力が最初にオフ論理信号(オフ信号S14)に変化したとき(t7)に、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動していると判断し、第2移動情報を生成する。例えば、A相~C相がオン論理信号の状態からC相が最初にオフ論理信号に立ち下がった場合、サーボアンプ40Aは、N磁極部227Nが矢印Y2方向へ移動して、第3磁極センサ121C上を最初に通過していると判断できる。従って、このとき、サーボアンプ40Aは、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動していることを示す第2移動情報を生成する。
【0057】
サーボアンプ40Aは、第2移動情報の生成にあわせて、第3磁極センサ121Cが可動子20Aを検出したことを示すセンサ有効フラグを活性化する(t7)。
【0058】
次に図7を参照して、サーボアンプ40Aによる、スケール部21の検出の有効判断、および、可動子20Aの制御開始/制御終了の判断について説明する。
【0059】
(スケール部21の有効判断)
図7において、グラフIが、スケール検出部13により出力されるスケール検出値の積算値を示し、グラフIIが、サーボアンプ40Aにより生成されるセンサ有効フラグを示している。
【0060】
図7のグラフIの時刻VA1は、図4のスケール検出部13が、スケール部21を検出した最初の時刻である。例えば、図4の可動子20Aが矢印Y1方向に移動し、固定子10Aの上方へ進入してきた場合、スケール部21の一端E2が、図7の時刻VA1において、スケール検出部13により最初に検出される。また、図4の可動子20Aが矢印Y2方向に移動し、固定子10Aの上方へ進入してきた場合、スケール部21の一端E1が時刻VA1において、スケール検出部13により最初に検出される。
【0061】
図7のグラフIの時刻VA2は、図4のスケール検出部13が、スケール部21を検出した最後の時刻である。例えば、図4の可動子20Aが矢印Y1方向に移動し、固定子10Aの上方へ進入してきた場合、スケール部21の一端E1が時刻VA2において、スケール検出部13により最後に検出される。また、図4の可動子20Aが矢印Y2方向に移動し、固定子10Aの上方へ進入してきた場合、スケール部21の一端のE2が時刻VA2において、スケール検出部13により最後に検出される。
【0062】
このため、グラフIにおいて時刻VA1~時刻VA2の間の時間VAにおいて、スケール部21がスケール検出部13により検出されている。サーボアンプ40Aは、図7に示すように、時間VAにおけるスケール検出値を積算する。
【0063】
次に、グラフIIの時刻VB1は、サーボアンプ40Aが、スケール部21の位置情報を有効にした時刻である。すなわち、図5において、サーボアンプ40Aが第1移動情報を生成しセンサ有効フラグを活性化した時刻t1、t3である。また図6において、サーボアンプ40Aが第2移動情報を生成しセンサ有効フラグを活性化した時刻t5、t7である。
【0064】
グラフIIの時刻VB2は、サーボアンプ40Aが、スケール部21の位置情報を無効にした時刻である。例えば、図5において、第3磁極センサ121CがS磁極部227Sを検知した時刻である。また図6において、第1磁極センサ121AがN磁極部221Nを検知した時刻である。この時刻VB2において、サーボアンプ40Aはセンサ有効フラグを不活性化する。
【0065】
このため、グラフIIにおいて時刻VB1~時刻VB2の間の時間VBにおいて、センサ有効フラグが活性化されている。サーボアンプ40Aは、センサ有効フラグが活性化されている時間VBにおいて、スケール検出部13による検出されているスケール部21の位置情報を有効とする。言い換えると、サーボアンプ40Aは、スケール部21がスケール検出部13により読み取られており、かつ、複数の磁極対22が第1~第3磁極センサ121A~121Cにより検知されている期間において、スケール部21の位置情報を有効とする。このように、第1~第3磁極センサ121A~121Cで可動子20Aを検知している期間において、スケール検出部13からの位置情報を有効とすることで、サーボアンプ40Aは、可動子20Aの位置情報を精度よく認識することができる。
【0066】
(可動子20Aの制御開始/制御終了の判断)
次に、サーボアンプ40Aによる、可動子20Aの制御開始/制御終了の判断について説明する。
【0067】
可動子20Aが、図4および図5で示すように、矢印Y1方向に移動して固定子10Aの上方へ進入してきた場合、サーボアンプ40Aは、第1移動情報を生成し、センサ有効フラグを活性化する(t1)。次に、第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121Cのいずれもがオン論理信号を出力したとき(t2)、モータ電気角が決定される。すなわちt2においては、可動子20Aの移動方向が決定しており(第1移動情報)、スケール検出部13によるスケール部21が読み取られており、かつ、コイル部11のモータ電気角が決定している。このとき、コイル部11に供給する交流電流により発生する推力により、可動子20Aの正確な制御が可能となる。これにより、サーボアンプ40Aによる可動子20Aの制御が可能となり、第1制御指令を活性化する。即ち、磁極検知部12のセンサ有効フラグが活性化され、かつ、モータ電気角が決定したときに(t2)、サーボアンプ40Aによる可動子20Aの制御が可能となり、サーボアンプ40Aは第1制御指令を活性化する。
【0068】
第1制御指令の活性化後、コイル部11に供給する交流電流により発生する推力により、可動子20Aが矢印Y1方向へ移動する。その後、可動子20Aがサーボアンプ40Aの制御を受けて磁極検知部12上を通過していき、第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121CのいずれもがS磁極部226Sを検知してオン論理信号を出力したときに、サーボアンプ40Aは第1制御指令を不活性化する。
【0069】
可動子20Aが矢印Y1方向へ移動する場合、可動子20Aは、コイル部11上を通過した後に、磁極検知部12によって検知される。従って、最後の磁極対227が、磁極検知部12上を通過するときには、コイル部11上をすでに通過済みであり、サーボアンプ40Aは可動子20Aを制御することができない。このような場合、矢印Y1方向におけるコイル部11の長さL1に対応する磁極対22の数gを考慮して、磁極検知部12が最後の磁極対227の検出からg個だけ手前の磁極対22を検出したときに、サーボアンプ40Aは第1制御指令を不活性化すればよい。
【0070】
また、磁極検知部12のセンサ有効フラグが活性化され、かつ、モータ電気角が決定されるまでに、1つの磁極対22(221)が磁極検知部12上を通過する必要がある。従って、可動子20Aの制御可能な期間(第1制御指令を活性化してから不活性にするまでの期間)は、(M-g-1)個の磁極対22が磁極検知部12上を通過する期間となる。言い換えると、第1~第3磁極センサ121A~121Cが、(M-g-1)回(Mは可動子20Aに配設された磁極対22の数、gは可動子20Aの矢印Y1方向におけるコイル部11の長さに対応する磁極対22の数)のオン論理信号を出力したときに、サーボアンプ40Aは第1制御指令を不活性化する。
【0071】
例えば、図1および図2Aに示すように、M=7、g=1である場合、第1~第3磁極センサ121A~121Cが、第1移動情報を生成後、5回目のオン論理信号を出力するS磁極部226Sを検知したときに、サーボアンプ40Aは第1制御指令を不活性化する。即ち、磁極検知部12が、5つの磁極対222~226を検知したときに、サーボアンプ40Aは第1制御指令を不活性化する。これにより、サーボアンプ40Aは、可動子20Aの制御を適時に開始し、適時に終了させることができる。その結果、可動子20Aの高精度な制御および消費電力の低減につながる。
【0072】
可動子20Aが矢印Y1方向へ移動する場合、磁極対227を第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121Cが検知しているときには、可動子20Aの磁極対は、すでにコイル部11の上方を通過しており、コイル部11の上方には存在しない。このため、コイル部11からの推力では可動子20Aの制御が困難となる。したがって、1つの磁極対221が磁極検知部12を通過して可動子20Aの制御が開始された後、全ての磁極対の数(M)からコイル部11の長さに対応する磁極対22の数(g)を差し引いた数(M-g-1)の磁極対がコイル部11上を通過したときに、可動子20Aの制御を終了する。これにより、コイル部11の上方にいずれかの磁極対が存在するときに、コイル部11は、可動子20Aの移動を有効的かつ効率的に制御することができる。この場合、コイル部11の消費電力も抑制され得る。
【0073】
なお、上記のほか、予め設定された回数のオン論理信号を、第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121Cが出力したときに、第1制御指令を不活性化することでサーボアンプ40Aによる、可動子20Aの制御を終了してもよい。
【0074】
一方、可動子20Aが、図6で示すように、矢印Y2方向に移動して固定子10Aの上方へ進入してきた場合、サーボアンプ40Aは、第2移動情報を生成し、センサ有効フラグを活性化する(t5)。次に、第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121Cのいずれもがオフ論理信号を出力したとき(t6)、モータ電気角が決定される。すなわちt6においては、可動子20Aの移動方向が決定しており(第2移動情報)、スケール検出部13によるスケール部21が読み取られており、かつ、コイル部11のモータ電気角が決定している。これにより、サーボアンプ40Aによる可動子20Aの制御が可能となり、第2制御指令を活性化する。即ち、磁極検知部12のセンサ有効フラグが活性化され、かつ、モータ電気角が決定したときに(t6)、サーボアンプ40Aによる可動子20Aの制御が可能となり、サーボアンプ40Aは第2制御指令を活性化する。
【0075】
第2制御指令の活性化後、コイル部11からの推力により、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動する。その後、可動子20Aが磁極検知部12上を通過していき、第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121CのいずれもがN磁極部221Nを検知してオフ論理信号を出力したときに、サーボアンプ40Aは第2制御指令を不活性化する。
【0076】
可動子20Aが矢印Y2方向へ移動する場合、可動子20Aは、磁極検知部12によって検知された後に、コイル部11上を通過する。従って、磁極対221が、磁極検知部12上を通過した後でも、コイル部11上を通過するまでは、コイル部11は、可動子20Aを制御することができる。よって、第2制御指令の不活性化のタイミングには、コイル部11の長さに対応する磁極対22の数gを考慮する必要はない。即ち、可動子20Aの制御可能な期間(第2制御指令を活性化してから不活性にするまでの期間)は、(M-1)個の磁極対22が磁極検知部12上を通過する期間となる。
【0077】
また、磁極検知部12のセンサ有効フラグが活性化され、かつ、モータ電気角が決定されるまでに、1つの磁極対22(227)が磁極検知部12上を通過する必要がある。従って、可動子20Aの制御可能な期間(第2制御指令を活性化してから不活性にするまでの期間)は、(M-1)個の磁極対22が磁極検知部12上を通過する期間となる。言い換えると、第1~第3磁極センサ121A~121Cが、(M-1)回のオフ論理信号を出力したときに、サーボアンプ40Aは第2制御指令を不活性化する。 例えば、図1に示すように、M=7である場合、第1~第3磁極センサ121A~121Cが、第2移動情報生成後、6回目のオフ論理信号を出力するN磁極部221Nを検知したときに、サーボアンプ40Aは第2制御指令を不活性化する。即ち、磁極検知部12が、6つの磁極対226~221を検知したときに、サーボアンプ40Aは第2制御指令を不活性化する。これにより、サーボアンプ40Aは、可動子20Aの制御を適時に開始し、適時に終了させることができる。その結果、可動子20Aの高精度な制御および消費電力の低減につながる。
【0078】
尚、上述のとおり、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動する場合、磁極対221を第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121Cが検知しているときは、コイル部11の上方には磁極対22が存在する。このため、可動子20Aの制御が可能である。したがって、最後の磁極対(磁極対221)を検知しているときまで、可動子20Aの移動を制御することができる。
【0079】
なお、上記のほか、予め設定された回数のオフ論理信号を、第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121Cが出力したときに、第2制御指令を不活性化することでサーボアンプ40Aによる、可動子20Aの制御を終了してもよい。
【0080】
以上のように、第1実施形態に係る搬送装置100によれば、複数の可動子20に磁極対22およびリニアスケールを設け、固定子10に磁極検知部12およびスケール検出部13を設ける。磁極検知部12が可動子20を検知して所定の信号を出力したときに、コントローラ50は、可動子20の移動方向を判断し、磁極検知部12の有効性を判断する。さらに、磁極検知部12の全ての(例えば、3つの)磁極センサが磁極対を検出したときに、電気角が決定される。これにより、サーボアンプ40Aによる可動子20の制御が可能となり、制御指令を活性化する。
【0081】
可動子20の制御が可能になると、リニアスケールおよびスケール検出部13により精度の高い位置決めが可能となる。これにより、複数の可動子20を正確に制御することができる。また、それぞれの可動子20にスケール部21が設けられているため、移動路30の全体に渡ってスケール部21を設ける必要が無くなる。このため、搬送装置100の設置コストを低減することができる。
【0082】
(搬送装置100の制御方法)
次に、搬送装置100の制御方法を図8~10を参照して説明する。
【0083】
図8は、サーボアンプ40Aによる、磁極センサ121の有効に係る判断、および、可動子20Aの移動方向に係る判断を説明するフローチャートである。尚、図8図10のフローは、コントローラ50およびサーボアンプ40Aによって周期的に繰り返されているものとする。
【0084】
まず、サーボアンプ40Aは、第1~第3磁極センサ121A~121Cの全てがオン論理信号、または、オフ論理信号を出力しているかを確認する(ステップS10)。第1~第3磁極センサ121A~121Cの全てがオン論理信号、または、オフ論理信号を出力している場合(ステップS10:Yes)、第1~第3磁極センサ121A~121C上に、可動子20Aが存在していないと判断する(磁極センサ断線)。これは、起動時の初期状態または可動子20の通過後の状態を示している。
【0085】
一方、第1~第3磁極センサ121A~121Cのいずれかが異なる論理信号を出力している場合(ステップS10:No)、第1~第3磁極センサ121A~121Cのいずれかの上に、可動子20Aが存在すると判断する。
【0086】
次に、サーボアンプ40Aは、磁極センサ121の有効か否か(センサ有効フラグが活性状態か否か)について判断する(ステップS12)。例えば、図5に示すようにサーボアンプ40Aが第1移動情報をすでに生成している(t1またはt3以降の状態)ならば、可動子20Aの移動方向(矢印Y1方向)はすでに決定されており、センサ有効フラグはすでに活性状態になっている。従って、サーボアンプ40Aは、可動子20Aの移動方向を判断せずに、磁極センサ121は有効と判断する(ステップS12:Yes)。また、図6に示すようにサーボアンプ40Aが第2移動情報をすでに生成している(t5またはt7以降の状態)ならば、可動子20Aの移動方向(矢印Y2方向)はすでに決定されており、センサ有効フラグはすでに活性状態になっている。従って、サーボアンプ40Aは、可動子20Aの移動方向を判断せずに、磁極センサ121は有効と判断する(ステップS12:Yes)。
【0087】
一方、サーボアンプ40Aが第1移動情報または第2移動情報を生成していないならば、その時点において、センサ有効フラグは不活性状態であり、まだ活性状態になっていない。これは、磁極センサ121はまだ有効でないことを意味する(ステップS12:No)。
【0088】
次に、サーボアンプ40Aは、第1~第3磁極センサ121A~121Cのうち第1磁極センサ121Aのみがオン論理信号を出力しているかを判断する(ステップS14)。第1~第3磁極センサ121A~121Cのうち第1磁極センサ121Aのみがオン論理信号を出力している場合(ステップS14:Yes)、サーボアンプ40Aは、可動子20Aが矢印Y1方向へ移動していると判断し(ステップS15)、第1移動情報を生成する。さらに、サーボアンプ40Aは、磁極センサ121が有効と判断しセンサ有効フラグを活性化する。
【0089】
第1磁極センサ121Aがオン論理信号を出力していない場合(ステップS14:No)、サーボアンプ40Aは、第1~第3磁極センサ121A~121Cのうち第3磁極センサ121Cのみがオフ論理信号を出力しているかを判断する(ステップS16)。第1~第3磁極センサ121A~121Cのうち第3磁極センサ121Cのみがオフ論理信号を出力している場合(ステップS16:Yes)、サーボアンプ40Aは、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動していると判断し(ステップS17)、第2移動情報を生成する。さらに、サーボアンプ40Aは、磁極センサ121が有効と判断しセンサ有効フラグを活性化する。
【0090】
第3磁極センサ121Cがオフ論理信号を出力していない場合(ステップS16:No)、サーボアンプ40Aは第1磁極センサ121A、第2磁極センサ121B、および、第3磁極センサ121C上に、可動子20Aが存在していないと判断する(磁極センサ断線)。
【0091】
このように、サーボアンプ40Aは、磁極センサ121の有効性に係る判断、および、可動子20Aの移動方向に係る判断をすることができる。第1~第3磁極センサ121A~121Cがオフ論理信号を出力している状態において、第1磁極センサ121Aが最初にオン論理信号を出力した場合、サーボアンプ40Aは、矢印Y1方向の第1移動情報を生成し、センサ有効フラグを活性化する。
また、第1~第3磁極センサ121A~121Cがオン論理信号を出力している状態において、第3磁極センサCが最初にオフ論理信号を出力した場合、サーボアンプ40Aは、矢印Y2方向の第2移動情報を生成し、センサ有効フラグを活性化する。
【0092】
次に、図9は、サーボアンプ40Aによる、スケール部21の読取情報に係る判断、および、制御座標の更新に係る判断を説明するフローチャートである。制御座標とは、サーボアンプ40Aが可動子20Aを制御するために用いる座標である。
【0093】
まず、サーボアンプ40Aは、スケール部21が断線しているか否かを判断する(ステップS20)。スケール部21の断線とは、スケール検出部13によりスケール部21が読み取りできるか否かを意味している。従って、可動子20が固定子10上にない場合、スケール検出部13は、スケール部21を読み取れないので、断線状態である。スケール部21が断線している場合(ステップS20:Yes)、サーボアンプ40Aは、スケール部21の読取情報を無効とし、制御座標をクリアする。
【0094】
スケール部21が断線していない場合(ステップS20:No)、サーボアンプ40Aは、スケール部21の読取情報の有効性を判断するために、磁極センサ121が有効か否か(センサ有効フラグ)について判断する(ステップS22)。例えば、磁極センサ121がすでに有効(センサ有効フラグが活性状態)ならば(ステップS22:Yes)、スケール部21の読取情報(スケール情報)を有効のまま維持し、制御座標を更新する。この制御座標は、可動子20Aの位置情報として用いられ、可動子20Aの高精度な制御に利用され得る。スケール情報とは、スケール部21の目盛りの読み取り情報である。制御座標とは、スケール情報を処理して、可動子20Aの制御に用いるために変換した座標である。
【0095】
一方、磁極センサ121が無効(センサ有効フラグが不活性状態)ならば(ステップS22:No)スケール部21の読取情報を有効としつつも、制御座標をクリアする。読取情報(スケール情報)は有効として積算されるが、可動子20の制御座標としては用いられない。
【0096】
このように、サーボアンプ40Aは、スケール部21の読取情報の有効性に係る判断、および、制御座標の更新に係る判断をすることができる。サーボアンプ40Aが第1移動情報または第2移動情報を生成しセンサ有効フラグを活性化している期間において、スケール検出部13により検出されているスケール部21の位置情報(スケール情報)とし、かつ、可動子20の制御座標を有効に更新する。
【0097】
次に、図10は、サーボアンプ40Aによる、可動子20Aの制御開始/制御終了に係る判断を説明するフローチャートである。
【0098】
まず、サーボアンプ40Aは、その時点で可動子20Aを制御しているか否かを判断する(ステップS30)。サーボアンプ40Aが可動子20Aの制御中である場合(ステップS30:Yes)、サーボアンプ40Aは、磁極センサ121の有効か否か(センサ有効フラグの活性状態)について判断する(ステップS32)。例えば、可動子20が固定子10を通過して直後、センサ有効フラグが不活性状態になった場合(ステップS32:No)、磁極センサ121は無効となり、制御が終了する。
【0099】
センサ有効フラグが活性状態であり、磁極センサ121が有効と判断した場合(ステップS32:Yes)、サーボアンプ40Aは、制御座標が最大座標より大きいか否かを判断する(ステップS34)。例えば、サーボアンプ40Aは、スケール検出部13からの読取情報(スケール情報)から可動子20の制御座標を演算し、この制御座標を予め設定された最大座標と比較する(S34)。最大座標は、矢印Y1またはY2方向の可動子20の長さによって決まっており、図3のスケールの長さL4にほぼ等しくてよい。
【0100】
制御座標が最大座標以上の場合(ステップS34:Yes)、サーボアンプ40Aは、可動子20が固定子10を通過してすでに制御できない位置にあると判断し、可動子20Aの制御を終了する。
【0101】
一方、制御座標が最大座標より小さい場合(ステップS34:No)、サーボアンプ40Aは、可動子20が依然として固定子10の上に存在していると判断し、可動子20Aの制御を継続する。
【0102】
ステップS30において、サーボアンプ40Aが可動子20Aを制御していない場合(ステップS30:No)、サーボアンプ40Aは、磁極センサ121の有効か否か(センサ有効フラグの活性状態)について判断する(ステップS36)。例えば、可動子20が固定子10に進入した直後、制御がまだ開始されていない状態において、センサ有効フラグが活性状態になった場合(ステップS36:Yes)、サーボアンプ40Aは、モータ電気角が決定済みか否かを判断する(ステップS38)。モータ電気角がすでに決定されている場合(ステップS38:Yes)、可動子20Aは制御可能状態にあるので、サーボアンプ40Aは可動子20Aの制御を開始する。これにより、次の周期において、サーボアンプ40Aは、制御中となり、ステップS30のYesへと処理を進める。
【0103】
一方、ステップS36において、可動子20がまだ固定子10に進入しておらず、センサ有効フラグが不活性状態である場合(ステップS36:No)、サーボアンプ40Aは、制御開始を待機する。
【0104】
また、ステップS38において、センサ有効フラグが活性状態であるが、まだモータ電気角が決定されていない場合(ステップS36:No)、サーボアンプ40Aは、可動子20が固定子10に進入した直後であり、可動子20Aの制御はまだ可能でないと判断し、制御開始を待機する。
【0105】
このように、サーボアンプ40Aは、可動子20Aの制御開始/制御終了を判断することができる。
【0106】
サーボアンプ40Aは、可動子20Aが矢印Y1またはY2方向へ移動することを示す移動情報を生成し、磁極検知部12が磁極対を検出したことを示すセンサ有効フラグを活性化し、さらに、第1~第3磁極センサ121A~121Cがオン論理信号(またはオフ論理信号)を出力してモータ電気角が判明したときに、可動子20Aの制御が可能になったと判断する。このとき、サーボアンプ40Aは、コイル部11に磁力を発生させる制御指令を活性化する。制御指令の活性化により、サーボアンプ40Aは、スケール検出部13によるスケール情報に基づいて可動子20Aの制御座標を特定し、かつ、コイル部11による可動子20Aの制御を有効にする。これにより、サーボアンプ40Aは、可動子20Aの位置を正確に認識し、高精度に制御することができる。
【0107】
サーボアンプ40Aは、制御指令の活性化後、第1~第3磁極センサ121A~121Cが予め設定された回数のオン論理信号(またはオフ論理信号)を出力したときに、第1制御指令を不活性化する。予め設定された回数は、可動子20Aが図4の矢印Y1方向に移動している場合には、(M-g-1)回であり、矢印Y2方向に移動している場合には、(M-1)回である。
【0108】
これにより、複数の可動子20が固定子10上を往来する場合であっても、サーボアンプ40Aは、複数の可動子20を正確に制御することができる。複数の可動子20のそれぞれにスケール部21が設けられているので、移動路30の全体に渡ってスケール部21を設けられている搬送装置と同等の精度にて、複数の可動子20の位置決めをすることができる。
【0109】
(具体例)
次に、第1実施形態の具体例を図11~13を参照して説明する。
【0110】
図11は、可動子20Aが矢印Y1方向に移動した場合の実測値を示す図である。図12の上方から、第2磁極センサ121B、第1磁極センサ121A、および、第3磁極センサ121Cのオン論理信号/オフ論理信号の波形を示している。グラフIはスケール検出部13により出力されるスケール検出値の積算値を示し、グラフIIは制御中フラグの活性化/不活性化を示し、グラフIIIは矢印Y2方向への移動フラグを示し、および、グラフIVはセンサ有効フラグを示している。
【0111】
可動子20Aが矢印Y1方向に移動し、固定子10Aの上方に進入してきた場合、図11に示すように、N磁極部221Nを第1~第3磁極センサ121A~121Cが検知し、第1磁極センサ121Aがオフ論理信号(オフ信号S17)、第2磁極センサ121Bがオフ論理信号(オフ信号S18)、第3磁極センサ121Cがオフ論理信号(オフ信号S19)をそれぞれ出力する。このとき、第1~第3磁極センサ121A~121Cの出力の論理信号は、搬送装置100の起動後の初期状態と同じであるので、サーボアンプ40Aは、第1~第3磁極センサ121A~121CがN磁極部221Nを検知していることを認識できない。
【0112】
次に、第1磁極センサ121Aの出力が最初にオン論理信号(オン信号H16)に変化した場合(t9)に、可動子20Aが矢印Y1方向へ移動していると判断し、第1移動情報を生成する。すなわち、図12のグラフIV(センサ有効フラグ)が活性化され、グラフIII(矢印Y2方向への移動フラグ)は不活性状態を維持する。
【0113】
次に、第1~第3磁極センサ121A~121Cの全てがオン論理信号(オン信号H16~H18)を1度出力したときに(t10)、モータ電気角が決定される。すなわちt10においては、可動子20Aの移動方向が決定しており(第1移動情報)、スケール検出部13によるスケール部21が読み取られており、かつ、コイル部11のモータ電気角が決定している。これにより、サーボアンプ40Aによる可動子20Aの制御が可能となり、第1制御指令を活性化されるため、グラフIIの制御中フラグが活性化される。そして、可動子20Aが矢印Y1方向へ移動し、所定の距離を移動したとき(t11)、第1制御指令を不活性化されるため、グラフIIの制御中フラグが不活性化される。
【0114】
図12は、可動子20Aが矢印Y2方向に移動した場合の実測値を示す図である。図12と同様に、図13の上方から、第2磁極センサ121B、第1磁極センサ121A、および、第3磁極センサ121Cのオン論理信号/オフ論理信号の波形を示している。グラフIはスケール検出部13により出力されるスケール検出値の積算値を示し、グラフIIは制御中フラグの活性化/不活性化を示し、グラフIIIは矢印Y2方向への移動フラグを示し、および、グラフIVはセンサ有効フラグを示している。
【0115】
可動子20Aが矢印Y2方向に移動し、固定子10Aの上方に進入してきた場合、図13に示すように、S磁極部227Sを第1~第3磁極センサ121A~121Cが検知し、第3磁極センサ121Cがオン論理信号(オン信号H19)、第2磁極センサ121Bがオン論理信号(オン信号H20)、第1磁極センサ121Aがオン論理信号(オン信号H21)をそれぞれ出力する。このとき、サーボアンプ40Aは、第1~第3磁極センサ121A~121CがS磁極部227Sを検知していることを認識できるものの、図12の場合と合わせてここでは、第2移動情報を生成しない。
【0116】
次に、第3磁極センサ121Cの出力が最初にオフ論理信号(オフ信号S20)に変化した場合(t12)に、可動子20Aが矢印Y2方向へ移動していると判断し、第2移動情報を生成する。すなわち、図13のグラフIV(センサ有効フラグ)が活性化され、グラフIII(矢印Y2方向への移動フラグ)も活性化される。
【0117】
次に、矢印Y2方向へ移動する場合、サーボアンプ40Aは、可動子20Aが所定の座標に移動、または、(M-2)番目の磁極対から第2制御指令を活性化させるため、グラフIIの制御中フラグが活性化される(t13)。ここで図4に示すようにM=7であるため、5番目の磁極対(磁極対225)からグラフIIの制御中フラグが活性化されている。そして、可動子20Aが矢印Y1方向へ移動し、スケール部21の検出されなくなったとき(t14)、第2制御指令を不活性化されるため、グラフIIの制御中フラグが不活性化される。
【0118】
図13は、磁極検知部12の一例を詳細に示している。図13に示すように、第1~第3磁極センサ121A~121Cは、第2磁極センサ121B、第1磁極センサ121A、第3磁極センサ121Cの順で配列されている。このように、第1~第3磁極センサ121A~121Cの配列順は任意でよい。
【0119】
第2磁極センサ121Bと第1磁極センサ121Aとの距離はL7であり、第1磁極センサ121Aと第3磁極センサ121Cとの距離はL8である。距離L7と距離L8とはほぼ等しく、例えば約5mmでよい。すなわち、図2Bの距離L2および距離L3の約半分の距離でよい。
【0120】
上記を言い換えると、実測例の第1磁極センサ121Aは、図2Bの第1磁極センサ121Aと比べ、第2磁極センサ121B側へ約15mm移動している。これにより、磁極センサ121のぞれぞれは、第2磁極センサ121B、第1磁極センサ121A、第3磁極センサ121Cの順で配列されることになる。また、第1磁極センサ121Aが約15mm移動することにより、1対の磁極対22の距離L1(約30mm)の半分の距離を移動したことになる。したがって、第1磁極センサ121Aが検知する位相が360度÷2=180度ずれることになる。このため図13の磁極検知部12は、図2Bの磁極検知部12と同様の効果が得られるとともに、図2Bの磁極検知部12の半分の大きさとなるため省スペースを図ることができる。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0122】
100…搬送装置、10(10A~10D)…固定子、11…コイル部、12…磁極検知部、121(121A~121C)…磁極センサ、13…スケール検出部、14…筐体、20(20A~20B)…可動子、21…スケール部、22…複数の磁極対、222~227…磁極対、221N~227N…N磁極部、221S~227S…S磁極部、30…移動路、40(40A~40D)…サーボアンプ(制御部)、50…コントローラ(制御部)、61…動力線、62~64…センサ線、71~72…通信線、H1~H21…オン信号、S1~S20…オフ信号
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13