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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042390
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/16 20060101AFI20240321BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H02K1/16 Z
H02K15/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147073
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】菅野 利寛
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601CC01
5H601DD01
5H601DD11
5H601FF02
5H601FF06
5H601GA02
5H601GC12
5H601GD02
5H601GD07
5H601GD19
5H615AA01
5H615BB01
5H615PP01
5H615PP07
5H615PP10
5H615SS03
(57)【要約】
【課題】電磁鋼板の打ち抜き金型の摩耗を抑制しつつ、モータコアの磁気特性の悪化を抑制するモータを提案する。
【解決手段】実施形態に係るモータは、回転可能なロータと、ロータの動力を発生させるステータとを備える。ステータは、リング形状を有する第1コアであって、該リング形状の内周から外周へ向かう第1方向へ窪んだ複数の第1嵌合部を内周に有する第1コアと、第1コアよりも小さなリング形状を有する第2コアであって、第1嵌合部と嵌合する第2嵌合部を先端部に有し第1方向に放射状に延伸する複数の第1突出部を外周に有する第2コアとを備える。第1突出部は、第2嵌合部と該第2嵌合部以外の根元部とを有し、第2嵌合部近傍の根元部の両側部に、リング形状の周方向に略楔型に窪んだ切欠部を有する。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なロータと、前記ロータの動力を発生させるステータとを備えるモータであって、
前記ステータは、
リング形状を有する第1コアであって、該リング形状の内周から外周へ向かう第1方向へ窪んだ複数の第1嵌合部を内周に有する第1コアと、
前記第1コアよりも小さなリング形状を有する第2コアであって、前記第1嵌合部と嵌合する第2嵌合部を先端部に有し前記第1方向に放射状に延伸する複数の第1突出部を外周に有する第2コアとを備え、
前記第1突出部は、前記第2嵌合部と該第2嵌合部以外の根元部とを有し、前記第2嵌合部近傍の前記根元部の両側部であるに、前記リング形状の周方向に略楔型に窪んだ切欠部を有する、モータ。
【請求項2】
前記根元部の両側部における第1側部にある第1切欠部は、
前記第1側部において前記第2嵌合部と前記根元部との境界部の近傍に位置する第1変曲点と、
前記第1側部から最も窪んでいる位置にある第2変曲点と、
前記第1側部において前記第1変曲点よりも前記第2嵌合部から離れて位置する第3変曲点とを、それぞれ頂点とする略楔型である、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記根元部の両側部における前記第1側部の反対側の第2側部にある第2切欠部は、
前記第2側部において前記境界部の近傍に位置する第4変曲点と、
前記第2側部から最も窪んでいる位置にある第5変曲点と、
前記第2側部において前記第4変曲点よりも前記第2嵌合部から離れて位置する第6変曲点とを、それぞれ頂点とする略楔型である、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第1切欠部は、前記第2変曲点と前記第3変曲点との間に、前記第1方向に対して傾斜する第1稜部を有しており、
前記第1側部と前記第1稜部との間の傾斜角は、150度~180度である、請求項2または3に記載のモータ。
【請求項5】
前記第2切欠部は、前記第5変曲点と前記第6変曲点との間に、前記第1方向に対して傾斜する第2稜部を有しており、
前記第2側部と前記第2稜部との間の傾斜角は、150度~180度である、請求項3に記載のモータ。
【請求項6】
前記第2変曲点と前記第5変曲点との間の距離は、
前記第1変曲点と前記第4変曲点との間の距離、または、前記第3変曲点と前記第6変曲点との間の距離の0.9倍~1倍である、請求項3に記載のモータ。
【請求項7】
前記第1~6変曲点における前記第1および第2切欠部の形状はそれぞれ円弧状である、請求項3に記載のモータ。
【請求項8】
前記第1嵌合部は、窪みの両側において、前記第1コアの内周上に位置する第7および第8変曲点を備え、
前記第1変曲点と前記第7変曲点とが当接し、および、前記第4変曲点と前記第8変曲点とが当接し、
前記第7変曲点および前記第8変曲点における前記第1嵌合部は、それぞれ略直角または鈍角の形状を有する、請求項3に記載のモータ。
【請求項9】
前記ステータは、
前記第1コアと前記第2コアとを嵌合させた複数のコア対を、前記第1方向と前記第1コアのリング形状の周方向とに略直交する第2方向へ、積層した積層体と、
前記積層体における前記第1突出部が積層された部分に巻きつけられたコイルとを備える、請求項1に記載のモータ。
【請求項10】
前記ロータは、前記積層体のリング形状の中心に配置され、該積層体の中心を軸として回転可能に設けられる、請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
前記第1コアおよび前記第2コアは、電磁鋼板からなる請求項1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
インナーコアおよびアウターコアからなる、2分割コア方式のモータコアが知られている。インナーコアおよびアウターコアは電磁鋼板から打ち抜いて形成されるため、電磁鋼板の高速加工時には打ち抜き金型が摩耗することがある。また、打ち抜き金型の摩耗を抑制するためにインナーコアおよびアウターコアの勘合部(マッチング部分)の形状を変更すると、モータコアの磁気特性を悪化させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-136590号公報
【特許文献2】特開2004-343939号公報
【特許文献3】特開2018-29421号公報
【特許文献4】特開2018-46696号公報
【特許文献5】国際公開2018/11950号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、電磁鋼板の打ち抜き金型の摩耗を抑制しつつ、モータコアの磁気特性の悪化を抑制するモータを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るモータは、回転可能なロータと、ロータの動力を発生させるステータとを備える。ステータは、リング形状を有する第1コアであって、該リング形状の内周から外周へ向かう第1方向へ窪んだ複数の第1嵌合部を内周に有する第1コアと、第1コアよりも小さなリング形状を有する第2コアであって、第1嵌合部と嵌合する第2嵌合部を先端部に有し第1方向に放射状に延伸する複数の第1突出部を外周に有する第2コアとを備える。第1突出部は、第2嵌合部と該第2嵌合部以外の根元部とを有し、第2嵌合部近傍の根元部の両側部に、リング形状の周方向に略楔型に窪んだ切欠部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】第1実施形態に係るモータを示す概略構成図である。
図1B】第1実施形態に係るモータを示す概略構成図である。
図2A】第1実施形態に係る第1コアを示す構成図である。
図2B】第1実施形態に係る第2コアを示す構成図である。
図2C】第1実施形態に係る第1コアおよび第2コアを嵌合させたコア対を示す構成図である。
図2D図2Cの領域Cを拡大して示す図である。
図2E図2Dの領域Dを拡大して示す図である。
図3A】第1実施形態に係るモータの製造工程を示す図である。
図3B図3Aに続く、第1実施形態に係るモータの製造工程を示す図である。
図3C図3Bに続く、第1実施形態に係るモータの第2コアの製造工程を示す図である。
図3D図3Bに続く、第1実施形態に係るモータの第1コアの製造工程を示す図である。
図4】切欠部を有しない従来例に係る、第1コアおよび第2コアを嵌合させたコア対を示す部分拡大図である。
図5】切欠部を有する従来例に係る、第1コアおよび第2コアを嵌合させたコア対を示す部分拡大図である。
図6A】第1実施形態の第1例に係る、第1コアおよび第2コアを嵌合させたコア対を示す部分拡大図である。
図6B】第1実施形態の第2例に係る、第1コアおよび第2コアを嵌合させたコア対を示す部分拡大図である。
図6C】第1実施形態の第3例に係る、第1コアおよび第2コアを嵌合させたコア対を示す部分拡大図である。
図7】インナーコアの切り欠き量とモータのトルク減少率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0008】
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
(モータ1の構成)
図1Aおよび図1Bは、第1実施形態に係るモータ1の構成を示す概略図である。モータ1の内部構造を説明するために、図1Aは、モータ1の上部半分(AA線より上方)を断面図で図示し、図1Bも、モータ1の上部半分(BB線より上方)を断面図で図示している。
【0010】
図1Aに示すように、モータ1は、ロータコア10と、ステータコア20と、ロータ軸30と、ベアリング40と、筐体50とを備える。なお、本実施形態のモータ1はインナーロータ型のモータであり、ステータコア20の径方向内側にロータコア10が位置し、ロータコア10の径方向内側にロータ軸30が位置する。
【0011】
ロータコア10は、ステータコア20およびロータ軸30と同軸のリング形状に形成される。ロータコア10内にはロータ軸30が配置されており、ロータ軸30はロータコア10に固定される。このため、ロータコア10およびロータ軸30は、一体として回転可能である。以下では、ロータコア10とロータ軸30とを合わせて、ロータとも呼ぶ。
【0012】
ステータコア20は、ロータコア10と同様にリング形状に形成され、ロータが回転するための動力を発生させる。この動力は、例えば磁力である。ステータコア20は、図1Bに示すように、アウターコア21、インナーコア22、および、コイル23を備える。アウターコア21は第1コアの例であり、インナーコア22は第2コアの例である。ステータコア20は、アウターコア21およびインナーコア22からなる2分割コアである。上記の磁力(動力)を発生させるために、図1Bに示すように、インナーコア22にコイル23を巻き付け、コイル23に電流を流してもよい。効率的に磁力を発生させるために、ステータコア20は電磁鋼板から構成されることが望ましい。なお、図示していないが、インナーコア22とコイル23との間には絶縁性材料を配置し、ステータコア20とコイル23との電気的接触を抑制することが望ましい。アウターコア21およびインナーコア22の構成は、後に詳細に説明する。
【0013】
なお、図1Aが示すように、ロータコア10およびステータコア20はいずれも積層コアを構成する。すなわちロータ軸30の長手方向に複数のステータコア20を積層して、積層体としてのステータコアを構成する。同様にロータ軸30の長手方向に複数のロータコア10を積層して、積層体としてのロータコアを構成する。すなわちステータコアは、インナーコアとアウターコアと(いずれも後述)を嵌合させたコア対を積層した積層体である。以下では、1つのロータコアおよび積層体としてのロータコアを、いずれもロータコア10と呼ぶ。同様に、1つのステータコアおよび積層体としてのステータコアを、いずれもステータコア20と呼ぶ。
【0014】
ロータ軸30は、上述のように、ロータコア10の径方向の内側に配置される。ロータ軸30とロータコア10とが一体として効率的に回転するために、ロータ軸30はロータコア10のリング形状の中心に配置されることが望ましい。すなわち、ロータ軸30の回転軸とロータコア10の回転軸とが同軸となることが望ましい。なお、ロータ軸30の長手方向の長さは、ロータコア10の積層方向の長さよりも長い。すなわちロータ軸30は、ロータコア10の積層体を貫通し、該積層体の外部に突出するシャフト状に形成される。
【0015】
ベアリング40は、ロータ軸30の径方向外側から、ロータ軸30を回転可能に保持する。図1Aに示すように、2つのベアリング40が対となり、2箇所でロータ軸30を保持する。なおベアリング40は、ステータコア20の積層体から突出した部分を保持することが望ましい。ステータコア20の積層体の外部にベアリング40が位置することで、ステータコア20が発生させる磁力(動力)が、より効率的にロータに伝導(伝動)される。
【0016】
筐体50は、ステータコア20の径方向外側から、ステータコア20を固定するように保持する。なお筐体50は、ステータコア20が発生させる磁力をモータ1の外部に放射させない材料で構成されることが望ましい。さらに筐体50は、モータ1の内部構造を外部からの衝撃や塵芥から保護するため、外部からの物理的な力、および、外部の環境(例えば、温度および湿度)の変化に耐えうる材料であることが望ましい。
【0017】
図1Bは、モータ1を筐体50側から、ロータ軸30の軸方向に見た図である。上述したように、ステータコア20は、アウターコア21、インナーコア22、および、コイル23を備えている。なおコイル23は、インナーコア22の突出部が積層された部分に巻き付けられている。すなわち、図1Bに示すように、インナーコア22は複数の突出部を有しており、コイル23はそれぞれの突出部に巻き付けられることが望ましい。これにより、比較的多数のコイル23が磁力を発生させるため、より大きな動力が得られる。
【0018】
(アウターコア21の構成)
次に、図2Aを参照してアウターコア21について詳細に説明する。
【0019】
アウターコア21は、リング形状を有しており、複数の嵌合部211A~211Lと、複数のカシメ部212A~212Fを備える。嵌合部211A~211Lはそれぞれ同一の構成であり、カシメ部212A~212Fもそれぞれ同一の構成である。このため、以下では嵌合部211Aおよびカシメ部212Aを説明する。
【0020】
嵌合部211Aは、アウターコア21の内周側に位置しており、内周から外周に向かう方向(矢印Y1方向)に窪んで形成される。矢印Y1方向は第1方向の例である。嵌合部211Aにインナーコア22の突出部が嵌合し、一体としてのステータコア20が形成される。嵌合部211Aの窪みは、インナーコア22が安定的に嵌合する深度を有することが望ましい。嵌合部211Aとインナーコア22が安定して嵌合することで、ステータコア20の内部分離が抑制され、ステータコア20が安定的に磁力を発生することができる。図2Aでは、12箇所の嵌合部211A~211Lが図示されているが、嵌合部の数は任意である。例えば、アウターコア21が、多数の嵌合部を備える場合、アウターコア21とインナーコア22とが嵌合する箇所が多くなり、アウターコア21とインナーコア22とが安定的に嵌合する効果が得られる。
【0021】
カシメ部212Aは、該アウターコア21と別のアウターコア21とを連結させる。上述したように、複数のアウターコア21が積層され、積層体のアウターコアが形成される。カシメ部212Aは、この積層の際に別のアウターコア21のカシメ部212Aと連結する。これにより、該アウターコア21と別のアウターコア21とを安定的に積層させる。図2Aでは、6箇所のカシメ部212A~212Fが図示されているが、カシメ部の数は任意である。例えば、アウターコア21が、多数のカシメ部を備える場合、アウターコが多くのカシメ部で連結し、アウターコア21がより安定的に積層される効果が得られる。また、隣接するカシメ部212の間の距離は、それぞれ略同一であることが望ましい。すなわち、カシメ部212が略同一の間隔でアウターコア21に配置されることで、アウターコア21を積層(連結)させた際における応力が、周上に均一に分散される。これにより、アウターコア21が安定的に積層され、アウターコア21の内部分離を抑制する効果が得られる。
【0022】
(インナーコア22の構成)
次に、図2Bを参照してインナーコア22について詳細に説明する。
【0023】
インナーコア22は、アウターコア21よりも小さなリング形状を有しており、複数の突出部221A~221Lを外周に放射状に備える。突出部221A~221Lは同一の構成を有するため、以下では突出部221Aを説明する。なお、突出部221A~221Lは第1突出部の例である。
【0024】
突出部221Aは、インナーコア22の外周上に位置しており、矢印Y1方向に延伸するように構成されている。突出部221Aは、嵌合部2211、根元部2212、および、鉄心部2213を備える。嵌合部2211は、突出部221Aの先端部に位置しており、嵌合部211Aと嵌合する。このため嵌合部2211は、嵌合部211Aと略同一の形状を有する。根元部2212は、突出部221Aの根元部分に位置する。鉄心部2213は、根元部2212に位置しており、例えば鉄で構成される。上述したコイル23は、根元部2212であり、かつ、鉄心部2213を覆うように巻き付けられる。コイル23の中心に鉄心部2213が存在することで、コイル23が発生させる磁力が強まり、ステータコア20が発生させる動力が強まる効果が得られる。
【0025】
なお、突出部221Aは、鉄心部2213に代えて、または、鉄心部2213に加えて、カシメ部を備えていてもよい。突出部221Aがカシメ部を備える場合、インナーコア同士がカシメ部で連結し、インナーコアが安定的に積層される効果が得られる。
【0026】
また、インナーコア22の内周側にロータコア10およびロータ軸30が位置する(図2Bでは図示せず)。したがって、突出部221Aの矢印Y1方向の長さL1が長いほど、インナーコア22のリング形状の内径(半径R22)が短くなり、ロータコア10およびロータ軸30が位置する領域が狭くなる。このため、突出部221Aの長さL1は、ロータコア10およびロータ軸30を配置し得る半径R22を確保しつつ、コイル23を巻き付け得る長さであることが望ましい。
【0027】
図2Bに示すように、インナーコア22は12個の突出部221を備えるが、突出部221の数は任意である。ただし嵌合部2211が、アウターコア21のそれぞれの嵌合部211に嵌合するため、嵌合部211と同数であることが望ましい。このため、多数の突出部221(嵌合部211)が存在すると、アウターコア21とインナーコア22が安定的に嵌合できるとともに、多数の根元部2212が存在する。これにより、多数のコイル23を突出部221(根元部2212)に巻き付けることができる。したがって、ステータコア20は比較的強力な磁力を得ることができ、ステータコア20が発生させる動力が強まる効果が得られる。
【0028】
(アウターコア21とインナーコア22との嵌合)
次に、図2Cはアウターコア21とインナーコア22とが嵌合した状態を図示している。図2Cに示すように、インナーコア22のリング形状の半径R22は、アウターコア21のリング形状の半径R21よりも小さい。これにより、アウターコア21の内周の嵌合部211に、インナーコア22の嵌合部2211が嵌合する。なお、図2Cに示すように、嵌合部211(嵌合部2211)は、リング形状の周上に略等間隔に形成されることが望ましい。すなわち、嵌合部が略同一間隔に形成されることで、アウターコア21とインナーコア22との嵌合が容易となる。図2Cでは、嵌合部211Aに突出部221Aの嵌合部2211が嵌合してステータコア20が構成されている。本実施形態のように嵌合部が略同一間隔で形成される場合、例えば、嵌合部211Bに突出部221Aの嵌合部2211が嵌合してもステータコア20が構成され得る。これにより、アウターコア21とインナーコア22との嵌合によるステータコア20の構成が容易となる。
【0029】
(インナーコア22の切欠部)
次に、図2Dおよび図2Eを参照して、インナーコア22における切欠部について詳細に説明する。図2Dは、図2Cの領域Cを拡大して図示しており、アウターコア21とインナーコア22との嵌合している状態を詳細に図示している。図2Eは、図2Dの領域Dを拡大して図示しており、インナーコア22の切欠部を詳細に図示している。
【0030】
図2Dに示すように、突出部221Aは第1側部S1を有する。この第1側部S1において、嵌合部2211と根元部2212との境界部近傍には、切欠部N1が位置する。この切欠部N1の形状は、変曲点P1、P2、および、P3によって定まる。変曲点P1~P3は第1側部S1上に存在する。この変曲点P1~P3において、第1側部S1の曲率や延伸する方向が変化する。なお、後述するように、変曲点は、第1側部S1の反対側の第2側部S2にも存在する(変曲点P4、P5、および、P6)。加えて、アウターコア21の嵌合部211Aにも存在する(変曲点P7、および、P8)。
【0031】
切欠部N1は、第1側部S1を矢印+Y2方向(インナーコア22の周方向)に略楔型に窪ませた形状を有する。この切欠部N1近傍においては、アウターコア21の嵌合部211Aと、インナーコア22の嵌合部2211との精緻な嵌合(マッチング)が求められる。詳細には、嵌合部2211の変曲点P1と、嵌合部211Aの変曲点P7とが当接してマッチングする必要がある。このため切欠部N1は、変曲点P1と変曲点P7とが当接しないこと(ミスマッチ)を抑制するための逃がし形状として機能する。この逃がし形状は、例えば、変曲点P1と変曲点P7とが上下に重なるなどして、ステータコア20の同一平面上で当接しないことを抑制する。逃がし形状があることで、変曲点P1と変曲点P7とが当接する際の若干の余裕(遊び)ができ、上記のように変曲点同士が上下に重なることが抑制され、ミスマッチが抑制される。
【0032】
したがって、この逃がし形状は、第1側部S1の反対側の第2側部S2にも形成されることが望ましい。具体的には、第2側部S2において、嵌合部2211と根元部2212との境界部近傍には、切欠部N2が位置する。切欠部N1と同様に、この切欠部N2の形状は、変曲点P4、P5、および、P6によって定まる。切欠部N2は、第2側部S2を矢印-Y2方向(インナーコア22の周方向)へ略楔型に窪んだ形状を有する。切欠部N2近傍においては、嵌合部2211の変曲点P4と、嵌合部211Aの変曲点P8とが当接してマッチングする。切欠部N2は、このマッチングの際におけるミスマッチを抑制する。
【0033】
一方で、切欠部N1および切欠部N2の存在は、根元部2212の矢印Y1方向に垂直な面における面積の減少を招く。コイル23が磁界を発生させている際に、根元部2212の面積が減少すると、根元部2212の磁束密度が上昇する。すなわち、発生した磁界の大きさが変化しないまま根元部2212の面積が減少すると、根元部2212における単位面積当たりの磁束(磁束密度)が上昇する。そして、根元部2212の磁束密度の上昇はステータコア20の磁気特性を悪化させ、基準トルク比の減少などのモータ1の特性を悪化させる。したがって、切欠部N1および切欠部N2の過度な拡大を抑制する必要がある。
【0034】
このため切欠部N1は、図2Dに示すように略楔型形状を有する。すなわち、切欠部N1は、嵌合部2211と根元部2212の境界部近傍に位置する変曲点P1と、最も窪んでいる位置にある変曲点P2と、変曲点P1よりも嵌合部2211から離れて位置する変曲点P3とを、それぞれ頂点として結んだ楔型形状を有している。この楔型形状を有することで、変曲点P1と変曲点P7が当接する部分に逃がし形状を確保しつつ、この逃がし形状が不要な部分では根元部2212を過度に切り欠くことを抑制する。すなわち、根元部2212の面積の減少による、根元部2212の磁束密度の上昇を抑制する。このため、本実施形態の切欠部N1は、ミスマッチの抑制、および、ステータコア20の磁気特性の悪化の抑制についての効果を有する。なお、同様に、切欠部N2も略楔型形状を有する。すなわち、切欠部N2は、嵌合部2211と根元部2212の境界部近傍に位置する変曲点P4と、最も窪んでいる位置にある変曲点P5と、変曲点P1よりも嵌合部2211から離れて位置する変曲点P6とを、それぞれ頂点として結んだ楔型形状を有している。このため、切欠部N2もミスマッチの抑制、および、ステータコア20の磁気特性の悪化の抑制についての効果を有する。
【0035】
なお、切欠部N1および切欠部N2の切り欠く量は、各変曲点間の距離により定めることができる。すなわち、根元部2212の各変曲点間における幅で定められる。図2Dに示すように、切欠部が存在しない部分の幅を幅W1とすると、切欠部が存在する部分の幅W2は、幅W1の0.9倍~1倍である。ここで、幅W1は変曲点P1から変曲点P4までの距離であり、幅W2は変曲点P2から変曲点P5までの距離である。上記の範囲における切欠部N1および切欠部N2の切り欠き量によれば、ミスマッチの抑制、および、ステータコア20の磁気特性の悪化の抑制の効果がより促進される。なお、幅W3は変曲点P3から変曲点P6までの距離であり、幅W3は幅W1と同一であってもよい。このため、幅W2は、幅W3の0.9倍~1倍となる。
【0036】
次に、図2Eは、切欠部N1の近傍をさらに詳細に図示している。
【0037】
図2Eに示すように、切欠部N1は、変曲点P2と変曲点P3との間に稜部R1を有する。稜部R1は、第1稜部の例である。上述したように、切欠部N1は略楔型形状を有するため、稜部R1は矢印Y1方向に対して傾斜している。この傾斜する角度、すなわち、稜部R1と第1側部S1とが交差する角度θ2は150度~180度である。言い換えると、変曲点P3における角度θ2は150度~180度である。角度θ2がこの範囲にあることで、切欠部N1が過度に根元部2212を切り欠くことを抑制する。すなわち、ステータコア20の磁気特性の悪化を抑制する。なお、図2Eに示すように、変曲点P2は円弧状に形成されており、切欠部N1はティアドロップ形状を有する。これにより、切欠部N1による根元部2212の切り欠きをさらに抑制し、よりステータコア20の磁気特性の悪化を抑制する。同様に、変曲点P1および変曲点P3も円弧状の形状を有してもよい。
【0038】
図2Eでは図示していないが、切欠部N2も切欠部N1と同様の形状を有することが望ましい。すなわち、変曲点P5と変曲点P6との間に稜部(第2稜部)を有し、この稜部と第2側部S2とが交差する角度は150~180度である。言い換えると、変曲点P6の角度は150~180度である。これにより、切欠部N2が過度に根元部2212を切り欠くことを抑制し、ステータコア20の磁気特性の悪化を抑制する。また、変曲点P4~P6についても円弧状に形成され、切欠部N2もティアドロップ形状を有することが望ましい。
【0039】
また、図2Eに示すように、アウターコア21の変曲点P7の角度θ1は、略直角または鈍角である。言い換えると、変曲点P7にバリが存在しないため、変曲点P7のバリを除去する必要が無く、アウターコア21の製造工程における金型の摩耗の抑制、および、アウターコア21の材料の切片(電磁鋼板の切片)を巻き込むことによる金型の故障の抑制の効果が得られる。同様の理由から、アウターコア21の変曲点P8の角度θ3も、略直角または鈍角であり、変曲点P8においてもバリが存在しないことが望ましい。このバリの抑制については、図3A図3Dを参照して説明する。
【0040】
(アウターコア21およびインナーコア22の製造工程)
図3A図3Dは、本実施形態のアウターコア21およびインナーコア22の製造工程の一例を示している。ステータコア20は、アウターコア21とインナーコア22とからなる2分割コアである。製造工程では1つのプレートPL1を金型などで打ち抜き、アウターコア21およびインナーコア22を形成する。
【0041】
図3Aには、打ち抜き前のプレートPL1を示し、プレートPL1の上方にはアウターコア21を形成する領域、および、プレートPL1の下方にはインナーコア22を形成する領域がそれぞれ示されている。
【0042】
次に図3Bには、図3Aに続く製造工程を示している。図3Bに示すように、プレートPL1から領域E1、E2、および、Fを打ち抜いている。この領域E1を打ち抜く工程において、アウターコア21の変曲点P7が形成され、インナーコア22には切欠部N1が形成される。言い換えると、インナーコア22に切欠部N1が形成されるように、ティアドロップ形状の凸部が設けられた金型により、領域E1を打ち抜いている。これにより、アウターコア21の変曲点P7が打ち抜きの端部とならず、変曲点P7にバリが発生しない。これにより、変曲点P7のバリを除去する工程が不要となり、上述したように、金型の摩耗の抑制および電磁鋼板の切片を巻き込むことによる金型の故障の抑制の効果が得られる。
【0043】
なお領域E2についても同様であり、アウターコア21の変曲点P8が形成され、インナーコア22には切欠部N2が形成される。言い換えると、インナーコア22に切欠部N2が形成されるように、ティアドロップ形状の凸部を設けられた金型により、領域E2を打ち抜いている。これにより、変曲点P8にバリが発生せず、金型の摩耗の抑制および電磁鋼板の切片を巻き込むことによる金型の故障の抑制の効果が得られる。
【0044】
次に図3Cおよび図3Dには、図3Bに続く製造工程を示している。この製造工程において、図3Cに示すインナーコア22、および、図3Dに示すアウターコア21に、プレートPL1をそれぞれ分割する。これにより、2分割コア方式のステータコア20の形成が可能となる。すなわち、この製造工程において、図3Cに示すように、ティアドロップ形状の切欠部N1およびN2が設けられた、インナーコア22が得られる。なお、図3Cには図示していないが、インナーコア22の突出部221Aにはコイル23が巻き付けられる。詳細には、嵌合部2211から根元部2212へ、コイル23を挿入して巻き付ける。したがって、コイル23の巻き付ける幅は根元部2212の幅W3と略同一であることが望ましい。ここで上述したように、嵌合部2211と根元部2212との境界部の幅W1、および、根元部2212の幅W3は略同一である。したがって、コイル23の幅を幅W3(幅W1)とすることで、コイル23が嵌合部2211に引っ掛かることなく、コイル23を根元部2212まで挿入することができ、コイル23の安定的な巻き付けが可能となる。
【0045】
一方で、図3Dに示すように、プレートPL1を分割することにより、嵌合部211Aが設けられたアウターコア21が得られる。なお、ティアドロップ形状の凸部が設けられた金型によって形成された変曲点P7、および、P8にはバリが存在しない。また、上述したように、インナーコア22の変曲点P1、および、変曲点P4にもバリが存在しない。このため、図3Cおよび図3Dに示す、インナーコア22とアウターコア21とを嵌合させた際に、変曲点P1とP7との間のミスマッチ、および、変曲点P4とP8との間のミスマッチが抑制される。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、インナーコア22は略楔型形状に窪んだ切欠部を有する。これにより、アウターコア21とインナーコア22とを嵌合させる際のミスマッチを抑制することができる。また、切欠部が略楔型形状を有することで、根元部2212を過度に切り欠くことを抑制し、ステータコア20の磁気特性の悪化を抑制することができる。さらに、切欠部形状を有する金型により、アウターコア21およびインナーコア22を製造することで、アウターコア21のバリ除去の工程を省略できる。これにより、金型の摩耗の抑制、および、切片の巻き込みによる金型の故障の抑制の効果が得られる。
【0047】
(切欠部N1およびN2の形状とモータ1のトルク減少率との関係)
図4図7を参照して、切欠部N1およびN2の形状と、モータ1のトルク減少率との関係について説明する。以下では、主に切欠部N1を用いて説明するが、切欠部N2についても、切欠部N1と同様の構成および効果を有する。
【0048】
図4および図5は、従来例のアウターコア21およびインナーコア22を嵌合させたコア対の一部を示している。
【0049】
図4のインナーコア22には、切欠部N1が存在しない。このため、インナーコア22の第1側部S1とアウターコア21の変曲点P7とが同一平面で当接せず、上述のミスマッチが発生する可能性が比較的高い。以下では、図4のインナーコア22を従来例1とも呼ぶ。
【0050】
図5のインナーコア22には、切欠部N1が存在する。これにより、インナーコア22とアウターコア21とのミスマッチは抑制し得る。しかしながら、図5の切欠部N1は、変曲点P1、P2、P9、および、P3を頂点とする略矩形の形状を有しており、ティアドロップ形状を有する第1実施形態(図6A図6C)の切欠部N1よりも面積が広い。比較的面積が広い切欠部N1は、根元部2212の面積を減少させる。これにより上述したように、モータ1の磁気特性の悪化、すなわち、モータ1のトルク値の減少を招いてしまう。以下では、図5のインナーコア22を従来例2とも呼ぶ。
【0051】
図6A図6Cは、第1実施形態のアウターコア21およびインナーコア22を嵌合させたコア対の一部をそれぞれ示している。図6A図6Cのインナーコア22では、切欠部N1の形状(切り込み量)がそれぞれ異なる。以下では、図6Aを実施例1、図6Bを実施例2、図6Cを実施例3とも呼ぶ。
【0052】
図6Aの実施例1は、変曲点P3の角度θ2が約170度であり、変曲点P1から変曲点P3までは距離L1であり、変曲点P1から変曲点P2までは距離L2である、ティアドロップ形状を有している。ティアドロップ形状を有していることで、実施例1は従来例2よりも、切欠部N1の面積が小さい。これにより実施例1は、インナーコア22とアウターコア21とのミスマッチの抑制、および、モータ1の磁気特性の悪化の抑制を両立させている。
【0053】
以下では、実施例2および実施例3の切欠部N1の形状を、実施例1の切欠部N1の形状と比較してそれぞれ説明する。
【0054】
図6Bの実施例2についてもティアドロップ形状を有している。具体的には、実施例2は、変曲点P3の角度θ2が約170度であり、図6Aの角度θ2と同等である。一方で、変曲点P1から変曲点P3までは距離L3であり、距離L1よりも小さい(例えば、距離L3=距離L1×0.25)。変曲点P1から変曲点P2までは距離L4であり、距離L2よりも小さい(例えば、距離L4=距離L2×0.25)。このため、実施例2の面積は、実施例1の面積よりも小さい。すなわち、実施例2は、実施例1よりも、切り込みの深さ(変曲点P1から変曲点P2までの距離)が小さいため面積が小さい。このため、実施例2は、インナーコア22とアウターコア21とのミスマッチの抑制しつつ、モータ1の磁気特性の悪化をより抑制することができる。
【0055】
図6Cの実施例3についてもティアドロップ形状を有している。具体的には、実施例3は、変曲点P3の角度θ2が約150度であり、図6Aの角度θ2よりも小さい。変曲点P1から変曲点P3までは距離L5であり、距離L1よりも小さい(例えば、距離L5=距離L1×0.3)。一方で、変曲点P1から変曲点P2までは距離L2であり、実施例1の変曲点P1から変曲点P2までは距離と同等である。このため、実施例3の面積は、実施例1の面積よりも小さい。具体的には、実施例3は、実施例1よりも、切り込みの角度(変曲点P3の角度θ2)が小さいため面積が小さい。このため、実施例3は、インナーコア22とアウターコア21とのミスマッチの抑制しつつ、モータ1の磁気特性の悪化をより抑制することができる。
【0056】
以上のように、図6A図6Cの実施例1~実施例3は、切欠部N1がティアドロップ形状を有することで、いずれもインナーコア22とアウターコア21とのミスマッチの抑制しつつ、モータ1の磁気特性の悪化を抑制する効果を有する。
【0057】
図7は、インナーコア22の切り欠き量(切欠部N1およびN2の形状)とモータ1のトルク減少率との関係を示している。
【0058】
図7において、点A、G、T1~T7を結ぶグラフ(円でプロットしたグラフ)は、切り込みの深さ(変曲点P1から変曲点P2までの距離)を変化させ、切り欠き量を変化させた場合のトルク減少率を示す。切り込みの深さは、点T1が最も大きく、点T2~点T6になるにつれて小さくなり、点T7が最も小さい。点A、G、C1~C6を結ぶグラフ(四角形でプロットしたグラフ)は、切り込みの角度(角度θ2)を変化させ、切り欠き量を変化させた場合のトルク減少率を示す。切り込み角度は、点C1が最も大きく、点C2~点C5になるにつれて小さくなり、点C6が最も小さい。
点Aは切欠部無しの従来例1に対応し、点Gは従来例2に対応する。点T1および点C2は実施例1に対応し、点T7は実施例2に対応し、点C6は実施例3に対応する。トルク減少率とは、切欠部無しのトルク値(従来例1)に対して、切欠部有りのトルク値(従来例2、実施例1~3等)の減少率を示している。このため、点A(従来例1)は基準として、トルク減少率が0.0%を示している。
【0059】
点G(従来例2)は、矩形形状の切欠部N1を有しており、従来例2,実施例1~3の切欠部N1の中で最も面積が大きい。したがって、点Gの切欠部N1は、根元部2212の矢印Y1方向に垂直な面における面積を最も減少させ、根元部2212の磁束密度を最も上昇させる。これにより、点Gのモータ1の磁気特性は悪化し、トルク減少率が-1.2%と最も大きくなる。
【0060】
点T1および点C2は(実施例1)は、点Gよりも切欠部N1の面積が小さいため、点T1および点C2の根元部2212の磁束密度は、点Gの根元部2212の磁束密度よりも小さい。このため、点T1および点C2のモータ1の磁気特性は、点Gよりも向上しトルク減少率が-0.8%となる。
【0061】
点T7は、点T1よりも切欠部N1の面積が小さいため、点T7の根元部2212の磁束密度は、点T1の根元部2212の磁束密度よりも小さい。このため、点T7のモータ1の磁気特性は、点T1よりも向上しトルク減少率が-0.1%となる。
【0062】
点C6は、点C2よりも切欠部N1の面積が小さいため、点C2の根元部2212の磁束密度は、点C6の根元部2212の磁束密度よりも小さい。このため、点C6のモータ1の磁気特性は、点C2よりも向上しトルク減少率が-0.5%となる。
【0063】
点T2~点T6についても、点Gよりも切欠部N1の面積が小さいため、点T2~点T6の根元部2212の磁束密度は、点Gの根元部2212の磁束密度よりも小さい。このため、点T2~点T6のモータ1の磁気特性は、点Gよりも向上し、それぞれトルク減少率が-0.6%~-0.15%となる。
【0064】
同様に、点C1,点C3~点C5についても、点Gよりも切欠部N1の面積が小さいため、点C1,点C3~点C5の根元部2212の磁束密度は、点Gの根元部2212の磁束密度よりも小さい。このため、点C1,点C3~点C5のモータ1の磁気特性は、点Gよりも向上し、それぞれトルク減少率が-1.05%~-0.5%となる。
【0065】
図7の各グラフが示すように、切欠部N1の面積が小さくなるにつれ、トルク減少率は0.0%に近づき、モータ1の特性が向上する。上述したように、切欠部N1の面積を小さくするためには、切り込み深さを深くしてもよく、切り込み角度を小さくしてもよい。これにより、モータ1の内部構造に応じて、切欠部N1のティアドロップ形状を変更することもできる。すなわち、本実施形態では、ティアドロップ形状を変更しても、インナーコア22とアウターコア21とのミスマッチの抑制、および、モータ1の磁気特性の悪化を抑制する効果が得られる。
【0066】
なお、図7のトルク減少率の数値範囲(-1.5%~0.0%)は、本実施形態を説明するための便宜的な目安である。すなわち、根元部2212において切欠部N1が占める割合が変化(インナーコア22の寸法自体が変化)することにより、トルク減少率の数値範囲が変化してもよい。トルク減少率の数値範囲が変化しても、図7の各グラフに示すように、切欠部N1の面積が小さくなるにつれ、トルク減少率は0.0%に近づく傾向は変わらない。このため引き続き、モータ1の特性が向上する効果が得られるとともに、インナーコア22とアウターコア21とのミスマッチが抑制される効果が得られる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1…モータ、10…ロータコア、20…ステータコア、21…アウターコア、22…インナーコア、23…コイル、30…ロータ軸、40…ベアリング、50…筐体、211(A~L)…嵌合部、212(A~F)…カシメ部、221(A~L)…突出部、2211…嵌合部、2212…根元部、2213…鉄心部、N1、N2…切欠部、L1~L5…距離、P1~P8…変曲点、PL1…プレート、R1…稜部、R21…アウターコアの半径、R22…インナーコアの半径、S1、S2…側部、W1~W3…幅
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7