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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042391
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】中空糸膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20240321BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20240321BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20240321BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D69/08
B01D69/00
B01D71/02 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147075
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】390005407
【氏名又は名称】AGCエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小貫 真哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA02
4D006HA18
4D006JA13A
4D006JA13C
4D006JA14A
4D006JA15A
4D006JA25A
4D006JA25B
4D006JA25C
4D006JA62A
4D006JA62C
4D006JA70A
4D006JB06
4D006MA01
4D006MA12
4D006MA21
4D006MA22
4D006MA31
4D006MA33
4D006MA34
4D006MC03X
4D006MC18
4D006MC28
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC58
4D006MC59
4D006MC62
4D006MC63
4D006MC65
4D006NA50
4D006PA01
4D006PB17
4D006PB65
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、高耐久性を有しつつ、製造コストが増大することを抑制できる中空糸膜モジュールを提供できる。
【解決手段】本発明の中空糸膜モジュールは、軸線方向に沿って延び、前記軸線方向の両側に開口する筒状のケースと、前記ケースの内部に充填され、前記ケースの軸線方向の第1端から第2端まで延在する複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束と、前記ケースの内周面に接着され、複数本の前記中空糸膜同士の間と、前記中空糸膜束と前記ケースとの間を封止する樹脂製の封止材と、を備える。前記ケースは、前記軸線方向の両側に開口する筒状のケース本体部と、前記ケース本体部の表面のうち少なくとも前記ケース本体部の内周面に設けられる第1多孔質膜と、を有する。前記ケース本体部は、金属製である。前記封止材は、前記第1多孔質膜に接着される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延び、前記軸線方向の両側に開口する筒状のケースと、
前記ケースの内部に充填され、前記ケースの軸線方向の第1端から第2端まで延在する複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束と、
前記ケースの内周面に接着され、複数本の前記中空糸膜同士の間と、前記中空糸膜束と前記ケースとの間を封止する樹脂製の封止材と、を備え、
前記ケースは、前記軸線方向の両側に開口する筒状のケース本体部と、前記ケース本体部の表面のうち少なくとも前記ケース本体部の内周面に設けられる第1多孔質膜と、を有し、
前記ケース本体部は、金属製であり、
前記封止材は、前記第1多孔質膜に接着される、中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記ケース本体部は、アルミニウム製であり、
前記第1多孔質膜は、多孔性を有するアルミニウム酸化被膜である、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記第1多孔質膜は、前記ケース本体部の表面全体に設けられる、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記第1多孔質膜は、前記ケース本体部の内周面のうち、前記封止材が接着される部分にのみ設けられる、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
前記第1多孔質膜は、複数の孔を有し、
前記複数の孔の直径は20~100nmであり、前記複数の孔の深さは500~5000nmである、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項6】
前記軸線方向に沿って延び、前記軸線方向の両側に開口する筒状の内管を備え、
前記内管は、前記ケースの内部に配置され、
前記内管は、前記軸線方向の両側に開口する筒状の内管本体部と、前記内管本体部の表面のうち少なくとも前記内管本体部の外周面に設けられる第2多孔質膜と、を有し、
前記内管本体部は、アルミニウム製であり、
前記第2多孔質膜は、多孔性を有するアルミニウム酸化被膜であり、
前記封止材は、前記第2多孔質膜に接着される、請求項1から5のいずれか一項に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項7】
前記第2多孔質膜は、前記内管本体部の表面全体に設けられる、請求項6に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項8】
前記第2多孔質膜は、前記内管本体部の外周面のうち、前記封止材が接着される部分にのみ設けられる、請求項6に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項9】
前記第2多孔質膜は、複数の孔を有し、
前記孔の直径は20~100nmであり、前記孔の深さは500~5000nmである、請求項6に記載の中空糸膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜を用いてガス中の水蒸気を分離する除湿用中空糸膜モジュールが知られている。除湿用中空糸膜モジュールにおいては、筒状のケース内に複数の中空糸膜からなる中空糸膜束が充填され、各中空糸膜の端面が開口した状態で中空糸膜束の両端部が気密にケースに固定される。例えば、各中空糸膜内に湿潤ガスを流し、ケース内の各中空糸膜外にパージガス(乾燥ガス)を流すことで、湿潤ガスに含まれる水蒸気が各中空糸膜外に透過して湿潤ガスから分離され、乾燥ガスが得られる。中空糸膜内外の湿潤ガスと乾燥ガスは逆の場合でも、同様に水蒸気透過は行われる。
【0003】
特許文献1には、樹脂製の封止材によって、中空糸膜束の両端部をケースの内側及び内管の外側にそれぞれ気密に封止して固定する中空糸膜モジュールが開示されている。
特許文献2には、ケースと封止材との間にシール部材を設けて、ケースと封止材との間を気密に固定する中空糸膜モジュールが開示されている。
【0004】
中空糸膜モジュールでは、耐圧を高めるために、または防爆、防火の観点から、金属製のケースを使用する場合がある。
特許文献1に記載の中空糸膜モジュールのように、樹脂製の封止材を金属製のケースに直接接着する場合は、封止材とケースの線膨張率が大きく異なるため、封止材とケースの接着界面には応力集中による剥離が生じやすく、耐久性を高めることが困難である。
特許文献2に記載の中空糸膜モジュールでは、ケースの内周面に離型剤を塗布する必要がある。そのため、中空糸膜モジュールの製造工程において、離型剤が中空糸膜束に付着することを防止する必要があり、中空糸膜モジュールの製造工数が増大する。また、中空糸膜モジュールの部品点数および製造コストが増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-41373号公報
【特許文献2】特開2013-86000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高耐久性を有しつつ、製造コストが増大することを抑制できる中空糸膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]軸線方向に沿って延び、前記軸線方向の両側に開口する筒状のケースと、前記ケースの内部に充填され、前記ケースの軸線方向の第1端から第2端まで延在する複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束と、前記ケースの内周面に接着され、複数本の前記中空糸膜同士の間と、前記中空糸膜束と前記ケースとの間を封止する樹脂製の封止材と、を備え、前記ケースは、前記軸線方向の両側に開口する筒状のケース本体部と、前記ケース本体部の表面のうち少なくとも前記ケース本体部の内周面に設けられる第1多孔質膜と、を有し、前記ケース本体部は、金属製であり、前記封止材は、前記第1多孔質膜に接着される。
すなわち、本発明の中空糸膜モジュールは、金属製のケース本体部の表面に設けられる第1多孔質膜と封止材とを接着することにより、ケースと封止材を直接接着しつつ、ケースと封止材との接着耐久性能を高めることができるため、高耐久性を有しつつ、製造コストが増大することを抑制したものである。
【0008】
[2]前記ケース本体部は、アルミニウム製であり、前記第1多孔質膜は、多孔性を有するアルミニウム酸化被膜である、[1]に記載の中空糸膜モジュール。
[3]前記第1多孔質膜は、前記ケース本体部の表面全体に設けられる、[1]又は[2]に記載の中空糸膜モジュール。
[4]前記第1多孔質膜は、前記ケース本体部の内周面のうち、前記封止材が接着される部分にのみ設けられる、[1]又は[2]に記載の中空糸膜モジュール。
[5]前記第1多孔質膜は、複数の孔を有し、前記複数の孔の直径は20~100nmであり、前記複数の孔の深さは500~5000nmである、[1]~[4]のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
[6]前記軸線方向に沿って延び、前記軸線方向の両側に開口する筒状の内管を備え、前記内管は、前記ケースの内部に配置され、前記内管は、前記軸線方向の両側に開口する筒状の内管本体部と、前記内管本体部の表面のうち少なくとも前記内管本体部の外周面に設けられる第2多孔質膜と、を有し、前記内管本体部は、アルミニウム製であり、前記第2多孔質膜は、多孔性を有するアルミニウム酸化被膜であり、前記封止材は、前記第2多孔質膜に接着される、[1]~[5]のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
[7]前記第2多孔質膜は、前記内管本体部の表面全体に設けられる、[6]に記載の中空糸膜モジュール。
[8]前記第2多孔質膜は、前記内管本体部の外周面のうち、前記封止材が接着される部分にのみ設けられる、[6]に記載の中空糸膜モジュール。
[9]前記第2多孔質膜は、複数の孔を有し、前記孔の直径は20~100nmであり、前記孔の深さは500~5000nmである、[6]~[8]のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高耐久性を有しつつ、製造コストが増大することを抑制できる中空糸膜モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態の中空糸膜モジュールの一例を示した図であって、ケースの軸線方向に沿って切断した断面図である。
図2図1の中空糸膜モジュールのケースの第1端側を正面視した正面図である。
図3】本発明の第1実施形態の第1多孔質膜の一例を示した正面図である。
図4】本発明の第1実施形態の第1多孔質膜の一例を示した断面図である。
図5A】本発明の第1実施形態の中空糸膜モジュールの封止材成形工程を示す第1の図である。
図5B】本発明の第1実施形態の中空糸膜モジュールの封止材成形工程を示す第2の図である。
図6】本発明の第2実施形態の中空糸膜モジュールの一例を示した図であって、ケースの軸線方向に沿って切断した断面図である。
図7図6の中空糸膜モジュールのケースの第1端側を正面視した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び請求の範囲における以下の用語は、以下の意味を示す。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
「ケースに対する中空糸膜の充填率」は、ケースを軸線方向に垂直な方向に切断した断面における、モジュール本体の内部の断面積に対する、各中空糸膜の外縁を基準とした断面積の合計の割合を意味する。
「ケースの有効長」とは、ケースにおいて水蒸気の分離に寄与する中空糸膜の長さであり、典型的にはケースにおける封止材間の長さである。
【0012】
各図に適宜示す軸線Jは、中空糸膜モジュールのケースの中心軸を示す仮想軸線である。「軸線方向」は、軸線Jが延びる方向を意味する。
【0013】
本発明の中空糸膜モジュールは、湿潤ガスから水蒸気を分離して乾燥ガスを得る除湿用の中空糸膜モジュールである。
以下、本発明の中空糸膜モジュールの一例について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0014】
<第1実施形態>
図1及び図2に示すように、本実施形態の中空糸膜モジュール1は、ケース10と、第1接続継手12と、第2接続継手13と、中空糸膜束16と、封止材20と、を備えている。
【0015】
ケース10は、軸線方向に沿って延び、軸線方向の両側に開口する筒状である。ケース10の内部には、中空糸膜束16及び封止材20が収容される。ケース10は、ケース本体部10aと、第1多孔質膜10hと、を有する。
【0016】
ケース本体部10aは、軸線方向の両側に開口する筒状である。本実施形態において、ケース本体部10aは、円筒状である。ケース本体部10aにおける第1端10c側には、第1開口11aが設けられている。ケース本体部10aにおける第2端10d側には、第2開口11bが設けられている。なお、第1端10cは、軸線方向における、図1に示す左側のケース本体部10aの端部である。また、第2端10dは、軸線方向における、図1に示す右側のケース本体部10aの端部である。
ケース本体部10aは、金属製である。より詳細には、ケース本体部10aは、アルミニウム製である。
ケース本体部10aは、円筒状には限定されず、四角筒状、六角筒状等の角筒状であってもよい。
ケース本体部10aの軸線方向の長さは、特に限定されず、例えば、有効長を50~1000mmに設定できる。
【0017】
ケース本体部10aの外径は、6~225mmが好ましい。ケース本体部10aの内径は、4~220mmが好ましい。ケース本体部10aの外径および内径のそれぞれが係る範囲内であれば、高い耐久性を有する中空糸膜モジュール1となる。
【0018】
第1多孔質膜10hは、ケース本体部10aの表面のうち少なくともケース本体部10aの内周面に設けられる。本実施形態において、第1多孔質膜10hは、ケース本体部10aの表面全体に設けられる。
【0019】
本実施形態において、第1多孔質膜10hは、多孔性を有するアルミニウム酸化被膜である。第1多孔質膜10hは、アルマイト処理によって、ケース本体部10aの表面に設けられる。
アルマイト処理は、アルミニウムを、例えばシュウ酸等の電解液中に浸し、アルミニウムを正電極として負電極との間に電流を流すことで、アルミニウムの表面にアルミニウム酸化被膜を形成する酸化被膜形成方法である。本実施形態では、アルミニウム製のケース本体部10aを、電解液中に浸し、ケース本体部10aを正電極として負電極との間に電流を流すことで、ケース本体部10aの表面にアルミニウム酸化被膜を形成している。
【0020】
図3及び図4に示すように、第1多孔質膜10hは、複数の孔10iを有する。第1多孔質膜10hの膜厚は、500~2000nmが好ましく、700~1500nmがより好ましい。
【0021】
複数の孔10iの平均直径は20~100nmが好ましく、70~100nmがより好ましい。複数の孔10iの平均深さは500~5000nmが好ましく、700~1500nmがより好ましい。図4に示すように、複数の孔10iは、深さ方向に延びる孔である。
本明細書において、多孔質膜における孔の平均直径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察で測定した。表面観察にはクロスセクションポリッシャ(CP)加工装置等により厚み方向に沿って切り出した薄片試料を用いた。孔の平均直径は、薄片試料について任意の10点を選択して測定し、測定値の算術平均値とした。
本明細書において、多孔質膜における孔の平均深さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察で測定した。断面観察にはクロスセクションポリッシャ(CP)加工装置等により厚み方向に沿って切り出した薄片試料を用いた。孔の平均深さは、薄片試料について任意の10点を選択して測定し、測定値の算術平均値とした。
【0022】
図1に示すように、第1接続継手12は、ケース10の第1端10cに取り付けられている。図示は省略するが、第1接続継手12とケース10との間にはガスケットが配置され、第1接続継手12はケース10の第1端10cに気密に取り付けられている。なお、第1接続継手12とケース10との間には、Oリングが配置されていてもよい。第1接続継手12には、湿潤ガスを供給する供給部12aが設けられている。
【0023】
第2接続継手13は、ケース10の第2端10dに取り付けられている。図示は省略するが、第2接続継手13とケース10との間にはガスケットが配置され、第2接続継手13はケース10の第2端10dに気密に取り付けられている。第2接続継手13には、乾燥ガスを排出する排出部13aが設けられている。
第1接続継手12の供給部12aと第2接続継手13の排出部13aとには、適宜、配管等を接続できる。
「気密に取り付けられる」とは、ガスケット等により取付け部からガスが漏れないように取り付けられた状態である。
【0024】
第1接続継手12の材質及び第2接続継手13の材質は特に限定されず、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルを例示できる。第1接続継手12及び第2接続継手13の材質は、1種でもよく、2種以上でもよい。また、第1接続継手12及び第2接続継手13は、アルミニウム等の金属製であってもよい。
【0025】
中空糸膜束16は、ケース10の第1端10cから第2端10dまで軸線方向に延在する複数本の中空糸膜15からなる。
中空糸膜束16は、ケース10の第1端10cから第2端10dまで延在するように、ケース10の内部に充填されている。ケース10内においては、中空糸膜束16の両端の部分が、封止材20によってケース10の第1端10cの内周面と第2端10dの内周面とに気密に固定されている。
「気密に固定される」とは、接着剤等により取付け部からガスが漏れないように固定された状態である。
【0026】
ケース10の第1端10cと第2端10dにおいては、各中空糸膜15の端面は開口した状態になっている。すなわち、各中空糸膜15の内部と、第1接続継手12内の空間と、第2接続継手13内の空間とは、それぞれ連通している。
【0027】
中空糸膜15の形状は、特に限定されず、典型的には円筒状である。
【0028】
中空糸膜15の外径は、0.3~2mmが好ましく、0.4~1.0mmがより好ましい。
中空糸膜15の内径は、0.15~1.5mmが好ましい。
中空糸膜15の膜厚は、0.075~0.3mmが好ましい。
【0029】
中空糸膜15の材質としては、特に限定されず、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、シリコン、酢酸セルロース、フッ素系イオン交換樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンを例示できる。なかでも、水蒸気の透過性に優れる点から、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素系イオン交換樹脂が好ましい。
中空糸膜15の材質は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0030】
ケース10に対する中空糸膜15の充填率は、5~70%である。中空糸膜15の充填率が前記範囲内であれば、耐久性の高い中空糸膜モジュール1となる。
中空糸膜15の充填率は、50%以下が好ましい。
【0031】
封止材20は、複数の中空糸膜15の軸線方向の両端の部分を保持する。封止材20は、ケース10の内周面に接着によって固定される。より詳細には、封止材20は、ケース10の第1多孔質膜10hに接着される。
本実施形態において、封止材20は樹脂製である。封止材20を形成する樹脂は、特に限定されず、エポキシ、ポリウレタン、シリコン、アクリルを例示できる。なかでも、接着耐久性能及び成形性の点から、封止材20を形成する樹脂としてはエポキシ、ポリウレタンが好ましい。封止材20の材質は、1種でもよく、2種以上でもよい。
本実施形態において、封止材20は、2個設けられる。封止材20は、第1封止材20aと、第2封止材20bと、を有する。
【0032】
第1封止材20aは、ケース10の第1端10cの内部に配置される。軸線方向において、第1封止材20aは、ケース10の第1端10cと、第1開口11aとの間に配置される。第1封止材20aは、中空糸膜束16の第1端10c側の部分を保持する。第1封止材20aは、ケース10の第1端10cの内周面に設けられる第1多孔質膜10hと接着によって固定される。図2に示すように、第1封止材20aは、複数本の中空糸膜15同士の間を封止し、中空糸膜束16とケース10との間を封止する。図1に示すように、第1封止材20aによって、第1接続継手12内の空間と、ケース10内の各中空糸膜15の外側の空間との間は、気密に封止される。
「気密に封止される」とは、接着剤等により封止部からからガスが漏れないように封止された状態である。
【0033】
第2封止材20bは、ケース10の第2端10dの内部に配置される。軸線方向において、第2封止材20bは、ケース10の第2端10dと、第2開口11bとの間に配置される。第2封止材20bは、中空糸膜束16の第2端10d側の部分を保持する。第2封止材20bは、ケース10の第2端10dの内周面に設けられる第1多孔質膜10hと接着によって固定される。図示は省略するが、第1封止材20aと同様に、第2封止材20bは、複数本の中空糸膜15同士の間を封止し、中空糸膜束16とケース10との間を封止する。図1に示すように、第2封止材20bによって、第2接続継手13内の空間と、ケース10内の各中空糸膜15の外側の空間との間は、気密に封止される。
【0034】
第1封止材20aの軸線方向の寸法及び第2封止材20bの軸線方向の寸法は、それぞれ、20mm以上が好ましい。第1封止材20aの軸線方向の寸法及び第2封止材20bの軸線方向の寸法が前記範囲内であれば、第1封止材20a及び第2封止材20bと、ケース10との耐久性が高い中空糸膜モジュール1となる。
【0035】
本実施形態の中空糸膜モジュール1では、第1接続継手12の供給部12aから湿潤ガスGmを供給すると、ケース10の第1端10c側から第2端10d側に向かって各中空糸膜15の内部を湿潤ガスGmが通過する。一方、ケース10の第2開口11bからケース10の内部に乾燥したパージガスGpを供給すると、ケース10の第2端10d側から第1端10c側に向かって各中空糸膜15の間をパージガスGpが通過する。つまり、各中空糸膜15の間をパージガスGpが流れる方向は、各中空糸膜15の内部を湿潤ガスGmが流れる方向と逆方向である。各中空糸膜15の内部を通過する湿潤ガスGmに含まれる水蒸気は、各中空糸膜15の膜外に透過すると、パージガスGpによってケース10の外部に搬送される。
これにより、各中空糸膜15の内部を通過する湿潤ガスの水分が除去され、各中空糸膜15から第2接続継手13内の空間に乾燥ガスGdが流出し、乾燥ガスが排出部13aから排出される。加湿されたパージガスGpは、第1開口11aから中空糸膜モジュール1の外部に排出される。
【0036】
本実施形態では、ケース10の内部において、湿潤ガスGmが流れる方向とパージガスGpが流れる方向は、互いに逆方向(対向流)であるが、湿潤ガスGmが流れる方向とパージガスGpが流れる方向が、互いに同じ方向(並流)であっても良い。さらに、パージガスGpが流れる方向が、湿潤ガスGmが流れる方向と直交(垂直流)していても良い。
また、ケース10の内部に乾燥したパージガスGpを供給せずに、第1開口11aまたは第2開口11bを介して、真空ポンプによって、ケース10の内部の空気を吸引しても良い。
【0037】
また、図示は省略するが、本実施形態の中空糸膜モジュール1では、供給された乾燥ガスに水蒸気を与えて、湿潤ガスを排出することもできる。より詳細には、第1接続継手12の供給部12aから乾燥ガスを供給すると、ケース10の第1端10c側から第2端10dに向かって各中空糸膜15の内部を乾燥ガスが通過する。一方、ケースの第2開口11bからケース10の内部に、乾燥ガスよりも湿度が高い湿潤ガス若しくは水を供給すると、湿潤ガス若しくは水に含まれる水蒸気が、各中空糸膜15の膜を透過し、各中空糸膜15の内部を通過する乾燥ガスが加湿される。
これにより、各中空糸膜15の内部を通過する乾燥ガスが含有する水分量が増加するため、各中空糸膜15から第2接続継手13内の空間に湿潤ガスが流出し、湿潤ガスが排出部13aから排出される。水蒸気を放出した湿潤ガス若しくは水は、第1開口11aから中空糸膜モジュール1の外部に排出される。
【0038】
次に、本実施形態において、封止材20を成形する封止材成形工程Pe1について説明する。封止材成形工程Pe1は、中空糸膜モジュール1の製造工程の一部である。封止材成形工程Pe1は、軸線方向を中心として回転するケース10の内部に液状の封止材20dを注入する注入工程Pe11と、中空糸膜束16および封止材20のうちケース10から軸線方向の両側にはみ出た部分を除去する除去工程Pe12と、を含む。なお、本明細書において「作業者等」とは、各作業を行う作業者及び組立装置等を含む。各作業は、作業者のみによって行われてもよいし、組立装置のみによって行われてもよいし、作業者と組立装置とによって行われてもよい。
【0039】
注入工程Pe11では、作業者等は、まず、ケース10内に中空糸膜束16を収容する。このとき、図5Aに示すように、中空糸膜束16の軸線方向の長さは、ケース10の軸線方向の長さよりも長く、中空糸膜束16の両端は、ケース10よりも軸線方向の両側にはみ出ている。次に、作業者等は、各中空糸膜15の両端部に目止め剤を塗布して、各中空糸膜15の目止めを行う。これにより、ケース10の内部に液状の封止材20dを注入する際に、液状の封止材20dが中空糸膜15の内部に入り込むことを防止できる。次に、作業者等は、ケース10の第1端10cに第1蓋部材30を、ケース10の第2端10dに第2蓋部材31を固定する。次に、作業者等は、中空糸膜束16を納めたケース10に遠心力を付与しつつ、第1蓋部材30の注入口30aおよび第2蓋部材31の注入口31aから所定量の液状の封止材20dをケース10の内部に注入し、例えば、60分間ケース10を遠心し続ける。これにより、第1多孔質膜10hのうち液状の封止材20dと接触する部分において、液状の封止材20dが、図3及び図4に示す、第1多孔質膜10hの複数の孔10iの内部に入り込む。その後、液状の封止材20dを硬化させると、図5Bに示すように、第1封止材20aおよび第2封止材20bが成形される。このとき、第1封止材20aおよび第2封止材20bの外周面の一部は、第1多孔質膜10hの複数の孔10iの内部で硬化し、第1封止材20aおよび第2封止材20bと第1多孔質膜10hとが接着される。つまり、第1封止材20aおよび第2封止材20bとケース10とが接着される。
【0040】
除去工程Pe12において、作業者等は、第1蓋部材30及び第2蓋部材31を、ケース10から取り外し、中空糸膜束16、第1封止材20a、および第2封止材20bのうち、ケース10よりも軸線方向の両側にはみ出た部分を除去して、中空糸膜束16、第1封止材20a、および第2封止材20bの形状を適当な形状に整える。このとき、目止め剤が塗布された各中空糸膜15の両端部も除去されるため、各中空糸膜15の両端が開口する。除去工程Pe12が終了すると、封止材成形工程Pe1が終了する。なお、第1封止材20aおよび第2封止材20bそれぞれを適当な形状に成形でき、第1封止材20aおよび第2封止材20bそれぞれの外周面の一部が第1多孔質膜10hの複数の孔10iの内部に入り込んだ状態で、第1封止材20aおよび第2封止材20bそれぞれをケース10に固定できるならば、封止材成形工程Pe1は上述の工程に限定されない。
【0041】
本実施形態によれば、中空糸膜モジュール1は、軸線方向に沿って延び、軸線方向の両側に開口する筒状のケース10と、ケース10の内部に充填され、ケース10の軸線方向の第1端10cから第2端10dまで延在する複数本の中空糸膜15からなる中空糸膜束16と、ケース10の内周面に接着され、複数本の中空糸膜15同士の間と、中空糸膜束16とケース10との間を封止する樹脂製の封止材20を備え、ケース10は、軸線方向の両側に開口する筒状のケース本体部10aと、ケース本体部10aの表面のうち少なくともケース本体部10aの内周面に設けられる第1多孔質膜10hと、を有する。ケース本体部10aは、金属製であり、封止材20は、第1多孔質膜10hに接着される。よって、上述のように、封止材20の外周面の一部は、第1多孔質膜10hの複数の孔10iの内部で硬化するため、第1多孔質膜10hの複数の孔10iの内部に封止材20の外周面の一部が入り込んだ状態で、封止材20がケース10に接着される。したがって、樹脂製である封止材20との接着耐久性能を充分に確保しづらい金属によってケース本体部10aが構成される場合であっても、封止材20とケース10とを強固に接着でき、封止材20とケース10との接着耐久性能を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、ケース本体部10aが樹脂製である場合と比較して、ケース10の耐圧を高めることができるため、ケース10の内部の気圧が高くなった際に、ケース10が破損する危険性を低減できる。
【0043】
さらに、本実施形態では、封止材20とケース10との接着耐久性能を高めることができるため、樹脂製のリング部材及びOリング等の別個の部材によって封止材20とケース10との間を封止する必要が無い。したがって、中空糸膜モジュール1の部品点数及び製造コストが増大することを抑制できる。
また、樹脂製のリング部材及びOリング等が不要であるため、端部の断面積律速が解消される。そのため、中空糸膜束16を充填可能なケース10内部の断面積を大きくでき、中空糸膜15の充填量を高めることができる。したがって、中空糸膜モジュール1が大型化することを抑制しつつ、除湿性能を向上させることができる。
【0044】
本実施形態によれば、ケース本体部10aは、アルミニウム製であり、第1多孔質膜10hは、多孔性を有するアルミニウム酸化被膜である。よって、ケース本体部10aにアルマイト処理を行う作業のみによって、ケース本体部10aの表面に第1多孔質膜10hを設けることができる。したがって、中空糸膜モジュール1の組立工数が増大することを抑制できる。
【0045】
本実施形態によれば、第1多孔質膜10hは、ケース本体部10aの表面全体に設けられる。よって、ケース本体部10aの全体を電解液中に浸し、ケース本体部10aの全体を正電極とするアルマイト処理を1回行うことによって、ケース本体部10aの表面に第1多孔質膜10hを設けることができる。したがって、ケース本体部10aのうち第1封止材20aと接触する第1端10c及び第2封止材20bと接触する第2端10dのみに、第1多孔質膜10hを設ける場合、すなわち、アルマイト処理を2回行う場合と比較して、ケース10及び中空糸膜モジュール1の製造工数が増加することを抑制できる。
【0046】
なお、本実施形態では、第1多孔質膜10hは、ケース本体部10aの表面全体に設けられるが、第1多孔質膜10hはケース本体部10aの内周面のうち、封止材20が接着される部分にのみ設けられてもよい。この場合、ケース10の内周面のうち、パージガスGpと接触する部分において、パージガスが含む不純物が第1多孔質膜10hの複数の孔10iの内部に入り込むことを抑制できる。これにより、孔10iの内部にパージガスが含む不純物が蓄積されることを抑制でき、ケース10の内周面が汚染されることを抑制できる。
【0047】
本実施形態によれば、第1多孔質膜10hは、複数の孔10iを有し、複数の孔10iの直径は20~100nmであり、複数の孔10iの深さは500~5000nmである。よって、上述の封止材成形工程Pe1の注入工程Pe11において、液状の封止材20dが、第1多孔質膜10hの複数の孔10iの内部に容易に入り込むことができ、第1多孔質膜10hの複数の孔10iの内部に封止材20の外周面の一部が入り込んだ状態で、封止材20がケース10に接着される。したがって、封止材20とケース10との接着耐久性能を高めることができる。
【0048】
また、本実施形態では、上述のように、複数の孔10iは、深さ方向に延びる孔であるため、複数の孔10iの内部に入りこんだ封止材20の外周面の一部は、複数の孔10iから抜けづらく、アンカー効果を高めることができる。したがって、封止材20とケース10との接着耐久性能をより高めることができる。
【0049】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の中空糸膜モジュール101を示す断面図である。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図6に示ように、本実施形態の中空糸膜モジュール101は、内管114を備える。内管114は、軸線方向に沿って延び、軸線方向の両側に開口する筒状である。内管114は、ケース10の内部に配置される。ケース10の内部かつ内管114の外部には、中空糸膜束16及び封止材20が配置される。内管114は、内管本体部114aと、第2多孔質膜114hと、を有する。
【0050】
内管本体部114aは、軸線方向の両側に開口する筒状である。本実施形態において、内管本体部114aは、円筒状である。
内管本体部114aは、金属製である。より詳細には、内管本体部114aは、アルミニウム製である。
内管本体部114aは、円筒状には限定されず、四角筒状、六角筒状等の角筒状であってもよい。
内管本体部114aの軸線方向の長さは、特に限定されず、例えば、長さを50~1000mmに設定できる。
内管本体部114aの外径は、2~80mmが好ましい。内管本体部114aの内径は、1~76mmが好ましい。内管本体部114aの外径および内径のそれぞれが係る範囲内であれば、高い耐久性を有する中空糸膜モジュール101となる。
【0051】
第2多孔質膜114hは、内管本体部114aの表面のうち少なくとも内管本体部114aの外周面に設けられる。本実施形態において、第2多孔質膜114hは、内管本体部114aの表面全体に設けられる。
【0052】
本実施形態において、第2多孔質膜114hは、多孔性を有するアルミニウム酸化被膜である。第2多孔質膜114hは、アルマイト処理によって、内管本体部114aの表面に設けられる。内管本体部114aに施されるアルマイト処理は、上述のケース本体部10aに施されるアルマイト処理と同様の方法によって行われる。
【0053】
図示は省略するが、第2多孔質膜114hは、複数の孔を有する。
複数の孔の平均直径は、20~100nmが好ましく、70~100nmがより好ましい。複数の孔の平均深さは500~5000nmが好ましく、700~1500nmがより好ましい。上述の第1多孔質膜10hの複数の孔10iと同様に、複数の孔は、深さ方向に延びる孔である。
【0054】
第1接続継手112は、ケース10の第1端10c及び内管114の第1端114cに気密に取り付けられている。第1接続継手112には、湿潤ガスを供給する供給部112a、乾燥ガスを排出する排出部112b及び封止部112cが設けられている。
第1接続継手112の供給部112a及び排出部112bには、適宜、配管等を接続できる。なお、第1端114cは、軸線方向における、図6に示す左側の内管114の端部である。
【0055】
封止部112cは、内管114の第1端114cと軸線方向に接触する。封止部112cは、内管114の第1端114cに気密に固定されている。これにより、第1接続継手112内の空間のうち、供給部112a内の空間及び封止部112c内の空間からなる第1空間112eと、封止部112c外の空間である第2空間112fとの間は、気密に封止される。
【0056】
第2接続継手113は、ケース10の第2端10d及び内管114の第2端114dに気密に取り付けられている。なお、第2端114dは、軸線方向における、図6に示す右側の内管114の端部である。
第1接続継手112及び第2接続継手113の材質としては、上述の第1実施形態の第1接続継手12及び第2接続継手13と同様の材質を用いることができる。
【0057】
封止材120は、ケース10の内周面及び内管114の外周面に接着によって固定される。より詳細には、封止材120外周面は、ケース10の第1多孔質膜10hに接着され、封止材120内周面は、内管114の第2多孔質膜114hに接着される。なお、封止材120と第1多孔質膜10hとの接着耐久性能は、上述の第1実施形態における封止材20と第1多孔質膜10hとの接着耐久性能と同様であるため、以下の説明では、封止材120と第1多孔質膜10hとの接着耐久性能についての説明を省略する場合がある。
本実施形態において、封止材120は、樹脂製である。封止材120を形成する樹脂は、上述の第1実施形態の封止材20を形成する樹脂と同様である。
本実施形態において、封止材120は、2個設けられる。封止材120は、第1封止材120aと、第2封止材120bと、を有する。
【0058】
第1封止材120aは、ケース10の第1端10cの内部、且つ、内管114の第1端114cの外部に配置される。第1封止材120aは、複数の中空糸膜15の第1端10c側の部分を保持する。第1封止材120aは、ケース10の第1端10cの内周面に設けられる第1多孔質膜10h及び内管114の第1端114cの外周面に設けられる第2多孔質膜114hと接着によって固定される。図7に示すように、第1封止材120aは、複数本の中空糸膜15同士の間を封止し、中空糸膜束16とケース10との間及び中空糸膜束16と内管114との間を封止する。図6に示すように、第1接続継手112内の第2空間112fと、ケース10内の各中空糸膜15の外側の空間との間は、第1封止材120aによって気密に封止される。
【0059】
第2封止材120bは、ケース10の第2端10dの内部、且つ、内管114の第2端114dの外部に配置される。第2封止材120bは、複数の中空糸膜15の第2端10d側の部分を保持する。第2封止材120bは、ケース10の第2端10dの内周面に設けられる第1多孔質膜10h及び内管114の第2端114dの外周面に設けられる第2多孔質膜114hと接着によって固定される。図示は省略するが、第1封止材120aと同様に、第2封止材120bは、複数本の中空糸膜15同士の間を封止し、中空糸膜束16とケース10との間及び中空糸膜束16と内管114との間を封止する。第2接続継手113内の空間と、ケース10内の各中空糸膜15の外側の空間との間は、第2封止材120bによって気密に封止される。
【0060】
第1封止材120a及び第2封止材120bの軸線方向の寸法は、それぞれ、例えば、10mm以上が好ましい。第1封止材120a及び第2封止材120bの軸線方向の寸法が前記範囲内であれば、ケース10及び内管114との接着耐久性能が高い中空糸膜モジュール1となる。
【0061】
本実施形態の中空糸膜モジュール101では、第1接続継手112の供給部112aから湿潤ガスGmを供給すると、内管114の内部を第1端114c側から第2端114dに向かって湿潤ガスGmが通過する。内管114の第2端114dから第2接続継手113の内部に流入した湿潤ガスGmは、ケース10の第2端10d側から第1端10c側に向かって各中空糸膜15の内部を通過する。一方、ケースの第1開口11aからケース10の内部に乾燥したパージガスGpを供給すると、ケース10の第1端10c側から第2端10d側に向かって各中空糸膜15の間をパージガスGpが通過する。つまり、各中空糸膜15の間をパージガスGp流れる方向は、各中空糸膜15の内部を湿潤ガスGmが流れる方向と逆方向である。各中空糸膜15の内部を通過する湿潤ガスGmに含まれる水蒸気は、各中空糸膜15の膜外に透過すると、パージガスGpによってケース10の外部に搬送される。
これにより、各中空糸膜15の内部を通過する湿潤ガスの水分が除去され、各中空糸膜15から第1接続継手112内の第2空間112fに乾燥ガスGdが流出し、乾燥ガスが排出部112bから排出される。加湿されたパージガスGpは、第2開口11bから中空糸膜モジュール101の外部に排出される。
【0062】
本実施形態において、封止材120を成形する封止材成形工程Pe2は、注入工程Pe21において内管114がケース10の内部に配置され、ケース10と内管114との間に液状の封止材を注入する以外は、上述の実施形態1の封止材成形工程Pe1と同様の工程によって行われる。
【0063】
第1封止材120aの外周面の一部は、第1多孔質膜10hの複数の孔10iの内部で硬化し、第1封止材120aと第1多孔質膜10hとが接着される。つまり、第1封止材120aとケース10とが接着される。また、第1封止材120aの内周面の一部は、第2多孔質膜114hの複数の孔の内部で硬化し、第1封止材120aと第2多孔質膜114hとが接着される。つまり、第1封止材120aと内管114とが接着される。同様に、第2封止材120bは、ケース10及び内管114と接着される。
【0064】
本実施形態によれば、中空糸膜モジュール101は、軸線方向に沿って延び、軸線方向の両側に開口する筒状の内管114を備え、内管114は、ケース10の内部に配置され、内管114は、軸線方向の両側に開口する筒状の内管本体部114aと、内管本体部114aの表面のうち少なくとも内管本体部114aの外周面に設けられる第2多孔質膜114hと、を有する。内管本体部114aは、アルミニウム製であり、第2多孔質膜114hは、多孔性を有するアルミニウム酸化被膜であり、封止材120は、第2多孔質膜114hに接着される。よって、封止材120の内周面の一部は、第2多孔質膜114hの複数の孔の内部で硬化するため、第2多孔質膜114hの複数の孔の内部に封止材120の内周面の一部が入り込んだ状態で、封止材120が内管114に接着される。したがって、樹脂製である封止材120との接着耐久性能を充分に確保しづらい金属によって内管本体部114aが構成される場合であっても、封止材120と内管114とを強固に接着でき、封止材120と内管114との接着耐久性能を高めることができる。
【0065】
また、本実施形態では、内管本体部114aにアルマイト処理を行う作業のみによって、内管本体部114aの表面に第2多孔質膜114hを設けることができる。したがって、中空糸膜モジュール1の組立工数が増大することを抑制できる。
【0066】
また、本実施形態では、内管本体部114aが樹脂製である場合と比較して、内管114の耐圧を高めることができるため、圧力が高いガスを安定して中空糸膜モジュール101の内部に流すことができる。
【0067】
本実施形態によれば、第2多孔質膜114hは、内管本体部114aの表面全体に設けられる。よって、内管本体部114aの全体を電解液中に浸し、内管本体部114aの全体を正電極とするアルマイト処理を1回行うことによって、内管本体部114aの表面全体に第2多孔質膜114hを設けることができる。したがって、内管本体部114aのうち第1封止材120aと接触する第1端114c及び第2封止材120bと接触する第2端114dのみに、第2多孔質膜114hを設ける場合、すなわち、アルマイト処理を2回行う場合と比較して、内管114及び中空糸膜モジュール101の製造工数が増加することを抑制できる。
【0068】
なお、本実施形態では、第2多孔質膜114hは、内管本体部114aの表面全体に設けられているが、第2多孔質膜114hは、内管本体部114aの外周面のうち、封止材120が接着される部分にのみ設けられてもよい。この場合、内管114の外周面うち、パージガスと接触する部分において、パージガスが含む不純物が第2多孔質膜114hの複数の孔の内部に入り込むことを抑制できる。これにより、孔の内部にパージガスが含む不純物が蓄積されることを抑制でき、内管114の外周面が汚染されることを抑制できる。また、同様の理由により、内管114の内周面が、ガスが含むオイル等の物質によって汚染されることを抑制できる。
【0069】
本実施形態によれば、第2多孔質膜114hは、複数の孔を有し、複数の孔の直径は20~100nmであり、複数の孔の深さは500~5000nmである。よって、上述の封止材成形工程Pe2の注入工程Pe21において、液状の封止材が、第2多孔質膜114hの複数の孔の内部に容易に入り込むことができ、第2多孔質膜114hの複数の孔の内部に封止材120の内周面の一部が入り込んだ状態で、封止材120が内管114に接着される。したがって、封止材120と内管114との接着耐久性能を高めることができる。
【0070】
また、本実施形態では、上述のように、第2多孔質膜114hの複数の孔は、深さ方向に延びる孔であるため、複数の孔の内部に入りこんだ封止材120の内周面の一部は、複数の孔から抜けづらく、アンカー効果を高めることができる。したがって、封止材120と内管114との接着耐久性能をより高めることができる。
【0071】
また、本実施形態では、ケース10の第1端10cに取り付けられる第1接続継手112が、中空糸膜モジュール101の内部に湿潤ガスGmを供給する供給部112a、及び中空糸膜モジュール101の内部から乾燥ガスGdを排出する排出部112bを有するため、供給部112a及び排出部112bの両方を中空糸膜モジュール101の軸線方向の一方側に設けることができる。したがって、供給部112a及び排出部112bのそれぞれと接続される配管等の構成の簡素化を図ることができる。
【0072】
なお、本実施形態では、第1封止材120aとケース10との間及び第1封止材120aと内管114との間の少なくとも一方に、第2空間112fの乾燥ガスGdの一部を、ケース10の内部且つ内管114の外部の空間うち、軸線方向において第1封止材120aと第2封止材120bとの間の空間に流入させる経路を設けてもよい。この場合、乾燥ガスGdの一部をパージガスGpとして利用できる。
【実施例0073】
<第1実施形態の実施例>
以下、第1実施形態の実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。例1~6は実施例であり、例7~8は比較例である。
【0074】
[例1]
図1及び図2に例示した中空糸膜モジュール1のような態様の中空糸膜モジュールを作製した。
ケース本体部としては、アルミニウム製で外径55mm、内径51mm、長さ250mmの円筒部材を用いた。ケース本体部の表面全体にアルマイト処理を行い、ケース本体部の表面全体に第1多孔質膜を設けた。第1多孔質膜の複数の孔の平均直径は80nmであり、平均深さは1000nmであった。
中空糸膜としては、外径0.58mm、内径0.36mmのフッ素樹脂製の中空糸膜(サンセップ膜、AGCエンジニアリング社製)を用いた。中空糸膜の充填率が40%となるようにモジュール本体内に中空糸膜束を充填した。封止材の軸線方向の寸法は30mmとした。
封止材の材料としては、エポキシ樹脂を用い、上述の封止材成形工程によって封止材を第1多孔質膜に接着した。
中空糸膜束の両端部分を封止材によってケースに固定してケースの有効長を190mmとした。
[例2]
第1多孔質膜の複数の孔の平均直径を20nmとした以外は、例1と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
[例3]
第1多孔質膜の複数の孔の平均深さを5000nmとした以外は、例1と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
[例4]
封止材の材料として、ウレタン樹脂を用いた以外は、例1と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
[例5]
第1多孔質膜の複数の孔の平均直径を20nmとした以外は、例4と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
[例6]
第1多孔質膜の複数の孔の平均深さ5000nmとした以外は、例4と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
[例7]
ケースとしては、ケース本体部の表面に第1多孔質膜を設けず、ケース本体部の内周面のうち、少なくとも封止材と接着する部分を番手が#120のやすりで研磨した後、中性洗剤で洗浄し、水洗した後に乾燥させたケースを用いた。ケース本体部のうち、封止材と接着される部分の表面粗さは十点平均粗さで3μmであった。これら以外は、例1と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
[例8]
封止材の材料として、ウレタン樹脂を用いた以外は、例7と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
【0075】
[第1接着耐久性能評価]
各例の中空糸膜モジュールを、周囲温度を25℃に設定した恒温槽内に1時間保管した後に、周囲温度を25℃に設定した恒温槽内で封止剤の剥離試験を行った。なお、本評価では、第1接続継手の内部、第2接続継手の内部、及び中空糸膜の内部に乾燥圧縮ガスを供給して、第1接続継手の内部、第2接続継手の内部、及び中空糸膜15の内部の気圧を1.0MPaGにした状態で、各例の中空糸膜モジュールを恒温槽内に1時間保管した。
剥離試験によって、封止材がケースから剥離しない場合、接着耐久性能に優れることを示している。
各例の第1接着耐久性能評価の結果を表1に示す。
【0076】
表1における第1接着耐久性能評価は以下の基準により評価した。
◎:封止材の剥離の発生無し
×:封止材の剥離の発生有り
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、封止材がケース本体部の表面に設けた第1多孔質膜と接着される例1~例6の中空糸膜モジュールは、例7~例8の中空糸膜モジュールに比べて、接着耐久性能に優れていた。
上述のように、例1~例6の中空糸膜モジュールは、封止材の一部が第1多孔質膜の複数の孔の内部に入り込んだ状態で、封止材がケースに接着されるため、アンカー効果を高めることができ、封止材の接着耐久性能を高めることができる。
一方、例7及び例8の中空糸膜モジュールは、ケース本体部のうち封止材を接着する部分をやすりで研磨して、表面粗さを高めたものの、研磨を行った部分の表面形状はなだらかな形状であるため、アンカー効果を高めることができず、封止材の接着耐久性能を高めることができないものと考えられる。
【0079】
[第2接着耐久性能評価]
上述の第1接着耐久性能評価において封止材が剥離しなかった例1~6の中空糸膜モジュールに対して、周囲温度を50℃に設定した恒温槽内で封止材の剥離試験を行った。本評価では、第1接続継手の内部、第2接続継手の内部、及び中空糸膜の内部への乾燥圧縮ガスの供給と、第1接続継手、第2接続継手の内部、及び中空糸膜の内部からの乾燥圧縮ガスの排出とを周期的に繰り返すことで、第1接続継手の内部、第2接続継手の内部、及び中空糸膜の内部の気圧を0MPaGと1.0MPaGとの間で周期的に往復変動させた。本評価において、サイクルとは、第1接続継手の内部、第2接続継手の内部、及び中空糸膜の内部の気圧を0MPaGから1.0MPaGまで上昇させ、1.0MPaGから0MPaGに低下させる1周期を意味する。本評価において、1サイクルは、15秒である。本評価では、第1接続継手の内部、第2接続継手の内部、及び中空糸膜の内部の気圧の往復変動を最大30000サイクルまで行った。
封止材が剥離するサイクル数が大きいほど、接着耐久性能に優れることを示している。
各例の第2接着耐久性能評価の結果を表2に示す。
【0080】
表2における第2接着耐久性能評価は以下の基準により評価した。
◎:30000サイクルで封止材の剥離の発生無し
○:20000~30000サイクルで封止材の剥離の発生有り
△:10000~20000サイクルで封止材の剥離の発生有り
×:0~10000サイクルで封止材の剥離の発生有り
【0081】
【表2】
【0082】
表2に示すように、第1多孔質膜の孔の平均直径が80nm、かつ、孔の平均深さが1000nmである例1及び例4の中空糸膜モジュールは、第1多孔質膜の孔の平均直径が20nm、かつ、孔の平均深さが1000nmである例2及び例5の中空糸膜モジュールに比べて、接着耐久性能に優れていた。
例1及び例4の中空糸膜モジュールは、第1多孔質膜の複数の孔の平均直径が80nmと大きいため、封止材の外周面一部が第1多孔質膜の複数の孔の内部に充分に入り込んだ状態で、封止材がケースに接着される。そのため、アンカー効果を充分に高めることができ、封止材の接着耐久性能を充分に高めることができたと考えられる。したがって、例1及び例4の中空糸膜モジュールは、第1多孔質膜の複数の孔の平均直径が20nmである例2及び例5の中空糸膜モジュールよりも、優れた接着耐久性能を有するものと考えられる。
【0083】
また、第1多孔質膜の孔の平均直径が80nm、かつ、孔の平均深さが1000nmである例1及び例4の中空糸膜モジュールは、第1多孔質膜の孔の平均直径が80nm、かつ、孔の平均深さが5000nmである例3及び例6の中空糸膜モジュールに比べて、接着耐久性能に優れていた。
例1及び例4の中空糸膜モジュールは、第1多孔質膜の複数の孔の平均深さが1000nmであり、例3及び例6の中空糸膜モジュールに比べて孔の平均深さが小さい。そのため、例1及び例4の中空糸膜モジュールにおいては、例3及び例6の中空糸膜モジュールに比べて第1多孔質膜の膜厚が比較的小さく、第1多孔質膜の割れによるケース本体部からの剥離が発生しづらいものと考えられる。したがって、例1及び例4の中空糸膜モジュールは、例3及び例6の中空糸膜モジュールよりも、優れた接着耐久性能を有するものと考えられる。
【0084】
<第2実施形態の実施例>
以下、第2実施形態の実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。例9、12は実施例である。
【0085】
[例9]
図6及び図7に例示した中空糸膜モジュール101のような態様の中空糸膜モジュールを作製した。
ケースとしては、第1実施形態の実施例における例1のケースと同様のケース用いた。
内管としては、アルミニウム製で外径22mm、内径20mm、長さ250mmの円筒部材を用いた。内管本体部の表面全体にアルマイト処理を行い、内管体部の表面全体に第2多孔質膜を設けた。第2多孔質膜の複数の孔の平均直径は80nmであり、平均深さは1000nmであった。
中空糸膜としては、外径0.58mm、内径0.36mmのフッ素樹脂製の中空糸膜(サンセップ膜、AGCエンジニアリング社製)を用いた。中空糸膜の充填率が40%となるようにモジュール本体内に中空糸膜束を充填した。
封止材の軸線方向の寸法は30mmとした。封止材の材料としては、エポキシ樹脂を用い、上述の封止材成形工程によって第1多孔質膜及び第2多孔質膜と接着を行った。
中空糸膜束の両端部分を封止材によって接着固定してケースの有効長を190mmとした。
[例10]
封止材の材料として、ウレタン樹脂を用いた以外は、例9と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
【0086】
[第3接着耐久性能評価]
例9、例10の中空糸膜モジュールに対して、第1実施形態の実施例における第1接着耐久性能評価と同様の条件で行った。
剥離試験によって、封止材が内管から剥離しない場合、接着耐久性能に優れることを示している。
各例の第3接着耐久性能評価の結果を表3に示す。
表3における第3接着耐久性能評価の基準は、第1実施形態の実施例における第1接着耐久性能評価の基準と同様である。
【0087】
[第4接着耐久性能評価]
例9、例10の中空糸膜モジュールに対して、第1実施形態の実施例における第2接着耐久性能評価と同様の条件で行った。
剥離試験によって、封止材が内管から剥離しない場合、接着耐久性能に優れることを示している。
各例の第4接着耐久性能評価の結果を表3に示す。
表3における第4接着耐久性能評価の基準は、第1実施形態の実施例における第2接着耐久性能評価の基準と同様である。
【0088】
【表3】
【0089】
表3に示すように、封止材が内管本体部の表面に設けた第2多孔質膜と接着される例9、例10の中空糸膜モジュールは、接着耐久性能に優れていた。
上述のように、例9及び例10の中空糸膜モジュールは、封止材の内周面の一部が第2多孔質膜の複数の孔の内部に入り込んだ状態で、封止材が内管に接着されるため、アンカー効果を高めることができ、接着耐久性能に優れるものと考えられる。
【符号の説明】
【0090】
1,101…中空糸膜モジュール、10…ケース、10a…ケース本体部、10h…第1多孔質膜、10i…孔、15…中空糸膜、16,116…中空糸膜束、20,120…封止材、114…内管、114a…内管本体部、114h…第2多孔質膜
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7