(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042418
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ドア開口の浸水抑止具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240321BHJP
E06B 7/22 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147114
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 佳勝
(72)【発明者】
【氏名】菅 将憲
(72)【発明者】
【氏名】市村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】スウ ガイキ
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EB02
2E036EB04
2E036EC05
2E036GA02
2E036HA01
2E036HB38
2E036HC03
2E036HC06
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められる必要が無く、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞ぐ必要もないドア開口の浸水抑止具を提供する。
【解決手段】浸水抑止具1は、ドア開口81を開閉する扉体82が回動可能にドア枠83に支持されるドア8に取り付けられる。この浸水抑止具1は、ドア開口81の屋内側の下面部に形成された凹部14に嵌る下端部114を有するとともに、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側の屋内側面および上記下端部114よりも上側で沓摺83bの屋内側面に対向する縁部を有し、ドア開口81の下部側を封鎖する止水板11と、この止水板11の上記縁部の屋外側面に位置するシール部材12と、止水板の左右両端側を左右の縦戸当たり83aの屋内側面に押し当てる押圧具13と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口を開閉する扉体を支持するドア枠に取り付けられるドア開口の浸水抑止具であって、
上記ドア枠の下部の横部材よりも屋内側に位置する床面部に形成された凹部に嵌る下端部を有するとともに、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側の屋内側面および上記下端部よりも上側で上記ドア枠の下部の横部材の屋内側面に対向する縁部を有し、上記下端部が上記凹部に嵌った状態で上記ドア開口の下部側を封鎖する止水板と、
上記止水板の上記縁部の屋外側面に位置するシール部材と、
上記止水板の左右両端側を上記ドア枠の左右の縦部材の屋内側面に押し当てる押圧具と、
を備えており、
上記押圧具による押し当て箇所を力点とし、上記止水板の上記下端部の屋内側面であって上記凹部内の立壁部が当たる箇所を支点とし、上記シール部材の配置箇所を作用箇所とし、当該シール部材を、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側の屋内側面および上記下端部よりも上側で上記ドア枠の下部の横部材の屋内側面に押し当てることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項2】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記押圧具は、上記止水板の屋内側面に取り付けられた密閉ハンドルと、上記ドア枠の左右の縦部材の屋内側面に取り付けられたハンドル爪受け具と、を備えることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項3】
請求項2に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記止水板の下端面には、上記シール部材とともに下端シール部材が設けられており、上記密閉ハンドルの密閉操作で上記止水板に下方向の押し下げ力が働いて、上記止水板の下端側が上記下端シール部材により止水されることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項4】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記止水板の屋内側面であって、少なくとも上記シール部材の配置箇所に対応する箇所に補強肉厚部が形成されていることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項5】
請求項4に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記止水板の上記下端部の屋内側面には、上記補強肉厚部が形成されないことを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項6】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記凹部に嵌る上記下端部は、上記止水板の下端側の全部であり、上記凹部は、上記止水板の左右幅を超える長さを有する溝部であることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項7】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記凹部に嵌る上記下端部は、上記止水板の下端側の一部であり、上記凹部は、上記下端側の上記一部を収容することを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項8】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記凹部の上面開口には、蓋部が備えられていることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項9】
請求項8に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記蓋部は、上記下端部の差し込みで下方に自動で開くことを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドア開口からの外水の浸入を抑止する浸水抑止具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア枠に開き戸式の扉体が開閉可能に取り付けられ、下枠の内側に下部戸当りが凸設され、ドア枠、戸当りおよび扉体に対して着脱可能な板材が戸当りに立て掛けられ、板材の下端部に沿って下部シールが設けられ、板材の側端部に沿って側部シールが設けられ、扉体が閉じた状態において板材の下端部と下部シールとが戸当りと扉体との間に挟持され、板材の側端部と側部シールとが戸当りと扉体との間に挟持される防水ドア構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記防水ドア構造は、上記扉体が閉じた状態において、上記板材の下端部と上記下部シールとが上記戸当りと上記扉体との間に挟持され、上記板材の側端部と上記側部シールとが上記戸当りと上記扉体との間に挟持される構造であるため、上記ドア開口に対する止水効果を出すためには、扉体が閉められている必要がある。このため、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合に、この屋外への避難が困難になるおそれがある。
【0005】
また、パテ等でドアとドア枠の隙間を塞ぐ対策では、外水が引いた後にパテを撤去する必要があり、この撤去作業に手間がかかる等の欠点がある。
【0006】
この発明は、ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められる必要が無く、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞ぐ必要もないドア開口の浸水抑止具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のドア開口の浸水抑止具は、ドア開口を開閉する扉体を支持するドア枠に取り付けられるドア開口の浸水抑止具であって、
上記ドア枠の下部の横部材よりも屋内側に位置する床面部に形成された凹部に嵌る下端部を有するとともに、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側の屋内側面および上記下端部よりも上側で上記ドア枠の下部の横部材の屋内側面に対向する縁部を有し、上記下端部が上記凹部に嵌った状態で上記ドア開口の下部側を封鎖する止水板と、
上記止水板の上記縁部の屋外側面に位置するシール部材と、
上記止水板の左右両端側を上記ドア枠の左右の縦部材の屋内側面に押し当てる押圧具と、
を備えており、
上記押圧具による押し当て箇所を力点とし、上記止水板の上記下端部の屋内側面であって上記凹部内の立壁部が当たる箇所を支点とし、上記シール部材の配置箇所を作用箇所とし、当該シール部材を、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側の屋内側面および上記下端部よりも上側で上記ドア枠の下部の横部材の屋内側面に押し当てることを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、上記押圧具による押し当て箇所を力点とし、上記止水板の上記下端部の屋内側面であって上記凹部内の上記立壁部が当たる箇所を支点とし、上記シール部材の配置箇所を作用箇所とし、当該シール部材を上記ドア枠側に押し当てるので、ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められている必要は無く、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合には、上記ドア開口から避難することができる。また、上記シール部材が、上記ドア枠の下部側の屋内側面と上記止水板の上記縁部との間に介在するので、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞がなくても、外水が上記止水板をすり抜けて屋内に浸水するのを抑止することができる。また、上記ドア枠の下部側を屋内側と屋内側の2枚の板で挟む構造ではないため、この浸水抑止具を迅速にドア開口に取り付けることができる。
【0009】
上記押圧具は、上記止水板の屋内側面に取り付けられた密閉ハンドルと、上記ドア枠の左右の縦部材の屋内側面に取り付けられたハンドル爪受け具と、を備えてもよい。これによれば、上記押圧具として螺子を用いる構成とした場合の螺子締め等の操作が不要となるため、浸水抑止具をドア開口に迅速に取り付けることができる。
【0010】
上記止水板の下端面には、上記シール部材とともに下端シール部材が設けられており、上記密閉ハンドルの密閉操作で上記止水板に下方向の押し下げ力が働いて、上記止水板の下端側が上記下端シール部材により止水されるようにしてもよい。
【0011】
上記止水板の屋内側面であって、少なくとも上記シール部材の配置箇所に対応する箇所に補強肉厚部が形成されていてもよい。これによれば、上記止水板の剛性を高めて、上記シール部材を上記ドア枠の屋内側面にしっかりと押圧することができる。
【0012】
上記止水板の上記下端部の屋内側面には、上記補強肉厚部が形成されない構成としてもよい。これによれば、上記補強肉厚部による止水板の補強を図りつつ、上記凹部内にコンパクトに階段状部分を形成して、上記凹部内の上記立壁部が当たる箇所を支点とすることができる。
【0013】
上記凹部に嵌る上記下端部は、上記止水板の下端側の全部であり、上記凹部は、上記止水板の左右幅を超える長さを有する溝部であってもよい。これによれば、上記止水板の下端側の全体が梃の支点箇所となり、止水板の下端側の一部だけが支点箇所となる構造に比べて頑丈となる。
【0014】
上記凹部に嵌る上記下端部は、上記止水板の下端側の一部であり、上記凹部は、上記下端側の上記一部を収容してもよい。これによれば、上記一部には大きな力がかかるものの、上記凹部の占める領域を小さくできる。
【0015】
上記凹部の上面開口には、蓋部が備えられていてもよい。これによれば、上記凹部内に埃等が溜まるのを抑制できる。
【0016】
上記蓋部は、上記下端部の差し込みで下方に自動で開いてもよい。これによれば、上記蓋部を開くのに手間取って浸水抑止具の設置に時間がかかる事態を回避できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明であれば、ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められている必要が無いので、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合には、上記ドアから避難することができ、また、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞ぐ必要もないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態のドア開口の浸水抑止具の玄関ドアへの取り付けを示した概略の説明図である。
【
図2】同図(A)は
図1のA-A矢視断面の拡大図であり、同図(B)は
図1のB-B矢視断面の拡大図である。
【
図3】同図(A)は浸水抑止具の止水板を屋内側面から見るとともに密着ハンドルを拡大して示した説明であり、同図(B)は同止水板を屋外側面から見た背面図である。
【
図4】玄関ドアに取り付けられた
図1の浸水抑止具の概略の拡大縦断面図である。
【
図5】玄関ドアへの
図1の浸水抑止具の取り付け手順を示した説明図である。
【
図6】玄関ドアに取り付けられた他の実施形態の浸水抑止具の概略の拡大縦断面図である。
【
図7】他の実施形態のドア開口の浸水抑止具の玄関ドアへの取り付けを示した概略の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、実施形態のドア開口の浸水抑止具1は、例えば、玄関ドア8に取り付けて用いられる。浸水抑止具1の玄関ドア8への取り付けは、例えば、豪雨により自宅への外水の接近が予想される場合に行われる。通常時においては、浸水抑止具1は、専用のバッグに収納されるか、或いは、玄関等に設けた収納ボックス等に収納することができる。
【0020】
玄関ドア8は、
図2(A)および
図2(B)にも示すように、ドア開口81を開閉する扉体82がヒンジ84によって回動可能にドア枠83に支持される構造を有する。上記ドア枠83は、上側戸当たり(図示せず)と、左右の縦部材としての縦戸当たり83aと、下部の横部材としての沓摺83bと、を有する。
【0021】
上記の上側戸当たり、縦戸当たり83a、および沓摺83bの各々の屋外側面には、風雨の屋内への浸入を阻止するゴムパッキン85が貼付されている。このゴムパッキン85は、例えば、内部が空洞で変形容易であり、上記扉体82が閉じられることで、この扉体82に押圧されて変形し、扉体82の縁部の屋内面側と、上記上側戸当たり、縦戸当たり83a、および沓摺83bの各々の屋外側面との間を封止する。なお、一般に、ゴムパッキン85によって、外水の屋内への浸入を阻止することは困難である。
【0022】
浸水抑止具1は、
図3(A)および
図3(B)にも示すように、止水板11と、シール部材12と、止水板11の上部側の左右位置にそれぞれ設けられた押圧具13と、を備える。
【0023】
止水板11は、例えば、腐食しにくいステンレスやアルミニウム合金を素材として形成された板材であり、高さは、例えば50cm~100cm程度とされ、ドア開口81の屋内側に位置する床面部に形成された凹部14に嵌る下端部114を有し、上記ドア開口81の下部側をドア枠83の屋内側で封鎖するように配置される。また、止水板11は、その横幅が上記ドア開口81の横幅(左右の縦戸当たり83a・83aの内側面間)よりも広幅であり、上記ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々の屋内側面に対向する縁部を有する。また、止水板11は、沓摺83bよりも屋内側に位置する床面部に形成された凹部14に嵌る下端部114を有し、当該下端部114が上記凹部14に嵌った状態で上記ドア開口81の下部側を封鎖する。
【0024】
また、この実施形態では、止水板11の屋内側面であって、シール部材12の配置箇所に対応する箇所に補強肉厚部11aが形成される他、止水板11の上辺部および止水板11の中央側の縦方向にも補強肉厚部11aが形成されている。一方、止水板11の上記下端部114の屋内側面には、補強肉厚部11aは形成されていない。また、止水板11の上辺部の補強肉厚部11aの屋内側には、把手115が取り付けられている。
【0025】
シール部材12は、止水板11における上記縁部の屋外側面に予め貼付されている。なお、シール部材12を止水板11とは別体のものとし、浸水抑止具1をドア枠83に取り付ける際に、上記止水板11に取り付けるようにしてもよい。シール部材12は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエン)ゴムを材料としたテープ等からなる。また、シール部材12は、一例として、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの突出量(横幅)よりも狭い幅を有しており、また、厚さは1cm程度とされる。なお、シール部材12は、EPDMゴムに限らないが、容易に変形してシール性を確保できる部材であるのが望ましい。
【0026】
上記2個の押圧具13は、止水板11の左右両端側を、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの屋内側面に押し当てる。この実施形態では、各押圧具13は、止水板11の屋内側面の左右位置であって、補強肉厚部11aの箇所に取り付けられた密閉ハンドル131と、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの屋内側面に取り付けられたハンドル爪受け具132と、を備える。
【0027】
右側に位置する密閉ハンドル131は、軸部131aを中心に屋内側から見て反時計回りに例えば90度回動されることで、爪部131bが下側からハンドル爪受け具132の爪入口に入り込み、密閉ハンドル131が屋外方向に移動させられ、止水板11の右端側をドア枠83の右の縦戸当たり83aの屋内側面に押し当てる。同様に、左側に位置する密閉ハンドル131は、軸部131aを中心に屋内側から見て時計回りに例えば90度回動されることで、爪部131bが下側からハンドル爪受け具132の爪入口に入り込み、密閉ハンドル131が屋外方向に移動させられ、止水板11の左端側をドア枠83の左の縦戸当たり83aの屋内側面に押し当てる。
【0028】
凹部14に嵌る止水板11の下端部114は、この実施形態では、止水板11の下端側の幅の全部であり、上記凹部14は、止水板11の左右幅を超える長さを有する溝部となっている。そして、この凹部14は、例えば、玄関の施工時に、例えば、ステンレス等の金属からなる樋状の成形品141を配置することで得ることができる。また、この成形品141からなる凹部14の上面開口には、ヒンジによって開く蓋部142が備えられている。この蓋部142は、例えば、巻バネによって、閉じ方向(上方向)に付勢されており、上記下端部114の差し込みにより、上記巻バネに抗して下方に開くことができる。また、凹部14内には、上記下端部114が収容される底部の屋内側に立壁部143が形成されている。また、この実施形態では、成形品141の屋外側部は、沓摺83bの下面側に位置しているが、これに限らない。例えば、成形品141の屋外側部位を上に延ばして沓摺83bの屋内面側に位置させてもよい。この場合は、シール部材12は成形品141の屋外側部位の屋内面に当てられ、成形品141の屋外側部位は、沓摺83bの屋内側面に水密に接着される。すなわち、成形品141の屋外側部位が沓摺83bの屋内側面を構成する。或いは、成形品141とドア枠83とが一体化された構造であってもよい。或いは、成形品141の屋外側部位を上に延ばして当該屋外側部位で戸当たり部分を構成させるとともに、ゴムパッキン85が装着される屋外側部分が戸当たり部分と別部位とされる構造であってもよい。
【0029】
浸水抑止具1のドア枠83への取り付けにおいては、上記のように、止水板11の下端部114を凹部14(底部)に差し込む。そして、
図5に示すように、止水板11を起こしてその上部側をドア枠83の左右の縦戸当たり83aの屋内側面に近接させ、密閉ハンドル131を操作し、止水板11の左右両端をドア枠83の縦戸当たり83aの屋内側面に押し当てる。すなわち、押圧具13による押し当て箇所を力点とし、止水板11の上記下端部114の屋内側面であって凹部14内の立壁部143が当たる箇所を支点とし、シール部材12の配置箇所を作用箇所とし、当該シール部材12を上記ドア枠83の屋内側面に押し当てる。
【0030】
上記の構成であれば、押圧具13による押し当て箇所を力点とし、止水板11の上記下端部114の屋内側面であって凹部14内の立壁部143が当たる箇所を支点とし、シール部材12の配置箇所を作用箇所とし、当該シール部材12を上記ドア枠83に押し当てるので、ドア開口81に対する止水効果を出すために扉体82が閉められている必要は無く、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合には、上記ドア開口81から避難することができる。また、シール部材12が、ドア枠83の屋内側面と止水板11の上記縁部との間に介在するので、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞がなくても、外水が止水板11をすり抜けて屋内に浸水するのを抑止することができる。また、ドア枠83の下部側を屋内側と屋内側の2枚の板で挟む構造ではないため、この浸水抑止具1を迅速にドア開口81に取り付けることができる。
【0031】
外水は、扉体82の周囲側からゴムパッキン85をすり抜けて玄関内側に浸み込んでくるおそれがあるが、このように浸み込んできた外水は、
図4に示しているように、扉体82と止水板11との間に溜まり、止水板11をすり抜けて玄関内に入り込むことはない。そして、このように溜まった水の水位を確認できることにより、家屋内に居ながらにして屋外の外水の水位を知ることができる。
【0032】
また、止水板11をドア開口81に取り付けた状態で、扉体82を閉める運用とすることで、外水に浮いている漂流物を扉体82が受け止める構造となり、止水板11に衝撃耐久性等を求めない安価で軽量な構造とすることもできる。なお、このように、止水板11をドア開口81に取り付けた状態で扉体82が閉まる態様に限定するものではない。ドア開口81に対する止水効果を出すために扉体82は閉められる必要は無いので、止水板11をドア開口81に取り付けた状態では扉体82が閉じられない態様とすることも可能である。
【0033】
押圧具13が、止水板11の屋内側面に取り付けられた密閉ハンドル131と、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの屋内側面に取り付けられたハンドル爪受け具132と、を備える構成であると、当該押圧具として螺子を用いる構成とした場合の螺子締め等の操作が不要となるため、浸水抑止具1をドア開口81に迅速に取り付けることができる。また、密閉ハンドル131が規定通りの角度で回動していないような場合には、これを見た目で判断することができ、密閉不良を事前に知ることも可能となる。
【0034】
少なくとも、止水板11のシール部材12の配置箇所に補強肉厚部11aが形成されていると、止水板11の剛性を高めて、シール部材12をドア枠83の屋内側面にしっかりと押圧することができる。一方、止水板11の下端部114の屋内側面に補強肉厚部11aが形成されない構成としてもよく、これによれば、凹部14内の階段状部分をコンパクトにできるので、当該凹部14の小型化を図ることができる。
【0035】
凹部14に嵌る下端部114が、止水板11の下端側の幅の全部であり、上記凹部14が止水板11の左右幅を超える長さを有する溝部であると、止水板11の下端部114全体で凹部14内の立壁部143に当たることができる。したがって、止水板11の下端側の全体が梃の支点箇所となり、止水板11の下端側の一部だけが支点箇所となる構造に比べて頑丈となる。一方、止水板11の下端側の一部だけが立壁部143に当たる構造では、例えば、当該一部を棒形状にし、且つ、凹部14を溝ではなく、上記一部を収容する穴部とすることができる。このような構成であれば、上記一部には大きな力がかかるものの、上記凹部(穴部)の占める領域を小さくできる。
【0036】
凹部14の上面開口に蓋部142が備えられていると、上記凹部14内に埃等が溜まるのを抑制できる。また、蓋部142が上記下端部114の差し込みで下方に自動で開く構造であると、上記蓋部142を開くのに手間取って浸水抑止具1の設置に時間がかかる事態を回避することができる。なお、足で蓋部142を踏んだ際に、蓋部142が下に回動しないように、ロック機構を設けておき、このロック機構のロックを解除した後に蓋部142が自動で開くようにしてもよい。また、蓋部142が下端部114の差し込みで下方に自動で開く構造に限るものではない。蓋部を上側に起こして開ける構造や外す構造でもよい。
【0037】
なお、止水板11の下端面に、シール部材12とともに、
図6に示すように、下端シール部材12Aが設けられていてもよい。密閉ハンドル131の密閉操作で止水板11に下方向の押し下げ力が働く構成の場合、止水板11の下端側が上記下端シール部材12Aにより止水される構成となる。また、凹部14の底に砂などが多少入り込んでしまった場合でも、下端シール部材12Aが在ると、密閉ハンドル131を下げたときに砂の体積分を吸収してくれるため、止水板11を定位置に固定することができる。凹部14の底に溜まった砂などを掃除機で吸い取る時間がないような時には特に有効となる。
【0038】
また、
図7に示すように、高さが100cm程度と高めの止水板11Aを備える浸水抑止具1Aとすることもできる。この浸水抑止具1Aでは、押圧具13を止水板11の上辺側位置と、高さ方向の略中間位置とに左右2個ずつ設けている。シール部材12の縦部分の高さも、100cm程度とされる。
【0039】
また、少なくとも、止水板11における上記縁部(ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々の屋内側面に対向する縁部)が板材からなっていればよい。すなわち、止水板11は、その全体が板材からなるものに限らず、上記縁部の領域が板材からなり、この板材に例えば防水シートが水密状態に接着された構造のものでもよい。
【0040】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 :浸水抑止具
1A :浸水抑止具
8 :玄関ドア
11 :止水板
11A :止水板
11a :補強肉厚部
12 :シール部材
12A :下端シール部材
13 :押圧具
14 :凹部
81 :ドア開口
82 :扉体
83 :ドア枠
83a :縦戸当たり
83b :沓摺
84 :ヒンジ
85 :ゴムパッキン
114 :下端部
115 :把手
131 :密閉ハンドル
131a :軸部
131b :爪部
132 :ハンドル爪受け具
141 :成形品
142 :蓋部
143 :立壁部