(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042431
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】シャシダイナモ装置用負荷モータ
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240321BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G01M17/007 A
H02K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147141
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】舟木 勇太
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC01
5H605DD05
5H605DD09
5H605DD13
5H605GG06
(57)【要約】
【課題】自動車のタイヤハウス内への設置を可能としたシャシダイナモ装置用負荷モータ1において、厚さが増大することなく冷媒流路からの液状冷媒の流出を防止する。
【解決手段】端壁部22の軸方向Xの内方端面で周壁部21の軸方向Xの外方端面と重合する部位に、貫通路301及び第1連通溝よりも径方向Rの内外方に位置する、ケース2と同心の第1環状溝501と第2環状溝502とが刻設され、環状ブラケット101の軸方向Xの外方端面でケース2の周壁部21の軸方向Xの内方端面と重合する部位に、貫通路301及び第1連通溝よりも径方向Rの内外方に位置する、ケース2と同心の第3環状溝601と第4環状溝602とが刻設され、全ての第1環状溝501、第2環状溝502、第3環状溝601及び第4環状溝602の内部にシール剤が充填されて、周壁部21を周方向に蛇行する冷媒流路がシールされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の性能試験を行うシャシダイナモ装置に設けられるシャシダイナモ装置用負荷モータであって、
周壁部と端壁部と周壁部及び端壁部により囲まれた中空部とを有するケースと、ケースの周壁部内面に固定されたステータと、ケースの中空部の内部に収納され、ステータの径方向内方に回転自在に設けられ、且つ自動車の駆動輪連結部に連結可能なロータとを備え、
自動車の車幅方向を軸方向、車幅方向外方を軸方向外方、車幅方向内方を軸方向内方として、ケースの周壁部は軸方向に延び、ケースの端壁部は周壁部の軸方向外方端に設けられ、ケースは、シャシダイナモ装置用負荷モータの設置時に、自動車のタイヤハウスに軸方向外方から挿入可能であり、ケースの中空部には、自動車のブレーキディスクとブレーキキャリパとが挿入可能とされ、
ロータは、自動車の駆動輪連結部に連結可能なロータ連結部と、ロータ連結部を駆動輪連結部に連結した状態で、ブレーキキャリパよりも軸方向外方位置で径方向外方に延びるロータフレームと、ロータフレームの径方向外方端に接続され、ロータフレームの径方向外方端との接続部から軸方向内方に延びるロータ周壁部と、ロータ周壁部に固定された磁石とを備え、ロータ連結部を駆動輪連結部に連結した状態でロータ周壁部の径方向内方の空間内にブレーキキャリパが挿入されるものにおいて、
ケースの周壁部の軸方向内方端に、この軸方向内方端とロータ周壁部の軸方向内方端との間を覆うように径方向内方に延びる環状ブラケットが設けられ、
ケースの周壁部に、軸方向に貫通する複数の貫通路が周方向に所定間隔で設けられると共に、ケースの周壁部の軸方向外方端面に、隣接する2つの貫通路を一組として一組おきに連通させる複数の第1連通溝が設けられ、且つケースの周壁部の軸方向内方端面に、第1連通溝で連通されない隣接する2つの貫通路を一組として一組おきに連通させる複数の第2連通溝が設けられ、
第1連通溝及び第2連通溝は、夫々、ケースの端壁部と環状ブラケットとで覆われ、貫通路、第1連通溝及び第2連通溝によって、液状冷媒がケースの周壁部を周方向に蛇行しながら流通可能となる冷媒流路が形成され、
ケースの端壁部の軸方向内方端面でケースの周壁部の軸方向外方端面と重合する部位に、複数の貫通路及び第1連通溝よりも径方向外方に位置する、ケースと同心の第1環状溝と、複数の貫通路及び第1連通溝よりも径方向内方に位置する、ケースと同心の第2環状溝とが刻設され、
環状ブラケットの軸方向外方端面でケースの周壁部の軸方向内方端面と重合する部位に、複数の貫通路及び第1連通溝よりも径方向外方に位置する、ケースと同心の第3環状溝と、複数の貫通路及び第1連通溝よりも径方向内方に位置する、ケースと同心の第4環状溝とが刻設され、
全ての第1環状溝、第2環状溝、第3環状溝及び第4環状溝の内部にシール剤が充填されて冷媒流路がシールされていることを特徴とするシャシダイナモ装置用負荷モータ。
【請求項2】
ケースの端壁部はケースの周壁部に所定間隔で締結され、締結部を挟んで周方向の両側位置に第1環状溝と第2環状溝とを径方向に接続する一対の第1径方向溝が刻設され、環状ブラケットはケースの周壁部に所定間隔で締結され、締結部を挟んで周方向の両側位置に第3環状溝と第4環状溝とを径方向に接続する一対の第2径方向溝が刻設され、全ての第1径方向溝及び第2径方向溝の内部にシール剤が充填されていることを特徴とする請求項1記載のシャシダイナモ装置用負荷モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の性能試験を行うシャシダイナモ装置に設けられるシャシダイナモ装置用負荷モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシャシダイナモ装置は、自動車の駆動輪にロータ軸が相対回転不能に結合される負荷モータと、機枠に回転自在に支持された接輪ローラと、接輪ローラの回転軸にロータ軸が相対回転不能に固定された補償モータとを備える(例えば、特許文献1参照)。上記負荷モータでは、ロータ軸にケース外方に延びる中間軸が連結される。そして、中間軸先端のフランジ部が、ボルトによりスペーサを介して駆動輪のハブ部に固定される。自動車の性能試験では、負荷モータに流れる電流や周波数を制御して、実負荷、即ち、機械的負荷を与える。そして、ロータリエンコーダ、レゾルバ、圧力センサ、加速度センサ等を備えた測定装置で検出される車速信号、前後荷重変化、トルク変化、重心移動量等の各値が制御系の演算部にリアルタイムで入力される。
【0003】
また、シャシダイナモ装置の中には、自動車の駆動輪連結部から駆動輪を取り外した状態で、負荷モータのケース外方に延びる中間軸先端のフランジ部を駆動輪連結部に連結し、上記接輪ローラを省略したものも開発されている。このシャシダイナモ装置の負荷モータは、従来の上記シャシダイナモ装置が備えた負荷モータと同様に、車体外方に大きく張り出している。
【0004】
近年、自動車の運転安全性の向上を図り、衝突回避ブレーキシステム、先行車発信通知システム、標識認識システム、誤発進抑制システム、車間距離保持支援システム、車線維持支援システム、路外逸脱抑制システム等が開発され、各種センサが車体に設けられている。このような自動車に対し、車体外方に大きく張り出す上記負荷モータを用いると、負荷モータをセンサが障害物として誤検知し、自動車が誤作動することがある。特に、今後実用化が計画されている自動運転車では、より多くのセンサが設けられることから、負荷モータの誤検知に基づく自動車の誤作動の解決は急務である。
【0005】
そこで、本出願人は、WO2019/053940で、周壁部と端壁部と周壁部及び端壁部により囲まれた中空部とを有するケースと、ケースの周壁部内面に固定されたステータと、ケースの中空部の内部に収納され、ステータの径方向内方に回転自在に設けられ、且つ自動車の駆動輪連結部に連結可能なロータとを備えたシャシダイナモ装置用負荷モータを提案している。このものでは、自動車の車幅方向を軸方向、車幅方向外方を軸方向外方、車幅方向内方を軸方向内方として、ケースの周壁部は軸方向に延び、ケースの端壁部は周壁部の軸方向外方端に設けられ、ケースは、シャシダイナモ装置用負荷モータの設置時に、自動車のタイヤハウスに軸方向外方から挿入可能であり、ケースの中空部には、内部に自動車のブレーキディスクとブレーキキャリパとが挿入可能とされる。また、ロータは、自動車の駆動輪連結部に連結可能なロータ連結部と、ロータ連結部を駆動輪連結部に連結した状態で、ブレーキキャリパよりも軸方向外方位置で径方向外方に延びるロータフレームと、ロータフレームの径方向外方端に接続され、ロータフレームの径方向外方端との接続部から軸方向内方に延びるロータ周壁部と、ロータ周壁部に固定された磁石とを備えている。そして、上記シャシダイナモ装置用負荷モータでは、ロータ連結部を駆動輪連結部に連結した状態でロータ周壁部の径方向内方の空間内にブレーキキャリパが挿入されるようにしている。
【0006】
一般に、モータではロータの回転に伴い温度が上昇することから、上記シャシダイナモ装置用負荷モータも例外なく冷却が必要である。そこで、ケースの周壁部にその周方向に亘って軸方向に蛇行する、水、油等の液状冷媒が流通可能な冷媒流路を設けることが考えられる。この場合、液状冷媒が冷媒流路の外部に漏出しないような対策を講じなければならない。通常、液状冷媒の漏出防止にはOリングが採用されるが、Oリングを上記シャシダイナモ装置用負荷モータに取り付けるとなると、Oリング取付け用の凹部を形成するために端壁部等をその分厚くせざるを得ない。その結果、上記シャシダイナモ装置用負荷モータの、軸方向の厚さが薄いという特長が損なわれることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、上記提案のシャシダイナモ装置用負荷モータにおいて、厚さが増大することなく冷媒流路からの液状冷媒の流出を防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、自動車の性能試験を行うシャシダイナモ装置に設けられるシャシダイナモ装置用負荷モータであって、周壁部と端壁部と周壁部及び端壁部により囲まれた中空部とを有するケースと、ケースの周壁部内面に固定されたステータと、ケースの中空部の内部に収納され、ステータの径方向内方に回転自在に設けられ、且つ自動車の駆動輪連結部に連結可能なロータとを備え、自動車の車幅方向を軸方向、車幅方向外方を軸方向外方、車幅方向内方を軸方向内方として、ケースの周壁部は軸方向に延び、ケースの端壁部は周壁部の軸方向外方端に設けられ、ケースは、シャシダイナモ装置用負荷モータの設置時に、自動車のタイヤハウスに軸方向外方から挿入可能であり、ケースの中空部には、自動車のブレーキディスクとブレーキキャリパとが挿入可能とされ、ロータは、自動車の駆動輪連結部に連結可能なロータ連結部と、ロータ連結部を駆動輪連結部に連結した状態で、ブレーキキャリパよりも軸方向外方位置で径方向外方に延びるロータフレームと、ロータフレームの径方向外方端に接続され、ロータフレームの径方向外方端との接続部から軸方向内方に延びるロータ周壁部と、ロータ周壁部に固定された磁石とを備え、ロータ連結部を駆動輪連結部に連結した状態でロータ周壁部の径方向内方の空間内にブレーキキャリパが挿入されるものにおいて、ケースの周壁部の軸方向内方端に、この軸方向内方端とロータ周壁部の軸方向内方端との間を覆うように径方向内方に延びる環状ブラケットが設けられ、ケースの周壁部に、軸方向に貫通する複数の貫通路が周方向に所定間隔で設けられると共に、ケースの周壁部の軸方向外方端面に、隣接する2つの貫通路を一組として一組おきに連通させる複数の第1連通溝が設けられ、且つケースの周壁部の軸方向内方端面に、第1連通溝で連通されない隣接する2つの貫通路を一組として一組おきに連通させる複数の第2連通溝が設けられ、第1連通溝及び第2連通溝は、夫々、ケースの端壁部と環状ブラケットとで覆われ、貫通路、第1連通溝及び第2連通溝によって、液状冷媒がケースの周壁部を周方向に蛇行しながら流通可能となる冷媒流路が形成され、ケースの端壁部の軸方向内方端面でケースの周壁部の軸方向外方端面と重合する部位に、複数の貫通路及び第1連通溝よりも径方向外方に位置する、ケースと同心の第1環状溝と、複数の貫通路及び第1連通溝よりも径方向内方に位置する、ケースと同心の第2環状溝とが刻設され、環状ブラケットの軸方向外方端面でケースの周壁部の軸方向内方端面と重合する部位に、複数の貫通路及び第1連通溝よりも径方向外方に位置する、ケースと同心の第3環状溝と、複数の貫通路及び第1連通溝よりも径方向内方に位置する、ケースと同心の第4環状溝とが刻設され、全ての第1環状溝、第2環状溝、第3環状溝及び第4環状溝の内部にシール剤が充填されて冷媒流路がシールされていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ケースの周壁部にその全周に亘って軸方向に蛇行して流通する冷媒流路が形成されているが、ケースの端壁部に刻設された第1環状溝と第2環状溝、及び環状ブラケットに刻設された第3環状溝と第4環状溝との全てにシール剤が充填されているため、冷媒流路を流通する液状冷媒の漏出を防止でき、且つこれをシャシダイナモ装置用負荷モータの厚さを増大させることなく実現できる。
【0011】
本発明においては、ケースの端壁部はケースの周壁部に所定間隔で締結され、締結部を挟んで周方向の両側位置に第1環状溝と第2環状溝とを径方向に接続する一対の第1径方向溝が刻設され、環状ブラケットはケースの周壁部に所定間隔で締結され、締結部を挟んで周方向の両側位置に第3環状溝と第4環状溝とを径方向に接続する一対の第2径方向溝が刻設され、全ての第1径方向溝及び第2径方向溝の内部にシール剤が充填されていることが望ましい。これによれば、ケースの周壁部との締結部を挟んで周方向両側で、ケースの端壁部には第1環状溝を径方向に接続する一対の第1径方向溝が刻設され、且つ環状ブラケットには第2環状溝を径方向に接続する一対の第2径方向溝が刻設され、全ての第1径方向溝及び第2径方向溝の内部にもシール剤が充填されるため、冷媒流路からの液状冷媒の流出防止により有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は、本発明のシャシダイナモ装置用負荷モータの一実施形態を示す、側方から見た要部断面図、(b)(c)(d)は、夫々、(a)の要部拡大断面図。
【
図2】
図1に示すシャシダイナモ装置用負荷モータを端壁部側から見た一部切欠正面図。
【
図3】
図1に示すシャシダイナモ装置用負荷モータの環状ブラケットを軸方向外方から見た要部の一部切欠正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1(a)を参照して、本発明の一実施形態であるシャシダイナモ装置用負荷モータ(以下、負荷モータと略記する)1を説明する。負荷モータ1は、自動車の性能試験を行うシャシダイナモ装置に設けられ、自動車の車軸端に設けられる駆動輪連結部cに取付可能である。駆動輪連結部cは、自動車の車両懸架装置の構造によって異なるが、ブレーキディスクc
1、ホイールハブ等を含む部位である。負荷モータ1は、ケース2と、ステータ3と、ロータ4とを備えている。
【0014】
以下の説明では、径方向をR、その外方、内方を夫々o,iと記す。また、自動車の車幅方向を軸方向X、車幅方向外方を軸方向Xの外方o、車幅方向内方を軸方向Xの内方iと記す。ケース2は、周壁部21と、端壁部22と、周壁部21及び端壁部22により囲まれた中空部23とを有している。周壁部21は、軸方向Xに延びる円筒状の部材である。端壁部22は、周壁部21の軸方向Xの外方端に設けられた円形の部材である。端壁部22の詳細は後述する。
【0015】
ステータ3は、ケース2の周壁部21の内面に固定されている。ステータ3には、コイルが巻装され、シャシダイナモ装置からの電力供給が可能になっている。ロータ4は、ケース2の中空部23に収納され、ステータ3の径方向Rの内方iに回転自在に設けられている。また、ロータ4は自動車の駆動輪連結部cに連結可能である。
【0016】
ケース2は、負荷モータ1の設置時に、後述するように、自動車のタイヤハウスに軸方向Xの外方oから挿入可能であり、挿入時には、中空部23に、自動車の駆動輪連結部cに含まれるブレーキディスクc1とブレーキキャリパc2とが挿入される。
【0017】
ケース2の周壁部21には、下端部に台座801が設けられている。台座801は、周壁部21の外周面に沿う、弧状の曲面である座面802と、性能試験の際に自動車が設置される設置面上に配置される、平面状の設置面803とを有する。このような台座801は、ケース2の周壁部21における軸方向Xの外方端部及び内方端部の2カ所に1つずつ設けられる。
【0018】
ロータ4は、ロータ連結部41と、ロータフレーム42と、ロータ周壁部43と、磁石44とを備えている。ロータ連結部41は、自動車の駆動輪連結部cへの連結を担う部位である。ロータ4には、ロータフレーム42とは別体とした軸部材45が設けられ、軸部材45は軸方向Xの内方iにロータ連結部41を有している。ロータフレーム42は径方向Rの内方端部において軸部材45に連結されている。具体的には、軸部材45は軸方向Xに延びる部材であり、円柱状のロータフレーム固定部45aと、円筒状のロータフレーム固定位置決め部45bとを備えている。ロータフレーム固定部45aの軸方向Xの外方端部から中程までの部分の外周面にねじ溝が刻設されている。また、ロータフレーム固定部45aの軸方向Xの内方端部は径方向Rの外方oに折曲され、折曲部45a1の外方端部が軸方向Xの内方iに折曲されてロータフレーム固定位置決め部45bとなり、ロータフレーム固定位置決め部45bは軸方向Xの内方iに延びている。ロータフレーム固定部45aの折曲部45a1の基部における軸方向Xの外方端面の一部は、径方向Rの外方oに裾広がりの円錐面45a2になっている。ロータフレーム位置決め固定部45bには、軸方向Xの外方oに突出する複数のピン5が同心円上に所定の間隔で植設されている。また、ロータフレーム固定位置決め部45bの軸方向Xの内方端部が径方向Rの外方oに折曲され、この折曲部がロータ連結部41になっている。ロータ連結部41には、軸方向Xに貫通する複数の挿通孔6が開設されている。挿通孔6は、ボルト等の固着具の挿入が可能とされ、所定の間隔で同心円上に配置されている。また、挿通孔6は、ブレーキディスクc1等の駆動輪連結部cにおいて車幅方向に貫通して開設された複数のねじ孔(図示省略)に1対1の関係で正対可能である。軸部材45は、ロータ連結部41の各挿通孔6からボルト等の固着具を挿入し、駆動輪連結部cの上記ねじ孔の各一つへ螺入することによって、駆動輪連結部cに連結される。
【0019】
ロータフレーム42は、ロータ連結部41を駆動輪連結部cに連結した状態で、ブレーキキャリパc2よりも軸方向Xの外方位置で径方向Rの外方oに延びている。具体的には、ロータフレーム42は、径方向Rの外方oに延びる第1直立部42aと、第1直立部42aとは別体にされ、径方向Rの外方oに延びる第2直立部42bとを備えている。第1直立部42aの径方向Rの内方端部42a1は、軸方向Xの外方oに折曲すると共に、径方向Rの内方iに突出する突出部42a2を有している。内方端部42a1には、軸方向Xの内方部分に、ピン5の挿入が可能な複数のピン孔7が設けられている。また、突出部42a2の軸方向Xの内外方端の両内周端面は、径方向Rの外方oに裾広がりの円錐面になっている。一方、第1直立部42aの径方向Rの外方端部42a3は、ブレーキキャリパc2に接触しない程度に軸方向Xの内方iに折曲し、フランジ状になっている。更に、第1直立部42aの内方端部42a1と外方端部42a3との中間部分には、円筒状の筒軸42dが軸方向Xの外方oに突設されている。筒軸42dは第1直立部42aと一体に形成されている。
【0020】
第1直立部42aと第2直立部42bとは、トルクセンサ8を介して連結されている。即ち、第2直立部42bの径方向Rの内方端部は、第1直立部42aの外方端部42a3と同様なフランジ状になっていて、第1直立部42aの外方端部42a3と第2直立部42bの上記内方端部の夫々には軸方向Xに貫通する複数のねじ孔が形成されている。従って、トルクセンサ8の径方向Rの内外両端部における軸方向Xの内方端面を第1直立部42aの外方端部42a3おける軸方向Xの外方端面及び第2直立部42bの上記内方端部における軸方向Xの外方端面と重合させ、ボルト9をトルクセンサ8の軸方向Xの外方oから上記ねじ孔の各一つに螺入することによって、第1直立部42aと第2直立部42bがトルクセンサ8を介して連結される。
【0021】
トルクセンサ8は、軸に加わるトルクを計測するセンサであり、トルクセンサ8には、例えば、磁歪み効果を利用して非接触でトルクを検出する非接触方式のもの等を採用することができる。この場合、トルクセンサ8には端壁部22と対向する側にトランスミッタ8aを設けることができる。トランスミッタ8aは、例えば、歪みゲージと、歪みゲージの出力信号を電圧に変換するコンバータと、得られる電圧信号を送信するアンテナとを備えることができる。このようなトランスミッタ8aをトルクセンサ8に設ける場合、アンテナからの送信信号を受信するレシーバを、トランスミッタ8aと対向する、端壁部22の軸方向Xの内方端面に設けることができ、レシーバで受信した信号を評価ユニットに入力することによりトルクの解析等が可能となる。
【0022】
そして、ロータ周壁部43は、ロータフレーム42の第2直立部42bの径方向Rの外方端に接続され、第2直立部42bの径方向Rの外方端との接続部43aから軸方向Xの内方iに延びている。磁石44は、複数個がロータ周壁部43の周方向に所定の間隔を存して設けられ、且つ各磁石44の径方向Rの外方端面とステータ3の径方向Rの内方端面との間には所定のギャップgが設けられている。ロータ周壁部43の軸方向Xの外方端部が折曲する場合、この外方端部の径方向Rの外方端位置はギャップgを確保することができる範囲とされる。ロータ周壁部43の上記外方端部は、最も端壁部22の近くに位置する一部を径方向Rの外方oに若干突出させ、突出部を磁石44を固定する際の位置決めとして利用することができる。
【0023】
端壁部22は第1カバー11を有し、第1カバー11は、端壁部22の外周部を形成する外カバー部11aと、端壁部22の内周部を形成する内カバー部11bとを備えている。外カバー部11aと内カバー部11bとは同一面上に連結されている。
図1(b)を参照して、外カバー部11aの径方向Rの外方端部には軸方向Xの内方iに突出する環状突起11a
1が突設されている。環状突起11a
1に正対する周壁部21の軸方向Xの外方端部には第1環状凹欠部21aが凹設されている。環状突起11a
1が第1環状凹欠部21aに配置されることにより外カバー部11aの周壁部21への取付位置が決まる。外カバー部11aは、その外周縁部において、所定間隔で形成されたボルト挿入孔11a
2を通じて周壁部21の軸方向Xの外方端部に形成されたボルト螺入孔21a
1にボルト12を螺入することによって、内カバー部11bに締結される。また、内カバー部11bの径方向Rの内方端部は軸方向Xの外方oに折曲し、回転支持部14の胴部14aとなっている。胴部14aは円筒状であり、胴部14aの内面には内輪回転方式の軸受15が取り付けられている。ロータフレーム42の筒軸42dは、胴部14aの径方向Rの内方iに突出し、筒軸42dと胴部14aとの間に軸受15が介在している。
【0024】
また、回転支持部14において、ロータフレーム42の内方端部42a1と筒軸42dとの間は中空であり、空間14bに回転センサ16が収納されている。回転センサ16は、胴部14aの軸方向Xの外方端面にねじ17により固定された第1ブラケット18にねじ19により取り付けられた磁気ピックアップ16aと、ロータフレーム42の第1直立部42aの内方端部42a1に外嵌固定されたセンサギヤ16bとで構成される。回転センサ16を含めて回転支持部14の内部は、第1ブラケット18にねじ20により取り付けられた第2カバー51により軸方向Xの外方oから覆い隠されている。第2カバー51はリング状であるが、その中央部には、ナット10の取外し時に取り外されるサブカバー52がねじ止めされている。
【0025】
負荷モータ1の設置に際しては、軸部材45をロータ連結部41において駆動輪接続部cに連結した後に、突出部42a2をロータフレーム固定部45aに外嵌させた状態でピン孔7にピン5を挿入し、ロータフレーム42の固定位置を決める。この状態において、ナット10をロータフレーム固定部45aの軸方向Xの外方端から内方iに向かってねじ込むと、突出部42a2の軸方向Xの内方端面がロータフレーム固定部45aにおける折曲部45a1の円錐面45a2と密接する。ナット10の軸方向Xの内方端の外周面も軸方向Xの外方oに裾広がりの円錐面とすることによって、ナット10の軸方向Xの内方端面が、突出部42a2における軸方向Xの外方oの外周端面と密接する。こうして、ロータフレーム42は、内方端部42a1において軸部材45に連結され、ロータ4は駆動輪連結部cと共に回転可能となる。
【0026】
ロータ連結部41を駆動輪連結部cに連結した状態では、ブレーキキャリパc2は、中空部23における周壁部21の径方向Rの内方iの空間23a内に挿入される。従って、ロータフレーム42はブレーキキャリパc2と非接触となり、互いに干渉することはないため、負荷モータ1の設置時にブレーキキャリパc2を車体から取り外す必要がない。また、ロータ連結部41からケース2の端壁部22までの軸方向Xの距離を短縮することができ、ロータ連結部41を自動車の駆動輪連結部cに連結した状態において、負荷モータ1の回転支持部14の張出しは、自動車のステアリングホイールを操作して車輪を左右に動かすときの車輪がタイヤハウスの外方に飛び出す出代よりは小さくすることができ、ケース2の端壁部22が自動車のタイヤハウスの外方に大きく張り出すのを抑制することができる。このように、ロータ連結部41から端壁部22までの軸方向Xの距離が短縮され、負荷モータ1の回転支持部14の張出しは、自動車のステアリングホイールを操作して車輪を左右に動かすときの車輪がタイヤハウスの外方に飛び出す出代よりは小さいので、自動車に設けられた各種センサが、負荷モータ1を障害物として誤検知することが抑制され、センサの誤検知に基づく自動車の誤作動が抑制可能となり、信頼性の高い自動車の性能試験が可能になる。また、負荷モータ1では、ロータフレーム42にトルクセンサ8が設けられているので、負荷モータ1がトルクセンサ8を内蔵したものとなり、トルクセンサ8も車幅方向外方に突出しない。このため、自動車に設けられた各種センサによる誤検知をより抑制することができる。尚、トルクセンサ8は、自動車に設けられた各種センサによる誤検知を抑制することができる限り、ロータフレーム42に設ける必要は必ずしもない。トルクを計測する計測機器は、負荷モータ1と別体として設けることも可能である。
【0027】
尚、負荷モータ1は、自動車の性能試験に際し、駆動輪に相当する車輪が連結される駆動輪連結部cに連結することができる。駆動輪連結部cへの連結は、自動車の駆動方式が前輪駆動方式であれば前輪2つ、後輪駆動方式であれば後輪2つ、四輪駆動方式であれば四輪の駆動輪連結部cに連結することができる。この場合、自動車の車輪をタイヤが取り付けられたホイールと共に取り外し、負荷モータ1を自動車のタイヤハウスに軸方向Xの外方oから挿入する。また、ロータ連結部41と連結する駆動輪連結部cがホイールハブである場合、ホイールハブには複数のボルトが所定の間隔で同心円上に植設され、上記ボルトは車幅方向外方に突出しているので、ロータ連結部41と駆動輪連結部cとの連結の際にホイールハブに植設された上記ボルトを利用することができる。この場合、ロータ連結部41に開設された挿通孔6には軸方向Xの内方iから上記ボルトを挿入し、ケース2の中空部23の内部に突出させる。そして、レンチを用いてナットを上記ボルトに螺着させてロータ連結部41を駆動輪連結部cに締結することができる。
【0028】
そして、負荷モータ1では、ケース2の周壁部21の軸方向内方端に、この軸方向内方端とロータ周壁部43の軸方向Xの内方端との間を覆うように径方向Rの内方iに延びる環状ブラケットとして第2ブラケット101が設けられている。
図1(c)を参照して、第2ブラケット101は、外周縁部に軸方向Xの外方oにオフセットした環状の第1フランジ部101aを有し、第1フランジ部101aは、径方向Rの外方端がケース2の周壁部21の軸方向Xの内方端に接触可能であり、且つ径方向Rの内方端部に軸方向Xの外方oに突出する環状の位置決め部101bを有している。ケース2の周壁部21の軸方向Xの内方端部は、位置決め部101bと正対する部分に第2環状凹欠部21bを有している。第2環状凹欠部21bに位置決め部101bを挿入することにより、第2ブラケット101のケース2への取付位置が決まる。このようにして位置決めされた状態において、第1フランジ部101aの軸方向Xの外側からワッシャ102を介してボルト103を周壁部21の軸方向Xの外方oに螺入して第2ブラケット101がケース2に締結される。尚、ボルト103の螺入をスムーズに行うために、第1フランジ部101aにはボルト挿入孔101a
1を、周壁部21の軸方向Xの内方端部にはボルト螺入孔21b
1を、共に周壁部21の円周方向に所定の間隔で予め設けておく。
【0029】
図1(d)を参照して、第2ブラケット101は、径方向Rの内方端部にも軸方向Xの外方oにオフセットした環状の第2フランジ部101cを有している。第2フランジ部101cの径方向Rの内方端は、ロータ周壁部43と非接触とされ、この非接触状態を可能にするために、ロータ周壁部43の内方端部43bには、径方向Rの内方iにオフセットした第3環状凹欠部43b
1が設けられている。そして、ロータ周壁部43の形成材料よりも硬度が低い材料から形成された防塵リング104が、第2フランジ部101cにねじ105によって締結され、防塵リング104の内周縁部が、ロータ周壁部43の軸方向Xの内方端の外周面としての第3凹欠部43b
1の外周面に接触するようにしている。このため、防塵リング104は、ロータ4の回転で防塵リング104の内周縁が第2凹欠部43b
1の外周面、即ち、ロータ周壁部43の軸方向Xの内方端の外周面との接触により削られる。その結果、防塵リング104とロータ周壁部43の軸方向Xの内方端との間には粉塵が侵入しない程度のギャップが形成される。このため、性能試験の際にブレーキの作動により発生する粉塵が負荷モータ1の内部、即ち、空間23aに侵入するのを抑制できる。
【0030】
図1(a)(b)(c)、
図2及び
図3を参照して、ケース2の周壁部21に、軸方向Xに貫通する複数の貫通路301が周方向に所定間隔で設けられると共に、周壁部21の軸方向Xの外方端面に、隣接する2つの貫通路301を一組として一組おきに連通させる第1連通溝302が設けられている。更に、周壁部21の軸方向Xの内方端面に、第1連通溝302で連通されない隣接する2つの貫通路301を一組として一組おきに連通させる、第1連通溝301と同様な第2連通溝(図示省略)が設けられている。第1連通溝302及び第2連通溝は、夫々、ケース2の端壁部22と第2ブラケット101とで覆われ、貫通路301、第1連通溝302及び上記第2連通溝によって、水、油等の液状冷媒がケース2の周壁部21を周方向に蛇行しながら流通可能となる冷媒流路が形成されている。この冷媒流路は、端壁部22の外カバー部11aの底部に接続された流入部401及び流出部402と連通している。流入部401に流入管(図示省略)を、流出部402に流出管(図示省略)を夫々接続すると、液状冷媒が流入部401を通じて上記冷媒流路を流れ、流出部402から流出する。液状冷媒を循環させながら上記冷媒流路を流通させることによって、自動車の性能試験に際し、負荷モータ1を冷却することができ、ロータ4の回転に伴う温度上昇を抑制できる。
【0031】
また、ケース2の端壁部22には、その径方向Rの外方端面が周壁部21の軸方向Xの外方端と重合する部位に、複数の貫通路301及び複数の第1連通溝302よりも径方向Rの外方oに位置する、ケース2と同心の第1環状溝501と、複数の貫通路301及び複数の第1連通溝302よりも径方向Rの内方iに位置する、ケース2と同心の第2環状溝502とが刻設されている。更に、第2ブラケット101には、その径方向Rの外方端面がケース2の周壁部21の軸方向Xの内方端面と重合する部位に、複数の貫通路301及び複数の第1連通溝302よりも径方向Rの外方oに位置する、ケース2と同心の第3環状溝601と、複数の貫通路301及び複数の第1連通溝302よりも径方向Rの内方iに位置する、ケース2と同心の第4環状溝602とが刻設されている。
【0032】
そして、負荷モータ1では、全ての第1環状溝501、第2環状溝502、第3環状溝601及び第4環状溝602の内部にシール剤901が充填されて上記冷媒流路がシールされている。このため、負荷モータ1には、ケース2の周壁部21に、その全周に亘って軸方向Xに蛇行して流通する上記冷媒流路が形成されているが、第1環状溝501、第2環状溝502、第3環状溝601及び第4環状溝602の全てにシール剤901が充填されているため、Oリングによらずとも上記冷媒流路を流通する液状冷媒の漏出を防止でき、且つこれを負荷モータ1の厚さを増大させることなく実現できる。Oリングを設ける場合には、Oリング取付け用の凹部を形成するために、端壁部22及び第2ブラケット101を約7mm程度厚くせざるを得ず、合わせて14mmの厚さ増大を招くが、Oリングによらずにシールできるため、負荷モータ1はそのような厚さの増大を回避することができる。
【0033】
更に、
図2及び
図3を参照して、負荷モータ1では、ケース2の端壁部22及び第2ブラケット101の夫々に、ケース2の周壁部21との締結部、即ち、ボルト挿入孔101a
1を挟んで周方向両側に第1環状溝501及び第2環状溝502を径方向Rに接続する一対の第1径方向溝701と、ケース2の周壁部21との上記締結部を挟んで周方向両側に第3環状溝601及び第4環状溝602を径方向Rに接続する一対の第2径方向溝702とが刻設されている。第1環状溝501、第2環状溝502、第3環状溝601及び第4環状溝602と同様に、全ての第1径方向溝701及び第2径方向溝702の内部にもシール剤901が充填されている。第1径方向溝701及び第2径方向溝702へのシール剤901の充填は、上記冷媒流路からの液状冷媒の流出防止により有効となる。
【0034】
尚、第1環状溝501、第2環状溝502、第3環状溝601、第4環状溝602、第1径方向溝701及び第2径方向溝702の断面形状は特に限定的ではない。半円状、矩形状、台形状等の各種の形状の中からシール剤901を保持することができる適当な形状を選択することができる。また、充填するシール剤901の種類も特に限定的ではなく、シール性の高いものであればよい。例えば、シリコン系の液状ガスケットを採用することができる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。ロータの回転支持部の構造、駆動輪連結部の構成及び構造、端壁部及び環状ブラケットの構造等の細部については、従来公知のものも含め、多様なものを本発明では採用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…シャシダイナモ装置用負荷モータ、2…ケース、21…周壁部、22…端壁部、23…中空部、23a…ロータ周壁部43の径方向内方の空間、3…ステータ、4…ロータ、41…ロータ連結部、42…ロータフレーム、43…ロータ周壁部、43a…ロータフレーム42の径方向外方端の接続部、44…磁石、101…第2ブラケット(環状ブラケット)、301…貫通路、302…第1連通溝、501…第1環状溝、502…第2環状溝、601…第3環状溝、602…第4環状溝、701…第1径方向溝、702…第2径方向溝、901…シール剤、c…駆動輪連結部、c1…ブレーキディスク、c2…ブレーキキャリパ、X…軸方向、R…径方向、o…外方、i…内方。