(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042432
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】エアチャック
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
B25J15/08 C
B25J15/08 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147143
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直熙
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU04
3C707EW11
3C707HS14
3C707LV06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のフィンガ部の開き加減を調整可能なエアチャックを提供する。
【解決手段】複数のフィンガ部(30、32)を相互に離間する方向に付勢する離間付勢エア室と、複数のフィンガ部を相互に接近する方向に付勢する接近付勢エア室と、離間付勢エア室のエアを給排する第1電磁弁(84)と、接近付勢エア室のエアを給排する第2電磁弁(86)とを備え、第1電磁弁を供給ポート(72)に接続する流路の途中に第1チェック弁が配置され、第2電磁弁を供給ポートに接続する流路の途中に第2チェック弁が配置され、第1電磁弁および第2電磁弁は、バルブボデイ(66)に取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダボデイとバルブボデイと複数のフィンガ部とを備えたエアチャックであって、
前記複数のフィンガ部を相互に離間する方向に付勢する離間付勢エア室と、前記複数のフィンガ部を相互に接近する方向に付勢する接近付勢エア室と、前記離間付勢エア室のエアを給排する第1電磁弁と、前記接近付勢エア室のエアを給排する第2電磁弁と、前記複数のフィンガ部の相互間隔を検出するセンサとを備え、前記センサによって検出される前記複数のフィンガ部の相互間隔が目標間隔となるように前記第1電磁弁および前記第2電磁弁が制御され、
前記離間付勢エア室および前記接近付勢エア室は、前記シリンダボデイに配置され、前記第1電磁弁および前記第2電磁弁は、前記バルブボデイに取り付けられ、前記第1電磁弁を前記バルブボデイの供給ポートに接続する流路の途中に第1チェック弁が配置され、前記第2電磁弁を前記供給ポートに接続する流路の途中に第2チェック弁が配置されるエアチャック。
【請求項2】
請求項1記載のエアチャックにおいて、
前記第1電磁弁は、前記離間付勢エア室に連通する第1ポートと、前記供給ポートに接続される第2ポートと、第1排気ポートに接続される第3ポートとを備え、前記第2電磁弁は、前記接近付勢エア室に連通する第1ポートと、前記供給ポートに接続される第2ポートと、第2排気ポートに接続される第3ポートとを備えるエアチャック。
【請求項3】
請求項2記載のエアチャックにおいて、
前記バルブボデイは、第1プレートおよび第2プレートによって構成され、前記第1プレートは、前記第1排気ポートおよび前記第2排気ポートを備え、前記第2プレートは、前記供給ポートを備えるエアチャック。
【請求項4】
請求項3記載のエアチャックにおいて、
前記第1電磁弁の前記第2ポートは、前記第1プレートに形成された第1供給通路および前記第2プレートに形成された第1供給通路を介して前記供給ポートに接続され、前記第2電磁弁の前記第2ポートは、前記第1プレートに形成された第2供給通路および前記第2プレートに形成された第2供給通路を介して前記供給ポートに接続され、前記第1チェック弁は、前記第2プレートの前記第1供給通路に接続される前記第1プレートの前記第1供給通路の端部に配置され、前記第2チェック弁は、前記第2プレートの前記第2供給通路に接続される前記第1プレートの前記第2供給通路の端部に配置されるエアチャック。
【請求項5】
請求項1記載のエアチャックにおいて、
前記シリンダボデイは、第1シリンダ孔および第2シリンダ孔を有し、前記第1シリンダ孔に第1ラックが配置され、前記第2シリンダ孔に第2ラックが配置され、前記第1ラックの一端に第1ピストンが連結され、前記第1ラックの他端に第2ピストンが連結され、前記第2ラックの一端に第3ピストンが連結され、前記第2ラックの他端に第4ピストンが連結され、前記離間付勢エア室は、前記第1ピストンによって区画される第1エア室および前記第4ピストンによって区画される第4エア室によって構成され、前記接近付勢エア室は、前記第2ピストンによって区画される第2エア室および前記第3ピストンによって区画される第3エア室によって構成され、前記第1ラックおよび前記第2ラックと噛み合うピニオンを備えるエアチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアにより駆動可能な複数のフィンガ部を備えるエアチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エアにより開閉可能な複数のフィンガ部を備え、ワークの把持、搬送および解放を行うエアチャックが知られている。複数のワークが床面等に密集して置かれている場合、複数のフィンガ部が大きく開いた状態でワークに接近すると、把持すべきワークに隣接するワークにフィンガ部が接触し、ワークの把持に支障を来たすおそれがある。複数のフィンガ部の開き加減を調整可能なエアチャックであれば、このような問題は生じない。
【0003】
特許文献1には、エアシリンダの動作位置を任意に位置決めすることが可能な複動形エアシリンダの位置決め制御機構が記載されている。この位置決め制御機構は、ピストンの動作位置を測定するセンサを備え、ピストンが目標位置に到達すると、複動形エアシリンダの各圧力室にエアを給排するための電磁弁がすべてオフになり、各圧力室のエアが封じ込められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記複動形エアシリンダの位置決め制御機構をエアチャックに適用すれば、複数のフィンガ部の開き加減を調整できるので、複数のワークが床面等に密集して置かれている場合でも、一つのワークを把持することが可能である。
【0006】
しかしながら、各圧力室にエアを給排するための電磁弁をすべてオフしても、電磁弁においてエア漏れを完全になくすことは難しいため、複数のフィンガ部の相互間隔が適正に保持されない場合がある。また、経時変化によりピストンのシール部等においてエア漏れが生じる可能性があるため、複数のフィンガ部の相互間隔が適正に保持されない場合がある。
【0007】
本発明は、上述した課題をコンパクトな構成によって解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シリンダボデイとバルブボデイと複数のフィンガ部とを備えたエアチャックであって、複数のフィンガ部を相互に離間する方向に付勢する離間付勢エア室と、複数のフィンガ部を相互に接近する方向に付勢する接近付勢エア室と、離間付勢エア室のエアを給排する第1電磁弁と、接近付勢エア室のエアを給排する第2電磁弁と、複数のフィンガ部の相互間隔を検出するセンサとを備え、センサによって検出される複数のフィンガ部の相互間隔が目標間隔となるように第1電磁弁および第2電磁弁が制御される。離間付勢エア室および接近付勢エア室は、シリンダボデイに配置され、第1電磁弁および第2電磁弁は、バルブボデイに取り付けられる。第1電磁弁をバルブボデイの供給ポートに接続する流路の途中に第1チェック弁が配置され、第2電磁弁を供給ポートに接続する流路の途中に第2チェック弁が配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエアチャックは、第1チェック弁および第2チェック弁を備えるので、所定の動作状態において、エア漏れが発生しても即座にエアが補充され、複数のフィンガ部の相互間隔が所定値に保持される。また、離間付勢エア室および接近付勢エア室がシリンダボデイに配置され、第1電磁弁および第2電磁弁がバルブボデイに取り付けられるので、必要なエア回路をコンパクトに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るエアチャックの外観図である。
【
図3】
図3は、
図2のエアチャックのIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のエアチャックのIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】
図5は、フィンガ部同期機構の構造が分かるように、
図1のエアチャックの一部を部品または部品群に展開した図である。
【
図6】
図6は、バルブボデイの構造が分かるように、
図1のエアチャックを部品または部品群に展開した図である。
【
図7】
図7は、
図2のエアチャックのVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】
図8は、
図2のエアチャックのVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】
図9は、
図1のエアチャックの流体回路を概念的に示す回路図である。
【
図10】
図10は、
図1のエアチャックの開動作における流体回路を概念的に示す回路図である。
【
図11】
図11は、
図1のエアチャックの閉動作における流体回路を概念的に示す回路図である。
【
図12】
図12は、
図1のエアチャックの中間停止における流体回路を概念的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および
図2に示されるように、本発明の実施形態に係るエアチャック10は、シリンダボデイ12、第1フィンガ部30、第2フィンガ部32およびバルブボデイ66を含む。また、エアチャック10は、フィンガ部同期機構、エア駆動部および電磁弁制御部を含む。エアチャック10は、例えば、ロボットアームの先端に取り付けられて使用される。以下において、上下方向に関する言葉を用いたときは、シリンダボデイ12に対してバルブボデイ66が配置される向きを「上」と定義したことに基づく。
【0012】
図3および
図4に示されるように、直方体状のシリンダボデイ12は、第1シリンダ孔14および第2シリンダ孔16を有する。第1シリンダ孔14および第2シリンダ孔16は、シリンダボデイ12の長手方向(X方向)に貫通する。第1シリンダ孔14の一端は、第1エンドキャップ18aによって閉塞され、第1シリンダ孔14の他端は、第2エンドキャップ18bによって閉塞される。第2シリンダ孔16の一端は、第3エンドキャップ18cによって閉塞され、第2シリンダ孔16の他端は、第4エンドキャップ18dによって閉塞される。これらのエンドキャップ18a~18dは、C形止め輪20によってシリンダボデイ12に固定される。
【0013】
図5に示されるように、シリンダボデイ12は、後述するピニオン38を収容するための凹部22を有する。この凹部22は、シリンダボデイ12の下面に開口し、第1シリンダ孔14および第2シリンダ孔16と繋がっている。シリンダボデイ12の下面には、ガイドレール28が取り付けられる。シリンダボデイ12の側面は、後述する位置センサ88を取り付けるためのセンサ溝24を有する。なお、参照符号36で示される部材は、ガイドレール28をシリンダボデイ12に取り付けるためのボルトである。
【0014】
第1フィンガ部30および第2フィンガ部32は、それぞれ複数のボール34を介してガイドレール28にスライド可能に支持される(
図4参照)。第1フィンガ部30および第2フィンガ部32には、ワークを把持するためのアタッチメント(図示せず)が取り付けられる。
【0015】
フィンガ部同期機構は、ピニオン38、第1ラック40、第2ラック42および一対のジョイント44によって構成される。シリンダボデイ12の凹部22に配置されるピニオン38は、ピニオン38の軸線回りに回動(自転)できるように、シリンダボデイ12およびガイドレール28に支持される。
【0016】
円柱状の第1ラック40は、第1シリンダ孔14に挿通され、X方向に移動可能に支持される。円柱状の第2ラック42は、第2シリンダ孔16に挿通され、X方向に移動可能に支持される。第1ラック40の側面は、ピニオン38の歯38aと噛み合う歯部40aを有するとともに、一方のジョイント44が係合する凹溝40bを有する。第2ラック42の側面は、ピニオン38の歯38aと噛み合う歯部42aを有するとともに、他方のジョイント44が係合する凹溝42bを有する。第1ラック40および第2ラック42には、それぞれ一対のマグネット48が取り付けられている(
図3参照)。
【0017】
第1ラック40がX1方向に移動すると、ピニオン38が所定方向に回動し、第2ラック42がX2方向に移動する。第1ラック40がX2方向に移動すると、ピニオン38が上記所定方向とは逆方向に回動し、第2ラック42がX1方向に移動する。すなわち、第1ラック40および第2ラック42は、同期して互いに反対方向に移動する。
【0018】
一方のジョイント44に形成された凸部44aは、第1ラック40の凹溝40bに係合し、他方のジョイント44に形成された凸部44aは、第2ラック42の凹溝42bに係合する。これにより、一方のジョイント44は、第1ラック40と一体となってX方向に移動し、他方のジョイント44は、第2ラック42と一体となってX方向に移動する。一方のジョイント44は、第1フィンガ部30に取り付けられ、他方のジョイント44は、第2フィンガ部32に取り付けられる。したがって、第1フィンガ部30および第2フィンガ部32は、フィンガ部同期機構によって、同期して互いに反対方向に移動する。
【0019】
エア駆動部は、第1ピストン52、第2ピストン54、第3ピストン56および第4ピストン58を含む(
図3参照)。第1ラック40の一端に第1ボルト52bにより連結される第1ピストン52は、第1シリンダ孔14に摺動可能に配置される。第1ラック40の他端に第2ボルト54bにより連結される第2ピストン54は、第1シリンダ孔14に摺動可能に配置される。第2ラック42の一端に第3ボルト56bにより連結される第3ピストン56は、第2シリンダ孔16に摺動可能に配置される。第2ラック42の他端に第4ボルト58bにより連結される第4ピストン58は、第2シリンダ孔16に摺動可能に配置される。
【0020】
第1ピストン52と第1エンドキャップ18aとの間に第1エア室60aが形成される。第1エア室60aは、第1ピストン52に装着されたピストンパッキン52a、第1エンドキャップ18aに装着されたガスケット62a、および、第1ピストン52に装着されたガスケット64aにより、外部から気密に保持される。第2ピストン54と第2エンドキャップ18bとの間に第2エア室60bが形成される。第2エア室60bは、第2ピストン54に装着されたピストンパッキン54a、第2エンドキャップ18bに装着されたガスケット62b、および、第2ピストン54に装着されたガスケット64bにより、外部から気密に保持される。第1エア室60aのエアが作用する第1ピストン52の受圧面積は、第2エア室60bのエアが作用する第2ピストン54の受圧面積と等しい。
【0021】
第3ピストン56と第3エンドキャップ18cとの間に第3エア室60cが形成される。第3エア室60cは、第3ピストン56に装着されたピストンパッキン56a、第3エンドキャップ18cに装着されたガスケット62c、および、第3ピストン56に装着されたガスケット64cにより、外部から気密に保持される。第4ピストン58と第4エンドキャップ18dとの間に第4エア室60dが形成される。第4エア室60dは、第4ピストン58に装着されたピストンパッキン58a、第4エンドキャップ18dに装着されたガスケット62d、および、第4ピストン58に装着されたガスケット64dにより、外部から気密に保持される。第3エア室60cのエアが作用する第3ピストン56の受圧面積は、第4エア室60dのエアが作用する第4ピストン58の受圧面積と等しい。
【0022】
第1エア室60aおよび第4エア室60dは、シリンダボデイ12に形成された第1エア通路26aを介して相互に連通している(
図9参照)。第2エア室60bおよび第3エア室60cは、シリンダボデイ12に形成された第2エア通路26bを介して相互に連通している。なお、
図9において、第1エア室60aおよび第4エア室60dは、便宜上、相互に区別することなく示されている。また、第2エア室60bおよび第3エア室60cは、便宜上、相互に区別することなく示されている。
【0023】
第1エア室60aおよび第4エア室60dにエアが供給されると、第1フィンガ部30および第2フィンガ部32は、相互に離間する方向に付勢される。第1エア室60aおよび第4エア室60dは、本発明の「離間付勢エア室」に相当する。第2エア室60bおよび第3エア室60cにエアが供給されると、第1フィンガ部30および第2フィンガ部32は、相互に接近する方向に付勢される。第2エア室60bおよび第3エア室60cは、本発明の「接近付勢エア室」に相当する。
【0024】
バルブボデイ66は、第1プレート68および第2プレート70によって構成される。第1プレート68は、シリンダボデイ12の上面に取り付けられる。第2プレート70は、第1プレート68の上面に取り付けられる。第1プレート68の側面は、第1排気ポート74および第2排気ポート76を備える(
図8参照)。第1排気ポート74には第1可変絞り弁74aが付設されている(
図9参照)。第1排気ポート74から排出されるエアの速度は、第1可変絞り弁74aによって調整可能である。第2排気ポート76には第2可変絞り弁76aが付設されている(
図9参照)。第2排気ポート76から排出されるエアの速度は、第2可変絞り弁76aによって調整可能である。第2プレート70の側面は、エア供給源50からエアを受け入れる単一の供給ポート72を備える。
【0025】
電磁弁制御部は、第1電磁弁84、第2電磁弁86、位置センサ88およびコントローラ(図示せず)を含む。第1電磁弁84および第2電磁弁86は、第1排気ポート74および第2排気ポート76から離れた第1プレート68の側面に取り付けられる(
図8参照)。第1電磁弁84および第2電磁弁86は、2位置で切り替え可能な3ポート電磁弁として構成されている。
【0026】
図9に示されるように、第1電磁弁84の第1ポート84aは、第1プレート68に形成された第1エア通路68aを介して、シリンダボデイ12の第1エア通路26aに連通する。第1電磁弁84の第2ポート84bは、第1プレート68に形成された第1供給通路68cおよび第2プレート70に形成された第1供給通路70aを介して、供給ポート72に接続される。第1電磁弁84の第3ポート84cは、第1プレート68に形成された第1排気通路68eを介して第1排気ポート74に接続される。
【0027】
図7に示されるように、第2プレート70の第1供給通路70aに接続される第1プレート68の第1供給通路68cの端部には、第1チェック弁78が配置されている。第1チェック弁78は、可動体78aおよびスプリング78bを含む(
図6参照)。第1チェック弁78は、供給ポート72から第1電磁弁84の第2ポート84bに向かうエアの流れを許容し、第1電磁弁84の第2ポート84bから供給ポート72に向かうエアの流れを阻止する。第1チェック弁78は、第1プレート68と第2プレート70の接合面を含む箇所に配置されるので、可動体78aの着座面を含む第1チェック弁78の構造と配置が簡単になる。
【0028】
第1電磁弁84は、通電時(オン時)に第1位置に切り替えられ、非通電時(オフ時)に第2位置に切り替えられる。第1電磁弁84が第1位置にあるとき、第1ポート84aは、第2ポート84bに接続され、第3ポート84cから切り離される。第1電磁弁84が第2位置にあるとき、第1ポート84aは、第3ポート84cに接続され、第2ポート84bから切り離される。
【0029】
第2電磁弁86の第1ポート86aは、第1プレート68に形成された第2エア通路68bを介して、シリンダボデイ12の第2エア通路26bに連通する。第2電磁弁86の第2ポート86bは、第1プレート68に形成された第2供給通路68dおよび第2プレート70に形成された第2供給通路70bを介して、供給ポート72に接続される。第2電磁弁86の第3ポート86cは、第1プレート68に形成された第2排気通路68fを介して第2排気ポート76に接続される。
【0030】
第2プレート70の第2供給通路70bに接続される第1プレート68の第2供給通路68dの端部には、第2チェック弁80が配置されている。第2チェック弁80は、可動体80aおよびスプリング80bを含む(
図6参照)。第2チェック弁80は、供給ポート72から第2電磁弁86の第2ポート86bに向かうエアの流れを許容し、第2電磁弁86の第2ポート86bから供給ポート72に向かうエアの流れを阻止する。第2チェック弁80は、第1プレート68と第2プレート70の接合面を含む箇所に配置されるので、可動体80aの着座面を含む第2チェック弁80の構造と配置が簡単になる。
【0031】
第2電磁弁86は、通電時(オン時)に第1位置に切り替えられ、非通電時(オフ時)に第2位置に切り替えられる。第2電磁弁86が第1位置にあるとき、第1ポート86aは、第2ポート86bに接続され、第3ポート86cから切り離される。第2電磁弁86が第2位置にあるとき、第1ポート86aは、第3ポート86cに接続され、第2ポート86bから切り離される。
【0032】
第1電磁弁84および第2電磁弁86は、コントローラに接続され、コントローラから出力される信号によってオンオフ制御される。シリンダボデイ12のセンサ溝24に取り付けられる位置センサ88は、第1ラック40または第2ラック42に取り付けられたマグネット48の磁界を検出する。第1ラック40および第2ラック42は同期して移動するので、位置センサ88は、第1ラック40のマグネット48および第2ラック42のマグネット48のいずれか一方の磁界を検出するように配置すればよい。
【0033】
位置センサ88は、コントローラに接続され、位置センサ88で検出された信号は、コントローラに入力される。位置センサ88で検出される信号は、第1ラック40または第2ラック42の位置(実位置)に関する信号である。第1ラック40または第2ラック42の位置は、第1フィンガ部30および第2フィンガ部32の相互間隔に対応する。
【0034】
第1ラック40または第2ラック42の目標位置が外部からコントローラに入力される。第1ラック40または第2ラック42の目標位置は、第1フィンガ部30および第2フィンガ部32の目標間隔に対応する。以下の説明において、冗長な表現を避けるため、「第1ラック40または第2ラック42の実位置」を「第1ラック40の実位置」という場合がある。
【0035】
本発明の実施形態に係るエアチャック10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用について説明する。ロボットアームの先端に取り付けられたエアチャック10が待機状態にあり、第1電磁弁84および第2電磁弁86のいずれもオフとなっている状態を初期状態とする(
図9参照)。
【0036】
初期状態では、第1エア室60aおよび第4エア室60dのエアは、シリンダボデイ12の第1エア通路26a、第1プレート68の第1エア通路68a、第1電磁弁84、第1排気通路68eおよび第1排気ポート74を通じて、大気に開放されている。また、第2エア室60bおよび第3エア室60cのエアは、シリンダボデイ12の第2エア通路26b、第1プレート68の第2エア通路68b、第2電磁弁86、第2排気通路68fおよび第2排気ポート76を通じて、大気に開放されている。したがって、第1フィンガ部30および第2フィンガ部32をX方向に移動させる駆動力は生じない。
【0037】
床面に密集して置かれた複数のワークを一つずつ把持して搬送するため、外部からエアチャック10に稼働指令が出される。コントローラには、ワークの配置状態(設置間隔)に応じた第1ラック40の目標位置が予め入力されている。コントローラは、位置センサ88で検出される第1ラック40の実位置が目標位置となるように、第1電磁弁84および第2電磁弁86をオンオフ制御する。
【0038】
具体的には、第1ラック40の実位置が目標位置よりも第1エンドキャップ18aに近く、第1フィンガ部30と第2フィンガ部32の相互間隔が所定値より短いときは、第1電磁弁84がオンになり、第2電磁弁86がオフになる。これにより、第1エア室60aおよび第4エア室60dにエアが供給され、第2エア室60bおよび第3エア室60cのエアが排出される。第1フィンガ部30および第2フィンガ部32は、相互に離間する方向に駆動される(
図10参照)。第1フィンガ部30および第2フィンガ部32の移動速度は、第2排気ポート76に付設された第2可変絞り弁76aの開度を変更することによって調整できる。
【0039】
一方、第1ラック40の実位置が目標位置よりも第2エンドキャップ18bに近く、第1フィンガ部30と第2フィンガ部32の相互間隔が所定値より長いときは、第1電磁弁84がオフになり、第2電磁弁86がオンになる。これにより、第2エア室60bおよび第3エア室60cにエアが供給され、第1エア室60aおよび第4エア室60dのエアが排出される。第1フィンガ部30および第2フィンガ部32は、相互に接近する方向に駆動される(
図11参照)。第1フィンガ部30および第2フィンガ部32の移動速度は、第1排気ポート74に付設された第1可変絞り弁74aの開度を変更することによって調整できる。
【0040】
第1ラック40の実位置が目標位置に到達すると、第1電磁弁84および第2電磁弁86がいずれもオンになる(
図12参照)。第1エア室60aおよび第4エア室60dのエアは、第1排気ポート74に向かって流れることがなく、かつ、第1チェック弁78の作用により、供給ポート72に向かって流れることがない。同様に、第2エア室60bおよび第3エア室60cのエアは、第2排気ポート76に向かって流れることがなく、かつ、第2チェック弁80の作用により、供給ポート72に向かって流れることがない。すなわち、第1~第4エア室60a~60dのエアは封じ込められた状態になり、第1ラック40および第2ラック42の移動が止まる。
【0041】
このとき、第1エア室60aのエア圧は、第2エア室60bのエア圧と等しく、第1ピストン52の受圧面積は、第2ピストン54の受圧面積と等しい。このため、第1エア室60aのエア圧によって第1ラック40がX2方向に付勢される力は、第2エア室60bのエア圧によって第1ラック40がX1方向に付勢される力と釣り合っている。同様に、第4エア室60dのエア圧は、第3エア室60cのエア圧と等しく、第4ピストン58の受圧面積は、第3ピストン56の受圧面積と等しい。このため、第4エア室60dのエア圧によって第2ラック42がX1方向に付勢される力は、第3エア室60cのエア圧によって第2ラック42がX2方向に付勢される力と釣り合っている。
【0042】
以上の作用により、第1ラック40および第2ラック42は、目標位置に安定して保持される。すなわち、第1フィンガ部30と第2フィンガ部32の相互間隔がワークの設置間隔に応じた所定値に保持される。その後、図示しないロボットアームが駆動され、エアチャック10が把持対象のワークに接近する。このとき、第1フィンガ部30と第2フィンガ部32の相互間隔が所定値に保持されているので、第1フィンガ部30および第2フィンガ部32に取り付けられたアタッチメントが把持対象のワークに隣接するワークに接触することがない。
【0043】
エアチャック10がワークを把持可能な位置まで移動した後、第2電磁弁86はオンのまま、第1電磁弁84がオフになる。第1フィンガ部30および第2フィンガ部32は、相互に接近する方向に駆動され、第1フィンガ部30および第2フィンガ部32に取り付けられたアタッチメントによってワークが把持される。その後、再びロボットアームが駆動され、ワークを把持したエアチャック10が所定の場所まで移動する。
【0044】
ここまで、第1電磁弁84および第2電磁弁86がオンのとき、第1~第4エア室60a~60dのエアは封じ込められるとして説明した。厳密にいえば、第1電磁弁84および第2電磁弁86がオンのときでも、以下の場合は、第1~第4エア室60a~60dのエアは、完全には封じ込められない。
【0045】
ピストンパッキン52aまたはピストンパッキン58aでエア漏れが発生した場合、第1エア室60aおよび第4エア室60dのエアは、完全には封じ込められない。ピストンパッキン54aまたはピストンパッキン56aでエア漏れが発生した場合、第2エア室60bおよび第3エア室60cのエアは、完全には封じ込められない。ガスケット62a~62d、64a~64dでエア漏れが発生した場合も同様である。
【0046】
上記いずれの場合でも、第1チェック弁78および第2チェック弁80の作用により、第1ラック40および第2ラック42は、目標位置に安定して保持される。すなわち、第1フィンガ部30と第2フィンガ部32との相互間隔が所定値に保持される。
【0047】
例えば、ピストンパッキン52aまたはピストンパッキン58aでエア漏れが発生すると、第1エア室60aまたは第4エア室60dのエアが外部に漏れる。しかしながら、第1チェック弁78の作用により、エア供給源50からのエアが第1エア室60aまたは第4エア室60dに即座に補充される。このため、第1エア室60aおよび第4エア室60dの圧力は低下せず、第1ラック40および第2ラック42は、目標位置に安定して保持される。
【0048】
ピストンパッキン54aまたはピストンパッキン56aでエア漏れが発生すると、第2エア室60bまたは第3エア室60cのエアが外部に漏れる。しかしながら、第2チェック弁80の作用により、エア供給源50からのエアが第2エア室60bまたは第3エア室60cに即座に補充される。このため、第2エア室60bおよび第3エア室60cの圧力は低下せず、第1ラック40および第2ラック42は、目標位置に安定して保持される。
【0049】
また、第1電磁弁84および第2電磁弁86がオンのとき、第1~第4エア室60a~60dのエアと一体となって挙動するエアを含めると、第1~第4エア室60a~60dのエアが完全には封じ込められない場合がさらにある。以下、具体的に述べる。
【0050】
第1電磁弁84がオンのとき、シリンダボデイ12の第1エア通路26a、第1プレート68の第1エア通路68aおよび第1供給通路68cのエアは、第1エア室60aおよび第4エア室60dのエアと一体的に挙動する。第2電磁弁86がオンのとき、シリンダボデイ12の第2エア通路26b、第1プレート68の第2エア通路68bおよび第2供給通路68dのエアは、第2エア室60bおよび第3エア室60cのエアと一体的に挙動する。
【0051】
第1電磁弁84においてエア漏れが発生した場合、第1プレート68の第1エア通路68aおよび第1供給通路68cのエアは、外部に漏れる。第2電磁弁86においてエア漏れが発生した場合、第1プレート68の第2エア通路68bおよび第2供給通路68dのエアは、外部に漏れる。いずれの場合でも、第1チェック弁78および第2チェック弁80の作用により、第1ラック40および第2ラック42は、目標位置に安定して保持される。すなわち、第1フィンガ部30と第2フィンガ部32との相互間隔が所定値に保持される。
【0052】
第1電磁弁84においてエア漏れが発生すると、第1チェック弁78の作用により、エア供給源50からのエアが第1プレート68の第1エア通路68aおよび第1供給通路68cに即座に補充される。このため、第1エア室60aおよび第4エア室60dの圧力は低下せず、第1ラック40および第2ラック42は、目標位置に安定して保持される。第2電磁弁86においてエア漏れが発生すると、第2チェック弁80の作用により、エア供給源50からのエアが第1プレート68の第2エア通路68bおよび第2供給通路68dに即座に補充される。このため、第2エア室60bおよび第3エア室60cの圧力は低下せず、第1ラック40および第2ラック42は、目標位置に安定して保持される。
【0053】
本実施形態に係るエアチャック10は、第1チェック弁78および第2チェック弁80を備えるので、所定の動作状態において、エア漏れが発生しても即座にエアが補充され、第1フィンガ部30と第2フィンガ部32の相互間隔が所定値に保持される。
【0054】
また、第1~第4エア室60a~60dがシリンダボデイ12に配置され、第1電磁弁84および第2電磁弁86がバルブボデイ66を構成する第1プレート68に取り付けられるので、中間停止のために必要なエア回路をコンパクトに配置することができる。
【0055】
特に、シリンダボデイ12の第1エア通路26a、第1プレート68の第1エア通路68aおよび第1供給通路68cの合計長さを可及的に短くすることができる。すなわち、第1電磁弁84がオンのときに第1エア室60aおよび第4エア室60dのエアと一体的に挙動するこれらの通路の合計容積を可及的に小さくすることができる。このため、エアの圧縮性による第1ラック40および第2ラック42の停止位置の変化を可及的に小さくすることができる。
【0056】
同様に、シリンダボデイ12の第2エア通路26b、第1プレート68の第2エア通路68bおよび第2供給通路68dの合計長さを可及的に短くすることができる。すなわち、第2電磁弁86がオンのときに第2エア室60bおよび第3エア室60cのエアと一体的に挙動するこれらの通路の合計容積を可及的に小さくすることができる。このため、エアの圧縮性による第1ラック40および第2ラック42の停止位置の変化を可及的に小さくすることができる。
【0057】
本実施形態では、離間付勢エア室が2つのエア室(第1エア室60aと第4エア室60d)によって構成され、接近付勢エア室が2つのエア室(第2エア室60bと第3エア室60c)によって構成されている。しかしながら、離間付勢エア室および接近付勢エア室は、それぞれ単一のエア室によって構成されてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、第1フィンガ部30および第2フィンガ部32がいずれもスライド可能に支持されるが、第1フィンガ部30および第2フィンガ部32の一方がシリンダボデイ12に固定され、他方のみがスライド可能に支持されてもよい。本発明でいう「複数のフィンガ部を相互に離間する方向に付勢する」および「複数のフィンガ部を相互に近接する方向に付勢する」は、このような形態が含まれることを前提としている。この場合も、離間付勢エア室および接近付勢エア室は、それぞれ単一のエア室によって構成される。
【0059】
また、本実施形態では、ワークを把持するためのフィンガ部は、第1フィンガ部30と第2フィンガ部32によって構成されている。しかしながら、フィンガ部は、放射状に配置された3つ以上のフィンガ部によって構成されてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、エアチャック10は、コントローラを含む電磁弁制御部を備えるとして説明したが、コントローラの役割をPLC等の外部機器に担わせてもよい。
【0061】
本発明に係るエアチャックは、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0062】
10…エアチャック 12…シリンダボデイ
14…第1シリンダ孔 16…第2シリンダ孔
30…第1フィンガ部(フィンガ部)
32…第2フィンガ部(フィンガ部)
38…ピニオン 40…第1ラック
42…第2ラック 52…第1ピストン
54…第2ピストン 56…第3ピストン
58…第4ピストン
60a…第1エア室(離間付勢エア室)
60b…第2エア室(接近付勢エア室)
60c…第3エア室(接近付勢エア室)
60d…第4エア室(離間付勢エア室)
66…バルブボデイ 68…第1プレート
68c、70a…第1供給通路 68d、70b…第2供給通路
70…第2プレート 72…供給ポート
74…第1排気ポート 76…第2排気ポート
78…第1チェック弁 80…第2チェック弁
84…第1電磁弁 84a、86a…第1ポート
84b、86b…第2ポート 84c、86c…第3ポート
86…第2電磁弁 88…位置センサ(センサ)