(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042439
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】離型剤
(51)【国際特許分類】
B29C 33/56 20060101AFI20240321BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B29C33/56
C09K3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147159
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 銀太
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202CA09
4F202CA27
4F202CB01
4F202CM41
4F202CM42
4F202CM47
4F202CM82
(57)【要約】
【課題】連続離型性に優れる離型剤を提供する。
【解決手段】 下記式(I)で表されるパーフルオロアルケニル基を有する化合物又はその塩である陰イオン性界面活性剤(A)、及び
下記式(II)で表される陰イオン性官能基と芳香環を有する化合物又はその塩である陰イオン性界面活性剤(B)を含む、離型剤。
式(I):
(式中、Rf、Ar
1、n、Xは明細書中に定義される通りである。)
式(II):
(式中、R
1、Ar
2、Yは明細書中に定義される通りである。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるパーフルオロアルケニル基を有する化合物又はその塩である陰イオン性界面活性剤(A)、及び
下記式(II)で表される陰イオン性官能基と芳香環を有する化合物又はその塩である陰イオン性界面活性剤(B)を含む、離型剤。
式(I):
【化1】
(式中、Rfは下記式(1)又は下記式(2)で表される基である。
【化2】
Ar
1は置換又は無置換の2価のアリール基を表す。nは1又は2を表す。Xはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を表す。)
式(II):
【化3】
(式中、R
1は水素原子、水酸基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、チオール基、直鎖アルキル基、直鎖アルコキシ基、直鎖アルキルカルボニル基、直鎖アルキルオキシカルボニル基を表す。Ar
2は置換又は無置換の2価のアリール基を表す。Yはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を表す。)
【請求項2】
R1が水酸基、炭素数1~15の直鎖アルキル基、又は炭素数1~15の直鎖アルコキシ基である、請求項1に記載の離型剤。
【請求項3】
Yがカルボキシル基である、請求項1に記載の離型剤。
【請求項4】
陰イオン性界面活性剤(B)を、陰イオン性界面活性剤(A)1モル当量に対して0.3~3.0モル当量含む、請求項1に記載の離型剤。
【請求項5】
離型剤100質量部に対し、
陰イオン性界面活性剤(A)を0.7~10質量部、
陰イオン性界面活性剤(B)を0.05~10質量部含む、請求項1に記載の離型剤。
【請求項6】
ゴム用の離型剤である、請求項1に記載の離型剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素系界面活性剤は、離型剤等として広く使用されている。例えば、特許文献1において、フッ素系界面活性剤を必須成分とする離型剤が開示されている。特許文献1に記載の離型剤は、良好な離型性を示すものの、離型時に離型剤成分が成型品に移行してしまうため、金型への離型剤の一度の塗布で、複数回の成型を行うことが困難であった。
【0003】
一方、シリコーン系離型剤の中には、良好な連続離型性を示すものが知られている。例えば、固形分濃度や粘度を高くすることで膜強度を高めた離型剤や熱効果等によって膜強度を高めた離型剤(特許文献2)が知られている。しかし、これらの離型剤は金型汚れになりやすく、生産効率が低下してしまうといった問題があった。また、シリコーン系離型剤は、二次加工性等にも問題があった。
【0004】
そのため、フッ素系界面活性剤を含む離型剤において、良好な連続離型性を有する離型剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63-6330号公報
【特許文献2】特開2020-032658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フッ素系界面活性剤を含み、且つ連続離型性に優れる離型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、アリール基を有するフッ素系界面活性剤とアリール基を有する界面活性剤とを組み合わせることで、良好な連続離型性を示す表面処理組成物が得られることを見出した。
【0008】
本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す広い態様の発明を含むものである。
【0009】
[項1]
下記式(I)で表されるパーフルオロアルケニル基を有する化合物又はその塩である陰イオン性界面活性剤(A)、及び
下記式(II)で表される陰イオン性官能基と芳香環を有する化合物又はその塩である陰イオン性界面活性剤(B)を含む、離型剤。
式(I):
【化1】
(式中、Rfは下記式(1)又は下記式(2)で表される基である。
【化2】
Ar
1は置換又は無置換の2価のアリール基を表す。nは1又は2を表す。Xはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を表す。)
式(II):
【化3】
(式中、R
1は水素原子、水酸基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、チオール基、直鎖アルキル基、直鎖アルコキシ基、直鎖アルキルカルボニル基、直鎖アルキルオキシカルボニル基を表す。Ar
2は置換又は無置換の2価のアリール基を表す。Yはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を表す。)
[項2]
R
1が水酸基、炭素数1~15の直鎖アルキル基、又は炭素数1~15の直鎖アルコキシ基である、項1に記載の離型剤。
[項3]
Yがカルボキシル基である、項1又は2に記載の離型剤。
[項4]
陰イオン性界面活性剤(B)を、陰イオン性界面活性剤(A)1モル当量に対して0.3~3.0モル当量含む、項1~3のいずれか1項に記載の離型剤。
[項5]
離型剤100質量部に対し、
陰イオン性界面活性剤(A)を0.7~10質量部、
陰イオン性界面活性剤(B)を0.05~10質量部含む、項1~4のいずれか1項に記載の離型剤。
[項6]
ゴム用の離型剤である、項1~5のいずれか1項に記載の離型剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、連続離型性に優れる離型剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の離型剤は、陰イオン性界面活性剤(A)及び陰イオン性界面活性剤(B)を含む。陰イオン性界面活性剤(A)は、下記式(I)で表されるパーフルオロアルケニル基を有する化合物又はその塩である。また、陰イオン性界面活性剤(B)は、下記式(II)で表される陰イオン性官能基と芳香環を有する化合物又はその塩である。
【0012】
式(I):
【化4】
(式中、Rfは下記式(1)又は下記式(2)で表される基である。
【0013】
【化5】
Ar
1は置換又は無置換の2価のアリール基を表す。nは1又は2を表す。Xはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を表す。)
【0014】
式(II):
【化6】
(式中、R
1は水素原子、水酸基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、チオール基、直鎖アルキル基、直鎖アルコキシ基、直鎖アルキルカルボニル基、直鎖アルキルオキシカルボニル基を表す。Ar
2は置換又は無置換の2価のアリール基を表す。Yはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を表す。)
【0015】
<陰イオン性界面活性剤(A)>
陰イオン性界面活性剤(A)は、下記式(I)で表されるパーフルオロアルケニル基を有する化合物又はその塩である。
【0016】
式(I):
【化7】
(式中、Rfは下記式(1)又は下記式(2)で表される基である。
【0017】
【化8】
Ar
1は置換又は無置換の2価のアリール基を表す。nは1又は2を表す。Xはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を表す。)
【0018】
式(I)中、Ar1は置換又は無置換の2価のアリール基を表す。好ましくは炭素数6~8の置換又は無置換の2価のアリール基であり、より好ましくは6~7の置換又は無置換の2価のアリール基である。
【0019】
Ar1において、2価のアリール基が置換基を有する場合、置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アルキル基;アシル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;水酸基;チオール基;ニトロ基;シアノ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;アルキルカルボニルアミノ基;アルキルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0020】
上記置換基として挙げているアルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン化アルキル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基のアルキル部分としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0021】
Ar1としては、置換又は無置換のp-フェニレン基であることが好ましく、無置換のp-フェニレン基、又はメチル基で置換されたp-フェニレン基(2,5-トリレン基)であることがより好ましく、無置換のp-フェニレン基(-C6H4-;炭素数6)が特に好ましい。
【0022】
式(I)中、nは1又は2である。nは1であることが好ましい。
【0023】
式(I)中、Xはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を表す。Xはホスホン酸基であることが好ましい。
【0024】
なお、連続離型性の観点から、式(I)で表される化合物は、アミノ基等の塩基性官能基を有さないことが好ましい。
【0025】
式(I)で表される化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これに限定されない。
【0026】
【0027】
式(I)で表される化合物としては、式(I-1)で表される化合物が好ましい。
【0028】
一実施形態において、陰イオン性界面活性剤(A)として式(I)で表される化合物の塩を用いることができる。塩としては例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、アミン塩等が挙げられる。
【0029】
式(I)で表される化合物は、公知の方法により製造することができる。
【0030】
本発明の離型剤において、陰イオン性界面活性剤(A)として、式(I)で表される化合物又はその塩は、1種単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0031】
<陰イオン性界面活性剤(B)>
陰イオン性界面活性剤(B)は、下記式(II)で表される陰イオン性官能基と芳香環を有する化合物又はその塩である。
【0032】
式(II):
【化10】
(式中、R
1は水素原子、水酸基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、チオール基、直鎖アルキル基、直鎖アルコキシ基、直鎖アルキルカルボニル基、直鎖アルキルオキシカルボニル基を表す。Ar
2は置換又は無置換の2価のアリール基を表す。Yはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を表す。)
【0033】
式(II)中、R1は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、チオール基、直鎖アルキル基、直鎖アルコキシ基、直鎖アルキルカルボニル基、直鎖アルキルオキシカルボニル基を表す。
【0034】
直鎖アルキル基、直鎖アルコキシ基、直鎖アルキルカルボニル基、直鎖アルキルオキシカルボニル基における直鎖アルキル部分としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等の直鎖状の炭素数1~15のアルキル基が挙げられる。
【0035】
R1としては、成形不良低減の観点から、水酸基、炭素数1~15の直鎖アルキル基、炭素数1~15の直鎖アルコキシ基が好ましく、炭素数1~12の直鎖アルキル基、又は炭素数1~6の直鎖アルコキシ基がより好ましい。
【0036】
なお、連続離型性の観点から、R1はアミノ基等の塩基性官能基を有さない基であることが好ましい。
【0037】
式(II)中、Ar2は置換又は無置換の2価のアリール基を表す。好ましくは炭素数6~8の置換又は無置換の2価のアリール基であり、より好ましくは6~7の置換又は無置換の2価のアリール基である。
【0038】
Ar2において、2価のアリール基が置換基を有する場合、置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アルキル基;アシル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;水酸基;チオール基;ニトロ基;シアノ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;アルキルカルボニルアミノ基;アルキルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0039】
上記置換基として挙げているアルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン化アルキル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基のアルキル部分としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0040】
Ar2としては、置換又は無置換のp-フェニレン基であることが好ましく、無置換のp-フェニレン基、又はメチル基で置換されたp-フェニレン基(2,5-トリレン基)であることがより好ましく、無置換のp-フェニレン基(-C6H4-;炭素数6)が特に好ましい。
【0041】
式(II)中、Yはホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を表す。Yはカルボキシル基又はスルホン酸基であることが好ましい。
【0042】
なお、連続離型性の観点から、式(II)で表される化合物は、アミノ基等の塩基性官能基を有さないことが好ましい。
【0043】
式(II)で表される化合物としては、例えば、安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-フルオロ安息香酸、p-シアノ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、p-メルカプト安息香酸、p-メチル安息香酸、p-エチル安息香酸、p-n-プロピル安息香酸、p-n-ブチル安息香酸、p-n-ペンチル安息香酸、p-n-ヘキシル安息香酸、p-n-へプチル安息香酸、p-n-オクチル安息香酸、p-n-ノニル安息香酸、p-n-デシル安息香酸、p-n-ドデシル安息香酸、p-メトキシ安息香酸、p-エトキシ安息香酸、p-n-プロポキシ安息香酸、p-n-ブトキシ安息香酸、p-n-ペンチルオキシ安息香酸、p-n-ヘキシルオキシ安息香酸、p-n-へプチルオキシ安息香酸、p-n-オクチルオキシ安息香酸、p-n-ノニルオキシ安息香酸、p-n-デシルオキシ安息香酸、p-n-ドデシルオキシ安息香酸、p-メチルカルボニル安息香酸、p-エチルカルボニル安息香酸、p-n-プロピルカルボニル安息香酸、p-n-ブチルカルボニル安息香酸、p-n-ペンチルカルボニル安息香酸、p-n-ヘキシルカルボニル安息香酸、p-n-へプチルカルボニル安息香酸、p-n-オクチルカルボニル安息香酸、p-n-ノニルカルボニル安息香酸、p-n-デシルカルボニル安息香酸、p-n-ドデシルカルボニル安息香酸、p-メチルオキシカルボニル安息香酸、p-エチルオキシカルボニル安息香酸、p-n-プロピルオキシカルボニル安息香酸、p-n-ブチルオキシカルボニル安息香酸、p-n-ペンチルオキシカルボニル安息香酸、p-n-ヘキシルオキシカルボニル安息香酸、p-n-へプチルオキシカルボニル安息香酸、p-n-オクチルオキシカルボニル安息香酸、p-n-ノニルオキシカルボニル安息香酸、p-n-デシルオキシカルボニル安息香酸、p-n-ドデシルオキシカルボニル安息香酸等のカルボン酸化合物;
ベンゼンホスホン酸、p-ヒドロキシベンゼンホスホン酸、p-フルオロベンゼンホスホン酸、p-シアノベンゼンホスホン酸、p-ニトロベンゼンホスホン酸、p-メルカプトベンゼンホスホン酸、p-メチルベンゼンホスホン酸、p-エチルベンゼンホスホン酸、p-n-プロピルベンゼンホスホン酸、p-n-ブチルベンゼンホスホン酸、p-n-ペンチルベンゼンホスホン酸、p-n-ヘキシルベンゼンホスホン酸、p-n-へプチルベンゼンホスホン酸、p-n-オクチルベンゼンホスホン酸、p-n-ノニルベンゼンホスホン酸、p-n-デシルベンゼンホスホン酸、p-n-ドデシルベンゼンホスホン酸、p-メトキシベンゼンホスホン酸、p-エトキシベンゼンホスホン酸、p-n-プロポキシベンゼンホスホン酸、p-n-ブトキシベンゼンホスホン酸、p-n-ペンチルオキシベンゼンホスホン酸、p-n-ヘキシルオキシベンゼンホスホン酸、p-n-へプチルオキシベンゼンホスホン酸、p-n-オクチルオキシベンゼンホスホン酸、p-n-ノニルオキシベンゼンホスホン酸、p-n-デシルオキシベンゼンホスホン酸、p-n-ドデシルオキシベンゼンホスホン酸、p-メチルカルボニルベンゼンホスホン酸、p-エチルカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-プロピルカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-ブチルカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-ペンチルカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-ヘキシルカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-へプチルカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-オクチルカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-ノニルカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-デシルカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-ドデシルカルボニルベンゼンホスホン酸、p-メチルオキシカルボニルベンゼンホスホン酸、p-エチルオキシカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-プロピルオキシカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-ブチルオキシカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-ペンチルオキシカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-ヘキシルオキシカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-へプチルオキシカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-オクチルオキシカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-ノニルオキシカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-デシルオキシカルボニルベンゼンホスホン酸、p-n-ドデシルオキシカルボニルベンゼンホスホン酸等のホスホン酸化合物;
ベンゼンスルホン酸、p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、p-フルオロベンゼンスルホン酸、p-シアノベンゼンスルホン酸、p-ニトロベンゼンスルホン酸、p-メルカプトベンゼンスルホン酸、p-メチルベンゼンスルホン酸、p-エチルベンゼンスルホン酸、p-n-プロピルベンゼンスルホン酸、p-n-ブチルベンゼンスルホン酸、p-n-ペンチルベンゼンスルホン酸、p-n-ヘキシルベンゼンスルホン酸、p-n-へプチルベンゼンスルホン酸、p-n-オクチルベンゼンスルホン酸、p-n-ノニルベンゼンスルホン酸、p-n-デシルベンゼンスルホン酸、p-n-ドデシルベンゼンスルホン酸、p-メトキシベンゼンスルホン酸、p-エトキシベンゼンスルホン酸、p-n-プロポキシベンゼンスルホン酸、p-n-ブトキシベンゼンスルホン酸、p-n-ペンチルオキシベンゼンスルホン酸、p-n-ヘキシルオキシベンゼンスルホン酸、p-n-へプチルオキシベンゼンスルホン酸、p-n-オクチルオキシベンゼンスルホン酸、p-n-ノニルオキシベンゼンスルホン酸、p-n-デシルオキシベンゼンスルホン酸、p-n-ドデシルオキシベンゼンスルホン酸、p-メチルカルボニルベンゼンスルホン酸、p-エチルカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-プロピルカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-ブチルカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-ペンチルカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-ヘキシルカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-へプチルカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-オクチルカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-ノニルカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-デシルカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-ドデシルカルボニルベンゼンスルホン酸、p-メチルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、p-エチルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-プロピルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-ブチルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-ペンチルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-ヘキシルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-へプチルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-オクチルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-ノニルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-デシルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、p-n-ドデシルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸化合物;
リン酸フェニル、リン酸p-ヒドロキシフェニル、リン酸p-フルオロフェニル、リン酸p-シアノフェニル、リン酸p-ニトロフェニル、リン酸p-メルカプトフェニル、リン酸p-メチルフェニル、リン酸p-エチルフェニル、リン酸p-n-プロピルフェニル、リン酸p-n-ブチルフェニル、リン酸p-n-ペンチルフェニル、リン酸p-n-ヘキシルフェニル、リン酸p-n-へプチルフェニル、リン酸p-n-オクチルフェニル、リン酸p-n-ノニルフェニル、リン酸p-n-デシルフェニル、リン酸p-n-ドデシルフェニル、リン酸p-メトキシフェニル、リン酸p-エトキシフェニル、リン酸p-n-プロポキシフェニル、リン酸p-n-ブトキシフェニル、リン酸p-n-ペンチルオキシフェニル、リン酸p-n-ヘキシルオキシフェニル、リン酸p-n-へプチルオキシフェニル、リン酸p-n-オクチルオキシフェニル、リン酸p-n-ノニルオキシフェニル、リン酸p-n-デシルオキシフェニル、リン酸p-n-ドデシルオキシフェニル、リン酸p-メチルカルボニルフェニル、リン酸p-エチルカルボニルフェニル、リン酸p-n-プロピルカルボニルフェニル、リン酸p-n-ブチルカルボニルフェニル、リン酸p-n-ペンチルカルボニルフェニル、リン酸p-n-ヘキシルカルボニルフェニル、リン酸p-n-へプチルカルボニルフェニル、リン酸p-n-オクチルカルボニルフェニル、リン酸p-n-ノニルカルボニルフェニル、リン酸p-n-デシルカルボニルフェニル、リン酸p-n-ドデシルカルボニルフェニル、リン酸p-メチルオキシカルボニルフェニル、リン酸p-エチルオキシカルボニルフェニル、リン酸p-n-プロピルオキシカルボニルフェニル、リン酸p-n-ブチルオキシカルボニルフェニル、リン酸p-n-ペンチルオキシカルボニルフェニル、リン酸p-n-ヘキシルオキシカルボニルフェニル、リン酸p-n-へプチルオキシカルボニルフェニル、リン酸p-n-オクチルオキシカルボニルフェニル、リン酸p-n-ノニルオキシカルボニルフェニル、リン酸p-n-デシルオキシカルボニルフェニル、リン酸p-n-ドデシルオキシカルボニルフェニル等のリン酸エステル化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0044】
この中でも、式(II)で表される化合物としては、連続離型性及び成型性の観点から、p-ヒドロキシ安息香酸、p-メチル安息香酸、p-エチル安息香酸、p-n-プロピル安息香酸、p-n-ブチル安息香酸、p-n-ペンチル安息香酸、p-n-ヘキシル安息香酸、p-n-へプチル安息香酸、p-n-オクチル安息香酸、p-n-ノニル安息香酸、p-n-デシル安息香酸、p-n-ドデシル安息香酸、p-メトキシ安息香酸、p-エトキシ安息香酸、p-n-プロポキシ安息香酸、p-n-ブトキシ安息香酸、p-n-ペンチルオキシ安息香酸、p-n-ヘキシルオキシ安息香酸、p-n-へプチルオキシ安息香酸、p-n-オクチルオキシ安息香酸、p-n-ノニルオキシ安息香酸、p-n-デシルオキシ安息香酸、p-n-ドデシルオキシ安息香酸が好ましく、p-ヒドロキシ安息香酸またはp-n-ヘキシルオキシ安息香酸がより好ましい。
【0045】
一実施形態において、陰イオン性界面活性剤(B)として式(II)で表される化合物の塩を用いることができる。塩としては例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、アミン塩等が挙げられる。
【0046】
式(II)で表される化合物は、市販品を用いても良く、また、公知の方法により製造することができる。
【0047】
本発明の離型剤において、陰イオン性界面活性剤(B)として、式(II)で表される化合物又はその塩は、1種類のみを使用しても良く、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0048】
<離型剤>
本発明の離型剤は、陰イオン性界面活性剤(A)及び陰イオン性界面活性剤(B)とを含む。連続離型性の観点から、陰イオン性界面活性剤(B)を、陰イオン性界面活性剤(A)1モル当量に対して0.3~3.0モル当量含むことが好ましく、0.5~2.0モル当量含むことがより好ましく、0.5~1.0モル当量含むことがさらに好ましい。
【0049】
本発明の離型剤は、陰イオン性界面活性剤(A)及び陰イオン性界面活性剤(B)を含み、溶媒に溶解させた状態で通常用いられる。溶媒としては、陰イオン性界面活性剤(A)及び陰イオン性界面活性剤(B)を溶解可能な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、水、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、メタキシレンヘキサフルオリド、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1-プロパノール、1,3-ジフルオロ-2-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メチル-2-プロパノール、ニトロエタン、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコール、3-メトキシブチルアセテート(MBA)、1,3-ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、乳酸エチル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、メシチレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0050】
本発明の離型剤において、陰イオン性界面活性剤(A)の含有量は、連続離型性の観点から、離型剤100質量部に対して0.7質量部以上含むことが好ましく、0.9質量部以上含むことがより好ましく、2質量部以上含むことがさらに好ましい。また、陰イオン性界面活性剤(A)の含有量の上限については特に制限されないが、10質量部以下であることが好ましい。
【0051】
本発明の離型剤において、陰イオン性界面活性剤(B)の含有量は、連続離型性の観点から、離型剤100質量部に対して0.05質量部以上含むことが好ましく、0.1質量部以上含むことがより好ましく、0.2質量部以上含むことがさらに好ましい。また、陰イオン性界面活性剤(B)の含有量の上限については特に制限されないが、10質量部以下であることが好ましい。
【0052】
本発明の離型剤は、本発明の目的を阻害しない範囲内において、陰イオン性界面活性剤(A)及び陰イオン性界面活性剤(B)以外の界面活性剤を適宜配合しても良い。例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。当該界面活性剤の含有量は、離型剤100質量部に対して0~5質量部であることが好ましい。
【0053】
また、本発明の離型剤は、本発明の目的を阻害しない範囲内において、防錆剤、触媒、抗菌剤、難燃剤、消泡剤、増粘剤、粘度調節剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、防腐剤、凍結防止剤、湿潤剤、pH調整剤、安定剤、防黴剤、耐光安定剤、耐候安定剤、中和剤、艶消し剤、乾燥促進剤、発泡剤、非粘着剤、劣化防止剤等を適宜配合してもよい。
【0054】
本発明の離型剤を利用して離型される材料としては、特に限定されないが、例えば、ウレタンゴム、H-NBR、NBR、シリコーンゴム、EPDM、CR、NR、フッ素ゴム、SBR、BR、IIR及びIR等のゴム;ウレタンフォーム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂及びFRP(ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP))等の熱硬化性樹脂等;PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、PA(ポリアミド)、ポリエステル、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、 FRTP(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂(GFRTP)、カーボン繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)、アラミド繊維強化熱可塑性樹脂(AFRTP))等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。特に、ゴム用の離型剤として有用である。
【0055】
また、本発明の離型剤が塗布される材料としては、例えばアルミニウム、SUS、クロムメッキ鋼、鉄等の金属;PP、PE,エポキシ等の樹脂;ゴム、FRP(繊維強化プラスチック)、石膏性基材、木製基材、複合材料等が挙げられる。この中でも、連続離型性の観点から、アルミニウム、SUS、クロムメッキ鋼、鉄等の金属であることが好ましい。これは、陰イオン性界面活性剤(A)及び陰イオン性界面活性剤(B)中の酸性官能基が金属表面に吸着することにより、陰イオン性界面活性剤(A)中のRf基が金型表面の外側に向かって配向し、かつ、陰イオン性界面活性剤(A)及び陰イオン性界面活性剤(B)中の芳香環がπ-πスタッキングを形成し塗膜強度が向上するためであると考えられる。
【0056】
本発明の離型剤は、離型剤で処理されるべき部分に対して塗布し、乾燥させておくことにより使用することができる。塗布方法としては、特に制限されず、例えばスプレー塗布、刷毛塗布、ロールコーター塗布、ディッピング塗布等が挙げられる。本発明の離型剤の塗布量は、特に制限されないが、0.1~100g/m2、好ましくは1~100g/m2であり、これによって十分な離型性が得られる。乾燥方法としては風乾又は加熱により溶媒を蒸発させて皮膜を形成する方法が挙げられる。本発明の離型剤を含む皮膜の乾燥厚みは通常、0.1~15μmであり、好ましくは0.2~5.0μmである。
【実施例0057】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
(使用材料)
・フッ素化合物1
【化11】
・PHBA:p-ヒドロキシ安息香酸
・PHOBA:p-n-ヘキシルオキシ安息香酸
・PFBA:p-フルオロ安息香酸
・SDBS:p-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
・PABA:p-アミノ安息香酸
・EL-1503P:ノニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、青木油脂工業株式会社製、ブラウノンEL-1503P
・IPA:イソプロピルアルコール
・M-XHF:メタキシレンヘキサフルオリド
【0059】
(連続離型性試験)
180℃に加熱した鉄製の金型(成型品形状:外形幅9.5cm×奥行9.5cm×高さ5.0cm、内形幅9.0cm×奥行9.0cm×高さ4.5cmの上部開放系箱型)に離型剤をスプレーガンを用いて50g/m2塗布した。その後、過酸化物加硫型のゴム(EPDM)95gを金型内に設置し、180℃で8分間プレス成形した。成型物取り出し時の荷重をプッシュプルスケールを用いて測定した。成型物取り出し後、新たに前記ゴムを金型内に設置し、同様の方法でプレス成形し、荷重が40Nを超えるまでの離型回数を連続離型回数とした。
【0060】
評価基準
◎:連続離型回数6回以上
〇:連続離型回数3~5回
×:連続離型回数2回以下
【0061】
(実施例1)
フッ素化合物1のIPA50wt%溶液1.82質量部(フッ素化合物1の固形分0.91質量部)、p-ヒドロキシ安息香酸(PHBA)0.1質量部、EL-1503P 3.6質量部を表1の通りIPA及びM-XHFに溶解させ、離型剤を調製した。その後、金型に離型剤を塗布し、連続離型性試験を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2~9、比較例1,2)
表1の通り各成分の配合量を変更した以外は、実施例1と同様に離型剤を調製し、連続離型性試験を行った。結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
表1が示すように、本発明の離型剤は、連続離型性に優れる。これは、陰イオン性界面活性剤(A)中に含まれる芳香環と、陰イオン性界面活性剤(B)中に含まれる芳香環がπ-πスタッキングを形成することにより、離型剤の塗膜強度が向上しているためであると考えられる。
【0066】
これに対し、陰イオン性界面活性剤(A)を含むが、陰イオン性界面活性剤(B)を含まない比較例1においては、連続離型性が劣る結果となった。これは、陰イオン性界面活性剤(A)中のRf基の構造が嵩高いため、陰イオン性界面活性剤(A)のみではπ-πスタッキングが形成され難く、離型剤の塗膜強度が向上しないため、離型剤成分が成型品に移行しやすくなっているからであると考えられる。
【0067】
また、陰イオン性界面活性剤(B)として、アミノ基を有する界面活性剤を用いた場合にも、連続離型性が劣る結果となった。