(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042444
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】内燃機機関・内部残留燃料量算出システム、内燃機機関の内部残留燃料量を算出する演算装置、及び内燃機機関の内部残留燃料量算出方法
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20240321BHJP
F02M 65/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F02D45/00 369
F02M65/00 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147169
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100088214
【弁理士】
【氏名又は名称】生田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】才野 鏡太郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 桂一郎
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA01
3G384BA39
3G384DA09
3G384FA01Z
3G384FA14Z
3G384FA25Z
3G384FA38Z
3G384FA56Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内燃機関のサイクルあたりの内部残留燃料量を算出すること。
【解決手段】内燃機関・内部残留燃料量算出システムWであって、排ガスのサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО
2濃度を計測する高応答分析計24と、演算装置100とを有し、演算装置100は、内燃機関に過渡パターンの運転動作をさせている最中に高応答分析計24が計測したサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО
2濃度を取得し、取得した計測値を用いて、ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のCО濃度及びCО
2濃度の減衰率を算出し、サイクル毎のTHC濃度及び減衰率を用いて、内燃機関の内部に未燃燃料成分が付着も蒸発をしないと仮定した場合のサイクル毎のTHC予測濃度を求め、サイクル毎のTHC濃度及びTHC予測濃度からサイクル毎の蒸発THC濃度を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関試験装置に設置された内燃機関の内部残留燃料量を算出する内燃機関・内部燃料量出システムであって、
前記内燃機関の排気管に接続され該排気管に排出される排ガスのサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を計測する高応答分析計と、
前記内燃機関の内部残留燃料量を算出する演算装置とを有し、
前記演算装置は、
前記内燃機関試験装置が前記内燃機関に燃料を燃焼させない定常モータリング運転をさせ、次に、該内燃機関に所定サイクル数だけ燃料を噴射し燃焼させるファイアリング運転をさせ、その後、内燃機関に前記定常モータリング運転させる過渡パターンの運転動作をさせている最中に、前記高応答分析計が計測したサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を取得し、
前記取得したサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度を用いて、前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のCО濃度及びCО2濃度の減衰率を算出し、前記取得したサイクル毎のTHC濃度及び前記減衰率を用いて、前記内燃機関の内部に未燃燃料成分が付着も蒸発をしないと仮定した場合の前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のサイクル毎のTHC予測濃度を求め、サイクル毎の前記THC濃度と、サイクル毎のTHC予測濃度との差分から前記内燃機関の内部に付着した未燃燃料成分から蒸発したサイクル毎の蒸発THC濃度を算出することを特徴とする内燃機関・内部残留燃料量算出システム。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記ファイアリング運転から前記定常モータリング運転への切り替えの際に計測されたサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度の合計値、及び前記ファイアリング運転の後に行った前記定常モータリング運転をしている最中に計測したサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度の合計値から前記減衰率を算出し、
前記ファイアリング運転から前記定常モータリング運転への切り替えの際に計測されたTHC濃度、及び前記ファイアリング運転の後に行った前記定常モータリング運転をしている最中に計測したサイクル毎のTHC濃度と前記減衰率からサイクル毎の前記THC予測濃度を求めることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関・内部残留燃料量算出システム。
【請求項3】
前記演算装置は、前記算出したサイクル毎の蒸発THC濃度が0に漸近するまでの期間の該蒸発THC濃度を重量換算して総和し、この総和が前記燃料の噴射停止時点のTHC蓄積分の重量である蓄積THC重量になっていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関・内部残留燃料量算出システム。
【請求項4】
前記内燃機関の吸気管に流入されるサイクル毎の吸気流量を計測する高応答流量計を有し、
前記演算装置は、
排気分子量、C原子の分子量及び燃料中のC原子質量組成比を記憶しており、
前記内燃機関を前記過渡パターンの運転動作をさせている最中に、前記高応答流量計が計測したサイクル毎の吸気流量を取得し、
前記算出したサイクル毎の蒸発THC濃度と、前記取得したサイクル毎の吸気流量と、前記排気分子量と、前記C原子の分子量と、前記燃料中のC原子質量組成比とを用いて、サイクル毎の蒸発THC重量を算出することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関・内部残留燃料量算出システム。
【請求項5】
前記内燃機関試験装置は、前記内燃機関に前記ファイアリング運転のサイクル数が異なる、複数通りの前記過渡パターンの運転動作をさせ、該運転動作をさせている最中に、前記高応答分析計にサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を計測させるとともに前記高応答流量計にサイクル毎の吸気流量を計測させ、
前記演算装置は、
前記複数通りの前記過渡パターンの運転動作をさせている最中に前記高応答分析計が計測したサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を取得するとともに、前記高応答流量計が計測したサイクル毎の吸気流量を取得し、
前記取得した各計測値及び前記記憶している排気分子量、C原子の分子量及び燃料中のC原子質量組成比を用いて、前記複数通りの前記過渡パターンの運転動作毎に、それぞれのファイアリング運転のサイクル数のときの蒸発THC重量を算出し、
前記取得した各計測値を用いて、前記複数通りの前記過渡パターンの運転動作毎に、それぞれのファイアリング運転のサイクル数のときの蓄積THC重量を算出し、
前記ファイアリング運転のサイクル数と前記算出した蒸発THC重量との関係を示す情報、及び、前記ファイアリング運転のサイクル数と前記算出した蓄積THC重量との関係を示す情報を生成し、これらの情報から燃焼に寄与せずに前記内燃機関の内部の壁面に付着して液膜を形成するサイクル毎の付着THC重量を算出することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関・内部残留燃料量算出システム。
【請求項6】
前記内燃機関に投入するサイクル毎の燃料噴射量を計測する燃料流量計を有し、
前記演算装置は、前記内燃機関が前記過渡パターンの運転動作をしている最中に、前記燃料流量計が計測したサイクル毎の燃料噴射量を取得し、前記算出したサイクル毎の蒸発THC重量及び付着THC重量と、前記取得したサイクル毎の燃料噴射量及び空気流入量とを用いて、サイクル毎の実効空燃比の推定値を算出することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関・内部残留燃料量算出システム。
【請求項7】
内燃機関の内部残留燃料量を算出する演算装置であって、
前記内燃機関に燃料を燃焼させない定常モータリング運転をさせ、次に、該内燃機関に所定サイクル数だけ燃料を噴射し燃焼させるファイアリング運転をさせ、その後、内燃機関に前記定常モータリング運転させる過渡パターンの運転動作をさせている最中に、前記内燃機関の排気管を流れる排ガスのサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を計測した計測値の入力を受け付けるデータ取得部と、
前記受け付けたサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度を用いて、前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のCО濃度及びCО2濃度の減衰率を算出し、前記取得したサイクル毎のTHC濃度及び前記減衰率を用いて、前記内燃機関の内部に未燃燃料成分が付着も蒸発をしないと仮定した場合の前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のサイクル毎のTHC予測濃度を求め、サイクル毎の前記THC濃度と、サイクル毎のTHC予測濃度との差分から前記内燃機関の内部に付着した未燃燃料成分から蒸発したサイクル毎の蒸発THC濃度を算出する残留燃料量算出部とを有していることを特徴とする内燃機関の内部残留燃料量を算出する演算装置。
【請求項8】
内燃機関の内部残留燃料量算出方法であって、
内燃機関試験装置に設置された内燃機関の排気管には、排ガスのサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を計測する高応答分析計が設置されており、
前記内燃機関試験装置により、前記内燃機関に燃料を燃焼させない定常モータリング運転をさせ、次に、該内燃機関に所定サイクル数だけ燃料を噴射し燃焼させるファイアリング運転をさせ、その後、内燃機関に前記定常モータリング運転させる過渡パターンの運転動作をさせている最中に、前記高応答分析計に前記排気管の排ガスのサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を計測させるステップと、
演算装置に、前記高応答分析計が計測した排ガスのサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を取得させ、該取得させたサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度を用いて、前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のCО濃度及びCО2濃度の減衰率を算出させ、前記取得したサイクル毎のTHC濃度及び前記減衰率を用いて、前記内燃機関の内部に未燃燃料成分が付着も蒸発をしないと仮定した場合の前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のサイクル毎のTHC予測濃度を求め、サイクル毎の前記THC濃度と、サイクル毎のTHC予測濃度との差分から前記内燃機関の内部に付着した未燃燃料成分から蒸発したサイクル毎の蒸発THC濃度を算出させるステップと、を有することを特徴とする内燃機関の内部残留燃料量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等の内燃機関の内部残留燃料量を算出する内燃機関・内部残留燃料量算出システム、内燃機関の内部残留燃料量を算出する演算装置、及び内燃機関の内部残留燃料量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの筒内の残留燃料量を計測する筒内残留燃料量計測システムが開示されている。特許文献1に記載の筒内残留燃料量計測システムでは、以下の手順で筒内残留燃料量を算出している。この筒内残留燃料量計測システムでは、先ず、所定状態になるまでエンジンを運転させた後、燃料噴射を停止させてモーターリング状態にする。次に、筒内残留燃料量計測システムは、モーターリング状態において、排気工程を繰り返し、各排気工程に同期して筒内ガスをサンプリング抽出し、抽出したガスからHC濃度を求め、HC濃度と排ガス流量から当該排気工程の燃料量を算出するようになっている。また、筒内残留燃料量計測システムは、各排気工程において、HC濃度が大気と同じレベルであるか否かを判定し、HC濃度が大気と同じレベルになると、排気工程を止めて、これまでの各排気工程で算出した燃料量を合計し、合計した値を、筒内残留燃料量としている。
【0003】
なお、特許文献1に記載の発明では、白煙の量が排出される未燃焼燃料の量と高い相関関係を有している点に着目し、白煙の量を示す指標として、エンジンの筒内残留燃料量を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、
図9に示すように、ガソリンエンジンなどの内燃機関では、噴射された燃料が全て即座に気化して燃焼するわけではなく、一部は壁面に付着して液膜として残り、燃焼に寄与しないものがある。一方、液膜として壁面に付着した燃料が、サイクルが進むごとに蒸発していき、それが後の各サイクルにおいて燃焼に寄与してしまう。
このことは、例えば、内燃機関の加速時のトルクの応答遅れや、始動時のCО、HC排出増の原因になる。特に内燃機関が低温状態にある冷間始動時においては、エミッション性能に重大な影響を及ぼす。すなわち、現状の内燃機関は、冷間始動時等において、吸気ポートや筒内に残る未燃残留燃料の影響により、加速時のトルクの応答遅れが生じたり、エミッション性能に重大な影響を及ぼすという課題を有している。
【0006】
本願発明者は、上記課題について研究を重ねているなかで、内燃機関の内部(内燃機関の筒内に限らず、吸気ポート壁面も含む)に付着している残留未燃燃料の量、内燃機関の内部のサイクルあたりの燃料付着量及び蒸発量を把握できれば、冷間始動を始めとする過渡燃焼を最適に制御でき、エミッションを大きく改善させられることができ、上記の課題を解決できることを着想した。
なお、上述した特許文献1に記載の発明は、エンジンを停止させた状態において、エンジン内の残留燃料量を算出しているものであり、エンジンのサイクル毎の燃料付着量及び蒸発量を算出するものではない。そもそも、特許文献1に記載の発明は、白煙の量を示す指標を算出するものであり、冷間始動を始めとする過渡運転の際の燃焼を最適に制御するという技術では無い。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、内燃機関のサイクルあたりの内部残留燃料量を算出する内燃機関・内部残留燃料量算出システム、内燃機関のサイクルあたりの内部残留燃料量算出する演算装置、及び内燃機関のサイクルあたりの内部残留燃料量算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、内燃機関試験装置に設置された内燃機関の内部残留燃料量を算出する内燃機関・内部燃料量出システムであって、前記内燃機関の排気管に接続され該排気管に排出される排ガスのサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を計測する高応答分析計と、前記内燃機関の内部残留燃料量を算出する演算装置とを有し、前記演算装置は、前記内燃機関試験装置が前記内燃機関に燃料を燃焼させない定常モータリング運転をさせ、次に、該内燃機関に所定サイクル数だけ燃料を噴射し燃焼させるファイアリング運転をさせ、その後、内燃機関に前記定常モータリング運転させる過渡パターンの運転動作をさせている最中に、前記高応答分析計が計測したサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を取得し、前記取得したサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度を用いて、前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のCО濃度及びCО2濃度の減衰率を算出し、前記取得したサイクル毎のTHC濃度及び前記減衰率を用いて、前記内燃機関の内部に未燃燃料成分が付着も蒸発をしないと仮定した場合の前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のサイクル毎のTHC予測濃度を求め、サイクル毎の前記THC濃度と、サイクル毎のTHC予測濃度との差分から前記内燃機関の内部に付着した未燃燃料成分から蒸発したサイクル毎の蒸発THC濃度を算出することを特徴とする。
【0009】
また、前記演算装置は、前記ファイアリング運転から前記定常モータリング運転への切り替えの際に計測されたサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度の合計値、及び前記ファイアリング運転の後に行った前記定常モータリング運転をしている最中に計測したサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度の合計値から前記減衰率を算出し、前記ファイアリング運転から前記定常モータリング運転への切り替えの際に計測されたTHC濃度、及び前記ファイアリング運転の後に行った前記定常モータリング運転をしている最中に計測したサイクル毎のTHC濃度と前記減衰率からサイクル毎の前記THC予測濃度を求めることが望ましい。
【0010】
上記のように構成しているのは、以下の理由による。
ファイアリング運転後の定常モータリング運転をしている際のサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度は、サイクルが進むにしたがい、各サイクルの吸入新気によって一定割合ずつ希釈される。
一方、THC(未燃燃料成分)は、内燃機関の内部(内燃機関の筒内に限らず、吸気ポート壁面も含む)の壁面に液膜として付着した状態で残存しており、サイクルが進むにしたがい、付着している液膜から蒸発してくる。すなわち、ファイアリング運転後の定常モータリング運転をしている際のサイクル毎のTHC濃度の計測値には、付着した液膜からの蒸発分が含まれている。
本願発明者は、このTHC(未燃燃料成分)が、仮に内燃機関の内部に付着も蒸発もしないとすると、ファイアリング運転後に行う定常モータリング運転をしている際に、THC濃度が、CО濃度及びCО2濃度と同じ推移で減衰することを着想した。
そこで、本発明の内燃機関・内部残留燃料量算出システムでは、ファイアリング運転の後に行う定常モータリング運転をしている際のサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度の減衰率を算出し、サイクル毎のTHC濃度(測定値)及び減衰率を用いて、内燃機関の内部に付着も蒸発をしない場合のTHC濃度の予測値(THC予測濃度)を求め、サイクル毎のTHC濃度の計測値とTHC予測濃度の差分から、内燃機関の内部に付着した未燃燃料成分から蒸発したサイクル毎の蒸発THC濃度を算出する構成を採用した。
すなわち、本発明を用いることにより、例えば、サイクル毎に内燃機関の蒸発THC濃度を考慮した上で、最適な燃料噴射量の予測制御をすることができる。また、最適な燃料噴射量の予測制御ができれば、燃費や排ガスの改善が期待できる。また、最適な燃料噴射量の予測制御ができれば、例えば、内燃機関の性能試験において、内燃機関の種々の解析に活用することもできる。
【0011】
また、前記演算装置は、前記算出したサイクル毎の蒸発THC濃度が0に漸近するまでの期間の該蒸発THC濃度を重量換算して総和し、この総和が前記燃料の噴射停止時点のTHC蓄積分の重量である蓄積THC重量になっていることが望ましい。
この構成によれば、内燃機関が過渡パターンの運転動作(定常モータリング運転→ファイアリング運転→定常モータリング運転)をした場合の、燃料の噴射停止時点の液膜を形成するTHC蓄積分の重量(蓄積THC重量)を求めることができる。
【0012】
また、前記内燃機関の吸気管に流入されるサイクル毎の吸気流量を計測する高応答流量計を有し、前記演算装置は、排気分子量、C原子の分子量及び燃料中のC原子質量組成比を記憶しており、前記内燃機関を前記過渡パターンの運転動作をさせている最中に、前記高応答流量計が計測したサイクル毎の吸気流量を取得し、前記算出したサイクル毎の蒸発THC濃度と、前記取得したサイクル毎の吸気流量と、前記排気分子量と、前記C原子の分子量と、前記燃料中のC原子質量組成比とを用いて、サイクル毎の蒸発THC重量を算出することが望ましい。
このように、本発明の内燃機関・内部残留燃料量算出システムによれば、内燃機関が過渡パターンの運転動作(定常モータリング運転→ファイアリング運転→定常モータリング運転)をした場合の、ファイアリング運転の後に行う定常モータリング運転をしている際の排ガスに含まれる「サイクル毎の蒸発THC重量」を算出することができる。
【0013】
また、前記内燃機関試験装置は、前記内燃機関に前記ファイアリング運転のサイクル数が異なる、複数通りの前記過渡パターンの運転動作をさせ、該運転動作をさせている最中に、前記高応答分析計にサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を計測させるとともに前記高応答流量計にサイクル毎の吸気流量を計測させ、前記演算装置は、前記複数通りの前記過渡パターンの運転動作をさせている最中に前記高応答分析計が計測したサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を取得するとともに、前記高応答流量計が計測したサイクル毎の吸気流量を取得し、前記取得した各計測値及び前記記憶している排気分子量、C原子の分子量及び燃料中のC原子質量組成比を用いて、前記複数通りの前記過渡パターンの運転動作毎に、それぞれのファイアリング運転のサイクル数のときの蒸発THC重量を算出し、前記取得した各計測値を用いて、前記複数通りの前記過渡パターンの運転動作毎に、それぞれのファイアリング運転のサイクル数のときの蓄積THC重量を算出し、前記ファイアリング運転のサイクル数と前記算出した蒸発THC重量との関係を示す情報、及び、前記ファイアリング運転のサイクル数と前記算出した蓄積THC重量との関係を示す情報を生成し、これらの情報から燃焼に寄与せずに前記内燃機関の内部の壁面に付着して液膜を形成するサイクル毎の付着THC重量を算出することが望ましい。
本発明によれば、内燃機関が過渡パターンの運転動作をしている際のサイクル毎の付着THC重量を算出することができる。
【0014】
前記内燃機関に投入するサイクル毎の燃料噴射量を計測する燃料流量計を有し、前記演算装置は、前記内燃機関が前記過渡パターンの運転動作をしている最中に、前記燃料流量計が計測したサイクル毎の燃料噴射量を取得し、前記算出したサイクル毎の蒸発THC重量及び付着THC重量と、取得したサイクル毎の燃料噴射量及び空気流入量とを用いて、サイクル毎の実効空燃比の推定値を算出することが望ましい。
このように、本発明によれば、内燃機関が過渡パターンの運転動作をしている際の、サイクル毎の実効空燃比の推定値を算出することができる。
【0015】
また、本発明は、内燃機関の内部残留燃料量を算出する演算装置であって、前記内燃機関に燃料を燃焼させない定常モータリング運転をさせ、次に、該内燃機関に所定サイクル数だけ燃料を噴射し燃焼させるファイアリング運転をさせ、その後、内燃機関に前記定常モータリング運転させる過渡パターンの運転動作をさせている最中に、前記内燃機関の排気管を流れる排ガスのサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を計測した計測値の入力を受け付けるデータ取得部と、前記受け付けたサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度を用いて、前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のCО濃度及びCО2濃度の減衰率を算出し、前記取得したサイクル毎のTHC濃度及び前記減衰率を用いて、前記内燃機関の内部に未燃燃料成分が付着も蒸発をしないと仮定した場合の前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のサイクル毎のTHC予測濃度を求め、サイクル毎の前記THC濃度と、サイクル毎のTHC予測濃度との差分から前記内燃機関の内部に付着した未燃燃料成分から蒸発したサイクル毎の蒸発THC濃度を算出する残留燃料量算出部とを有していることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、内燃機関の内部残留燃料量算出方法であって、内燃機関試験装置に設置された内燃機関の排気管には、排ガスのサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を計測する高応答分析計が設置されており、前記内燃機関試験装置により、前記内燃機関に燃料を燃焼させない定常モータリング運転をさせ、次に、該内燃機関に所定サイクル数だけ燃料を噴射し燃焼させるファイアリング運転をさせ、その後、内燃機関に前記定常モータリング運転させる過渡パターンの運転動作をさせている最中に、前記高応答分析計に前記排気管の排ガスのサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を計測させるステップと、演算装置に、前記高応答分析計が計測した排ガスのサイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度を取得させ、該取得させたサイクル毎のCО濃度及びCО2濃度を用いて、前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のCО濃度及びCО2濃度の減衰率を算出させ、前記取得したサイクル毎のTHC濃度及び前記減衰率を用いて、前記内燃機関の内部に未燃燃料成分が付着も蒸発をしないと仮定した場合の前記ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際のサイクル毎のTHC予測濃度を求め、サイクル毎の前記THC濃度と、サイクル毎のTHC予測濃度との差分から前記内燃機関の内部に付着した未燃燃料成分から蒸発したサイクル毎の蒸発THC濃度を算出させるステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内燃機関のサイクルあたりの内部残留燃料量を算出する内燃機関・内部残留燃料量算出システム、内燃機関の内部残留燃料量算出する演算装置、及び内燃機関の内部残留燃料量算出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムの構成を示した模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが行う内燃機関のファイアリング運転後の定常モータリング運転の際の排ガスに含まれるCО濃度及びCО
2濃度の合計濃度の減衰率を算出する処理を説明するための模式図である。
【
図3】本発明の実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが行う内燃機関のファイアリング運転後の定常モータリング運転の際に内燃機関の内部に未燃燃料成分が付着も蒸発をしないと仮定した場合のサイクル毎のTHC予測濃度を求める処理を説明するための模式図である。
【
図4】本発明の実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが行う内燃機関のファイアリング運転後の定常モータリング運転の際のサイクル毎の蒸発THC濃度を算出する処理を説明するための模式図である。
【
図5】本発明の実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが行うエンジンの燃料噴射停止時点での蓄積THC重量を算出する処理を説明するための模式図である。
【
図6】本発明の実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが求めた、ファイアリング運転のサイクル数と、蒸発THC重量との関係を示した模式図である。
【
図7】本発明の実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが求めた、ファイアリング運転のサイクル数と、蓄積THC重量の関係を示した模式図である。
【
図8】本発明の実施形態の内燃機関・内部燃料量算出システムが求めた、ファイアリング運転のサイクル数と、付着THC重量の関係を示した模式図である。
【
図9】従来技術の内燃機関において、噴射された燃料の一部が燃焼せずに液膜となり壁面に付着したり、液膜から蒸発した状態で筒内に残る状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムについて図面に基づいて説明する。
先ず、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムの構成について、
図1を参照しながら説明する。ここで、
図1は、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムの構成を示した模式図である。
【0020】
図示するように、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムWは、エンジンベンチ(内燃機関試験装置)Bに設置されたエンジン(内燃機関)Eの吸気管3に接続されエンジンEに流入されるサイクル毎の吸気流量を計測する高応答流量計20と、エンジンEの排気管5に接続され排気管5に排出される排ガスの「サイクル毎のTHC濃度、サイクル毎のCО濃度、及びサイクル毎のCО2濃度」を計測する高応答分析計24と、エンジンEの回転数を計測するロータリエンコーダ25と、エンジンEに投入するサイクル毎の燃料噴射量を計測する燃料流量計26と、エンジンEの内部残留燃料量を算出する演算装置100とを有している。
なお、エンジンEは、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンである。
【0021】
なお、図中の符号11は、エンジンEのインジェクタ(燃料噴射装置)9に燃料を供給する燃料供給装置である。また、上記の燃料流量計26は、燃料供給装置11と、燃料噴射装置9とを接続している燃料供給配管に設けられている。
また、燃料流量計26は、演算装置100に電気的に接続されており、演算装置100に、計測した燃料噴射量(サイクル毎の燃料噴射量)を送信する。
【0022】
高応答流量計20は、エンジンEのシリンダに空気を送り込む吸気管3の一端部に接続されており、エンジンEに流入される、サイクル毎の流体(空気)の吸気流量(過渡吸気流量)を計測する。また、高応答流量計20は、演算装置100に電気的に接続されており、演算装置100に、計測した吸気流量(サイクル毎の吸気流量)を送信する。
なお、上記の高応答流量計20とは、自動車のエンジンEに汎用的に搭載されている「熱線式のエアフロセンサ」よりも空気流量の変動に対する応答性が高い(早い)空気流量計のことをいう。例えば、高応答流量計20には、ラミナ流量計(層流型流量計)或いは超音波流量計を用いることができる。本実施形態では、高応答流量計20がラミナ流量計である場合を示している。
【0023】
高応答分析計24は、排気管5に接続された接続配管13を介して、排気管5に接続されており、排気管5に排出される排ガスの「サイクル毎のTHC(total hydrocarbon)濃度(過渡THC体積濃度)、サイクル毎のCО濃度、サイクル毎のCО2濃度」を計測する。また、高応答分析計24は、演算装置100に電気的に接続されており、演算装置100に、計測した「サイクル毎のTHC濃度、サイクル毎のCО濃度、サイクル毎のCО2濃度」を送信する。
なお、高応答分析計24は、例えば、高応答THC濃度計測に「株式会社ベスト測器社製のBHF-100F」を用いることができ、高応答CО濃度計測及び高応答CО2濃度計測に「Cambustion社製のNDIR500」を用いることができる。
【0024】
また、エンジンベンチBは、試験対象であるエンジンEに負荷を与えるダイナモメータ50と、ダイナモメータ50の回転軸とエンジンEの回転軸とを連結するシャフト52と、ダイナモメータ50の動作を制御するダイナモ制御装置51と、エンジンEの動作を制御するエンジン制御装置60とを備えている。
なお、エンジンベンチBは、周知技術のものを用いているため、詳細な説明を省略する。また、試験対象となるエンジンEは、周知の構成のものであるため、図中においては、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムWに直接的に関係する部分だけを示している。
【0025】
また、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムWでは、エンジンベンチBが、設置されたエンジンEに対して、燃料を燃焼させない定常モータリング運転をさせ、次に、所定サイクル数だけ燃料を噴射し燃焼させるファイアリング運転をさせ、その後、定常モータリング運転に戻す過渡パターンの運転動作をさせるようになっている。
そして、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムWでは、エンジンベンチBがエンジンEに「過渡パターンの運転動作(定常モータリング運転→所定サイクル数のファイアリング運転→定常モータリング運転)」をさせている最中に、高応答流量計20がサイクル毎の吸気流量を計測し、高応答分析計24が排ガスの「サイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度」を計測する。
また、エンンジンベンチBがエンジンEに「過渡パターンの運転動作」をさせている最中に、燃料流量計26が「サイクル毎の燃料噴射量」を計測し、ロータリエンコーダ25がエンジンEの回転数を計測する。
【0026】
演算装置100は、各計測装置(高応答流量計20、高応答分析計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26)からそれぞれ送信されてくる計測値(サイクル毎の吸気流量、サイクル毎のTHC濃度、サイクル毎のCО濃度、サイクル毎のCО2濃度、サイクル毎のエンジンEの回転数、燃料噴射量)を受信(取得)する。
また、演算装置100は、取得した各計測値を用いて、エンジンEの内部の「サイクル毎の蒸発THC濃度及び蒸発THC重量、燃料の噴射停止時点の蓄積THC重量、サイクル毎の付着THC重量」、及びエンジンEのサイクル毎の実効空燃比の推定値等を算出する。
【0027】
なお、本実施形態では、演算装置100が、各計測装置(高応答流量計20、高応答分析計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26)との間において、無線或いは有線の通信により計測値を取得する場合を示しているが、これは一例に過ぎない。
ユーザが演算装置100に入力操作をすることで、演算装置100に対して、各計測装置(高応答流量計20、高応答分析計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26)が計測した計測値が入力されるようになっていても良い。例えば、
図1に示す内燃機関・内部残留燃料量算出システムWのうち、演算装置100だけが別の場所に設置されているようなケースにおいては、ユーザが演算装置100に、別の場所で計測された計測値を入力するように構成されていても良い。
【0028】
次に、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムWを構成する演算装置100の機能構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、演算装置100は、制御部110と、データ取得部120と、残留燃料量算出部130とを有している。
【0030】
なお、演算装置100のハードウェア構成について特に限定しないが、演算装置100は、例えば、CPU、補助記憶装置(記憶部)、主記憶装置(記憶部)、ネットワークインターフェース及び入出力インターフェースを備えるコンピュータ(1台或いは複数台のコンピュータ)により構成することができる。この場合、入出力インターフェースには、「高応答流量計20、高応答分析計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26」が接続されている。また、補助記憶装置には、「制御部110、データ取得部120及び残留燃料量算出部130」の機能を実現するためのプログラムが記憶されている。
【0031】
そして、「制御部110、データ取得部120及び残留燃料量算出部130」の機能は、前記CPUが前記プログラムを前記主記憶装置にロードして実行することにより実現される。
また、演算装置100の記憶部(補助記憶装置或いは主記憶装置)には、エンジンEの内部残留燃料量算出処理を行う前段階において、予め、内部残留燃料量算出処理に用いるための、既知データ(エンジンEの寸法情報、排気分子量(約29.0 e-03[kg/mol])、C原子の分子量 (=12.011 e-03[kg/mol])、燃料中のC原子質量組成比等)が登録(記憶)されている。
なお、「エンジンEの寸法情報」は、エンジンベンチBに設置されるエンジンEの仕様により特定される値である。また、「排気分子量、C原子の分子量、燃料中のC原子質量組成比」は、エンジンEに供給する燃料により特定される値である。
【0032】
また、上記の制御部110は、演算装置100の全体の動作を制御するもので、ユーザからの各種設定を受け付けたり、既知データ(エンジンEの燃焼室容積等を含む寸法情報、排気分子量、C原子の分子量、燃料中のC原子質量組成比)の入力を受け付けたりする。また、制御部110は、ユーザからの内燃機関・内部残留燃料量算出システムWに対する操作要求を受け付ける。
【0033】
データ取得部120は、所定のタイミングで、各計測装置(高応答流量計20、高応答分析計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26)がそれぞれ計測した計測値(サイクル毎の吸気流量、サイクル毎のTHC濃度、サイクル毎のCО濃度、サイクル毎のCО2濃度、エンジンEの回転数、サイクル毎の燃料噴射量)を取得する。
【0034】
残留燃料量算出部130は、データ取得部110が取得した各計測値(サイクル毎の吸気流量、サイクル毎のTHC濃度、サイクル毎のCО濃度、サイクル毎のCО2濃度、エンジンEの回転数、燃料噴射量)と、後述する各演算式とを用いて、エンジンEの内部(筒内に限らず、吸気ポート壁面の付着も含む)の「サイクル毎の蒸発THC濃度及び蒸発THC重量、燃料の噴射停止時点の蓄積THC重量、サイクル毎の付着THC重量」、及びエンジンEのサイクル毎の実効空燃比の推定値等を算出する。
【0035】
次に、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムWが行う内部残留燃料量の算出処理の手順について詳細に説明する。
【0036】
なお、内燃機関・内部残留燃料量算出システムWが行う内部残留燃料量の算出処理に先立って、演算装置100の記憶部(補助記憶装置或いは主記憶装置)に、既知データ(エンジンEの寸法情報、排気分子量、C原子の分子量、燃料中のC原子質量組成比)を記憶させる処理を行っているものとする。
また、エンジンベンチBに設置されたエンジンEの吸気管3には高応答流量計20が接続され、エンジンEの排気管5には、接続配管13を介して高応答分析計24が接続されている。また、エンジンEのインジェクタ9には燃料流量計26が接続され、エンジンEの回転軸にはロータリエンコーダ25が取り付けられている。
【0037】
《データ計測処理》
本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量の算出処理では、先ず、データ計測処理を行う。
このデータ計測処理では、エンジンベンチBによりエンジンEを過渡パターンの運転動作をさせている最中に、各計測装置(高応答流量計20、高応答分析計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26)にそれれぞれ計測処理を行わせる。
また、エンジンEの過渡パターンの運転動作は、燃料を燃焼させない定常モータリング運転をし、その後、所定サイクル数(例えば、250サイクル)だけ燃料を噴射し燃焼させるファイアリング運転に切り替え、さらに、その後、定常モータリング運転に戻す運転動作になっている。
なお、上記の定常モータリング運転では、エンジンEで燃料を噴射せずに(燃焼させずに)ダイナモメータ50でエンジンを動作させている。
【0038】
そして、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムWでは、エンジンベンチBがエンジンEに、上記の過渡パターンの運転動作(定常モータリング運転→所定サイクル数のファイアリング運転→定常モータリング運転)をさせている最中に、高応答流量計20がサイクル毎の吸気流量を計測し、高応答分析計24が排ガスの「サイクル毎のTHC濃度、CО濃度及びCО2濃度」を計測し、燃料流量計26が「サイクル毎の燃料噴射量」を計測する。また、ロータリエンコーダ25が、上記の過渡パターンの運転動作をさせている最中に、サイクル毎のエンジンEの回転数を計測する。
その後、各計測装置(高応答流量計20、高応答分析計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26)は、演算装置100に、それぞれ計測した計測値(サイクル毎の吸気流量、サイクル毎のTHC濃度、サイクル毎のCО濃度、サイクル毎のCО2濃度、サイクル毎の燃料噴射量、エンジンの回転数)を送信する。また、演算装置100のデータ取得部110は、各計測装置から送られた計測値を取得する(受信)する。
【0039】
さらに、このデータ計測処理では、後述する「THC付着量の算出処理」のために、ファイアリング運転のサイクル数を変えながら、繰り返し、各計測装置に計測させる処理(複数通りの過渡パターンの運転動作を計測する「繰り返し計測処理」)も行う。
具体的には、エンジンEに、ファイアリング運転のサイクル数(ファイアリングサイクル数)が異なる、複数通りの過渡パターンの運転動作をさせる。また、ファイアリング運転のサイクル数が異なる過渡パターンの運転動作毎に、高応答分析計24にサイクル毎の「THC濃度、CО濃度及びCО2濃度」計測させ、高応答流量計20に「サイクル毎の吸気流量」を計測させ、ロータリエンコーダ25に「サイクル毎のエンジンの回転数」を計測させ、燃料流量計26に「サイクル毎の燃料噴射量」を計測させる。また、各計測装置が計測した計測値は、演算装置100に送信される。
なお、上記の「繰り返し計測処理」では、ファイアリングサイクル数が「10」の過渡パターンの運転動作と、ファイアリングサイクル数が「50」の過渡パターンの運転動作と、ファイアリングサイクル数が「150」の過渡パターンの運転動作と、ファイアリングサイクル数が「250」の過渡パターンの運転動作とを行う。
【0040】
次に、演算装置100の残留燃料量算出部130が行うエンジンEの内部残留燃料量の算出処理について説明する。
【0041】
《蒸発THC濃度の算出》
先ず、演算装置100の残留燃料量算出部130が行う蒸発THC濃度の算出処理の手順について
図2~
図4を参照しながら説明する。
【0042】
ここで、
図2は、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが行うエンジンのファイアリング運転後の定常モータリング運転の際の排ガスに含まれるCО濃度及びCО
2濃度の合計濃度の減衰率を算出する処理を説明するための模式図である。
また、
図3は、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが行うエンジンのファイアリング運転後の定常モータリング運転の際に内燃機関の内部に未燃燃料成分が付着も蒸発をしないと仮定した場合のサイクル毎のTHC予測濃度を求める処理を説明するための模式図である。
また、
図4は、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが行うエンジンのファイアリング運転後の定常モータリング運転の際のサイクル毎の蒸発THC濃度を算出する処理を説明するための模式図である。
【0043】
この蒸発THC濃度の算出処理では、先ず、ファイアリング運転の後に切り替えて行った定常モータリング運転をしている際に計測した「サイクル毎のCО濃度及びCО2濃度の合計濃度」の減衰率を算出する。
次に、蒸発THC濃度の算出処理では、ファイアリング運転の後に切り替えて行った定常モータリング運転をしている際に計測した「サイクル毎のTHC濃度」と、算出した減衰率から、エンジンEの内部に未燃燃料成分が付着も蒸発をしないと仮定した場合のファイアリング運転の後に切り替えて行った定常モータリング運転をしている際のサイクル毎のTHC予測濃度(THC予測値)を求める。
次に、蒸発THC濃度算出処理では、サイクル毎のTHC濃度(計測値)と、サイクル毎のTHC予測濃度の差分からエンジンEの内部に付着した未燃燃料成分から蒸発したサイクル毎の蒸発THC濃度を算出する。
【0044】
減衰率の算出処理では、演算装置100の残留燃料量算出部130は、データ取得部120が取得した「サイクル毎のCО濃度及びサイクル毎のCО2濃度」を用いて、サイクル毎に、「CО濃度及びCО2濃度の合計濃度」を算出する。
また、演算装置100の残留燃料量算出部130は、サイクル毎の「CО濃度及びCО2濃度の合計濃度」から、ファイアリング運転後に切り替えて行った定常モータリング運転をしている際の「CО濃度及びCО2濃度の合計濃度」の減衰率を算出する。
【0045】
具体的には、演算装置100の残留燃料量算出部130は、ファイアリング運転から定常モータリング運転への切り替えの際に計測された「CО濃度及びCО
2濃度の合計値」及びファイアリング運転の後に行った定常モータリング運転をしている最中に計測した「サイクル毎のCО濃度及びCО
2濃度の合計値」から、ファイアリング運転後に切り替えて行った定常モータリング運転をしている際の減衰率(CО濃度+CО
2濃度の減衰率)を算出する。
図2に、サイクル毎の「CО濃度及びCО
2濃度の合計濃度」の推移と、算出した「減衰率」を示している。図中では、実線が計測して得られた「サイクル毎のCО濃度及びCО
2濃度の合計濃度」の推移を示し、破線がファイアリング運転の後に切り替えて行った定常モータリング運転をしている際の「CО濃度及びCО
2濃度の合計濃度」の減衰率(減衰関数でフィットしたもの)を示している。
【0046】
図2に示すように、エンジンEがファイアリング運転をした後に燃料噴射を停止して定常モータリング運転に切り替わると、排ガスの「CО濃度及びCО
2濃度の合計濃度」は、サイクルが進むにつれて低下していく。また、「CО濃度及びCО
2濃度の合計濃度」の減衰率は、噴射を停止して定常モータリング運転に切り替わった時点から、略一律の減衰率で濃度が希釈化されている。これは、燃焼後にエンジンEの内部に残留している既燃ガスが、毎サイクルの吸入新気によって一定割合ずつ希釈されることによるものと考えられる。
なお、「CО濃度及びCО
2濃度の合計濃度」と減衰率の関係は、下記の(式1)のようになる。
【数1】
【0047】
一方、THC(未燃燃料成分)は、エンジンEの内部(筒内、吸気ポート)の壁面に液膜として付着した状態で残存していたり、付着している液膜から蒸発してきてエンジンEの内部に残存したりしている。そのため、エンジンEがファイアリング運転をした後に燃料噴射を停止して定常モータリング運転に切り替わった後の、サイクル毎のTHC濃度(計測値)には、付着している液膜からの蒸発分が含まれていると考えられる。
そのため、
図3に示すように、ファイアリング運転の後に切り替えて行った定常モータリング運転をしている際に計測した「サイクル毎のTHC濃度」は、定常モータリング運転に切り替わった後、一端上昇し、その後、「CО濃度及びCО
2濃度」と比べて緩やかな(小さな)傾きで減少している。
なお、
図3では、実線が計測して得られた「サイクル毎のTHC濃度」の推移を示している。
【0048】
そして、本願発明者は、エンジン等の内燃機関の内部残留燃料量に関する研究を進めるなかで、THC(未燃燃料成分)が、仮に、エンジンEの内部(筒内、吸気ポート)に付着も蒸発をしないとすると、ファイアリング運転後に行う定常モータリング運転をしている際のサイクル毎のTHC濃度が、「CО濃度及びCО2濃度」と同じ推移で減衰するはずであり、そうならないのはTHCに付着・蒸発があるためだと着想した。
【0049】
また、本願発明者は、ファイアリング運転の後に行う定常モータリング運転をしている際に計測したサイクル毎の「CО濃度及びCО
2濃度の合計濃度」の減衰率を算出し、この減衰率と、ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際に計測したサイクル毎のTHC濃度の計測値を用いることで、エンジンEの内部にTHCが付着も蒸発をしないと仮定した場合のTHC濃度の予測値(THC予測濃度)を求めることができることを見出した。
また、本願発明者は、ファイアリング運転の後の定常モータリング運転をしている際に計測したサイクル毎のTHC濃度の計測値と、求めたTHC予測濃度の差分から、エンジンE等の内燃機関の内部に付着した未燃燃料成分から蒸発したサイクル毎の蒸発THC濃度を算出できることを見出した。
なお、
図3の破線は、「CО濃度及びCО
2濃度の合計濃度」から求めた減衰率と同じ傾きの減衰関数を示している。
【0050】
そこで、演算装置100の残留燃料量算出部130に、ファイアリング運転から定常モータリング運転への切り替えの際に計測されたTHC濃度及びファイアリング運転の後に行った定常モータリング運転をしている最中に計測したサイクル毎のTHC濃度と、上記の減衰率(CО濃度+CО
2濃度の減衰率)を用いてエンジンEの内部に未燃燃料成分が付着も蒸発をしないと仮定した場合のサイクル毎のTHC予測濃度を算出する機能を設けた。
また、演算装置100の残留燃料量算出部130に、ファイアリング運転の後に行う定常モータリング運転をしている際に計測したサイクル毎のTHC濃度(計測値)と、サイクル毎のTHC予測濃度との差分からサイクル毎の蒸発THC濃度を算出する(
図4参照)機能を設けた。
【0051】
具体的には、演算装置100の残留燃料量算出部130は、下記の(式2)と、ファイアリング運転から定常モータリング運転への切り替えの際に計測されたサイクル毎のTHC濃度(計測値)及びファイアリング運転の後に行った定常モータリング運転をしている最中に計測したサイクル毎のTHC濃度と、上記の減衰率(CО濃度+CО
2濃度の減衰率)とを用いて、サイクル毎の蒸発THC濃度(THCの蒸発分の濃度)を算出するようになっている。
なお、蒸発THC濃度(THCの蒸発分の濃度)とは、あるサイクルに、液膜から蒸発してきて排気成分として観測されるTHCの濃度である。
【数2】
【0052】
上記の(式2)に示すように、例えば、あるサイクルの蒸発THC濃度を算出する場合、あるサイクルのTHC濃度(計測値)と、その計測値の直前サイクルのTHC濃度(計測値)に減衰率(CО濃度+CО2濃度の減衰率)を乗算して得られたTHC予測濃度との差分を算出する。この差分が、あるサイクルの蒸発THC濃度になっている。
【0053】
《蒸発THC重量の算出》
次に、演算装置100の残留燃料量算出部130が行う「蒸発THC重量(THC蒸発分の重量)」の算出処理について説明する。
【0054】
演算装置100の残留燃料量算出部130は、算出した「サイクル毎の蒸発THC濃度」と、取得した「サイクル毎の吸気流量」と、予め記憶している既知データ(排気分子量、C原子の分子量、燃料中のC原子質量組成比)と、下記(式3)とを用いて、「サイクル毎の蒸発THC重量(THC蒸発分の重量)」を算出する。
なお、下記(式3)の吸入空気重量は、高応答流量計20が計測した「サイクル毎の吸気流量」である。
【数3】
【0055】
《蓄積THC重量の算出》
次に、演算装置100の残留燃料量算出部130が行う蓄積THC重量の算出処理の手順について
図5を参照しながら説明する。
ここで、
図5は、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが行うエンジンの燃料噴射停止時点での蓄積THC重量を算出する処理を説明するための模式図である。
【0056】
演算装置100の残留燃料量算出部130は、下記の(式4)に示すように、上記の算出した「サイクル毎の蒸発THC濃度」が「0」に漸近するまでの長期間の「サイクル毎の蒸発THC濃度」を重量換算して「サイクル毎の蒸発THC重量」を求め、求めた「サイクル毎の蒸発THC重量」の総和(トータル)を算出する。この算出した総和(トータル)が、燃料噴射停止時点でのTHC蓄積分の重量(蓄積THC重量)に相当する。
なお、
図5では、上記の算出した「サイクル毎の蒸発THC濃度」が「0」に漸近するまでの長期間の「蒸発THC濃度」を重量換算したものの総和(トータル)を算出する処理のイメージ図を示している。
【数4】
【0057】
《THC付着量の算出》
次に、演算装置100の残留燃料量算出部130が行うTHC付着量の算出処理の手順について
図6~8を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが求めた、ファイアリング運転のサイクル数と、蒸発THC重量との関係を示した模式図である。
図7は、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが求めた、ファイアリング運転のサイクル数と、蓄積THC重量の関係を示した模式図である。
図8は、本実施形態の内燃機関・内部残留燃料量算出システムが求めた、ファイアリング運転のサイクル数と、付着THC重量の関係を示した模式図である。
【0058】
このTHC付着量の算出処理に先立って、演算装置100のデータ取得部120が、複数通りの過渡パターンの運転動作を計測する「繰り返し計測処理」で計測された各計測値(サイクル毎の吸気流量、サイクル毎のTHC濃度、サイクル毎のCО濃度、サイクル毎のCО2濃度、サイクル毎の燃料噴射量、エンジンの回転数)を取得しているものとする。
【0059】
なお、上述したように、複数通りの過渡パターンの運転動作(定常モータリング運転→所定サイクル数のファイアリング運転→定常モータリング運転)は、ファイアリング運転のサイクル数が「10」の過渡パターンの運転動作と、ファイアリング運転のサイクル数が「50」の過渡パターンの運転動作と、ファイアリング運転のサイクル数が「150」の過渡パターンの運転動作と、ファイアリング運転のサイクル数が「250」の過渡パターンの運転動作である。
【0060】
演算装置100の残留燃料量算出部130は、ファイアリング運転のサイクル数が異なる、複数通りの過渡パターンの運転動作毎に計測した計測値(サイクル毎の吸気流量、サイクル毎のCО濃度、サイクル毎のCО2濃度、サイクル毎のTHC濃度、排気分子量、C原子の分子量、燃料中のC原子質量組成比)を用いて、それぞれのファイアリング運転数のときの「蒸発THC重量(THC蒸発量)」及び「蓄積THC重量(THC蓄積量)」を算出する。
例えば、残留燃料量算出部130は、ファイアリング運転のサイクル数が「10」の過渡パターンの運転動作の際の計測値(サイクル毎の吸気流量、サイクル毎のCО濃度、サイクル毎のCО2濃度、サイクル毎のTHC濃度、排気分子量、C原子の分子量、燃料中のC原子質量組成比)を用いて、ファイアリング運転がサイクルが「10」のときの「THC蒸発量」及び「THC蓄積量」を算出する。
また、例えば、残留燃料量算出部130は、ファイアリング運転のサイクル数が「50」の過渡パターンの運転動作の際の計測値を用いて、ファイアリング運転がサイクルが「50」のときの「蒸発THC重量(THC蒸発量)」及び「蓄積THC重量(THC蓄積量)」を算出する。
【0061】
また、演算装置100の残留燃料量算出部130は、それぞれのファイアイング運転のサイクル数(ファイアリングサイクル数)毎に算出した「THC蒸発量」を補間し、
図6に示す、ファイアリング運転のサイクル数と、THC蒸発量との関係を示すグラフ情報を生成する。
また、演算装置100の残留燃料量算出部130は、それぞれのファイアイング運転のサイクル数(ファイアリングサイクル数)毎に算出した「THC蓄積量」を補間し、
図7に示す、ファイアリング運転のサイクル数と、THC蓄積量との関係を示すグラフ情報を生成する。
【0062】
また、付着THC重量(THC付着量)と、蒸発THC重量(THC蒸発量)と、蓄積THC重量(THC蓄積量)との間には、下記(式5)に示す関係がある。
【数5】
【0063】
そして、上記(式5)を変形することで、下記(式6)に示すように、あるサイクルにおいて、燃焼に付与せずにエンジンEの内部の壁面に付着して液膜を形成する付着THC重量(THC付着分の重量)を算出することができる。
【数6】
【0064】
本実施形態では、演算装置100の残留燃焼算出部130が、ファイアリング運転のサイクル数が異なる、複数通りの過渡パターンの運転動作毎に計測した計測値を用いて、それぞれの過渡パターンの運転動作毎に算出した、それぞれのファイアリング運転数のときの「THC蒸発量(蒸発THC重量)」及び「THC蓄積量(蓄積THC重量)」と、上記(式6)を用いて、サイクル毎のTHC付着量(THC付着分の重量)を算出する。
【0065】
《実効空燃比の推定処理》
次に、演算装置100の残留燃料量算出部130が行う実効空燃比の推定処理について説明する。
演算装置100の残留燃料量算出部130は、上述した(式3)で求めた「サイクル毎のTHC蒸発量(蒸発THC重量)」と、上述した(式6)で求めた「サイクル毎のTHC付着量(付着THC重量)」と、燃料流量計26が計測した「サイクル毎の燃料噴射量」と、高応答流量計20が計測した「サイクル毎の吸気流量(吸入空気量)と、下記(式7)とを用いて、サイクル毎の実効空燃比の推定値を算出する。
【数7】
【0066】
なお、初爆サイクルにおいては、エンジンEの燃焼室内は既燃ガスではなく空気で満たされていることから、この初期空気量を加算して実行空燃比を求める必要がある。
そのため、本実施形態の演算装置100の残留燃料量算出部130は、初爆サイクルについては、下記の(式8)を用いて、実効空燃比の推定値を算出する。
【数8】
なお、上記の(式8)の初期空気流量は、演算装置100が記憶している既知データ(エンジンEの寸法情報に含まれる燃料容積)から求めることができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、過渡パターンの運転動作をさせているエンジンEのファイアリング運転の後に行う定常モータリング運転をしている際の排ガスの「サイクル毎の蒸発THC濃度及び蒸発THC重量」と、燃料の噴射停止時点の「蓄積THC重量」を算出することができる。
また、本実施形態によれば、過渡パターンの運転動作をさせている際の「付着THC重量」を算出することができる。また、本実施形態によれば、過渡パターンの運転動作をさせているエンジンEの実効空燃比の推定値を算出することができる。
これらの算出値が判れば、内燃機関の冷間始動を始めとする過渡燃焼を最適に制御でき、エミッションを大きく改善させられることが期待できる。
【0068】
このように、本実施形態によれば、エンジンE等の内燃機関のサイクルあたりの内部残留燃料量を算出する内燃機関・内部残留燃料量算出システムW、内燃機関のサイクルあたりの内部残留燃料量算出する演算装置100、及びの内燃機関のサイクルあたりの内部残留燃料量算出方法を提供することができる。
【0069】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
W…内燃機関・内部残留燃料量算出システム
13…接続配管
20…高応答流量計
24…高応答分析計
25…ロータリエンコーダ
26…燃料流量計
100…演算装置
110…制御部
120…データ取得部
130…残留燃料量算出部
E…エンジン
3…吸気管
5…排気管
9…燃料噴射装置(インジェクタ)
11…燃料供給装置
B…エンジン試験装置(エンジンベンチ)
50…ダイナモメータ
51…ダイナモ制御装置
52…シャフト
60…エンジン制御装置