IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-立体造形方法 図1
  • 特開-立体造形方法 図2
  • 特開-立体造形方法 図3
  • 特開-立体造形方法 図4
  • 特開-立体造形方法 図5
  • 特開-立体造形方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042445
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】立体造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/379 20170101AFI20240321BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20240321BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20240321BHJP
   B29C 69/02 20060101ALI20240321BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240321BHJP
   B29C 39/02 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B29C64/379
B29C64/135
B33Y40/20
B29C69/02
B33Y10/00
B29C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147171
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金盛 一
(72)【発明者】
【氏名】圓崎 諭
(72)【発明者】
【氏名】津田 雄一郎
【テーマコード(参考)】
4F204
4F213
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AB25
4F204AC05
4F204EA05
4F204EB01
4F204EF01
4F204EF27
4F204EK13
4F204EK18
4F213AA39
4F213AA44
4F213WA25
4F213WB01
4F213WF27
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL15
4F213WL62
(57)【要約】
【課題】硬化したコア材から容易にシェルを分離させて立体造形物を得ることができる立体造形方法を提供する。
【解決手段】立体造形物101の外形を規定するシェル125の内壁面に囲われた部分であるコア部126に液相材料であるコア材116を充填するコア材充填工程と、コア材116を硬化させるコア材硬化工程と、シェル125の少なくとも一部を硬化後のコア材116から分離させ、コア部126の形状に倣った外形を有しコア材116からなる立体造形物101を得る分離工程と、を備える立体造形方法であり、分離工程は、シェル125と硬化後のコア材116aの少なくとも一方が軟化する温度条件下で実施される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体造形物の外形を規定するシェルの内壁面に囲われた部分であるコア部に液相材料であるコア材を充填するコア材充填工程と、
前記コア部内の前記コア材を硬化させるコア材硬化工程と、
前記シェルの少なくとも一部を硬化後の前記コア材から分離させ、前記コア部の形状に倣った外形を有し前記コア材からなる立体造形物を得る分離工程と、
を備える立体造形方法であり、
前記分離工程は、前記シェルと硬化後の前記コア材の少なくとも一方が軟化する温度条件下で実施されることを特徴とする、立体造形方法。
【請求項2】
前記シェルと硬化後の前記コア材の少なくとも一方は物性としてガラス転移温度を有し、当該ガラス転移温度よりも高い温度条件であることにより軟化することを特徴とする、請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項3】
前記シェルおよび硬化後の前記コア材が物性としてガラス転移温度を有し、前記シェルのガラス転移温度は硬化後の前記コア材のガラス転移温度よりも低く、
前記分離工程は、前記シェルの温度が前記シェルのガラス転移温度以上であってかつ硬化後の前記コア材の温度が硬化後の前記コア材のガラス転移温度未満の温度である条件下で実施されることを特徴とする、請求項2に記載の立体造形方法。
【請求項4】
前記コア材は熱硬化性樹脂からなり、前記コア材硬化工程では前記コア材に熱エネルギーを付与することにより熱硬化させることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の立体造形方法。
【請求項5】
前記分離工程における前記シェルおよび硬化後の前記コア材の温度は、温度調節された流体が接触することにより調節されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の立体造形方法。
【請求項6】
前記分離工程における前記シェルおよび硬化後の前記コア材の温度は、温度調節されたステージ上に前記シェルおよび硬化後の前記コア材が載置されることにより調節されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の立体造形方法。
【請求項7】
前記シェルはエポキシ系樹脂からなることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の立体造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンティングなどの付加製造技術を用いて立体造形物を形成させる立体造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンティング技術を用いた製造装置の名称として、広く3Dプリンタという言葉が使われている。3Dプリンタは、3次元のCADデータをもとにコンピュータで造形物の断面形状を計算し、該造形物を薄い輪切り状の断面構成要素に分割して、その断面構成要素を種々の方法で形成し、それを積層させて目的とする造形物を形成する立体造形装置である。3Dプリンティング技術は、国際的にはAdditive Manufacturing Technologyと同義語として使われる場合が多く、日本語訳として、付加製造技術が用いられている。
【0003】
近年は、3Dプリンタで形成した造形物に対しても、実製品の量産前の評価目的で外観だけでなく剛性や強度が要求されるようになり、金属3Dプリンタや複合材3Dプリンタが注目されている。特に、下記特許文献1に開示されている立体造形方法では、造形槽内で複数回のシェルの造形とコア材の充填が繰り返された後、活性エネルギー線の照射または熱エネルギーの付与によりコア材を一括して硬化させることにより、コア材により形成される造形物には積層界面が存在しないため、剛性、強度に方向性が無い造形物を造形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-136923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された立体造形方法により立体造形物を得るにあたり、一般にはシェルと硬化したコア材とを合わせて立体造形物と呼ぶが、立体造形物の一体性が重視されたりシェルの強度が問題視されたりする場合、硬化したコア材から少なくとも一部のシェルを分離させる必要がある。
【0006】
一方、シェル内でコア材が硬化する際にシェルとコア材は密着しているため、従来の立体造形方法では図6に示すように工具203によりシェル202を切削する(砕く)などして、すなわち機械加工によって立体造形物201を得る必要があった。
【0007】
しかし、シェル202がエポキシ系などの樹脂によって形成されている場合、このシェル202は粘り気があって切削性に劣り、シェル202の剥離が進むにつれて切削したシェル202が工具203の刃と刃の間に入り込む可能性がある。また、加工時の切削熱で軟化(溶融)したシェル202が工具203にまとわりつく可能性がある。このような状態になった工具203でシェル202の剥離が進められると加工ができなくなるばかりか工具203が折れたり欠けたりするおそれがあり、すなわち、立体造形物201からシェル202を剥離させることが困難であるという問題があった。
【0008】
本願発明は、上記問題点を鑑み、硬化したコア材から容易にシェルを分離させて立体造形物を得ることができる立体造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の立体造形方法は、立体造形物の外形を規定するシェルの内壁面に囲われた部分であるコア部に液相材料であるコア材を充填するコア材充填工程と、前記コア材を硬化させるコア材硬化工程と、前記シェルの少なくとも一部を硬化後の前記コア材から分離させ、前記コア部の形状に倣った外形を有し硬化後の前記コア材からなる立体造形物を得る分離工程と、を備える立体造形方法であり、前記分離工程は、前記シェルと硬化後の前記コア材の少なくとも一方が軟化する温度条件下で実施されることを特徴としている。
【0010】
本発明の立体造形方法により、分離工程においてシェルと硬化したコア材の少なくとも一方が軟化するため、シェルとコア材の間の密着性が緩和されて容易にシェルをコア材から分離させることができる。
【0011】
また、前記シェルと硬化後の前記コア材の少なくとも一方は物性としてガラス転移温度を有し、当該ガラス転移温度よりも高い温度条件であることにより軟化すると良い。
【0012】
また、前記シェルおよび硬化後の前記コア材が物性としてガラス転移温度を有し、前記シェルのガラス転移温度は硬化後の前記コア材のガラス転移温度よりも低く、前記分離工程は、前記シェルの温度が前記シェルのガラス転移温度以上であってかつ硬化後の前記コア材の温度が硬化後の前記コア材のガラス転移温度未満の温度である条件下で実施されると良い。
【0013】
こうすることにより、分離工程においてシェルが軟化するのに対しコア材は軟化せず硬い状態を維持するため、分離工程中にコア材が変形することを防ぐことができる。
【0014】
また、前記コア材は熱硬化性樹脂からなり、前記コア材硬化工程では前記コア材に熱エネルギーを付与することにより熱硬化させると良い。
【0015】
こうすることにより、コア材充填工程を容易に行え、かつコア材硬化工程においてコア材全体をしっかりと硬化させることができる。
【0016】
また、前記分離工程における前記シェルおよび硬化後の前記コア材の温度は、温度調節された流体が接触することにより調節されると良い。
【0017】
こうすることにより、分離工程における温度条件を容易に形成することができる。
【0018】
また、前記分離工程における前記シェルおよび硬化後の前記コア材の温度は、温度調節されたステージ上に前記シェルおよび硬化後の前記コア材が載置されることにより調節されても良い。
【0019】
こうすることにより、分離工程における温度条件を容易に形成することができる。
【0020】
また、前記シェルはエポキシ系樹脂からなると良い。
【0021】
エポキシ系樹脂からなるシェルは特に切削性に劣るため、本発明の立体造形方法がより効果的である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の立体造形方法により、硬化したコア材から容易にシェルを分離させて立体造形物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の立体造形方法を実施するための立体造形装置を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態における立体造形方法を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態における立体造形方法を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態における立体造形方法を説明する図である。
図5】本発明の立体造形方法で得られる立体造形物の他の例である。
図6】従来の立体造形方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の立体造形方法のうち、シェルにコア材を充填するための立体造形装置について、図1を参照して説明する。
【0025】
複合材3Dプリンタを含む立体造形装置100は、紫外線硬化樹脂であるシェル材121が貯留されている造形槽111、レーザ光学系112、コア材供給系113、および熱硬化手段140を主たる構成要素とする。
【0026】
造形槽111中には液相材料であるシェル材121が貯留されており、図示しないシェル材調整系により、その液面位置を所定位置に維持、調整可能となっている。シェル材121としてはエポキシ系、アクリル系など公知のものが使用可能である。造形槽111中には造形台128が設けられている。造形台128は造形物を支持するためのもので、図示しない駆動機構により図中Z軸方向の任意の位置に移動かつ設置可能となっている。
【0027】
レーザ光学系112は紫外線レーザ光源114、走査光学系115とからなり、紫外線レーザ光源114から出射される紫外線レーザ光130は走査光学系115によりシェル材121の液面上(すなわちXY平面)の所定範囲を走査することが可能となっている。
【0028】
シェル材121は紫外線レーザ光130の照射により、図1にて硬化済み紫外線硬化樹脂123で示すように液面から所定の深さだけ硬化する。この硬化深さは0.1mmから0.2mm程度が一般的である。もちろん紫外線レーザ光源114の出力を調整することによりこの硬化深さを調整することが可能である。
【0029】
造形台128上面をシェル材121の液面からこの硬化深さ程度まで沈めた深さに位置させ、シェル材121の液面の任意の位置へ紫外線レーザ光130を照射することにより、造形台128上に任意の面積の硬化済み紫外線硬化樹脂123が形成される。
【0030】
造形台128上に硬化済み紫外線硬化樹脂123が形成された後、硬化深さ分だけ造形台128を下降させ、その後シェル材121の液面の任意の位置へ紫外線レーザ光130を照射することにより、硬化済み紫外線硬化樹脂123上に硬化済み紫外線硬化樹脂123が積層される。
【0031】
そして、造形台128の下降とシェル材121液面への紫外線レーザ光130の照射とを繰り返し実施することにより、硬化済み紫外線硬化樹脂123の積層が進行し、三次元形状の硬化済み紫外線硬化樹脂123を得ることができる。本発明では、このようにして造形された造形物をシェル125(図2参照)と呼ぶ。このシェル125は中空形状を有するコア材116を充填するための外殻層であり、シェル125の内壁面に囲われた部分のうち底面を有する部分をコア部126(図2参照)と呼ぶ。
【0032】
また、本実施形態では光硬化したシェル125は物性としてガラス転移温度Tgsを有する。そしてシェル125がこのガラス転移温度Tgs以上の温度まで加熱されることにより、シェル125は固体状態を維持しつつ軟化する(ゴム化する)。
【0033】
コア材供給系113は液相材料であるコア材116をその内部に貯留するコア材タンク117中から、ポンプ119で配管系118b、118aを順に介してコア材116を送液、供給し、ノズル120の先端から吐出する。ノズル120は図示しない移動機構により、図中XYZ軸各方向に移動かつ固定可能となっている。このため配管系118aはノズル120の移動に追随するようフレキシブルな構成及び材料となっている。
【0034】
コア材116は熱硬化性樹脂中に炭素繊維などの強化材が均一に分散されたもので、シェル材121同様エポキシ系、アクリル系など公知の熱硬化性樹脂が使用可能である。また、コア材116の比重はシェル材121の比重よりも大きい。
【0035】
熱硬化手段140は、本実施形態では加熱対象(本実施形態ではシェル125およびコア材116)を密閉可能なチャンバを有する加熱炉であり、コア材116の熱硬化温度Tpcよりも高い温度まで昇温可能である。
【0036】
シェル125が有するコア部126へコア材116を充填し、コア部126に充填された状態のコア材116へ熱硬化手段140によって熱エネルギーを付与し、熱硬化温度Tpcよりも高い温度まで昇温させることにより、コア材116は熱硬化する。この硬化したコア材116を本説明では硬化コア材116a(図3参照)と呼び、この硬化コア材116aが本説明における立体造形物を主として構成する。ここで、コア部126が後に形成される立体造形物における所望の形状を有するようにシェル125が造形され、このコア部126全体にコア材116を充填してからコア材116を熱硬化させることにより、所望の形状の立体造形物を得ることができる。また、本方法によると硬化コア材116aにより形成される立体造形物には積層界面が存在しないため、剛性、強度に方向性が無い立体造形物を造形することができる。
【0037】
また、本実施形態では硬化コア材116aは物性としてガラス転移温度Tgcを有する。このガラス転移温度Tgcはコア材116の熱硬化温度Tpcよりも高く、コア材116が熱硬化して硬化コア材116aとなった後であってもこのガラス転移温度Tgc以上の温度まで硬化コア材116aが昇温することにより、硬化コア材116aは固体状態を維持しつつ軟化する(ゴム化する)。
【0038】
次に、本発明の一実施形態における立体造形方法について、図2乃至4を用いて説明する。
【0039】
本発明の立体造形方法では、最初に、立体造形装置100によってシェル125の造形およびコア材116の充填が行われる。
【0040】
具体的には、まず、ノズル120が紫外線レーザ光130の照射範囲から退避した状態において、造形台128上のシェル材121の液面の任意の位置への紫外線レーザ光130の照射、および硬化深さ分の造形台128の下降が交互に行われることにより、図2(a)に示すように所望の形状のコア部126を有するシェル125が形成される。ここで、本説明では、このようにシェル125を造形する工程をシェル造形工程と呼ぶ。
【0041】
次に、図2(b)に示すようにシェル125内に形成されたコア部126内へノズル120が移動し、ノズル120からコア部126へコア材116が吐出されることにより、コア材116の充填が進行する。ここで、本説明では、シェル125の内壁面に囲われた部分であるコア部126へコア材116を充填する工程をコア材充填工程と呼ぶ。
【0042】
ここで、本実施形態では、コア材充填工程はシェル125が造形槽111内のシェル材121に浸漬した状態で実施され、コア材116の充填前には図2(a)に示すようにコア部126にはシェル材121が存在する。そして、シェル材121より比重が大きいコア材116が充填されていくにしたがって、シェル材121は押し上げられ、図2(b)に示すように、シェル125の上部に設けられた開口を経てコア部126からシェル125の外部へシェル材121が押し出される。すなわち、シェル材121からコア材116への置換が行われる。
【0043】
なお、上記のシェル造形工程およびコア材充填工程は交互に複数回ずつ実施されても構わない。すなわち、所定の高さまでシェル125を造形し、そのシェル125によって形成されるコア部126にコア材116を充填した後、さらにシェル125を増築し、そして増築されたシェル125によって形成されるコア部126にコア材116を充填する、という工程を繰り返し実施しても良い。このようにすることで、特に図2(a)、(b)に示すようにコア部126が複雑な形状を有する場合にも、段階的にコア材116を充填することによってコア部126の隅々までコア材116を充填することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、上記シェル造形工程およびコア材充填工程は室温(20℃~30℃)環境下にて実施される。
【0045】
コア材充填工程が完了した後、コア材116が充填されたシェル125が造形台128から取り外され、図3(a)に示す通り熱硬化手段140に投入される。なお、シェル125を造形台から取り外すにあたり、シェル125からコア材116がこぼれることが無いよう、コア材充填工程完了後にコア部126の上部に新たにシェル125を形成することなどによってコア部126を塞いでから取り外しても良い。
【0046】
次に、図3(a)に示すように、熱硬化手段140内にシェル125およびコア材116が載置された状態で、熱硬化手段140内がコア材116の熱硬化温度である温度Tpcよりも高い温度T1まで昇温することにより、コア材116およびシェル125が加熱されてコア材116の硬化が開始、進行する。そこから所定時間経過するとコア材116全体の硬化が完了して図3(b)に示すように硬化コア材116aが形成される。本説明ではこのようにコア材116を硬化させて硬化コア材116aを形成させる工程をコア材硬化工程と呼ぶ。
【0047】
なお、図3(b)に示すように比較的複雑な形状のコア部126に充填されたコア材116全体をしっかりと硬化させるためには、本実施形態のようにコア材116として熱硬化性樹脂からなる材料を使用し、コア材硬化工程ではたとえば光エネルギーによる硬化よりも熱エネルギーによるコア材116の硬化を実施することが好ましい。
【0048】
次に、コア材硬化工程を経たシェル125および硬化コア材116aの温度がシェル125のガラス転移温度Tgs以上であって硬化コア材116aのガラス転移温度Tgc未満である温度T2となるように温度調節を実施し、この温度条件下においてシェル125と硬化コア材116aとを分離させる。本説明では、このように温度調節を実施した上でシェル125の少なくとも一部を硬化コア材116aから分離させる工程を分離工程と呼ぶ。
【0049】
シェル125および硬化コア材116aの温度を温度T2にする方法として、本実施形態ではコア材硬化工程後のシェル125および硬化コア材116aを一旦室温まで冷却した後、図4(a)に示すように温度T2の温水151が貯留された温水槽150へシェル125および硬化コア材116a投入している。このように温水槽150に投入することにより、シェル125および硬化コア材116aの全方向から加熱を行う事ができるため、好ましい。
【0050】
温水151に接触させることによってシェル125および硬化コア材116aの温度調節を行う以外にも、たとえばドライヤー、ホットガンなどにより温度調節された水以外の流体を接触させることによってシェル125および硬化コア材116aの温度調節を行っても良い。ドライヤー、ホットガンを用いることにより、ただちに分離を行う一部のシェル125にピンポイントに熱エネルギーを付与してシェル125の分離を実施することができ、このような形態も好ましい。
【0051】
また、ホットプレートなど温度調節されたステージ上にシェル125および硬化コア材116aを載置することによってシェル125および硬化コア材116aの温度調節を行っても良い。また、この分離工程でもコア材硬化工程と同様に加熱炉によりシェル125および硬化コア材116aを加熱しても良い。
【0052】
本実施形態の分離工程では、上記の通り、シェル125および硬化コア材116aの温度が温度T2となった後、図4(b)に示すように硬化コア材116aからめくり取ることによりシェル125を硬化コア材116aから分離させる。
【0053】
ここで、特にシェル125の温度がシェル125のガラス転移温度Tgsより高い温度T2となっていることにより、シェル125は軟化している。そのため、シェル125と硬化コア材116aとの間の密着性が緩和され、硬化コア材116aからのシェル125の剥離が容易となる。また、軟化によりシェル125には若干変形が生じる可能性もあり、この場合シェル125と硬化コア材116aとの間には隙間が生じ、シェル125の剥離をさらに容易にさせる。
【0054】
また、硬化コア材116aとシェル125の線膨張係数が異なる場合、加熱時の膨張と冷却時の収縮の差によって両者の変形量に差が生じ、両者の接触界面において滑りが生じる可能性もあり、これもシェル125の剥離を容易にさせる。
【0055】
特にシェル125が本実施形態のように樹脂、特にエポキシ系樹脂からなる場合、このシェル125は粘り気があって切削性に劣り、機械加工で硬化コア材116aからシェル125を削り取ることは困難である。そのため、本発明の通りシェル125を軟化させてから分離させることが好ましい。
【0056】
また、シェル125の剥離にあたり、工具152を用いてシェル125に切り込みを入れたりシェル125と硬化コア材116aの間の隙間を広げたりしても良い。
【0057】
以上の分離工程において不要なシェル125を硬化コア材116aから分離することによって、図4(c)に示すようにコア部126の形状に倣った外形を有する硬化コア材116aからなる立体造形物101が得られる。なお、図4(c)に示す例では、全てのシェル125が分離されて硬化コア材116aのみからなる立体造形物101が得られている。
【0058】
ここで、前述の通り本実施形態ではシェル125を硬化コア材116aから分離させる際の硬化コア材116aの温度T2は硬化コア材116aのガラス転移温度Tgc未満であるため、硬化コア材116aの方は軟化せず硬い状態を維持している。そのため、立体造形物101の主体となる硬化コア材116aはほとんど変形しない条件下でシェル125の剥離を容易にすることができており、所望の形状の立体造形物101を得ることができる。
【0059】
以上の立体造形方法により、硬化したコア材から容易にシェルを分離させて立体造形物を得ることが可能である。
【0060】
ここで、本発明の立体造形方法は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、上記の説明では、コア材116をコア材硬化工程にて硬化させた後、分離工程において全てのシェル125を取り除いて硬化コア材116aのみで立体造形物101を形成させているが、それに限らず、たとえば図5に示す通り一部のシェル125が残され、このシェル125と硬化コア材116aとを合わせて立体造形物101と呼ぶようにしても構わない。
【0061】
また、上記の説明では分離工程においてシェル125および硬化コア材116aの温度調節を行うにあたって温水槽150などを利用して昇温を行っているが、昇温は行わないでたとえばコア材硬化工程後にシェル125および硬化コア材116aを冷却する過程でコア材硬化工程後のシェル125および硬化コア材116aの温度が温度T2になったときにシェル125の分離を行うものであっても良い。
【0062】
また、上記の説明では、分離工程においてシェル125と硬化コア材116aとが等しい温度(温度T2)である条件下でシェル125と硬化コア材116aとの分離が行われているが、必ずしも同じ温度になっていなくても構わない。たとえば温水槽150でシェル125と硬化コア材116aを加熱する際、熱エネルギーはシェル125から硬化コア材116aに伝達するため、昇温過程ではシェル125の温度の方が硬化コア材116aの温度よりも若干高くなることが考えられるが、そのような条件下でシェル125の温度がシェル125のガラス転移温度Tgs以上となって軟化した時点でシェル125の分離が実施されても良い。
【0063】
また、上記の説明では、シェル材121は光硬化性を有し紫外線レーザ光の照射によって硬化してシェル125を形成するが、これに限らず、たとえば熱溶解積層方式(Fused Deposition Molding、FDP)によってシェル125が形成されるものであっても良い。
【0064】
また、コア材116はコア部126に充填後一度に硬化させることが可能であれば、熱硬化性樹脂に限らずたとえば光硬化性樹脂などから構成されていても構わない。
【0065】
また、上記の説明では分離工程中のシェル125および硬化コア材116aの温度T2はシェル125のガラス転移温度Tgs以上であって硬化コア材116aのガラス転移温度Tgc未満であることによりシェル125のみを軟化させているが、硬化コア材116aのガラス転移温度Tgc以上までシェル125および硬化コア材116aを昇温させることによりシェル125と硬化コア材116aの両方を軟化させることによって、シェル125と硬化コア材116aとの間の密着性をさらに緩和させても良い。
【0066】
また、上記の説明ではシェル125のガラス転移温度Tgsの方が硬化コア材116aのガラス転移温度Tgcよりも低いが、それとは逆にシェル125のガラス転移温度Tgsの方が硬化コア材116aのガラス転移温度Tgcよりも高くても良い。この場合、硬化コア材116aを硬化コア材116aのガラス転移温度Tgc以上の温度まで昇温させることにより硬化コア材116aの方を軟化させることによって、シェル125と硬化コア材116aとの間の密着性を緩和させても良い。
【0067】
また、上記の説明ではシェル125と硬化コア材116aの少なくとも一方を各々のガラス転移温度以上の温度まで昇温させることにより軟化させているが、ガラス転移温度未満の温度で軟化が生じる温度条件があれば、その温度条件下でシェル125と硬化コア材116aとの分離を行っても良い。
【符号の説明】
【0068】
100 立体造形装置
101 立体造形物
111 造形槽
112 レーザ光学系
113 コア材供給系
114 紫外線レーザ光源
115 走査光学系
116 コア材
116a 硬化コア材
117 コア材タンク
118a 配管系
118b 配管系
119 ポンプ
120 ノズル
121 シェル材
123 硬化済み紫外線硬化樹脂
125 シェル
126 コア部
128 造形台
130 紫外線レーザ光
140 熱硬化手段
150 温水槽
151 温水
152 工具
201 立体造形物
202 シェル
203 工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6