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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042459
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】メモリシステムおよび電源制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20240321BHJP
   G11C 5/14 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H02M3/00 H
G11C5/14 550
H02M3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147204
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 肇
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730BB81
5H730BB88
5H730FG05
5H730FG07
5H730FG22
5H730XC01
(57)【要約】
【課題】 供給電圧の変動による初期化の失敗を防止できるメモリシステムを実現する。
【解決手段】 実施形態によれば、メモリシステムは、ホストに接続可能である。メモリシステムは、不揮発性メモリ、コントローラ、および電源制御回路を具備する。コントローラは、不揮発性メモリを制御する。電源制御回路は、コントローラと不揮発性メモリとに供給する電力を制御し、1つ以上のDC/DCコンバータを含む。不揮発性メモリおよびコントローラは、1つ以上の回路ブロックを含む。1つ以上のDC/DCコンバータのそれぞれは、1つ以上の回路ブロックの1つに、内部電源電圧をそれぞれ供給する。1つ以上のDC/DCコンバータの内の第1DC/DCコンバータは、メモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに遷移したことに応じて、強制パルス幅変調モードに遷移する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストに接続可能なメモリシステムであって、
不揮発性メモリと、
前記不揮発性メモリを制御するコントローラと、
前記コントローラと前記不揮発性メモリとに供給する電力を制御し、1つ以上のDC/DCコンバータを含む電源制御回路とを具備し、
前記不揮発性メモリおよび前記コントローラは、1つ以上の回路ブロックを含み、
前記1つ以上のDC/DCコンバータのそれぞれは、前記1つ以上の回路ブロックの1つに、内部電源電圧を供給し、
前記1つ以上のDC/DCコンバータの内の第1DC/DCコンバータは、前記メモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに遷移したことに応じて、強制パルス幅変調モードに遷移する、
メモリシステム。
【請求項2】
前記第1DC/DCコンバータは、前記強制パルス幅変調モードで動作している間に、前記1つ以上の回路ブロックのいずれかの負荷電流が境界値を超えた場合、前記強制パルス幅変調モードから、パルス幅変調モードとパルス周波数変調モードのいずれかに前記負荷電流に基づいて切り替えられるオートモードに遷移する、
請求項1に記載のメモリシステム。
【請求項3】
前記1つ以上の回路ブロックは、前記第1DC/DCコンバータが前記内部電源電圧を供給する第1回路ブロックを含み、
前記第1DC/DCコンバータは、前記強制パルス幅変調モードで動作している間に、前記第1回路ブロックの負荷電流が境界値を超えた場合、前記強制パルス幅変調モードから、パルス幅変調モードとパルス周波数変調モードのいずれかに前記負荷電流に基づいて切り替えられるオートモードに遷移する、
請求項1に記載のメモリシステム。
【請求項4】
前記第1回路ブロックは、前記第1DC/DCコンバータが前記強制パルス幅変調モードで動作している間に、初期化動作を行う、
請求項3に記載のメモリシステム。
【請求項5】
前記第1回路ブロックは、シリアルインタフェースを介して前記ホストと接続する回路を含む、
請求項4に記載のメモリシステム。
【請求項6】
前記シリアルインタフェースは、PCI Express規格に準拠する、
請求項5に記載のメモリシステム。
【請求項7】
前記電源制御回路は、前記メモリシステムが前記低消費電力モードから前記通常動作モードに遷移したことに応じて、前記強制パルス幅変調モードに遷移することを示す第1の値を記憶する第1レジスタを含み、
前記第1DC/DCコンバータは、前記第1の値に基づいて、前記メモリシステムが前記低消費電力モードから前記通常動作モードに遷移したことに応じて、前記強制パルス幅変調モードに遷移する、
請求項1に記載のメモリシステム。
【請求項8】
前記電源制御回路は、前記1つ以上のDC/DCコンバータの内の少なくとも1つのDC/DCコンバータを指定する情報を記憶する第2レジスタを含み、
前記第1DC/DCコンバータは、前記情報が前記第1DC/DCコンバータを指定する情報を含む場合、前記メモリシステムが前記低消費電力モードから前記通常動作モードに遷移したことに応じて、前記強制パルス幅変調モードに遷移する、
請求項1に記載のメモリシステム。
【請求項9】
前記1つ以上のDC/DCコンバータのそれぞれは、前記メモリシステムが前記低消費電力モードから前記通常動作モードに遷移したことに応じて、前記強制パルス幅変調モードに遷移する、
請求項1に記載のメモリシステム。
【請求項10】
前記1つ以上のDC/DCコンバータのそれぞれは、前記強制パルス幅変調モードで動作している間に、前記1つ以上の回路ブロックのいずれかの負荷電流が境界値を超えた場合、前記強制パルス幅変調モードから、パルス幅変調モードとパルス周波数変調モードのいずれかに前記負荷電流に基づいて切り替えられるオートモードに遷移する、
請求項9に記載のメモリシステム。
【請求項11】
ホストに接続可能なメモリシステムに供給する電力を制御する電源制御回路であって、
前記メモリシステムに設けられるコントローラおよび不揮発性メモリに含まれる1つ以上の回路ブロックの1つに、内部電源電圧をそれぞれ供給する1つ以上のDC/DCコンバータを具備し、
前記1つ以上のDC/DCコンバータの内の第1DC/DCコンバータは、前記メモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに復帰したことに応じて、強制パルス幅変調モードに遷移する、
電源制御回路。
【請求項12】
前記第1DC/DCコンバータは、前記強制パルス幅変調モードで動作している間に、前記1つ以上の回路ブロックのいずれかの負荷電流が境界値を超えた場合、前記強制パルス幅変調モードから、パルス幅変調モードとパルス周波数変調モードのいずれかに前記負荷電流に基づいて切り替えられるオートモードに遷移する、
請求項11に記載の電源制御回路。
【請求項13】
前記1つ以上の回路ブロックは、前記第1DC/DCコンバータが前記内部電源電圧を供給する第1回路ブロックを含み、
前記第1DC/DCコンバータは、前記強制パルス幅変調モードで動作している間に、前記第1回路ブロックの負荷電流が境界値を超えた場合、前記強制パルス幅変調モードから、パルス幅変調モードとパルス周波数変調モードのいずれかに前記負荷電流に基づいて切り替えられるオートモードに遷移する、
請求項11に記載の電源制御回路。
【請求項14】
前記第1回路ブロックは、前記第1DC/DCコンバータが前記強制パルス幅変調モードで動作している間に、初期化動作を行う、
請求項13に記載の電源制御回路。
【請求項15】
前記第1回路ブロックは、シリアルインタフェースを介して前記ホストと接続する回路を含む、
請求項14に記載の電源制御回路。
【請求項16】
前記シリアルインタフェースは、PCI Express規格に準拠する、
請求項15に記載の電源制御回路。
【請求項17】
前記メモリシステムが前記低消費電力モードから前記通常動作モードに遷移したことに応じて、前記強制パルス幅変調モードに遷移することを示す第1の値を記憶する第1レジスタをさらに具備し、
前記第1DC/DCコンバータは、前記第1の値に基づいて、前記メモリシステムが前記低消費電力モードから前記通常動作モードに遷移したことに応じて、前記強制パルス幅変調モードに遷移する、
請求項11に記載の電源制御回路。
【請求項18】
前記1つ以上のDC/DCコンバータの内の少なくとも1つのDC/DCコンバータを指定する情報を記憶する第2レジスタをさらに具備し、
前記第1DC/DCコンバータは、前記情報が前記第1DC/DCコンバータを指定する情報を含む場合、前記メモリシステムが前記低消費電力モードから前記通常動作モードに遷移したことに応じて、前記強制パルス幅変調モードに遷移する、
請求項11に記載の電源制御回路。
【請求項19】
前記1つ以上のDC/DCコンバータのそれぞれは、前記メモリシステムが前記低消費電力モードから前記通常動作モードに遷移したことに応じて、前記強制パルス幅変調モードに遷移する、
請求項11に記載の電源制御回路。
【請求項20】
前記1つ以上のDC/DCコンバータのそれぞれは、前記強制パルス幅変調モードで動作している間に、前記1つ以上の回路ブロックのいずれかの負荷電流が境界値を超えた場合、前記強制パルス幅変調モードから、パルス幅変調モードとパルス周波数変調モードのいずれかに前記負荷電流に基づいて切り替えられるオートモードに遷移する、
請求項19に記載の電源制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、不揮発性メモリを備えるメモリシステム、および当該メモリシステムの電源制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不揮発性メモリを備えるメモリシステムが広く普及している。このようなメモリシステムの1つとして、NAND型フラッシュメモリを備えるソリッドステートドライブ(SSD)が知られている。SSDは、様々なコンピューティングデバイスのメインストレージとして使用されている。
【0003】
メモリシステムは、電源制御回路を備える。電源制御回路は、メモリシステム内の各部に供給される電力を制御する回路である。
【0004】
また、メモリシステムは、低消費電力モードに設定されることがある。低消費電力モードは、通常動作モードよりも消費電力が低いモードである。
【0005】
メモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに復帰したことに応じて、メモリシステムの少なくとも一部では、初期化が行われる。また、復帰した直後に電源制御回路からメモリシステム内の各部に供給される電力は、電圧の変動が大きい場合がある。このような供給電圧の変動によって、メモリシステムの初期化が失敗する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9030182号明細書
【特許文献2】米国特許第9748838号明細書
【特許文献3】米国特許第8953341号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施形態では、供給電圧の変動による初期化の失敗を防止できるメモリシステムおよび電源制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、メモリシステムは、ホストに接続可能である。メモリシステムは、不揮発性メモリ、コントローラ、および電源制御回路を具備する。コントローラは、不揮発性メモリを制御する。電源制御回路は、コントローラと不揮発性メモリとに供給する電力を制御し、1つ以上のDC/DCコンバータを含む。不揮発性メモリおよびコントローラは、1つ以上の回路ブロックを含む。1つ以上のDC/DCコンバータのそれぞれは、1つ以上の回路ブロックの1つに、内部電源電圧を供給する。1つ以上のDC/DCコンバータの内の第1DC/DCコンバータは、メモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに遷移したことに応じて、強制パルス幅変調モードに遷移する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るメモリシステムを含む情報処理システムの構成例を示すブロック図。
図2】実施形態に係るメモリシステム内の電源制御回路の構成例を示す回路図。
図3】実施形態に係るメモリシステムにおいて用いられるDC/DCモード設定レジスタの構成例を示す図。
図4】比較例に係るメモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに復帰する場合の動作および電圧の遷移を示すタイムチャート。
図5】比較例に係るメモリシステムにおいて用いられるスリープモード制御レジスタの構成例を示す図。
図6】実施形態に係るメモリシステムにおいて用いられるスリープモード制御レジスタの構成例を示す図。
図7】実施形態に係るメモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに復帰する場合の動作例を示すシーケンス図。
図8】実施形態に係るメモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに復帰する場合の動作、電圧、および電流の遷移の例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
まず図1を参照して、実施形態に係るメモリシステムを含む情報処理システム1の構成例を説明する。情報処理システム1は、ホストデバイス2とメモリシステム3とを含む。
【0012】
ホストデバイス2は、メモリシステム3へのデータ保存やメモリシステム3からのデータ読み出しを行うことが可能であり、例えば、ストレージサーバやパーソナルコンピュータである。以下では、ホストデバイス2を、ホスト2とも称する。
【0013】
メモリシステム3は、例えば、NAND型フラッシュメモリ5のような不揮発性メモリにデータを書き込み、不揮発性メモリからデータを読み出すように構成されたストレージデバイスである。尚、不揮発性メモリとしてはNAND型フラッシュメモリには限られない。メモリシステム3はストレージデバイスとも称される。メモリシステム3は、例えば、ソリッドステートドライブ(SSD)として実現される。
【0014】
メモリシステム3は、ホスト2のストレージとして使用され得る。メモリシステム3は、例えば、ケーブルを介してホスト2に接続される。
【0015】
ホスト2とメモリシステム3とを接続するためのインタフェースは、PCI Express(PCIe)(登録商標)、NVM Express(NVMe)(登録商標)等の規格に準拠する。
【0016】
メモリシステム3は、例えば、通常動作モードと低消費電力モードのいずれかで動作する。低消費電力モードは、通常動作モードに比べて消費電力をより低くする動作モードである。低消費電力モードとしては、例えば、メモリシステム3内の構成の少なくとも一部に対して、電力供給を停止するオフモード(off mode)や通常動作に対して、動作や性能を制限して通常動作よりも低い電力にする低電力モード(low power mode:LPM)等が考えられる。低電力モードとしては、例えばスリープモードと呼ばれるようなモードも含まれる。これらオフモードやスリープモードのような複数の低消費電力モードを備えることによりメモリシステム3の消費電力削減をより効果的に制御することが可能である。尚、低消費電力モードは2つ以上のモードを備えたものであってもよい。このように本実施形態のメモリシステム3の低消費電力モードとしては、消費電力が異なる複数のパワーステートが設けられ得る。
【0017】
メモリシステム3は、例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)4、NAND型フラッシュメモリ5、電源制御回路6、およびコントローラ7を備える。
【0018】
DRAM4は、揮発性のRAMであり、例えば、ファームウェア(FW)51の格納領域が設けられる。
【0019】
FW51は、コントローラ7の動作を制御するためのプログラムである。FW51は、例えば、メモリシステム3の起動時に、NAND型フラッシュメモリ5からDRAM4にロードされる。
【0020】
NAND型フラッシュメモリ5は、複数のブロック(図示せず)を含む。複数のブロックそれぞれは、複数のページを含む。ブロックは、データ消去動作の最小単位として機能する。ブロックは、「消去ブロック」、または「物理ブロック」と称されることもある。複数のページそれぞれは、単一のワード線に接続された複数のメモリセルを含む。ページは、データ書き込み動作およびデータ読み出し動作の単位として機能する。なお、ワード線がデータ書き込み動作およびデータ読み出し動作の単位として機能してもよい。
【0021】
電源制御回路6は、メモリシステム3の各部(例えば、DRAM4、NAND型フラッシュメモリ5、コントローラ7)に供給される電力を制御する回路である。電源制御回路6は、例えば、パワーマネジメントIC(PMIC)として実現される。電源制御回路6は、メモリシステム3が通常動作モードから低消費電力モードに遷移したことに応じて、スリープモードに遷移する。電源制御回路6は、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに遷移したことに応じて、スリープモードから復帰する。スリープモードは、電源制御回路6内の少なくとも一部の回路ブロックをオフにして、消費電力を削減するモードである。
【0022】
電源制御回路6は、コントローラ7と通信可能である。電源制御回路6とコントローラ7との通信は、例えば、Inter-Integrated Circuit(I2C)(図示せず)のようなシリアル通信規格に準拠する。電源制御回路6は、通信により、例えば、コマンドをコントローラ7から受信する。このコマンドは、例えば、電源制御回路6の動作を制御するコマンドである。電源制御回路6の具体的な構成については、図2を参照して後述する。
【0023】
コントローラ7は、DRAM4、NAND型フラッシュメモリ5、および電源制御回路6を制御するように構成されたコントローラである。コントローラ7は、例えば、System-on-a-chip(SoC)のような回路によって実現される。コントローラ7は、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)またはDRAMを内蔵していてもよい。この場合、コントローラ7の外部のDRAM4が設けられていなくてもよい。
【0024】
コントローラ7は、例えば、ホストインタフェース(ホストI/F)11、NANDインタフェース(NAND I/F)12、DRAMインタフェース(DRAM I/F)13、およびCPU14を含む。ホストI/F11、NAND I/F12、DRAM I/F13、およびCPU14は、例えば、バス10を介して接続される。
【0025】
ホストI/F11は、ホスト2から様々なコマンド、例えば、I/Oコマンド、各種制御コマンドやデータを受信する回路として機能する。また、ホストI/F11は、コマンドに対する応答やデータをホスト2に送信する回路として機能する。ホストI/F11は、PCIe PHY15を備える。
【0026】
PCIe PHY15は、シリアルインタフェースを介してホスト2と接続する回路である。このシリアルインタフェースは、ホスト2とメモリシステム3とを相互接続可能なリンクを含む。PCIe PHY15は、PCIe規格で規定された物理レイヤに相当する。PCIe PHY15は、例えば、PCIe規格に準拠した物理的な接続形式を有する。PCIe PHY15は、リンクを介してデータを物理的に送受信するインタフェース動作を行う。
【0027】
NAND I/F12は、コントローラ7とNAND型フラッシュメモリ5とを電気的に接続する。NAND I/F12は、Toggle DDR、Open NAND Flash Interface(ONFI)等のインタフェース規格に対応する。
【0028】
NAND I/F12は、NAND型フラッシュメモリ5へのアクセスを制御するように構成されたNAND制御回路として機能する。NAND I/F12は、複数のチャネル(Ch)を介して、NAND型フラッシュメモリ5内の複数のメモリチップにそれぞれ接続されていてもよい。複数のメモリチップが並列に駆動されることにより、NAND型フラッシュメモリ5全体に対するアクセスを広帯域化することができる。
【0029】
DRAM I/F13は、DRAM4へのアクセスを制御するように構成されたDRAM制御回路として機能する。
【0030】
CPU14は、ホストI/F11、NAND I/F12、およびDRAM I/F13を制御するように構成されたプロセッサである。CPU14はNAND型フラッシュメモリ5からDRAM4にロードされたFW51を実行することによって、様々な処理を行う。FW51は、CPU14に様々な処理を実行させるための命令群を含む制御プログラムである。CPU14は、ホスト2からの様々なコマンドを処理するためのコマンド処理等を実行することができる。CPU14の動作は、CPU14によって実行されるFW51によって制御される。
【0031】
コントローラ7内の各部の機能は、コントローラ7内の専用ハードウェアによって実現されてもよいし、CPU14がFW51を実行することによって実現されてもよい。
【0032】
次いで、電源制御回路6の構成について説明する。図2は、電源制御回路6の構成の一例を示す回路図である。
【0033】
電源制御回路6は、例えば、コントロールロジック61、ロードスイッチ62、Low Dropout(LDO)レギュレータ63、および1つ以上のDC/DCコンバータ64(64-1、64-2、64-3、64-4、・・・)を備える。
【0034】
コントロールロジック61は、電源制御回路6内の各部を制御する回路である。コントロールロジック61は、例えば、制御信号を送出して、電源制御回路6内の各部の動作を制御する。また、コントロールロジック61は、電源制御回路6から電力が供給される回路ブロックに流れる電流に関する値を監視し得る。監視する電流に関する値は、電流の値そのものであってもよいし、電流の値を表す指標や信号であってもよい。回路ブロックは、例えば、コントローラ7とNAND型フラッシュメモリ5のいずれかに含まれる。より具体的には、回路ブロックは、例えば、コントローラ7であるSoCのコア部分、NAND型フラッシュメモリ5のコア部分および入出力(I/O)部分、ならびにPCIe PHY15である。電源制御回路6からみた場合、電力が供給される側の回路ブロックを、負荷とも称する。負荷に流れる電流を、負荷電流とも称する。
【0035】
ロードスイッチ62は、電源制御回路6内の各部への電力の供給(オン)と停止(オフ)を切り替えるスイッチ回路である。ロードスイッチ62には、外部電源から電源電圧VINが供給される。ロードスイッチ62は、コントロールロジック61からの制御信号に応じて、電力供給のオンとオフを切り替える。ロードスイッチ62は、オンに設定されている間、電源電圧VOUTを出力する。
【0036】
電源電圧VOUTは、電源制御回路6のピンを介して電源制御回路6の外部へ出力される。電源電圧VOUTは、電源制御回路6の他のピンを介して電源制御回路6内に取り込まれる。より具体的には、電源電圧VOUTは、LDOレギュレータ63の入力電源電圧LDO_INとして入力される。また、電源電圧VOUTは、1つ以上のDC/DCコンバータ64それぞれの入力電源電圧PVINとして入力される。
【0037】
LDOレギュレータ63は、低い入出力電位差で動作可能なリニアレギュレータである。LDOレギュレータ63は、電圧制御により入力電源電圧LDO_INを調整して、内部電源電圧LDO_OUTを出力する。入力電源電圧LDO_INには、ロードスイッチ62の出力電圧VOUTではなく、他の電圧が用いられてもよい。LDOレギュレータ63の動作は、コントロールロジック61からの制御信号に応じて稼働(オン)または停止(オフ)に設定される。LDOレギュレータ63は、オンに設定されている間、内部電源電圧LDO_OUTを出力する。
【0038】
内部電源電圧LDO_OUTは、電源制御回路6のピンを介して電源制御回路6の外部へ出力される。内部電源電圧LDO_OUTは、例えば、1.8ボルト(V)である。内部電源電圧LDO_OUTは、例えば、コントローラ7であるSoCへのアナログ電源に用いられる。
【0039】
1つ以上のDC/DCコンバータ64のそれぞれは、直流で電圧を変換するコンバータである。1つ以上のDC/DCコンバータ64のそれぞれは、コントローラ7およびNAND型フラッシュメモリ5のいずれかに含まれる回路ブロックに供給する内部電源電圧を生成する。電源制御回路6に設けられるDC/DCコンバータ64の数は、電源制御回路6から電力が供給されるメモリシステム3内のコンポーネント(例えば、回路ブロック)の数に基づく。なお、以降の説明では、1つ以上のDC/DCコンバータ64の特定されない任意の1つを指して、単にDC/DCコンバータ64と称することがある。ここでは、図に示されるように、1つ以上のDC/DCコンバータ64が4つのDC/DCコンバータ64-1、64-2、64-3、および64-4を含む場合について説明する。
【0040】
第1DC/DCコンバータ64-1には、ロードスイッチ62からの電源電圧VOUTが入力電源電圧PVIN1として入力される。第1DC/DCコンバータ64-1は、電圧制御により入力電源電圧PVIN1を調整して、内部電源電圧DC/DC1_OUTを出力する。入力電源電圧PVIN1には、ロードスイッチ62の出力電圧VOUTではなく、他の電圧が用いられてもよい。第1DC/DCコンバータ64-1の動作は、コントロールロジック61からの制御信号に応じて稼働(オン)または停止(オフ)に設定される。第1DC/DCコンバータ64-1は、オンに設定されている間、内部電源電圧DC/DC1_OUTを出力する。
【0041】
内部電源電圧DC/DC1_OUTは、電源制御回路6のピンを介して電源制御回路6の外部へ出力される。内部電源電圧DC/DC1_OUTは、例えば、2.5Vである。内部電源電圧DC/DC1_OUTは、例えば、NAND型フラッシュメモリ5のコア部分用の電源に用いられる。つまり、内部電源電圧DC/DC1_OUTは、NAND型フラッシュメモリ5のコア部分の回路ブロックに供給される。第1DC/DCコンバータ64-1からNAND型フラッシュメモリ5のコア部分への内部電源電圧DC/DC1_OUTによる電力供給路を、DC/DCチャネルCH1と称する。電力供給路であるDC/DCチャネルには、対応するDC/DCコンバータ64を一意に特定可能な情報(例えば、番号)が付与される。
【0042】
第2DC/DCコンバータ64-2には、ロードスイッチ62からの電源電圧VOUTが入力電源電圧PVIN2として入力される。第2DC/DCコンバータ64-2は、電圧制御により入力電源電圧PVIN2を調整して、内部電源電圧DC/DC2_OUTを出力する。入力電源電圧PVIN2には、ロードスイッチ62の出力電圧VOUTではなく、他の電圧が用いられてもよい。第2DC/DCコンバータ64-2の動作は、コントロールロジック61からの制御信号に応じて稼働(オン)または停止(オフ)に設定される。第2DC/DCコンバータ64-2は、オンに設定されている間、内部電源電圧DC/DC2_OUTを出力する。
【0043】
内部電源電圧DC/DC2_OUTは、電源制御回路6のピンを介して電源制御回路6の外部へ出力される。内部電源電圧DC/DC2_OUTは、例えば、1.2Vである。内部電源電圧DC/DC2_OUTは、例えば、NAND型フラッシュメモリ5のI/O部分用の電源に用いられる。つまり、内部電源電圧DC/DC2_OUTは、NAND型フラッシュメモリ5のI/O部分の回路ブロックに供給される。第2DC/DCコンバータ64-2からNAND型フラッシュメモリ5のI/O部分への内部電源電圧DC/DC2_OUTによる電力供給路を、DC/DCチャネルCH2と称する。
【0044】
第3DC/DCコンバータ64-3には、ロードスイッチ62からの電源電圧VOUTが入力電源電圧PVIN3として入力される。第3DC/DCコンバータ64-3は、電圧制御により入力電源電圧PVIN3を調整して、内部電源電圧DC/DC3_OUTを出力する。入力電源電圧PVIN3には、ロードスイッチ62の出力電圧VOUTではなく、他の電圧が用いられてもよい。第3DC/DCコンバータ64-3の動作は、コントロールロジック61からの制御信号に応じて稼働(オン)または停止(オフ)に設定される。第3DC/DCコンバータ64-3は、オンに設定されている間、内部電源電圧DC/DC3_OUTを出力する。
【0045】
内部電源電圧DC/DC3_OUTは、電源制御回路6のピンを介して電源制御回路6の外部へ出力される。内部電源電圧DC/DC3_OUTは、例えば、1.2Vである。内部電源電圧DC/DC3_OUTは、例えば、コントローラ7であるSoCに含まれるPCIe PHY15の電源に用いられる。つまり、内部電源電圧DC/DC3_OUTは、PCIe PHY15の回路ブロックに供給される。第3DC/DCコンバータ64-3からPCIe PHY15への内部電源電圧DC/DC3_OUTによる電力供給路を、DC/DCチャネルCH3と称する。
【0046】
第4DC/DCコンバータ64-4には、ロードスイッチ62からの電源電圧VOUTが入力電源電圧PVIN4として入力される。第4DC/DCコンバータ64-4は、電圧制御により入力電源電圧PVIN4を調整して、内部電源電圧DC/DC4_OUTを出力する。入力電源電圧PVIN4には、ロードスイッチ62の出力電圧VOUTではなく、他の電圧が用いられてもよい。第4DC/DCコンバータ64-4の動作は、コントロールロジック61からの制御信号に応じて稼働(オン)または停止(オフ)に設定される。第4DC/DCコンバータ64-4は、オンに設定されている間、内部電源電圧DC/DC4_OUTを出力する。
【0047】
内部電源電圧DC/DC4_OUTは、電源制御回路6のピンを介して電源制御回路6の外部へ出力される。内部電源電圧DC/DC4_OUTは、例えば、0.8Vである。内部電源電圧DC/DC4_OUTは、例えば、コントローラ7であるSoCのコア部分用の電源に用いられる。つまり、内部電源電圧DC/DC4_OUTは、SoCのコア部分の回路ブロックに供給される。
【0048】
なお、電源制御回路6のDC/DCコンバータ64として、図1に示したDRAM4に電源電圧を出力する他のDC/DCコンバータが設けられてもよい。
【0049】
また、コントロールロジック61は、例えば、1つ以上のレジスタ65を備える。
【0050】
レジスタ65のそれぞれは、記憶素子である。記憶素子のそれぞれは、例えば、電源制御回路6の構成の少なくとも一部の動作を規定する値を記憶し得る。記憶素子に記憶される値は、例えば、コントローラ7による要求に応じて設定または更新される。コントローラ7による要求は、例えば、FW51を実行するCPU14によって発行されるコマンドとして実現される。レジスタ65は、例えば、DC/DCモード設定レジスタ65-1と、スリープモード制御レジスタ65-2とを含む。
【0051】
DC/DCモード設定レジスタ65-1は、1つ以上のDC/DCコンバータ64(64-1、64-2、64-3、64-4、・・・)のそれぞれの動作モードに関する設定のためのレジスタである。DC/DCモード設定レジスタ65-1の具体的な構成例については、図3を参照して後述する。
【0052】
DC/DCコンバータ64のそれぞれは、例えば、メモリシステム3が通常動作モードに設定されている間、DC/DCモード設定レジスタ65-1に設定されている値に基づく動作モードで動作し得る。DC/DCコンバータ64のそれぞれは、例えば、DC/DCモード設定レジスタ65-1に設定されている値に基づいて動作するスイッチ等の回路を備えている。
【0053】
スリープモード制御レジスタ65-2は、(1)電源制御回路6のスリープモードへの遷移とスリープモードからの復帰に関する設定と、(2)電源制御回路6がスリープモードである間の、LDOレギュレータ63およびDC/DCコンバータ64のそれぞれの動作モードに関する設定のためのレジスタである。スリープモード制御レジスタ65-2の具体的な構成例については、図6を参照して後述する。
【0054】
電源制御回路6(より詳しくは、LDOレギュレータ63およびDC/DCコンバータ64)は、例えば、メモリシステム3が通常動作モードから低消費電力モードに遷移した場合と、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに遷移した場合とに、スリープモード制御レジスタ65-2に設定されている値に基づき動作し得る。LDOレギュレータ63およびDC/DCコンバータ64のそれぞれは、例えば、スリープモード制御レジスタ65-2に設定されている値に基づいて動作するスイッチ等の回路を備えている。
【0055】
ここで、DC/DCコンバータ64の動作モードについて説明する。
【0056】
DC/DCコンバータ64の動作モードは、例えば、パルス周波数変調(PFM:PulseFrequency Modulation)モード、パルス幅変調(PWM:PulseWidth Modulation)モード、オートモード、およびオフモードのいずれかである。PFMおよびPWMのそれぞれは、DC/DCコンバータ64が出力電圧の生成に用いる電圧制御方式である。
【0057】
パルス周波数変調モード(以下、PFMモードと呼ぶ)は、周波数が可変であり、且つパルス幅が一定である電圧制御方式が用いられるモードである。PFMモードでは、消費電力が小さいが、出力電圧の変動が大きい。
【0058】
パルス幅変調モード(以下、PWMモードと呼ぶ)は、周波数が一定であり、パルス幅が可変である電圧制御方式が用いられるモードである。PWMモードでは、消費電力が大きいが、出力電圧の変動は小さい。
【0059】
オートモードは、負荷電流に応じて、PFMモードとPWMモードのいずれかに自動的に切り替えられるモードである。オートモードでは、PFMモードで動作している間に負荷電流が境界値(boundary)を超えた場合、PWMモードに切り替えられる。また、PWMモードで動作している間に負荷電流が境界値以下になった場合、PFMモードに切り替えられる。なお、境界値は、境界値の付近でPFMモードとPWMモードの切り替えが頻繁に起こらないように、ヒステリシスを有する。ヒステリシスにより、例えば、PWMモードからPFMモードへ切り替えられる場合よりも、PFMモードからPWMモードへ切り替えられる場合の方が、境界値が大きく設定され得る。
【0060】
図3は、メモリシステム3において用いられるDC/DCモード設定レジスタ65-1の構成例を示す図である。DC/DCモード設定レジスタ65-1は、例えば、8ビットの記憶領域を含む。以下では、レジスタの8ビットの記憶領域を、最下位のビットから順に、第0ビットの記憶領域、第1ビットの記憶領域、……、および第7ビットの記憶領域と称する。
【0061】
第7ビットの記憶領域は、メモリシステム3が通常動作モードである間の、第1DC/DCコンバータ64-1(すなわち、DC/DCチャネルCH1)の動作モードを示す値を記憶する。記憶されている値が0である場合、第1DC/DCコンバータ64-1はオートモードで動作する。記憶されている値が1である場合、第1DC/DCコンバータ64-1は強制PWM(Forced PWM)モードで動作する。強制PWMモードは、オートモードのような自動切替えが発生しないPWMモードである。強制PWMモードに設定された場合、DC/DCコンバータ64の動作モードは、PWMモードに固定される。
【0062】
第6ビットの記憶領域は、メモリシステム3が通常動作モードである間の、第2DC/DCコンバータ64-2(すなわち、DC/DCチャネルCH2)の動作モードを示す値を記憶する。記憶されている値が0である場合、第2DC/DCコンバータ64-2はオートモードで動作する。記憶されている値が1である場合、第2DC/DCコンバータ64-2は強制PWMモードで動作する。
【0063】
第5ビットの記憶領域は、メモリシステム3が通常動作モードである間の、第3DC/DCコンバータ64-3(すなわち、DC/DCチャネルCH3)の動作モードを示す値を記憶する。記憶されている値が0である場合、第3DC/DCコンバータ64-3はオートモードで動作する。記憶されている値が1である場合、第3DC/DCコンバータ64-3は強制PWMモードで動作する。
【0064】
第4ビット~第0ビットの記憶領域は、未使用(Reserved)の領域である。
【0065】
なお、DC/DCモード設定レジスタ65-1は、他のDC/DCコンバータ64の動作モードを示す値をさらに記憶してもよい。
【0066】
DC/DCコンバータ64のそれぞれは、例えば、メモリシステム3が通常動作モードである間、DC/DCモード設定レジスタ65-1に設定されている値に基づいて動作し得る。したがって、DC/DCモード設定レジスタ65-1への値の設定により、メモリシステム3が通常動作モードである間のDC/DCコンバータ64のそれぞれの動作モードを、オートモードと強制PWMモードのいずれかに設定できる。なお、DC/DCモード設定レジスタ65-1への値の設定は、例えば、FW51を実行するCPU14から電源制御回路6へ発行されるコマンドに基づいて行われる。
【0067】
ここで、比較例に係るメモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに復帰する際の動作について説明する。比較例に係るメモリシステムは、DC/DCコンバータの動作モードの制御に関する構成を除いて、本実施形態に係るメモリシステム3と同様の構成を有するものとする。
【0068】
図4は、比較例に係るメモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに復帰する場合の動作および電圧の遷移を示すタイムチャート8である。すなわち、タイムチャート8は、NAND型フラッシュメモリに供給される内部電源電圧81、DC/DCコンバータの動作モード82、PCIe PHYに供給される内部電源電圧83、およびPCIe PHYの動作84について、時間の経過に応じた遷移を示す。タイムチャート8の横軸は、時間を示す。
【0069】
時刻t11は、メモリシステムに対して低消費電力モードから通常動作モードへの復帰が要求された時刻である。時刻t11において、メモリシステムは低消費電力モードであり、電源制御回路はスリープモードである。そのため、電源制御回路内のDC/DCコンバータの動作モード82は、DC/DCコンバータごとにオフまたは消費電力が小さいPFMモードである。NAND型フラッシュメモリに供給される内部電源電圧81はオフで電圧が低く、オンしているDC/DCコンバータはPFMモードである。また、PCIe PHYの動作84は、ディセーブルである。
【0070】
時刻t11から時刻t12までの期間は、メモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに遷移する期間である。この期間内に、NAND型フラッシュメモリに供給される内部電源電圧81は徐々に上昇し、高くなる。
【0071】
時刻t12は、メモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに復帰した時刻である。時刻t12において、DC/DCコンバータの動作モード82はオートモードに遷移する。このとき、負荷電流は小さいので、オートモードにおける自動切替えに基づきPFMモードに設定される。
【0072】
次いで、時刻t12から時刻t14までの期間に、PCIe PHYの動作84は、ディセーブルから起動に移行し、さらに初期化に移行する。初期化は、例えば、キャリブレーションを含む。キャリブレーションは、例えば、PCIe PHYに設けられている抵抗に電流を流して、チップ(IC)間のばらつきを調整する動作である。起動および初期化が行われる間のPCIe PHYの負荷電流は小さい。そのため、DC/DCコンバータの動作モード82は、PFMモードに維持される。DC/DCコンバータの動作モード82がPFMモードである間は、PCIe PHYに供給される内部電源電圧83の変動は大きくなる。
【0073】
時刻t12から時刻t14までの期間の内、時刻t13から時刻t14までの期間は、PCIe PHYに供給される内部電源電圧83の変動が大きい期間である。この期間内に、PCIe PHYは初期化が開始される。例えば、キャリブレーションでは、PCIe PHYに設けられている抵抗に電流を流して、チップ間のばらつきを調整するので、電圧の変動を小さい状態にする必要がある。つまり、キャリブレーションは、電圧の変動に対してセンシティブな動作である。しかしながら、内部電源電圧83の変動が大きいので、PCIe PHYでは、適切なキャリブレーションが行われない可能性がある。したがって、このような内部電源電圧83の電圧変動下においては、PCIe PHYにおける初期化は失敗する可能性がある。
【0074】
時刻t14は、PCIe PHYの動作84が、初期化が終了し通常動作に移行した時刻である。このタイミングではDC/DCコンバータの動作モード82は、PFMモードに維持されている。
【0075】
その後、時刻t15において、DC/DCコンバータの動作モード82は、オートモードにおける自動切替えに基づき、PWMモードに遷移する。自動切替えが発動するタイミングは、例えば、いずれかのDC/DCコンバータに対応する負荷電流が予め設定された境界値を超えるタイミングで設定される。
【0076】
以上比較例のように、メモリシステムが低消費電力モードから復帰した際の動作によるとPCIe PHYの初期化が失敗する可能性がある。
【0077】
なお、例えば、時刻t12において、DC/DCモード設定レジスタの設定により、メモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに復帰した後、DC/DCコンバータの動作モードを強制PWMモードに遷移させることもできる。このような方法によりDC/DCコンバータを電圧の変動が小さい強制PWMモードで動作させる間に、PCIe PHYの初期化を行うことも可能である。但し、この場合、DC/DCコンバータの強制PWMモードへの遷移は、メモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに復帰した直後に行うことが望ましい。低消費電力モードから強制PWMモードへの遷移期間の消費電力が増加してしまうためである。その一方で、低消費電力モードから通常動作モードに復帰した直後に強制PWMモードへ遷移させる方法は、通常動作モード復帰後に強制PWMモードに設定するためのコマンドを発行してPWMに遷移させる必要があり、その操作を行う時間分NAND型フラッシュメモリへアクセスを開始するタイミングが遅延する。さらに、DC/DCコンバータが以降、強制PWMモードに維持され続けると、DC/DCコンバータがオートモードに設定された場合と比較して、消費電力が増加する可能性がある。
【0078】
図5は、比較例に係るメモリシステムにおいて用いられるスリープモード制御レジスタの構成例を示す図である。比較例のスリープモード制御レジスタは、例えば、8ビットの記憶領域を含む。
【0079】
第7ビットの記憶領域は、電源制御回路がスリープモードである間の、DC/DCチャネルCH1の動作を示す値を記憶する。
【0080】
記憶されている値が0である場合、DC/DCチャネルCH1はオフになる。つまり、第1DC/DCコンバータはオフモードである。
【0081】
記憶されている値が1である場合、DC/DCチャネルCH1は通じていて、低電力モード(LPM)に遷移する。DC/DCチャネルCH1がLPMである間、第1DC/DCコンバータは、PFMモードに固定される。PFMモードに固定された第1DC/DCコンバータでは、PWMモードである場合にのみ使用される回路ブロックがオフになる。つまり、PWMモードである場合にのみ使用される回路ブロックには、電力が供給されない。これにより、LPMに設定されたDC/DCチャネルでは、消費電力を削減できる。
【0082】
第6ビットの記憶領域は、電源制御回路がスリープモードである間の、DC/DCチャネルCH2の動作を示す値を記憶する。
【0083】
記憶されている値が0である場合、DC/DCチャネルCH2はオフになる。つまり、第2DC/DCコンバータはオフモードである。
【0084】
記憶されている値が1である場合、DC/DCチャネルCH2は通じていて、LPMに遷移する。この場合、第2DC/DCコンバータは、PFMモードに固定される。
【0085】
第5ビットの記憶領域は、電源制御回路がスリープモードである間の、DC/DCチャネルCH3の動作を示す値を記憶する。
【0086】
記憶されている値が0である場合、DC/DCチャネルCH3はオフになる。つまり、第3DC/DCコンバータはオフモードである。
【0087】
記憶されている値が1である場合、DC/DCチャネルCH3は通じていて、LPMに遷移する。この場合、第3DC/DCコンバータは、PFMモードに固定される。
【0088】
第4ビットの記憶領域は、電源制御回路6がスリープモードである間の、LDOレギュレータの動作を示す値を記憶する。
【0089】
記憶されている値が0である場合、LDOレギュレータによる電力供給路は、オフになる。つまり、LDOレギュレータはオフモードである。
【0090】
記憶されている値が1である場合、LDOレギュレータによる電力供給路は通じていて、LPMに遷移する。この場合、LDOレギュレータは、制御用の電流を絞る。
【0091】
第3ビット~第1ビットの記憶領域は、未使用の領域である。
【0092】
第0ビットの記憶領域は、電源制御回路のスリープモードの遷移および復帰に関する値を記憶する。記憶されている値が0である場合、電源制御回路はスリープモードから復帰する。記憶されている値が1である場合、電源制御回路はスリープモードへ遷移する。
【0093】
このように、比較例に係るメモリシステムでは、スリープモード制御レジスタを用いた設定により、電源制御回路がスリープモードである間、第1~第3DC/DCコンバータおよびLDOレギュレータのそれぞれが、オフモードまたはLPMに設定される。これにより、電源制御回路における消費電力が削減される。なお、第1~第3DC/DCコンバータおよびLDOレギュレータのそれぞれをオフモードとLPMのいずれに設定するかは、メモリシステムが設定される低消費電力モードのパワーステートに基づき決定される。
【0094】
また、比較例に係るメモリシステムのスリープモード制御レジスタでは、メモリシステムが低消費電力モードから通常動作モードに復帰した場合(すなわち、電源制御回路がスリープモードから復帰した場合)の、DC/DCコンバータの動作モードは規定されていない。そのため、この場合、DC/DCコンバータの動作モードは、典型的には例えば、オートモードに遷移するが、負荷電流は小さいため、オートモードにおける自動切替えに基づきPFMモードに設定される。このPFMモードでは、電圧の変動が大きいため、例えば、PCIe PHYでは初期化に失敗する可能性がある。
【0095】
これに対して、本実施形態のメモリシステム3では、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに復帰した場合、DC/DCコンバータ64の動作モードを強制PWM(Forced PWM)モードに遷移させる。強制PWMモードは、オートモードのような自動切替えが発生することがないPWMモードである。強制PWMモードでは、電圧の変動が小さい。したがって、メモリシステム3(例えば、PCIe PHY15)における初期化の失敗を防止できる。
【0096】
より具体的には、メモリシステム3では、スリープモード制御レジスタ65-2を用いて、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに復帰した場合に、DC/DCコンバータ64の動作モードを強制PWMモードに遷移させる。
【0097】
図6は、メモリシステム3において用いられるスリープモード制御レジスタ65-2の構成例を示す図である。スリープモード制御レジスタ65-2は、図5を参照して前述した比較例のスリープモード制御レジスタから、第0ビットの記憶領域に関する内容が異なっている。第7ビット~第1ビットの記憶領域に記憶される値については、比較例のスリープモード制御レジスタの第7ビット~第1ビットの記憶領域に記憶される値と同様であってよい。
【0098】
スリープモード制御レジスタ65-2の第0ビットの記憶領域は、電源制御回路6のスリープモードの遷移および復帰に関する値を記憶する。記憶されている値が0である場合、電源制御回路6はスリープモードから復帰して、全てのDC/DCチャネルCH1~CH4(すなわち、DC/DCコンバータ64-1~64-4)を強制PWMモードに遷移させる。記憶されている値が1である場合、電源制御回路6はスリープモードに遷移する。
【0099】
このようなスリープモード制御レジスタ65-2を用いることにより、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに復帰したことに応じて、電源制御回路6がスリープモードから復帰する場合、DC/DCコンバータ64-1~64-4は強制PWMモードに遷移する。これにより、例えば、PCIe PHY15は、第3DC/DCコンバータ64-3が強制PWMモードで動作している間に、初期化を行うことができる。つまり、PCIe PHY15は、電圧の変動が小さい間に、初期化を行うことができる。したがって、メモリシステム3では初期化の失敗を防止できる。なお、メモリシステム3において、初期化の失敗を防止する対象の回路ブロック(負荷)は、PCIe PHY15に限られず、電圧の変動に対してセンシティブな別の回路ブロックであってもよい。
【0100】
メモリシステム3が低消費電力モードから復帰した場合の動作例について具体的に説明する。
【0101】
図7は、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに復帰した場合の動作例を示すシーケンス図である。ここでは、コントロールロジック61、第3DC/DCコンバータ64-3、およびPCIe PHY15の動作を例示する。なお、他のDC/DCコンバータ64-1、64-2、および64-4も、第3DC/DCコンバータ64-3と同様に動作し得る。また、メモリシステム3が低消費電力モードに設定されている間、第3DC/DCコンバータ64-3がPFMモードに設定されていることを想定する。
【0102】
まず、コントロールロジック61は、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに復帰したことに応じて、スリープモード制御レジスタ65-2に記憶されている値を、第3DC/DCコンバータ64-3を含む全てのDC/DCコンバータ64に送出する(A11)。スリープモード制御レジスタ65-2の第0ビットには、スリープモードから復帰し、全てのDC/DCチャネルを強制PWMモードに設定することを示す値(すなわち、0)が設定されている。
【0103】
第3DC/DCコンバータ64-3は、スリープモード制御レジスタ65-2に記憶されている値に基づいて、PFMモードから強制PWMモードに遷移する(A12)。なお、メモリシステム3が低消費電力モードに設定されている間、第3DC/DCコンバータ64-3はオフモードに設定されていてもよい。その場合、第3DC/DCコンバータ64-3は、スリープモード制御レジスタ65-2に記憶されている値に基づいて、オフモードから強制PWMモードに遷移する。これにより、第3DC/DCコンバータ64-3は、強制PWMモードで内部電源電圧DC/DC3_OUTをPCIe PHY15へ供給する(A13)。
【0104】
第3DC/DCコンバータ64-3から強制PWMモードで電源電圧DC/DC3_OUTが供給されている間に、PCIe PHY15は初期化を行う(A14)。PCIe PHY15の初期化には、例えば、キャリブレーションと、リンクのトレーニング処理とが含まれる。キャリブレーションとは、PCIe PHY15に設けられている抵抗に電流を流して、チップ(IC)間のばらつきを調整する動作である。リンクのトレーニング処理とは、ホスト2とメモリシステム3との間のクロック信号の同期のような、リンクを利用可能にするための処理である。
【0105】
また、コントロールロジック61は、1つ以上のDC/DCコンバータ64にそれぞれ対応する1つ以上の回路ブロックのいずれかの負荷電流が境界値を超えたことを検出する(A15)。そして、コントロールロジック61は、第3DC/DCコンバータ64-3を含む全てのDC/DCコンバータ64に、オートモードに遷移することを指示する(A16)。
【0106】
なお、コントロールロジック61は、第3DC/DCコンバータ64-3に対応するPCIe PHY15の負荷電流が境界値を超えたことを検出してもよい。この場合、コントロールロジック61は、例えば、第3DC/DCコンバータ64-3に、オートモードに遷移することを指示する。
【0107】
次いで、第3DC/DCコンバータ64-3は、コントロールロジック61による指示に応じて、強制PWMモードからオートモードに遷移する(A17)。第3DC/DCコンバータ64-3は、オートモードで内部電源電圧DC/DC3_OUTをPCIe PHY15へ供給する(A18)。
【0108】
オートモードでは、第3DC/DCコンバータ64-3の動作モードが、負荷電流に応じてPFMモードとPWMモードのいずれかに自動的に切り替えられる。したがって、第3DC/DCコンバータ64-3は、負荷電流に応じて切り替えられたPFMモードとPWMモードのいずれかで、内部電源電圧DC/DC3_OUTをPCIe PHY15に供給できる。
【0109】
このように、PCIe PHY15は、第3DC/DCコンバータ64-3から強制PWMモードで内部電源電圧DC/DC3_OUTが供給されている間に、初期化を行う。つまり、PCIe PHY15は、電圧の変動が小さい間に、初期化を行う。これにより、メモリシステム3では初期化の失敗を防止できる。
【0110】
また、DC/DCコンバータ64は、負荷電流が境界値を超えたことに応じて、強制PWMモードからオートモードに遷移する。これにより、DC/DCコンバータ64が、消費電力が高い状態に固定されること(すなわち、強制PWMモードに維持されること)も防止できる。
【0111】
なお、コントロールロジック61に設けられるレジスタ65は、チャネル指定レジスタ65-3をさらに含んでいてもよい。チャネル指定レジスタ65-3は、電源制御回路6がスリープモードから復帰したことに応じて強制PWMモードに遷移させるDC/DCチャネル(すなわち、DC/DCコンバータ64)を指定するためのレジスタである。具体的には、チャネル指定レジスタ65-3は、例えば、複数の記憶領域を含む。複数の記憶領域のそれぞれは、電源制御回路6がスリープモードから復帰したことに応じて強制PWMモードに遷移させるDC/DCチャネルを示す情報を記憶する。
【0112】
この場合、A11において、コントロールロジック61は、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに復帰したことに応じて、スリープモード制御レジスタ65-2に記憶されている値と、チャネル指定レジスタ65-3に記憶されている情報とを、DC/DCコンバータ64に送出してもよい。スリープモード制御レジスタ65-2の第0ビットには、例えば、スリープモードから復帰し、指定されたDC/DCチャネルを強制PWMモードに遷移させることを示す値(すなわち、0)が記憶されている。また、チャネル指定レジスタ65-3には、強制PWMモードに遷移させるDC/DCチャネルを指定する情報が記憶されている。
【0113】
この場合、A12において、チャネル指定レジスタ65-3に記憶されている値に基づき、指定されたDC/DCチャネルに対応するDC/DCコンバータ64は、PFMモード(または、オフモード)から強制PWMモードに遷移する。なお、指定されていないDC/DCチャネルに対応するDC/DCコンバータ64は、例えば、DC/DCモード設定レジスタ65-1に記憶されている値に基づいて、PFMモード(または、オフモード)からオートモードに遷移する。また、強制PWMモードに遷移したDC/DCコンバータ64は、負荷電流が境界値を超えたことに応じて、A17において、オートモードに遷移する。
【0114】
このように、チャネル指定レジスタ65-3をさらに用いた構成により、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに復帰した場合に、特定のDC/DCコンバータ64のみを強制PWMモードに遷移させることができる。また、強制PWMモードに遷移させた特定のDC/DCコンバータ64を、負荷電流が境界値を超えたことに応じて、オートモードに遷移させることができる。
【0115】
図8は、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに復帰する場合の動作、電圧、および電流の遷移の例を示すタイムチャート9である。つまり、タイムチャート9は、NAND型フラッシュメモリ5に供給される内部電源電圧91(すなわち、DC/DC1_OUT)、DC/DCコンバータ64の動作モード92、PCIe PHY15に供給される内部電源電圧93(すなわち、DC/DC3_OUT)、PCIe PHY15の動作94、およびPCIe PHY15の負荷電流95について、時間の経過に応じた遷移を示す。タイムチャート9の横軸は、時間を示す。
【0116】
なお、境界値95Aは、DC/DCコンバータ64がオートモードである場合に、PFMモードとPWMモードとを切り替えるための判定に用いられる電流値である。より詳しくは、負荷電流95が境界値95Aを超えた場合、オートモードであるDC/DCコンバータ64は、PFMモードからPWMモードに切り替えられる。また、負荷電流95が境界値95A以下になった場合、オートモードであるDC/DCコンバータ64は、PWMモードからPFMモードに切り替えられる。境界値95Aは、DC/DCコンバータ64が強制PWMモードである場合に、オートモードに切り替えられる場合の判定にも用いられる。
【0117】
時刻t21は、メモリシステム3に対して低消費電力モードから通常動作モードへの復帰が要求された時刻である。時刻t21において、メモリシステム3は低消費電力モードであり、電源制御回路6はスリープモードである。そのため、電源制御回路6内のDC/DCコンバータ64の動作モード92は、DC/DCコンバータごとにオフまたは消費電力が小さいPFMモードである。NAND型フラッシュメモリ5に供給される内部電源電圧81はオフで電圧が低く、オンしているDC/DCコンバータ64はPFMモードである。PCIe PHYの動作94は、ディセーブルである。また、負荷電流95は低い。
【0118】
時刻t21から時刻t22までの期間は、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに遷移する期間である。この期間内に、NAND型フラッシュメモリ5に供給される内部電源電圧91は徐々に上昇し、高くなる。
【0119】
時刻t22は、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに復帰した時刻である。時刻t22において、DC/DCコンバータ64の動作モード92は強制PWMモードに遷移する。
【0120】
時刻t22から時刻t23までの期間に、PCIe PHYの動作94は、ディセーブルから起動に移行する。起動する間のPCIe PHY15の負荷電流95は境界値95Aよりも小さいが、DC/DCコンバータ64が強制PWMモードであるので、PCIe PHY15に供給される内部電源電圧93の変動は小さい。
【0121】
時刻t23は、PCIe PHYの動作94が起動から初期化(例えば、キャリブレーション)に移行する時刻である。
【0122】
時刻t23から時刻t24までの期間に、PCIe PHY15は初期化を開始する。初期化が行われる間のPCIe PHY15の負荷電流95は境界値95Aよりも小さいが、DC/DCコンバータ64が強制PWMモードである間は、PCIe PHY15に供給される内部電源電圧93の変動は小さい。内部電源電圧93の変動が小さいことにより、PCIe PHYにおける初期化の失敗が防止される。例えば、PCIe PHY15では、適切なキャリブレーションが行われないリスクが低減される。
【0123】
時刻t24は、PCIe PHYの動作94が、初期化が終了し通常動作に移行した時刻である。このタイミングではDC/DCコンバータ64の動作モード92は、強制PWMモードに維持されている。PCIe PHYの動作94が通常動作に移行した後、PCIe PHY15の負荷電流95は増加し得る。
【0124】
その後、時刻t25において、DC/DCコンバータ64の動作モード92は、例えば、PCIe PHY15の負荷電流95が境界値95Aを超えたことに応じて、コントロールロジック61による指示に基づき、強制PWMモードからオートモードに遷移する。オートモードへの遷移のタイミングは、負荷電流95に基づいてコントロールロジック61によって指示される。そのため、FW51を実行するCPU14のような、電源制御回路6の外部の構成が、DC/DCコンバータ64の動作モード92を制御する必要がない。なお、電源制御回路6の外部の構成が、任意のタイミングで、DC/DCコンバータ64の動作モード92を強制PWMモードからオートモードに遷移させるように制御してもよい。
【0125】
また、ここでは、PCIe PHY15の負荷電流95が境界値95Aを超えたことに応じて、DC/DCコンバータ64の動作モード92がオートモードに遷移した例を示したが、DC/DCコンバータ64の動作モード92は、DC/DCコンバータ64のいずれかに対応する負荷電流が境界値を超えたことに応じて、オートモードに遷移してもよい。あるいは、DC/DCコンバータ64の動作モード92は、強制PWMモードに設定されているDC/DCコンバータ64のいずれかに対応する負荷電流が境界値を超えたことに応じて、オートモードに遷移してもよい。
【0126】
以降、DC/DCコンバータ64の動作モード92は、オートモードにおける自動切替えに基づき、PFMモードとPWMモードのいずれかに設定される。これにより、DC/DCコンバータ64が、消費電力が高い状態に固定されること(すなわち、PWMモードに維持されること)を防止できる。
【0127】
以上説明したように、本実施形態によれば、供給電圧の変動による初期化の失敗を防止できる。DC/DCコンバータ64は、メモリシステム3が低消費電力モードから通常動作モードに遷移したことに応じて、強制PWMモードに遷移する。
【0128】
例えば、第3DC/DCコンバータ64-3は、内部電源電圧DC/DC3_OUTをPCIe PHY15に供給する。PCIe PHY15は、第3DC/DCコンバータ64-3が強制PWMモードである間に、初期化を行う。強制PWMモードでは電圧の変動が小さい。したがって、第3DC/DCコンバータ64-3がPFMモード(すなわち、電圧の変動が大きいモード)である間に初期化を行う場合と比較して、PCIe PHY15における初期化が失敗する可能性を低減できる。
【0129】
本実施形態に記載された様々な機能の各々は、回路(処理回路)によって実現されてもよい。処理回路の例には、中央処理装置(CPU)のような、プログラムされたプロセッサが含まれる。このプロセッサは、メモリに格納されたコンピュータプログラム(命令群)を実行することによって、記載された機能それぞれを実行する。このプロセッサは、電気回路を含むマイクロプロセッサであってもよい。処理回路の例には、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、コントローラ、他の電気回路部品も含まれる。本実施形態に記載されたCPU以外の他のコンポーネントの各々もまた処理回路によって実現されてもよい。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0131】
1…情報処理システム、2…ホスト、3…メモリシステム、4…DRAM、5…NAND型フラッシュメモリ、6…電源制御回路、7…コントローラ、11…ホストI/F、12…NAND I/F、13…DRAM I/F、14…CPU、15…PCIe PHY、51…FW、61…コントロールロジック、62…ロードスイッチ、63…LDOレギュレータ、64…DC/DCコンバータ、64-1…第1DC/DCコンバータ、64-2…第2DC/DCコンバータ、64-3…第3DC/DCコンバータ、64-4…第4DC/DCコンバータ、65…レジスタ、65-1…DC/DCモード設定レジスタ、65-2…スリープモード制御レジスタ、65-3…チャネル指定レジスタ。
図1
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図8