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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042467
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】シールド掘進機
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20240321BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
E21D11/00 B
E21D9/06 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147213
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】津村 匡洋
(72)【発明者】
【氏名】薮ノ 和洋
(72)【発明者】
【氏名】崎山 直人
【テーマコード(参考)】
2D054
2D155
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054AD20
2D155BA01
2D155BB01
2D155JA06
2D155LA02
(57)【要約】
【課題】シールド掘進機のテールシール部の止水性の低下を防止する。
【解決手段】シールド掘進機1のスキンプレート5の内周に沿って配置された複数個のシール部材12Ba,12Bbを、上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1と、下側領域Unのシール部材12Ba2,12Bb2と、それらの間の中間領域Mdのシール部材12Ba3,12Bb3とに分け、上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1の突出長を、下側領域Unのシール部材12Ba2,12Bb2の突出長より長くした。これにより、シールド掘進機1のテールシール部12の止水性の低下が防止される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削するカッタヘッドと、
前記カッタヘッドを回転可能な状態で支持する機器本体と、
前記機器本体の外殻を形成するスキンプレートと、
前記スキンプレートの内周と前記機器本体の後端側に設けられたセグメントの外周との間に設けられたテールシール部と、
を備え、
前記テールシール部は、前記スキンプレートの内周に沿って設けられた複数の板状のシール部材を有しており、
前記シール部材は、バネ性を有するとともに、前記機器本体の前後方向における前記シール部材の一端側が前記スキンプレートに固定され、前記前後方向における前記シール部材の他端側が前記セグメントの外周に接触した状態で設けられており、
前記スキンプレートの内周に沿って設けられた前記複数のシール部材は、前記スキンプレートの内周に沿って、上側領域のシール部材と、下側領域のシール部材と、前記上側領域と前記下側領域との間の中間領域のシール部材とに分けられており、
前記上側領域のシール部材の固定部から前記セグメントに向かって突出する突出部分の長さは、前記下側領域のシール部材の固定部から前記セグメントに向かって突出する突出部分の長さより長いことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
前記中間領域のシール部材の固定部から前記セグメントに向かって突出する突出部分の長さを、前記下側領域の突出長から前記上側領域の突出長に向かって次第に長くしたことを特徴とする請求項1記載のシールド掘進機。
【請求項3】
前記中間領域のシール部材の固定部から前記セグメントに向かって突出する突出部分の長さを、前記下側領域の突出長から前記上側領域の突出長に向かって、前記中間領域のシール部材のブロック毎に長くしたことを特徴とする請求項1記載のシールド掘進機。
【請求項4】
前記上側領域は前記スキンプレートの全周長の上側3分の1に設定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のシールド掘進機。
【請求項5】
前記上側領域は前記スキンプレートの全周長の上側3分の1に設定され、前記中間領域は前記スキンプレートの全周長の左右6分の1に設定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のシールド掘進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機に関し、例えば、シールド掘進機のテールシール技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機による地盤の掘削時に、シールド掘進機の最後端側に設けられたセグメントとシールド掘進機のスキンプレートとの隙間を通じてシールド掘進機内に地下水や土砂が浸入したり、シールド掘進機から地盤に圧入した裏込め材が浸入したりすることを防止するために、シールド掘進機の最後端側にはテールシール部と称する止水構造部が設けられている。
【0003】
このテールシール部は、スキンプレートの内周に沿って設けられた複数個のシール部材を有している。各シール部材は、例えば、バネ性を有する2枚の鋼板と、その2枚の鋼板の間に設けられたブラシ部であるワイヤブラシ(細鋼線を束ねてブラシ式にしたもの)とを有している。シールド掘削時には、シール部材のワイヤブラシがセグメントに接触するとともに、ワイヤブラシ自身やワイヤブラシとセグメントとの密着部に止水グリス等のようなシール剤が供給されることにより止水性が維持されている。
【0004】
なお、テールシール部については、例えば、特許文献1に記載があり、スキンプレートの周方向に沿ってシール部材を上側、中間および下側に分けるとともに、ゴム製のシール部材の厚さを上側、中間および下側で変える構成が開示されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、スキンプレートの周方向に沿ってシール部材を上側、中間および下側に分けるとともに、ゴム製のシール部材の変形特性を上側、中間および下側で変える構成が開示されている。
【0006】
さらに、例えば、特許文献3には、テールシール部のシール部材を構成するワイヤブラシを直線状および湾曲状に変えることにより、シール部材の高さを調整することが可能な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭54-25300号公報
【特許文献2】実公昭54-25301号公報
【特許文献3】特開2013-87531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年のシールド工法においては、トンネルの長距離化が進んでおり、テールシール部のシール部材の劣化や損傷(シール部材自体の変形、ワイヤブラシの抜けや変形など)に因って、セグメントに不具合が生じたり、推力が異常に上昇したりする等、様々なトラブルが発生している。また、トンネルの大深度も進み、高水圧下での施工も増加しており、水圧によりテールシール部のシール部材がひっくり返る等のトラブルも発生している。したがって、シールド工法においては、掘削途中時に上記トラブルが発生しないようなテールシール部を設計することが重要な課題となっている。
【0009】
ここで、本発明者の検討によれば、シールド掘進機の後方のセグメントの自重や後続台車等の設備の自重に起因して、シールド掘進機の下側におけるスキンプレートの内周とセグメントの外周とのクリアランス(間隔)に比べて、シールド掘進機の上側におけるスキンプレートの内周とセグメントの外周とのクリアランスの方が大きくなり、シールド掘進機のテールシール部の止水性が低下することが判明した。
【0010】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、シールド掘進機のテールシール部の止水性の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のシールド掘進機は、地盤を掘削するカッタヘッドと、前記カッタヘッドを回転可能な状態で支持する機器本体と、前記機器本体の外殻を形成するスキンプレートと、前記スキンプレートの内周と前記機器本体の後端側に設けられたセグメントの外周との間に設けられたテールシール部と、を備え、前記テールシール部は、前記スキンプレートの内周に沿って設けられた複数の板状のシール部材を有しており、前記シール部材は、バネ性を有するとともに、前記機器本体の前後方向における前記シール部材の一端側が前記スキンプレートに固定され、前記前後方向における前記シール部材の他端側が前記セグメントの外周に接触した状態で設けられており、前記スキンプレートの内周に沿って設けられた前記複数のシール部材は、前記スキンプレートの内周に沿って、上側領域のシール部材と、下側領域のシール部材と、前記上側領域と前記下側領域との間の中間領域のシール部材とに分けられており、前記上側領域のシール部材の固定部から前記セグメントに向かって突出する突出部分の長さは、前記下側領域のシール部材の固定部から前記セグメントに向かって突出する突出部分の長さより長いことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項1に記載の発明において、前記中間領域のシール部材の固定部から前記セグメントに向かって突出する突出部分の長さを、前記下側領域の突出長から前記上側領域の突出長に向かって次第に長くしたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項1に記載の発明において、前記中間領域のシール部材の固定部から前記セグメントに向かって突出する突出部分の長さを、前記下側領域の突出長から前記上側領域の突出長に向かって、前記中間領域のシール部材のブロック毎に長くしたことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項1~3のいずれか一項に記載の発明において、前記上側領域は前記スキンプレートの全周長の上側3分の1に設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項1~3のいずれか一項に記載の発明において、前記上側領域は前記スキンプレートの全周長の上側3分の1に設定され、前記中間領域は前記スキンプレートの全周長の左右6分の1に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シールド掘進機のテールシール部の止水性の低下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態であるシールド掘進機の内部を横から透かして見た要部構成図である。
図2】シールド掘進機の内部を横から透かして見た概略構成図である。
図3図1のシールド掘進機を後方から見た背面図である。
図4】(a)は上側領域および下側領域のシール部材を横から透かして見た要部構成図、(b)は上側領域、下側領域および中間領域のシール部材を横から透かして見た要部構成図である。
図5】(a)は図1のシールド掘進機の上側領域のテールシール部の側面図、(b)はシールド掘進機の後方から見た(a)のテールシール部を構成するシール部材の正面図である。
図6図5(a)のシール部材の突出長の一例を示した側面図である。
図7】(a)はシール剤供給管を付加して示したテールシール部の側面図、(b)は(a)のI-I線の断面図である。
図8】テールシール部の一群の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
まず、本実施の形態のシールド掘進機の構成例について図1を参照して説明する。図1は本実施の形態のシールド掘進機の内部を横から透かして見た要部構成図である。
【0020】
本実施の形態のシールド掘進機1は、例えば、カッタヘッド2で掘削された土砂に添加材を注入して練り混ぜることで生成された不透水性と塑性流動性(自由に変形および移動できる性質)とを有する泥土を、カッタヘッド2と機器本体3との間のチャンバ4内に充填した状態で掘進することにより、切羽の土圧に対抗する泥土圧を発生させて切羽の安定性を確保した状態で掘削を行う泥土加圧式のシールドマシンである。
【0021】
カッタヘッド2は、地盤を掘削するシールドカッタ盤であり、シールド掘進機1の先端頭部の前面に機器本体3の周方向に沿って正逆方向に回転可能な状態で設置されている。特に限定されるものではないが、カッタヘッド2の直径は、例えば、2320mm程度である。
【0022】
このカッタヘッド2の前面(切羽に対向する面)には、センタービットCB、ビットBおよびスクレーパツース(図示せず)等が装着されている。センタービットCBやビットBは、主に地山を切り崩す掘削部品であり、スクレーパツースは、主に地山を切削する切削部品である。なお、ビットBに代えて、例えば、ローラカッタ等を装着しても良い。
【0023】
また、カッタヘッド2の外周には、コピーカッタCCが設置されている。コピーカッタCCは、急曲線施工時の余堀りやシールド掘進機1の姿勢制御等を行う役割を備えている。また、カッタヘッド2の裏面内の中央周辺には、複数個の攪拌棒SBが装着されている。攪拌棒SBは、例えば、円柱状の突出部材で形成されており、カッタヘッド2が回転するとチャンバ4内の土砂と添加材とを撹拌混合する役割を備えている。なお、この攪拌棒SBには、例えば、振動センサが内装されている。
【0024】
機器本体3は、シールド掘進機1を駆動する主要構成部である。シールド掘進機1を駆動する機器等は、機器本体3の外殻を構成するスキンプレート5によって取り囲まれ保護されている。スキンプレート5は、前胴プレート(前胴部)5aと、その後方の後胴プレート(後胴部)5bとを有している。この前胴プレート5aと後胴プレート5bとは、例えば、円筒状の鋼製板によって構成されており、後胴プレート5bの先端の球面軸受部が前胴プレート5aの内周面に接した状態で入り込むことで係合されている。
【0025】
スキンプレート5内の中空空間は、前胴プレート5aの内部に設けられた隔壁7によって切羽側と機内側とに分けられている。この切羽側には、(すなわち、上記カッタヘッド2と隔壁7との間)に上記したチャンバ4が設けられている。なお、カッタヘッド2により掘削された土砂等は、カッタヘッド2の前裏面を貫通する貫通孔(図示せず)を通じチャンバ4内に取り込まれるようになっている。
【0026】
一方、スキンプレート5の中空空間の機内側には、カッタ駆動体8、中折れジャッキ9a、シールドジャッキ9b、スクリューコンベア10、エレクタ11およびテールシール部12等が設置されている。なお、図示はしないが、機器本体3には、上記の他に、チャンバ4内の泥土圧を検出する土圧検出部やチャンバ4内に上記添加材(作泥土材)を注入する添加材注入部等、種々の機器が設置されている。
【0027】
カッタ駆動体8は、カッタヘッド2を正逆方向に回転させるモータ(駆動源)であり、カッタヘッド2の正面内の外周近傍位置に、カッタヘッド2の周方向に沿って複数個並んで設置されている。なお、ここでは、カッタ駆動方式として外周支持駆動方式が例示されている。
【0028】
中折れジャッキ9aは、シールド掘進機1の推進方向や姿勢を修正する機器であり、機器本体3内において前胴プレート5aと後胴プレート5bとを連結するように前胴プレート5aと後胴プレート5bとの境界を跨いだ状態で機器本体3の周方向に沿って複数個並んで設置されている。この中折れジャッキ9aに圧油を供給し前胴プレート3aと後胴プレート3bとを予め決められた方向および角度に屈折させた状態でシールド掘進機1を推進することでシールド掘進機1の推進方向や姿勢を制御することが可能になっている。
【0029】
シールドジャッキ9bは、機器本体3の後方に設置されたセグメントSGに反力をとってシールド掘進機1を前進させるための推進力を発生させる機器であり、機器本体3内において前胴プレート5aと後胴プレート5bとの境界を跨いだ状態で機器本体3の周方向に沿って複数個並んで設置されている。
【0030】
スクリューコンベア10は、チャンバ4内に取り込まれた土砂を機外に排出するための機器であり、チャンバ4から隔壁7を貫通し、後方に向かって斜め上方に連続的に延在するように設置されている。なお、ここでは、リボンスクリューコンベアが例示されている。
【0031】
エレクタ11は、セグメントSGを把持して掘削坑の内周方向に旋回し、掘削坑の内周方向の組立位置に移送する組立装置であり、エレクタ駆動用の油圧モータ(図示せず)等によって掘削坑の周方向に沿って回転可能な状態で後胴プレート5bの中空内に設置されている。
【0032】
テールシール部12は、スキンプレート5の内周とセグメントSGの外周との間に設けられており、掘進作業中に、シールド掘進機1の後端側の外部から機器本体3の機内に、地下水、土砂および裏込め材等(以下、地下水等という)が入り込むのを防止する止水構造部であり、バネ性を有する2段の板状のシール部材12Ba,12Bbと、これらのシール部材12Ba,12Bbの間に設けられたシール室12Rとを有している。
【0033】
シール部材12Ba,12Bbは、例えば、スキンプレート5の最後端側の内周において、シールド掘進機1の前後方向(シールド掘進機1の中心軸方向、掘削坑の延在方向)に沿って互いに離間した状態で2箇所に設置されているとともに、各シール部材12Ba,12Bbは、セグメントSGの外周を取り囲むようにスキンプレート5の内周に沿って環状に複数個並んだ状態で設置されている。なお、シール部材の設置個数は2箇所に限定されるものではなく、例えば、シールド掘進機1の前後方向に沿って3箇所以上に設置しても良い。
【0034】
また、各シール部材12Ba,12Bbは、スキンプレート5の内周に片持ち状態で設置されている。すなわち、各シール部材12Ba,12Bbの一端側(機器本体3の前後方向の一端側)はスキンプレート5の内周に固定され、シール部材12Ba,12Bbの一端側と他端側(機器本体3の前後方向の他端側)との間でセグメントSGに向かって傾斜した状態で折れ曲がり、さらに、シール部材12Ba,12Bbの他端側はシール部材12Ba,12Bbのバネ力によってセグメントSGに押し付けられた状態で接触するようになっている。
【0035】
また、後胴プレート5bの外周には、シール剤供給管14が設置されている。シール剤供給管14は、シール室12Rにグリス等のようなシール剤を供給するための配管であり、後胴プレート5bの外周の複数個設置されている。このシール剤供給管14を通じてシール室12R内にシール剤が充填されることにより、スキンプレート5の内周とセグメントSGの外周との隙間がシールされ、シール部材12Ba,12Bbと相俟って、掘進作業中にシールド掘進機1の機内に地下水等が入り込むことが防止される。
【0036】
さらに、後胴プレート5bの外壁には、裏込め材供給路(図示せず)が設置されている。裏込め材供給路は、例えば、セメント系の硬化材または固化材からなる裏込め材をスキンプレート5の後方の掘削坑とセグメントSGとの隙間に供給するための配管である。なお、掘削坑とセグメントSGとの隙間に裏込め材を充填することにより、地盤沈下が防止され、さらに、セグメントSGと地山とが一体構造となってセグメントSGの継手からの漏水が防止される。
【0037】
また、裏込め材供給路は、例えば、スキンプレート3の頂部を挟んで2箇所に設けられている。シール剤供給路14はスキンプレート5の外周の複数箇所に設けられているのに対して、裏込め材供給路はスキンプレート5の頂部付近にしか設けられていない。これは、シール剤は粘性が高いので、セグメントSGの外周に付着させるためにはスキンプレート5の内周に満遍なく供給しなければならないのに対して、裏込め材は粘性が低いのでスキンプレート5の頂部付近に供給すれば自重でセグメントSGの外周下部にまで回り込むからである。
【0038】
なお、シール剤供給路14および裏込め材供給路の形成箇所や形成数は上記したものに限定されない。例えば、シール剤供給路14はさらに数多く設けても良く、裏込め材供給路はスキンプレート5の軸方向の頂部の1箇所だけに設けても良い。
【0039】
次に、シールド工法の課題とそれを解決する構成例について図2図4を参照して説明する。図2はシールド掘進機の内部を横から透かして見た概略構成図、図3図1のシールド掘進機を後方から見た背面図である。なお、図3の符号X,Yは、それぞれX軸およびY軸を示している。また、図3では説明のため前段のシール部材12Ba(12Ba1,12Ba2,12Ba3)の符号も示した。
【0040】
本発明者の検討によれば、図2に示すように、シールド掘進機50の後方に設置されたセグメント51の自重や後続台車等の設備の自重に起因して、シールド掘進機50の下側におけるスキンプレート52の内周とセグメント51の外周とのクリアランス(間隔)D1に比べて、シールド掘進機50の上側におけるスキンプレート52の内周とセグメント51の外周とのクリアランスD2の方が大きくなり、シールド掘進機50のテールシール部の止水性が低下することが判明した。
【0041】
そこで、本実施の形態においては、図3に示すように、スキンプレート5の内周に沿って配置された複数個のシール部材12Ba,12Bbが、上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1と、下側領域Unのシール部材12Ba2,12Bb2と、それらの間の中間領域Mdのシール部材12Ba3,12Bb3とに分けられている。
【0042】
ここで、上側領域Upは、例えば、スキンプレート5の全周長の上側3分の1に設定され、下側領域Unは、例えば、スキンプレート5の全周長の下側3分の1に設定され、さらに、中間領域Mdは、例えば、スキンプレートの全周長の左右6分の1に設定されている。
【0043】
具体例として、スキンプレート5を後方から見た時に、上側領Upは、10時~2時の範囲とされ、下側領域Unは、4時~8時の範囲とされ、それらの間の中間領域Mdは、2時~4時および8時~10時とされている。また、特に限定されるものではないが、X軸からの角度Rxは、例えば、30°とされている。
【0044】
そして、本実施の形態においては、上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1においてセグメントSGに向かって突出する突出部分の長さ(突出長)が、下側領域Unのシール部材12Ba2,12Bb2においてセグメントSGに向かって突出する突出部分の長さ(突出長)より長くなっている。
【0045】
これにより、シールド掘進機1の下側におけるスキンプレート5の内周とセグメントSGの外周とのクリアランスD1(図2参照)に比べて、シールド掘進機1の上側におけるスキンプレート5の内周とセグメントSGの外周とのクリアランスD2(図2参照)の方が大きくなったとしても、上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1の突出部分の掛かり代(シール部材12Ba,12BbがセグメントSGに掛かっている長さ)を充分に確保することができ、上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1の突出部分をセグメントSGの外周にしっかりと押し当てることができるので、シールド掘進機1のテールシール部12の止水性の低下を防止することができる。
【0046】
また、本実施の形態においては、上側領域Upと下側領域Unとの間に中間領域Mdが設けられているとともに、下側領域Unのシール部材12Ba2,12Bb2の相対的に短い突出長から上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1の相対的に長い突出長にすり寄せるように、中間領域Mdのシール部材12Ba3,12Bb3の突出長が、下側領域Unから上側領域Upに向かって次第に長くなるように設定されている。
【0047】
ここで、図4(a)は上側領域および下側領域のシール部材を横から透かして見た要部構成図、図4(b)は上側領域、下側領域および中間領域のシール部材を横から透かして見た要部構成図である。なお、図4(b)においては図面を見易くするため中間領域Mdのシール部材12Ba3,12Bb3にハッチングを付した。
【0048】
図4(a)に示すように、上側領域Upおよび下側領域Unのシール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2をセグメントSGに押し付けると、上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1の突出部分は相対的に長く掛かり代が大きいので鋭角になる一方、下側領域Unのシール部材12Ba2,12Bb2の突出部分は相対的に短く掛かり代が小さいので鈍角になる。このため、側面視で上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1と下側領域Unのシール部材12Ba2,12Bb2との間に隙間Gpが生じるため、その隙間Gpを通じて機器本体3の内部に地下水等が浸入してしまう場合がある。
【0049】
そこで、本実施の形態においては、図4(b)に示すように、上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1と下側領域Unのシール部材12Ba2,12Bb2との間に中間領域Mdのシール部材12Ba3,12Bb3を設けた。そして、下側領域Unのシール部材12Ba2,12Bb2の突出長から上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1の突出長にすり寄せるように、中間領域Mdのシール部材12Ba3,12Bb3の突出長を下側領域Unから上側領域Upに向かって次第に長くした。
【0050】
これにより、上側領域Upのシール部材12Ba1,12Bb1と下側領域Unのシール部材12Ba2,12Bb2との間に中間領域Mdのシール部材12Ba3,12Bb3が介在され隙間Gp(図4(a)参照)が生じないようにすることができるので、その隙間Gpを通じて機器本体3の内部に地下水等が浸入してしまうのを回避することができる。したがって、シールド掘進機1のテールシール部12の止水性の低下を防止することができる。
【0051】
次に、本実施の形態のシールド掘進機1のテールシール部12を構成するシール部材12Ba,12Bbの構成例について図5図8を参照して説明する。
【0052】
まず、図5(a)は図1のシールド掘進機の上側領域のテールシール部の側面図、図5(b)はシールド掘進機の後方から見た図5(a)のテールシール部を構成するシール部材の正面図である。なお、破線S1はセグメントの組立計画時の外周位置、破線S2はセグメントの最大落込時の外周位置を示している。また、長さLc1,Lc2は、シール部材12Ba,12Bbがセグメントに掛かる掛かり代を示している。前述したように、掛かり代とは、シール部材12Ba,12BbがセグメントSGに掛かっている長さである。なお、掛かり代が短いと、水圧に押されてシール部材12Ba,12Bbがひっくり返る恐れがある。
【0053】
上側領域Up、下側領域Unおよび中間領域Mdのシール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3(12Ba,12Bb)は、その一端側がスキンプレート5の内周に片持ち状態で設置されている。
【0054】
シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3(12Ba,12Bb)の隣接間の長さLdは、例えば、187mm程度である。また、シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3(12Ba,12Bb)の固定部の長さLsは、共に、例えば、110mm程度である。
【0055】
また、シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3(12Ba,12Bb)の外側の傾き角度R1は、共に、例えば、50°程度であり、内側の傾き角度R2は、共に、例えば、30°程度である。なお、これらの寸法や角度は、上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。
【0056】
シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3(12Ba,12Bb)の各々は、例えば、鋼板部(第1の鋼板部)P1と、鋼板部P1より内側に離れて設けられた鋼板部(第2の鋼板部)P2と、それらの間に設けられた金網部Mと、鋼板部P1,P2と金網部Mとの間に設けられたブラシ部Brとを有している。
【0057】
シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3(12Ba,12Bb)の鋼板部P1,P2の各々には、例えば、1枚の鋼板が設置されている。この鋼板部P1,P2の鋼板は、板バネとしての機能を備えている。この鋼板の板バネの作用により、シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3の突出部分はセグメントSGに押し付けられるようになっている。この鋼板部P1,P2の鋼板は、例えば、炭素工具鋼鋼材からなり、その各々の厚さは、例えば、1.0mm程度である。また、鋼板部P1,P2の鋼板の平面形状は、図5(b)に示すように、例えば、矩形状に形成されている。なお、鋼板部P1,P2の鋼板の枚数、厚さ、材料および平面形状は、上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。また、鋼板部P1,P2の間に中間の鋼板部を設けても良い。
【0058】
また、シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3(12Ba,12Bb)の金網部Mには、例えば、2枚のシート状の金網が設置されている。この金網部Mのシート状の金網は、例えば、ステンレスからなる細いワイヤを網目状に編むことによって構成されており、その厚さは、例えば、0.5mm程度である。また、金網部Mのシート状の金網の平面形状は、例えば、鋼板部P1,P2の鋼板の平面形状とほぼ同じく矩形状に形成されている。なお、金網部Mの金網の枚数、厚さ、材料および平面形状も、上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。
【0059】
さらに、シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3(12Ba,12Bb)のブラシ部Brは、例えば、ワイヤブラシにより構成されている。すなわち、ブラシ部Brは、シールド掘進機1の前後方向に延びる複数本のワイヤを束ねることにより構成されている。このブラシ部Brの複数本のワイヤはバネとしての機能を備えている。この複数本のワイヤによるバネの作用により、シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3の突出部分はセグメントSGに押し付けられるようになっている。ブラシ部Brのワイヤは、例えば、硬鋼線材からなり、ブラシ部Brの全体的な平面形状は、例えば、鋼板部P1,P2の鋼板の平面形状とほぼ同じく矩形状に形成されている。なお、ブラシ部Brの材料および平面形状は、上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。
【0060】
次に、図6図5(a)のシール部材の突出長の一例を示した側面図である。
【0061】
上側領域Upの前段のシール部材12Ba1の突出長Lp1は、例えば、250mm程度である。また、上側領域Upの後段のシール部材12Bb1の外側の突出長Lp2は、例えば、300mm程度である。
【0062】
下側領域Unの前段のシール部材12Ba2の突出長Lp1は、上記した上側領域Upの前段のシール部材12Ba1の突出長Lp1より短く、例えば、200mm程度である。また、下側領域Unの後段のシール部材12Bb2の外側の突出長Lp2は、上記した上側領域Upの後段のシール部材12Bb1の突出長Lp1より短く、例えば、250mm程度である。
【0063】
中間領域Mdのシール部材12Ba3,12Bb3の突出長Lp1,Lp2は、下側領域Unから上側領域Upに向かって、例えば、5mmずつ長くなるように設定されている。すなわち、中間領域Mdのシール部材12Ba3の突出長Lp1は、例えば、205mm~245mmの間で長さを5mmずつ変えて設定され、中間領域Mdのシール部材12Bb3の突出長Lp2は、例えば、255mm~295mmの間で長さを5mmずつ変えて設定されている。
【0064】
なお、下側領域Unの突出長から上側領域Upの突出長に向かって長くなったシール部材12Ba3,12Bb3の突出長Lp1,Lp2は、次第に(連続的に)長くなっていれば足り、本実施例に示す5mmずつの寸法に限定されるものではない。
【0065】
中間領域Mdのシール部材12Ba3,12Bb3の突出長Lp1,Lp2の長さは、例えば、スキンプレート5の内周に沿って隣接するシール部材12B3,12Bb3毎に長くなるように設定されている。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、中間領域Mdのシール部材12Ba3,12Bb3の突出長Lp1,Lp2の長さを、スキンプレート5の内周に沿って並ぶ複数個のシール部材12B3,12Bb3をブロックとしてそのブロック毎に長くしても良い。
【0066】
なお、シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3(12Ba,12Bb)の突出長Lp1,Lp2は、上記した値に限定されるものではなく種々変更可能である。
【0067】
次に、図7(a)はシール剤供給管を付加して示したテールシール部の側面図、図7(b)は図7(a)のI-I線の断面図である。
【0068】
スキンプレート5(後胴プレート5b)には、シール剤供給管14とシール室12Rとを連通する連通孔14hが形成されている。すなわち、シール剤供給管14は、連通孔14hを通じてシール室12Rと接続されている。そして、シール剤供給管14を通じて流れてきたシール剤SLは、矢印に示すように連通孔14hを通じてシール室12R内に供給されるようになっている。
【0069】
次に、図8はテールシール部の一群の要部平面図である。
【0070】
シール部材12Ba1,12Ba2,12Ba3は、スキンプレート5(後胴プレート5b)の内周(図8の上下方向)に沿って複数個並んで設置されている。スキンプレート5の内周に沿って隣接するシール部材12Ba1,12Ba2,12Ba3同士は、その各々の幅方向(スキンプレート5の周方向)の両側一部を重ね合わせた状態で設置されている。
【0071】
また、シール部材12Bb1,12Bb2,12Bb3も同様に、スキンプレート5(後胴プレート5b)の内周(図7の上下方向)に沿って複数個並んで設置されている。スキンプレート5の内周に沿って隣接するシール部材12Bb1,12Bb2,12Bb3同士も、その各々の幅方向(スキンプレート5の周方向)の両側一部を重ね合わせた状態で設置されている。
【0072】
シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3の固定部の幅(スキンプレート5の周方向の寸法)W1は、例えば、100mm程度、シール部材12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3の突出部分の幅W2は、例えば、150mm程度である。なお、これらの寸法も上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。
【0073】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0074】
前記実施の形態においては、リボンスクリュー型のスクリューコンベアを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、リボン型と軸付き型とを組み合わせたスクリューコンベアを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上の説明では、本発明を泥土圧シールド掘進機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、チャンバ内の泥水に所定の圧力を加えることにより切羽を安定させ、泥水を循環させることにより掘削土砂を輸送する仕組みを持つ泥水式シールド掘進機やフロントグリッパとメイングリッパとそれらの間のスラストジャッキとを用いて機体を前進させる機能を有するトンネルボーリングマシン(Tunnel Boring Machine)等、他のシールド掘進機にも適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 シールド掘進機
2 カッタヘッド
3 機器本体
4 チャンバ
5 スキンプレート
5a 前胴プレート
5b 後胴プレート
7 隔壁
8 カッタ駆動体
9a 中折れジャッキ
9b シールドジャッキ
10 スクリューコンベア
11 エレクタ
12 テールシール部
12Ba,12Bb シール部材
12Ba1,12Bb1,12Ba2,12Bb2,12Ba3,12Bb3 シール部材
12R シール室
14 シール剤供給管
14h 連通孔
CB センタービット
B ビット
CC コピーカッタ
SB 攪拌棒
SG セグメント
Up 上側領域
Un 下側領域
Md 中間領域
P1,P2 鋼板部
M 金網部
Br ブラシ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8