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  • 特開-車両用のスパッツ装置 図1
  • 特開-車両用のスパッツ装置 図2
  • 特開-車両用のスパッツ装置 図3
  • 特開-車両用のスパッツ装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042486
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】車両用のスパッツ装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 37/02 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
B62D37/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147237
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿佐 亮祐
(57)【要約】
【課題】省スペースで空力性能の向上と路面上の障害物との干渉抑制を実現する技術を提供する。
【解決手段】このスパッツ装置10は、スパッツ12と、スパッツ12を懸垂支持する可撓性を有する線状体20と、を介して前記スパッツを上下方向に昇降させる巻取り機構30と、を備えている。スパッツ12は、線状体20で懸垂支持されており、巻取り機構30による線状体20の巻取りと繰り出しにより昇降される。このため、従来のリンク機構を用いた場合よりも、省スペースで昇降が可能となっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のスパッツ装置であって、
スパッツと、
前記スパッツを懸垂支持する可撓性を有する線状体と、
前記線状体を介して前記スパッツを上下方向に昇降させる巻取り機構と、
を備える、スパッツ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両用のスパッツ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のスパッツは、車輪の前方などに設けられ、車両前方からのエア流を整流して車輪近傍におけるダウンフォースを発生させるなどの空力性能の向上に貢献している。スパッツは、車両の加速や減速に応じて昇降されるが、路面上の障害物を干渉することで損傷する場合もある。
【0003】
このため、スパッツを昇降するとともに、路面上の障害物と接触したときには、それによりスパッツが上方に移動できるリンク機構を備えるスパッツ装置が開示されている(特許文献1)。このスパッツ装置によれば、空力性能の向上と路面上の障害物との干渉抑制とを両立できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-94073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のスパッツ装置では、リンク機構を採用しているため、車両の上下方向のほか、前後方向にもスペースを要するものとなっていた。
【0006】
本明細書は、省スペースで空力性能の向上と路面上の障害物との干渉抑制を実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する技術は、車両用のスパッツ装置に具現化される。このスパッツ装置は、スパッツと、スパッツを懸垂支持する可撓性を有する線状体と、線状体を介して前記スパッツを上下方向に昇降させる巻取り機構と、を備えている。スパッツは、線状体で懸垂支持されており、巻取り機構による線状体の巻取りと繰り出しにより昇降される。このため、従来のリンク機構を用いた場合よりも、省スペースで昇降が可能となっている。
【0008】
また、スパッツは、可撓性を有する線状体で懸垂支持されている。このため、スパッツに対して路面上の障害物から入力があっても、線状体が撓むことでスパッツへの入力を緩衝し、巻取り機構への外力の伝達を抑制できる。この結果、スパッツ及び巻取り機構の損傷を低減できる。路面上の障害物との干渉抑制を、一層簡易でかつ有利に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両におけるスパッツの装着状態(停車時)を示す図である。
図2】スパッツ装置の構造(停止時)を示す図である。
図3】スパッツ装置の走行時における動作を示す図である。
図4】スパッツ装置の走行時における動作(障害物有り)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の車両用のスパッツ装置の実施形態について、適宜図面を参照して説明する。図1には、車両におけるスパッツの装着状態(停車時)を示し、図2には、停止時のスパッツ装置の構造を示し、図3及び図4には、走行時のスパッツ装置の動作を示す。なお、以下の説明において、車両前方、車両後方、車両上方及び車両下方を、それぞれ、単に、前方、後方、上方及び下方という場合がある。また、図2図4においては、車両前方、車両後方、車両上方及び車両下方を、それぞれ、FR、RR、UPR及びDWNで示す。
【0011】
車両は、特に限定するものではないが、エンジン車のほか、モータを用いて車軸を駆動する車両が挙げられる。例えば、BEV(バッテリ式電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)などが挙げられる。
【0012】
図1に示すように、車両2は、前方の車輪4の前方であってフロントバンパー3の後方に、スパッツ装置10を備えている。すなわち、図2(a)に示すように、スパッツ装置10のスパッツ12がフェンダーライナ6に連続するアンダーパネル8に設けたスリット9から路面Gに向けて延在されている。
【0013】
図2に示すように、スパッツ装置10は、スパッツ12と線状体20と、モータ32を備えるスプール30とを備えている。
【0014】
スパッツ12は、車輪4の幅を超える所定の幅を有し、車両2の上下方向に所定の高を有する、長方形の板状体であり、例えば、樹脂製である。スパッツ12の下方端縁12aの高さ位置は、車両2の最低地上高Hに相当している。
【0015】
スリット9から下方に延在されるスパッツ12の部分において、下方端縁12aから所定量上方であって後方の側面には、スリット9を通過できない大きさで後方に突出した後方端縁部14を備えている。スパッツ12に対して上方に突き上げる外力が入力されたとき、後方端縁部14がスリット9に係止されることで、スパッツ12の上方移動が制限される。
【0016】
スリット9から上方のアンダーパネル8上方に収容されるスパッツ12の部分の上方の端縁にはストッパ16を備えている。ストッパ16は、スリット9を通過できない大きさに形成されており、スパッツ12の下方移動を制限する。また、ストッパ16は、ゴムなどの弾性材料で形成されており、スパッツ12の下方移動が制限された時点で、スリット9に弾性的に当接して接触音などが抑制されている。また、スパッツ12に対して路面G上の障害物100から上方に突き上げる外力が入力されたとき、後述するカバー34に衝突しても衝突音などが抑制されるとともに、衝撃が緩和されるようになっている。
【0017】
また、スパッツ12は、スリット9により、前後方向への移動も制限されており、懸垂支持された状態でスパッツ12の前面が車両2の前方を指向するようになっている。
【0018】
スパッツ12は、線状体20を介して車両2の上方の所定位置に固定されたスプール30から懸垂支持されている。
【0019】
線状体20は、適度な可撓性、例えば、スパッツ12が路面G上の障害物と接触してスパッツ12に対して外力が入力されたときに、その外力を受け止めて復元可能に撓むことができる程度の可撓性を有している。線状体20の材料は特に限定するものではなく、公知の材料から適宜選択することができる。また、線状体20は、スパッツ12を懸垂支持して巻取り及び繰り出し可能であればよく、単線状体、テープ状体、ストランドなど、その外形形状や構造自体を限定することなく用いることができる。
【0020】
スプール30は、例えば、モータ32で線状体20の巻取り方向及び繰り出し方向にそれぞれ回転可能な筒状体や円盤状体等で構成されている。スプール30及びモータ32の前方側及びスリット9側である下方側は、カバー34により覆われて保護されている。こうした線状体20を巻取り可能なスプール30及びモータ32は、本明細書に開示される巻取り機構の一例である。
【0021】
次に、図3及び図4を参照して、スパッツ装置10の動作について説明する。まず、図2に示すように、停車時には、スパッツ12は、車両2において規定される最低地上高Hとなる位置にその下方端縁12aが到達した状態となっている。すなわち、スパッツ12は所定長さスリット9から下方に延在しており、後方端縁部14は、スリット9から所定量下方位置にある。
【0022】
図3に示すように、車両2の走行時、例えば、加速時など、前方からのエア流が増大するときには、空力性能を制御するECUなどによってモータ32が線状体20を繰り出すようにスプール30を回転させて、スパッツ12は下方に展開(下降)される。例えば、最大展開位置は、ストッパ16がスリット9に当接してスパッツ12の下降が制限される位置であり、結果として最低地上高Hを超えて展開される位置である。こうすることで、エア流がスパッツ12により整流されて空力性能が向上される。
【0023】
図4に示すように、車両2の走行時に、スパッツ12の最大展開状態で、路面G上の障害物100(縁石)などにスパッツ12が接触した場合には、その外力は、可撓性を有する線状体20によって吸収され緩衝される。すなわち、例えば、線状体20のスパッツ12の接続部分近傍20aが主に撓んで、スパッツ12における障害物やスプール30及びモータ32における障害が低減又は回避される。また、障害物100を通過すれば、線状体20が復元することにより、スパッツ12の展開状態も復元される。
【0024】
また、スパッツ12が線状体で懸垂支持され、スプール30などの巻取り機構で昇降可能に構成されているため、スパッツ12の昇降自体を特に前後方向において省スペース化合物が可能となっている。また、障害物100との接触時には、巻取り機構などの機械的機構でなく線状体20が備える可撓性でその外力を吸収緩衝し、しかも、その後容易に復元されるため、簡易でしかも合理的な障害物対応が可能となっている。
【0025】
さらに、スパッツ12が備える後方端縁部14及びストッパ16と、スリット9と、によって、スパッツ12の上方位置及び下方位置及び前後方向位置が制限されるため、可撓性を有する線状体20を用いた懸垂支持によっても、適切なスパッツ12の動作が確保されるようになっている。
【0026】
以上説明したように、本明細書に開示される車両用のスパッツ装置10によれば、路面上の障害物に対応しつつ空力性能の向上させることを高い実用性でしかも省スペースで実現することができる。
【0027】
なお、以上の実施形態では、車両2の前方の車輪4について説明したが、全ての車輪の前方側にかかるスパッツ装置10を適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
2:車両、4:車輪、6:フェンダーライナ、8:アンダーパネル、9:スリット、10:スパッツ装置、12:スパッツ、14:後方端縁部、16:ストッパ、20:線状体、30:スプール、32:モータ、34:カバー、100:障害物、G:路面、H:最低地上高
図1
図2
図3
図4