IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電工デバイス・イノベーション株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置 図1
  • 特開-半導体装置 図2
  • 特開-半導体装置 図3
  • 特開-半導体装置 図4
  • 特開-半導体装置 図5
  • 特開-半導体装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042491
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20240321BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L23/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147243
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 明
(57)【要約】
【課題】リフロー時の信頼性の低下を防止する。
【解決手段】半導体装置1は、2つの主面4a,4bを貫通する開口7が形成され、絶縁材料を含んで構成された配線基板4と、配線基板4に対して、主面4a側から開口7を塞いで固定された金属ベース2と、金属ベース2の主面2b上の開口7の内側に固定された半導体チップ3と、配線基板4の主面4b上から、金属ベース2の主面2b上の開口7の内側にかけて、半導体チップ3を覆って配置され、配線基板4と熱膨張係数が異なる材料からなる樹脂13と、配線基板4の開口7の側面7a、及び金属ベース2の主面2bと、樹脂13との間に配置された金属ペーストを含む接着剤14と、を備え、接着剤14は、金属ベース2の主面2b上において、開口7の中心側から配線基板4の側面7aにかけて、厚さが徐々に大きくなるように配置されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面及び第2の主面を有し、前記第1の主面から前記第2の主面に貫通する開口が形成され、絶縁材料を含んで構成された配線基板と、
前記配線基板に対して、第2の主面側から前記開口を塞いで固定された金属基板と、
前記金属基板の前記配線基板側の主面上の前記開口の内側に固定された半導体チップと、
前記配線基板の前記第1の主面上から、前記金属基板の前記主面上の前記開口の内側にかけて、前記半導体チップを覆って配置され、前記配線基板と熱膨張係数が異なる材料からなる樹脂と、
前記配線基板の前記開口を規定する側面、及び前記金属基板の前記主面と、前記樹脂との間に配置された金属ペーストを含む接着剤と、
を備え、
前記接着剤は、前記金属基板の前記主面上において、前記開口の中心側から前記配線基板の前記側面にかけて、厚さが徐々に大きくなるように配置されている、
半導体装置。
【請求項2】
前記接着剤は、前記配線基板の前記側面における前記配線基板の厚さ方向の厚さが、前記配線基板の厚さの2分の1以上となるように配置されている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記配線基板の熱膨張係数は、前記樹脂の熱膨張係数の2倍以上である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記接着剤は、前記配線基板の前記側面における前記第1の主面側の端点と、前記金属基板の前記主面上の前記開口の中心側の端点とを結ぶ線が、前記金属基板の前記主面に対して45度以下とされている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記金属基板の主面上には、金、銀、銅、鉄、亜鉛、及び錫のいずれかを含む金属材料からなる金属膜が設けられている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記金属基板の前記配線基板側の主面上の前記開口の内側に金属ペーストを含む前記接着剤とは異なる別の接着剤を、さらに備え、
前記接着剤と前記別の接着剤とは、前記金属基板の前記主面上において離間している、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記接着剤と前記別の接着剤とは、同一材料である、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記接着剤と前記別の接着剤とは、金、銀、銅、ニッケル、及びアルミニウムのいずれかを含む金属ペーストを含む、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記配線基板は、エポキシ系材料、フッ素系材料、ポリフェニレンオキシド系材料、及び、フェニール系材料のいずれかを含み、前記樹脂は、エポキシ系材料及びシリコン系材料のいずれかを含む、
請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属基板と、金属基板にAgペーストを介して接合され、中央部に半導体回路素子を収納する開口部を設けた回路基板と、半導体回路素子と回路基板上の導体回路層とを接続するボンディングワイヤと、半導体回路素子と回路基板とを封止したポッティング樹脂封止体と、を備える半導体装置が記載されている。このような半導体装置の構造によれば、半導体回路素子実装の作業性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-27563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の半導体装置では、金属基板上に熱膨張係数が異なる回路基板と樹脂とが配置されているため、温度上昇時に樹脂に生じる熱応力が問題になる場合がある。そのため、リフロー時における樹脂の剥離による半導体装置の信頼性の低下を防止することが求められる。
【0005】
本開示は、リフロー時の信頼性の低下を防止することが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一側面に係る半導体装置は、第1の主面及び第2の主面を有し、第1の主面から第2の主面に貫通する開口が形成され、絶縁材料を含んで構成された配線基板と、配線基板に対して、第2の主面側から開口を塞いで固定された金属基板と、金属基板の配線基板側の主面上の開口の内側に固定された半導体チップと、配線基板の第1の主面上から、金属基板の主面上の開口の内側にかけて、半導体チップを覆って配置され、配線基板と熱膨張係数が異なる材料からなる樹脂と、配線基板の開口を規定する側面、及び金属基板の主面と、樹脂との間に配置された金属ペーストを含む接着剤と、を備え、接着剤は、金属基板の主面上において、開口の中心側から配線基板の側面にかけて、厚さが徐々に大きくなるように配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、リフロー時の信頼性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図2図1の半導体装置の要部を示す平面図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4】比較例に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図5図4の半導体装置の要部を示す平面図である。
図6】比較例において、樹脂、配線基板、及び金属ベースに発生する熱応力の様子を示す配線基板の厚み方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の第1側面に係る半導体装置は、第1の主面及び第2の主面を有し、第1の主面から第2の主面に貫通する開口が形成され、絶縁材料を含んで構成された配線基板と、配線基板に対して、第2の主面側から開口を塞いで固定された金属基板と、金属基板の配線基板側の主面上の開口の内側に固定された半導体チップと、配線基板の第1の主面上から、金属基板の主面上の開口の内側にかけて、半導体チップを覆って配置され、配線基板と熱膨張係数が異なる材料からなる樹脂と、配線基板の開口を規定する側面、及び金属基板の主面と、樹脂との間に配置された金属ペーストを含む接着剤と、を備え、接着剤は、金属基板の主面上において、開口の中心側から配線基板の側面にかけて、厚さが徐々に大きくなるように配置されている。
【0010】
上記第1側面は、半導体チップが金属基板の主面上の配線基板の開口の内側に固定され、かつ、配線基板の主面から金属基板の主面上の開口の内側にかけて半導体チップごと樹脂で覆われた構成を有し、配線基板の開口の側面及び金属基板の主面と樹脂の間には金属ペーストを含む接着剤が配置され、この接着剤は開口の中心側から配線基板の開口の側面にかけて徐々に厚くなるように構成されている。このような構成により、リフローの際に配線基板の膨張係数が樹脂と異なっていることに起因して配線基板と樹脂との間に生じる熱応力を分散することができ、リフロー時の樹脂の剥離の発生による信頼性の低下を防止することができる。
【0011】
本開示の第2側面に係る半導体装置は、上記第1側面において、接着剤は、配線基板の側面における配線基板の厚さ方向の厚さが、配線基板の厚さの2分の1以上となるように配置されている、というものである。この場合、接着剤と配線基板との接触面積が確保されるため、配線基板と樹脂との間で生じる熱応力をさらに分散することができ、リフロー時の信頼性の低下を確実に防止することができる。
【0012】
また、本開示の第3側面に係る半導体装置は、上記第1側面または上記第2側面において、配線基板の熱膨張係数は、樹脂の熱膨張係数の2倍以上である、というものである。このように配線基板と樹脂との間で熱膨張係数の違いが大きい場合であっても、リフロー時の樹脂の剥離の発生による信頼性の低下を防止することができる。
【0013】
また、本開示の第4側面に係る半導体装置は、上記第1側面から上記第3側面までのいずれかにおいて、接着剤は、配線基板の側面における第1の主面側の端点と、金属基板の主面上の開口の中心側の端点とを結ぶ線が、金属基板の主面に対して45度以下とされている、というものである。かかる構成により、接着剤の金属基板との接触面積が十分に大きくされ、配線基板の厚み方向における配線基板及び樹脂の熱膨張に起因する熱応力の分散効果を十分に得ることができるとともに、配線基板の熱膨張に対する機械的強度を確保することができる。その結果、半導体装置の信頼性をより高めることができる。
【0014】
また、本開示の第5側面に係る半導体装置は、上記第1側面から上記第4側面までのいずれかにおいて、金属基板の主面上には、金、銀、銅、鉄、亜鉛、及び錫のいずれかを含む金属材料からなる金属膜が設けられている、というものである。この場合、半導体チップと金属基板との接着の強度を向上させることができる。
【0015】
また、本開示の第6側面に係る半導体装置は、上記第1側面から上記第5側面までのいずれかにおいて、金属基板の配線基板側の主面上の開口の内側に金属ペーストを含む接着剤とは異なる別の接着剤を、さらに備え、接着剤と別の接着剤とは、金属基板の主面上において離間している、というものである。かかる構成によれば、接着剤の硬化の過程で半導体チップの位置ずれが発生することを防止でき、半導体チップの実装精度を高めることができる。
【0016】
また、本開示の第7側面に係る半導体装置は、上記第1側面から上記第6側面までのいずれかにおいて接着剤と別の接着剤とは、同一材料である、というものである。このような場合であっても、リフロー時の樹脂の剥離の発生による信頼性の低下を防止することができる。
【0017】
また、本開示の第8側面に係る半導体装置は、上記第1側面から上記第7側面までのいずれかにおいて、接着剤と別の接着剤は、金、銀、銅、ニッケル、及びアルミニウムのいずれかを含む金属ペーストを含む、というものである。かかる構成を採れば、樹脂と接着剤及び別の接着剤との密着強度を高めることができ、リフロー時の樹脂の剥離の発生による信頼性の低下を防止することができる。
【0018】
また、本開示の第9側面に係る半導体装置は、上記第1側面から上記第8側面までのいずれかにおいて、配線基板は、エポキシ系材料、フッ素系材料、ポリフェニレンオキシド系材料、及び、フェニール系材料のいずれかを含み、樹脂は、エポキシ系材料及びシリコン系材料のいずれかを含む、というものである。かかる構成においても、リフロー時の樹脂の剥離の発生による信頼性の低下を防止することができる。
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
(半導体装置の構成)
【0021】
図1は、本開示の一実施形態に係る半導体装置1の構成を示す断面図である。この半導体装置1は、例えば、Massive MIMO(MultipleInput Multiple Output)方式の無線基地局用の通信モジュールに内蔵される半導体装置である。
【0022】
図1に示すように、半導体装置1は、金属ベース(金属基板)2と、金属ベース2に搭載された半導体チップ3と、金属ベース2に重ね合わせて固定された配線基板4と、配線基板4上に形成された回路パターン5と、配線基板4上に回路パターン5を介して搭載された回路素子6と、半導体装置1全体を封止する樹脂13とを備える。配線基板4の中央部には金属ベース2まで貫通する開口7が形成され、半導体チップ3は、金属ベース2上の開口7の内側に配置されている。
【0023】
金属ベース2は、例えば、銅(Cu)、銅を含む合金、アルミニウム(Al)、又は、鉄(Fe)を含む合金によって構成され、略矩形の平板形状を有する。金属ベース2の表面及び裏面には、表面の酸化防止、および導電ペーストとの金属結合による導電性の確保のために金(Au)等のメッキが施されていてもよい。例えば、金属ベース2に、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、及び金の膜をこの順で形成し、その上に金メッキ8が施されていてもよい。金メッキ8は、少なくとも、金属ベース2の配線基板4側の主面2b上の開口7の内側の面全体に形成されている。金メッキ8の代わりに、銀(Ag)、銅、鉄、亜鉛(Zn)、あるいは、錫(Sn)を含む金属が用いられてもよい。また、金属ベース2の端部には、配線基板4上の回路パターン5と電気的に接続される接続端子2aが形成されている。
【0024】
配線基板4は、例えば、エポキシ系の樹脂材料、フッ素系の樹脂材料、ポリフェニレンオキシド(PPO)系の樹脂材料、あるいは、フェニール系の樹脂材料等の絶縁材料を含んで構成され、金属ベース2側の主面(第2の主面)4aとその反対側の主面(第1の主面)4bを含む略矩形の平板形状を有する。この配線基板4には、金属ベース2の主面2b上の中央部において、主面4bから主面4aに貫通する略矩形の開口7が形成されている。つまり、金属ベース2が開口7を主面4a側から塞ぐように固定されている。その結果、開口7の側面7aにより、金属ベース2の主面2b上に半導体チップ3を搭載するための空間が規定される。また、配線基板4の主面4b上には銅等の金属によって形成される回路パターン5が設けられており、回路パターン5上には金メッキ等の金属メッキ9が施されている。また、配線基板4の主面4b上の回路パターン5上には、表面実装部品である回路素子6が搭載されている。この回路素子6は、はんだ10を介して回路パターン5に電気的に接続される。さらに、配線基板4には、接続端子2aと回路パターン5とを電気的に接続するためのビア11が複数設けられている。
【0025】
半導体チップ3は、例えば、炭化シリコン(SiC)の基板(図示しない)上に窒化ガリウム(GaN)を主成分とする高電子移動度トランジスタ(HEMT)を含む集積回路である。半導体チップ3は、金属ベース2の主面2b上の開口7の内側の中央部に、金メッキ8を介して、第1の接着剤(別の接着剤)12によって接着および固定されている。第1の接着剤12には、銀ペーストが用いられている。ただし、第1の接着剤12には、例えば、金、銅、ニッケル、又はアルミニウムなどの他の金属を含む金属ペーストが用いられてもよい。また、第1の接着剤によって接着される代わりに、半導体チップ3は、金メッキ8と半導体チップ3の基板との共晶反応によって接着されていても良い。さらに、半導体チップ3は、金ワイヤ等の金属ワイヤ15によって、配線基板4上の回路パターン5と電気的に接続される。
【0026】
樹脂13は、配線基板4の主面4b上から、金属ベース2の主面2b上の開口7の内側にかけて、回路パターン5、回路素子6、及び半導体チップ3を覆うように配置された封止用部材である。例えば、樹脂13としては、エポキシ系の樹脂材料が用いられる。ただし、樹脂13として、シリコン系の樹脂材料が用いられてもよい。樹脂13の熱膨張係数は、配線基板4の熱膨張係数と異なっており、具体的には、配線基板4の熱膨張係数よりも小さく、好ましくは配線基板4の熱膨張係数の1/2以下とされている。例えば、樹脂13としてエポキシ系の樹脂材料が用いられた場合は、樹脂13のガラス転移点以上における厚み方向の熱膨張係数は、約40[ppm/K]であり、配線基板4としてガラスエポキシ材を用いた場合の配線基板4のガラス転移点以上における厚み方向の熱膨張係数の約240[ppm/K]よりも小さい。樹脂13は、開口7の側面7aから側面7a側の主面2bにかけて、第2の接着剤(接着剤)14を挟んで接着・配置されている。第2の接着剤14には、銀ペーストが用いられている。ただし、第2の接着剤14には、例えば、金、銅、ニッケル、又はアルミニウムなどの他の金属を含む金属ペーストが用いられてもよい。
【0027】
以下、図2及び図3を参照して、金属ベース2の主面2b上の第1の接着剤12及び第2の接着剤14の配置状態について詳述する。図2は、図1の半導体装置1の要部の平面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
【0028】
第1の接着剤12は、金属ベース2の主面2bと半導体チップ3との間に挟まれて配置されている。そして、主面2bに沿った方向の第1の接着剤12の縁部は開口7に沿った略矩形とされている。
【0029】
第2の接着剤14は、開口7を規定する側面7aから、側面7aと略垂直に延在する主面2b上の金メッキ8にかけて、開口7に沿って均一な厚さとなるようにそれらと密着して配置される。この第2の接着剤14は、主面2bに沿った方向の半導体チップ3側の縁部が開口7に沿った略矩形とされ、その縁部は主面2b上において第1の接着剤12の縁部に対して少なくとも0.1mm以上でほぼ一定間隔で離間している。第2の接着剤14の側面7a及び主面2bに対して垂直に切った方向の断面形状(図3参照)は、開口7で規定される空間の中心側から側面7aにかけて厚さが徐々に大きくなり、且つ、主面2b側に湾曲した形状とされている。また、上記断面形状の側面7aにおける配線基板4の厚さ方向の厚さは、配線基板4の厚さの1/2以上とされる。さらには、第2の接着剤14は、上記断面形状において、開口7で規定される空間の中心側の端点14aと側面7aにおける主面4b側の端点14bと、を結ぶ線L1が、主面2bに対して45度以下の傾きを有するような形状とされる。また、好ましくは、第2の接着剤14の主面2b上の金メッキ8との接触面積は、側面7aとの接触面積よりも大きくされる。
【0030】
このような構成の第2の接着剤14は、ディスペンサーまたはインクジェット印刷によって側面7aに沿って塗布することにより配置される。第2の接着剤14の上述したフィレット形状は表面張力によって形成される。
【0031】
(半導体装置の作用効果)
【0032】
以上説明した半導体装置1の構成によれば、半導体チップ3が金属ベース2の主面2b上の配線基板4の開口7の内側において金属ペーストを含む第1の接着剤12によって固定され、かつ、配線基板4の主面4bから金属ベースの主面2b上の開口7の内側にかけて半導体チップ3ごと樹脂13で封止された構成を有し、配線基板4の開口7の側面7a及び金属ベース2の主面2bと樹脂13の間には金属ペーストを含む第2の接着剤14が配置され、この第2の接着剤14は開口7の中心側から配線基板4の開口7の側面7aにかけて徐々に厚くなるように構成されている。このような構成により、リフローの際に配線基板4の膨張係数が樹脂13と異なっていることに起因して配線基板4と樹脂13との間に生じる熱応力を分散することができ、リフロー時の樹脂13の剥離の発生による信頼性の低下を防止することができる。
【0033】
上記の作用効果を、比較例と比較しつつ詳述する。図4は、比較例に係る半導体装置の構成を示す断面図であり、図5は、図4の半導体装置の要部を示す平面図であり、図6は、比較例において、樹脂、配線基板、及び金属ベースに発生する熱応力の様子を示す配線基板の厚み方向に沿った断面図である。比較例に係る半導体装置901は、第2の接着剤14が配置されていない点で実施形態に係る半導体装置1と異なる。
【0034】
半導体装置901においては、配線基板4と樹脂13との間の熱膨張係数の差によって熱応力が発生し、リフロー(熱衝撃)の際に配線基板4の開口7に熱応力が集中する。すなわち、配線基板4の熱膨張係数が比較的大きく、樹脂13の熱膨張係数が比較的小さいために、側面7aに沿って樹脂13側には金属ベース2から離れる方向に持ち上げられる剪断応力F1が発生し、樹脂13が持ち上げられることによって金メッキ8の表面には引張応力F2が発生し、配線基板4には側面7aに沿って熱膨張を抑える向きに剪断応力F3が発生する(図6)。また、金メッキ8は物性上樹脂13との親和性が低い。そのため、リフロー時に開口7の近傍において熱応力が集中し、金メッキ8と樹脂13との間に剥離が発生しやすく、半導体チップ3の上まで剥離が進展することによって信頼性が低下する。
【0035】
これに対して、半導体装置1の構成によれば、熱応力の集中する開口7の側面7a近傍に第2の接着剤14を塗布・硬化することにより、樹脂13の食いつきを改善することができる。すなわち、第2の接着剤14として銀ペーストが用いられているため金メッキ8よりも樹脂の食いつきがよい。また、第2の接着剤14と金メッキ8との密着強度も樹脂13と金メッキ8との密着強度よりも大きい。さらに、応力の集中する側面7aに第2の接着剤によって傾斜を付けることにより、熱応力の集中を緩和できる。その結果、本実施形態では、応力の集中による側面7a近傍における樹脂13の主面2bからの剥離を効果的に防止することができる。
【0036】
また、本実施形態においては、第2の接着剤14は、配線基板4の側面7aにおける配線基板4の厚さ方向の厚さが、配線基板4の厚さの2分の1以上となるように配置されている。この場合、第2の接着剤14と配線基板4との接触面積が確保されるため、配線基板4の側面7aと樹脂13との間での密着性の改善効果を十分に確保することができ、リフロー時の信頼性の低下を確実に防止することができる。
【0037】
また、本実施形態においては、第2の接着剤14は、端点14aと端点14bとを結ぶ線が金属ベース2の主面2bに対して45度以下とされている。かかる構成により、第2の接着剤14の金属ベース2との接触面積が十分に大きくされ、配線基板4の厚み方向における配線基板4及び樹脂13の熱膨張に起因する熱応力の分散効果を十分に得ることができるとともに、配線基板4の熱膨張に対する機械的強度を確保することができる。その結果、半導体装置1の信頼性をより高めることができる。
【0038】
また、本実施形態では、第2の接着剤14の金メッキ8との接触面積が金属ベース2との接触面積よりも大きくされている。これにより、樹脂13の開口7近傍における剥離を、熱応力の分散によって効果的に防止することができ、信頼性をさらに向上できる。
【0039】
また、本実施形態においては、金属ベース2の主面2b上には、金メッキ8等の金属膜が設けられている。このような構成により、半導体チップ3と金属ベース2との第1の接着剤12を用いた接着の強度を向上させることができる。また、半導体チップ3と金属ベース2との間の導電性も確保することができる。加えて、第1の接着剤12として例えば銀ペーストを用い、金属ベース2として銅を含む金属を用いた場合は、第1の接着剤12を直接金属ベース2に密着させると金属ベース2が酸化して両者の密着性が低下することがあるが、金メッキ8を介することによりそのような事態を防ぐことができる。
【0040】
また、本実施形態では、第1の接着剤12と第2の接着剤14とは、金属ベース2の主面2b上において離間している。このような構成により、第2の接着剤14の硬化の過程で第2の接着剤14の粘度が下がった際に半導体チップ3の位置ずれが発生することを防止でき、半導体チップ3の実装精度を高めることができる。
【0041】
また、本実施形態では、第2の接着剤14が開口7に沿った方向に均一に配置されている。そのため、開口7の一部の側面7aに熱応力が集中することを防止でき、半導体装置1の信頼性をより高めることができる。
【0042】
以上、好適な実施の形態において本開示の原理を図示し説明してきたが、本開示は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本開示は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【0043】
上記実施形態における第1の接着剤12及びは第2の接着剤14としては、樹脂を含む金属ペーストが用いられてもよい。このようにすれば、主面2b上の金メッキ8と樹脂13との密着強度、配線基板4と樹脂13との密着強度の両方を確保することができ、半導体装置1の信頼性をより高めることができる。
【符号の説明】
【0044】
1,901…半導体装置
2…金属ベース(金属基板)
2a…接続端子
2b…主面
3…半導体チップ
4…配線基板
4a…主面(第2の主面)
4b…主面(第1の主面)
5…回路パターン
6…回路素子
7…開口
7a…側面
8…金メッキ
9…金属メッキ
10…はんだ
11…ビア
12…第1の接着剤(別の接着剤)
14…第2の接着剤(接着剤)
13…樹脂
14a,14b…端点
15…金属ワイヤ
F1,F3…剪断応力
F2…引張応力
L1…線
図1
図2
図3
図4
図5
図6