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特開2024-42525蓄電デバイス、及び、蓄電デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042525
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】蓄電デバイス、及び、蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/178 20210101AFI20240321BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20240321BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20240321BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240321BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240321BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20240321BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20240321BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20240321BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240321BHJP
【FI】
H01M50/178
H01M50/533
H01M50/534
H01M50/184 C
H01M50/193
H01M50/553
H01G11/06
H01G11/74
H01G11/78
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147303
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】土屋 詔一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AA14
5E078AB06
5E078AB12
5E078HA02
5E078HA23
5E078KA06
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H011EE04
5H011FF03
5H011GG09
5H011HH02
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA07
5H043CA08
5H043CA12
5H043CA13
5H043DA01
5H043DA13
5H043KA08D
5H043KA09D
5H043KA22D
5H043KA45D
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安価で気密性良好な蓄電デバイス、及び、安価で気密性良好な蓄電デバイスの製造方法を提供。
【解決手段】蓄電デバイス1は、電極体と、一対のケース部材21と、一対のケース部材内で電極体の集電部に導通接続し、ケース部材同士の間を延出し、ケース部材の外部に露出するタブ電極端子30であって、タブ延出方向EH1の途中に、タブ周方向RH1に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子30と、環帯状粗化面に直接気密に熱溶着すると共に、ケース部材の各々の外周縁部21E、22Eのうち、タブ電極端子の周囲に位置させるタブ周囲部21ETPともそれぞれ気密に熱溶着し、タブ周囲部にタブ電極端子を保持させるタブ保持体50とを備え、タブ保持体は、熱可塑性絶縁性樹脂からなる溶融樹脂をタブ電極端子の被包囲部とケース部材のタブ周囲部との間のタブ周囲間隙に注入し固化してなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電部を有する電極体と、
ラミネートフィルムからなり、前記電極体を包囲する一対のケース部材と、
金属からなり、接続端部が一対の前記ケース部材内で前記電極体の前記集電部に導通接続し、一対の前記ケース部材同士の間を延出し、外部端子部が一対の前記ケース部材の外部に露出するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けて延出するタブ延出方向の途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、
熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着すると共に、一対の前記ケース部材の各々の外周縁部のうち、前記タブ電極端子の周囲に位置させるタブ周囲部ともそれぞれ気密に熱溶着し、前記タブ周囲部に前記タブ電極端子を保持させるタブ保持体とを、備え、
前記タブ保持体は、
前記熱可塑性絶縁性樹脂からなる溶融樹脂を、タブ電極端子の前記被包囲部と一対の前記ケース部材の前記タブ周囲部との間のタブ周囲間隙に注入し固化してなる
蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスであって、
前記タブ保持体は、無変性の熱可塑性絶縁性樹脂からなる
蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電デバイスであって、
一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち、前記タブ周囲部以外で互いに対向する周縁対向部同士を、直接、気密に熱溶着してなる直接溶着部をさらに備える
蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電デバイスであって、
一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち、前記タブ周囲部以外で互いに対向する周縁対向部同士を、前記熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ保持体と気密に一体化した樹脂介在体を介して気密に熱溶着してなる樹脂介在部をさらに備える
蓄電デバイス。
【請求項5】
集電部を有する電極体と、
ラミネートフィルムからなり、前記電極体を包囲する一対のケース部材と、
金属からなり、接続端部が一対の前記ケース部材内で前記電極体の前記集電部に導通接続し、一対の前記ケース部材同士の間を延出し、外部端子部が一対の前記ケース部材の外部に露出するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けて延出するタブ延出方向の途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、
熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着すると共に、一対の前記ケース部材の各々の外周縁部のうち、前記タブ電極端子の周囲に位置させるタブ周囲部ともそれぞれ気密に熱溶着し、前記タブ周囲部に前記タブ電極端子を保持させるタブ保持体とを、備え、
前記タブ保持体は、
前記熱可塑性絶縁性樹脂からなる溶融樹脂を、タブ電極端子の前記被包囲部と一対の前記ケース部材の前記タブ周囲部との間のタブ周囲間隙に注入し固化してなる
蓄電デバイスの製造方法であって、
前記電極体の前記集電部に、前記タブ電極端子の前記接続端部を接続する接続工程と、
一対の前記ケース部材の各々の前記タブ周囲部に対し前記タブ電極端子の前記環帯状粗化面が前記タブ電極端子のタブ厚み方向に重なり、前記タブ電極端子が前記タブ周囲部同士の間を通じて前記タブ延出方向に延び、かつ、前記タブ電極端子が一対の前記ケース部材の各々の前記タブ周囲部から離間する姿勢に、前記電極体を一対の前記ケース部材内に収容する収容工程と、
前記タブ電極端子の前記被包囲部、及び、一対の前記ケース部材の前記タブ周囲部のタブ周囲間隙に、前記熱可塑性絶縁性樹脂からなる溶融樹脂を注入し固化して、前記タブ保持体を形成する保持体形成工程と、を備える
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記蓄電デバイスは、
一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち、前記タブ周囲部以外で互いに対向する周縁対向部同士を、直接、気密に熱溶着してなる直接溶着部をさらに備え、
前記収容工程の後で、前記保持体形成工程に先立ち、一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち、前記周縁対向部同士を、直接、気密に熱溶着して前記直接溶着部を形成する周縁熱溶着工程を有する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記蓄電デバイスは、
一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち、前記タブ周囲部以外で互いに対向する周縁対向部同士を、前記熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ保持体と気密に一体化した樹脂介在体を介して気密に熱溶着してなる樹脂介在部をさらに備え、
前記保持体形成工程は、
前記タブ保持体の形成に並行してまたは相前後して、
予め定めた大きさの対向部間隙をなして保持した前記周縁対向部同士の前記対向部間隙に、溶融した前記熱可塑性絶縁性樹脂を注入して、前記周縁対向部同士間に介在すると共に、前記周縁対向部にそれぞれ気密に熱溶着した前記樹脂介在体をも形成する保持体介在体形成工程である
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス、及び、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池などの蓄電デバイスを製造するに当たり、ラミネートフィルムからなる一対のケース部材内に電極体を収容し、ケース部材の周囲部分同士をヒートシールすると共に、電極体の正極電位や負極電位をラミネートフィルム同士の接合部分からタブ電極端子により外部に取りだした、いわゆるラミネート型の蓄電デバイスが知られている。このようなラミネート型蓄電デバイスでは、ラミネートフィルムの内側面をなす熱融着性樹脂層と金属からなるタブ電極端子(金属端子)との接着性を高めるため、ラミネートフィルムとタブ電極端子との間に、マレイン酸変性などの変性処理により金属接着性とした金属接着性樹脂の層を表面に有する複層構造のタブ接着フィルムを介在させて、ラミネートフィルムとタブ接着フィルム及びタブ接着フィルムとタブ電極端子とを気密に熱溶着することが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-95833号公報
【特許文献2】特開2007-95654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多量のタブ電極端子の表面に、前述のクロメート処理層などの化成処理層を形成する処理を安定に行うのは容易ではなく、コスト高になりやすい。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、安価で気密性良好な蓄電デバイス、及び、安価で気密性良好な蓄電デバイスの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、集電部を有する電極体と、ラミネートフィルムからなり、前記電極体を包囲する一対のケース部材と、金属からなり、接続端部が一対の前記ケース部材内で前記電極体の前記集電部に導通接続し、一対の前記ケース部材同士の間を延出し、外部端子部が一対の前記ケース部材の外部に露出するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けて延出するタブ延出方向の途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着すると共に、一対の前記ケース部材の各々の外周縁部のうち、前記タブ電極端子の周囲に位置させるタブ周囲部ともそれぞれ気密に熱溶着し、前記タブ周囲部に前記タブ電極端子を保持させるタブ保持体と、を備え、前記タブ保持体は、前記熱可塑性絶縁性樹脂からなる溶融樹脂を、タブ電極端子の前記被包囲部と一対の前記ケース部材の前記タブ周囲部との間のタブ周囲間隙に注入し固化してなる蓄電デバイスである。
【0007】
この蓄電デバイスでは、被包囲部に環帯状粗化面を含むタブ電極端子を用い、タブ保持体は被包囲部を覆い環帯状粗化面に直接気密に熱溶着している。即ち、タブ電極端子に環帯状粗化面を設けているので、クロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、この環帯状粗化面により安定してタブ電極端子に熱可塑性絶縁性樹脂からなるタブ保持体を直接気密に熱溶着でき、安価な蓄電デバイスとすることができる。しかも、タブ保持体は、タブ周囲間隙に注入し固化してなるので、安価な蓄電デバイスとすることができる。
【0008】
「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタなどが挙げられる。また電極体に電解液を含浸させて用いる蓄電デバイスのほか、固体電解質電池のように電解液を要しない蓄電デバイスを含まれる。
「電極体」としては、円柱型或いは扁平型の捲回型電極体、積層型電極体を挙げることができる。電極体の集電部は、捲回型電極体では、軸線方向の一方側に或いは一方側と他方側にそれぞれ設けられる。一方、積層型電極体では、積層方向に直交する方向のうち、適宜の方向に集電部を設けたものを採用できる。
【0009】
一対の「ケース部材」は、ラミネートフィルムからなる。一対のケース部材には、両方のケース部材に電極体を収容して包囲する収容凹部をそれぞれ設けたいわゆる両絞りタイプのケース部材も、一方のケース部材にのみ収容凹部を設け他方のケース部材は平板状としたいわゆる片絞りタイプのケース部材も含まれる。また、一対のケース部材は、各々独立したケース部材とするほか、1枚或いは筒状のラミネートフィルムからなり、連結部を介してケース部材同士が相互に連結されており、連結部を折り曲げケース部材同士を対向させて用いる一対一体型のケース部材としてもよい。
また、ケース部材をなす「ラミネートフィルム」は、複数の樹脂フィルムを積層したフィルムである。ガスバリア性や耐湿性を向上させるべく、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を内層に配置した金属箔ラミネートフィルムを採用することもできる。中でも、コストや軽量性、変形容易性の観点から、アルミニウム箔を用いるのが好適である。
【0010】
「タブ電極端子」は、接続する電極体の集電部の材質、電位等を考慮して選択すると良く、アルミニウム、銅、ニッケルメッキ銅などの金属からなり、接続端部と外部端子部とを有するほか、これらの途中部分には、環帯状粗化面を有している。タブ電極端子は、矩形板状など、接続端部から外部端子部まで直線状に延びる形態を採用し得るが、接続端部から外部端子部までに至る途中で屈曲していたり、幅寸法が変化していても良い。
【0011】
「環帯状粗化面」は、クロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、安定して、熱可塑性絶縁性樹脂からなる樹脂材を直接気密に熱溶着できる粗化面である。例えば、粗化面の算術平均高さSaが0.1μm~30μmの粗化面を好適に採用できる。このような粗化面では、タブ電極端子の強度および導電性を損なわず、タブ保持体をなす樹脂が直接熱溶着する表面積を好適に増大させて良好に固着し気密性を保つことができる。粗化面の算術平均高さSaは、例えばレーザ顕微鏡による観察により測定することができる。レーザ顕微鏡としては、例えば、株式会社キーエンス製のVK-X1000を用いることができる。
【0012】
また、「タブ保持体」をなす熱可塑性絶縁性樹脂は、溶融樹脂とすることができ、かつ、タブ電極端子の環帯状粗化面に直接気密に熱溶着可能な樹脂であれば良く、金属接着性を有していても、金属接着性を有しなくても良い。金属接着性を有する熱可塑性絶縁性樹脂としては、無水マレイン酸変性等の酸変性、樹脂に対する官能基導入などの変性処理を行って、金属接着性を付与した金属接着性ポリエチレン(PE)や金属接着性ポリプロピレン(PP)など金属接着性ポリオレフィンが挙げられる。一方、金属接着性を有しない熱可塑性絶縁性樹脂としては、熱可塑性かつ絶縁性で、酸変性や官能基導入などの変性処理を行っていない無変性の樹脂が挙げられる。具体的には、例えば、無変性のポリエチレン(PE)や無変性のポリプロピレン(PP)など無変性のポリオレフィン、無変性のポリエチレンテレフタラート(PET)など無変性のポリエステル、無変性のポリスチレン、無変性のポリ塩化ビニル(PVC)などが挙げられる。
【0013】
なお、タブ保持体をなし溶融させて注入する熱可塑性絶縁性樹脂は、融点が120~200℃の樹脂とするのが好ましい。タブ保持体をなす熱可塑性絶縁性樹脂の融点を120℃以上とすることで、蓄電デバイスの通常使用状態では、軟化せずに安定にタブ電極端子を保持しつつケース部材のタブ周囲部に保持されることができる。一方、熱可塑性絶縁性樹脂の融点を200℃以下とすることで、タブ保持体の形成のために溶融した樹脂を注入するにあたり、高温を必要とせず、容易にタブ保持体を形成することができる。
【0014】
(2)(1)に記載の蓄電デバイスであって、前記タブ保持体は、無変性の熱可塑性絶縁性樹脂からなる蓄電デバイスとすると良い。
【0015】
この蓄電デバイスでは、タブ保持体をなす熱可塑性絶縁性樹脂を、無変性の熱可塑性絶縁性樹脂としている。このため、比較的高価な、マレイン酸変性などの変性を施した金属接着性を有する熱可塑性絶縁性樹脂を用いた場合に比して、安価なタブ保持体を有する安価な蓄電デバイスとすることができる。
【0016】
(3)(1)又は(2)に記載の蓄電デバイスであって、一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち、前記タブ周囲部以外で互いに対向する周縁対向部同士を、直接、気密に熱溶着してなる直接溶着部をさらに備える蓄電デバイスとすると良い。
【0017】
この蓄電デバイスでは、従来と同様、ラミネートフィルムからなる一対のケース部材の外周縁部のうち、タブ周囲部以外で互いに対向する周縁対向部同士を、直接、気密に熱溶着して直接溶着部としているので、容易にケースを形成することができる。
【0018】
(4)あるいは(1)又は(2)に記載の蓄電デバイスであって、一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち、前記タブ周囲部以外で互いに対向する周縁対向部同士を、前記熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ保持体と気密に一体化した樹脂介在体を介して気密に熱溶着してなる樹脂介在部をさらに備える蓄電デバイスとすると良い。
【0019】
この蓄電デバイスでは、一対のケース部材の外周縁部のうち、タブ周囲部以外で互いに対向する周縁対向部同士を、直接熱溶着しないで、樹脂介在体を介して気密に熱溶着している。このため、周縁対向部同士を直接熱溶着する場合に比して、樹脂介在体を介して対向する周縁対向部同士の間を確実に気密に接続できる。加えて、樹脂介在体は、タブ保持体とも気密に一体化しているので、樹脂介在体とタブ保持体との間も、確実に気密を保つことができる。
【0020】
(5)他の態様は、集電部を有する電極体と、ラミネートフィルムからなり、前記電極体を包囲する一対のケース部材と、金属からなり、接続端部が一対の前記ケース部材内で前記電極体の前記集電部に導通接続し、一対の前記ケース部材同士の間を延出し、外部端子部が一対の前記ケース部材の外部に露出するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けて延出するタブ延出方向の途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着すると共に、一対の前記ケース部材の各々の外周縁部のうち、前記タブ電極端子の周囲に位置させるタブ周囲部ともそれぞれ気密に熱溶着し、前記タブ周囲部に前記タブ電極端子を保持させるタブ保持体と、を備える蓄電デバイスの製造方法であって、前記電極体の前記集電部に、前記タブ電極端子の前記接続端部を接続する接続工程と、一対の前記ケース部材の各々の前記タブ周囲部に対し前記タブ電極端子の前記環帯状粗化面が前記タブ電極端子のタブ厚み方向に重なり、前記タブ電極端子が前記タブ周囲部同士の間を通じて前記タブ延出方向に延び、かつ、前記タブ電極端子が一対の前記ケース部材の各々の前記タブ周囲部から離間する姿勢に、前記電極体を一対の前記ケース部材内に収容する収容工程と、前記タブ電極端子の前記被包囲部、及び、一対の前記ケース部材の前記タブ周囲部のタブ周囲間隙に、前記熱可塑性絶縁性樹脂からなる溶融樹脂を注入し固化して、前記タブ保持体を形成する保持体形成工程と、を備える蓄電デバイスの製造方法である。
【0021】
この蓄電デバイスの製造方法では、保持体形成工程において、タブ電極端子の被包囲部と一対のケース部材のタブ周囲部との間のタブ周囲間隙に、溶融樹脂を注入し固化して、タブ保持体を形成する。このため、タブ電極端子にクロメート処理層などの化成処理層を設けてなくとも、タブ保持体を、タブ電極端子の被包囲部内の環帯状粗化面に、安定して直接気密に熱溶着すると共に、ケース部材のタブ周囲部とも気密に熱溶着した安価な蓄電デバイスを製造できる。また、タブ保持体は、注入し固化した熱可塑性絶縁性樹脂からなるので、前述の複層構造のタブ接着フィルムを用いる必要が無く、安価に蓄電デバイスを製造できる。
【0022】
(6)(5)の蓄電デバイスの製造方法であって、前記蓄電デバイスは、一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち、前記タブ周囲部以外で互いに対向する周縁対向部同士を、直接、気密に熱溶着してなる直接溶着部をさらに備え、前記収容工程の後で、前記保持体形成工程に先立ち、一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち、前記周縁対向部同士を、直接、気密に熱溶着して前記直接溶着部を形成する周縁熱溶着工程を有する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0023】
この製造方法では、収容工程の後で保持体形成工程に先立つ周縁熱溶着工程で、一対のケース部材の外周縁部のうち周縁対向部同士を熱溶着して直接溶着部を形成する。これにより、保持体形成工程の前に、一対のケース部材の外周縁部のうち周縁対向部同士が直接溶着部となって互いに固定されるので、外周縁部のうち残るタブ周囲部も概ね固定される。このため、保持体形成工程におけるタブ周囲間隙への溶融樹脂注入の際に、タブ周囲部の位置ずれや変形が生じるのを抑制して、容易に溶融樹脂を注入することができる。
【0024】
なお、周縁対向部同士を気密に熱溶着して直接溶着部を形成するに当たっては、周縁対向部同士を全域に亘って気密に熱溶着する場合のほか、周縁対向部同士の熱溶着の後に、一対のケース部材で構成されたケース内に電解液を注液するなどの工程を行うべく、タブ周囲部以外の周縁対向部同士のうち、所定の一部を熱溶着しないでおく場合も含む。この場合には、電解液の注液後に周縁対向部同士の未溶着の残部を熱溶着する。
【0025】
(7)或いは(5)の蓄電デバイスの製造方法であって、前記蓄電デバイスは、一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち、前記タブ周囲部以外で互いに対向する周縁対向部同士を、前記熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ保持体と気密に一体化した樹脂介在体を介して気密に熱溶着してなる樹脂介在部をさらに備え、前記保持体形成工程は、前記タブ保持体の形成に並行してまたは相前後して、予め定めた大きさの対向部間隙をなして保持した前記周縁対向部同士の前記対向部間隙に、溶融した前記熱可塑性絶縁性樹脂を注入して、前記周縁対向部同士間に介在すると共に、前記周縁対向部にそれぞれ気密に熱溶着した前記樹脂介在体をも形成する保持体介在体形成工程である蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0026】
この製造方法では、保持体介在体形成工程で、タブ周囲間隙のみならず、対向部間隙をなして保持した周縁対向部同士の対向部間隙にも、溶融樹脂を注入して、周縁対向部同士間に介在すると共に、周縁対向部にそれぞれ気密に熱溶着し、タブ保持体とも気密に一体化した樹脂介在体を形成する。このため、タブ保持体及び樹脂介在体を有する蓄電デバイスを容易に形成できる。
【0027】
なお、保持体介在体形成工程では、タブ保持体及びこれと気密に一体化した樹脂介在体を形成するに当たって、タブ保持部を形成するのと樹脂介在体を形成するのを並行して同時期に行うほか、先にタブ保持部を形成しその後に樹脂介在体をタブ保持体と気密に一体化させつつ形成しても良い。これとは逆に、先に樹脂介在体を形成しその後にタブ保持部を樹脂介在体と気密に一体化させつつ形成しても良い。
また、保持体介在体形成工程は、周縁対向部同士の間隙の全域に亘って樹脂介在体を形成する場合のほか、一対のケース部材、タブ保持体及び保持部材で構成されたケース内に電解液を注液するなどの以降の工程を可能とするべく、周縁対向部同士の間隙のうち所定の一部には樹脂介在体を形成しない場合も含む。この場合には、電解液の注液が完了した後に、上述の所定の一部に樹脂を注入して封止する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態1に係る電池の外観を示す斜視図である。
図2】実施形態1,2に係る電池の縦断面図である。
図3】実施形態1に係る電池のうち、タブ電極端子の引き出し部分の構造を示し、図1におけるA-A’矢視断面図である。
図4】実施形態1,2に係り、粗化済みのタブ電極端子の斜視図である。
図5】実施形態1,2に係り、タブ電極端子の製造及び電池の製造手順を示すフローチャートである。
図6】実施形態1,2に係り、タブ電極端子を接続した電極体の平面図である。
図7】実施形態1,2に係り、電極体を一対のケース部材内に収容する様子を示す説明図である。
図8】実施形態1,2に係り、タブ周囲部に樹脂を注入してタブ保持体を形成する様子を示す説明図である。
図9】実施形態1に係り、タブ保持体を形成するに当たりタブ周囲部に樹脂を注入する手順を示す説明図である。
図10】実施形態2に係る電池の外観を示す斜視図である。
図11】実施形態2に係る電池のうち、タブ電極端子の引き出し部分の構造を示し、図10におけるB-B’矢視断面図である。
図12】実施形態2に係り、タブ保持体及び樹脂介在体を形成するに当たりタブ周囲部及び周縁対向部に樹脂を注入する手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、開示される技術の好適な実施形態等を適宜図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0030】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態を、各図を参照しつつ説明する。図1に本実施形態に係る電池(蓄電デバイス)1の外観を示す斜視図を、図2に電池1の縦断面図を示す。この電池1は、例えば、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両やドローン、各種機器に搭載されるいわゆるラミネート型のリチウムイオン二次電池である。
【0031】
この電池1は、ケース20と、このケース20の収容部20S内に収容され包囲された電極体10と、電極体10の正極集電部12に接続されケース20の正極周囲部20Pを通じて外部に延出するタブ正極端子30と、負極集電部13に接続されケース20の負極周囲部20Nを通じて外部に延出するタブ負極端子40と、正極周囲部20Pとタブ正極端子30との間に或いは負極周囲部20Nとタブ負極端子40との間に介在するタブ保持体50,60と、を備えている。
【0032】
このうちケース20は、ラミネートフィルムからなる一対のケース部材21,22の外周縁部21E,22Eを、互いに熱溶着してなる(図1図2図7参照)。具体的には、各々のケース部材21,22は、アルミニウム箔の内外にそれぞれ樹脂層を積層した金属箔ラミネートフィルムからなり、予め行ったプレス加工により、外周縁部21E,22Eに囲まれた平面方向の中央部分には、電極体10を収容する収容部20Sを構成する矩形凹状の収容凹部21S,22Sが設けられている。また、収容凹部21S,22Sの周囲を囲む外周縁部21E,22Eには、正極周囲部20Pを構成する正極タブ周囲部21ETP,22ETP、及び、負極周囲部20Nを構成する負極タブ周囲部21ETN,22ETNが、収容凹部21S,22Sから外側(図1図2図7において左右方向)に向けて延びる溝状に設けられている。ケース部材21,22をなす多層構造の金属箔ラミネートフィルムのうち、互いに対向させる対向層21IL,22ILは、互いに熱溶着可能な比較的低融点(融点が120~200℃、本実施形態では160℃)で絶縁性を有する金属接着性を有しない無変性のポリプロピレンで構成されている。このため、ケース部材21,22の外周縁部21E,22Eのうち周縁対向部21EM,22EM同士は、それらの対向層21IL,22ILを溶融させて相互に熱溶着させることにより、直接に、気密に且つ容易に熱溶着でき、直接溶着部20DMをなしている。
【0033】
但し、対向層21IL,22ILは,前述の金属接着性を有しないポリプロピレンからなるので、ケース部材21,22(具体的には、正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETN)を対向層21IL,22ILを介して無加工(具体的には粗化面33等を形成していない)の金属板などに熱溶着のみで気密に接合することは難しい。
【0034】
電極体10は、公知の電池における電極体を採用でき、特に限定されない。本実施形態では、電極体10(図2図7参照)は、多数の矩形板状の正極板15と負極板16とがセパレータ17を介して交互に積層された電極体本体部11と、正極板15の正極箔リード部15Lが重なった正極集電部12と、負極板16の負極箔リード部16Lが重なった負極集電部13と有するいわゆる積層型の電極体である。電極体10を収容したケース20内には、電極体10に含浸させた電解液19を含む。なお、電極体10として、帯状の正極板と帯状の負極板とを帯状のセパレータを介して捲回した、いわゆる捲回型の電極体を用いても良く、更には扁平状捲回型の電極体を用いることもできる。また、電解液19に代えて固体電解質を用いる固体電解質型電極体を用いることもできる。
【0035】
タブ正極端子30(図4参照)は、アルミニウムからなる矩形板状である。タブ正極端子30は、一方側(図4において右上側)に位置する正極接続端部31と、他方側(図4において左下側)に位置する正極外部端子部32とを有している。加えて、正極接続端部31から正極外部端子部32に向かう正極延出方向EH1(図4において左下方向)の途中において、正極延出方向EH1を囲む正極周方向RH1に全周に亘る環状に、具体的には正極周方向RH1に連なる4面に亘る環状に、かつ、帯状に粗化された粗化面(環帯状粗化面)33(図2図7では太線で示す)を有している。
【0036】
この粗化面33は、粗面化処理により凹凸を形成し表面粗度を未処理の他の部位(正極接続端部31,正極外部端子部32)よりも高めている。このため、粗化面33には、金属接着性樹脂のみならず、金属接着性を有しない無変性の熱可塑性絶縁性樹脂(本実施形態1では具体的には、無変性のポリプロピレン)からなる溶融樹脂MRを接触させてタブ保持体50をも直接気密に熱溶着できる。粗化面33の算術平均高さSaは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上30μm以下とするのが好ましい。この範囲であれば、タブ正極端子30の強度や導電性を損なわず、タブ保持体50が熱溶着する表面積を好適に増大させて、強固かつ気密にタブ保持体50となる溶融樹脂MRを粗化面33に熱溶着することができる。なお、本実施形態では、具体的には、算術平均高さSa=1.0μm程度としている。
【0037】
タブ正極端子30の正極接続端部31は、電極体10のうち、アルミニウム箔からなる多数の正極箔リード部15Lが重なる正極集電部12に超音波溶接によって接続されている。また、正極外部端子部32は、ケース20(ケース部材21,22)の外部(図1図2において右側の外部)に露出している。また、環帯状の粗化面33のうち、図4において破線で示す正極延出方向EH1の一部は、環帯状の被包囲部34をなしている。この被包囲部34は、後述するようにして、この被包囲部34を包囲するように正極周方向RH1の全周に亘って帯状に、タブ保持体50が直接気密に熱溶着する領域である(図2参照)。
【0038】
なお、本実施形態では、上述のように、帯状の粗化面33の幅方向(正極延出方向EH1に一致する)の一部のみを含む幅狭の帯状領域を被包囲部34とし、この被包囲部34を覆うように帯状の粗化面33より幅狭の帯状のタブ保持体50を熱溶着する。しかし、帯状の粗化面33の幅方向全部を含む幅広の帯状領域を被包囲部34とし、この被包囲部34上に帯状の粗化面33より幅広の帯状のタブ保持体50を形成しても良い。また、帯状の粗化面33の幅方向の一部を被包囲部34の一部が含むように帯状の被包囲部34を設定し、この被包囲部34上に帯状のタブ保持体50を形成しても良い。後述するタブ負極端子40の被包囲部44とタブ保持体60との関係も同様にすることができる。
【0039】
そして、このタブ保持体50をなす樹脂は、後述するように、ケース20の正極周囲部20P(ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP)にも気密に熱溶着しているので、タブ正極端子30は、タブ保持体50を介してケース20の正極周囲部20Pに気密に保持されている。
【0040】
一方、タブ負極端子40(図4参照)は、ニッケルメッキ銅からなる矩形板状である。このタブ負極端子40は、上述のタブ正極端子30と同様、一方側(図4において右上側)に位置する負極接続端部41と、他方側(図4において左下側)に位置する負極外部端子部42とを有している。加えて、負極接続端部41から負極外部端子部42に向かう負極延出方向EH2(図4において左下方向)の途中において、負極延出方向EH2を囲む負極周方向RH2に全周に亘る環状に、具体的には負極周方向RH2に連なる4面に亘る環状に、かつ、帯状に粗化された粗化面(環帯状粗化面)43(図2図7では太線で示す)を有している。
【0041】
この粗化面43も、前述の粗化面33と同じく、粗面化処理により凹凸を形成し表面粗度を未処理の他の部位(負極接続端部41,負極外部端子部42)よりも高めている。このため、粗化面43にも、金属接着性樹脂のみならず、金属接着性を有しない無変性のポリプロピレンからなる溶融樹脂MRを接触させてタブ保持体60をも直接気密に熱溶着できる。この粗化面43の算術平均高さSaも、特に限定されるものではないが、0.1μm以上30μm以下とするのが好ましい。この範囲であれば、タブ負極端子40の強度や導電性を損なわず、タブ保持体60が熱溶着する表面積を好適に増大させて、強固かつ気密にタブ保持体60を粗化面43に熱溶着することができる。なお、本実施形態では、具体的には、算術平均高さSa=1.0μm程度としている。
【0042】
タブ負極端子40の負極接続端部41は、電極体10のうち、銅箔からなる多数の負極箔リード部16Lが重なる負極集電部13に超音波溶接によって接続されている。また、負極外部端子部42は、ケース20(ケース部材21,22)の外部(図1図2において左側の外部)に露出している。また、環帯状の粗化面43のうち、図4において破線で示す負極延出方向EH2の一部をなす環帯状の被包囲部44には、これを包囲するように負極周方向RH2の全周に亘って帯状のタブ保持体60が直接気密に熱溶着している(図2参照)。
【0043】
そして、このタブ保持体60をなす樹脂は、後述するように、ケース20の負極周囲部20N(ケース部材21,22の負極タブ周囲部21ETN,22ETN)にも気密に熱溶着しているので、タブ負極端子40は、タブ保持体60を介してケース20の負極周囲部20Nに気密に保持されている。
【0044】
タブ保持体50,60は、複層構造を有し金属接着性を有する前述のタブ接着フィルムとは異なり、単一の樹脂材からなり、熱溶着可能で絶縁性を有するが金属接着性を有しない無変性のポリプロピレンで構成されている。このタブ保持体50,60に用いるポリプロピレンの融点は、120~160℃とすると良い。なお、前述のケース部材21,22をなすラミネートフィルムの対向層21IL,22ILに用いているポリプロピレンの融点と、タブ保持体50,60に用いるポリプロピレンの融点とは,概ね等しくすると良く、本実施形態では、融点160℃のポリプロピレンを用いている。
【0045】
なお、タブ保持体50,60は、後述するように、タブ正極端子30及びタブ負極端子40の被包囲部34,44と、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP或いは負極タブ周囲部21ETN,22ETNとの間に溶融樹脂MRを注入して形成してなる。
【0046】
本実施形態1の電池1では、タブ正極端子30及びタブ負極端子40にクロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、粗化面33,43を介して、このタブ正極端子30或いはタブ負極端子40に、安定して熱可塑性絶縁性樹脂からなるタブ保持体50,60を直接気密に熱溶着でき、安価な電池1とすることができる。しかも、タブ保持体50,60は、溶融樹脂MRを注入し固化してなるので、安価な電池1となる。その上、本実施形態1の電池1のタブ保持体50,60は、安価な無変性のポリプロピレンからなるので、さらに安価な電池1となる。
【0047】
なお、この電池1では、タブ保持体50,60をなすポリプロピレンの融点を120℃以上の160℃としているので、電池1の使用状態では、軟化せずに安定にタブ正極端子30及びタブ負極端子40をそれぞれ保持しつつケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNにそれぞれ保持されることができる。一方、ポリプロピレンの融点を160℃以下としているので、タブ保持体50,60を形成するべく溶融樹脂MRを注入するに当たり、高温を必要とせず、容易にタブ保持体50,60を形成することができる。
【0048】
またこの電池1では、従来と同様、ラミネートフィルムからなる一対のケース部材21,22の外周縁部21E,22Eのうち、正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETN以外で互いに対向する周縁対向部21EM,22EM同士を、直接、気密に熱溶着して直接溶着部20DMとしているので、容易にケース20を形成することができる。
【0049】
本実施形態1の電池1では、図1図2に示すように、タブ保持体50は、タブ正極端子30の被包囲部34を包囲すると共に、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPに挟持される被挟持部51を有している。加えて本実施形態では、タブ保持体50は、被挟持部51よりも正極延出方向EH1(図1図2において右側)に、即ち、正極タブ周囲部21ETP,22ETPの正極タブ周囲部端縁21ETPE,22ETPEよりも正極延出方向EH1に拡げて形成されて、タブ正極端子30を正極周方向RH1の全周に亘って帯状に覆う延出包囲部52を有している。これにより、図1において破線で示すように、正極タブ周囲部端縁21ETPE,22ETPEからタブ正極端子30に至る沿面距離SL1を延ばしている。
【0050】
同じくタブ保持体60は、タブ負極端子40の被包囲部44を包囲すると共に、ケース部材21,22の負極タブ周囲部21ETN,22ETNに挟持される被挟持部61を有している。加えてタブ保持体60は、被挟持部61よりも負極延出方向EH2(図1図2において左側)に、即ち、負極タブ周囲部21ETN,22ETNの負極タブ周囲部端縁21ETNE,22ETNEよりも負極延出方向EH2に拡げて形成されて、タブ負極端子40を負極周方向RH2の全周に亘って帯状に覆う延出包囲部62を有している。これにより、図1において破線で示すように、負極タブ周囲部端縁21ETNE,22ETNEからタブ負極端子40に至る沿面距離SL2を延ばしている。
【0051】
前述したように、ケース部材21,22は、アルミニウム箔を含む金属箔ラミネートフィルムからなる。このため、ケース部材21,22の製造の際のラミネートフィルム切断時に、ケース部材21,22の外周縁部21E,22Eの端縁にアルミニウム箔のバリが生じている場合がある。中でも、正極タブ周囲部21ETP,22ETPの正極タブ周囲部端縁21ETPE,22ETPEや負極タブ周囲部21ETN,22ETNの負極タブ周囲部端縁21ETNE,22ETNEにバリが生じていた場合には、バリがタブ正極端子30やタブ負極端子40に接触して、アルミニウム箔がタブ正極端子30やタブ負極端子40と導通する虞がある。この場合にはさらに、ケース部材21,22の外周縁部21E,22Eの端縁が図示しない他部材に接触した場合に、他部材がアルミニウム箔及びバリを介してタブ正極端子30やタブ負極端子40に導通してしまう虞がある。
【0052】
これに対し、本実施形態1の電池1では、タブ保持体50,60に延出包囲部52,62を有しているので、正極タブ周囲部端縁21ETPE,22ETPEや負極タブ周囲部端縁21ETNE,22ETNEにバリが生じていた場合でも、このバリがタブ正極端子30やタブ負極端子40に接触して、アルミニウム箔がタブ正極端子30やタブ負極端子40と導通するのを抑制することができる。
なお、この延出包囲部52,62の沿面距離SL1,SL2を、例えば、2~10mm確保すると良く、本実施形態では、例えば、沿面距離SL1=SL2=5mmとしている。
【0053】
タブ保持体50の被挟持部51は、タブ正極端子30の被包囲部34の全周を囲むように形成され、2つの主面34P1,34P2上に形成される2つの平板部51P1,51P2と、2つの側面34S1,34S2の正極幅方向WH1の外側WHO1に形成される2つの側方部51S1,51S2を有している。同様に、タブ保持体60の被挟持部61も被包囲部44の全周を囲むように形成され、2つの主面44P1,44P2上に形成される2つの平板部61P1,61P2と、2つの側面44S1,44S2の負極幅方向WH2の外側WHO2に形成される2つの側方部61S1,61S2を有している(図1図3参照)。なお、正極幅方向WH1は、正極延出方向EH1及び正極厚み方向TH1に直交する方向である。また、負極幅方向WH2は、負極延出方向EH2及び負極厚み方向TH2に直交する方向である。
【0054】
加えて、タブ保持体50の被挟持部51の2つの平板部51P1,51P2は、ケース部材21,22に予め成形した溝状の正極タブ周囲部21ETP,22ETPのうち、平坦部21ETPP,22ETPPにもそれぞれ気密に熱溶着している。また、2つの側方部51S1,51S2は、正極タブ周囲部21ETP,22ETPのうち、2対の斜面部21ETPS,22ETPSにもそれぞれ気密に熱溶着している。同様に、タブ保持体60の被挟持部61の2つの平板部61P1,61P2は、ケース部材21,22の溝状の負極タブ周囲部21ETN,22ETNのうち、平坦部21ETNP,22ETNPにもそれぞれ気密に熱溶着している。また、2つの側方部61S1,61S2は、負極タブ周囲部21ETN,22ETNのうち、2対の斜面部21ETNS,22ETNSにもそれぞれ気密に熱溶着している。
【0055】
なお本実施形態1では、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPのうち、正極幅方向WH1の外側WHO1の両端部分に30~70度(本実施形態1では概ね45度)の傾きで延びる斜面部21ETPS,22ETPSを設けている。このため、被挟持部51の側方部51S1,51S2は、外側WHO1に先細の形状、具体的には、概ね、外側WHO1に向けて窄まる三角柱形状となっている(図3参照)。上述の斜面部21ETPS,22ETPSを設けておくことで、後述するように溶融樹脂MRを注入してタブ保持体50を形成する際、斜面部21ETPS,22ETPSに沿って外側WHO1に向けて溶融樹脂MRを注入しやすく、斜面部21ETPS,22ETPSに気密に熱溶着した側方部50S1,50S2を形成しやすい。
【0056】
同様に、ケース部材21,22の負極タブ周囲部21ETN,22ETNのうち、負極幅方向WH2の外側WHO2の両端部分にも同様に30~70度の範囲内の概ね45度の傾きで延びる斜面部21ETNS,22ETNSを設けている。このため、被挟持部61の側方部61S1,61S2も、外側WHO2に先細の、概ね、外側WHO1に向けて窄まる三角柱形状となっている。この斜面部21ETNS,22ETNSを設けておくことで、後述するように溶融樹脂MRを注入してタブ保持体60を形成する際、斜面部21ETNS,22ETNSに沿って外側WHO2に向けて溶融樹脂MRを注入しやすく、斜面部21ETNS,22ETNSに気密に熱溶着した側方部60S1,60S2を形成しやすい。
【0057】
次に、本実施形態1の電池1の製造に用いる粗化済みのタブ正極端子30及びタブ負極端子40、及び、電池1の製造方法について、図4図9を参照して説明する。先ず、未粗化タブ正極端子30BRを用意し、粗化工程S1において、正極延出方向EH1の途中部分の表面に、公知の粗化処理を施し、正極周方向RH1の全周に亘り、粗化面33を形成する(図4参照)。同様に、未粗化タブ負極端子40BRを用意し、粗化工程S1により、粗化面43を形成する。粗化面33,43の算術平均高さSaを、0.1~30μmの範囲内,具体的には0.1μmとした。粗化手法としては、レーザ照射、エッチング処理、メッキ処理(例、粗化ニッケルメッキ、粗化銅メッキ、粗化銀メッキ等)、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、表面研磨等の公知の手法を採用できるが、本実施形態では、特開2022-28587号公報と同様のレーザ照射処理を行った。
【0058】
上述のタブ正極端子30及びタブ負極端子40(図4参照)のほか、公知の手法で製造した電極体10及び一対のケース部材21,22を用意する(図6図7参照)。そして、接続工程S11で、タブ正極端子30の正極接続端部31を電極体10の正極集電部12に超音波溶接で接続する。同様に、タブ負極端子40の負極接続端部41を電極体10の負極集電部13に超音波溶接で接続する。
【0059】
続く収容工程S12では、電極体10を一対のケース部材21,22内に収容する。具体的には、ケース部材21,22に設けておいた収容凹部21S,22Sの間に電極体10の電極体本体部11を位置させ、ケース部材21,22の周縁対向部21EM,22EM同士を近接させる。これと共に、ケース部材21,22の各々の正極タブ周囲部21ETP,22ETPに対して、タブ正極端子30の粗化面33がタブ正極端子30の正極厚み方向TH1(図7図8において上下方向)に重なり、タブ正極端子30が正極タブ周囲部21ETP,22ETP同士の間を通じて正極延出方向EH1(図7図8において右方)に延び、しかも、タブ正極端子30が正極タブ周囲部21ETP,22ETPから離間する姿勢となるように、ケース部材21,22内に電極体10を収容する。加えて、ケース部材21,22の各々の負極タブ周囲部21ETN,22ETNに対して、タブ負極端子40の粗化面43がタブ負極端子40の負極厚み方向TH2(図7図8において上下方向)に重なり、タブ負極端子40が負極タブ周囲部21ETN,22ETNN同士の間を通じて負極延出方向EH2(図7図8において左方)に延び、しかも、タブ負極端子40が負極タブ周囲部21ETN,22ETNから離間する姿勢となるように、ケース部材21,22内に電極体10を収容する。
【0060】
更に周縁熱溶着工程S13では、一対のケース部材21,22の外周縁部21E,22Eのうち、正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETN以外の部位である周縁対向部21EM,22EM同士を、公知のヒートシール手法により、直接気密に熱溶着して直接溶着部20DMを形成する(図1図3参照)。これにより、一対のケース部材21,22からなるケース20の収容部20S内に電極体10を収容する。
一方、正極タブ周囲部21ETP,22ETPとタブ正極端子30とは、また、負極タブ周囲部21ETN,22ETNとタブ負極端子40とは、タブ周囲間隙STをなして離間した状態となる。
【0061】
その後、保持体形成工程S14に進み、正極タブ周囲部21ETP,22ETPとタブ正極端子30の被包囲部34との間の、及び、負極タブ周囲部21ETN,22ETNとタブ負極端子40の被包囲部44の間のタブ周囲間隙STに、それぞれ、無変性のポリプロピレンを加熱し溶融させた溶融樹脂MRを注入し固化させて、前述のタブ保持体50,60を形成する。
【0062】
本実施形態1では、加熱して溶融樹脂MRを生成すると共に圧力を掛けて溶融樹脂MRを圧送し、吐出ノズルJ1aZ,J1bZ,J2aZ,J2bZの先端から溶融樹脂MRを吐出させる4つの樹脂注入装置J1a,J1b,J2a,J2bを用いて、溶融樹脂MRをタブ周囲間隙STに注入する(図8図9参照)。
【0063】
具体的には、図8に示すように、タブ周囲間隙STに差し入れた吐出ノズルJ1aZ,J1bZの先端から溶融樹脂MRを吐出させつつ、正極タブ周囲部21ETP,22ETPとタブ正極端子30との間のタブ周囲間隙STに溶融樹脂MRを注入し充填して、正極タブ周囲部21ETP,22ETPとタブ正極端子30の粗化面33を含む被包囲部34との間に気密にタブ保持体50の被挟持部51を形成する。また、タブ正極端子30上のうち正極タブ周囲部21ETP,22ETPよりも正極延出方向EH1(図8において右方)に延ばすように溶融樹脂MRを吐出し、タブ保持体50の延出包囲部52を形成する。かくして、タブ正極端子30の被包囲部34上にタブ保持体50が形成される。
【0064】
負極についても同様に、タブ周囲間隙STに差し入れた吐出ノズルJ2aZ,J2bZの先端から溶融樹脂MRを吐出させつつ、負極タブ周囲部21ETN,22ETNとタブ負極端子40との間のタブ周囲間隙STに溶融樹脂MRを注入し充填して、負極タブ周囲部21ETN,22ETNとタブ負極端子40の粗化面43を含む被包囲部44との間に気密にタブ保持体60の被挟持部61を形成する。また、タブ負極端子40上のうち負極タブ周囲部21ETN,22ETNよりも負極延出方向EH2(図8において左方)に延ばすように溶融樹脂MRを吐出し、タブ保持体60の延出包囲部62を形成する。かくして、タブ負極端子40の被包囲部44上にタブ保持体60が形成される。
【0065】
なお、本実施形態1の周縁熱溶着工程S13では、後にケース20の収容部20S内に電解液19を注入するため、周縁対向部21EM,22EMの一部同士(図示しない)を熱溶着しないでおく。そして、保持体形成工程S14の後に、この未溶着の部位から電解液19を注入し、その後に、未溶着部位を熱溶着して封止するなど公知の工程を行い、電池1を製造する。
【0066】
この電池1の製造方法では、保持体形成工程で、タブ正極端子30或いはタブ負極端子40の被包囲部34,44と一対のケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP或いは負極タブ周囲部21ETN,22ETNとの間のタブ周囲間隙STに、溶融樹脂MRを注入し固化して、タブ保持体50,60を形成する。このため、タブ正極端子30やタブ負極端子40にクロメート処理層などの化成処理層を設けてなくとも、タブ保持体50,60を、被包囲部34,44内の粗化面33,43に、安定して直接気密に熱溶着すると共に、正極タブ周囲部21ETP,22ETP或いは負極タブ周囲部21ETN,22ETNとも気密に熱溶着した安価な電池1を製造できる。また、タブ保持体50,60は、注入し固化した熱可塑性絶縁性樹脂(本実施形態1ではポリプロピレン)からなるので、前述の複層構造のタブ接着フィルムを用いる必要が無く、安価に電池1を製造できる。
【0067】
しかも、この電池1の製造方法では、収容工程S12の後で保持体形成工程S14に先立つ周縁熱溶着工程S13で直接溶着部20DMを形成しておく。これにより、保持体形成工程S14の前に、一対のケース部材21,22の外周縁部21E,22Eのうち周縁対向部21EM,22EM同士が直接溶着部20DMとなって互いに固定される。このため、外周縁部21E,22Eのうち残る正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNも概ね固定される。このため、保持体形成工程S14におけるタブ周囲間隙STへの溶融樹脂MRの注入の際に、正極タブ周囲部21ETP,22ETP或いは負極タブ周囲部21ETN,22ETNの位置ずれや変形が生じるのを抑制して、容易に溶融樹脂MRを注入することができる。
【0068】
なお、上述の溶融樹脂MRの注入及び固化によるタブ保持体50,60の形成に当たっては、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNへのタブ保持体50,60の熱溶着の容易性を考慮し、溶融樹脂MRとの温度差を小さくするべく、正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNを、タブ保持体50,60をなす樹脂の融点よりも低い温度(例えば60~100℃)に加温しておくと良い。また同様に、タブ正極端子30及びタブ負極端子40の被包囲部34,44へのタブ保持体50,60の熱溶着の容易性を考慮して、タブ正極端子30及びタブ負極端子40の被包囲部34,44も、タブ保持体50,60をなす樹脂の融点よりも低い温度(例えば60~100℃)に加温しておくと良い。
【0069】
また、タブ周囲間隙STにおいて、正極延出方向EH1或いは負極延出方向EH2に充分に溶融樹脂MRを注入し気密に充填して被挟持部51,61を形成するべく、さらには、延出包囲部52,62を形成するべく、図8の左方に破線で示すように、吐出ノズルJ1aZ,J1bZ,J2aZ,J2bZを正極延出方向EH1或いは負極延出方向EH2に移動させつつ溶融樹脂MRの注入、充填を行うと良い。
【0070】
さらには、図9において、破線の矢印で示す進行経路Z1aに沿って吐出ノズルJ1aZを進行させると共に、一点鎖線の矢印で示す進行経路Z1bに沿って吐出ノズルJ1bZを同期して進行させて、タブ周囲間隙STに溶融樹脂MRを注入し充填して、タブ保持体50を形成するとよい。即ち、まず、タブ周囲間隙STのうち、タブ正極端子30の被包囲部34の側面34S1よりも正極幅方向WH1の外側WHO1(図9において右方)に位置する側方間隙STS1に2つの吐出ノズルJ1aZ,J1bZを挿入し、溶融樹脂MRを吐出させて、側方間隙STS1に溶融樹脂MRを注入し充填する。これにより、溶融樹脂MRをタブ正極端子30の被包囲部34の側面34S1に気密に熱溶着させると共に、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPのうち、斜面部21ETPS,22ETPSにも気密に熱溶着させる。なお、吐出ノズルJ1aZ,J1bZを側方間隙STS1内で移動させて、側方間隙STS1内の各所に溶融樹脂MRが届くようにするとより好ましい。
【0071】
その後、破線の矢印で示す進行経路Z1aに沿って、一方の吐出ノズルJ1aZを進行させ、タブ周囲間隙STのうち、被包囲部34の主面34P1とケース部材21の正極タブ周囲部21ETPの平坦部21ETPPとの間の平板間隙STP1に溶融樹脂MRを注入し充填する。そして、吐出ノズルJ1aZは、この平板間隙STP1を経由して、タブ周囲間隙STのうち、被包囲部34の側面34S2よりも正極幅方向WH1の外側WHO1(図9において左方)に位置する側方間隙STS2に至る。これにより、溶融樹脂MRをタブ正極端子30の被包囲部34の主面34P1に気密に熱溶着させると共に、ケース部材21の正極タブ周囲部21ETPの平坦部21ETPPにも気密に熱溶着させる。さらに吐出ノズルJ1aZの進行に同期して、他方の吐出ノズルJ1bZを、破線の矢印で示す進行経路Z1aに沿って進行させ、タブ周囲間隙STのうち、被包囲部34の主面34P1とケース部材22の正極タブ周囲部22ETPの平坦部22ETPPとの間の平板間隙STP2に溶融樹脂MRを注入し充填する。そして、吐出ノズルJ1bZは、この平板間隙STP2を経由して、側方間隙STS2に至る。これにより、溶融樹脂MRを被包囲部34の主面34P2に気密に熱溶着させると共に、正極タブ周囲部22ETPの平坦部22ETPPにも気密に熱溶着させる。
【0072】
その後は、2つの吐出ノズルJ1aZ,J1bZで、側方間隙STS2に溶融樹脂MRを注入し充填する。これにより、溶融樹脂MRをタブ正極端子30の側面34S2に気密に熱溶着させると共に、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPの斜面部21ETPS,22ETPSにも気密に熱溶着させる。かくして、タブ保持体50を形成する。なお、タブ保持体60の形成においても、同様の進行経路Z2a,Z2bに沿って吐出ノズルJ2aZ,J2bZを進行させ、タブ周囲間隙ST全体に溶融樹脂MRを注入し充填する。
【0073】
このようにすると、側方間隙STS1,STS2に溶融樹脂MRを偏り無く注入し気密に充填できる。また、平板間隙STP1と平板間隙STP2とに並行して溶融樹脂MRを注入し充填できるので、溶融樹脂MRの注入に伴うケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPの平坦部21ETPP,22ETPPが、正極厚み方向TH1に偏るように移動して、タブ保持体の被挟持部51のうち平板部51P1と平板部51P2の一方が厚く他方が薄くなるなど、両者間で厚さが不均一になるのを抑制できる。
【0074】
なお、図9において二点鎖線で示す吸引面SU1Fが平坦な吸引板SU1で、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPの平坦部21ETPP,22ETPPを吸引し、平坦部21ETPP,22ETPPの正極厚み方向TH1(図9において上下方向)の位置を固定する。この状態で、上述のように吐出ノズルJ1aZ,J1bZを用いて、タブ周囲間隙STに溶融樹脂MRを注入し充填し固化させてタブ保持体50を形成するのも好ましい。さらに、平坦部21ETPP,22ETPPの固定と共に加温も行えるよう、吸引板SU1の吸引面SU1Fを加熱するヒータを吸引板SU1に内蔵するか別途設けると、より好ましい。タブ保持体60の形成においても同様にすると良い。
【0075】
上述の実施形態1では4本の吐出ノズルJ1aZ等を用いた例を示したが、溶融樹脂MRによってタブ保持体50,60を形成するに当たって、用いる吐出ノズルJ1aZ等の数や移動のさせ方などには、多数のパターンが考えられ、適切にタブ保持体50,60を形成できる適宜の手法を採用できる。
【0076】
(実施形態2)
先ず本実施形態2の電池101(図10図11参照)について説明する。なお、本実施形態2の各図では、実施形態1と同様な部分に同じ符号を付す。また、異なる部分を中心に説明し、実施形態1と同様な部分については、説明を省略或いは簡略化する。実施形態1の電池1(図1参照)では、前述したように、ケース部材21,22の周縁対向部21EM,22EM同士を直接気密に熱溶着して直接溶着部20DMとした。
これに対し、本実施形態2の電池101は、電池1とほぼ同形状であるが、ケース部材21,22の周縁対向部21EM,22EM同士の間に、周縁対向部21EM,22EMに気密に熱溶着した一対の樹脂介在体170を有する一対の樹脂介在部120を設けた点で異なる。なお、一対の樹脂介在体170は、2つのタブ保持体50,60の間を架け渡すように形成されており、各々のタブ保持体50,60とも気密に一体化している。
【0077】
本実施形態2の電池101でも、タブ正極端子30及びタブ負極端子40にクロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、粗化面33,43にタブ保持体50,60を、安定して直接気密に熱溶着でき、安価な電池1とすることができる。
【0078】
加えて本実施形態2の電池101では、ケース部材21,22の周縁対向部21EM,22EM同士を、直接熱溶着しないで、樹脂介在体170を介して気密に熱溶着した樹脂介在部120RMとしている。このため、周縁対向部21EM,22EM同士を直接熱溶着した場合(実施形態1)に比して、樹脂介在体170を介して確実に対向する周縁対向部21EM,22EMとの間を確実に気密に接続できる。なお、本実施形態2の電池101は、樹脂介在体170もタブ保持体50,60と同じポリプロピレンからなるので、樹脂介在体170を有していても安価な電池101にできる。
【0079】
前述の実施形態1の電池1の製造では、保持体形成工程S14に先立つ周縁熱溶着工程S13で、ケース部材21,22の外周縁部21E,22Eのうち、周縁対向部21EM,22EM同士を直接気密に熱溶着して直接溶着部20DMを形成した。そしてその後、保持体形成工程S14で、タブ正極端子30及びタブ負極端子40の周囲のタブ周囲間隙STに溶融樹脂MRを注入し充填して、タブ保持体50,60を形成した。
【0080】
これに対し本実施形態2の電池101の製造では、図5に破線で示すように、実施形態1における周縁熱溶着工程S13及び保持体形成工程S14に代えて、保持体介在体形成工程S23を有している。即ち、タブ周囲間隙STに溶融樹脂MRを注入し固化してタブ保持体50,60を形成するのと並行して、或いはこれに相前後して、対向部間隙DMをなして保持した周縁対向部21EM,22EM同士の対向部間隙DMにも溶融樹脂MRを注入して、周縁対向部21EM,22EM同士間に介在すると共に、周縁対向部21EM,22EMにそれぞれ気密に熱溶着した一対の樹脂介在体170をも形成する。なお、以下では、保持体介在体形成工程S23において、先にタブ保持体50,60を形成した後、続いて樹脂介在体170を形成する手順を採用した場合を説明する。但し、保持体介在体形成工程において、先に樹脂介在体170を形成した後、続いてタブ保持体50,60を形成する手順を採用しても良い。また、タブ保持体50,60と樹脂介在体170とを並行して形成する手順を採用することもできる。
【0081】
まず実施形態1と同様にして、粗化工程S1で粗化されたタブ正極端子30及びタブ負極端子40を用意し、接続工程S11で、電極体10に接続する(図6参照)。その後、収容工程S22で、実施形態1の収容工程S12と同様にして、電極体10を一対のケース部材21,22内に収容する(図7図12参照)。但し、収容工程S12でケース部材21,22の周縁対向部21EM,22EM同士を近接させた実施形態1(図9参照)とは異なり、本実施形態2では、図12に示すように、ケース部材21,22の周縁対向部21EM,22EM同士を離間させ、対向部間隙DMを空けた状態にケース部材21,22を保持する。なお、タブ正極端子30の被包囲部34と一対のケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPとの間に、及び、タブ負極端子40の被包囲部44と一対のケース部材21,22の負極タブ周囲部21ETN,22ETNとの間に、タブ周囲間隙STを設ける点は、実施形態1と同様である。
【0082】
ケース部材21,22の周縁対向部21EM,22EMを対向部間隙DMを空けた状態に保持する手法としては、例えば、図12において破線で示す吸引面SU2Fが平坦な吸引板SU2で、ケース部材21,22の周縁対向部21EM,22EMを吸引し、対向部間隙DMを空けて周縁対向部21EM,22EMの正極厚み方向TH1(図12において上下方向)の位置を固定する手法が挙げられる。なお、周縁対向部21EM,22EMの保持と共に加温も行えるよう、吸引板SU2の吸引面SU2Fを加熱するヒータを吸引板SU2に内蔵するか別途設けるとより好ましい。
【0083】
その後、本実施形態2の保持体介在体形成工程S23では、先ず、実施形態1における保持体形成工程S14と同様に、樹脂注入装置J1a等の吐出ノズルJ1aZ等を進行経路Z1a等に沿って進行させて、正極タブ周囲部21ETP,22ETPとタブ正極端子30の粗化面33との間の、及び、負極タブ周囲部21ETN,22ETNとタブ負極端子40の粗化面33,43を含む被包囲部34,44との間のタブ周囲間隙STに、それぞれ、実施形態1で用いたのと同じ熱可塑性絶縁性樹脂(具体的には、無変性のポリプロピレン)を加熱し溶融させた溶融樹脂MRを注入し固化させる。かくして、粗化面33,43及び正極タブ周囲部21ETP,22ETP或いは負極タブ周囲部21ETN,22ETNに気密に熱溶着したタブ保持体50,60を形成する(図8図12参照)。
【0084】
なお、実施形態1と同様、実施形態2でも、図12において二点鎖線で示す吸引面SU1Fが平坦な吸引板SU1で、正極タブ周囲部21ETP,22ETPの平坦部21ETPP,22ETPPを吸引し、平坦部21ETPP,22ETPPの正極厚み方向TH1の位置を固定する。この状態で、吐出ノズルJ1aZ,J1bZを用いて、タブ周囲間隙STに溶融樹脂MRを注入し充填し固化させてタブ保持体50を形成すると良い。加えて、平坦部21ETPP,22ETPPの固定と共に加温も行えるよう、吸引板SU1の吸引面SU1Fを加熱するヒータを吸引板SU1に内蔵するか別途設けるとより好ましい。タブ保持体60についても同様にすると良い。
【0085】
上述のタブ周囲間隙STへの溶融樹脂MRの注入に引き続いて、同じ熱可塑性絶縁性樹脂(具体的には、無変性のポリプロピレン)からなる溶融樹脂MRを、樹脂注入装置J1a等の吐出ノズルJ1aZ等を用いて、ケース部材21,22の周縁対向部21EM,22EM同士の対向部間隙DMにも注入し充填して、タブ保持体50,60とも気密に一体化すると共に、周縁対向部21EM,22EMにそれぞれ気密に熱溶着した一対の樹脂介在体170をそれぞれ形成する。
【0086】
この電池101の製造方法では、保持体介在体形成工程S23で、タブ周囲間隙STに溶融樹脂MRを注入し固化して、被包囲部34,44内の粗化面33,43とも正極タブ周囲部21ETP,22ETP或いは負極タブ周囲部21ETN,22ETNとも熱溶着したタブ保持体50,60を形成する。このため、タブ正極端子30やタブ負極端子40にクロメート処理層などの化成処理層を設けてなくとも、タブ保持体50,60を、被包囲部34,44内の粗化面33,43に、安定して直接気密に熱溶着した安価な電池1を製造できる。また、タブ保持体50,60は、注入し固化した熱可塑性絶縁性樹脂(本実施形態2でもポリプロピレン)からなるので、前述の複層構造のタブ接着フィルムを用いる必要が無く、安価に電池1を製造できる。
【0087】
さらにこの電池101の製造方法では、保持体介在体形成工程S23で、溶融樹脂の注入により、タブ保持体のみならず、周縁対向部21EM,22EMにそれぞれ気密に熱溶着し、タブ保持体50,60とも気密に一体化した樹脂介在体170を形成する。このため、タブ保持体50,60及び樹脂介在体170を有する電池101を容易に形成できる。
【0088】
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、ここに開示されるラミネート型の蓄電デバイスの一例を示すものであり、ここに開示される技術を限定することを意図したものではない。即ち、本発明は実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1,2の電池1,101では、タブ正極端子30の正極延出方向EH1とタブ負極端子40の負極延出方向EH2とを、左右逆方向(図1図2図10等参照)とした例を示した。しかし、これに限定されず、例えば、正極延出方向EH1と負極延出方向EH2とが同方向となるように、タブ正極端子30とタブ負極端子40とを並べて配置することもできる。また、正極延出方向EH1と負極延出方向EH2とが90度の角度をなすように、タブ正極端子30とタブ負極端子40とを配置することもできる。
【符号の説明】
【0089】
1,101 電池(蓄電デバイス)
10 電極体
12 正極集電部(集電部)
13 負極集電部(集電部)
20DM 直接溶着部
120RM 樹脂介在部
21,22 ケース部材
21IL,22IL 対向層
21S,22S 収容凹部
21E,22E 外周縁部
21ETP,22ETP 正極タブ周囲部(タブ周囲部)
21ETN,22ETN 負極タブ周囲部(タブ周囲部)
21ETPE,22ETPE 正極タブ周囲部端縁(タブ周囲部端縁)
21ETNE,22ETNE 負極タブ周囲部端縁(タブ周囲部端縁)
21EM,22EM 周縁対向部(タブ周囲部以外の部位)
30 タブ正極端子(タブ電極端子)
30BR 未粗化タブ正極端子
31 正極接続端部(接続端部)
32 正極外部端子部(外部端子部)
40 タブ負極端子(包囲体付きタブ電極端子)
40BR 未粗化タブ負極端子
41 負極接続端部(接続端部)
42 負極外部端子部(外部端子部)
33,43 粗化面(環帯状粗化面)
34,44 被包囲部
EH1 正極延出方向(タブ延出方向)
RH1 正極周方向(タブ周方向)
TH1 正極厚み方向(タブ厚み方向)
WH1 正極幅方向(タブ幅方向)
WHO1 (正極幅方向のうち)外側
EH2 負極延出方向(タブ延出方向)
RH2 負極周方向(タブ周方向)
TH2 負極厚み方向(タブ厚み方向)
WH2 負極幅方向(タブ幅方向)
WHO2 (負極幅方向のうち)外側(タブ幅方向)
MR 溶融樹脂
ST タブ周囲間隙
STP1,STP2 (タブ周囲間隙の)平板間隙
STS1,STS2 (タブ周囲間隙の)側方間隙
DM 対向部間隙
50,60,150,160 タブ保持体
51,61 被挟持部
52,62 延出包囲部
SL1,SL2 沿面距離
170 樹脂介在体
S1 粗化工程
S11 接続工程
S12,S22 収容工程
S13 周縁熱溶着工程
S14 保持体形成工程
MR 溶融樹脂
S23 保持体介在体形成工程(保持体形成工程)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12