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特開2024-42526蓄電デバイス、包囲体付きタブ電極端子、蓄電デバイスの製造方法、及び、包囲体付きタブ電極端子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042526
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】蓄電デバイス、包囲体付きタブ電極端子、蓄電デバイスの製造方法、及び、包囲体付きタブ電極端子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20240321BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240321BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20240321BHJP
   H01M 50/178 20210101ALI20240321BHJP
   H01M 50/557 20210101ALI20240321BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240321BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20240321BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240321BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20240321BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20240321BHJP
【FI】
H01M50/184 C
H01M50/105
H01M50/531
H01M50/178
H01M50/557
H01M50/193
H01G11/80
H01G11/84
H01G11/74
H01M50/564
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147304
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】土屋 詔一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA12
5E078AB06
5E078EA04
5E078EA09
5E078EA12
5E078EA14
5E078EA15
5E078HA02
5E078HA12
5E078HA25
5E078KA04
5E078KA05
5E078KA06
5H011AA09
5H011AA10
5H011CC10
5H011DD13
5H011HH02
5H011JJ08
5H011KK04
5H043AA02
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA08
5H043DA02
5H043HA12D
5H043HA32D
5H043JA09D
5H043KA01D
5H043LA23D
5H043LA41D
(57)【要約】
【課題】安価で気密性良好な蓄電デバイス、これに用いる包囲体付きタブ電極端子、及び、安価で気密性良好な蓄電デバイスの製造方法、及び、包囲体付きタブ電極端子の製造方法の提供。
【解決手段】蓄電デバイス1は、電極体10と、ラミネートフィルムからなり、電極体を包囲する一対のケース部材21と、接続端部31が一対のケース部材内で電極体の集電部に導通接続し、ケース部材同士の間を延出し、外部端子部32がケース部材の外部に露出するタブ電極端子30であって、接続端部から外部端子部に向けて延出するタブ延出方向EH1の途中に、タブ周方向RH1に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面33を有するタブ電極端子30と、熱可塑性絶縁性樹脂からなり、環帯状粗化面に直接気密に熱溶着すると共に、ケース部材の各々の外周縁部21E,22Eのうち、タブ電極端子の周囲に位置させるタブ周囲部21ETP,22ETPともそれぞれ気密に熱溶着し、タブ周囲部にタブ電極端子を保持させるタブ保持体50と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電部を有する電極体と、
ラミネートフィルムからなり、前記電極体を包囲する一対のケース部材と、
金属からなり、接続端部が一対の前記ケース部材内で前記電極体の前記集電部に導通接続し、一対の前記ケース部材同士の間を延出し、外部端子部が一対の前記ケース部材の外部に露出するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けて延出するタブ延出方向の途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、
熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着すると共に、一対の前記ケース部材の各々の外周縁部のうち、前記タブ電極端子の周囲に位置させるタブ周囲部ともそれぞれ気密に熱溶着し、前記タブ周囲部に前記タブ電極端子を保持させるタブ保持体と、備える
蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスであって、
一対の前記ケース部材は、金属箔を含む金属箔ラミネートフィルムからなり、
前記タブ保持体は、
一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち前記タブ周囲部のタブ周囲部端縁よりも前記タブ延出方向に延出して、前記タブ電極端子を前記タブ周方向の全周に亘って帯状に覆い、前記タブ周囲部端縁から前記タブ電極端子に至る沿面距離を延ばす延出包囲部を有する
蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電デバイスであって、
前記タブ保持体は、
前記熱可塑性絶縁性樹脂からなり、予め成形したタブ包囲体を、一対の前記ケース部材の前記タブ周囲部に気密に熱溶着したものである
蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電デバイスであって、
前記タブ保持体をなす前記熱可塑性絶縁性樹脂は、融点が120~200℃である
蓄電デバイス。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電デバイスであって、
前記タブ保持体は、無変性の熱可塑性絶縁性樹脂からなる単一の樹脂材で構成されてなる
蓄電デバイス。
【請求項6】
蓄電デバイスの電極体の集電部に導通接続する接続端部及び外部に露出する外部端子部を有するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けてタブ延出方向に延びる途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、
熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着したタブ包囲体と、を備える
包囲体付きタブ電極端子。
【請求項7】
請求項6に記載の包囲体付きタブ電極端子であって、
前記タブ包囲体は、
前記タブ電極端子よりも、前記タブ延出方向及びタブ厚み方向に直交するタブ幅方向の外側の側方部を、前記タブ幅方向の外側に先細で、前記タブ幅方向となす先端角度が70度以下のテーパ形状としてなる
包囲体付きタブ電極端子。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の包囲体付きタブ電極端子であって、
前記タブ包囲体をなす前記熱可塑性絶縁性樹脂は、融点が120~200℃である
包囲体付きタブ電極端子。
【請求項9】
集電部を有する電極体と、
ラミネートフィルムからなり、前記電極体を包囲する一対のケース部材と、
金属からなり、接続端部が一対の前記ケース部材内で前記電極体の前記集電部に導通接続し、前記一対の前記ケース部材同士の間を延出し、外部端子部が一対の前記ケース部材の外部に露出するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けて延出するタブ延出方向の途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、
熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着すると共に、一対の前記ケース部材の各々の外周縁部のうち、前記タブ電極端子の周囲に位置させるタブ周囲部ともそれぞれ気密に熱溶着し、前記タブ周囲部に前記タブ電極端子を保持させるタブ保持体と、備える
蓄電デバイスの製造方法であって、
前記電極体の前記集電部に、請求項6又は請求項7に記載の包囲体付きタブ電極端子の前記接続端部を接続する接続工程と、
一対の前記ケース部材の各々の前記タブ周囲部に前記タブ包囲体が近接し、かつ、前記タブ電極端子が前記タブ周囲部を通じて前記タブ延出方向に延びる姿勢に、前記電極体を一対の前記ケース部材内に収容する収容工程と、
一対の前記ケース部材の前記タブ周囲部に前記タブ包囲体を熱溶着して前記タブ保持体を形成する熱溶着工程と、を備える
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項10】
蓄電デバイスの電極体の集電部に導通接続する接続端部及び外部に露出する外部端子部を有するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けてタブ延出方向に延びる途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、
熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着したタブ包囲体と、を備える
包囲体付きタブ電極端子の製造方法であって、
前記タブ電極端子の前記タブ延出方向の途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化して前記環帯状粗化面を形成する粗化工程と、
前記タブ電極端子の前記被包囲部を、前記タブ周方向の全周に亘って帯状に覆い、前記環帯状粗化面と直接気密に熱溶着した前記タブ包囲体を形成する形成工程と、を備える
包囲体付きタブ電極端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス、これに用いる包囲体付きタブ電極端子、これを用いた蓄電デバイスの製造方法、及び、包囲体付きタブ電極端子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池などの蓄電デバイスを製造するに当たり、ラミネートフィルムからなる一対のケース部材内に電極体を収容し、ケース部材の周囲部分同士をヒートシールすると共に、電極体の正極電位や負極電位をラミネートフィルム同士の接合部分からタブ電極端子により外部に取りだした、いわゆるラミネート型の蓄電デバイスが知られている。このようなラミネート型蓄電デバイスでは、ラミネートフィルムの内側面をなす熱融着性樹脂層と金属からなるタブ電極端子(金属端子)との接着性を高めるため、ラミネートフィルムとタブ電極端子との間に、マレイン酸変性などの変性処理により金属接着性とした金属接着性樹脂の層を表面に有する複層構造のタブ接着フィルムを介在させて、ラミネートフィルムとタブ接着フィルム及びタブ接着フィルムとタブ電極端子とを気密に熱溶着することが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
但し、タブ電極端子に金属接着性樹脂の層を気密に熱溶着しこれを維持するためには、タブ電極端子に熱溶着させる樹脂を金属接着性とするのみならず、リン酸クロム、クロム酸などを用いたクロメート処理層などの化成処理層をタブ電極端子表面に形成しておくことが求められる(例えば、特許文献2参照)ことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-95833号公報
【特許文献2】特開2007-95654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多量のタブ電極端子の表面に、前述のクロメート処理層などの化成処理層を形成する処理を安定に行うのは容易ではなく、コスト高になりやすい。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、安価で気密性良好な蓄電デバイス、これに用いる包囲体付きタブ電極端子、及び、安価で気密性良好な蓄電デバイスの製造方法、及び、包囲体付きタブ電極端子の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、集電部を有する電極体と、ラミネートフィルムからなり、前記電極体を包囲する一対のケース部材と、金属からなり、接続端部が一対の前記ケース部材内で前記電極体の前記集電部に導通接続し、一対の前記ケース部材同士の間を延出し、外部端子部が一対の前記ケース部材の外部に露出するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けて延出するタブ延出方向の途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着すると共に、一対の前記ケース部材の各々の外周縁部のうち、前記タブ電極端子の周囲に位置させるタブ周囲部ともそれぞれ気密に熱溶着し、前記タブ周囲部に前記タブ電極端子を保持させるタブ保持体と、備える蓄電デバイスである。
【0008】
この蓄電デバイスでは、被包囲部に環帯状粗化面を含むタブ電極端子を用い、タブ保持体は被包囲部を覆い環帯状粗化面に直接気密に熱溶着している。即ち、タブ電極端子に環帯状粗化面を設けているので、クロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、この環帯状粗化面によりタブ電極端子に熱可塑性絶縁性樹脂からなるタブ保持体を直接気密に熱溶着させることができる。しかも、このタブ保持体は、一対のケース部材のタブ周囲部ともそれぞれ気密に熱溶着している。このため、タブ電極端子を、タブ保持体を介してケース部材のタブ周囲部で気密に保持した蓄電デバイスとすることができる。
【0009】
「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタなどが挙げられる。また電極体に電解液を含浸させて用いる蓄電デバイスのほか、固体電解質電池のように電解液を要しない蓄電デバイスを含まれる。
「電極体」としては、円柱型或いは扁平型の捲回型電極体、積層型電極体を挙げることができる。電極体の集電部は、捲回型電極体では、軸線方向の一方側に或いは一方側と他方側にそれぞれ設けられる。一方、積層型電極体では、積層方向に直交する方向のうち、適宜の方向に集電部を設けたものを採用できる。
【0010】
一対の「ケース部材」は、ラミネートフィルムからなる。一対のケース部材には、両方のケース部材に電極体を収容して包囲する収容凹部をそれぞれ設けたいわゆる両絞りタイプのケース部材も、一方のケース部材にのみ収容凹部を設け他方のケース部材は平板状としたいわゆる片絞りタイプのケース部材も含まれる。また、一対のケース部材は、各々独立したケース部材とするほか、1枚或いは筒状のラミネートフィルムからなり、連結部を介してケース部材同士が相互に連結されており、連結部を折り曲げケース部材同士を対向させて用いる一対一体型のケース部材としてもよい。
また、ケース部材をなす「ラミネートフィルム」は、複数の樹脂フィルムを積層したフィルムである。ガスバリア性や耐湿性を向上させるべく、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を内層に配置した金属箔ラミネートフィルムを採用することもできる。中でも、コストや軽量性、変形容易性の観点から、アルミニウム箔を用いるのが好適である。
【0011】
「タブ電極端子」は、接続する電極体の集電部の材質、電位等を考慮して選択すると良く、アルミニウム、銅、ニッケルメッキ銅などの金属からなり、接続端部と外部端子部とを有するほか、これらの途中部分には、環帯状粗化面を有している。タブ電極端子は、矩形板状など、接続端部から外部端子部まで直線状に延びる形態を採用し得るが、接続端部から外部端子部までに至る途中で屈曲していたり、幅寸法が変化していても良い。
【0012】
「環帯状粗化面」は、クロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、熱可塑性絶縁性樹脂からなる樹脂材を安定して直接気密に熱溶着できる粗化面である。例えば、粗化面の算術平均高さSaが0.1μm~30μmの粗化面を好適に採用できる。このような粗化面では、タブ電極端子の強度および導電性を損なわず、タブ保持体をなす樹脂が直接熱溶着する表面積を好適に増大させて良好に固着し気密性を保つことができる。粗化面の算術平均高さSaは、例えばレーザ顕微鏡による観察により測定することができる。レーザ顕微鏡としては、例えば、株式会社キーエンス製のVK-X1000を用いることができる。
【0013】
また、「タブ保持体」をなす熱可塑性絶縁性樹脂は、タブ電極端子の環帯状粗化面に直接気密に熱溶着可能な樹脂であれば良く、金属接着性を有していても、金属接着性を有しなくても良い。金属接着性を有する熱可塑性絶縁性樹脂としては、無水マレイン酸変性等の酸変性、樹脂に対する官能基導入などの変性処理を行って、金属接着性を付与した金属接着性ポリエチレン(PE)や金属接着性ポリプロピレン(PP)など金属接着性ポリオレフィンが挙げられる。一方、金属接着性を有しない熱可塑性絶縁性樹脂としては、熱可塑性かつ絶縁性で、酸変性や官能基導入などの変性処理を行っていない無変性の樹脂が挙げられる。具体的には、例えば、無変性のポリエチレン(PE)や無変性のポリプロピレン(PP)など無変性のポリオレフィン、無変性のポリエチレンテレフタラート(PET)など無変性のポリエステル、無変性のポリスチレン、無変性のポリ塩化ビニル(PVC)などが挙げられる。「タブ保持体」は、複層のフィルムを積層した積層構造などを有していても良い。複数の樹脂材からなっていても良い。また、積層構造などを有さない単一の樹脂材からなっていても良く、この場合には、より安価なタブ保持体とすることができる。
【0014】
(2)(1)の蓄電デバイスであって、一対の前記ケース部材は、金属箔を含む金属箔ラミネートフィルムからなり、前記タブ保持体は、一対の前記ケース部材の前記外周縁部のうち前記タブ周囲部のタブ周囲部端縁よりも前記タブ延出方向に延出して、前記タブ電極端子を前記タブ周方向の全周に亘って帯状に覆い、前記タブ周囲部端縁から前記タブ電極端子に至る沿面距離を延ばす延出包囲部を有する蓄電デバイスとすると良い。
【0015】
金属箔ラミネートフィルムは、フィルムの切断時に、フィルム端面に金属箔のバリが生じる場合がある。従って、フィルム端面となるケース部材の外周端縁にも金属箔のバリが生じている場合がある。中でも、ケース部材のタブ周囲部のタブ周囲部端縁にバリが生じていた場合には、バリが正極電位或いは負極電位のタブ電極端子に接触して、タブ電極端子とは絶縁されているはずの金属箔がタブ電極端子と導通する虞がある。この場合には、さらに、ケース部材の外周端縁が他部材に接触した場合に、他部材が金属箔ラミネートフィルムの金属箔及びバリを介してタブ電極端子に導通してしまう虞がある。
【0016】
これに対し、上述の蓄電デバイスでは、タブ保持体が延出包囲部を有しているので、ケース部材のタブ周囲部のタブ周囲部端縁に金属箔のバリが生じていた場合でも、このバリがタブ電極板に接触して金属箔がタブ電極端子と導通するのを抑制できる。なお、この延出包囲部の沿面距離を、例えば、2~10mm確保すると良い。
【0017】
(3)さらに(1)又は(2)の蓄電デバイスであって、前記タブ保持体は、前記熱可塑性絶縁性樹脂からなり、予め成形したタブ包囲体を、一対の前記ケース部材の前記タブ周囲部に気密に熱溶着したものである蓄電デバイスとすると良い
【0018】
この蓄電デバイスのタブ保持体は、予め成形したタブ包囲体をケース部材のタブ周囲部に熱溶着したものであるので、タブ保持体を所定の形態に揃えやすい。
【0019】
(4)さらに(1)~(3)のいずれかに記載の蓄電デバイスであって、前記タブ保持体をなす前記熱可塑性絶縁性樹脂は、融点が120~200℃である蓄電デバイスとすると良い。
【0020】
この蓄電デバイスでは、タブ保持体をなす熱可塑性絶縁性樹脂の融点を120℃以上としているので、蓄電デバイスの通常使用状態では、軟化せずに安定にタブ電極端子を保持しつつケース部材のタブ周囲部に保持されることができる。一方、熱可塑性絶縁性樹脂の融点を200℃以下としているので、タブ保持体を形成したり、タブ電極端子の環帯状粗化面に熱溶着させたり、ラミネートフィルムからなるケース部材のタブ周囲部と熱溶着するに当たり、高温を必要とせず、容易に加工することができる。
【0021】
(5)さらに(1)~(4)のいずれかに記載の蓄電デバイスであって、前記タブ保持体は、無変性の熱可塑性絶縁性樹脂からなる単一の樹脂材で構成されてなる蓄電デバイスとすると良い。
【0022】
この蓄電デバイスのタブ保持体は、無変性の熱可塑性絶縁性樹脂からなり、しかも、単一の樹脂材で構成されている。このため、比較的高価な、マレイン酸変性などの変性を施した金属接着性を有する熱可塑性絶縁性樹脂を用いた樹脂材や複層フィルムを用いる場合に比して、安価なタブ保持体とすることができ、ひいては安価な蓄電デバイスとすることができる。
【0023】
(6)他の解決手段は、蓄電デバイスの電極体の集電部に導通接続する接続端部及び外部に露出する外部端子部を有するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けてタブ延出方向に延びる途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着したタブ包囲体と、を備える包囲体付きタブ電極端子である。
【0024】
上述の包囲体付きタブ電極端子は、被包囲部に環帯状粗化面を含むタブ電極端子と、被包囲部を覆い環帯状粗化面に直接気密に熱溶着した、熱可塑性絶縁性樹脂からなるタブ包囲体とを備えている。このため、この包囲体付きタブ電極端子のタブ包囲体をケース部材をなすラミネートフィルムに熱溶着することで、タブ保持体(タブ包囲体)を介してケース部材によってタブ電極端子を容易に保持することができる。しかも、タブ電極端子に環帯状粗化面を設けているので、クロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、環帯状粗化面にタブ包囲体を安定して直接気密に熱溶着させることができ、形成容易で安価な包囲体付きタブ電極端子とすることができる。
【0025】
(7)(6)の包囲体付きタブ電極端子であって、前記タブ包囲体は、前記タブ電極端子よりも、前記タブ延出方向及びタブ厚み方向に直交するタブ幅方向の外側の側方部を、前記タブ幅方向の外側に先細で、前記タブ幅方向となす先端角度が70度以下のテーパ形状としてなる包囲体付きタブ電極端子とすると良い。
【0026】
ラミネートフィルムからなる一対のケース部材では、このうちタブ電極端子の周囲に位置させるタブ周囲部同士で、タブ電極端子及びこれを囲むタブ保持体を挟むので、両方或いは一方のタブ周囲部はタブ厚み方向に凹形状(溝形状)となる。このため、凹形状とするタブ周囲部のうちタブ幅方向の端部では、ケース部材をなすラミネートフィルムをタブ厚み方向に屈曲させることになる。この場合に、ケース部材の凹形状としたタブ周囲部のうちタブ幅方向の外側の端部において、ラミネートフィルムをタブ厚み方向に90度に近い大きな角度(具体的には75~90度)で立ち上がるように屈曲させると、この屈曲部付近でラミネートフィルムとこれに熱溶着させたタブ保持体との間で気密性が低くなる場合がある。
【0027】
これに対し、この包囲体付きタブ電極端子では、後にタブ保持体の側方部となるタブ包囲体の側方部を、タブ幅方向の外側に先細のテーパ形状とし、しかもタブ幅方向となす先端角度を70度以下としている。このため、この包囲体付きタブ電極端子のタブ包囲体(タブ保持体)を、ケース部材のタブ周囲部で挟んで熱溶着するにあたり、凹形状としたタブ周囲部のうちタブ幅方向外側の端部において、ラミネートフィルムの屈曲の角度を小さくでき、タブ保持体(タブ包囲体)の側方部に沿った形状とし易くなる。これにより、タブ周囲部のタブ幅方向外側の端部付近で、ここに熱溶着させたタブ保持体の側方部との間の気密性を向上させることができる。
【0028】
(8)(6)または(7)の包囲体付きタブ電極端子であって、前記タブ包囲体をなす前記熱可塑性絶縁性樹脂は、融点が120~200℃である包囲体付きタブ電極端子とすると良い。
【0029】
この包囲体付きタブ電極端子では、タブ包囲体をなす熱可塑性絶縁性樹脂の融点を120℃以上としているので、この包囲体付きタブ電極端子を蓄電デバイスに用いた場合、この蓄電デバイスの使用状態では、軟化せずに安定にタブ電極端子を保持しつつケース部材のタブ周囲部に保持されることができる。一方、熱可塑性絶縁性樹脂の融点を200℃以下としているので、タブ包囲体を形成したり、タブ電極端子の環帯状粗化面に熱溶着させたり、ラミネートフィルムからなるケース部材のタブ周囲部と熱溶着するに当たり、高温を必要とせず、容易に加工することができる。
【0030】
さらに(6)~(8)のいずれかに記載の包囲体付きタブ電極端子であって、前記タブ包囲体は、無変性の熱可塑性絶縁性樹脂からなる単一の樹脂材で構成されてなる包囲体付きタブ電極端子とするのが好ましい。
【0031】
この包囲体付きタブ電極端子のタブ包囲体は、金属接着性を有しない無変性の熱可塑性絶縁性樹脂からなり、しかも、単一の樹脂材で構成されている。このため、比較的高価な、マレイン酸変性などの変性を施した金属接着性を有する熱可塑性絶縁性樹脂を用いた場合に比して、安価なタブ包囲体とすることができ、ひいては安価な包囲体付きタブ電極端子とすることができる。
【0032】
(9)更に他の解決手段は、集電部を有する電極体と、ラミネートフィルムからなり、前記電極体を包囲する一対のケース部材と、金属からなり、接続端部が一対の前記ケース部材内で前記電極体の前記集電部に導通接続し、前記ラミネートフィルム同士の間を延出し、外部端子部が一対の前記ケース部材の外部に露出するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けて延出するタブ延出方向の途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着すると共に、一対の前記ケース部材の各々の外周縁部のうち、前記タブ電極端子の周囲に位置させるタブ周囲部ともそれぞれ気密に熱溶着し、前記タブ周囲部に前記タブ電極端子を保持させるタブ保持体と、備える蓄電デバイスの製造方法であって、前記電極体の前記集電部に、(6)~(8)のいずれか1項に記載の包囲体付きタブ電極端子の前記接続端部を接続する接続工程と、一対の前記ケース部材の各々の前記タブ周囲部に前記タブ包囲体が近接し、かつ、前記タブ電極端子が前記タブ周囲部を通じて前記タブ延出方向に延びる姿勢に、前記電極体を一対の前記ケース部材内に収容する収容工程と、一対の前記ケース部材の前記タブ周囲部に前記タブ包囲体を気密に熱溶着して前記タブ保持体を形成する熱溶着工程と、を備える蓄電デバイスの製造方法である。
【0033】
この蓄電デバイスの製造方法では、タブ電極端子に予めタブ包囲体を形成した前述の包囲体付きタブ電極端子を用い、接続工程で、この包囲体付きタブ電極端子を電極体の集電部に接続する。収容工程で、所定の姿勢に電極体を一対のケース部材内に収容する。さらに、熱溶着工程では、タブ電極端子に予め形成されていたタブ包囲体を、ケース部材のタブ周囲部に気密に熱溶着してタブ保持体を形成するので、前述の容易に蓄電デバイスを製造できる。しかも、タブ電極端子に環帯状粗化面を設けているので、クロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、環帯状粗化面にタブ保持体を安定して直接気密に熱溶着させた、形成容易で安価な蓄電デバイスを製造することができる。
【0034】
なお、熱溶着工程においては、タブ包囲体をケース部材のタブ周囲部に気密に熱溶着してタブ保持体を形成する。このほか、タブ包囲体のケース部材のタブ周囲部への熱溶着に並行して或いは相前後して、一対のケース部材の外周縁部のうちタブ周囲部以外で互いに対向する周縁対向部同士を気密に熱溶着するとよい。なお、周縁対向部同士を気密に熱溶着するに当たっては、周縁対向部同士を全域に亘って気密に熱溶着する場合のほか、熱溶着工程の後に、一対のケース部材で構成されたケース内に電解液を注液するなどの工程を行うべく、熱溶着工程では、タブ周囲部以外の周縁対向部同士のうち、所定の一部を熱溶着しないでおく場合も含む。この場合には、電解液の注液後に周縁対向部同士の未溶着の残部を熱溶着する。
【0035】
(10)更に他の解決手段であって、蓄電デバイスの電極体の集電部に導通接続する接続端部及び外部に露出する外部端子部を有するタブ電極端子であって、前記接続端部から前記外部端子部に向けてタブ延出方向に延びる途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化された環帯状粗化面を有するタブ電極端子と、熱可塑性絶縁性樹脂からなり、前記タブ電極端子のうち、前記環帯状粗化面の前記タブ延出方向の少なくとも一部を含み、前記タブ周方向の全周に亘る帯状領域である被包囲部を覆い、前記環帯状粗化面に直接気密に熱溶着したタブ包囲体と、を備える包囲体付きタブ電極端子の製造方法であって、前記タブ電極端子の前記タブ延出方向の途中に、前記タブ延出方向を囲むタブ周方向に全周に亘って帯状に粗化して前記環帯状粗化面を形成する粗化工程と、前記タブ電極端子の前記被包囲部を、前記タブ周方向の全周に亘って帯状に覆い、前記環帯状粗化面と直接気密に熱溶着した前記タブ包囲体を形成する形成工程と、を備える包囲体付きタブ電極端子の製造方法である。
【0036】
この包囲体付きタブ電極端子の製造方法では、粗化工程でタブ電極端子に環帯状粗化面を形成し、形成工程で環帯状粗化面に直接気密に熱溶着したタブ包囲体を形成するので、タブ包囲体が環帯状粗化面に直接気密に熱溶着した包囲体付きタブ電極端子を容易に製造することができる。しかも、タブ電極端子に環帯状粗化面を設けているので、クロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、環帯状粗化面にタブ包囲体を安定して直接気密に熱溶着させた、形成容易で安価な包囲体付きタブ電極端子を製造することができる。
【0037】
粗化工程は、クロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、タブ電極端子にタブ包囲体となる熱可塑性絶縁性樹脂を熱溶着により直接気密に固着できる環帯状粗化面を設ける処理である。この手法としては、例えば、特開2022-28587号公報に開示の手法などレーザ光を用いて粗化面を得るレーザ粗化処理のほか、エッチング処理、メッキ処理(例、粗化ニッケルメッキ、粗化銅メッキ、粗化銀メッキ等)、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、表面研磨など公知の手法を採用できる。
【0038】
形成工程において被包囲部にタブ包囲体を形成する手法としては、タブ電極端子の被包囲部上にタブ包囲体をインジェクション成型する手法、ダイコータなどによって、溶融した熱可塑性絶縁性樹脂を被包囲部に塗布し固化させてタブ包囲体を形成する手法、予め形成した熱可塑性絶縁性樹脂からなる樹脂シートをタブ電極体の被包囲部に巻き付け、その後に樹脂シートを溶融させて、タブ包囲体を形成する手法、などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施形態に係る電池の外観を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る電池の縦断面図である。
図3】実施形態に係る電池のうち、タブ電極端子の引き出し部分の構造を示し、図1におけるA-A’矢視断面図である。
図4】実施形態に係り、タブ包囲体形成前のタブ電極端子の斜視図である。
図5】実施形態に係る包囲体付きタブ電極端子の斜視図である。
図6】実施形態に係り、タブ電極端子付き電極体の平面図である。
図7】実施形態に係り、電極体を一対のケース部材内に収容する様子を示す説明図である。
図8】実施形態に係り、包囲体付きタブ電極端子の製造及び電池の製造手順を示すフローチャートである。
図9】(a)~(c)は実施形態及び変形形態1,2に係り、包囲体付きタブ電極端子のタブ包囲体の外形断面形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、開示される技術の好適な実施形態等を適宜図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0041】
以下、本発明の実施形態を、各図を参照しつつ説明する。図1に本実施形態に係る電池(蓄電デバイス)1の外観を示す斜視図を、図2に電池1の縦断面図を示す。この電池1は、例えば、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両やドローン、各種機器に搭載されるいわゆるラミネート型のリチウムイオン二次電池である。
【0042】
この電池1は、ケース20と、このケース20の収容部20S内に収容され包囲された電極体10と、電極体10の正極集電部12に接続されケース20の正極周囲部20Pを通じて外部に延出するタブ正極端子30と、負極集電部13に接続されケース20の負極周囲部20Nを通じて外部に延出するタブ負極端子40と、正極周囲部20Pとタブ正極端子30との間に或いは負極周囲部20Nとタブ負極端子40との間に介在するタブ保持体50,60と、を備えている。
【0043】
このうちケース20は、ラミネートフィルムからなる一対のケース部材21,22の外周縁部21E,22Eを互いに熱溶着してなる(図2図7参照)。具体的には、各々のケース部材21,22は、アルミニウム箔の内外にそれぞれ樹脂層を積層した金属箔ラミネートフィルムからなり、予め行ったプレス加工により、外周縁部21E,22Eに囲まれた平面方向の中央部分には、電極体10を収容する収容部20Sを構成する矩形凹状の収容凹部21S,22Sが設けられている。また、外周縁部21E,22Eには、正極周囲部20Pを構成する正極タブ周囲部21ETP,22ETP、及び、負極周囲部20Nを構成する負極タブ周囲部21ETN,22ETNが、収容凹部21S,22Sから外側(図2図7において左右方向)に向けて延びる溝状に設けられている。ケース部材21,22をなす多層構造の金属箔ラミネートフィルムのうち、互いに対向させる対向層21IL,22ILは、互いに熱溶着可能な比較的低融点(融点が120~200℃、本実施形態では160℃)で絶縁性で金属接着性を有しない無変性のポリプロピレンで構成されている。このため、ケース部材21,22の外周縁部21E,22Eのうち周縁対向部21EM,22EM同士は対向層21IL,22ILを介して気密に且つ容易に熱溶着でき、直接溶着部20DMをなしている。但し、対向層21IL,22ILは、前述のように金属接着性を有しないポリプロピレンからなるので、ケース部材21,22を対向層21IL,22ILを介して無加工(具体的には粗化面33等を形成していない)の金属板などに熱溶着のみで気密に接合することは難しい。
【0044】
電極体10は、公知の電池における電極体を採用でき、特に限定されない。本実施形態では、電極体10(図2図7参照)は、多数の矩形板状の正極板15と負極板16とがセパレータ17を介して交互に積層された電極体本体部11と、正極板15の正極箔リード部15Lが重なった正極集電部12と、負極板16の負極箔リード部16Lが重なった負極集電部13と有するいわゆる積層型の電極体である。電極体10を収容したケース20内には、電極体10に含浸させた電解液19を含む。なお、電極体10として、帯状の正極板と帯状の負極板とを帯状のセパレータを介して捲回した、いわゆる捲回型の電極体を用いても良く、更には扁平状捲回型の電極体を用いることもできる。また、電解液19に代えて固体電解質を用いる固体電解質型電極体を用いることもできる。
【0045】
タブ正極端子30(図4参照)は、アルミニウムからなる矩形板状である。タブ正極端子30は、一方側(図4において右上側)に位置する正極接続端部31と、他方側(図4において左下側)に位置する正極外部端子部32とを有している。加えて、正極接続端部31から正極外部端子部32に向かう正極延出方向EH1(図4において左下方向)の途中において、正極延出方向EH1を囲む正極周方向RH1に全周に亘る環状に、具体的には正極周方向RH1に連なる4面に亘る環状に、かつ、帯状に粗化された粗化面(環帯状粗化面)33(図2図7では太線で示す)を有している。
【0046】
この粗化面33は、粗面化処理により凹凸を形成し表面粗度を未処理の他の部位(正極接続端部31,正極外部端子部32)よりも高めている。このため、粗化面33には、金属接着性樹脂のみならず、本実施形態のタブ保持体50に用いる、金属との接着性を有しない無変性の熱可塑性絶縁性樹脂(本実施形態では具体的には、無変性のポリプロピレン)をも直接気密に熱溶着できる。粗化面33の算術平均高さSaは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上30μm以下とするのが好ましい。この範囲であれば、タブ正極端子30の強度や導電性を損なわず、タブ保持体50が熱溶着する表面積を好適に増大させて、強固かつ気密にタブ保持体50を粗化面33に熱溶着することができる。なお、本実施形態では、具体的には、算術平均高さSa=1.0μm程度としている。
【0047】
タブ正極端子30の正極接続端部31は、電極体10のうち、アルミニウム箔からなる多数の正極箔リード部15Lが重なる正極集電部12に超音波溶接によって接続されている。また、正極外部端子部32は、ケース20(ケース部材21,22)の外部(図1図2において右側の外部)に露出している。また、環帯状の粗化面33のうち、図4において破線で示す正極延出方向EH1の一部をなす環帯状の被包囲部34には、これを包囲するように正極周方向RH1の全周に亘って帯状のタブ保持体50が直接気密に熱溶着している(図2参照)。
【0048】
なお、本実施形態では、上述のように、帯状の粗化面33の幅方向(正極延出方向EH1に一致する)の一部のみを含む幅狭の帯状領域を被包囲部34とし、この被包囲部34を覆うように帯状の粗化面33より幅狭の帯状のタブ保持体50を熱溶着した。しかし、帯状の粗化面33の幅方向全部を含む幅広の帯状領域を被包囲部34とし、この被包囲部34上に帯状の粗化面33より幅広の帯状のタブ保持体50を形成しても良い。また、帯状の粗化面33の幅方向の一部を被包囲部34の一部が含むように帯状の被包囲部34を設定し、この被包囲部34上に帯状のタブ保持体50を形成しても良い。後述するタブ負極端子40の被包囲部44とタブ保持体60との関係も同様にすることができる。
【0049】
そして、このタブ保持体50は、後述するように、ケース20の正極周囲部20P(ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP)にも気密に熱溶着しているので、タブ正極端子30は、タブ保持体50を介してケース20の正極周囲部20Pに気密に保持されている。
【0050】
一方、タブ負極端子40(図4参照)は、ニッケルメッキ銅からなる矩形板状である。このタブ負極端子40は、上述のタブ正極端子30と同様、一方側(図4において右上側)に位置する負極接続端部41と、他方側(図4において左下側)に位置する負極外部端子部42とを有している。加えて、負極接続端部41から負極外部端子部42に向かう負極延出方向EH2(図4において左下方向)の途中において、負極延出方向EH2を囲む負極周方向RH2に全周に亘る環状に、具体的には負極周方向RH2に連なる4面に亘る環状に、かつ、帯状に粗化された粗化面(環帯状粗化面)43(図2図7では太線で示す)を有している。
【0051】
この粗化面43も、前述の粗化面33と同じく、粗面化処理により凹凸を形成し表面粗度を未処理の他の部位(負極接続端部41,負極外部端子部42)よりも高めており、金属接着性樹脂のみならず、タブ保持体60に用いる、無変性のポリプロピレンをも直接気密に熱溶着できる。この粗化面43の算術平均高さSaも、特に限定されるものではないが、0.1μm以上30μm以下とするのが好ましい。この範囲であれば、タブ負端子40の強度や導電性を損なわず、タブ保持体60が熱溶着する表面積を好適に増大させて、強固かつ気密にタブ保持体60を粗化面43に熱溶着することができる。なお、本実施形態では、具体的には、算術平均高さSa=1.0μm程度としている。
【0052】
タブ負極端子40の負極接続端部41は、電極体10のうち、銅箔からなる多数の負極箔リード部16Lが重なる負極集電部13に超音波溶接によって接続されている。また、負極外部端子部42は、ケース20(ケース部材21,22)の外部(図1図2において左側の外部)に露出している。また、環帯状の粗化面43のうち、図4において破線で示す負極延出方向EH2の一部をなす環帯状の被包囲部44には、これを包囲するように負極周方向RH2の全周に亘って帯状のタブ保持体60が直接気密に熱溶着している(図2参照)。
【0053】
そして、このタブ保持体60は、後述するように、ケース20の負極周囲部20N(ケース部材21,22の負極タブ周囲部21ETN,22ETN)にも気密に熱溶着しているので、タブ負極端子40は、タブ保持体60を介してケース20の負極周囲部20Nに気密に保持されている。
【0054】
タブ保持体50,60は、複層構造を有し金属接着性を有する前述のタブ接着フィルムとは異なり、単一の樹脂材で、しかも、熱溶着可能で絶縁性を有するが金属接着性を有しない無変性のポリプロピレンで構成されている。このタブ保持体50,60に用いるポリプロピレンの融点は、140~180℃とすると良い。なお、前述のケース部材21,22をなすラミネートフィルムの対向層21IL,22ILに用いているポリプロピレンの融点と、タブ保持体50,60に用いるポリプロピレンの融点とは,概ね等しくすると良く、本実施形態では、融点160℃のポリプロピレンを用いている。
【0055】
なお、タブ保持体50,60は、後述するように、予め、タブ正極端子30及びタブ負極端子40の被包囲部34,44に射出成形によってタブ包囲体71,81を形成しておき(図5参照)、このタブ包囲体71,81をケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP或いは負極タブ周囲部21ETN,22ETNに熱溶着して、タブ保持体50,60として用いると良い。
【0056】
本実施形態の電池1では、タブ正極端子30及びタブ負極端子40に粗化面33,43を設けているので、タブ正極端子30及びタブ負極端子40にクロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、粗化面33,43により、このタブ正極端子30或いはタブ負極端子40に、熱可塑性絶縁性樹脂からなるタブ保持体50,60を、安定して直接気密に熱溶着させることができる。しかも、このタブ保持体50,60は、一対のケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNともそれぞれ気密に熱溶着している。このため、タブ正極端子30及びタブ負極端子40を、タブ保持体50,60を介してケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNで気密に保持した電池1となる。なお、タブ保持体50,60は、単一の樹脂材からなり、しかも、安価な無変性のポリプロピレンからなるので、さらに安価な電池1となる。
【0057】
加えてこの電池1では、タブ保持体50,60(後述するタブ包囲体71,81も同じ)をなすポリプロピレンの融点を140℃以上の160℃としているので、電池1の使用状態では、軟化せずに安定にタブ正極端子30及びタブ負極端子40をそれぞれ保持しつつケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNにそれぞれ保持されることができる。一方、ポリプロピレンの融点を200℃以下としているので、タブ保持体50,60(後述するタブ包囲体71,81)を形成したり、タブ正極端子30或いはタブ負極端子40の粗化面33,43に熱溶着させたり、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNと熱溶着するに当たり、高温を必要とせず、容易に加工することができる。
【0058】
本実施形態の電池1では、図1図2に示すように、タブ保持体50は、タブ正極端子30の被包囲部34を包囲すると共に、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPに挟持される被挟持部51を有している。加えて本実施形態では、タブ保持体50は、被挟持部51よりも正極延出方向EH1(図1図2において右側)に、即ち、正極タブ周囲部21ETP,22ETPの正極タブ周囲部端縁21ETPE,22ETPEよりも正極延出方向EH1に延出して、タブ正極端子30を正極周方向RH1の全周に亘って帯状に覆う延出包囲部52を有している。これにより、図1において破線で示すように、正極タブ周囲部端縁21ETPE,22ETPEからタブ正極端子30に至る沿面距離SL1を延ばしている。
【0059】
タブ保持体60は、タブ負極端子40の被包囲部44を包囲すると共に、ケース部材21,22の負極タブ周囲部21ETN,22ETNに挟持される被挟持部61を有している。加えてタブ保持体60は、被挟持部61よりも負極延出方向EH2(図1図2において左側)に、即ち、負極タブ周囲部21ETN,22ETNの負極タブ周囲部端縁21ETNE,22ETNEよりも負極延出方向EH2に延出して、タブ負極端子40を負極周方向RH2の全周に亘って帯状に覆う延出包囲部62を有している。これにより、図1において破線で示すように、負極タブ周囲部端縁21ETNE,22ETNEからタブ負極端子40に至る沿面距離SL2を延ばしている。
【0060】
なお前述したように、ケース部材21,22は、アルミニウム箔を含む金属箔ラミネートフィルムからなる。このため、ケース部材21,22の製造の際のラミネートフィルム切断時に、ケース部材21,22の外周縁部21E,22Eの端縁にアルミニウム箔のバリが生じている場合がある。中でも、正極タブ周囲部21ETP,22ETPの正極タブ周囲部端縁21ETPE,22ETPEや負極タブ周囲部21ETN,22ETNの負極タブ周囲部端縁21ETNE,22ETNEにバリが生じていた場合には、バリがタブ正極端子30やタブ負極端子40に接触して、アルミニウム箔がタブ正極端子30やタブ負極端子40と導通する虞がある。この場合にはさらに、ケース部材21,22の外周縁部21E,22Eの端縁が図示しない他部材に接触した場合に、他部材がアルミニウム箔及びバリを介してタブ正極端子30やタブ負極端子40に導通してしまう虞がある。
【0061】
これに対し、本実施形態の電池1では、タブ保持体50,60に延出包囲部52,62有しているので、正極タブ周囲部端縁21ETPE,22ETPEや負極タブ周囲部端縁21ETNE,22ETNEにバリが生じていた場合でも、このバリがタブ正極端子30やタブ負極端子40に接触して、アルミニウム箔がタブ正極端子30やタブ負極端子40と導通するのを抑制することができる。
なお、この延出包囲部52,62の沿面距離SL1,SL2を、例えば、2~10mm確保すると良く、本実施形態では、例えば、沿面距離SL1=SL2=5mmとしている。
【0062】
次いで、本実施形態の電池1の製造に用いる包囲体付きタブ正極端子70及び包囲体付きタブ負極端子80(図5参照)及びその製造方法について、図5のほか、図4及び図9を参照して説明する。
包囲体付きタブ正極端子70は、前述のタブ正極端子30と、タブ包囲体71とからなる。タブ正極端子30(図4参照)は、前述したように、電池1の正極集電部12に導通接続する正極接続端部31、及び、外部に露出する正極外部端子部32を有する。このほか、正極接続端部31から正極外部端子部32に向けて正極延出方向EH1に延びる途中に、この正極延出方向EH1を囲む正極周方向RH1の全周に亘って帯状に粗化された環帯状の粗化面33を有している。
【0063】
一方、タブ包囲体71は、単一の樹脂材からなり、かつ金属接着性を有しない無変性の熱可塑性絶縁性樹脂からなる。具体的には、無変性のポリプロピレンからなり、タブ正極端子30のうち、粗化面33の正極延出方向EH1の少なくとも一部を含み、正極周方向RH1の全周に亘る帯状領域である、図4において破線で示す被包囲部34を覆い、粗化面33に直接気密に熱溶着している。前述したように、このタブ包囲体71が、電池1においては、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPの対向層21IL,22ILに気密に熱溶着してタブ保持体50となる。
【0064】
同様に、包囲体付きタブ負極端子80は、前述のタブ負極端子40と、タブ包囲体81とからなる。タブ負極端子40(図4参照)は、前述したように、電池1の負極集電部13に導通接続する負極接続端部41、及び、外部に露出する負極外部端子部42を有する。このほか、負極接続端部41から負極外部端子部42に向けて負極延出方向EH2に延びる途中に、この負極延出方向EH2を囲む負極周方向RH2の全周に亘って帯状に粗化された環帯状の粗化面43を有している。
【0065】
タブ包囲体81も、無変性のポリプロピレンからなり、タブ負極端子40のうち、粗化面43の負極延出方向EH2の少なくとも一部を含み、負極周方向RH2の全周に亘る帯状領域である被包囲部44を覆い、粗化面43に直接気密に熱溶着している。このタブ包囲体81も、電池1においては、ケース部材21,22の負極タブ周囲部21ETN,22ETNの対向層21IL,22ILに気密に熱溶着してタブ保持体60となる。
【0066】
前述した従来技術では、ケース部材をなすラミネートフィルムと電極体に接続したタブ電極端子とは、クロメート処理層を形成したタブ電極端子に、複層フィルムからなるタブ接着フィルムを介してラミネートフィルムを接合していた。しかし、タブ電極端子にクロメート処理層などの化成処理層を形成する処理を安定に行うのは容易ではなく、コスト高になりやすい。加えて、金属接着性樹脂層を含む複層構造のタブ接着フィルムを用いたタブ接着フィルム付きタブ電極端子はコスト高である。
【0067】
これに対し、本実施形態の包囲体付きタブ正極端子70及び包囲体付きタブ負極端子80は、タブ正極端子30及びタブ負極端子40のほか、粗化面33,43に直接気密に熱溶着した無変性のポリプロピレンからなるタブ包囲体71,81を備えている。このため、タブ包囲体71,81をケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPや負極タブ周囲部21ETN,22ETNに熱溶着することで、タブ保持体50,60(タブ包囲体71,81)を介してケース部材21,22によってタブ正極端子30及びタブ負極端子40を容易に保持できる。しかも、タブ正極端子30及びタブ負極端子40に粗化面33,43を設けているので、クロメート処理層などの化成処理層を設けなくとも、粗化面33,43にタブ包囲体71,81を直接気密に熱溶着させることができ、形成容易で安価な包囲体付きタブ正極端子70及び包囲体付きタブ負極端子80となる。加えて、タブ包囲体71,81は、単一の脂材からなり、しかも、無変性のポリプロピレンからなるので、安価な包囲体付きタブ正極端子70及び包囲体付きタブ負極端子80となる。
【0068】
なお前述したタブ保持体50,60と同じく、本実施形態では、帯状の粗化面33,43の幅方向(正極延出方向EH1或いは負極延出方向EH2に一致する)の一部のみを含む幅狭の範囲を被包囲部34,44とし、この被包囲部34,44を覆うように帯状の粗化面33,43より幅狭の帯状のタブ包囲体71,81を形成した。しかし、帯状の粗化面33,43の全体を含む範囲を被包囲部34,44とし、この被包囲部34,44上に帯状の粗化面33,43より幅広の帯状のタブ包囲体71,81を形成しても良い。また、帯状の粗化面33,43の幅方向の一部を被包囲部34,44の一部が含むように範囲を設定し、この被包囲部34,44上に帯状のタブ包囲体71,81を形成しても良い。
【0069】
タブ包囲体71は、被包囲部34の全周を囲むように形成されており、2つの主面34P1,34P2上に形成される2つの平板部71P1,71P2と、2つの側面34S1,34S2の正極幅方向WH1の外側WHO1に形成される2つの側方部71S1,71S2を有している。同様に、タブ包囲体81は、被包囲部44の全周を囲むように形成されており、2つの主面44P1,44P2上に形成される2つの平板部81P1,81P2と、2つの側面44S1,44S2のタブ幅方向外側WHO2に形成される2つの側方部81S1,81S2を有している(図3図5参照)。
【0070】
これにより、電池1のタブ保持体50も、被包囲部34の全周を囲むように形成され、2つの主面34P1,34P2上に形成される2つの平板部50P1,50P2と、2つの側面34S1,34S2の正極幅方向WH1の外側WHO1に形成される2つの側方部50S1,50S2を有している。同様に、タブ保持体60も被包囲部44の全周を囲むように形成され、2つの主面44P1,44P2上に形成される2つの平板部60P1,60P2と、2つの側面44S1,44S2の負極幅方向WH2の外側WHO2に形成される2つの側方部60S1,60S2を有している(図1図3参照)。なお、正極幅方向WH1は、正極延出方向EH1及び正極厚み方向TH1に直交する方向である。また、負極幅方向WH2は、負極延出方向EH2及び負極厚み方向TH2に直交する方向である。
【0071】
そして、タブ保持体50の2つの平板部50P1,50P2は、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPのうち、平坦部21ETPP,22ETPPにそれぞれ気密に熱溶着している。また、2つの側方部50S1,50S2は、正極タブ周囲部21ETP,22ETPのうち、2対の斜面部21ETPS,22ETPSにそれぞれ気密に熱溶着している。同様に、タブ保持体60の2つの平板部60P1,60P2は、ケース部材21,22の負極タブ周囲部21ETN,22ETNのうち、平坦部21ETNP,22ETNPにそれぞれ気密に熱溶着している。また、2つの側方部60S1,60S2は、負極タブ周囲部21ETN,22ETNのうち、2対の斜面部21ETNS,22ETNSにそれぞれ気密に熱溶着している。
【0072】
しかも、本実施形態の包囲体付きタブ正極端子70では、タブ包囲体71のうち、タブ正極端子30よりも外側WHO1の側方部71S1,71S2を、外側WHO1ほど正極厚み方向TH1の寸法が小さくなる形状に、即ち、外側WHO1に先細の形状に、具体的には三角柱形状にしてなる(図3図5図9(a)参照)。しかも、正極幅方向WH1となす先端角度αをそれぞれα=70度以下(本実施形態では具体的には、図9(a)の上側にも下側にもそれぞれα=45度)としている。このため、タブ包囲体71を基にして形成されるタブ保持体50の側方部50S1,50S2も、外側WHO1に先細の形状、具体的には、概ね、外側WHO1に向けて窄まる三角柱形状となる(図1図3参照)。これと共に、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPのうち、正極幅方向WH1の外側WHO1の端部である斜面部21ETPS,22ETPSにおいて、ラミネートフィルムの屈曲を小さくでき、タブ保持体50の側方部50S1,50S2に沿った形状とし易くなる。これにより、斜面部21ETPS,22ETPS付近で、この斜面部21ETPS,22ETPSに熱溶着させたタブ保持体50の側方部50S1,50S2との間の気密性を向上させることができる。
【0073】
同様に、包囲体付きタブ負極端子80でも、タブ包囲体81のうち、タブ負極端子40よりも外側WHO2の側方部81S1,81S2を、外側WHO2に先細の形状、即ち、外側WHO2に向けて窄まる三角柱形状としてなる。しかも、負極幅方向WH2となす先端角度αをそれぞれα=70度以下のα=45度としている。このため、タブ包囲体81によって形成されるタブ保持体60の側方部60S1,60S2も外側WHO2に先細の三角柱形状となる。これと共に、ケース部材21,22の負極タブ周囲部21ETN,22ETNの負極幅方向WH2の外側WHO2の端部である斜面部21ETNS,22ETNSにおいて、ラミネートフィルムの屈曲を小さくでき、タブ保持体60の側方部60S1,60S2に沿った形状とし易くなる。これにより、斜面部21ETNS,22ETNS付近で、この斜面部21ETNS,22ETNSに熱溶着させたタブ保持体60の側方部60S1,60S2との間の気密性を向上させることができる。
【0074】
なお、本実施形態では、タブ包囲体71,81の側方部71S1,71S2の形状を、図9(a)に示す三角柱状のテーパ形状とした。しかし例えば、変形形態1に係るタブ包囲体171の側方部171S1,171S2の形状を、図9(b)に示す正極幅方向WH1となす各々の先端角度αが更に小さくなる形状とすると、正極タブ周囲部21ETP,22ETPの正極幅方向WH1の端部(斜面部21ETPS,22ETPS)において、ラミネートフィルムを小さな角度で立ち上げ徐々に大きな角度で屈曲させることができるので、さらに好ましい。タブ包囲体181の側方部181S1,181S2の形状についても同様である。
【0075】
一方、ケース部材21,22のうち一方(例えばケース部材21)にのみ凹溝状のタブ周囲部を形成する場合には、正極幅方向WH1となす先端角度αを片側のみとした、図9(c)に示す形状の側方部271S1,271S2を有するタブ包囲体271を形成するようにしても良い。タブ包囲体281の側方部281S1,281S2の形状についても同様である。
【0076】
次に、包囲体付きタブ正極端子70及び包囲体付きタブ負極端子80の製造方法について、図4図5及び図8を参照して説明する。先ず、粗化工程S1において、未粗化のタブ正極端子30のうち、正極延出方向EH1の途中部分の表面に、公知の粗化処理を施し、正極周方向RH1の全周に亘り、粗化面33を形成する。同様に、タブ負極端子40に粗化面43を形成する(図4参照)。粗化面33,43の算術平均高さSaを、0.1~30μmの範囲内,具体的には1.0μmとした。粗化手法としては、レーザ照射、エッチング処理、メッキ処理(例、粗化ニッケルメッキ、粗化銅メッキ、粗化銀メッキ等)、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、表面研磨等の公知の手法を採用できるが、本実施形態では、特開2022-28587号公報と同様のレーザ照射処理を行った。
【0077】
次いで、形成工程S2において、タブ正極端子30及びタブ負極端子40の被包囲部34,44に、無変性のポリプロピレンからなるタブ包囲体71,81をそれぞれ熱溶着する。具体的には、昇温したタブ正極端子30或いはタブ負極端子40を金型内にセットし、溶融した無変性のポリプロピレンを射出し、タブ包囲体71,81を成形して、包囲体付きタブ正極端子70及び包囲体付きタブ負極端子80を製造する(図5参照)。この際、タブ正極端子30及びタブ負極端子40には、粗化面33,43が予め形成されているので、無変性のポリプロピレンを用いても、被包囲部34,44の粗化面33,43には、タブ包囲体71,81を直接気密に熱溶着することができる。しかも、タブ正極端子30及びタブ負極端子40に粗化面33,43を設けているので、化成処理層を設けなくとも、粗化面33,43にタブ包囲体71,81を安定して直接気密に熱溶着させた、形成容易で安価な包囲体付きタブ正極端子70及び包囲体付きタブ負極端子80を製造することができる。なお、本実施形態では、射出するポリプロピレンを、金属接着性を有しない無変性のポリプロピレンとしているので、金型から容易に取り出すことができる。かくして、タブ包囲体71,81が粗化面33,43に直接気密に熱溶着した包囲体付きタブ正極端子70及び包囲体付きタブ負極端子80を容易且つ安価に製造することができる。
【0078】
なお、形成工程S2において、タブ正極端子30及びタブ負極端子40の被包囲部34,44にタブ包囲体71,81を設ける手法としては、他の手法を採用することもできる。例えば、タブ包囲体71,81に相当する形状の樹脂部材を射出成形等で形成しておき、この部材の挿通孔にタブ正極端子30或いはタブ負極端子40を圧挿し、その後、タブ正極端子30等を加熱してその被包囲部34,44の粗化面33,43に樹脂部材を熱溶着してタブ包囲体71,81を形成しても良い。部材の挿通孔に予め樹脂の融点上の温度に加熱しておいたタブ正極端子30或いはタブ負極端子40を圧挿して部材を熱溶着してタブ包囲体71,81を形成しても良い。
【0079】
次に、電池1の製造方法について、図5図8を参照して説明する。上述の手法で製造した包囲体付きタブ正極端子70及び包囲体付きタブ負極端子80(図5参照)のほか、公知の手法で製造した電極体10及び一対のケース部材21,22を用意しておく(図6図7参照)。先ず接続工程S11で、タブ正極端子30の正極接続端部31を電極体10の正極集電部12に超音波溶接で接続する。同様に、タブ負極端子40の負極接続端部41を電極体10の負極集電部13に超音波溶接で接続する。
【0080】
続く収容工程S12では、電極体10を一対のケース部材21,22内に収容する。具体的には、ケース部材21,22に設けておいた収容凹部21S,22Sの間に電極体10の電極体本体部11を位置させる。これと共に、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPにタブ包囲体71が近接し、かつ、タブ正極端子30が正極タブ周囲部21ETP,22ETPを通じて正極延出方向EH1に延びる姿勢に、かつ、ケース部材21,22の負極タブ周囲部21ETN,22ETNにタブ包囲体81が近接し、かつ、タブ負極端子40が負極タブ周囲部21ETN,22ETNを通じて負極延出方向EH2に延びる姿勢に、電極体10を一対のケース部材21,22内に収容する。
【0081】
更に熱溶着工程S13では、一対のケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETPにタブ包囲体71を気密に熱溶着してタブ保持体50を形成する。また、ケース部材21,22の負極タブ周囲部21ETN,22ETNにタブ包囲体81を気密に熱溶着してタブ保持体60を形成する。
【0082】
なお本実施形態では、熱溶着工程S13において、熱溶着によりタブ保持体50,60を形成すると共に、一対のケース部材21,22の外周縁部21E,22Eのうち、正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETN以外の部位である周縁対向部21EM,22EM同士を直接気密に熱溶着して、直接溶着部20DMを形成する。かくして、一対のケース部材21,22からなるケース20を形成する。
【0083】
但し本実施形態の熱溶着工程S13では、後にケース20の収容部20S内に電解液19を注入するため、周縁対向部21EM,22EMの一部同士を熱溶着しないでおく。熱溶着工程S13の後は、この未溶着の部位から電解液19を注入し、その後に、未溶着部位を熱溶着して封止するなど公知の工程を行い、電池1を製造する。
【0084】
この電池1の製造方法では、予めタブ包囲体71,81を形成しておき、前述の包囲体付きタブ正極端子70及び包囲体付きタブ負極端子80を用い、熱溶着工程S13で、タブ包囲体71,81を、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNに気密に熱溶着してタブ保持体50,60を形成するので、容易に電池1を製造できる。しかも、タブ正極端子30及びタブ負極端子40に粗化面33,43を設けているので、化成処理層を設けなくとも、粗化面33,43にタブ保持体50,60を安定して直接気密に熱溶着させた、形成容易で安価な電池12を製造することができる。加えて、この電池1では、タブ保持体50,60は、予め成形したタブ包囲体71,81をケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNに気密に熱溶着しているので、タブ保持体50,60を所定の形態に揃えやすい。
【0085】
以上において、本発明を実施形態等に即して説明したが、ここに開示されるラミネート型の蓄電デバイスの一例を示すものであり、ここに開示される技術を限定することを意図したものではない。即ち、本発明は実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態の電池1では、タブ正極端子30の正極延出方向EH1とタブ負極端子40の負極延出方向EH2とを、図1図2等において、左右逆方向とした例を示した。しかし、これに限定されず、例えば、正極延出方向EH1と負極延出方向EH2とが同方向となるように、タブ正極端子30とタブ負極端子40とを並べて配置することもできる。また、正極延出方向EH1と負極延出方向EH2とが90度の角度をなすように、タブ正極端子30とタブ負極端子40とを配置することもできる。
【0086】
また前述の実施形態では、熱溶着工程S13において、一対のケース部材21,22の外周縁部21E,22Eのうち、正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNにタブ包囲体71,81を気密に熱溶着してタブ保持体50,60を形成した。このほか、熱溶着工程S13において、外周縁部21E,22Eのうち、正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETN以外の周縁対向部21EM,22EM同士を直接気密に熱溶着して直接溶着部20DMを形成し、ケース20を形成した。
【0087】
しかし、熱溶着工程S13で、ケース部材21,22の正極タブ周囲部21ETP,22ETP及び負極タブ周囲部21ETN,22ETNにタブ包囲体71,81を気密に熱溶着してタブ保持体50,60を形成する。その後、一対のケース部材21,22の外周縁部21E,22Eの周縁対向部21EM,22EM同士を隙間を空けて保持しておき、この隙間に、無変性の熱可塑性絶縁性樹脂、例えば、タブ保持体50,60と同様の、無変性のポリプロピレンを溶融した溶融樹脂を注入し固化させて、周縁対向部21EM,22EMにもタブ保持体50,60にも気密に熱溶着させて、ケースを構成しても良い。
【符号の説明】
【0088】
1 電池(蓄電デバイス)
10 電極体
12 正極集電部(集電部)
13 負極集電部(集電部)
20DM 直接溶着部
21,22 ケース部材
21IL,22IL 対向層
21S,22S 収容凹部
21E,22E 外周縁部
21ETP,22ETP 正極タブ周囲部(タブ周囲部)
21ETN,22ETN 負極タブ周囲部(タブ周囲部)
21ETPE,22ETPE 正極タブ周囲部端縁(タブ周囲部端縁)
21ETNE,22ETNE 負極タブ周囲部端縁(タブ周囲部端縁)
21EM,22EM 周縁対向部(タブ周囲部以外の部位)
30 タブ正極端子(タブ電極端子)
31 正極接続端部(接続端部)
32 正極外部端子部(外部端子部)
40 タブ負極端子(包囲体付きタブ電極端子)
41 負極接続端部(接続端部)
42 負極外部端子部(外部端子部)
33,43 粗化面(環帯状粗化面、金属粒子堆積面)
34,44 被包囲部
34P1,34P2,44P1,44P2 (被包囲部の)主面
34S1,34S2,44S1,44S2 (被包囲部の)側面
EH1 正極延出方向(タブ延出方向)
RH1 正極周方向(タブ周方向)
TH1 正極厚み方向(タブ厚み方向)
WH1 正極幅方向(タブ幅方向)
WHO1 (正極幅方向のうち)外側
EH2 負極延出方向(タブ延出方向)
RH2 負極周方向(タブ周方向)
TH2 負極厚み方向(タブ厚み方向)
WH2 負極幅方向(タブ幅方向)
WHO2 (負極幅方向のうち)外側(タブ幅方向)
50,60 タブ保持体
50P1,50P2,60P1,60P2 平板部
50S1,50S2,60S1,60S2 側方部
51,61 被挟持部
52,62 延出包囲部
SL1,SL2 沿面距離
70 包囲体付きタブ正極端子(包囲体付きタブ電極端子)
80 包囲体付きタブ負極端子(包囲体付きタブ電極端子)
71,81,171,271 タブ包囲体
71P1,71P2,81P1,81P2 平板部
71S1,71S2,81S1,81S2 側方部
α 先端角度
S1 粗化工程
S2 形成工程
S11 接続工程
S12 収容工程
S13 熱溶着工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9