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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042530
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】研削工具及び研削工具用ベース
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/06 20060101AFI20240321BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147309
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】522367746
【氏名又は名称】藤栄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181630
【弁理士】
【氏名又は名称】原 晶子
(72)【発明者】
【氏名】篠野 孝司
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
【Fターム(参考)】
3C047FF09
3C047HH15
3C158AA03
3C158AB09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】研削時に切粉を除去しつつ研削部の視界を良好に保つことができる研削工具を提供する。
【解決手段】本発明の研削工具1は、モータ14を内蔵する本体11と、モータ14の回転軸13に取り付けられる回転砥石12と、本体11に取り付けられる研削工具用ベース20とを備える。研削工具用ベース20は、回転軸13を覆う筒状のベース本体21と、ベース本体21の下部に設けられる固定板22とを有する。固定板22は、被加工材Wに接触させることで、被加工材Wに対して回転砥石12を所定の接触角度で接触させる形状を有する。ベース本体21は、水を流入させる流入口23と、水を流出させる流出口24と、流入口23と流出口24とを連通する流水路25とを有する。流入口23は、ベース本体21の上端面21bに形成され、流出口24は、ベース本体21の内周面21aの中央部に形成され、流水路25は、ベース本体21の内部に形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを内蔵する本体と、
前記モータの回転軸に取り付けられ、回転することで被加工材を研削する回転砥石と、
前記本体に取り付けられる研削工具用ベースと、を備え、
前記研削工具用ベースは、少なくとも前記回転軸を覆う筒状のベース本体と、前記ベース本体の下部に設けられる固定板とを有し、
前記固定板は、被加工材に接触させることで、被加工材に対して前記回転砥石を所定の接触角度で接触させる形状を有し、
前記ベース本体は、水を流入させる流入口と、水を流出させる流出口と、前記流入口と前記流出口とを連通する流水路とを有し、
前記流入口は、前記ベース本体の外周面の上部又は前記ベース本体の上端面に形成され、
前記流出口は、前記ベース本体の内周面の中央部に形成され、
前記流水路は、前記ベース本体の内部に形成される研削工具。
【請求項2】
前記ベース本体は、1個の前記流入口と、複数個の前記流出口とを有し、
複数個の前記流出口は、周方向に全周に亘って配置され、
前記流水路は、1個の前記流入口から分岐して複数個の前記流出口まで連通する請求項1に記載の研削工具。
【請求項3】
前記ベース本体は、内周面が、軸方向中央部に設けられた水平面を境に上側内周面と下側内周面とに分割され、前記上側内周面の内径が前記下側内周面の内径よりも小さく形成され、
前記流出口は、前記水平面に形成されている請求項2に記載の研削工具。
【請求項4】
前記固定板は、平板状に形成され、前記ベース本体から一方向に広がって設けられ、
前記ベース本体は、前記固定板が設けられる方向の下部に水抜き口を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の研削工具。
【請求項5】
前記研削工具用ベースは、透明な素材で形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の研削工具。
【請求項6】
モータと、モータの回転軸に取り付けられ、回転することで被加工材を研削する回転砥石とを備える研削工具に取り付けられる研削工具用ベースであって、
少なくとも回転軸を覆う筒状のベース本体と、
ベース本体の下部に設けられる固定板と、を備え、
前記固定板は、被加工材に接触させることで、被加工材に対して回転砥石を所定の接触角度で接触させる形状を有し、
前記ベース本体は、水を流入させる流入口と、水を流出させる流出口と、前記流入口と前記流出口とを連通する流水路とを有し、
前記流入口は、前記ベース本体の外周面の上部又は前記ベース本体の上端面に形成され、
前記流出口は、前記ベース本体の内周面の中央部に形成され、
前記流水路は、前記ベース本体の内部に形成される研削工具用ベース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板を研削する際に用いる携帯型の研削工具及び研削工具に取り付けて使用する研削工具用ベースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平板の角の面取りを行ったり、平板の表面に溝を掘ったりする、面取り機又はトリマー工具などと呼ばれる携帯型の切削工具又は研削工具が知られている。切削工具又は研削工具は回転刃又は回転砥石を備えており、回転刃又は回転砥石を平板などの被加工材に押し当てて、回転刃又は回転砥石を回転させながら被加工材を切削又は研削する。携帯型の切削工具又は研削工具では、被加工材に対して正しい角度で回転刃又は回転砥石を当てられるように、ベースが取り付けられていることが多い。ベースを被加工材に接触させて被加工材の切削又は研削を行うことで、回転刃又は回転砥石が正しい角度で被加工材に当たり、正確な切削又は研削を行うことができる。
【0003】
このような携帯型の切削工具において、回転刃によって削られた切粉を切削中から排出し、回転刃の目詰まりを防止しようとする、切粉の排出機能を高めた切削工具が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の切削工具は、ベースに吸気口と切粉排出口とが設けられ、回転刃に送風部のフィンが固定されている。回転刃が回転することで送風部のフィンが回転し、送風部のフィンの回転により吸気口から空気が吸入されて、吸入された空気によって切粉を切粉排出口から排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62-100814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の切削工具では、空気によって切粉を排出するため、切粉が粉末状となる場合に、空気にのって舞ってしまい視界を遮る可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、研削時に切粉を除去しつつ研削部の視界を良好に保つことができる研削工具及び研削工具用ベースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、モータを内蔵する本体と、モータの回転軸に取り付けられ、回転することで被加工材を研削する回転砥石と、本体に取り付けられる研削工具用ベースとを備える。研削工具用ベースは、少なくとも回転軸を覆う筒状のベース本体と、ベース本体の下部に設けられる固定板とを有する。固定板は、被加工材に接触させることで、被加工材に対して回転砥石を所定の接触角度で接触させる形状を有する。ベース本体は、水を流入させる流入口と、水を流出させる流出口と、流入口と流出口とを連通する流水路とを有する。流入口は、ベース本体の外周面の上部又はベース本体の上端面に形成される。流出口は、ベース本体の内周面の中央部に形成される。流水路は、ベース本体の内部に形成される。
【0008】
好ましい実施形態の研削工具では、ベース本体は、1個の流入口と、複数個の流出口とを有する。複数個の流出口は、周方向に全周に亘って配置される。流水路は、1個の流入口から分岐して複数個の流出口まで連通する。
【0009】
さらに好ましい実施形態の研削工具では、ベース本体は、内周面が、軸方向中央部に設けられた水平面を境に上側内周面と下側内周面とに分割され、上側内周面の内径が下側内周面の内径よりも小さく形成される。流出口は、水平面に形成されている。
【0010】
また、好ましい実施形態の研削工具では、固定板は、平板状に形成され、ベース本体から一方向に広がって設けられる。ベース本体は、固定板が設けられる方向の下部に水抜き口を有する。
【0011】
また、好ましい実施形態の研削工具では、研削工具用ベースは、透明な素材で形成されている。
【0012】
また、本発明は、モータと、モータの回転軸に取り付けられ、回転することで被加工材を研削する回転砥石とを備える研削工具に取り付けられる研削工具用ベースである。研削工具用ベースは、少なくとも回転軸を覆う筒状のベース本体と、ベース本体の下部に設けられる固定板とを備える。固定板は、被加工材に接触させることで、被加工材に対して回転砥石を所定の接触角度で接触させる形状を有する。ベース本体は、水を流入させる流入口と、水を流出させる流出口と、流入口と流出口とを連通する流水路とを有する。流入口は、ベース本体の外周面の上部又はベース本体の上端面に形成される。流出口は、ベース本体の内周面の中央部に形成される。流水路は、ベース本体の内部に形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の研削工具及び研削工具用ベースによれば、研削時に切粉を除去でき、且つ、研削部の視界を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る研削工具の斜視図である。
図2図1の研削工具の縦断面図である。
図3図1の研削工具の縦断面図である。
図4図1の研削工具用ベースの斜視図である。
図5図1の研削工具用ベースの斜視図である。
図6図1の研削工具用ベースの底面図である。
図7図4の研削工具用ベースのVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。本発明に係る研削工具は、平板状又は直方体状の被加工材を研削する際に用いる携帯型の研削工具である。ここでは、特に被加工材の周縁を面取り加工する面取り機を例に挙げて説明する。
【0016】
図1図7を参照して、本実施形態の研削工具1及び研削工具用ベース20について説明する。図1は、本実施形態に係る研削工具1の斜視図である。図2及び図3は、本実施形態の研削工具1の縦断面図である。図2は左右方向に平行な垂直面で切断した縦断面図で、図3は前後方向に平行な垂直面で切断した縦断面図である。図4及び図5は、本実施形態の研削工具用ベース20の斜視図である。図4は前方から見た斜視図で、図5は後方から見た斜視図である。図6は、本実施形態の研削工具用ベース20の底面図である。図7は、図4の研削工具用ベース20のVII-VII線断面図である。以下では、図1図3に示すように、研削工具1を通常使用する状態において、研削工具1の上下方向を上下方向と定義し、研削工具1の使用者から見て前側を前方として前後方向を定義する。また、上下方向及び前後方向に直交する方向を左右方向と定義する。
【0017】
図1図3に示すように、研削工具1は、本体11と、回転砥石12と、研削工具用ベース20とを備える。
【0018】
本体11は、両端が閉鎖された円筒状を有する。本体11は、回転軸13を有するモータ14を内蔵する。本実施形態では、本体11及び回転軸13は、軸方向が上下方向に平行となるように配置される。回転軸13の先端は、本体11の下端面に設けられた開口から、本体11の下方へと突出する。回転軸13の先端は、回転砥石12を着脱できるように構成されている。
【0019】
モータ14は、既知の携帯型の研削工具に用いられているエアモータである。本体11の側面には開口が形成されており、本体11の側面の開口には、コンプレッサー(図示せず)からモータ14にエアー(圧縮空気)を供給するためのエアー供給ダクト15が取り付けられている。
【0020】
回転砥石12は、モータ14の回転軸13に取り付けられ、回転することで被加工材Wを研削する。回転砥石12には、被加工材Wを研削可能な既知の研削用の砥石が用いられる。本実施形態では、回転砥石12は、上面の径が大きく、底面の径が小さい略円錐台形状を有している。回転砥石12の側面は、面取りのサイズに応じた形状を有している。すなわち、C面取りと呼ばれる角部を45°に落とす加工では、側面は軸に対して45°に傾斜している。また、R面取りと呼ばれる角部を丸める加工では、側面は、被加工材の削り取る面の半径と同等の半径で凹んだ側面となる。また、回転砥石12の高さ(上下方向長さ)は、面取りの大きさに依存した高さを有している。すなわち、大きく面取りする場合は、回転砥石12の高さは高く、小さく面取りする場合は、回転砥石12の高さは低くなっている。
【0021】
図4図7にも示すように、研削工具用ベース20は、ベース本体21と、固定板22とを有する。
【0022】
ベース本体21は、両端が開口した円筒状を有する。ベース本体21は、少なくとも回転軸13を覆う。ベース本体21は、さらに回転砥石12を覆ってもよい。すなわち、ベース本体21は、内周面21aの内側に回転軸13及び/又は回転砥石12を保持できる大きさを有する。本実施形態では、ベース本体21の内周面21aは、軸方向中央部に設けられた水平面211と、水平面211を境に分割された上側内周面21aa及び下側内周面21abとから構成されている。このとき、上側内周面21aaの内径は、下側内周面21abの内径よりも小さく形成されている。すなわち、水平面211は、下向きに設けられている。
【0023】
ベース本体21は、水を流入させる流入口23と、水を流出させる流出口24と、流入口23と流出口24とを連通する流水路25とを備える。具体的には、ベース本体21は、1個の流入口23と、複数個の流出口24とを備えている。
【0024】
流入口23は、ベース本体21の上端面21bに形成されている。流入口23は、水を供給する水供給ホース(図示せず)を取り付けられる大きさ及び形状を有している。流入口23には、水供給ホースを取り付けるために接続具(図示せず)が取り付けられてもよい。
【0025】
流出口24は、水平面211に形成されている。流出口24は、流入口23よりも細い直径を有している。複数個の流出口24は、水平面211に、互いに離間して、周方向に全周に亘って配置される。流出口24は、水平面211の内側寄りに配置される流出口24と、水平面211の外側寄りに配置される流出口24とが、周方向に交互に配置されることが好ましい。これにより、ベース本体21の内周面21aの内側の空間に、シャワーのように水を流出させることができる。
【0026】
流水路25は、ベース本体21の内部に形成される。ここで、ベース本体21の内部とは、ベース本体21を形成する円筒の中、すなわち、ベース本体21の内周面21aと外周面21cとの間を意味する。流水路25は、1個の流入口23から分岐して複数個の流出口24まで連通して形成される。具体的には、流水路25は、流入口23から下方へ延びる第1垂直路251と、流入口23と流出口24との間において、略水平に周方向に全周に亘って延びる水平路252と、水平路252から流出口24へと下方へ延びる第2垂直路253とから構成される。このとき、水平路252は、水平面に完全に平行に延びるのではなく、水の勢いと水の自重とによって水が水平路252全体へ自然に流れるように、流入口23から離れる側に向かって若干下向きに傾斜している。
【0027】
固定板22は、ベース本体21の下部に設けられる。固定板22は、被加工材Wに接触させることで、被加工材Wに対して回転砥石12を所定の接触角度で接触させる形状を有する。本実施形態では、固定板22は、平板状に形成される。固定板22は、ベース本体21に対して左右方向に広がるとともに、ベース本体21の前後方向中央部から前方に向けて一方向に広がって、水平面に平行に設けられている。
【0028】
また、ベース本体21は、固定板22が設けられる方向、すなわち前側の下部に水抜き口26が形成されている。水抜き口26は、上下方向が流出口24よりも下側から固定板22の上面まで開口し、周方向が全周の1/4~1/2程度の幅で開口している。
【0029】
また、ベース本体21は、水抜き口26が設けられる側と反対側、すなわち後側の上部にスリット27が形成され、スリット27の横に固定部28が設けられている。スリット27は、ベース本体21の上端面21bから軸方向下側に向かってベース本体21の下部まで延びている。固定部28は、スリット27の左右に設けられ、開口281aを有する一対の固定受具281と、固定受具281の開口281aに挿し通して固定する固定具282とから構成されている。固定具282は、例えば、ボルト及びナットである。
【0030】
このように構成される研削工具用ベース20は、ポリカーボネート材などの樹脂材で一体的に成形される。特にポリカーボネート材を使用することで、軽量で且つ高い強度を得ることができる。この研削工具用ベース20には、透明な素材が用いられることが好ましい。また、研削工具用ベース20は、ベース本体21と固定板22との接合部にフィレット部29を有することが好ましい。フィレット部29を有することで、研削工具用ベース20の強度を高めることができるとともに、研削工具1の使用者が研削工具1を手で持ちやすくすることができる。
【0031】
研削工具用ベース20は、本体11に取り付けられる。具体的には、研削工具用ベース20の上部に本体11の下部を差し込み、固定部28で固定することで研削工具用ベース20が本体11に取り付けられる。
【0032】
次に、研削工具1の使用方法について説明する。コンプレッサーからエアー供給ダクト15を介してモータ14にエアーを供給してモータ14を駆動する。同時に、流入口23に水供給ホースを接続し、流入口23から水を供給する。この状態で、被加工材Wの研削(面取り)を行う。
【0033】
図3に示すように、被加工材Wの後方から、回転砥石12を被加工材Wの後方に位置させた状態で固定板22の下面を被加工材Wの上面に接触させる。そして、回転砥石12を被加工材Wに接触させると、回転砥石12の側面が面取りを行う角度で被加工材Wに接触する。この状態で、研削工具1を左右方向に移動させて、被加工材Wの周縁の面取りを行う。
【0034】
以上のように、本発明の研削工具1では、モータ14にエアモータを使用し、研削工具用ベース20に流入口23、流出口24及び流水路25を備え、研削工具用ベース20の内周面21aの内側に水を流出させながら研削を行うことができる。モータ14にエアモータを使用することで、感電の恐れがなく研削工具用ベース20の内周面21aの内側に水を流出させることができる。そして、切削工具用ベース20の内周面21aの内側に水を流出させることで、研削時に生じた切粉は水とともに水抜き口26及びベース本体21の下端面の開口から除去されて、ベース本体21の内周面21aの内側で切粉が舞うことを抑制することができる。その結果、研削部の視界が切粉によって遮られることもなく、研削部の視界を良好に保つこともでき、作業効率を向上させることができる。特に、水抜き口26を設けることで、水が除去されやすくなり、より研削部の視界を良好に保つことができ、より作業効率を向上させることができる。また、研削を行う研削工具1の使用者が空気中に舞った切粉を吸い込むことを抑制でき、人体及び環境に優しい研削工具1を提供することができる。
【0035】
特に、被加工材Wが人工大理石(クォーツ)の場合、被加工材Wの中には様々な材料が混合されている。そのため、研削を行うと、被加工材Wが熱を持ち、被加工材Wの表面が焼けて、被加工材Wの一部が爆ぜることがある。また、被加工材Wが最新のテクノセラミックの場合、非常に硬い素材であり、研削時に出される切粉自体で被加工材Wの表面を傷つける恐れがある。本発明の研削工具1では、研削工具用ベース20の内周面21aの内側に水を流出させながら研削を行うことができため、このような問題を解消することもできる。その結果、研削の作業効率を大きく向上させることができる。
【0036】
また、切削工具用ベース20の内周面21aの内側に水を流出させることで、水により回転砥石12を冷却させることができ、回転砥石12の寿命を長くすることができる。一般には、研削工具1として電着されたダイヤモンド工具が使用されることが多い。このダイヤモンド工具は、研削時の摩擦で回転砥石12の表面が高温となり、回転砥石12の表面のダイヤモンドの脱落が早くなり、使用できる時間が短くなる。しかしながら、本発明のように、切削工具用ベース20の内周面21aの内側に水を流出させることで、回転砥石12の表面の温度を下げることができ、ダイヤモンド工具の寿命を長くすることができる。
【0037】
また、エアモータを使用することで、電気モータを使用する場合に比べて切削工具1を軽量化することができ、作業性を向上させることができる。
【0038】
また、研削工具1が研削工具用ベース20を備えることで、所望の角度で安定して回転砥石12を被加工材Wに接触させることができる。これにより、研削経験が少ない使用者であっても、研削工具1を用いて面取り作業などの研削作業を容易に行うことができる。特に、研削工具用ベース20を透明な素材で形成することで、研削部が見やすくなり、研削経験が少ない使用者であっても、研削工具1を用いた研削作業がより容易になる。
【0039】
また、研削工具用ベース20において、ベース本体21の前方に水抜き口26を設けることで、水抜き口26の反対側のベース本体21の後方下部を手で押さえながら研削しても、手が回転砥石12に触れることを抑制することができる。研削経験の少ない使用者が研削工具1を安定して使用しようとすると、研削部に近い回転砥石12付近を手で押さえて研削工具1を安定させることが多々ある。そのような場合でも、手が回転砥石12に触れることがなく、且つ、研削工具1の後方下部、つまりベース本体21の後方下部を手で押さえて研削工具1を支持できるため、研削工具1の操作性及び安全性を向上させることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、ベース本体21は、内周面21aに水平面211を有し、内周面21aが上側内周面21aaと下側内周面21abとに分割されているが、必ずしもこの構成でなくてもよい。例えば、ベース本体21の内周面21aは、水平面211を有さずに、上側内周面21aaと下側内周面21abとが面一でもよい。この場合、流出口24は、ベース本体21の内周面21aの中央部に設けられる。
【0042】
また、上記実施形態では、流入口23は、ベース本体21の上端面21bに形成されているが、必ずしもこの構成でなくてもよい。例えば、流入口23は、ベース本体21の外周面21cの上部に形成されてもよい。流入口23は、流出口24より上側に位置し、流入口23から流出口24に向かって、流入時の勢いと自重とで水が流れるように構成されればよい。
【0043】
また、上記実施形態では、ベース本体21は水抜き口26、スリット27及び固定部28を備えているが、必ずしもこの構成でなくてもよい。例えば、水はベース本体21の下端面の開口からも排出可能なため、水抜き口26はなくてもよい。また、本体11の外径とベース本体21の内径とを同一とし、本体11とベース本体21とを嵌め合わせるだけで研削工具用ベース20を本体11に取り付けられる場合は、スリット27及び固定部28はなくてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、本体11及びベース本体21は円筒状を有しているが、必ずしもこの構成でなくてもよい。本体11及びベース本体21は、ベース本体21に本体11が嵌り込む互いに断面が相似の筒状であればよく、角筒状などでもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、回転軸13を鉛直方向に沿った状態で使用する研削工具1について説明したが、本発明は、上記実施形態の研削工具1に限られない。例えば、本発明は、回転砥石12を45°の角度で被加工材Wに接触させて面取りを行う研削工具にも使用することができる。この場合、固定板22は、側面視略L字状に形成されて、被加工材の上面及び側面に固定板22を接触させることで、回転砥石を被加工材の周縁に45°の角度で接触させるようにすればよい。
【0046】
本発明の研削工具用ベース20は、回転砥石12により研削を行う研削工具1に限らず、回転砥石12に変えて回転して被加工材Wを切削する回転刃を備え、回転刃の回転により切削を行う切削工具にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 研削工具
11 本体
12 回転砥石
13 回転軸
14 モータ
20 研削工具用ベース
21 ベース本体
21a ベース本体の内周面
21aa ベース本体の上側内周面
21ab ベース本体の下側内周面
21b ベース本体の上端面
21c ベース本体の外周面
211 水平面
22 固定板
23 流入口
24 流出口
25 流水路
26 水抜き口
W 被加工材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7