(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042536
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】モルタル流動性試験システム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20240321BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20240321BHJP
G01N 11/00 20060101ALI20240321BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G01N3/00 M
G01B11/02 H
G01N11/00 E
G01N33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147316
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 仁悦
(72)【発明者】
【氏名】真壁 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】外川 雄大
【テーマコード(参考)】
2F065
2G061
【Fターム(参考)】
2F065AA23
2F065AA26
2F065AA56
2F065BB15
2F065DD06
2F065FF04
2F065JJ03
2F065QQ03
2F065QQ26
2F065QQ31
2F065UU05
2G061AA02
2G061AB01
2G061BA19
2G061CA08
2G061CB03
2G061EA02
2G061EB07
2G061EC05
(57)【要約】
【課題】広がったモルタルの測定、フロー値の算出及び記録を効率的に行うことができると共に、正確なフロー値を確実に算出できる。
【解決手段】フローテーブル21上のモルタルMを上側から撮影するカメラ部35と、撮影画像からモルタルMの輪郭線MBを検出する輪郭線検出部311と、輪郭線MB上の輪郭点の相互間距離が最大となる2つの輪郭点で長径LDを規定し、長径LDの直交線と輪郭線MBとの2つの交点のうちで距離が最大のものを短径SDに規定し、長径LDと短径SDの長さを算出する長径短径算出部312と、長径LDと短径SDの長さの第1平均値を算出し、別のモルタルMに基づく長径LDと短径SDの長さの第2平均値を算出し、第1平均値と第2平均値との平均値であるフロー値を算出するフロー値算出部313と、フロー値を格納する試験データ記録部323を備えるモルタル流動性試験システム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルフロー試験器と、
前記テーブルフロー試験器のフローテーブル上に広がったモルタルを上側から撮影するカメラ部と、
前記カメラ部が撮影する画像を表示する表示部と、
撮影された前記画像から前記モルタルの輪郭線を検出する輪郭線検出部と、
前記輪郭線の上に設定されている輪郭点の相互間距離が最大となる2つの前記輪郭点で長径を規定すると共に前記長径の直交線と前記輪郭線との2つの交点のうちで距離が最大となる2つの前記交点で短径を規定し、前記長径の長さと前記短径の長さを算出する長径短径算出部と、
前記長径の長さと前記短径の長さの第1平均値を算出し、別の前記モルタルに基づく前記長径の長さと前記短径の長さの第2平均値を算出し、前記第1平均値と前記第2平均値との平均値であるフロー値を算出するフロー値算出部と、
前記フロー値を格納する試験データ記録部とを備えることを特徴とするモルタル流動性試験システム。
【請求項2】
試験場所の情報を含む試験管理情報が入力される入力部を備え、
前記試験管理情報と前記フロー値を対応させて前記試験管理情報と前記フロー値を前記試験データ記録部に格納することを特徴とする請求項1記載のモルタル流動性試験システム。
【請求項3】
前記カメラ部と、前記表示部と、前記輪郭線検出部と、前記長径短径算出部と、前記フロー値算出部と、前記試験データ記録部と、前記入力部とが、携帯タブレットに一体として実装されていることを特徴とする請求項2記載のモルタル流動性試験システム。
【請求項4】
前記輪郭線検出部が、撮影された前記画像の中心点を原点とする所定角度毎の半直線の領域について画素値の差で輪郭点を抽出し、前記輪郭点の並びで規定される前記モルタルの輪郭線を検出し、
前記長径短径算出部が、
前記モルタルの輪郭線の略半円分に相当するそれぞれの前記輪郭点について、前記輪郭点を中心点とする、前記輪郭点と前記原点を結ぶ線の時計回り方向の所定角度領域と反時計回り方向の所定角度領域で、前記中心点の前記輪郭点と別の前記輪郭点との距離を算出して、相互間距離が最大となる2つの前記輪郭点で長径を規定する共に、前記長径の直交線と前記輪郭線との2つの交点のうちで距離が最大となる2つの前記交点で短径を規定し、
前記原点を通る前記長径との平行線と前記フローテーブルの縁との2つの交点間距離と前記長径との画像上の比から前記長径の長さを算出し、
前記原点を通る前記短径との平行線と前記フローテーブルの縁との2つの交点間距離と前記短径との画像上の比から前記短径の長さを算出する、
ことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のモルタル流動性試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばロックボルト工やアンカー工で定着材として注入するモルタルの流動性試験に用いられるモルタル流動性試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロックボルトやグラウンドアンカー工事では、定着材として注入するモルタルの柔らかさ、流動性を管理する方法として、JISR5201(セメントの物理試験方法)のテーブルフロー試験を用いることが日常管理項目に定められている。このテーブルフロー試験では、
図11に示すように、テーブルフロー試験器100のフローテーブル101上に略截頭円錐形のフローコーン102を載置し、フローコーン102に2回に分けて練りあがり未硬化モルタルを入れ、1回目と2回目のそれぞれにおいて未硬化モルタルを全面に亘って15回ずつ突き棒で突いた後、フローコーン102を抜き取る。
【0003】
そして、テーブルフロー試験器100のハンドル103を回し、フローテーブル101の動作ロッド104とカム105による回転上下動変換機構により、フローテーブル101に残ったモルタルMに15秒間に15回の落下運動を与え、広がったモルタルMの径を最大と認める長径とこれに直角な方向の短径を測定尺106により測定し、長径と短径の平均値をフロー値として算出すると共に、フローテーブル101上のモルタルMの写真を撮影し、フロー値と撮影した写真を記録する。更に、これらの作業を始めから2回繰り返すことがJISR5201に定められている。
【0004】
また、別の試験方法として、特許文献1には、現場の床上に載置したベースプレートの中央にフローコーンを載置し、フローコーン内にポリマーセメントモルタルを詰め、フローコーンを引き上げて透明な平板状の押圧プレートをモルタル試験体の上に載置し、押圧プレートの中央に錘を載置し、押圧プレートと錘との自重により変形したモルタル試験体の最大フロー長さとその直角方向のフロー長さを測定し、これらの平均長さを求める手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、現場でモルタルの注入を行う場合、現場の管理者が上記テーブルフロー試験を行って広がったモルタルMの測定、フロー値の算出と記録を行い、これから打設するモルタルに要求されている基準値に算出したフロー値が適合しているか確認した後に、モルタルの注入作業を行うことになる。そのため、現場の作業員の待ち時間が多くなり、施工作業が非効率になっている。また、現場の管理者はテーブルフロー試験を急かされる中で、測定、算出、記録を行わなければならないため、フロー値の算出に誤りが生じ易くなっている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、モルタルのテーブルフロー試験を行う際に、広がったモルタルの測定、フロー値の算出及び記録を効率的に行うことができると共に、正確なフロー値を確実に算出することができるモルタル流動性試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のモルタル流動性試験システムは、テーブルフロー試験器と、前記テーブルフロー試験器のフローテーブル上に広がったモルタルを上側から撮影するカメラ部と、前記カメラ部が撮影する画像を表示する表示部と、撮影された前記画像から前記モルタルの輪郭線を検出する輪郭線検出部と、前記輪郭線の上に設定されている輪郭点の相互間距離が最大となる2つの前記輪郭点で長径を規定すると共に前記長径の直交線と前記輪郭線との2つの交点のうちで距離が最大となる2つの前記交点で短径を規定し、前記長径の長さと前記短径の長さを算出する長径短径算出部と、前記長径の長さと前記短径の長さの第1平均値を算出し、別の前記モルタルに基づく前記長径の長さと前記短径の長さの第2平均値を算出し、前記第1平均値と前記第2平均値との平均値であるフロー値を算出するフロー値算出部と、前記フロー値を格納する試験データ記録部とを備えることを特徴とする。
これによれば、試験者がフローテーブル上に広がったモルタルをカメラ部で上側から撮影するだけで、広がったモルタルの測定、フロー値の算出及び記録が行われることから、モルタルのテーブルフロー試験を行う際に、広がったモルタルの測定、フロー値の算出及び記録を効率的に行うことができる。また、広がったモルタルの長径と短径を試験者の経験によって判断し、測定尺で測定する必要が無くなり、広がったモルタルの測定、フロー値の算出及び記録が自動的に行われることから、試験者の経験如何に拘われず、正確なフロー値を確実に算出することができる。
【0009】
本発明のモルタル流動性試験システムは、試験場所の情報を含む試験管理情報が入力される入力部を備え、前記試験管理情報と前記フロー値を対応させて前記試験管理情報と前記フロー値を前記試験データ記録部に格納することを特徴とする。
これによれば、入力された試験管理情報と算出したフロー値を対応させて記録することにより、試験データの信憑性を高めることができる。
【0010】
本発明のモルタル流動性試験システムは、前記カメラ部と、前記表示部と、前記輪郭線検出部と、前記長径短径算出部と、前記フロー値算出部と、前記試験データ記録部と、前記入力部とが、携帯タブレットに一体として実装されていることを特徴とする。
これによれば、試験者はテーブルフロー試験器と携帯タブレットを準備すれば、モルタルの流動性試験を行えることから、試験実施の容易性、便宜性を高めることができる共に、流動性試験の実施可能な場所の多様化を図ることができる。
【0011】
本発明のモルタル流動性試験システムは、前記輪郭線検出部が、撮影された前記画像の中心点を原点とする所定角度毎の半直線の領域について画素値の差で輪郭点を抽出し、前記輪郭点の並びで規定される前記モルタルの輪郭線を検出し、前記長径短径算出部が、前記モルタルの輪郭線の略半円分に相当するそれぞれの前記輪郭点について、前記輪郭点を中心点とする、前記輪郭点と前記原点を結ぶ線の時計回り方向の所定角度領域と反時計回り方向の所定角度領域で、前記中心点の前記輪郭点と別の前記輪郭点との距離を算出して、相互間距離が最大となる2つの前記輪郭点で長径を規定する共に、前記長径の直交線と前記輪郭線との2つの交点のうちで距離が最大となる2つの前記交点で短径を規定し、前記原点を通る前記長径との平行線と前記フローテーブルの縁との2つの交点間距離と前記長径との画像上の比から前記長径の長さを算出し、前記原点を通る前記短径との平行線と前記フローテーブルの縁との2つの交点間距離と前記短径との画像上の比から前記短径の長さを算出することを特徴とする。
これによれば、少ない演算量で高速に長径と短径を特定し、長径と短径の長さの算出、フロー値の算出を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のモルタル流動性試験システムによれば、モルタルのテーブルフロー試験を行う際に、広がったモルタルの測定、フロー値の算出及び記録を効率的に行うことができると共に、正確なフロー値を確実に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による実施形態のモルタル流動性試験システムの全体構成を示すブロック図。
【
図2】(a)、(b)は実施形態のモルタル流動性試験システムにおけるテーブルフロー試験器の斜視説明図。
【
図3】実施形態のモルタル流動性試験システムによる試験処理を示すフローチャート。
【
図4】実施形態のモルタル流動性試験システムにおける携帯タブレットの試験管理情報の入力画面例を示す説明図。
【
図5】実施形態のモルタル流動性試験システムにおける携帯タブレットのカメラ部での撮影時の画面例を示す説明図。
【
図6】実施形態のモルタル流動性試験システムにおける携帯タブレットの撮影画像解析時の画面例を示す説明図。
【
図7】実施形態のモルタル流動性試験システムにおける長径LDを規定する処理の画面説明図。
【
図8】実施形態のモルタル流動性試験システムにおける短径SDを規定する処理の画面説明図。
【
図9】実施形態のモルタル流動性試験システムにおける携帯タブレットの長径と短径の長さ算出時の画面例を示す説明図。
【
図10】実施形態のモルタル流動性試験システムにおける携帯タブレットのフロー値算出結果の確認画面例を示す説明図。
【
図11】(a)、(b)は従来のテーブルフロー試験器によるフロー値算出を説明する斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態のモルタル流動性試験システム〕
本発明による実施形態のモルタル流動性試験システム1は、
図1及び
図2に示すように、JISR5201(セメントの物理試験方法)のテーブルフロー試験を行う際に用いられるテーブルフロー試験器2と、携帯タブレット3とで構成される。テーブルフロー試験器2は、円盤状のフローテーブル21と、フローテーブル21の略中央から下方に突出する動作ロッド22と、ハンドル23と、カム24を備え、ハンドル23の回転動作でカム24を回転させることにより、カム24に下端が当接する動作ロッド22及び動作ロッド22に固定されているフローテーブル21を上下動させるようになっている。即ち、カム24と動作ロッド22は回転上下動変換機構を構成している。
【0015】
フローテーブル21上には、内径が下方に向かって漸次拡径する略截頭円錐形のフローコーン25が載置され、フローテーブル21上に載置されたフローコーン25には、上部開口から練りあがった未硬化モルタルを入れられ、未硬化モルタルの上面が全面に亘って15回ずつ突き棒26で突いて圧縮される。そして、フローコーン25を抜き取った後、ハンドル23を回してフローテーブル21を上下動させて、フローテーブル21に残ったモルタルMに15秒間に15回の落下運動を与え、モルタルMを広げた状態とし、後述する携帯タブレット3のカメラ部35でフローテーブル21上で広がったモルタルMを上側から撮影する。このフローコーン25に練りあがった未硬化モルタルを入れてからモルタルMを広げた状態とし、携帯タブレット3のカメラ部35で上側から撮影する動作は2回行われる。
【0016】
携帯タブレット3は、CPU等の制御部31と、ROM、RAM、フラッシュメモリ等で構成される記憶部32と、タッチパネル等の入力部33と、入力部33を兼ねるタッチパネル等の表示部34と、テーブルフロー試験器2のフローテーブル21上に広がったモルタルMを上側から撮影するカメラ部35と、内蔵タイマー36を備える。記憶部32には、制御部31と協働して携帯タブレット3の制御を担う制御プログラムを格納する制御プログラム格納部321と、後述する輪郭線検出部311の画像処理と長径短径算出部312の画像処理で使用する画像処理用データを格納する画像処理用データ格納部322と、後述する試験管理情報とフロー値を対応させて試験管理情報とフロー値を格納する試験データ記録部323が設けられている。
【0017】
制御部31は、制御プログラム格納部321の所定の試験処理制御プログラムと協働し、カメラ部35で撮影された画像からモルタルMの輪郭線MBを検出する輪郭線検出部311と、長径短径算出部312と、フロー値算出部313と、記録格納処理部314しての機能を担う。本実施形態における輪郭線検出部311は、カメラ部35で撮影された画像からテーブルフロー試験器2のフローテーブル21を検出し、画像中のフローテーブル21の大きさと、実際のフローテーブル21の大きさ(JIS規格でテーブル直径:300±1mmの円形)を適合させるように画像尺度を調整して設定する。撮影画像からのフローテーブル21の検出には、画素値の差で境界を認識して検出する処理、或いはパターンマッチングで検出する処理等の適宜の処理で検出することができる。
【0018】
更に、輪郭線検出部311は、検出したフローテーブル21の外側領域をノイズとして除去し、フローテーブル21上でモルタルMが存在する領域の輪郭線MBを検出する。フローテーブル21上におけるモルタルMの輪郭線MBの検出には、例えば画素値の差で境界を認識して検出する処理等の適宜の処理を用いることが可能であるが、本実施形態における輪郭線検出部311は、撮影された画像の中心点を原点とする所定角度毎の半直線の領域について画素値の差で輪郭点を抽出し、抽出した輪郭点の並びで規定されるモルタルMの輪郭線MBを検出するようになっている。
【0019】
長径短径算出部312は、モルタルMの輪郭線MBの上に設定されている輪郭点の相互間距離が最大となる2つの輪郭点で長径LDを規定すると共に、長径LDの直交線と輪郭線MBとの2つの交点のうちで距離が最大となる2つの交点で短径SDを規定し、長径LDの長さと短径SDの長さを算出する。
【0020】
本実施形態における長径短径算出部312は、モルタルMの輪郭線MBの略半円分に相当するそれぞれの輪郭点について、各輪郭点を中心点とする、その輪郭点と画像の中心点、即ち撮影時に表示され画像として取り込まれる中心指標線CL、CLの交点である(
図5参照)原点を結ぶ線の時計回り方向の所定角度領域と反時計回り方向の所定角度領域で、中心点の輪郭点と別の輪郭点との距離を算出して、相互間距離が最大となる2つの輪郭点で長径LDを規定する共に、長径LDの直交線と輪郭線MBとの2つの交点のうちで距離が最大となる2つの交点で短径SDを規定し、画像の中心点である原点を通る長径LDとの平行線とフローテーブル21の縁との2つの交点間距離と長径LDとの画像上の比から長径LDの長さを算出し、画像の中心点である原点を通る短径SDとの平行線とフローテーブル21の縁との2つの交点間距離と短径SDとの画像上の比から短径SDの長さを算出するように処理している。
【0021】
フロー値算出部313は、テーブルフロー試験器2で1回目に広げたモルタルMの撮影画像から算出した第1の長径LDの長さと第1の短径SDの長さとから第1平均値を算出し、テーブルフロー試験器2で2回目に広げたモルタルMの撮影画像から算出した第2の長径LDの長さと第2の短径SDの長さとから第2平均値を算出し、第1平均値と第2平均値との平均値であるモルタルMのフロー値を算出する。
【0022】
表示部34には、カメラ部35が撮影する画像がリアルタイムで表示される。また、入力部33からは、試験場所の情報を含む試験管理情報が入力される。そして、制御部31の記録格納処理部314は、入力された試験管理情報と、算出したフロー値を対応させ、算出したフロー値の記録日時を内蔵タイマー36から取得し、記録日時と試験管理情報と算出したフロー値を対応させた形式で試験データ記録部323に格納させる。
【0023】
本実施形態のモルタル流動性試験システム1で試験を行う際には、
図3に示すように、携帯タブレット3に入力部33から試験者が試験場所の情報を含む試験管理情報を入力し、入力された試験管理情報を試験データ記録部323に格納する(S1)。
図4は携帯タブレット3の試験管理情報の入力画面例であり、試験番号、試験場所の情報に相当する現場名及び場所、施工者等の情報から入力部33からの入力で入力されるようになっている。また、試験者は、テーブルフロー試験器2により、1回目の試験の試料としてフローテーブル21上に広がった状態のモルタルMを作成する(S2)。
【0024】
試験者は、携帯タブレット3のカメラ部35でフローテーブル21上に広がったモルタルMを上側から撮影し、携帯タブレット3の制御部31は、撮影された画像を記憶部32の所定の記憶領域に記憶する(S3)。カメラ部35でフローテーブル21上に広がったモルタルMを上側から撮影する際には、例えば
図5に示すように、表示部34で表示される撮影画面上で、なるべく中心指標線CLが交差する位置にフローテーブル21の中心を配置し、撮影補助線ALで囲まれる領域内にフローテーブル21が入るように撮影する。また、撮影時にフローテーブル21上に照明や太陽光により試験者の影が写り込む場合には適宜なシェードや垂れ幕をテーブルフロー試験器2の周囲に張り巡らせると良い。
【0025】
携帯タブレット3の輪郭線検出部311は、カメラ部35で撮影された画像からフローテーブル21を検出して、画像中のフローテーブル21の大きさと実際のフローテーブル21の大きさを適合させるように画像尺度を調整し、検出したフローテーブル21の外側領域をノイズとして除去し(S4)、撮影された画像の中心点を原点とする所定角度毎の半直線の領域について画素値の差で輪郭点を抽出し、抽出した輪郭点の並びで規定されるフローテーブル21上でモルタルMが存在する領域の輪郭線MBを検出する(S5)。
図6は撮影画像を解析して画像尺度を調整し、輪郭線MBを検出した時点の表示部34の画面例である。
【0026】
携帯タブレット3の長径短径算出部312は、モルタルMの輪郭線MBの略半円分に相当するそれぞれの輪郭点について、輪郭点を中心点とする、輪郭点と画像の中心点の原点Cを結ぶ線の時計回り方向の所定角度領域と反時計回り方向の所定角度領域で、中心点の輪郭点と別の輪郭点との距離を算出して、相互間距離が最大となる2つの輪郭点で長径LDを規定する共に、長径LDの直交線と輪郭線MBとの2つの交点のうちで距離が最大となる2つの交点で短径SDを規定する(S6)。
【0027】
長径LDの規定では、例えば
図7の輪郭点B1を中心点とし、輪郭点B1と画像の中心点の原点Cを結ぶ線の時計回り方向の15度等の所定角度領域と反時計回り方向の15度等の所定角度領域(
図7の二点鎖線の間の扇形状領域)において、中心点の輪郭点B1と別の輪郭点との距離を全て算出していく。この算出処理を、モルタルMの輪郭線MBの略半円分に相当するそれぞれの輪郭点について
図7の太線矢印のように実行し、相互間距離が最大となる2つの輪郭点を特定し、この2つの輪郭点で長径LDを規定する。短径の規定では、例えば
図8の二点鎖線のように、規定された長径LDの直交線と輪郭線MBとの2つの交点を抽出していき、これらの2つの交点のうちで距離が最大となる2つの交点を抽出して、この2つの交点で短径SDを規定する。
【0028】
更に、長径短径算出部312は、
図9に示すように、画像の中心点である原点Cを通る長径LDとの平行線とフローテーブル21の縁との2つの交点間距離と長径LDとの画像上の比から長径LDの長さを算出し、画像の中心点である原点Cを通る短径SDとの平行線とフローテーブル21の縁との2つの交点間距離と短径SDとの画像上の比から短径SDの長さを算出する(S7)。フロー値算出部313は、第1の長径LDの長さと第1の短径SDの長さとから第1平均値を算出する(S8)。
【0029】
更に、上述の試験が1回目である場合には、試験者は、テーブルフロー試験器2により、2回目の試験の試料としてフローテーブル21上に広がった状態のモルタルMを作成する(S9、S2)。そして、携帯タブレット3のカメラ部35でフローテーブル21上に広がったモルタルMを上側から撮影し、携帯タブレット3の制御部31がS3~S8の処理を繰り返し、フロー値算出部313は、第2の長径LDの長さと第2の短径SDの長さとから第2平均値を算出する(S8)。フロー値算出部313は、第2平均値の算出に応じて、或いは入力部33から入力される算出指令に応じて、第1の長径LDの長さと第1の短径SDの長さとの第1平均値と、第2の長径LDの長さと第2の短径SDの長さとの第2平均値とを平均した平均値であるモルタルMのフロー値を算出する(S10)。
【0030】
携帯タブレット3の記録格納処理部314は、入力部33から入力される記録指令に応じて、算出したフロー値の記録日時を内蔵タイマー36から取得し、記録日時と試験管理情報と算出したフロー値を対応させた形式で試験データ記録部323に格納する(S11)。
図10は携帯タブレット3のフロー値算出結果の確認画面例であり、試験管理情報と、第1の長径LDの長さと第1の短径SDの長さとの第1平均値と、第2の長径LDの長さと第2の短径SDの長さとの第2平均値と、第1平均値と第2平均値を平均した平均値であるモルタルMのフロー値が反映されている。この確認画面例でPDFボタン等を入力すると、算出したフロー値の記録日時が内蔵タイマー36から取得され、記録日時と試験管理情報と算出したフロー値を対応させた形式の試験データが試験データ記録部323に格納される。試験データ記録部323に格納された記録日時と試験管理情報と算出したフロー値との対応データは、入力部33から入力される表示指令に応じて、表示部34に適宜に表示することが可能である。
【0031】
本実施形態のモルタル流動性試験システム1によれば、試験者がフローテーブル21上に広がったモルタルMをカメラ部35で上側から撮影するだけで、広がったモルタルMの測定、フロー値の算出及び記録が行われることから、モルタルMのテーブルフロー試験を行う際に、広がったモルタルMの測定、フロー値の算出及び記録を効率的に行うことができる。また、広がったモルタルMの長径LDと短径SDを試験者の経験によって判断し、測定尺で測定する必要が無くなり、広がったモルタルMの測定、フロー値の算出及び記録が自動的に行われることから、試験者の経験如何に拘われず、正確なフロー値を確実に算出することができる。また、入力された試験管理情報と算出したフロー値を対応させて記録することにより、試験データの信憑性を高めることができる。
【0032】
また、カメラ部35と、表示部34と、輪郭線検出部311と、長径短径算出部312と、フロー値算出部313と、試験データ記録部323と、入力部33等を携帯タブレット3に一体として実装することにより、試験者はテーブルフロー試験器2と携帯タブレット3を準備すれば、モルタルMの流動性試験を行えることから、試験実施の容易性、便宜性を高めることができる共に、流動性試験の実施可能な場所の多様化を図ることができる。
【0033】
また、長径短径算出部312の処理により、少ない演算量で高速に長径と短径を特定し、長径と短径の長さの算出、フロー値の算出を行うことができる。
【0034】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や変形例も含まれる。
【0035】
例えば本実施形態のモルタル流動性試験システム1では、カメラ部35と、表示部34と、輪郭線検出部311と、長径短径算出部312と、フロー値算出部313と、試験データ記録部323と、入力部33とが、携帯タブレット3に一体として実装される構成としたが、これらの内の一部を別体とすることも可能であり、例えば表示部と輪郭線検出部と長径短径算出部とフロー値算出部と試験データ記録部が設けられる携帯型PCと、この携帯型PCに接続される別体のカメラ部とでシステムを構成する、或いはカメラ部と表示部と輪郭線検出部と長径短径算出部とフロー値算出部が設けられる携帯タブレットと、試験データ記録部が設けられるパーソナルコンピュータ若しくはサーバとでシステムを構成することも可能である。
【0036】
また、輪郭線検出部311が実行する撮影画像からのモルタルMの輪郭線MBの検出処理は、輪郭線MBを検出可能な適宜の技術で実行することが可能である。また、長径短径算出部312は、モルタルMの輪郭線MB上の代表点の設定処理も、代表点を設定可能な適宜の技術で実行することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えばロックボルト工やアンカー工で定着材として注入するモルタルの流動性試験を行う際に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…モルタル流動性試験システム 2…テーブルフロー試験器 21…フローテーブル 22…動作ロッド 23…ハンドル 24…カム 25…フローコーン 26…突き棒
3…携帯タブレット 31…制御部 311…輪郭線検出部 312…長径短径算出部 313…フロー値算出部 314…記録格納処理部 32…記憶部 321…制御プログラム格納部 322…画像処理用データ格納部 323…試験データ記録部 33…入力部 34…表示部 35…カメラ部 36…内蔵タイマー M…モルタル MB…輪郭線 LD…長径 SD…短径 CL…中心指標線 AL…撮影補助線 C…画像の中心点に相当する原点 B1…輪郭点 100…テーブルフロー試験器 101…フローテーブル 102…フローコーン 103…ハンドル 104…動作ロッド 105…カム 106…測定尺