(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042537
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】インゴット生産システム、インゴット生産方法、インゴット及び連続鋳造機
(51)【国際特許分類】
B22D 5/04 20060101AFI20240321BHJP
B22D 35/00 20060101ALI20240321BHJP
B22D 39/06 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B22D5/04 B
B22D35/00 L
B22D39/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147317
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】591203152
【氏名又は名称】株式会社豊栄商会
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樹神 康之
(72)【発明者】
【氏名】水野 等
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014LA09
4E014LA16
4E014LA17
(57)【要約】
【課題】大掛かりな設備を必要とせず、かつ、段取りに多大な時間を要することもなく、異なる種類のインゴットを生産する。
【解決手段】インゴット生産システムは、コンベアと、前記コンベアの進行方向に連続して配置された複数の第1の鋳型及び前記複数の第1の鋳型と異なる複数の第2の鋳型と、第1のインゴットを鋳造するための第1の量の第1の溶融金属を前記複数の第1の鋳型に供給する第1の溶融金属供給部と、前記第1のインゴットと異なる第2のインゴットを鋳造するための第2の量の第2の溶融金属を前記複数の第2の鋳型に供給する第2の溶融金属供給部と、を具備する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアと、
前記コンベアの進行方向に連続して配置された複数の第1の鋳型及び前記複数の第1の鋳型と異なる複数の第2の鋳型と、
第1のインゴットを鋳造するための第1の量の第1の溶融金属を前記複数の第1の鋳型に供給する第1の溶融金属供給部と、
前記第1のインゴットと異なる第2のインゴットを鋳造するための第2の量の第2の溶融金属を前記複数の第2の鋳型に供給する第2の溶融金属供給部と、
を具備するインゴット生産システム。
【請求項2】
請求項1に記載のインゴット生産システムであって、
前記複数の第1の鋳型及び前記複数の第2の鋳型は、交互に等間隔に配置される
インゴット生産システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインゴット生産システムであって、
前記第1の溶融金属供給部は、前記第1の量の前記第1の溶融金属を前記第1の鋳型に供給するように、内部が加圧される第1の注湯取鍋を有し、
前記第2の溶融金属供給部は、前記第2の量の前記第2の溶融金属を前記第2の鋳型に供給するように、内部が加圧される第2の注湯取鍋を有する
インゴット生産システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のインゴット生産システムであって、
前記第1の溶融金属供給部は、前記コンベアの進行に同期して回転する第1の分配器を有し、
前記第1の分配器は、前記回転時に、前記複数の第1の鋳型に前記第1の溶融金属をそれぞれ注湯する複数の第1の注湯ノズル部と、前記複数の第2の鋳型への前記第1の溶融金属の注湯が規制された第1の注湯規制部と、を有し、
前記第2の溶融金属供給部は、前記コンベアの進行に同期して回転する第2の分配器を有し、
前記第2の分配器は、前記回転時に、前記複数の第2の鋳型に前記第2の溶融金属をそれぞれ注湯する複数の第2の注湯ノズル部と、前記複数の第1の鋳型への前記第2の溶融金属の注湯が規制された第2の注湯規制部と、を有する
インゴット生産システム。
【請求項5】
請求項4に記載のインゴット生産システムであって、
前記第1の分配器の前記第1の注湯ノズル部は、前記第1の鋳型に前記第1の溶融金属を同時に注湯する複数の第1の注湯口を有し、
前記第2の分配器の前記第2の注湯ノズル部は、前記第2の鋳型に前記第2の溶融金属を同時に注湯する複数の第2の注湯口を有する
インゴット生産システム。
【請求項6】
請求項4に記載のインゴット生産システムであって、
前記複数の第1の注湯ノズル部から前記複数の第1の鋳型に前記第1の溶融金属をそれぞれ注湯することが可能なように前記第1の分配器が前記コンベアの進行に同期して回転し、前記複数の第2の注湯ノズル部から前記複数の第2の鋳型に前記第2の溶融金属をそれぞれ注湯することが可能なように前記第2の分配器が前記コンベアの進行に同期して回転するように、前記第1の分配器及び前記第2の分配器を駆動するよう制御する制御部
をさらに具備するインゴット生産システム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のインゴット生産システムであって、
前記第1の溶融金属供給部と前記第2の溶融金属供給部とを、独立して制御する制御部
をさらに具備するインゴット生産システム。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のインゴット生産システムであって、
前記複数の第1の鋳型と前記複数の第2の鋳型の形状及び/又はサイズは異なる
インゴット生産システム。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のインゴット生産システムであって、
前記第1の量と前記第2の量は異なる
インゴット生産システム。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のインゴット生産システムであって、
前記第1の溶融金属と前記第2の溶融金属の材質は異なる
インゴット生産システム。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のインゴット生産システムであって、
同時に生産された複数の第1のインゴットと複数の第2のインゴットとを選別する選別機
をさらに具備するインゴット生産システム。
【請求項12】
コンベアの進行方向に連続して配置された複数の第1の鋳型及び前記複数の第1の鋳型と異なる複数の第2の鋳型のうち、前記複数の第1の鋳型に、第1の量の第1の溶融金属を供給し、及び/又は
前記複数の第2の鋳型に、第2の量の第2の溶融金属を供給する
インゴット生産方法。
【請求項13】
請求項12に記載のインゴット生産方法により生産されるインゴット。
【請求項14】
コンベアと、
前記コンベアの進行方向に連続して配置された複数の第1の鋳型及び前記複数の第1の鋳型と異なる複数の第2の鋳型と、
を具備する連続鋳造機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造機を用いて金属製のインゴットを生産するインゴット生産システム及びインゴット生産方法と、インゴット生産方法により生産されたインゴットと、連続鋳造機とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からアルミニウムなどの金属材料はインゴットに鋳造して搬送されている。このようなインゴットは例えば連続鋳造機によって生産される。
【0003】
連続鋳造機は無端状のコンベア上にインゴット用の鋳型を連続して配置し、コンベアにより搬送される鋳型に溶融金属を所定の供給位置で供給している(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、このようなアルミニウムのインゴットを用いて部品などを製造する工場のニーズに応じて、吊り下げ可能なフックを有するインゴットやフックを有さないインゴット、異なるサイズのインゴット、異なる材質のインゴット等、複数種類のインゴットを生産して供給することが要求される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなインゴットを生産して供給する側では、或る種類のインゴットと別の種類のインゴットとをそれぞれ別々のラインに分けて、それぞれのラインの連続鋳造機で異なる種類のインゴットを鋳造することが考えられるが、それぞれ別個の設備が必要となり、設備が大掛かりになってしまう。
【0007】
また、インゴットを生産して供給する側で、異なる種類のインゴットを生産する場合に応じて連続鋳造機で用いる鋳型を交換して対応することが考えられるが、段取りに多大な時間を要する。通常、このような連続鋳造機には1台につき多数の鋳型が配置されており、その鋳型の取り外しや別の鋳型の固定の作業量を考慮すると、鋳型の交換による対応は現実的ではない。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、大掛かりな設備を必要とせず、かつ、段取りに多大な時間を要することもなく、異なる種類のインゴットを生産することができるインゴット生産システム、インゴット生産方法、インゴット及び連続鋳造機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係るインゴット生産システムは、
コンベアと、
前記コンベアの進行方向に連続して配置された複数の第1の鋳型及び前記複数の第1の鋳型と異なる複数の第2の鋳型と、
第1のインゴットを鋳造するための第1の量の第1の溶融金属を前記複数の第1の鋳型に供給する第1の溶融金属供給部と、
前記第1のインゴットと異なる第2のインゴットを鋳造するための第2の量の第2の溶融金属を前記複数の第2の鋳型に供給する第2の溶融金属供給部と、
を具備する。
【0010】
これにより、大掛かりな設備を必要とせず、かつ、段取りに多大な時間を要することもなく、第1のインゴット及び第2のインゴットを同時に生産したり、第1のインゴット又は第2のインゴットの一方だけを選択的に生産したりすることができる。
【0011】
前記複数の第1の鋳型及び前記複数の第2の鋳型は、交互に等間隔に配置されてもよい。
【0012】
等間隔に配置されることで、複数の第1の鋳型と複数の第2の鋳型とに対して所定量の溶融金属を正確に注湯しやすい。
【0013】
前記第1の溶融金属供給部は、前記第1の量の前記第1の溶融金属を前記第1の鋳型に供給するように、内部が加圧される第1の注湯取鍋を有し、
前記第2の溶融金属供給部は、前記第2の量の前記第2の溶融金属を前記第2の鋳型に供給するように、内部が加圧される第2の注湯取鍋を有してもよい。
【0014】
第1及び第2の注湯取鍋を用いることで、第1及び第2の鋳型に、第1及び第2の量の第1及び第2の溶融金属をさらに正確に供給することができる。
【0015】
前記第1の溶融金属供給部は、前記コンベアの進行に同期して回転する第1の分配器を有し、
前記第1の分配器は、前記回転時に、前記複数の第1の鋳型に前記第1の溶融金属をそれぞれ注湯する複数の第1の注湯ノズル部と、前記複数の第2の鋳型への前記第1の溶融金属の注湯が規制された第1の注湯規制部と、を有し、
前記第2の溶融金属供給部は、前記コンベアの進行に同期して回転する第2の分配器を有し、
前記第2の分配器は、前記回転時に、前記複数の第2の鋳型に前記第2の溶融金属をそれぞれ注湯する複数の第2の注湯ノズル部と、前記複数の第1の鋳型への前記第2の溶融金属の注湯が規制された第2の注湯規制部と、を有してもよい。
【0016】
コンベアの進行に同期して回転する第1及び第2の分配器を用いることで、複数の第1の鋳型と複数の第2の鋳型とに対して所定量の溶融金属を正確に注湯しやすい。
【0017】
前記第1の分配器の前記第1の注湯ノズル部は、前記第1の鋳型に前記第1の溶融金属を同時に注湯する複数の第1の注湯口を有し、
前記第2の分配器の前記第2の注湯ノズル部は、前記第2の鋳型に前記第2の溶融金属を同時に注湯する複数の第2の注湯口を有してもよい。
【0018】
第1及び第2の注湯ノズル部の複数の第1及び第2の注湯口から溶融金属を1個の第1及び第2の鋳型内に同時に注湯することで、溶融金属を短時間で第1及び第2の鋳型に注湯することができる。
【0019】
インゴット生産システムは、
前記複数の第1の注湯ノズル部から前記複数の第1の鋳型に前記第1の溶融金属をそれぞれ注湯することが可能なように前記第1の分配器が前記コンベアの進行に同期して回転し、前記複数の第2の注湯ノズル部から前記複数の第2の鋳型に前記第2の溶融金属をそれぞれ注湯することが可能なように前記第2の分配器が前記コンベアの進行に同期して回転するように、前記第1の分配器及び前記第2の分配器を駆動するよう制御する制御部
をさらに具備してもよい。
【0020】
コンベアの進行に同期して回転する第1及び第2の分配器を用いることで、複数の第1の鋳型と複数の第2の鋳型とに対して所定量の溶融金属を正確に注湯しやすい。
【0021】
インゴット生産システムは、
前記第1の溶融金属供給部と前記第2の溶融金属供給部とを、独立して制御する制御部
をさらに具備してもよい。
【0022】
これにより、第1のインゴット及び第2のインゴットを同時に生産したり、第1のインゴット又は第2のインゴットの一方だけを選択的に生産したりすることができる。
【0023】
前記複数の第1の鋳型と前記複数の第2の鋳型の形状及び/又はサイズは異なってもよい。
【0024】
これにより、1台の連続鋳造機で、異なる形状及び/又はサイズの第1のインゴット及び第2のインゴットを生産できる。
【0025】
前記第1の量と前記第2の量は異なってもよい。
【0026】
これにより、1台の連続鋳造機で、異なるサイズの第1のインゴット及び第2のインゴットを生産できる。
【0027】
前記第1の溶融金属と前記第2の溶融金属の材質は異なってもよい。
【0028】
これにより、1台の連続鋳造機で、異なる材質の第1のインゴット及び第2のインゴットを生産できる。
【0029】
インゴット生産システムは、
同時に生産された複数の第1のインゴットと複数の第2のインゴットとを選別する選別機
をさらに具備してもよい。
【0030】
これにより、複数の第1のインゴット及び複数の第2のインゴットをそれぞれ分別して搬送したりスタックしたりすることができる。
【0031】
本発明の一形態に係るインゴット生産方法は、
コンベアの進行方向に連続して配置された複数の第1の鋳型及び前記複数の第1の鋳型と異なる複数の第2の鋳型のうち、前記複数の第1の鋳型に、第1の量の第1の溶融金属を供給し、及び/又は
前記複数の第2の鋳型に、第2の量の第2の溶融金属を供給する。
【0032】
本発明の一形態に係るインゴットは、
このインゴット生産方法により生産される。
【0033】
本発明の一形態に係る連続鋳造機は、
コンベアと、
前記コンベアの進行方向に連続して配置された複数の第1の鋳型及び前記複数の第1の鋳型と異なる複数の第2の鋳型と、
を具備する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、大掛かりな設備を必要とせず、かつ、段取りに多大な時間を要することもなく、異なる種類のインゴットを生産することができる。
【0035】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るインゴット生産システムを示す上面図である。
【
図2】インゴット生産システムを示す正面図である。
【
図5】第1の分配器から第1の鋳型に第1の溶融金属を注湯する様子を示す。
【
図6】インゴット生産システムによるインゴット生産方法を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るインゴット生産システムを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0038】
I.第1の実施形態
【0039】
1.インゴット生産システムの構成
【0040】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るインゴット生産システムを示す上面図である。
図2は、インゴット生産システムを示す正面図である。
【0041】
インゴット生産システム1は、連続鋳造機10と、第1の溶融金属供給部50Aと、第2の溶融金属供給部50Bと、選別機80と、梱包装置90と、制御部70とを有する。第1の溶融金属供給部50Aは、第1の補給取鍋20Aと、第1の注湯取鍋30Aと、第1の分配器13Aとを有する。第2の溶融金属供給部50Bは、第2の補給取鍋20Bと、第2の注湯取鍋30Bと、第2の分配器13Bとを有する。制御部70は、第1の溶融金属供給部50Aと、第2の溶融金属供給部50Bとを、独立して制御する。制御部70は、第1の注湯制御盤701、第2の注湯制御盤702、連続鋳造機制御盤703、選別機制御盤704及び梱包装置制御盤705を有する。
【0042】
第1の補給取鍋20A及び第2の補給取鍋20Bとは同種であり、以下、これらを区別しないとき単に補給取鍋20と称する。第1の注湯取鍋30A及び第2の注湯取鍋30Bとは同種であり、以下、これらを区別しないとき単に注湯取鍋30と称する。第1の分配器13Aと第2の分配器13Bとは同種であり、以下、これらを区別しないとき単に分配器13と称する。
【0043】
【0044】
連続鋳造機10は、無端状のコンベア11と、このコンベア11の進行方向に連続して配置されたインゴット用の複数の第1の鋳型12A及び複数の第2の鋳型12Bとを有する。複数の第1の鋳型12Aと複数の第2の鋳型12Bとは、典型的には、コンベア11の進行方向に交互に等間隔に配置される。等間隔に配置されることで、複数の第1の鋳型12Aと複数の第2の鋳型12Bとに対して所定量の溶融金属の注湯を正確に行うことができる。複数の第1の鋳型12Aと複数の第2の鋳型12Bとは異なる。例えば、複数の第1の鋳型12Aと複数の第2の鋳型12Bとの形状及び/又はサイズは異なる。例えば、第1の鋳型12Aは吊り下げ可能なフックを有するインゴットを鋳造するための鋳型、第2の鋳型12Bはフックを有さないインゴットを鋳造するための鋳型でよい。即ち、第1の鋳型12A内に鋳造される第1のインゴット12aと、第2の鋳型12B内に鋳造される第2のインゴット12bとは、異なる。
【0045】
補給取鍋20は、可搬性を有し、例えばフォークリフトやAGVにより搬送が可能であり、内部に溶融金属としての溶融アルミニウムを貯留する。補給取鍋20は、工場内に配置された保持炉(溶解炉)から溶融金属を供給されてもよく、或いは別の工場内に配置された保持炉(溶解炉)から溶融金属を供給され、公道を介して搬送されてこの工場内に持ち込まれたものでもよい。補給取鍋20は、例えば工場内から供給されるエアーが加圧ポート21を介してその内部に供給されて内部が加圧され、配管22を介して内部に貯留された溶融金属を配管22の先端より注湯取鍋30の受湯口31に注湯する。この補給取鍋20では、加圧ポート21より供給されるエアーの圧力を制御することで配管22の先端より注湯取鍋30に注湯される溶融金属の単位時間当りの量(流量)の制御が可能である。
【0046】
注湯取鍋30は、可搬性を有し、例えばフォークリフトやAGVにより搬送が可能であり、内部に溶融金属としての溶融アルミニウムを貯留する。注湯取鍋30には、補給取鍋20から溶融金属が供給される。注湯取鍋30は、例えば工場内から供給されるエアーが加圧ポートを介してその内部に供給されて内部が加圧され、内部に貯留された溶融金属を、樋部32より分配器13の貯留部131に注湯する。この注湯取鍋30では、加圧ポートより供給されるエアーの圧力を制御することで樋部32より分配器13に注湯される溶融金属の単位時間当りの量(流量)の制御が可能である。注湯取鍋30は、補給取鍋20からの溶融金属をバッファする機能を有し、補給取鍋20の取替え時、注湯取鍋30に貯湯している溶融金属を分配器13に供給し続けることが可能であり、インゴットの生産が途切れないようにしている。
【0047】
注湯取鍋30は、荷重計40に載置されてもよい。この場合、注湯取鍋30に貯留された溶融金属の重量を算出し、注湯取鍋30から分配器13に単位時間当り所定の量の溶融金属を供給するように、算出された溶融金属の重量に基づき注湯取鍋30の内部を加圧する圧力を算出し、算出された圧力で注湯取鍋30の内部を加圧することで、注湯取鍋30から分配器13に溶融金属を供給する。
【0048】
【0049】
分配器13は、コンベア11の進行と同期して回転する。分配器13は、分配用ドラムである。分配器13は、貯留部131を有するドラム本体134と、複数の注湯ノズル部132と、複数の注湯規制部133と、を有する。貯留部131は、ドラム本体134内のリング状の空間であり、注湯取鍋30の樋部32から供給された溶融金属を一時的に貯留する。
【0050】
複数の注湯ノズル部132及び複数の注湯規制部133は、ドラム本体134の周面135に設けられ、コンベア11の進行と同期するドラム回転方向に交互に等間隔に配置される。注湯ノズル部132及び注湯規制部133は、それぞれ、ドラム本体134の周面135から放射状に突き出た中空筒状の1対のノズル136A、136Bを含む。中空筒状の1対のノズル136A、136Bの先端には、それぞれ注湯口が設けられる。注湯ノズル部132において、1対のノズル136A、136Bの先端の注湯口は、1対の注湯口137A、137Bとして開放されている。一方、注湯規制部133において、1対のノズル136A、136Bの先端の注湯口は、1対の閉塞部材138A、138Bにより液密に閉塞されている。なお、閉塞部材138A、138Bは、ノズル136A、136Bの先端の注湯口だけを閉塞するのではなく、ドラム本体134の貯留部131と連通する間際まで液密に閉塞し、貯留部131内の溶融金属がノズル136A、136Bの中空内に入り込まないようにするのがよい。これにより、溶融金属が貯留部131内に残留せず、規定量の溶融金属を注湯ノズル部132から鋳型12に注湯することができる。
【0051】
分配器13がコンベア11の進行と同期して回転するとき、注湯ノズル部132の1対の注湯口137A、137Bは、コンベア11に配置された1個の鋳型12に対向し、貯留部131内の溶融金属を1個の鋳型12内に同時に注湯する。一方、分配器13がコンベア11の進行と同期して回転するとき、回転方向に対してこの注湯ノズル部132の次に位置する注湯規制部133は、進行方向に対してこの鋳型12の次に位置する鋳型12に対向し、貯留部131内の溶融金属の鋳型12に対する注湯が規制される。コンベア11の進行に同期して回転する分配器13を用いることで、複数の鋳型12に対して所定量の溶融金属を正確に注湯しやすい。また、注湯ノズル部132の1対の注湯口137A、137Bから溶融金属を1個の鋳型12内に同時に注湯することで、溶融金属を短時間で鋳型12に注湯することができる。
【0052】
第1の分配器13A及び第2の分配器13Bは、一方がコンベア11の進行方向の上流に、他方が下流に設置される。
【0053】
図5は、第1の分配器から第1の鋳型に第1の溶融金属を注湯する様子を示す。
【0054】
第1の分配器13Aは、コンベア11の進行と同期して回転するとき、複数の第1の注湯ノズル部132Aの1対の注湯口137A、137B(複数の第1の注湯口)から複数の第1の鋳型12Aに溶融金属60(第1の溶融金属)をそれぞれ注湯する。一方、第1の注湯規制部133Aにおいては、複数の第2の鋳型12Bへの溶融金属60(第1の溶融金属)の注湯が規制される。
【0055】
第2の分配器13Bは、コンベア11の進行と同期して回転するとき、複数の第2の注湯ノズル部132Bの1対の注湯口137A、137B(複数の第2の注湯口)から複数の第2の鋳型12Bに溶融金属(第2の溶融金属)をそれぞれ注湯する。一方、第2の注湯規制部133Bにおいては、複数の第1の鋳型12Aへの溶融金属(第2の溶融金属)の注湯が規制される。
【0056】
選別機80は、複数の第1の鋳型12A内に鋳造された第1のインゴット12aと、複数の第2の鋳型12B内に鋳造された第2のインゴット12bとを選別する。例えば、選別機80は、計量器を有し、形状を画像で検出する、又は、吊り下げ可能なフックの有無かを光電センサで検出することにより、第1のインゴット12aと第2のインゴット12bとを選別してもよい。
【0057】
梱包装置90は、選別された第1のインゴット12aと第2のインゴット12bとをそれぞれ梱包する。例えば、梱包装置90は、同種のインゴットを複数本(例えば7本)整列させ、スタッキングマシンで取り出して搬送し、スタッキングマシンで1段7本を複数段(例えば14段)積み上げ、脚塊の上に載せてバンディングする。
【0058】
この様に構成されたインゴット生産システム1において、第1の補給取鍋20Aは、第1の注湯取鍋30Aに溶融金属を供給する。第1の注湯取鍋30Aは、第1の分配器13Aに溶融金属を供給する。第1の分配器13Aは、複数の第1の鋳型12Aに溶融金属を供給する。一方、第2の補給取鍋20Bは、第2の注湯取鍋30Bに溶融金属を供給する。第2の注湯取鍋30Bは、第2の分配器13Bに溶融金属を供給する。第2の分配器13Bは、複数の第2の鋳型12Bに溶融金属を供給する。
【0059】
インゴット生産システム1によれば、複数の第1の鋳型12A内に鋳造された第1のインゴット12aと、複数の第2の鋳型12B内に鋳造された第2のインゴット12bとを同時に生産することができる。また、第1の分配器13Aから溶融金属を複数の第1の鋳型12A内に供給し、第2の分配器13Bから溶融金属を複数の第2の鋳型12B内に供給しなければ、複数の第1の鋳型12A内に鋳造された第1のインゴット12aだけを生産することができる。逆に、第2の分配器13Bから溶融金属を複数の第2の鋳型12B内に供給し、第1の分配器13Aから溶融金属を複数の第1の鋳型12A内に供給しなければ、複数の第2の鋳型12B内に鋳造された第2のインゴット12bだけを生産することができる。
【0060】
2.インゴット生産方法
【0061】
図6は、インゴット生産システムによるインゴット生産方法を示すフローチャートである。
【0062】
ここでは、第1のインゴット12a及び第2のインゴット12bを同時に生産する場合を説明する。
【0063】
第1の注湯取鍋30A及び第2の注湯取鍋30Bは、典型的には予め設置されている。フォークリフトやAGVを使って第1の注湯取鍋30A及び第2の注湯取鍋30Bを設置してもよい(ステップS1)。一方、典型的にはフォークリフトやAGVを使って、第1の溶融金属及び第2の溶融金属が充填された第1の補給取鍋20A及び第2の補給取鍋20Bを搬入し、設置する(ステップS2)。制御部70の選別機制御盤704及び梱包装置制御盤705は、選別機80及び梱包装置90の運転を開始する(ステップS3)。
【0064】
制御部70の連続鋳造機制御盤703の制御により、コンベア11を進行させ、第1の分配器13A及び第2の分配器13Bを、コンベア11の進行と同期して回転させる(ステップS4)。具体的には、連続鋳造機制御盤703は、複数の第1の注湯ノズル部132Aから複数の第1の鋳型12Aに第1の溶融金属をそれぞれ注湯することが可能なように第1の分配器13Aがコンベア11の進行に同期して回転し、複数の第2の注湯ノズル部132Bから複数の第2の鋳型12Bに第2の溶融金属をそれぞれ注湯することが可能なように第2の分配器13Bがコンベア11の進行に同期して回転するように、第1の分配器13A及び第2の分配器13Bを駆動する。
【0065】
次に、制御部70の第1の注湯制御盤701及び第2の注湯制御盤702は、第1の補給取鍋20A及び第1の注湯取鍋30Aと、第2の補給取鍋20B及び第2の注湯取鍋30Bとを独立して制御する。
【0066】
具体的には、制御部70の第1の注湯制御盤701及び第2の注湯制御盤702は、第1の補給取鍋20A及び及び第2の補給取鍋20Bの内部の加圧を開始し、内部に充填された第1の溶融金属及び第2の溶融金属を、第1の注湯取鍋30A及び第2の注湯取鍋30Bに供給し始める(ステップS5)。
【0067】
なお、第1の補給取鍋20A及び及び第2の補給取鍋20Bが空になったら、第1の補給取鍋20A及び及び第2の補給取鍋20Bの内部の加圧を停止し、第1の補給取鍋20A及び及び第2の補給取鍋20Bを搬出する(ステップS6)。そして再び、第1の溶融金属及び第2の溶融金属が充填された第1の補給取鍋20A及び第2の補給取鍋20Bを搬入し、設置する(ステップS2)。
【0068】
制御部70の第1の注湯制御盤701及び第2の注湯制御盤702は、第1の注湯取鍋30A及び第2の注湯取鍋30Bの内部の加圧を開始し、第1の補給取鍋20A及び及び第2の補給取鍋20Bから供給された第1の溶融金属及び第2の溶融金属を、第1の分配器13A及び第2の分配器13Bに供給し始める(ステップS7)。
【0069】
このような制御部70の第1の注湯制御盤701の制御により、第1のインゴット12aを鋳造するための第1の量の第1の溶融金属を第1の分配器13Aから第1の鋳型12Aに供給するように、第1の補給取鍋20A及び第1の注湯取鍋30Aの内部を加圧する。これにより、第1の注湯取鍋30Aから第1の分配器13Aを介して第1の鋳型12Aに、第1の量の第1の溶融金属を供給する(ステップS8)。
【0070】
一方、制御部70の第2の注湯制御盤702の制御により、第2のインゴット12bを鋳造するための第2の量の第2の溶融金属を第2の分配器13Bから第2の鋳型12Bに供給するように、第2の補給取鍋20B及び第2の注湯取鍋30Bの内部を加圧する。これにより、第2の注湯取鍋30Bから第2の分配器13Bを介して第2の鋳型12Bに、第2の量の第2の溶融金属を供給する(ステップS8)。
【0071】
ここで、典型的には、第1の鋳型12Aと第2の鋳型12Bの形状及び/又はサイズは異なる。このため、典型的には、鋳造される第1のインゴット12aと第2のインゴット12bの形状及び/又はサイズは異なる。第1のインゴット12aを鋳造するための第1の溶融金属の量である第1の量と、第2のインゴット12bを鋳造するための第2の溶融金属の量である第2の量とは、同じでもよいし、異なってもよい。第1の溶融金属と第2の溶融金属との材質は、同じでもよいし、異なってもよい。
【0072】
第1の分配器13Aは、コンベア11の進行と同期して回転するとき、コンベア11上を搬送される複数の第1の鋳型12Aに複数の第1の注湯ノズル部132Aから第1の量の第1の溶融金属をそれぞれ注湯する。一方、第1の注湯規制部133Aにおいては、複数の第2の鋳型12Bへの第1の溶融金属の注湯が規制される。これにより、第1の分配器13Aから第1の溶融金属が、コンベア11に1個おきに配置された複数の第1の鋳型12Aに断続的に供給されて、第1の溶融金属から第1のインゴット12aが鋳造される。
【0073】
第2の分配器13Bは、コンベア11の進行と同期して回転するとき、コンベア11上を搬送される複数の第2の鋳型12Bに複数の第2の注湯ノズル部132Bから第2の量の第2の溶融金属をそれぞれ注湯する。一方、第2の注湯規制部133Bにおいては、複数の第1の鋳型12Aへの第2の溶融金属の注湯が規制される。これにより、第2の分配器13Bから第2の溶融金属が、コンベア11に1個おきに配置された複数の第2の鋳型12Bに断続的に供給されて、第2の溶融金属から第2のインゴット12bが鋳造される。
【0074】
第1の溶融金属が固化した複数の第1のインゴット12aが複数の第1の鋳型12Aから取り出されることで、複数の第1のインゴット12aが生産される。第2の溶融金属が固化した複数の第2のインゴット12bが複数の第2の鋳型12Bから取り出されることで、複数の第2のインゴット12bが生産される。生産された複数の第1のインゴット12a及び複数の第2のインゴット12bは、水槽(不図示)内で冷却される。選別機80は、生産された複数の第1のインゴット12a及び複数の第2のインゴット12bを選別する(ステップS9)。梱包装置90は、選別された第1のインゴット12a及び複数の第2のインゴット12bを梱包する(ステップS10)。これにより、複数の第1のインゴット12a及び複数の第2のインゴット12bをそれぞれ分別して搬送したりスタックしたりすることができる。
【0075】
ここでは、第1のインゴット12a及び第2のインゴット12bを同時に生産する場合を説明した。これに対して、第1のインゴット12aのみを生産する場合には、制御部70の第1の注湯制御盤701の制御により、第1のインゴット12aを鋳造するための第1の量の第1の溶融金属を第1の分配器13Aに供給するように、第1の補給取鍋20A及び第1の注湯取鍋30Aの内部を加圧すればよい。一方、制御部70の第2の注湯制御盤702は、第2の補給取鍋20B及び第2の注湯取鍋30Bを加圧しなければよい。第2の分配器13Bは駆動していてもよい。要するに、第2の溶融金属が第2の分配器13Bに供給されなければよい。
【0076】
同様に、第2のインゴット12bのみを生産する場合には、制御部70の第2の注湯制御盤702の制御により、第2のインゴット12bを鋳造するための第2の量の第2の溶融金属を第2の分配器13Bに供給するように、第2の補給取鍋20B及び第2の注湯取鍋30Bの内部を加圧すればよい。一方、制御部70の第1の注湯制御盤701は、第1の補給取鍋20A及び第1の注湯取鍋30Aを加圧しなければよい。第1の分配器13Aは駆動していてもよい。要するに、第1の溶融金属が第1の分配器13Aに供給されなければよい。
【0077】
3.変形例
【0078】
注湯規制部133は、ノズル136A、136Bの中空部分を閉塞部材138A、138Bにより閉塞する形態(
図4)でなくてもよい。例えば、ドラム本体134の周面135に、注湯規制部133に相当するノズル136A、136Bを設けない(注湯ノズル部132に相当するノズル136A、136Bだけを設ける)ことで注湯規制部133を構成してもよい。
【0079】
II.第2の実施形態
【0080】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るインゴット生産システムを示す正面図である。
【0081】
インゴット生産システム2は、分配器13を有さない。注湯取鍋30の樋部32から分配器13を介さずに直接、溶融金属がコンベア11により搬送される鋳型12に供給される。
【0082】
インゴット生産システム2によれば、制御部70の第1の注湯制御盤701の制御により、第1のインゴット12aを鋳造するための第1の量の第1の溶融金属を第1の注湯取鍋30Aから第1の鋳型12Aに供給するように、第1の補給取鍋20A及び第1の注湯取鍋30Aの内部を加圧する。これにより、第1の注湯取鍋30Aから樋部32を介して第1の鋳型12Aに、第1の量の第1の溶融金属を供給する。これにより、第1の注湯取鍋30Aから樋部32を介して第1の溶融金属が、コンベア11に1個おきに配置された複数の第1の鋳型12Aに断続的に供給されて、第1の溶融金属から第1のインゴット12aが鋳造される。
【0083】
一方、制御部70の第2の注湯制御盤702の制御により、第2のインゴット12bを鋳造するための第2の量の第2の溶融金属を第2の注湯取鍋30Bから第2の鋳型12Bに供給するように、第2の補給取鍋20B及び第2の注湯取鍋30Bの内部を加圧する。これにより、第2の注湯取鍋30Bから樋部32を介して第2の鋳型12Bに、第2の量の第2の溶融金属を供給する。これにより、第2の注湯取鍋30Bから樋部32を介して第2の溶融金属が、コンベア11に1個おきに配置された複数の第2の鋳型12Bに断続的に供給されて、第2の溶融金属から第2のインゴット12bが鋳造される。
【0084】
III.結語
【0085】
インゴット生産システム1によれば、コンベア11上を搬送される複数の第1の鋳型12Aに第1の量の第1の溶融金属をそれぞれ注湯することで、第1の溶融金属がコンベア11に1個おきに配置された複数の第1の鋳型12Aに断続的に供給されて、第1の溶融金属から第1のインゴット12aが鋳造される。同時に、コンベア11上を搬送される複数の第2の鋳型12Bに第2の量の第2の溶融金属をそれぞれ注湯することで、第2の溶融金属がコンベア11に1個おきに配置された複数の第2の鋳型12Bに断続的に供給されて、第2の溶融金属から第2のインゴット12bが鋳造される。
【0086】
これにより、大掛かりな設備を必要とせず、かつ、段取りに多大な時間を要することもなく、第1のインゴット12a及び第2のインゴット12bを同時に生産したり、第1のインゴット12a又は第2のインゴット12bの一方だけを選択的に生産したりすることができる。
【0087】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、様々に変形して実施が可能であり、その実施の範囲も本発明の技術的範囲に属するものである。
【0088】
例えば、上記実施形態では、1つの連続鋳造機10を開示するのみであったが、本発明は実際には複数の連続鋳造機10を有するシステムを前提としている。ただし、1つの連続鋳造機10を有するシステムにも本発明を適用することが可能である。
【0089】
また、上記の実施形態では、溶融金属として溶融アルミニウムを挙げたが、他の金属であっても勿論かまわない。
【0090】
更に、加圧系の構成は様々な態様に変形することが可能であり、制御部70はシーケンサによる構成、コンピュータを使った構成等を採用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 インゴット生産システム
10 連続鋳造機
20 補給取鍋
30 注湯取鍋
11 コンベア
12 鋳型
13 分配器