(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042544
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】金属検知用アンテナおよび硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/14 20190101AFI20240321BHJP
G07D 5/08 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G07D11/14
G07D5/08 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147324
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】長島 隆一
【テーマコード(参考)】
3E002
3E141
【Fターム(参考)】
3E002BC02
3E141AA08
3E141FF01
3E141FF09
3E141JA15
3E141KA01
3E141LA77
(57)【要約】
【課題】金属の検知精度を向上させることが可能な金属検知用アンテナおよび硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】この金属検知用アンテナ5は、基板51と、基板51に形成された配線パターンからなる複数の空芯コイル52と、を備え、複数の空芯コイル52は、外周コイル52aと、外周コイル52aの内側に配置される内周コイル52bとを含み、外周コイル52aと内周コイル52bとは、磁界を発生させるとともに、外周コイル52aが発生させる磁界における金属を検知したときの磁束の変化量と、内周コイル52bが発生させる磁界における金属を検知したときの磁束の変化量との差が小さくなるように、外周コイル52aにより発生する磁界における磁束は、内周コイル52bにより発生する磁界における磁束よりも大きい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に形成された配線パターンからなる複数の空芯コイルと、を備え、
前記複数の空芯コイルは、外周コイルと、前記外周コイルの内側に配置される内周コイルとを含み、
前記外周コイルと前記内周コイルとは、磁界を発生させるとともに、金属の検知範囲に対して前記外周コイルが発生させる磁界における金属を検知したときの磁束の変化量と、前記内周コイルが発生させる磁界における金属を検知したときの磁束の変化量との差が小さくなるように、前記外周コイルにより発生する磁界における磁束は、前記内周コイルにより発生する磁界における磁束よりも大きい、金属検知用アンテナ。
【請求項2】
硬貨の入金処理および出金処理を行うための硬貨処理装置の硬貨を搬送する搬送路に設けられ、前記外周コイルと前記内周コイルとは、前記搬送路に沿った辺を有する角が丸い四角形形状または四角形形状を有している、請求項1に記載の金属検知用アンテナ。
【請求項3】
検知対象の最小の硬貨の半径をc/2とした場合に、前記外周コイルは、前記搬送路の幅方向の両側に設けられる壁部から約c/2の位置に外周コイル幅の中心が位置する、請求項2に記載の金属検知用アンテナ。
【請求項4】
検知対象の硬貨のうち最小の硬貨の厚みをgとした場合に、前記外周コイルにより、前記搬送路の幅方向の両側に設けられる壁部から距離がg以下の位置まで巻かれている、請求項2に記載の金属検知用アンテナ。
【請求項5】
前記外周コイルの内側には、複数の前記内周コイルが隣り合って配置され、
隣り合う前記内周コイルの幅の中心間距離の各々をe1、e2・・・etとし、検知対象の最小の硬貨の直径をcとした場合に、e1<c、e2<c・・・et<cである、請求項2に記載の金属検知用アンテナ。
【請求項6】
前記外周コイルと前記内周コイルとの合成インダクタンスが、前記内周コイルの合成インダクタンスより大きい、請求項1に記載の金属検知用アンテナ。
【請求項7】
硬貨の入金処理および出金処理を行うための硬貨処理装置の硬貨が排出される排出トレイに設けられ、同一中心線を有する前記外周コイルと前記内周コイルとが、前記排出トレイの外周部に沿った辺を有する楕円形状、円形状、または角が丸い四角形形状を有している、請求項1に記載の金属検知用アンテナ。
【請求項8】
前記外周コイルは、検知対象の硬貨のうち最小の硬貨を検知範囲縁に配置した場合に、最小の硬貨の内側を結んだ線となるように配置されている、請求項7記載の金属検知用アンテナ。
【請求項9】
前記基板の硬貨を検知する検知面とは反対側の面に、比透磁率の高い構造物が取り付けられている、請求項1に記載の金属検知用アンテナ。
【請求項10】
前記外周コイルの内側には、前記内周コイルが配置され、
隣り合うコイルの幅の中心間距離の各々をa1、a2・・・amとし、検知対象の最小の硬貨の直径をcとした場合に、a1<c、a2<c・・・am<cである、請求項1に記載の金属検知用アンテナ。
【請求項11】
コイル幅と空芯の関係は、平面視においてコイルの外寸法から内寸法を引いたコイル幅の各々をb1、b2、b3・・・bnとし、空芯の隙間の距離をd1、d2、d3・・・dn-1とした場合に、(b1+b2)/2≦d1、(b2+b3)/2≦d2・・・(bn-1+bn)/2≦dn-1である、請求項1に記載の金属検知用アンテナ。
【請求項12】
投入された硬貨を収納部に搬送する搬送路と、硬貨が排出される排出トレイと、前記搬送路または前記排出トレイの少なくとも一方に設けられる、硬貨検知用アンテナとを備え、
前記硬貨検知用アンテナは、基板と、前記基板に形成された配線パターンからなる複数の空芯コイルと、を備え、前記複数の空芯コイルは、外周コイルと、前記外周コイルの内側に配置される内周コイルとを含み、前記外周コイルと前記内周コイルとは、磁界を発生させるとともに、硬貨の検知範囲に対して前記外周コイルが発生させる磁界における硬貨を検知したときの磁束の変化量と、前記内周コイルが発生させる磁界における硬貨を検知したときの磁束の変化量との差が小さくなるように、前記外周コイルにより発生する磁界における磁束は、前記内周コイルにより発生する磁界における磁束よりも大きい、硬貨処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属検知用アンテナおよび硬貨処理装置に関し、特に、空芯コイルを備える金属検知用アンテナおよび硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空芯コイルを備える硬貨処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、硬貨の入金や出金を行う硬貨釣銭機(硬貨処理装置)が開示されている。この硬貨釣銭機は、入金時に硬貨を投入するための硬貨投入部と、出金時に硬貨が排出される硬貨釣銭口と、硬貨釣銭口から排出された硬貨を貯留するための受皿とを備える。受皿は、底部と、底部を囲む壁部とから構成され、上部が開口している。受皿の下部には、受皿に硬貨(金属)が残留しているか否かを検出するためのセンサ素子(金属検知用アンテナ)が設けられている。センサ素子は、基板と、線状の空芯を有するスパイラルコイル(空芯コイル)とを備える。センサ素子は、スパイラルコイルに交流電流を印加することにより磁界が発生する。そして、受皿上に硬貨が存在する場合に、スパイラルコイルから発生した磁界における磁束は、硬貨により、電磁誘導(渦電流損出)が発生し、スパイラルコイルに印加された交流電流に変化が生じる。この変化量により、センサ素子は、硬貨の有無を検知するように構成されている。ここで、スパイラルコイルから発生する磁束の量は、スパイラルコイルに近いほど大きく、スパイラルコイルから離れるほど小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載されたように受皿の縁部に壁部を含む場合、受皿の底部に対して硬貨が平行になる場合に加えて、排出された硬貨が壁部に接触し、底部に対して傾斜した状態になる場合がある。この場合、受皿の底部に対して硬貨が平行になる場合は、硬貨全体がスパイラルコイルに近いので、硬貨を貫通する磁束は大きい。一方で、受皿の縁部(検知範囲の外周部)は、スパイラルコイルから遠いので貫通する磁束は非常に小さい。付け加えて、底部に対して硬貨が傾斜した状態なので、傾斜とコイルの位置により、硬貨を貫通する磁束が極端に小さくなる場合がある。その結果、磁束の変化量が小さいことに起因して、傾斜した状態の硬貨は検知するのが難しいという問題点がある。さらに、直立状態の貨幣についても同様な課題がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、金属の検知精度を向上させることが可能な金属検知用アンテナおよび硬貨処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による金属検知用アンテナは、基板と、基板に形成された配線パターンからなる複数の空芯コイルと、を備え、複数の空芯コイルは、外周コイルと、外周コイルの内側に配置される内周コイルとを含み、外周コイルと内周コイルとは、磁界を発生させるとともに、金属の検知範囲に対して外周コイルが発生させる磁界における金属を検知したときの磁束の変化量と、内周コイルが発生させる磁界における金属を検知したときの磁束の変化量との差が小さくなるように、外周コイルにより発生する磁界における磁束は、内周コイルにより発生する磁界における磁束よりも大きい。
【0008】
この発明の第1の局面による金属検知用アンテナでは、外周コイルにより発生する磁界が、内周コイルにより発生する磁界よりも大きい。これにより、内周コイルによる外周コイルの磁界の打ち消しが小さくなり、外周側の磁界の磁束をより大きくすることができる。そして、壁部と底部とを有する釣銭口に設けた場合、外周コイルを壁部の近傍に配置することで、壁部近傍の磁束を大きくすることができる。次に、検出する金属が壁部に接触し、底部に対して傾斜した状態においても、外周コイルの磁束が金属に直角に当たるように外周コイルの位置を指定することで、金属を貫通する磁束の量を大きくすることができる。その結果、外周コイルに金属が位置する場合、外周コイルと内周コイルとで同じ磁界を発生させた場合と比べて、磁束の変化量が大きくなり、壁部の傾斜した金属も中央部の水平に置かれた金属も同じ磁界の変化量で検知することができる。つまり、磁束変化の均一化で、金属位置による最小磁束変化のばらつきが小さくなり、閾値の改善とレンジの拡大を行い、金属位置による最小磁束変化のばらつきが小さくなることによる、閾値の改善とレンジの拡大で金属の検知精度を向上させることができる。本発明では、上記目的を達成するために、検知精度を上げる手段として、磁束変化の均一化を行っており、加えて傾斜金属対応と磁束増加と直立金属対応により個別課題の対応と磁界の強化および磁界の漏れ対応を行っている。この発明の第1の局面による金属検知用アンテナは、基板と、基板に形成された配線パターンからなる複数の空芯コイルと、を備える。複数の空芯コイルは、外周コイルと、外周コイルの内側に配置される内周コイルとであり、磁界を発生させる。外周コイルは主に検知範囲側面の斜向した金属を検知するためのコイル、内周コイルは主に検知範囲中央の水平な金属を検知するためのコイルである。次に、検知範囲の外周側は、遠距離を検知でき、検知範囲では、どこに金属を置いても同じ磁束変化にすることで検知精度が向上する。具体的には、外周コイルの磁束を大きくし、中方の磁束を小さくすることで実現する。付け加えて、磁束変化のばらつきが小さいことにより、広範囲の検知を可能にする。また、硬貨を金属片に置き換えても同様な効果を得られる。
【0009】
この発明の第2の局面による硬貨処理装置は、投入された硬貨を収納部に搬送する搬送路と、硬貨が排出される排出トレイと、搬送路または排出トレイの少なくとも一方に設けられる、金属検知用アンテナとを備え、金属検知用アンテナは、基板と、基板に形成された配線パターンからなる複数の空芯コイルと、を備え、複数の空芯コイルは、外周コイルと、外周コイルの内側に配置される内周コイルとを含み、外周コイルと内周コイルとは、磁界を発生させるとともに、硬貨の検知範囲に対して外周コイルが発生させる磁界における硬貨を検知したときの磁束の変化量と、内周コイルが発生させる磁界における硬貨を検知したときの磁束の変化量との差が小さくなるように、外周コイルにより発生する磁界における磁束は、内周コイルにより発生する磁界における磁束よりも大きい。
【0010】
この発明の第2の局面による硬貨処理装置では、上記のように、外周コイルにより発生する磁界における磁束が、内周コイルにより発生する磁界における磁束よりも大きいことにより、排出トレイが壁部と底部とを有する場合に、壁部近傍に外周コイルを配置することにより、壁部近傍の磁束を大きくすることができる。これにより、検出する硬貨が壁部に接触し、底部に対して傾斜した状態においても、硬貨を貫通する磁束の量を大きくすることができる。その結果、磁束の変化量が大きくなり、底部に対して傾斜した状態の硬貨を確実に検知することができる。つまり、磁束変化の均一化により、硬貨の検知精度を向上させることができる。また、本発明では、上記目的を達成するために、検知精度を上げる手段として、磁束変化の均一化を行っており、加えて傾斜硬貨対応と磁束増加と直立硬貨対応により個別課題の対応を行っている。この発明の第2の局面による硬貨処理装置は、基板と、基板に形成された配線パターンからなる複数の空芯コイルと、を備える。複数の空芯コイルは、外周コイルと、外周コイルの内側に配置される内周コイルとであり、磁界を発生させる。外周コイルは主に検知範囲側面の斜向した硬貨を検知するためのコイル、内周コイルは主に検知範囲中央の水平な硬貨を検知するためのコイルである。次に、検知範囲の外周側は、遠距離を検知でき、検知範囲では、どこに硬貨を置いても同じ磁束変化にすることで検知精度が向上する。具体的には外周コイルの磁束を大きくし、中方の磁束を小さくすることで実現する。付け加えて、磁束変化のばらつきが小さいことにより、広範囲の検知を可能にする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記のように、金属の検知精度を向上させることが可能な金属検知用アンテナおよび硬貨処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態による硬貨処理装置を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態による硬貨処理装置の内部を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態による搬送路に設けられる硬貨検知用アンテナの外周コイルと内周コイルとを隣り合わせた場合の配置に関する一例を示す図である。
【
図5】一実施形態による搬送路に設けられる硬貨検知用アンテナの外周コイルと内周コイルとを隣り合わせた場合に関する他の例を示す図である。
【
図6】一実施形態による搬送路に設けられる硬貨検知用アンテナの外周コイルと内周コイルとを隣接させた場合の配置に関する一例を示す図である。
【
図7】一実施形態による排出トレイの断面図である。
【
図8】実施形態による排出トレイに設けられる硬貨検知用アンテナの空芯コイルの配置を示す図である。
【
図10】フェライト板の配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1~
図10を参照して、一実施形態による硬貨処理装置(釣銭機)100の構成について説明する。
【0015】
(硬貨処理装置の構成)
図1に示すように、硬貨処理装置100は、硬貨110の入金および出金を行うための装置である。硬貨処理装置100は、たとえば、POS(point of sales)レジスタ、紙幣処理装置、棒金収納部などを備えるPOSシステムの一部を構成する。硬貨処理装置100は、たとえば、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどの店舗に設置されている。硬貨処理装置100は、販売者(ユーザ)が会計などを行う状態で用いられる。なお、硬貨110は、特許請求の範囲に記載した「金属」の一例である。
【0016】
硬貨処理装置100は、投入口1と、出金口2と、搬送路3と、収納部4とを備える。なお、硬貨処理装置100の上下方向をZ方向とし、投入口1が正面に位置するように配置した場合の左右方向(幅方向)をX方向とし、奥行方向をY方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向とする。
【0017】
投入口1は、硬貨110を硬貨処理装置100の筐体100aの外部から内部に投入するための入口部である。投入口1は、硬貨処理装置100の筐体100aの内部に通じている。具体的には、搬送路3の入金用搬送路3aに通じている。
【0018】
出金口2は、硬貨110を硬貨処理装置100の筐体100aの内部から外部に排出するための出口部分である。出金口2は、釣銭口2aと返却口2bとを含む。釣銭口2aは、釣銭用の硬貨110と、正規の硬貨110(正貨)ではないと判断された硬貨110とが排出される。返却口2bは、返却用の硬貨110が排出される。また、釣銭口2aは、排出された硬貨110を貯留可能である排出トレイ21を含む。返却口2bは、返却された硬貨110を貯留可能なように硬貨受け部22を有している。
【0019】
図2に示すように、搬送路3は、入金用搬送路3aと出金用搬送路3bとを含む。入金用搬送路3aは、投入口1から投入された硬貨110を一時保留部8に搬送するために設けられている。一時保留部8に一時的に保留された硬貨110は、振分部9により振り分けられて、金種に対応する収納部4に収納される。出金用搬送路3bは、収納部4から繰り出された硬貨110を排出トレイ21に搬送する。
【0020】
図3に示すように、搬送路3は、硬貨110を搬送するベルト機構31と、ベルト機構31の幅方向(X方向)の両端に位置する壁部32と、壁部32の下方に設けられた底部33とを有する。搬送路3は、投入口1の下方に配置される。ベルト機構31が回転することにより硬貨110が搬送される。ベルト機構31は、輪状であり、ベルト機構31の中央の空間に底部33と、基板51と、フェライト板6とが配置される。フェライト板6は、特許請求の範囲に記載した「比透磁率の高い構造物」の一例である。
【0021】
図2に示すように、収納部4は、金種毎に設けられている。収納部4は、たとえば、500円硬貨を収納する収納部41と、10円硬貨を収納する収納部42と、100円硬貨を収納する収納部43と、5円硬貨を収納する収納部44と、50円硬貨を収納する収納部45と、1円硬貨を収納する収納部46とを含む。なお、硬貨処理装置100が処理する硬貨110の金種は、日本の金種に限られず、いずれの国の金種であってもよい。
【0022】
硬貨検知用アンテナ5は、入金用搬送路3aと、出金用搬送路3bと、釣銭口2aと、返却口2bと、振分部9とに設けられている。具体的には、硬貨検知用アンテナ5は、入金用搬送路3aの投入口1側と、排出トレイ21と、硬貨受け部22とに設けられる。なお、硬貨検知用アンテナ5は、特許請求の範囲に記載した「金属検知用アンテナ」の一例である。
【0023】
図4~
図6および
図8に示すように、硬貨検知用アンテナ5は、基板51と、複数の空芯コイル52とを含む。複数の空芯コイル52は、外周コイル52aと、内周コイル52bとを含む。基板51は、配線パターンが形成されたプリント基板である。
【0024】
空芯コイル52は、単一の基板51に形成されている。空芯コイル52は、抵抗とコンデンサとを含む、そして、空芯コイル52は、交流電源を有する共振周波数の変化を検知するセンサに接続されている。空芯コイル52は、基板51に形成された渦巻き状の配線パターンからなる。空芯コイル52は、交流により磁界を発生させる。磁界は、配線パターン周りに円状に発生する。以下、入金用搬送路3aおよび出金用搬送路3bに設けられる硬貨検知用アンテナ5について説明する場合は、外周コイル52aを521aと表し、内周コイル52bを521bと表す。また、釣銭口2aおよび返却口2bに設けられる硬貨検知用アンテナ5について説明する場合は、設けられる硬貨検知用アンテナ5の外周コイル52aを522aと表し、内周コイル52bを522bと表し、共通の場合は、外周コイル52a、内周コイル52bと表す。
【0025】
空芯コイル52から発生した磁界は硬貨110により、磁界における磁束の変化が生じる。具体的には、磁束が硬貨110を貫通することにより、電磁誘導(渦電流損失)が発生する。これにより、空芯コイル52に印加された交流電流に変化が生じ、共振周波数が変化する。硬貨検知用アンテナ5は、検知部12のセンサが検知した共振周波数の変化と閾値から硬貨110の有無を検知する。
【0026】
外周コイル52aは、基板51の外周に沿って配置される。内周コイル52bは、外周コイル52aの内側に配置される。外周コイル52aは1つ設けられる。内周コイル52bは、1つ以上設けられる。
【0027】
図4および
図5に示すように、外周コイル52aと内周コイル52bとが隣り合うパターンと、
図6に示すように外周コイル52aと内周コイル52bとが隣接するパターンとがある。外周コイル52aと内周コイル52bとが隣接するとは、隣り合う場合よりも外周コイル52aと内周コイル52bとの距離が近く、接している場合も含む。
【0028】
図4および
図5に基づいて、硬貨検知用アンテナ5を搬送路3に設ける場合の外周コイル52aと内周コイル52bとが隣り合うパターンについて説明する。
【0029】
図4および
図5に示すように、外周コイル52aと内周コイル52bとが隣り合う場合、隣り合うコイルは逆向きに電流が流れる。
【0030】
図4および
図5に示すように、硬貨検知用アンテナ5が、矩形状の搬送路3(
図3参照)に配置される場合は、外周コイル521aおよび内周コイル521bは、搬送路3に沿った辺を有する角が丸い四角形形状または四角形形状を有している。好ましくは、角が丸い四角形形状のように4隅を弧にすることで、4隅の磁束の減少をより少なくすることができる。
【0031】
図4は、外周コイル521aの内側に内周コイル521bが1つ配置されている場合を示す。この場合、内周コイル521bと、外周コイル521aとが同一中心線を有している。検知対象の硬貨110のうちの最小の硬貨110(硬貨検知用アンテナ5に対して平置き状態の最小の硬貨110)が、検知範囲内に位置するよう設計される。具体的には、隣り合うコイルの幅の中心間距離を各々a1、a2・・・amとし、検知対象の最小の硬貨110の直径をcとした場合に、a1<c、a2<c・・・am<cであるように設計されている。隣り合うコイルとは、外周コイル521aと内周コイル521bが隣り合う状態と、内周コイル521bのコイル部分が空芯52cを挟んで隣り合っている状態とを含む。
図4では、a1およびa3は、隣り合う外周コイル521aと内周コイル521bとのコイルの幅の中心間距離であり、a2は、内周コイル521bの空芯52cを挟んで隣り合う部分の中心間距離である。好ましくは、a1、a2・・・amは等しい。
図4では、水平に配置された硬貨110を円形で表し、斜め(たとえば、60度傾斜した状態)に配置された硬貨110を楕円形で表している。
【0032】
また、検知対象の硬貨110のうち最小の硬貨110の半径をc/2とした場合に、外周コイル521aは、搬送路3の幅方向の両側に設けられる壁部32から約c/2の位置に外周コイル521aのコイルの幅中心が位置するように設計される。また、検知対象の最小の硬貨110の厚みをgとした場合に、壁部32から距離がg以下の位置まで外周コイル521aが巻かれている。なお、
図4では、壁部32を太線で示している。
【0033】
また、コイル幅と空芯52cとの関係は、平面視においてコイルの外寸法から内寸法を引いたコイル幅の各々をb1、b2、b3・・・b
nとし、空芯52cの隙間の距離をd1、d2、d3・・・d
n-1とした場合に、(b1+b2)/2≦d1、(b2+b3)/2≦d2・・・(b
n-1+b
n)/2≦d
n-1となるように設計されている。
図4では、b1は、外周コイル521aの外寸法から内寸法を引いたコイル幅である。b2は、外周コイル521aに隣り合う内周コイル521bの外寸法から内寸法を引いたコイル幅である。b3は、空芯52cを挟んで内周コイル521bのコイル幅b2を有する部分に対向する内周コイル521bの部分の内周コイル521のコイル幅である。
【0034】
図5は、外周コイル521aの内側に内周コイル521bが複数配置される場合を示す。この場合、内周コイル521bは、外周コイル521aとは、異なる中心線を有している。検知対象の硬貨110のうちの最小の硬貨110(硬貨検知用アンテナ5に対して平置き状態の最小の硬貨110)が、検知範囲内に位置するよう設計される。なお、内周コイル521bの配置の仕方は、
図4に示す外周コイル521aの内側に内周コイル521bが1つ配置される場合と同じように設計されている。
【0035】
図6は、外周コイル521aの内側に、複数の内周コイル521bが隣接されて配置される場合を示す。外周コイル52aと内周コイル52bとが隣接する場合、隣接するコイルは同じ向きに電流が流れる。
図6に示すように、外周コイル52aと内周コイル52bとの距離を小さくして隣接させた場合、外周コイル52aのインダクタンスと内周コイル52bのインダクタンスとを1つのインダクタンスとみなすことができる。この場合、外周コイル52aのインダクタンスと内周コイル52bのインダクタンスの合計を、内周コイル52bのインダクタンスより大きくすることができる。
【0036】
図6の場合、隣接する内周コイル521bの幅の中心間距離をe1、e2・・・etとし、検知対象の最小の硬貨110の直径をcとした場合に、e1<c、e2<c・・・et<cとなるように設計されている。なお、
図5の複数の内周コイル521bが隣り合って配置された場合も同様な設計を行う。
【0037】
また、検知対象の最小の硬貨110の半径をc/2とした場合に、外周コイル521aは、搬送路3の幅方向の両側に設けられる壁部32から約c/2の位置に外周コイル521aのコイルの幅の中心が位置するように設計される。また、検知対象の最小の硬貨110の厚みをgとした場合に、壁部32から距離がg以下の位置まで外周コイル521aが巻かれている。なお、
図4および
図5の場合も同じように設計されている。
【0038】
また、合成したコイル幅をf1、f2、f3・・・fuとし、空芯52cの隙間をd1、d2、d3・・・du-1とした場合に、(f1+f2)/2≦d1、(f2+f3)/2≦d2・・・(fu-1+fu)/2≦du-1となるように設計にされている。合成したコイル幅f1は、外周コイル521aのコイル幅と、外周コイル521aに隣接する第1の内周コイル521cのコイル幅との合計である。f2は、第1の内周コイル521cのコイル幅と、第1の内周コイル521cに隣接する第2の内周コイル521dのコイル幅との合計である。f3は、第2の内周コイル521dのコイル幅と、第2の内周コイル521dに隣接する第3の内周コイル521eのコイル幅との合計である。
【0039】
図7および
図8に基づいて、硬貨検知用アンテナ5を釣銭口2aまたは返却口2bの排出トレイ21に設ける場合について説明する。
【0040】
基板51を排出トレイ21に設けられる場合は、排出トレイ21の下方に基板51が配置される。
【0041】
また、硬貨検知用アンテナ5を円形状、楕円形状または四角形状の排出トレイ21に配置する場合は、
図8に示すように外周コイル522aおよび内周コイル522bは、排出トレイ21の外周部に沿った辺を有する楕円形状、円形状、または角が丸い四角形形状を有している。
【0042】
この場合、隣り合うコイルの中心間距離をa1、a2、a3、a4、a5・・・anとし、検知対象の最小の硬貨110の直径をcとした場合に、a1、a2、a3、a4、a5・・・an<cとなるように設計されているa1~a5は、
図8では斜め方向の長さで表しているが、縦方向および横方向の長さでも条件を全て満たすように設計されている。また、
図8の外側の破線の楕円は検知範囲を示す。
【0043】
また、コイル幅と空芯52cの関係は、外周コイル522aと内周コイル522bとが直列で接続されており、平面視においてコイルの外寸法から内寸法を引いたコイル幅の各々をb1、b2・・・b
nとし、空芯52cの隙間の距離をd1、d2、d3・・・d
n-1とした場合に、(b1+b2)/2≦d1、(b2+b3)/2≦d2・・・(b
n-1+b
n)/2≦d
n-1となるように設計されている。
図8では、b1は、外周コイル522aの外寸法から内寸法を引いたコイル幅である。b2は、外周コイル522aに隣り合う内周コイル522bの外寸法から内寸法を引いたコイル幅である。b3は、コイル幅b2を有する内周コイル522bの内側にある内周コイル522bの外寸法から内寸法を引いたコイル幅である。
【0044】
外周コイル522aは、検知対象の最小の硬貨110を検知範囲縁に配置した場合に、最小の硬貨110の内側を結んだ線200となるように配置されている。
【0045】
図7に示すように、基板51の下方には、フェライト板6が配置される。フェライト板6は、基板51の検知面51aと反対側の面に配置される。フェライト板6は、検知面側の磁界を強くする。
【0046】
図2に示すように硬貨処理装置100は、さらに制御部7を備える。制御部7は、CPUおよびメモリを含み、硬貨処理装置100の各部を制御するように構成されている。
【0047】
また、制御部7は、収納部4の硬貨110の収納枚数を管理する制御を行うように構成されている。
【0048】
制御部7は、投入口1から投入された硬貨110を検銭し、一時保留部8に搬送する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、投入口1から投入された硬貨110による、硬貨検知用アンテナ5の空芯コイル52によって発生した磁界における磁束の変化(交流電流の電圧の変化)を検知することにより、入金用搬送路3aのベルト機構31を稼働させて収納部4に搬送する。また、制御部7は、収納部4に硬貨110を搬送している途中で検銭部10により検銭する制御を行う。ここで、検銭した硬貨110が正貨であれば、一時保留部8に搬送する。一方、検銭した媒体が正貨でなければ、釣銭口2aに排出する。つまり、制御部7は、入金切換ゲート11の搬送先経路を切り換えることにより、硬貨110を一時保留部8または釣銭口2aに送り出す制御を行う。
【0049】
制御部7は、一時保留部8に保留されている硬貨110を収納部4に収納する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、一時保留部8に保留されている硬貨110を、搬送路3によって収納部4に送り出す制御を行う。そして、制御部7は、振分部9により、硬貨110を金種毎に振り分けながら収納部4に送り出す制御を行う。
【0050】
また、制御部7は、収納部4から硬貨110を出金用搬送路3bに送り出す制御を行うとともに、収納部4から繰り出された硬貨110を釣銭口2aに排出する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、出金切換ゲート82により、収納部4から繰り出された硬貨110の搬送先経路を釣銭口2aに切り換えるとともに、釣銭用の硬貨110を収納部4から繰り出す制御を行う。
【0051】
また、制御部7は、返却用の硬貨110を一時保留部8から送り出して、返却口2bに排出する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、入金切換ゲート81により、一時保留部8から送り出された硬貨110の搬送先経路を返却口2bに切り換えるとともに、返却用の硬貨110を一時保留部8から送り出す制御を行う。
【0052】
また、制御部7は、投入口1から入金された硬貨110を、検銭部10において正貨でないと判断した場合には、正貨でないと判断した媒体を釣銭口2aに排出する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、入金切換ゲート81により、投入口1から投入された硬貨110の搬送先経路を出金口2に切り換えるとともに、正貨でないと判断された硬貨110を、入金用搬送路3aにより搬送して釣銭口2aに直接排出する制御を行う。
【0053】
また、制御部7は、釣銭口2aまたは返却口2bに排出された硬貨110が、排出トレイ21または硬貨受け部22に残留していないかを検知する。具体的には、制御部7が、排出トレイ21または硬貨受け部22に硬貨110が排出されたことにより硬貨検知用アンテナ5の空芯コイル52から発生する磁界における磁束の変化(交流電流の電圧の変化)を検知した後に、所定時間経過した場合に、硬貨110が残留していることを通知するように構成されている。通知の方法は、音、警告ランプの表示、警告画面の表示など通常用いられる方法で行われる。
【0054】
図9に基づいて、空芯コイル52により発生した磁界における磁束の変化について説明する。底部33に対して斜めの硬貨110がある場合、従来例の外周コイル52aは、底部33に平行な硬貨110と比べて貫通する磁束線が少ない。その結果、貫通する磁束線が少ない分だけ、磁束の変化量が小さくなる。一方で、本発明の場合、底部33に平行な硬貨110と、底部33に対して斜めの硬貨110は、貫通する磁束線が概ね等しく、磁束の変化量も概ね等しくなる。
【0055】
図10に示すように、フェライト板6を設けた場合、ポテンシャル線図で磁束線がフェライト板6を通ることで、フェライト板6とは反対側の磁束が増加し、フェライト板6側は磁束線が洩れない。これにより、硬貨検知しやすくなり、かつ非検知面の誤検知を防ぐことができる。
【0056】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0057】
本実施形態では、上記のように、外周コイル52aにより発生する磁界における磁束が、内周コイル52bにより発生する磁界における磁束よりも大きい。これにより、内周コイル52bによる外周コイル52aの磁界の打ち消しが小さくなり、外周側の磁界の磁束をより大きくすることができる。そして、壁部32と底部33とを有する釣銭口2aに設けた場合に、外周コイル52aを壁部32の近傍に配置することで、壁部32近傍の磁束を大きくすることができる。次に、検出する硬貨110が壁部32に接触し、底部33に対して傾斜した状態においても、外周コイル52aの磁束が硬貨110に直角に当たるように外周コイル52aの位置を指定することで、硬貨110を貫通する磁束の量を大きくすることができる。その結果、外周コイル52aに硬貨110が位置する場合、外周コイル52aと内周コイル52bとで同じ磁界を発生させた場合と比べて、磁束の変化量が大きくなり壁部の傾斜した硬貨110も中央部の水平に置かれた硬貨110も同じ磁界の変化量で検知することができる。つまり、磁束変化の均一化で、硬貨位置による最小磁束変化のばらつきが小さくなり、閾値の改善とレンジの拡大を行い、硬貨位置による最小磁束変化のばらつきが小さくなることによる、閾値の改善とレンジの拡大で硬貨110の検知精度を向上させることができる。本発明では、上記目的を達成するために、検知精度を上げる手段として、磁束変化の均一化を行っており、加えて傾斜硬貨対応と磁束増加と直立硬貨対応により個別課題の対応と磁界の強化および磁界の漏れ対応を行っている。本実施形態の硬貨検知用アンテナ5は、基板51と、基板51に形成された配線パターンからなる複数の空芯コイル52と、を備える。複数の空芯コイル52は、外周コイル52aと、外周コイル52aの内側に配置される内周コイル52bとであり、磁界を発生させる。外周コイル52aは主に検知範囲側面の斜向した硬貨110を検知するためのコイル、内周コイル52bは主に検知範囲中央の水平な硬貨110を検知するためのコイルである。次に、検知範囲の外周側は、遠距離を検知でき、検知範囲では、どこに硬貨110を置いても同じ磁束変化にすることで検知精度が向上する。具体的には、外周コイル52aの磁束を大きくし、中方の磁束を小さくすることで実現する。付け加えて、磁束変化のばらつきが小さいことにより、広範囲の検知を可能にする。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、硬貨110の入金処理および出金処理を行うための硬貨処理装置100の硬貨110を搬送する搬送路3に設けられ、外周コイル52aと内周コイル52bとは、搬送路3に沿った辺を有する角が丸い四角形形状または四角形形状を有している。これにより、搬送路3に沿った形状に外周コイル52aと内周コイル52bとを形成することができるため、搬送路3に沿って磁界を発生させることができ、搬送路3に沿って硬貨110を検知することができる。好ましくは、角が丸い四角形形状のように4隅を弧にすることで、4隅の磁束の減少をより少なくすることができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、検知対象の最小の硬貨110の半径をc/2とした場合に、外周コイル52aは、搬送路3の幅方向の両側に設けられる壁部32から約c/2の位置に外周コイル幅の中心が位置する。これにより、外周コイル52aにより発生する磁束が斜向した硬貨110に対して概ね垂直に貫通させることができる。これにより、硬貨110が壁部32近傍で斜向する場合であっても硬貨110が磁束を遮蔽するため、磁束の変化が生じる。この結果、硬貨110の斜向に関わらず硬貨110を検知することができるため、硬貨検知用アンテナ5の検知精度をより向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、検知対象の硬貨110のうち最小の硬貨110の厚みをgとした場合に、外周コイル52aにより、搬送路3の幅方向の両側に設けられる壁部32から距離がg以下の位置まで巻かれている。これにより、硬貨110が壁部32に接触し、立ち上がった状態になった場合でも硬貨110の内側(搬送路3側)でなく、外側(搬送路3の外側)に磁界のポテンシャル線が形成され、より多くの磁束の変化が生じる。この結果、硬貨110の姿勢にかかわらず、硬貨110を検知することができる。その結果、硬貨検知用アンテナ5の検知精度をさらに向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、外周コイル521aの内側には、複数の内周コイル521bが隣り合って配置され、隣り合う内周コイル521bの幅の中心間距離をe1、e2・・・etとし、検知対象の最小の硬貨110の直径をcとした場合に、e1<c、e2<c・・・et<cである。これにより、隣り合う内周コイル521bの間に硬貨110が位置している場合でも、隣り合う内周コイルのいずれかによって発生した磁界の範囲内に硬貨110が位置し、磁束の変化が生じる。これにより、硬貨110を検出することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、外周コイル52aと内周コイル52bとの合成インダクタンスが、内周コイル52bの合成インダクタンスより大きくなるように構成されている。ここで、このように構成するために、外周コイル52aの巻き数を大きくするか、内周コイル52bの巻き数を小さくするか、外周コイル52aと内周コイル52bとを隣接させることが考えられる。一例として、電流が同じ場合、コイルの巻き数が大きくなるほど、発生させる磁界における磁束が大きくなる。付け加えると内周コイル52bによる磁束の打ち消しも小さくなる。そのため、コイルの巻き数を大きくすることにより外周コイル52aは内周コイル52bより離れた位置の硬貨110を検知できる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、硬貨110の入金処理および出金処理を行うための硬貨処理装置100の硬貨110が排出される排出トレイ21に設けられ、同一中心線を有する外周コイル52aと内周コイル52bとが、排出トレイ21の外周部に沿った辺を有する楕円形状、円形状、または角が丸い四角形形状を有している。これにより、排出トレイ21に沿った形状に外周コイル52aと内周コイル52bとを形成することができるため、排出トレイ21全体に効率よく磁束を発生させることができ、排出トレイ21全体を検知範囲とすることができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、外周コイル52aは、検知対象の硬貨110のうち最小の硬貨110を検知範囲縁に配置した場合に、最小の硬貨110の内側を結んだ線となるように配置されている。これにより、外周コイル52aの磁束が斜向した硬貨110に対して概ね垂直に貫通させることができる。この結果、傾斜とコイルの位置により、硬貨110を貫通する磁束が極端に小さくなるのを回避することできる。加えて、垂直に磁束を貫通させることで、磁束の変化を最大にすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、基板51の硬貨110を検知する検知面とは反対側の面に、フェライト板6が取り付けられている。これにより、フェライト板6によって、検知面51aの反対側に発生する磁束の分散を抑え、検知面51a側の磁束密度を大きくすることができる。これにより、検知面51a側の磁束変化量が多くなり、離れた位置にある硬貨110を検知しやすくなる。付け加えて、検知面51aの反対側から漏れる磁束による誤検知を抑制できる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、外周コイル52aの内側には、内周コイル52bが配置され、隣り合うコイルの幅の中心間距離の各々をa1、a2・・・amとし、検知対象の最小の硬貨110の直径をcとした場合に、a1<c、a2<c・・・am<cである。これにより、隣り合う外周コイル52aと内周コイル52bとの間に硬貨110が位置している場合でも、外周コイル52aに隣り合う内周コイル52bのいずれかによって発生した磁界の範囲内に硬貨110が位置し、磁束の変化が生じる。これによって、隣り合う外周コイル52aと内周コイル52bとの間に硬貨110が位置している場合でも、硬貨110を確実に検出することができる。
【0067】
また、本実施形態では、平面視においてコイルの外寸法から内寸法を引いたコイル幅の各々をb1、b2・・・bnとし、空芯52cの隙間の距離をd1、d2、d3・・・dn-1とした場合に、(b1+b2)/2≦d1、(b2+b3)/2≦d2・・・(bn-1+bn/)2≦dn-1である。ここで、内周コイル52bと外周コイル52aとが隣り合うコイル部分に流れる電流の向きが逆向きの場合、磁束の向きが逆になり、磁束が打ち消された、合成された一つの磁束になる。よって外周コイル52aと内周コイル52bとが隣り合う場所に置いた硬貨110は検知困難になる。そのため、空芯52cをこのように構成することで、打ち消されていた外周コイル52aの磁束と内周コイル52bの磁束が、打ち消されなくなり、空芯部を通る。そして、空芯部を通る磁束を硬貨110で遮蔽すると大きな磁束変化をおよぼすことができる。また、外周コイル52aと内周コイル52bとが直列で接続されていることにより、駆動と、同期と、検知とを1つのセンサで行うことができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、外周コイル52aにより発生する磁界における磁束が、内周コイル52bにより発生する磁界における磁束よりも大きいことにより、排出トレイ21が壁部と底部とを有する場合に、壁部近傍に外周コイル52aを配置することにより、壁部近傍の磁束を大きくすることができる。これにより、壁部と底部とを有する釣銭口2aに設けた場合に、外周コイル52aを壁部の近傍に配置することにより、壁部近傍の磁束を大きくすることができる。そのため、検出する硬貨110が壁部に接触し、底部に対して傾斜した状態においても、硬貨110を貫通する磁束の量を大きくすることができる。その結果、外周コイル52aに硬貨110が位置する場合に、外周コイル52aが発生させる磁界における磁束が小さい場合と比べて、磁束の変化量が大きくなり、底部に対して傾斜した状態の硬貨110を確実に検知することができる。つまり、磁束変化の均一化により、硬貨110の検知精度を向上させることができる。また、検知精度を上げる手段として、磁束変化の均一化を行っており、加えて傾斜硬貨対応と磁束増加と直立硬貨対応により個別課題の対応を行っている。また、硬貨検知用アンテナ5は、基板51と、基板51に形成された配線パターンからなる複数の空芯コイル52と、を備える。複数の空芯コイル52は、外周コイル52aと、外周コイル52aの内側に配置される内周コイル52bとであり、磁界を発生させる。外周コイル52aは主に検知範囲側面の斜向した硬貨110を検知するためのコイル、内周コイルは主に検知範囲中央の水平な硬貨110を検知するためのコイルである。次に、検知範囲の外周側は、遠距離を検知でき、検知範囲では、どこに硬貨110を置いても同じ磁束変化にすることで検知精度が向上する。具体的には外周コイル52aの磁束を大きくし、中方の磁束を小さくすることで実現する。付け加えて、磁束変化のばらつきが小さいことにより、広範囲の検知を可能にする。
【0069】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0070】
たとえば、上記実施形態では、本発明を、釣銭機としての硬貨処理装置に適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、釣銭機以外の硬貨処理装置(たとえば、自動販売機)に適用されてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、金属検知用アンテナが硬貨の検知に用いられる例を示したが、例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、硬貨以外の金属の検知に使用してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、硬貨検知用アンテナを入金用搬送路に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、硬貨検知用アンテナを出金用搬送路に設けてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、硬貨検知用アンテナを入金用搬送路および排出トレイの両方に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、硬貨検知用アンテナを入金用搬送路および排出トレイのうち一方に設けてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、比透磁率の高い構造物は、フェライトである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、比透磁率の高い構造物は、比透磁率が100以上であればよく、鉄、ニッケルなどの金属であってもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、硬貨検知用アンテナに比透磁率の高い構造物(100以上)を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、硬貨検知用アンテナに比透磁率の高い構造物を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0076】
3 搬送路
4 収納部
5 硬貨検知用アンテナ(金属検知用アンテナ)
6 フェライト板(比透磁率の高い構造物)
21 排出トレイ
21a 外周部
32 壁部
51 基板
51a 検知面
52 空芯コイル
52a 外周コイル
52b 内周コイル
100 硬貨処理装置
110 硬貨