(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042549
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20240321BHJP
F24F 8/26 20210101ALN20240321BHJP
【FI】
F24F6/00 A
F24F6/00 B
F24F8/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147330
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉武 厚
(72)【発明者】
【氏名】唐島 涼
(72)【発明者】
【氏名】三宅 喜之
(72)【発明者】
【氏名】中原 繁治
【テーマコード(参考)】
3L055
【Fターム(参考)】
3L055BB11
3L055DA02
3L055DA05
(57)【要約】
【課題】着脱自在な蓋を備える加湿器において、ユーザーが分離した蓋の置き場所に困ることがなく、蓋を適正位置に載置することができるようにする。
【解決手段】水を気化させてミストを生成する加湿ユニット11と、加湿ユニット11への給水を担う給水タンク2と、ミストの放出口9を有するとともに給水タンク2の開口を着脱自在に開閉するタンク蓋8と、給水タンク2から分離したタンク蓋8が載置される蓋支持台132と、を備える加湿器を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を気化させてミストを生成する加湿ユニット(11)と、
加湿ユニット(11)への給水を担う給水タンク(2)と、
ミストの放出口(9)を有するとともに給水タンク(2)の開口を着脱自在に開閉するタンク蓋(8)と、
給水タンク(2)から分離したタンク蓋(8)が載置される蓋支持台(132)と、
を備えることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
平面視において蓋支持台(132)が、給水タンク(2)の周壁の内側に配置されている請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
蓋支持台(132)が給水タンク(2)の上縁よりも下方に配置されている請求項2に記載の加湿器。
【請求項4】
平面視において、蓋支持台(132)に載置されるタンク蓋(8)の過半部が、給水タンク(2)の周壁の内側に配置されている請求項2に記載の加湿器。
【請求項5】
蓋支持台(132)が給水タンク(2)の満水位よりも上方に配置されている請求項3に記載の加湿器。
【請求項6】
タンク蓋(8)が円盤状に形成されており、
タンク蓋(8)の周縁部が蓋支持台(132)に差し込まれて載置される請求項2に記載の加湿器。
【請求項7】
蓋支持台(132)は、タンク蓋(8)の周縁部を下側から支持する蓋受面(147)を含み、
蓋受面(147)が下凸円弧状に形成されている請求項6に記載の加湿器。
【請求項8】
蓋支持台(132)を貫通する通水孔(150)が、蓋受面(147)の底部から下方へ伸びている請求項7に記載の加湿器。
【請求項9】
タンク蓋(8)が蓋支持台(132)に載置されるときの鉛直面に対する傾斜角度(θ)が25°以下に設定されている請求項6に記載の加湿器。
【請求項10】
加湿ユニット(11)で生成されたミストを上向きに案内するミスト筒(7)と、ミスト筒(7)に上方から差し込まれてミスト筒(7)の外周面に固定される装着筒(130)とを備えており、
蓋支持台(132)が装着筒(130)と一体に設けられている請求項2に記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミストの放出口を有する着脱自在な蓋を備える加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加湿器は例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の加湿器は、上面に開口を有する箱型の本体内に、水槽と給水タンクと送風装置などが配されている。本体の開口には、ミストの放出口を有する上蓋が着脱自在に装着されている。給水タンクから水槽へ送られた水は、水槽の底部に設けられた振動子により気化されてミストとなり、送風装置が形成する気流に乗って放出口から放出される。給水タンクは本体に対して着脱自在であり、ユーザーは本体から上蓋を分離してその上面を開放することで、給水タンクを本体から取り出して水の補給などを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の加湿器において、給水タンクに水を補給する際には、まず本体から上蓋を分離する必要があるが、このとき分離した上蓋の置き場所に配慮しなければならず、ユーザーによってはこれを煩わしく感じることがある。上蓋はミストの放出口を有することからその周囲などに水滴が付着しやすく、そのため上蓋を机などに置くと、上蓋に付着した水滴で机などを濡らしてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、着脱自在な蓋を備える加湿器において、ユーザーが分離した蓋の置き場所に困ることがなく、蓋を適正位置に載置することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加湿器は、水を気化させてミストを生成する加湿ユニット11と、加湿ユニット11への給水を担う給水タンク2と、ミストの放出口9を有するとともに給水タンク2の開口を着脱自在に開閉するタンク蓋8と、給水タンク2から分離したタンク蓋8が載置される蓋支持台132と、を備えることを特徴とする。
【0007】
平面視において蓋支持台132が、給水タンク2の周壁の内側に配置されている形態を採ることができる。
【0008】
蓋支持台132が給水タンク2の上縁よりも下方に配置されている形態を採ることができる。
【0009】
平面視において、蓋支持台132に載置されるタンク蓋8の過半部が、給水タンク2の周壁の内側に配置されている形態を採ることができる。
【0010】
蓋支持台132が給水タンク2の満水位よりも上方に配置されている形態を採ることができる。
【0011】
タンク蓋8が円盤状に形成されており、タンク蓋8の周縁部が蓋支持台132に差し込まれて載置される形態を採ることができる。
【0012】
蓋支持台132は、タンク蓋8の周縁部を下側から支持する蓋受面147を含み、蓋受面147が下凸円弧状に形成されている形態を採ることができる。
【0013】
蓋支持台132を貫通する通水孔150が、蓋受面147の底部から下方へ伸びている形態を採ることができる。
【0014】
タンク蓋8が蓋支持台132に載置されるときの鉛直面に対する傾斜角度θを25°以下に設定することができる。
【0015】
加湿ユニット11で生成されたミストを上向きに案内するミスト筒7と、ミスト筒7に上方から差し込まれてミスト筒7の外周面に固定される装着筒130とを備えており、蓋支持台132が装着筒130と一体に設けられている形態を採ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る加湿器のように、給水タンク2から分離したタンク蓋8が載置される蓋支持台132を備えると、吸水タンク2に水を補給する際など、タンク蓋8を給水タンク2から分離したとき、この給水タンク2から分離されたタンク蓋8を蓋支持台132に載置することができる。これによれば、ユーザーはタンク蓋8の置き場所に困ることはなく、またタンク蓋8を適正位置に載置することができるので、加湿器の利便性が向上する。タンク蓋8を机などに置く必要がなくなるため、水滴が付着したタンク蓋8で机などを濡らしてしまうなどの問題も解消できる。
【0017】
蓋支持台132が給水タンク2の周壁の内側に配置されていると、タンク蓋8を伝って蓋支持台132へ流下した水滴を給水タンク2内に滴下させることができるので、水滴で加湿器の周囲が濡れることを防ぐことができる。
【0018】
蓋支持台132が給水タンク2の上縁よりも下方に配置されていると、タンク蓋8が蓋支持台132に載置されたときの衝撃でタンク蓋8に付着した水滴が飛び散った場合でも、その多くを給水タンク2内に落下させることができるので、タンク蓋8に付着した水滴により加湿器の周囲が濡れることを防ぐことができる。
【0019】
蓋支持台132に載置されるタンク蓋8の過半部が、給水タンク2の周壁の内側に配置されていると、タンク蓋8に付着した水滴がこれを伝うことなく滴下した場合でも、その多くを給水タンク2内に落下させることができるので、タンク蓋8に付着した水滴により加湿器の周囲が濡れることを防ぐことができる。
【0020】
蓋支持台132が給水タンク2の満水位よりも上方に配置されていると、給水タンク2内の溜水で蓋支持台132ひいてはタンク蓋8が濡れることを防ぐことができる。
【0021】
タンク蓋8が円盤状に形成されるとともに、タンク蓋8の周縁部が蓋支持台132に差し込まれて載置されるようになっていると、ユーザーはタンク蓋8の周方向の向きを気にすることなく、その周縁部の任意の個所を蓋支持台132に差し込んで載置することができる。したがって、より簡単な操作で確実に、タンク蓋8を蓋支持台132に載置することができる。
【0022】
蓋支持台132は、タンク蓋8の周縁部を下側から支持する蓋受面147を含み、蓋受面147が下凸円弧状に形成されていると、タンク蓋8を伝って蓋受面147へ流下した水滴をその底部の一個所に集めることができる。これによれば、例えば集められた水滴を蓋支持台132から流出させるなど、その後の水滴の処理が容易となる。
【0023】
蓋支持台132を貫通する通水孔150が、蓋受面147の底部から下方へ伸びていると、蓋受面147の傾斜に沿ってその底部に集まった水滴を、通水孔150から蓋受面147の外へ排出することができる。これによれば、蓋受面147の上に水が溜まらないようにすることができるので、雑菌が繁殖することなどを防ぐことができる。
【0024】
タンク蓋8が蓋支持台132に載置されるときの鉛直面に対する傾斜角度θが25°以下に設定されていると、タンク蓋8に付着した水滴をより確実且つ迅速に蓋支持台132へ流下させることができるので、タンク蓋8に付着した水滴が飛び散って、加湿器の周囲が濡れることを防ぐことができる。また、タンク蓋8の多くの部分を給水タンク2の周壁の内側に配置することができるので、これによってもタンク蓋8から滴下する水滴で加湿器の周囲が濡れることを防ぐことができる。
【0025】
加湿ユニット11で生成されたミストを上向きに案内するミスト筒7と、ミスト筒7に上方から差し込まれてミスト筒7の外周面に固定される装着筒130とを備えており、蓋支持台132が装着筒130と一体に設けられていると、蓋支持台132を装着筒130を介してミスト筒7で支持することができる。これによれば、蓋支持台132を安定的に支持することができる。また当該蓋支持台132に支持されるタンク蓋8を安定的に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係る加湿器のタンク蓋が蓋支持台に載置された状態を示す縦断側面図である。
【
図4】同加湿器の装置本体から給水タンクを分離した状態の斜視図である。
【
図7】装置本体を構成する加湿ユニットの要部の正面図である。
【
図13】給水タンクの内部構造を示す平面図である。
【
図14】タンク蓋が蓋支持台に載置された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施形態) 本発明に係る加湿器の実施形態を
図1ないし
図15に示す。この加湿器は、水分を多く含む加湿空気すなわちミストとともに、オゾンを含む浄化空気を空間に放出して、当該空間の加湿と浄化(除菌・消臭など)を同時に行うことができる。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図2および
図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0028】
図2ないし
図4に示すように加湿器は、その過半を占める下側の装置本体1と、装置本体1に上方から着脱自在に装着される上側の給水タンク2とを備える。装置本体1は略円柱状に形成され、給水タンク2は下方へ縮径する略円錐台状に形成されている。装置本体1の上部には、上向きに開口する装着凹部3が形成されており、該装着凹部3に給水タンク2の下部が差し込まれて装着される。装着凹部3の後面(側面)には、装着された給水タンク2の意図しない抜け出しを防ぐためのロック機構4が設けられている。
【0029】
給水タンク2は、水を貯留するタンク本体6と、装置本体1で生成されたミストを上向きに案内するミスト筒7と、タンク本体6の上面の開口を開閉するタンク蓋8などを備える。タンク蓋8の前部には、ミスト筒7の上端に連通する放出口9が形成されており、ミスト筒7を上昇したミストはこの放出口9から上方へ放出される。
【0030】
装置本体1は、給水タンク2から送給される水を気化させる上側の加湿ユニット11と、オゾンを含む浄化空気を生成する下側の浄化ユニット12とに大別される。加湿ユニット11の外形は、上端に大径の張出部13を有する下窄まり状に形成されており、浄化ユニット12の外形は、張出部13と略同径の有底円筒状に形成されている。そして、加湿ユニット11の張出部13を除く全体が、浄化ユニット12の内側に収容固定されている。
【0031】
浄化ユニット12は、内部に風路15を有する円筒状の外ケース16と、風路15の一端の吸込口17から他端の吹出口18へ向かう気流を形成する遠心式の送風ファン19と、風路15内で放電してオゾンを発生させる放電装置20とを備える。放電装置20は、一対の電極とその間に介在する誘電体などを備えており、両電極に数kVの高い交流電圧を印加すると、一方の電極と誘電体との間で無声放電(誘電体バリア放電)が生じ、その周囲の空気に含まれる酸素の一部がオゾンに変化する。なお外ケース16は、円筒状以外に楕円筒状や多角筒状などに形成することができるが、円筒状とすることにより内部のデッドスペースを小さくすることができる。なお浄化ユニット12内には、放電によりオゾンを発生させるオゾン発生装置(オゾナイザー)以外に、放電により各種イオン(マイナスイオン、ヒドロキシラジカル等)を発生させるイオン発生装置(イオナイザー)、揮発性の有効成分を含む薬剤(殺菌剤や虫除け剤など)の含浸体、あるいは、紫外線などの殺菌光を照射して空気を浄化する殺菌装置など、各種の有効成分発生装置を配置することができる。
【0032】
吸込口17は浄化ユニット12の下端後部に設けられ、吹出口18は浄化ユニット12の上端前部に設けられる。吸込口17から風路15に吸い込まれた空気は、放電装置20の周囲を通過する際にオゾンを取り込み、これを含む浄化空気となって吹出口18から前方へ吹き出される。吹出口18は、装置本体1の前面上部において、加湿ユニット11の張出部13と浄化ユニット12の上縁との間に形成されている。吹出口18は平面視で外凸円弧状に形成されており、また正面視において下凸円弧状に形成されている。
【0033】
図5に示すように、外ケース16の上下端はそれぞれ開口しており、上側の開口には加湿ユニット11が上方から組み付けられ、下側の開口にはこれを塞ぐように底蓋23が固定されている。底蓋23の内面(上面)側には、加湿器の全体を制御する図示しない制御基板が収容される。また底蓋23には、電源ケーブル24のプラグ25が差し込まれる受電用のソケット26が設けられており、該ソケット26を介して制御基板に電力が供給される。制御基板は、送風ファン19、放電装置20、後述する加湿モジュール36やミストファン56など、装置本体1の各部に電気的に接続されて電力を供給する。
【0034】
外ケース16の後面の下部には、フィルターカバー29で開閉されるカバー開口30が形成されており、カバー開口30の内方の下部には、風路15の吸込口17に臨む安全柵31が設けられている。安全柵31は、上下に細長い一群の長孔を備えており、吸込口17への外気の流入を許容しつつ、フィルターカバー29の分離時にユーザーの手指や大きな異物などの侵入を防止する。また、カバー開口30の内方の上部には、引き抜き可能な点検蓋32が設けられており、その内方に放電装置20が配置されている。つまりユーザーは、まず外ケース16からフィルターカバー29を取り外してカバー開口30を開き、次いで点検蓋32を後方へ引き抜くと、放電装置20を露出させてその清掃などのメンテナンスを行うことができる。
【0035】
図5および
図6に示すように加湿ユニット11は、基体となる加湿ケース35に、超音波振動子を含む加湿モジュール36と、給水タンク2への給電を担う給電端子37と、円環状の操作カバー38などを組み付けて構成される。操作カバー38は加湿ケース35の上面に接合されており、両者35・38に囲まれる円環状の密閉空間の前部には、円弧板状に形成された操作基板39が収容されている。操作基板39の上面には図示しない複数個のスイッチが突設されており、これに対応して操作カバー38の前部には、各スイッチの先端面に正対する複数個の操作ボタン40が設けられている。各スイッチは操作ボタン40を介して押圧操作されるようになっており、これら操作ボタン40が加湿器の運転状態の切換操作のための操作部41を構成する。
【0036】
操作部41を含む操作カバー38の上方には、該操作カバー38と給水タンク2の外面で囲まれる略リング状の空隙が設けられており(
図1、
図2参照)、ユーザーは当該空隙を介して操作部41にアクセスすることができる。このように操作カバー38の上方を括れさせて、操作部41にアクセスするための空間すなわちアクセス空間を形成すると、操作カバー38のみを径方向に突出させる場合に比べて、加湿器の全体のシルエットをすっきりさせることができる。また操作部41は、吹出口18の近傍である直上に位置しており、この配置によれば、吹出口18から吹き出される浄化空気の一部が操作部41に届くようにして、その表面を浄化することができる。また、ユーザーが操作部41を操作する際に、浄化空気の一部がユーザーの手指に触れるようにして、その表面を浄化することができる。
【0037】
装置本体1(外ケース16)の外周面を上方へ延長した仮想面の内方の奥まった位置にアクセス空間を設け、このアクセス空間に下方から臨むように操作部41(操作カバー38)を配置すると、加湿器の天面や外周面に操作部41を配置する場合に比べて、ユーザーの手や物などが意図せず操作部41に触れることによる誤操作をよく防止することができる。ユーザーが加湿器(給水タンク2)の上に置いた物が操作部41に触れることもない。アクセス空間をリング状に形成すると、ユーザーは加湿器の正面(前面)からはもちろん、その側面(左右面)や背面(後面)からも操作部41に手を伸ばして操作しやすくなる。給水タンク2(タンク本体6)で区画されるアクセス空間の奥面は、下窄まりの截頭円錐面で構成されており、これによれば、ユーザーが操作部41を斜め上方から見下ろしたときに、該操作部41を視認しやすくなる。
【0038】
加湿ケース35の上半部は、先述の装着凹部3を区画する。加湿ケース35の下半部には、給水タンク2から送給された水を貯める四角筒状の貯水部44が設けられており、その底部に加湿モジュール36が取り付けられている。つまり貯水部44は、上面に開口を有する有底状に形成されており、該開口は装着凹部3に連通している。装着凹部3の底部における貯水部44の後側には、上向きに突出する係合突起45が膨出形成されており、その内側に給電端子37が下方から差し込み固定されている。係合突起45の先端(上端)には、給電端子37の突端の挿通を許す一対のスリット46が設けられている。
【0039】
加湿ユニット11は平面視で正円状に形成されており、その中心に加湿モジュール36が配置されている。装着凹部3の底部の右端寄りには、貯水部44に向かって左方へ下り傾斜する受水壁48が凹み形成されている。受水壁48は、給水タンク2から滴下する水を受け止めて(滴下位置P)、これを貯水部44へ案内する。受水壁48を水平面に対して傾斜させると、給水タンク2から受水壁48へ滴下した水が上方へ大きく跳ねないようにして、給水タンク2の表面を濡らさないようにすることができる。また、受水壁48を貯水部44に向かって下り傾斜させると、該受水壁48を送水用として機能させて、貯水部44への送水構造を簡素化することができる。なお受水壁48は、ユーザーが装置本体1を傾けて貯水部44内の残水を排出する際の注出口としても機能する。
【0040】
貯水部44の左端寄りには、貯水部44内の溜水の波立ちを抑制するための防波壁49が設けられている。つまり受水壁48と防波壁49は、加湿モジュール36を左右両側から挟むように配置されており、このように受水壁48と防波壁49を配置すると、受水壁48から貯水部44へ水が流れ込むときの貯水部44内の波立ちを効果的に抑制することができる。貯水部44内の水位は、貯水部44の左側の外面に設けられた静電容量式の水位センサ50で検知されており、この水位センサ50の出力に基づいて、給水タンク2からの給水が制御されている。貯水部44内の溜水の波立ちを防波壁49で抑制すると、波立ちによる貯水部44の水位の誤検知を防止することができる。
【0041】
貯水部44の前側には、上下に伸びる送気筒52が設けられている。送気筒52は、加湿ケース35と一体に設けられる上送気体53と、加湿ケース35とは別体である下送気体54とを上下に連結して構成されている。上送気体53は、装着凹部3の底壁を上下に貫通する四角筒状に形成されている。上送気体53の上端は前向きに開口しており、同下端は下向きに開口して下送気体54に連通している。
図7に示すように下送気体54は、上面と右面に開口を有する中空のプラスチック成形品からなり、貯水部44の前側の外面にビス55で固定されている。下送気体54の上面の開口は上送気体53に連通し、右面の開口は次に説明するミストファン56に連通している。
【0042】
ミストファン56は、吸気方向と排気方向が直交する遠心式のブロワファン(シロッコファン)からなり、貯水部44の前側の外面における下送気体54の右隣にビス55で固定されている。具体的には、ミストファン56は、渦巻き状のファンケーシング58と、ファンケーシング58内で水平軸(前後方向)のまわりに回転する円筒状の羽根車59とを備える。ミストファン56の吸気口60は、ファンケーシング58の前面に羽根車59と同心円状に形成されている。ファンケーシング58の左面にはミストファン56の排気口61が設けられており、その開口縁は下送気体54の右面の開口すなわち流入口62に差し込まれている。つまり、ファンケーシング58内の羽根車59が駆動すると、羽根車59により形成された気流が下送気体54に流れ込み、下送気体54と上送気体53を順に上昇する。なおミストファン56の排気口61は、下送気体54へ向かって緩やかに上り傾斜しており、これによれば、下送気体54内で気流を上向きに変向する際の風量の損失を小さくすることができる。
【0043】
図4に示すように、装着凹部3の側面の上下中途部には、本体側段部66が周回状に形成されている。本体側段部66の後端部(
図6で12時の位置)には、下向きに凹む切欠凹部67が形成されており、この切欠凹部67の内側に、ロック機構4を構成するロック片68の先端部が配置されている。ロック片68の基端部は外ケース16と加湿ケース35の間に収容されており、ロック片68の先端部のみが加湿ケース35に開口された窓から切欠凹部67へ向かって露出している(
図5参照)。また本体側段部66の3個所(
図6で2時、6時、10時の位置)には、下向きに凹む係合溝69が周方向等間隔に設けられている。切欠凹部67の下面は装着凹部3の中央へ向かって下り傾斜しており、これによれば、切欠凹部67へ浸入した水滴が傾斜に沿って排出されるようにして、切欠凹部67内における水滴の滞留を防止することができる。この水滴の滞留を防止すると、水滴がロック片68用の窓を介して加湿ケース35の内側へ浸入しないようにして、ロック機構4を構成するばねなどの腐食(さび)を防止することができる。
【0044】
給水タンク2の外周面の下部にも、周回状のタンク側段部71が設けられている。タンク側段部71の後端部(
図8で12時の位置)には、本体側段部66の切欠凹部67およびロック片68に対応して、下向きに突出するU字状のロック枠72が設けられており、またタンク側段部71の3個所(
図8で2時、6時、10時の位置)には、本体側段部66の係合溝69に対応して、下向きに突出する係合突起73が周方向等間隔に設けられている。
【0045】
給水タンク2を装着凹部3に上方から差し込むと、給水タンク2のタンク側段部71が装着凹部3の本体側段部66で受け止められて、各係合突起73が各係合溝69に進入して係合するとともに、ロック枠72が切欠凹部67に進入し、ロック片68がロック枠72に係合する(
図9参照)。各係合突起73と各係合溝69の係合、および、ロック枠72と切欠凹部67の係合により、装置本体1に対する給水タンク2の垂直軸まわりの回転が規制され、ロック片68とロック枠72の係合により、装着凹部3からの給水タンク2の意図しない抜け出しが規制される。これらの規制により給水タンク2は安定的に装着状態に保持される。係合突起73(係合溝69)とロック枠72(切欠凹部67)は、ユーザーが給水タンク2を装着凹部3内の適正位置に装着するためのガイド(位置決め)としても機能する。
【0046】
ロック片68は切欠凹部67の内側に配置されており、換言すれば、給水タンク2の抜け出しを規制するための構造と、給水タンク2の回転を規制するための構造とが、装着凹部3の1個所に集約されている。また給水タンク2のロック枠72は、ロック片68に係合して給水タンク2の抜け出しを規制する構造と、切欠凹部67に係合して給水タンク2の回転を規制する構造とを兼ねており、したがって給水タンク2においても両構造が1個所に集約されている。このような集約配置によれば、上記両構造に占有されない装着凹部3および給水タンク2のスペースを広くして、該スペースに他の構造を比較的自由に配置することができる。
【0047】
給水タンク2のタンク本体6の底部には、扁平な有底円筒状のタンクベース75が外面側から組み付けられている。タンクベース75は、給水タンク2の装着時に装着凹部3の下半部(本体側段部66よりも下側)に収容されて、該装着凹部3の底面で支持される。
図9に示すように、タンクベース75の下面の後部には、内向き(上向き)に凹む係合凹部76が形成されており、その底部に受電端子77が固定されている。給水タンク2の装着時に、係合凹部76は装着凹部3の底部の係合突起45と係合し、受電端子77はスリット46から露出する給電端子37に接触する。これにより給電端子37と受電端子77は通電状態となる。以上の形態によれば、ユーザーが給水タンク2の装着とは別に端子37・77どうしを接続する手間を不要として、ユーザーの利便性の向上を図ることができる。給電端子37と受電端子77には任意の防水処理が施されている。給電端子37は、給水タンク2の装着の有無を検知するセンサとして機能しており、給電端子37から受電端子77への通電の有無に基づいて、給水タンク2の装着の有無が判断されている。給電端子37から受電端子77の通電が無い状態では、給水タンク2が装着されていないとみなされて、操作基板39にエラーが表示される。
【0048】
給水タンク2は、タンク本体6内の水位を検出するフロート式の貯水センサ79と、タンク本体6内を照明する照明装置80と、タンク本体6内の水を電気分解してオゾン水(除菌水)に変化させる電解装置81(
図10参照)などの電気機器を備える。これら電気機器は受電端子77に電気的に接続されており、給水タンク2の装着時には受電端子77から電力の供給を受けて駆動することができる。貯水センサ79は、タンク本体6内の水に浮くフロートと、フロートに取り付けられた磁石と、タンク本体6の底壁の上面側でフロートを上下動可能に支持するガイド体と、同底壁の下面側に取り付けられたホール素子とを備える。タンク本体6の貯水量が十分な状態では、フロートが限界まで浮き上がり、このとき磁石はホール素子による検知範囲の外に位置する。タンク本体6の貯水量が減少して残り僅かになると、フロートが下降して磁石がホール素子により検知され、これを受けて操作基板39には、タンク本体6内の水が無くなった旨のエラーが表示される。
【0049】
図11に示すようにタンクベース75の内側には、タンク本体6内のオゾン水を装置本体1へ送給するための送水路83が形成される。送水路83は、タンク本体6の底部に設けられた送水口84と、タンクベース75の底部に設けられた滴下口85とを繋いでおり、全体としてクランク状に形成されている。滴下口85は、給水タンク2の装着時に受水壁48の滴下位置Pの真上に位置する。送水口84には、タンク本体6の内面側から濾過用のフィルター部材86が着脱自在に装着されており、これにより送水路83への異物の侵入を防止することができる。
【0050】
具体的には送水路83は、送水口84から下方へ伸びる上流側の第1送水体88と、第1送水体88の下端から滴下口85に至る下流側の第2送水体89とで構成されており、このうち第2送水体89には、開閉弁90で開閉される通水孔91が設けられている。開閉弁90は、タンク本体6の下面に固定されるフレーム92と、フレーム92の下面から出退操作されるプランジャ93とを備えるソレノイドからなり、先述の受電端子77に電気的に接続されて電力を供給される。プランジャ93の先端(下端)は上方から通水孔91に臨んでおり、該通水孔91に対して接離可能である。また開閉弁90は、プランジャ93をフレーム92から突出する方向すなわち下向きに付勢するばねと、プランジャ93の基部を取り囲むコイルとを備える。
【0051】
貯水部44の満水時や給水タンク2の分離時など、開閉弁90に通電しない常態においては、ばねで付勢されるプランジャ93の先端が通水孔91に当接してこれを閉鎖する。すなわち、送水路83が閉鎖されて給水タンク2から装置本体1への給水が遮断される。一方、開閉弁90のコイルに通電すると、プランジャ93に作用する上向きの電磁力が生じて、プランジャ93がばねの付勢力に抗して上昇し(フレーム92内に退入し)、通水孔91から離れてこれを開放する。すなわち、送水路83が開放されて給水タンク2から装置本体1への給水が行われる。
【0052】
図10に示すように給水タンク2は、装置本体1の上部の装着凹部3に装着されて、貯水部44の上方に位置する。給水タンク2内の水は、タンク本体6の底部の送水口84からクランク状の送水路83を流下し、タンクベース75の底部の滴下口85から受水壁48へ滴下し、該受水壁48を下って貯水部44に流れ込む。このように本実施形態では、給水タンク2のタンク本体6から水を自由落下させるだけで、これを貯水部44まで送ることができる。つまり、貯水部44への送水に関してポンプなどの駆動系を不要として、送水構造を簡素化することができる。
【0053】
貯水部44の満水位は受水壁48の下端(左端)に設定されており、この受水壁48に給水タンク2(タンクベース75)とその滴下口85が上方から臨んでいる。つまり、給水タンク2とその滴下口85は、貯水部44の満水位よりも上方に位置しており、これによれば給水タンク2が貯水部44内の溜水に浸ることがなく、該溜水で給水タンク2の表面を濡らすことがない。また上記のように、給水タンク2を装置本体1から分離したとき、送水路83(滴下口85)は開閉弁90により閉鎖される。したがって、給水タンク2を装置本体1から分離して持ち運ぶ際に、給水タンク2の表面や滴下口85から滴る雫で装置本体1の周囲などを濡らさないようにすることができる。
【0054】
ミスト筒7は、タンク本体6と一体に設けられる上筒体96と、タンクベース75と一体に設けられる下筒体97とを上下に接続して、全体として上下に伸びる円筒状に形成されており、厳密には、下端から上端にかけて徐々に縮径する上窄まりテーパー状に形成されている。上筒体96は、タンク本体6の内部にその周面と同心円状に形成されており、同様に下筒体97も、タンクベース75の内部にその周面と同心円状に形成されている。ミスト筒7の下側の開口は、給水タンク2の装着時に上方から貯水部44に正対する。つまり、加湿モジュール36により生成されたミストは、貯水部44からミスト筒7を上昇して放出口9から放出される。ミスト筒7を徐々に縮径させると、ミストの風速を高めてこれをより遠くまで送ることができる。
【0055】
図9に示すように、給水タンク2の係合凹部76と受電端子77は、ミスト筒7(下筒体97)の筒壁の外側に配置されている。つまり、給水タンク2の装着時に、係合凹部76はミスト筒7の外側で装置本体1の係合突起45に係合し、受電端子77と給電端子37が接触する。以上の構成によれば、ミスト筒7を上昇するミストが給電端子37と受電端子77に触れないようにして、水分に起因する端子37・77間の接触不良を防止することができる。
【0056】
タンクベース75における下筒体97の前側には、給水タンク2の装着時に送気筒52の上部を受け入れる送気溝98が設けられている。送気溝98は、タンクベース75の下面から内向き(上向き)に凹む前後に長い溝からなり、その後端は壁を隔てることなく下筒体97の内部に連通している。送気筒52の上端の送気口99は前向きに開口しており、送気溝98の前壁に十分な隙間を介して対向している。また、送気溝98の左右幅寸法は、送気筒52の上部の同寸法よりも十分に大きく形成されており、送気溝98と送気筒52の左右壁の間には、気流の通過を許す隙間が設けられている。
【0057】
つまり、ミストファン56により形成されて送気筒52を上昇する気流は、その上端の送気口99から前向きに吹き出された後、送気溝98の前壁に衝突して左右に分かれ、今度は送気溝98の左右壁に沿って後ろ向きに流れる。その後、ミスト筒7の下筒体97に至り、貯水部44から上昇するミストを取り込み、ミスト筒7を上昇して放出口9から放出される。なお送気溝98の前壁は、タンクベース75の周壁を利用して平面視で外凸円弧状に形成されているため(
図8参照)、送気口99からの気流を左右へスムーズに変向することができる。このように、ミストファン56でミスト筒7内に気流を形成すると、加湿モジュール36により生成されたミストを当該気流に乗せて、放出口9から加湿器の外部へ効率良く放出することができる。なお、ミストファン56の動作電流値は常に監視されており、この電流値が正常範囲を外れた場合には、ミストファン56の点検を促すエラーが操作基板39に表示される。
【0058】
送気筒52の上端部は貯水部44に隣接しており、これによれば送気筒52の送気口99から貯水部44の上方までの経路を短縮すなわち簡素化することができる。送気口99を前方向(水平方向)にのみ開口させると、送気筒52の上面を塞いで、該上面から送気筒52への水滴やミストの侵入を防止することができる。また送気口99を、貯水部44から離れる向きに開口させると、貯水部44から立ち昇るミストが送気筒52へ向かって逆流した場合に、該ミストが送気口99から送気筒52へ侵入することを抑制することができる。さらに送気口99を、受水壁48から離れる向きに開口させると、給水タンク2の滴下口85から滴下した水が受水壁48で大きく跳ねた場合に、その水滴が送気口99から送気筒52へ侵入することを防止することができる。
【0059】
図12に示すようにミスト筒7の上端は、ミストカバー123とホルダーユニット124で囲まれる混合室125に連通している。この混合室125では、ミスト筒7から立ち昇るミストにタンク本体6内を浮遊するオゾンガスが混ぜ合わされる。また混合室125は、タンク蓋8とミストガイド126に囲まれる放出室127に連通しており、放出口9はこの放出室127の前端部に臨んでいる。つまり、ミスト筒7から立ち昇るミストは、混合室125でオゾン含有ミストとなって放出室127へ流れ込み、該放出室127から放出口9を介して加湿器の外へ放出される。
【0060】
ミストカバー123とホルダーユニット124は共に樹脂成形品で構成される。ホルダーユニット124は、ミストカバー123を下側から支持するものであって、ミスト筒7に上方から差し込まれてその外周面に固定されており、具体的には、ミスト筒7の上端部に外嵌する略円筒状の装着筒130と、装着筒130の外周面から径方向へ張り出す受皿部131と、受皿部131の後面から後方へ伸びる蓋支持台132とを一体に備える。受皿部131は全体として擂り鉢状に形成されており、その壁面は外方へ上り傾斜している。受皿部131の外周縁(上縁)は、ミストカバー123に係合してこれを下側から支持する。蓋支持台132の詳細は後述する。
【0061】
ミストカバー123は、上方からミスト筒7の上開口に正対する上凸部分球面状のミスト壁134と、ミスト壁134の周縁から下向きに伸びる略円筒状の係合筒135と、係合筒135の前面から前方へ下り傾斜する指標体136とを一体に備える。係合筒135は、ホルダーユニット124の受皿部131の外周縁に弾性的に係合する。指標体136はタンク本体6内の満水位を示すものであり、指標体136の下端の僅かに下方が満水位に一致する。指標体136の上面には、その下端が満水位の指標であることをユーザーに知らせる文字などを表示することができる。ミスト壁134は、ミスト筒7の上開口より大径かつ同心円状に形成されており、その周縁部にはミストの通過を許す複数個のミスト孔137が周方向等間隔に設けられている。平面視においてミスト孔137の一群は、ミスト筒7の上開口を外側から取り囲むように配置されている(
図13参照)。
【0062】
ミストカバー123のミスト壁134と、ホルダーユニット124の装着筒130および受皿部131とにより囲まれる空間が、ミストにオゾンガスを混ぜ合わせる混合室125を構成する。タンク本体6内には、電解装置81による水の電気分解で生じたオゾンガスが浮遊しており、該オゾンガスを混合室125へ吸引するための複数本の吸引路140が、ホルダーユニット124に設けられている。各吸引路140は、ホルダーユニット124を上下に貫通する溝からなり、平面視で円弧状に形成されている(
図13参照)。吸引路140の一群は、ミスト筒7の上開口を外側から取り囲むように配置されている。
【0063】
ミスト筒7から立ち昇るミストは、ミスト壁134の内面(下面)で受け止められて、該ミスト壁134の径方向に変向される。つまり、混合室125からミスト孔137を介して放出室127へ流出するミストの流れが生じる。このミストの流出により混合室125には負圧が生じ、該負圧によりタンク本体6内のオゾンガスが、吸引路140を介して混合室125へ吸引される(ベンチュリー効果)。こうして吸引されたオゾンガスは、混合室125でミストと混ざり合い、これによりオゾン含有ミストが生成される。
【0064】
タンク本体6内のオゾンガスを混合室125へ吸引し、これをミストと混ぜ合わせて放出口9から放出すると、タンク本体6内のオゾンガスの濃度を下げて、オゾンガスが高濃度で充満しないようにすることができる。これにより、タンク本体6からタンク蓋8を分離してその上面を開放した際に、ユーザーが感じるオゾンガスの刺激臭を大幅に軽減することができる。加えて、放出口9から放出されるミストにオゾンガスの除菌効果を付加することができる。また、オゾンガスをミストに混ぜ合わせる混合室125を設けると、放出口9から放出されるミスト内にオゾンガスを偏りなく均一に分布させることができる。オゾンガスの分布にムラがあると、ミストを受けるユーザーが一時的にオゾンガスの強い臭気を感じてしまうおそれがあるが、本実施形態によればこのおそれを大幅に低減することができる。
【0065】
なお、ミスト筒7から立ち昇るミストには、比較的大きな水滴が含まれることがある。この水滴の多くは、ミスト壁134の内面で受け止められてこれに付着し、ミスト壁134の周縁部から混合室125の底部へ向かって滴下する。そして、混合室125の底部(受皿部131の下縁)から下方へ伸びるいずれかの吸引路140を流下し、ミスト筒7の外面を伝ってタンク本体6内の溜水に合流する。つまり吸引路140は、ミストに含まれる水滴をタンク本体6内へ戻すための回収路141を兼ねている。
【0066】
ミスト筒7から立ち昇るミストを混合室125の上壁すなわちミスト壁134で受け止めると、ミストに含まれる比較的大きな水滴をミスト壁134に付着させて、これをミストから除去することができる。つまり、微細な水滴のみを含みユーザーの肌などを濡らしてしまうことが少ない良質なミストを放出口9から放出することができる。また、ミスト壁134から混合室125の底部に滴下した水滴を、回収路141を通じてタンク本体6内の溜水に合流させると、混合室125における水滴の滞留を防止するとともに、当該水滴をミストの原料として再利用することができる。
【0067】
ミストガイド126は、浅い皿状に形成された樹脂成形品からなり、タンク蓋8の内面(下面)に固定されている。ミストガイド126の底壁の中央には、ミストカバー123のミスト壁134の挿通を許す円形の挿通孔143が設けられている。ミスト壁134に設けられた各ミスト孔137は、タンク蓋8とミストガイド126に囲まれる放出室127へ向かって斜め上方に開口しており、したがって混合室125内のオゾン含有ミストは、ミスト孔137を通じて放出室127へスムーズに流れ込むことができる。
【0068】
タンク本体6からタンク蓋8を分離してその上面を開放すると、ユーザーはタンク本体6内、厳密にはタンク本体6の内周面とミスト筒7の外周面との間に給水することができる。ミスト筒7の上開口に上方から覆い被さるミスト蓋134は、ユーザーが誤ってミスト筒7の内側に給水することを防ぐ保護カバーを兼ねている。ミスト蓋134の外面(上面)には、ミスト筒7の内側へ給水してはならないことをユーザーに知らせる文字などを表示することができる。
【0069】
図10に示すようにタンク本体6の周壁は、下方へ縮径する略円錐台状に形成されており、その上部は略円筒状の装飾カバー144で外側から覆われている。装飾カバー144の上端部はタンク本体6よりも上方へ突出しており、該上端部の内側にタンク蓋8が着脱自在に内嵌装着されている。タンク蓋8は、円盤状に形成された樹脂成形品からなり、その外周面と装飾カバー144の内周面との間には、周方向に伸びる突条と溝からなるバヨネット構造が設けられている。つまり、装飾カバー144の内側でタンク蓋8を回転させると、バヨネット構造の突条が溝に係合するロック状態(タンク蓋8を持ち上げ不能)と、突条が溝から離脱するアンロック状態(タンク蓋8を持ち上げ可能)とに切り換えることができる。なお、装飾カバー144を省略し、タンク本体6とタンク蓋8の間に係合構造を設けて、タンク蓋8をタンク本体6に直接的に装着することもできる。
【0070】
図1および
図14に示すように、給水時などにタンク本体6から分離したタンク蓋8は、ミスト筒7の後方の蓋支持台132に載置することができる。具体的には、蓋支持台132は左右に伸びる樋状に形成されており、円盤状のタンク蓋8の周縁部が蓋支持台132に上方から差し込まれて載置される。このように蓋支持台132を備える本実施形態の加湿器によれば、ユーザーがタンク蓋8の置き場所に困ることがなく、またタンク蓋8を適正位置に載置することができるので、利便性に優れた加湿器を得ることができる。タンク蓋8を机などに置く必要がなくなるため、水滴が付着したタンク蓋8で机などを濡らしてしまうなどの問題も解消できる。なお、蓋支持台132に載置されるタンク蓋8は、給水時にタンク本体6の水面から水しぶきが飛んだ場合に、その一部を受け止めて加湿器の周囲へ飛ばないようにするための壁として機能する。
【0071】
蓋支持台132の内底面は、タンク蓋8の周縁部を下側から支持する蓋受面147を構成する。背面視(正面視)において蓋受面147は下凸円弧状に形成されている。また蓋受面147は後方へ下り傾斜しており、したがってタンク蓋8も後方へ傾斜する傾斜姿勢で支持される。本実施形態では、傾斜姿勢におけるタンク蓋8の鉛直面に対する傾斜角度θを20°に設定した。傾斜角度θは15°以上25°以下の範囲内で設定することが好ましい。
【0072】
蓋支持台132の前壁には、蓋受面147へ向かって後方へ伸びる突起からなる規制体148が設けられており、これに対応してタンク蓋8の内面(下面)には、円環状の突条からなる被規制体149が設けられている。規制体148は、蓋支持台132に差し込まれたタンク蓋8の被規制体149の下端部に係合して、タンク蓋8が倒れようとする方向の回転モーメントに抗して、これを傾斜姿勢に安定的に保持する。
【0073】
なお
図1および
図14は、タンク蓋8の水平姿勢(タンク本体6の開口を閉じる姿勢)における前端部を差し込んだ状態を示しているが、タンク蓋8の差し込み可能な部分は前端部に限られず、タンク蓋8の周縁部の任意の個所を蓋支持台132に差し込むことができる。つまり、タンク蓋8を円盤状に形成し、その内面に被規制体149を円環状に形成すると、タンク蓋8の周方向の向きにかかわらず規制体148が被規制体149に係合することから、ユーザーが蓋支持台132にタンク蓋8を差し込むときにその向きに気を配る必要を無くして、利便性の向上を図ることができる。さらに、円環状の被規制体149は、タンク蓋8の内面に付着した水滴がその周縁部ひいては外面まで伝うのを妨げる堰として機能する。
【0074】
タンク蓋8を蓋支持台132に載置すると、タンク蓋8に付着した水滴の多くは、タンク蓋8を伝って蓋受面147へ流下する。蓋受面147の左右中央の後端寄り、すなわち蓋受面147の底部からは、蓋支持台132を貫通する通水孔150が下方へ伸びている(
図15参照)。これによれば、タンク蓋8から蓋受面147へ流下した水滴は、該蓋受面147の傾斜に沿ってその底部へと向かい、通水孔150からタンク本体6の底部へ向かって滴下する。以上のように、蓋支持台132の蓋受面147を下凸円弧状に形成し、その底部から下方へ伸びる通水孔150を設けたので、蓋受面147の傾斜に沿ってその底部に集まった水滴を、通水孔150から蓋受面147の外へ排出することができる。つまり、蓋受面147の上に水が溜まらないようにすることができる。したがって、水中に雑菌が繁殖することなどを防ぐことができる。
【0075】
平面視において蓋支持台132は、給水タンク2の周壁の内側に配置されている。これによれば、タンク蓋8を伝って蓋支持台132へ流下した水滴を給水タンク2内に滴下させることができるので、水滴で加湿器の周囲が濡れることを防ぐことができる。また蓋支持台132は、給水タンク2の上縁よりも下方に配置されており、これによれば、タンク蓋8が蓋支持台132に載置されたときの衝撃でタンク蓋8に付着した水滴が飛び散った場合でも、その多くを給水タンク2内に落下させることができるので、加湿器の周囲が濡れることを防ぐことができる。
【0076】
蓋支持台132を、給水タンク2の満水位(指標体136)よりも上方に配置したので、給水タンク2内の溜水で蓋支持台132ひいてはタンク蓋8が濡れることを防ぐことができる。なお、蓋支持台132と指標体136とは、ミスト筒7を間にして前後対称に配置されている。これによれば、蓋支持台132にタンク蓋8を差し込んだ際に、タンク蓋8が指標体136の上方に被ることはなく、給水タンク2への水の補給時に、ユーザーはより容易に指標体136を視認することができる。したがって、ユーザーは給水タンク2の満水位をより確実に認識することができる。なお、蓋支持台132と指標体136の位置関係は、ミスト筒7を間にして対称に限られず、例えば蓋支持台132と指標体136のいずれか一方をミスト筒7の左側または右側に移動させて、ミスト筒7のまわりの位相が90°異なる位置関係としても、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0077】
蓋支持台132に傾斜姿勢で載置されるタンク蓋8の過半部を、平面視において給水タンク2の周壁の内側に配置したので、当該タンク蓋8に付着した水滴がこれを伝うことなく滴下した場合でも、その多くを給水タンク2内に落下させることができる。したがって、水滴により加湿器の周囲が濡れることを防ぐことができる。このときのタンク蓋8の鉛直面に対する傾斜角度θを25°以下(本実施形態では20°)に設定したので、タンク蓋8に付着した水滴をより確実且つ迅速に蓋支持台132へ流下させることができる。したがって、これによっても、タンク蓋8に付着した水滴が飛び散って、加湿器の周囲が濡れることを防ぐことができる。タンク蓋8の多くの部分を給水タンク2の周壁の内側に配置することができるので、これによってもタンク蓋8から滴下する水滴で加湿器の周囲が濡れることを防ぐことができる。
【0078】
本実施形態の蓋支持台132は、受皿部131および装着筒130と一体に設けられる樹脂成形品からなり、該装着筒130はミスト筒7の外周面に固定されている。つまり蓋支持台132は、受皿部131と装着筒130を介してミスト筒7で支持されている。これによれば、蓋支持台132ひいてはタンク蓋8をぐらつくことなく安定的に支持することができる。
【0079】
以上のように構成される加湿器のユーザーは、電源ケーブル24を接続したうえで操作部41を操作することにより、加湿器を運転状態と待機状態の間で切り換えることができる。加湿器の運転状態においては、加湿ユニット11と浄化ユニット12の各部が駆動して、ミストと浄化空気が同時に生成される。もちろん、加湿ユニット11と浄化ユニット12のうち一方のみを運転状態として、ミストと浄化空気の一方のみを生成することもできる。
【0080】
加湿ユニット11の運転状態においては、主に加湿モジュール36とミストファン56が駆動して、生成されたミストが気流に乗って放出口9から放出される。また、加湿ユニット11の給電端子37から給水タンク2の開閉弁90に電力が供給されて、送水路83を通じたタンク本体6から貯水部44への給水が行われる。開閉弁90による送水路83の開閉は、貯水部44の水位センサ50の出力に基づいて制御される。すなわち、加湿ユニット11の運転中に、水位センサ50が満水を検知すると送水路83は閉鎖され、水位センサ50が水位の低下を検知すると送水路83は再び開放される。
【0081】
本発明に係る加湿器は、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs : Sustainable Development Goals)の目標3(すべての人に健康と福祉を)に貢献することができる。本発明は、浄化ユニット12を持たず浄化空気を生成しない加湿器にも適用することができる。また本発明は、上記実施形態で示した超音波式の加湿器以外に、水を加熱して気化させるスチーム式(加熱式)の加湿器(加湿モジュール36はヒーター)や、含水フィルターに風を当てて水を気化させる気化式の加湿器(加湿モジュール36はファン)などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
2 給水タンク
7 ミスト筒
8 タンク蓋
9 放出口
11 加湿ユニット
130 装着筒
132 蓋支持台
147 蓋受面
150 通水孔