(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042565
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】農作業受委託装置、農作業受委託方法および農作業受委託プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240321BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147357
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 晋司
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】農作業の受委託マッチングにおいて、農作業の委託を積極的に行うような動機付けを委託者に与えること。
【解決手段】本開示に係る農作業受委託装置は、委託者が委託を依頼する農作業に関する情報である委託情報と、受託者が受託を希望する農作業に関する情報である受託情報とを取得する取得部と、前記委託者が前記農作業を委託することによって得られる利益を試算した結果に基づいて、前記委託情報に関する委託費用を算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記委託費用と、前記受託情報とを参照し、委託および受託の条件が適合する受託者を抽出する抽出部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
委託者が委託を依頼する農作業に関する情報である委託情報と、受託者が受託を希望する農作業に関する情報である受託情報とを取得する取得部と、
前記委託者が前記農作業を委託することによって得られる利益を試算した結果に基づいて、前記委託情報に関する委託費用を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記委託費用と、前記受託情報とを参照し、委託および受託の条件が適合する受託者を抽出する抽出部と、
を備えることを特徴とする農作業受委託装置。
【請求項2】
前記算出部は、
前記委託者から前記委託情報に係る農作業の内容を変更する旨の入力を受け付けた場合に、変更された当該内容に基づいて当該委託者が得られる利益を試算し、試算した結果に基づいて前記委託費用を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の農作業受委託装置。
【請求項3】
前記算出部は、
前記入力を受け付けた場合に、変更された前記内容に基づいて当該委託者による自社労働力の不足分を算出し、当該不足分に対応する農作業を委託した場合の委託費用を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の農作業受委託装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記入力を受け付けた場合に、変更された前記内容に対応する分の労働力を算出し、当該労働力に対応する農作業を委託した場合の委託費用を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の農作業受委託装置。
【請求項5】
コンピュータが、
委託者が委託を依頼する農作業に関する情報である委託情報と、受託者が受託を希望する農作業に関する情報である受託情報とを取得し、
前記委託者が前記農作業を委託することによって得られる利益を試算した結果に基づいて、前記委託情報に関する委託費用を算出し、
算出された前記委託費用と、前記受託情報とを参照し、委託および受託の条件が適合する受託者を抽出する、
ことを含むことを特徴とする農作業受委託方法。
【請求項6】
コンピュータを、
委託者が委託を依頼する農作業に関する情報である委託情報と、受託者が受託を希望する農作業に関する情報である受託情報とを取得する取得部と、
前記委託者が前記農作業を委託することによって得られる利益を試算した結果に基づいて、前記委託情報に関する委託費用を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記委託費用と、前記受託情報とを参照し、委託および受託の条件が適合する受託者を抽出する抽出部と、
として機能させることを特徴とする農作業受委託プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、農作業受委託装置、農作業受委託方法および農作業受委託プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農作業に従事する労働者数の減少や労働者の高齢化に伴い、農作業に関する労働力不足が問題となっている。この問題を解決するため、農作業を委託する農家と、農作業を代わりに請け負う受託者とをマッチングさせる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
農作業を請け負う受託者の中には、専門に特化した農機具を導入したり、高い技術で効率のよい作業を提供したりする、いわゆる高技術農業法人等が存在する。農家は、このような高い技術を有する受託者に農作業を委託することにより、双方にメリットのある契約を結ぶことも可能となる。
【0005】
しかしながら、農作業の受委託においては、一律に作業地の単位面積当たりの料金から受託料金が算出されることが一般的である。このため、受託者が適正な価格で農作業を受託できなかったり、あるいは、委託者の予測以上に受託料金が高く算出されたりといった問題が発生しうる。すなわち、委託する農家にとっては、委託することのメリットが目に見えにくく、委託により過度な費用負担が生じたように感じられ、農作業の委託に対して積極的な動機付けがなされなくなるおそれがある。また、これによって、受託者側にも、思うように作業を行う農地が確保できなくなるといった問題が発生しうる。
【0006】
そこで、本開示では、農作業の委託を積極的に行うような動機付けを委託者に与えることのできる農作業受委託装置、農作業受委託方法および農作業受委託プログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示に係る農作業受委託装置は、委託者が委託を依頼する農作業に関する情報である委託情報と、受託者が受託を希望する農作業に関する情報である受託情報とを取得する取得部と、前記委託者が前記農作業を委託することによって得られる利益を試算した結果に基づいて、前記委託情報に関する委託費用を算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記委託費用と、前記受託情報とを参照し、委託および受託の条件が適合する受託者を抽出する抽出部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、農作業の委託を積極的に行うような動機付けを委託者に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る農作業受委託処理の流れを模式的に示す図である。
【
図2】実施形態に係る情報処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図3】実施形態に係る管理装置の構成例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る委託情報記憶部の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る受託情報記憶部の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る算出処理を説明するための図(1)である。
【
図7】実施形態に係る算出処理を説明するための図(2)である。
【
図8】実施形態に係る算出処理を説明するための図(3)である。
【
図9】実施形態に係る農作業受委託処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】管理装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0011】
(1.実施形態)
(1-1.実施形態に係る農作業受委託処理の一例)
図1は、実施形態に係る農作業受委託処理の流れを模式的に示す図である。実施形態に係る農作業受委託処理は、
図1に示す農作業受委託システム1により実行される。農作業受委託システム1は、本開示に係る農作業受委託装置の一例である管理装置100と、受託者端末200と、委託者端末300と、データベース50とを含む。なお、農作業受委託システム1に含まれる各装置は、無線通信等により相互にデータの送受信が可能である。
【0012】
管理装置100は、実施形態に係る農作業受委託処理を実行する情報処理装置であり、例えばサーバ等である。具体的には、管理装置100は、農作業を受託する受託者と、所有する農地における農作業を委託する委託者とのマッチング処理を行う。管理装置100は、各種情報をデータベース50として記憶する。データベース50は、管理装置100内に記憶されてもよいし、クラウドサーバ等の外部装置に記憶されてもよい。
【0013】
受託者端末200は、受託者20によって利用される端末装置である。例えば、受託者端末200は、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末等である。
【0014】
受託者20とは、例えば、農地を所有する委託者から委託される農作業を受注し、農家に代わって農作業を実行する者である。例えば、受託者20は、農作業に従事する者を取りまとめる企業等である。より具体的には、受託者20は、同じ品目、同じ作業内容であっても、高機能な農機具等を利用することによって委託農家よりも高い効率で作業を進めることができる高技術農業法人等である。
【0015】
委託者端末300は、委託者30によって利用される端末装置である。例えば、委託者端末300は、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末等である。
【0016】
委託者30とは、例えば、農地を所有する農家である。委託者30は、例えば、自身ではすべてを実行することが困難な農作業について、受託者20に農作業を委託する。
【0017】
近年、一家族等が管理する比較的小規模な農地においては、家族を形成する人数の減少や後継者不足等を理由として、農作業に関する労働力が不足している。このため、農作業を代わりに請け負う受託者20と委託者30とのマッチングが模索されている。しかしながら、農作業の委託に不慣れな委託者30は、委託により過度な費用が発生することを危惧し、積極的に農作業を委託することを躊躇する場合がある。また、受託者20としては、ある程度の規模の作業をまとめて受託することで、農場間の移動や作業準備をまとめて行うことができ、より一層効率的に作業を行うことができる。しかし、委託者30からの委託件数が一定規模とならなければ、受託者20は、効率よく受託することができない。
【0018】
また、農作業の受委託においては、一律に作業地の単位面積当たりの料金から受託料金が算出されることが一般的である。しかし、農作業では、作業地の形状や周辺道路の幅などの環境条件に伴う費用や、作業時間や人の確保などの人件費など、一律に判断できない費用が発生することがある。この場合、受託者20は適正な価格で農作業を受託することができず、モチベーションの低下や、受託価格とサービス提供結果との乖離など、様々な問題が発生するおそれがある。
【0019】
さらに、農作業を委託する農家にとっては、農作業を委託した場合の費用のみに着目しがちとなり、委託することのメリットが目に見えにくいため、農作業の委託に対して積極的な動機付けがなされなくなるおそれがある。これによって、受託者20は、思うように作業を行う農地が確保できなくなり、高機能な農機具等への投資を回収できないといった問題も発生しうる。
【0020】
そこで、実施形態に係る管理装置100は、以下に説明する情報処理を実行することにより、上記課題を解決する。すなわち、管理装置100は、委託者30が委託を依頼する農作業に関する情報である委託情報と、受託者20が受託を希望する農作業に関する情報である受託情報とを取得した場合に、委託者30が農作業を委託することによって得られる利益を試算(シミュレーション)する。そして、管理装置100は、試算結果に基づいて、委託情報に関する委託費用を算出する。さらに、管理装置100は、算出した委託費用と、受託情報とを参照し、委託および受託の条件が適合する受託者20を抽出する。
【0021】
すなわち、管理装置100によれば、委託者30は、実際に農作業を委託する前に、委託することによって自身がどのくらいの利益を得られるかといった情報を得ることができる。例えば、委託者30は、委託による労働力の増加を見越して農地を拡大した場合に、どのくらい収穫高や売上げが上がり、結果としてどれくらいの所得の増加が見込めるかを知ることができる。これにより、委託者30は、委託のメリットを事前に確認できるため、積極的に農作業を委託しようとする動機付けを与えられる。これに伴い、受託者20は、委託者30から多くの農作業の委託を受注することができる。以下、
図1を用いて、農作業受委託システム1による農作業受委託処理の概要を説明する。
【0022】
図1に示すように、管理装置100は、受託者端末200を介して、受託者20から受託情報を取得する(ステップS1)。具体的には、管理装置100は、受託者20から、受託を希望する農作物の品目や農作業の類型、受託可能面積、受託者20の住所等の基本情報、受託希望費用(コスト)、受託可能な日程等の各種情報を含む受託情報を取得する。管理装置100は、取得した情報をデータベース50に格納し、受託情報に関するデータテーブルを生成する。管理装置100は、受託者20からの受託情報を継続的に取得する。
【0023】
また、管理装置100は、委託者端末300を介して、委託者30から委託情報を取得する(ステップS2)。具体的には、管理装置100は、委託者30から、委託を希望する農作物や農作業の類型、委託面積、委託先となる農地の住所等の情報、委託に関する回答期限や作業実施希望日等の各種情報を含む委託情報を取得する。管理装置100は、取得した情報をデータベース50に格納し、委託情報に関するデータテーブルを生成する。管理装置100は、委託者30からの委託情報を継続的に取得する。
【0024】
さらに、管理装置100は、委託者30から取得した委託情報について、委託者30の所定の要求に基づき、委託者30が得られる利益をシミュレーションする(ステップS3)。例えば、管理装置100は、委託者30が農作業を委託して作付面積を2倍に拡大したとすると委託費がいくらになるか、また、最終的に委託者30が得られる利益がどのように変化するか等をシミュレーションする。
【0025】
管理装置100は、シミュレーション結果を委託者30に通知する(ステップS4)。これにより、委託者30は、農作業の受委託における費用対効果の概算を事前に確認することができる。また、管理装置100は、委託者30が農作業を委託することによって得られる利益を試算した結果に基づいて、委託情報に関する委託費を算出する。例えば、管理装置100は、シミュレーションの結果、委託者30が受託者20やシステム管理者等に支払う費用が利益を上回らないよう、委託費を算出する。あるいは、管理装置100は、費用に関わらず、単に受託者情報に基づいて委託費を算出してもよい。委託者30は、シミュレーション結果に基づいて、自身の要望に適合した委託費を最終的に決定し、決定した委託費を含む委託情報を管理装置100に送信する。また、委託者30は、シミュレーション結果を参照し、委託するデメリットが大きいと判断した場合には、再試算を管理装置100に要求することも可能である。なお、シミュレーションの詳細については、
図2以下で詳述する。
【0026】
続けて、管理装置100は、委託者30から受け付けた委託情報と、受託者20が提示した受託情報とのマッチングを行う。一例として、管理装置100は、委託情報に係る農作業を受託可能な受託者20のうち、最も受託費用の低廉な受託者20を抽出する。そして、管理装置100は、抽出された受託者20と委託者30とのマッチングが成立した場合に、その旨を当該受託者20に通知する(ステップS5)。
【0027】
以上のように、農作業受委託システム1において、管理装置100は、委託者30が農作業を委託することによって得られる利益をシミュレーションした結果に基づいて、委託情報に関する委託費用を算出する。そして、管理装置100は、算出した委託費用と受託情報とを参照し、委託および受託の条件が適合する受託者20を抽出する。
【0028】
このように、農作業受委託システム1によれば、委託者30が農作業を外部の受託者20に委託した場合であっても委託者30が利益を得られるよう(もしくは、事前に委託費がいくらになるかを知ることができるよう)、シミュレーションを実行する。これにより、委託者30は、農作業を委託したとしても、最終的には利益が得られるように条件を調整したうえで、農作業の委託を発注することができる。結果として、かかる農作業のマッチングを行うプラットフォームにおいて委託情報が増加することが期待できるので、受託者20は、より多くの案件を受託することができ、農作業に関する高い能力を存分に発揮することができる。このようにして、農作業受委託システム1は、農作業に関して持続可能な受託および委託の体制を作ることができる。
【0029】
続けて、農作業受委託システム1による情報処理の流れについて、
図2を用いて詳細に説明する。
図2は、実施形態に係る情報処理の流れを示すシーケンス図である。
【0030】
まず、管理装置100は、委託者30および受託者20から、それぞれ委託情報および受託情報のデータ登録を受け付ける(ステップS11)。管理装置100は、受け付けたデータの中から、受託者20が受託可能なメニュー(例えば、受託情報のリスト)を作成し、決定する(ステップS12)。例えば、管理装置100は、委託者30が委託を希望している農作物の種類や、農作業の実施時期や、農作業の種類や作業人数等の条件が提示された受託メニューを決定する。管理装置100は、複数の受託者20から登録された受託メニューを参照することにより、後述するシミュレーションの際に、平均の受託価格等を算出することができる。
【0031】
続いて、管理装置100は、委託者30の要求に従い、労働力および所得のシミュレーションを行う(ステップS13)。例えば、管理装置100は、委託者30の現在の労働力と、受託者20に農作業を委託した場合の労働力の変化をシミュレーションする。また、管理装置100は、受託者20に農作業を委託した場合の委託費用、および、受託することにより増加する所得(利益)等に基づいて、委託者30の所得の変化をシミュレーションする。言い換えれば、委託者30は、現状と、将来の経営情報とを管理装置100が提供するプラットフォームに入力することで、委託による費用対効果を知ることができる。そして、委託者30は、シミュレーション結果に基づいて委託条件を決定し、決定した委託条件を保存する。なお、委託者30は、シミュレーションを経ることなく、委託条件を決定してもよい。また、この段階で受託メニューが受託者20にも公開される場合、委託者30は、コストの試算結果を参照して、受託条件を検討することもできる。
【0032】
そして、管理装置100は、ステップS13において算出された結果を用いて、委託者30および受託者20とで条件の合う者同士をマッチングする(ステップS14)。例えば、受託者20は、委託の依頼内容を確認して、受託するか否かを管理装置100に返答する。なお、マッチングは、管理装置100が受託条件および委託条件に基づいて自動的に行われてもよいし、委託者30および受託者20の相互の連絡(チャット機能や電話連絡等)を経るなど、当事者間で調整した上で行われてもよい。
【0033】
マッチングが成立すると、受託者20は、委託者30が委託した農地において、委託された農作業を実施することで、農作業を委託者30に提供する(ステップS15)。農作業が実行されると、受託者20は、作業完了処理(例えば、プラットフォームにおける作業実績の入力)を行う。また、委託者30は、作業完了として報告された内容を承認する。その後、委託者30は、管理装置100が提供するプラットフォームにおいて、決済処理を行う(ステップS16)。例えば、委託者30は、管理装置100にプラットフォームの利用料を支払う。また、委託者30は、受託者20に対して農作業に係る受託費を支払う。受託者20は、プラットフォームに係る手数料が引かれた代金を受領する。
【0034】
(1-2.実施形態に係る管理装置の構成)
次に、実施形態に係る農作業受委託処理を実行する管理装置100の構成について説明する。
図3は、実施形態に係る管理装置100の構成例を示す図である。
【0035】
図3に示すように、管理装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。なお、管理装置100は、管理装置100を管理する管理者等から各種操作を受け付ける入力部(例えば、キーボードやマウス等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0036】
通信部110は、例えば、ネットワークインタフェースコントローラ(Network Interface Controller)等によって実現される。通信部110は、ネットワークN(例えばインターネットや携帯電話通信網)と有線又は無線で接続され、ネットワークNを介して、受託者端末200や委託者端末300等との間で情報の送受信を行う。例えば、通信部110は、Wi-Fi(登録商標)、SIM(Subscriber Identity Module)、LPWA(Low Power Wide Area)等の通信規格もしくは通信技術を用いて、情報の送受信を行ってもよい。
【0037】
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、委託情報記憶部121と、受託情報記憶部122とを有する。
【0038】
委託情報記憶部121は、受託者20から取得した受託情報を記憶する。例えば、委託情報記憶部121は、
図1に示したデータベース50に含まれるデータテーブルの一例である。
【0039】
図4は、実施形態に係る委託情報記憶部121の一例を示す図である。
図4に示すように、委託情報記憶部121には、委託者30の識別情報(委託者ID)や農作物の品目、作業の類型、農作業が実施される期間、必要な作業量、委託者自身の労働力、作業にかかる経費等の項目を有する。なお、
図4以下で説明するデータテーブルでは、格納される情報を「A11」や「B11」のように概念的に示す場合があるが、実際には具体的な情報や数値が格納される。例えば、「必要作業量」には、作業に必要な具体的日数や、その作業に従事する人数等が記憶される。また、例えば、委託者自身の労働力を示す「自社労働力」の項目には、委託者30自身が提供可能な、当該作業に従事可能な延べ人数等の情報が記憶される。
【0040】
受託情報記憶部122は、受託者20から取得した受託情報を記憶する。例えば、受託情報記憶部122は、
図1に示したデータベース50に含まれるデータテーブルの一例である。
【0041】
図5は、実施形態に係る受託情報記憶部122の一例を示す図である。例えば、受託情報は、受託を希望する任意の受託者20が、受託可能な作業を項目ごとにリスト化した情報である。
図5に示すように、受託情報記憶部122には、受託情報を識別するための情報(受託ID)や、受託可能な作業工程、作業の内容、最小受託可能面積もしくは最大受託可能面積、1日の作業時間、工程に従事する人数、使用する農機具等の情報等を含む。なお、
図5での図示は省略しているが、受託情報には、作業ごとの受託費用(例えば、基準面積(アール等)あたりの費用)等の情報が含まれてもよい。
【0042】
また、受託情報には、受託者20に関する詳細情報が含まれてもよい。例えば、受託情報には、受託者20の所在地や、受託者20の過去の作業に対する評価値や、保有する農機具の種類や数等が含まれてもよい。
【0043】
図3に戻り、説明を続ける。制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって、管理装置100内部に記憶されたプログラムがRAM(Random Access Memory)等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、コントローラ(controller)であり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0044】
図3に示すように、制御部130は、取得部131、算出部132、抽出部133および送受信部134を含む。
【0045】
取得部131は、各種情報を取得する。例えば、取得部131は、委託者30が委託を依頼する農作業に関する情報である委託情報と、受託者20が受託を希望する農作業に関する情報である受託情報とを取得する。受託情報は、例えば受託価格を含む。取得部131は、取得した情報を記憶部120に記憶する。
【0046】
算出部132は、委託者30が農作業を委託することによって得られる利益を試算した結果に基づいて、委託情報に関する委託費用を算出する。
【0047】
例えば、算出部132は、委託者30から委託情報に係る農作業の内容を変更する旨の入力を受け付けた場合に、変更された内容に基づいて委託者30が得られる利益を試算し、試算した結果に基づいて委託費用を算出する。例えば、算出部132は、委託者30から農作業の規模を拡大する旨の入力を受け付けた場合に、拡大された規模に基づいて委託者30が得られる利益を試算し、試算した結果に基づいて委託費用を算出する。なお、委託者30から入力される規模は、任意の情報で表現可能である。例えば、委託者30から入力される規模は、増加させたい農地(作付)面積の数値であってもよいし、売上げや利益の増加希望分であってもよいし、労働力(作業時間)であってもよいし、追加する品目等であってもよい。また、上記の農作業の内容の変更とは、作業主体の分担の変更(委託者30自らがしていた作業を他人に委託する等)、農地の拡大、品目の変更、作業量の変化など、種々の概念を含んでもよい。農作業の変更の一例として、自らが高齢で高負荷な作業ができないので農業を辞めようとしている委託者30が、低負荷作業だけを自らが行い、残りの作業を委託するケースがありうる。この場合の農作業の内容の変更は、作業分担を変更し、委託者30の収入がゼロになることを回避する目的で行われるものといえる。あるいは、他の一例として、委託者30が遠方の農地を相続してしまい、草刈りなどの農地の維持費や固定資産税を委託者30が負担している場合に、農地の維持作業を委託するケースがある。この場合の農作業の内容の変更は、管理主体を変更し、委託者30の支出を減額する目的で行われるものといえる。このように、算出部132は、農作業の内容が変更されることにより生じる費用の変化に関してもシミュレーションを行うことができる。すなわち、委託者30が得られる利益とは、単に収入が増加するといった利益に限らず、作業量の削減や、委託者30の移動負担の軽減、農地管理負担の軽減、収益の改善など、委託により委託者30が得る何らかの効用といってもよい。
【0048】
算出部132によるシミュレーションの流れを以下に示す。算出部132は、取得部131によって取得された委託情報に基づいて、利益を試算する。委託情報は、委託者30の現状の作業量や労働力等の情報を含む。例えば、委託情報は、委託に係る生産品目(「白ネギ」等の具体的品目)、農地面積(「30a(アール)」等の数値)、反収(収穫高、「2t(トン)/10a」等の数値)、単価(「400円/kg」等の数値)を含む。また、委託情報は、委託者30が所有する農機名や、農機具の購入金額や耐用年数、償却費等の情報を含む。また、委託情報は、委託者30が有する労働力、作業量等の情報を含んでもよい。
【0049】
まず、算出部132は、例えば委託情報に係る償却費の合計を算出する。例えば、算出部132は、面積30aの農地の作業において、一年間でいくらの償却費が必要であるかを算出する。また、算出部132は、農作業に係るその他の費用(例えば、種苗費、肥料費、農薬費、資材費、動力光熱費等)を算出する。なお、算出部132は、算出に要する費用が不明な場合、費用の概算を委託者30から受け付けるためのフォーム等を委託者端末300に送信して回答を得る等、任意の手段で費用に係る情報を取得してもよい。
【0050】
さらに、算出部132は、生産のための作業工程と、月ごとの作業時間もしくは作業日数を算出する。例えば、算出部132は、委託者30および受託者20から登録された情報に基づいて、予め品目ごとの作業工程について、月ごとの作業時間をデータベースに登録しておいてもよい。そして、算出部132は、作業時間に基づき、委託者30の月ごとの作業時間の合計を算出する。例えば、算出部132は、委託者30が入力した品目や定植時期を起点として、月ごとの作業時間を算出する。また、算出部132は、委託者30の作業工程ごとの作業速度を算出する。具体的には、算出部132は、ある委託者30が、白ネギを面積30aの規模で生産しており、その調整出荷作業に「900時間/年」の時間を使っているとすると、10aあたりの作業速度を「(300時間/10a)/年」と算出する。なお、単位を「10a(一反)」とするのは、農作業における表現の慣習による。かかる数値から、算出部132は、委託者30の自社労働力(どのような作業力の作業者が従事しているか、また、各々が月ごとに何時間ほど労働可能であるか等)を算出する。なお、算出部132は、必ずしも算出処理によって作業時間を導出するのではなく、委託者30により入力された作業時間等の数値を作業時間として登録してもよい。
【0051】
算出部132による算出結果について、
図6を用いて説明する。
図6は、実施形態に係る算出処理を説明するための図(1)である。
図6に示すグラフ60は、委託情報に係る月ごとの作業時間61と、自社労働力62とを視覚化したものである。
【0052】
図6に示すグラフ60では、10月を除いては、自社労働力が作業時間を上回っている。このため、委託者30には、農地面積を拡大することで、より大きな利益を得ることのできる余地がある。
【0053】
このとき、算出部132は、委託者30から、委託情報に関する将来情報を取得する。例えば、算出部132は、委託者30が農地面積を2倍の「60a」とし、単価を「400円/kg」で生産することを要望する、といった将来計画を取得する。
【0054】
将来計画を取得すると、算出部132は、委託者30の月ごとの不足労働力(もしくは余剰労働力)を算出する。例えば、算出部132は、委託者30の現状の労働力から、農地面積が増加した場合の作業量との差を求めることで、将来計画における月ごとの不足労働力を算出できる。すなわち、算出部132は、委託者30から将来計画の入力を受け付けた場合に、拡大された規模に基づいて委託者30による自社労働力の不足分を算出し、不足分に対応する農作業を委託した場合の委託費用を算出する。
【0055】
この点について、
図7を用いて説明する。
図7は、実施形態に係る算出処理を説明するための図(2)である。
図7に示すグラフ70は、委託情報に係る月ごとの作業時間と、自社労働力と、不足労働力71を視覚化したものである。すなわち、グラフ70は、委託者30が農地面積を2倍にしたとすると、7月および9月以外では、自社労働力では対応しきれない不足労働力が発生することを示している。
【0056】
ここで、算出部132は、算出された不足労働力の数値を参照し、委託者30がどの作業をどの月にどのくらいの時間だけ委託すればよいか、を算出する。
【0057】
具体的には、算出部132は、委託する作業工程ごとに、年間の委託時間の合計を算出する。さらに、算出部132は、算出した委託時間に基づいて、かかる数値を委託が必要な面積に換算する。
【0058】
続いて、算出部132は、複数の受託者20から登録されている受託情報を参照し、登録されている受託情報の受託価格(円/10a)の平均値を算出する。なお、本開示では、受託者20として、委託者30よりも優れた農作業力を有する者を想定していることから、委託者30自身の作業にかかる費用よりも、受託価格の方が低廉に算出されることが期待される。例えば、同じ品目かつ同じ単位面積における作業であっても、委託農家が手作業かつ一般車両で作業するのに対して、受託者20は、専門農機具等を利用することで、委託農家の半分や4分の1の作業時間で完了することができる。言い換えれば、受託者20は、委託者30よりも効率よく短時間で作業を終えることができる者である。算出部132は、上記のように作業量を受託者20の想定作業時間で除算することで、受託者20の作業時間を算出し、かかる結果に基づいて委託費用を算出することができる。なお、算出部132は、受託価格の平均値のみならず、受託者20が提示する受託価格の最低価格等を用いて、不足した労働力を補うための委託費用を算出してもよい。また、委託者30自身の作業にかかる費用よりも受託価格の方が低廉に算出されないケースもありうるが、例えば、委託者30が委託をせずに面積を拡大するには、委託者30が人を新たに雇用したり、農機を購入したりしなければならない。これらの投資費用も含めて勘案した場合に、総合的に低廉な費用により農作業を拡大することができるのであれば、委託者30にとってメリットがあるといえる。
【0059】
そして、算出部132は、算出した受託費の平均値に基づいて、委託者30が委託しようとする作業工程ごとに委託費用を算出する。加えて、算出部132は、受託者20による農作業に係る経費や償却費等を合算し、最終的な受託費用を算出する。
【0060】
図7に示した例において、表65は、委託者30が将来計画を入力する前の委託者30の費用に関する情報を示す。表65においては、委託費用が「0」であるが、所得(利益)も低廉なものとなっている。一方、表75は、委託者30が将来計画を入力した後、算出部132によって算出されたシミュレーション結果を反映した、委託者30の費用に関する情報を示す。表75では、委託費用が増加しているものの、所得(利益)が委託費用以上に増加していることを示す。これは、委託者30が農地面積を2倍とする計画によって委託費用が発生したとしても、高効率な作業が可能な受託者20に農作業の一部を委託することによって、最終的には委託者30の利益が増加することを示している。
【0061】
なお、委託者30は、実際には1つのみの品目を生産するのではなく、複数の品目を生産していることが想定される。このため、算出部132は、複数品目に渡り、自社労働力や委託する作業量、委託費用等を算出することができる。
【0062】
この点について、
図8を用いて説明する。
図8は、実施形態に係る算出処理を説明するための図(3)である。委託計画表80は、ある委託者30の農作業の現状を示す。委託計画表80に示した例では、委託者30は、品目として大根を生産し、9月から12月にかけて作業を行うことを予定している。
【0063】
一方、委託計画表81は、委託者30が提案する将来計画をふまえた農作業の状況を示す。例えば、委託者30は、大根に加え、甘藷を新たに生産する計画を有する。この場合、算出部132は、委託者30から取得した自社労働力等の情報に基づいて、甘藷に係る作業について、どの作業であれば自社でまかなえるか、どの作業を委託することが望ましいか、を上記の委託費用算出処理を経て、決定する。なお、将来計画の提案は、委託者30からのみならず、管理装置100を運営する事業者や、受託者20等から行われてもよい。これにより、委託者30は、自社労働力を無駄にすることなく、また、自社で実施することが困難な作業については委託することで、新たな品目を生産できるので、利益を向上させることができる。
【0064】
抽出部133は、算出部132によって算出された委託費用と、受託情報とを参照し、委託および受託の条件が適合する受託者20を抽出する。
【0065】
例えば、抽出部133は、委託情報に記載された委託費用で、当該委託情報に示された作業面積を受託可能な受託者20を、委託情報に適合する受託者20として抽出する。このとき、抽出部133は、受託者20が希望する品目や農作業と完全に一致する受託者20のみを抽出してもよいし、類似する品目を希望する受託者20を含めて抽出してもよい。
【0066】
また、抽出部133は、委託条件が適合する受託者20として抽出された複数の受託者20(候補となる受託者20)のうち、複数の受託者20の各々が委託情報を受託した際の受託費用に基づいて、さらに条件が適合する一の受託者20を抽出してもよい。例えば、抽出部133は、委託情報を受注可能な受託者20が複数いる場合、最もコストの低い受託者20を抽出してもよい。
【0067】
なお、抽出部133は、条件が適合する受託者20として抽出された複数の受託者20のうち、複数の受託者20の各々に付与された評価値に基づいて、さらに適合する一の受託者20を抽出してもよい。すなわち、抽出部133は、最も評価値の高い受託者20を優先的に抽出してもよい。
【0068】
送受信部134は、各種情報を受信もしくは送信する。例えば、送受信部134は、抽出部133によって、委託者30が委託する農作業を受注可能な受託者20が抽出された場合に、抽出された受託者20に関する情報を当該委託者30および当該受託者20に送信する。例えば、送受信部134は、マッチングされた際の受託費用や、受託者20の過去の評価値や、受託者20が農作業を実施可能な日付や、受託者20が1日で進める作業量(作業面積等)等を委託者30に送信する。なお、送受信部134は、委託者30に情報を送信する前に、抽出された受託者20に対し、受注する際の費用を送信してもよい。この場合、送受信部134は、受託者20が費用を確認したのちに、委託者30に対して抽出された受託者20に関する情報を送信する。
【0069】
(1-3.実施形態に係る農作業受委託処理の手順)
次に、
図9を用いて、実施形態に係る処理の手順について説明する。
図9は、実施形態に係る農作業受委託処理の手順を示すフローチャートである。
【0070】
図9に示すように、管理装置100は、委託者30の現状の情報を登録する(ステップS101)。その後、管理装置100は、委託者30から、委託者30の将来計画を受け付けたか否かを判定する(ステップS102)。将来計画を受け付けていない場合(ステップS102;No)、管理装置100は、将来計画を受け付けるまで待機する。
【0071】
一方、将来計画を受け付けた場合(ステップS102;Yes)、管理装置100は、例えば農地面積を拡大させた将来計画に対して、不足する自社労働力を算定する(ステップS103)。そして、管理装置100は、不足した労働力分を補うため、不足分を委託した場合の費用を算出する(ステップS104)。また、管理装置100は、受託に係る経費等を算出する(ステップS105)。
【0072】
委託費用の算出というシミュレーションが完了すると、管理装置100は、将来計画に関する試算結果を委託者30に通知する(ステップS106)。そして、管理装置100は、通知した試算結果について委託者30が了承したか否かを判定する(ステップS107)。委託者30が試算結果を了承しない場合(ステップS107;No)、管理装置100は、再度、委託者30から将来計画を受け付ける。
【0073】
一方、委託者30が試算結果を了承した場合(ステップS107;Yes)、管理装置100は、試算結果に基づいて委託費用を決定し、受託者20とのマッチングを開始する(ステップS108)。
【0074】
管理装置100は、委託情報および受託情報を参照し、条件の合致する受託者20を抽出する(ステップS109)。そして、管理装置100は、抽出した受託者20が受託をし、委託者30が受託を受け入れるといった両者の合意がなされたか否かを判定する(ステップS110)。両者の合意がなされない場合(ステップS110;No)、管理装置100は、委託費用等の条件を調整の上(ステップS111)、条件に合致する受託者20を再び抽出する。一方、両者の合意がなされた場合(ステップS110;Yes)、受委託が成立したとして、管理装置100は、処理を終了する。
【0075】
(2.実施形態の変形例)
実施形態で示した算出処理はあくまで一例であり、算出部132は、様々な態様で算出処理を行ってもよい。例えば、実施形態で示した算出結果の数値のうち、委託者30もしくは受託者20から取得可能な情報(作業時間あたりの費用等)は、算出部132が算出せずに、委託者30もしくは受託者20から取得してもよい。
【0076】
あるいは、算出部132は、単に委託費用を算出するのみならず、例えば委託者30が不足労働力を補うために自社労働力を調整(パート社員を増やす等)して委託しない選択をとった場合と、委託した場合とを比較した算出結果を示してもよい。
【0077】
また、算出部132は、上記のように不足労働力分のみを委託するといった処理をおこなわず、将来計画において増加した分量を一括で委託した場合の費用を算出してもよい。すなわち、算出部132は、入力を受け付けた場合に、拡大された規模に対応する分の労働力を算出し、労働力に対応する農作業を委託した場合の委託費用を算出してもよい。具体的には、上述した
図7の例では、算出部132は、増加した面積30a分の作業をすべて受託者20に受託した場合の費用を算出してもよい。かかる手法によれば、委託者30が月ごとの自社労働力や作業時間を入力することを要しない。
【0078】
また、他の例として、算出部132は、将来計画において増加した30a分の面積について、自社労働力が不足した月の作業を一括で委託するよう、委託費用を算出してもよい。例えば、
図7の例において、1月の不足労働力は無いが、2月は調整出荷作業の負荷が大きいため、委託者30の自社労働力が不足しているとする。この場合、委託者30は、2月の調整出荷作業を30a分だけ委託する、という将来計画を入力する。この場合、算出部132は、2月の作業に関する委託費用を算出する。かかる手法によれば、委託農家にとって単純に計画において増加させた農地分(30a)を委託させることになるので、委託分を把握しやすくなる。
【0079】
また、算出部132は、予め受託者20の所在地や作業人数、作業が人力で行われるか機械で行われるか、品目や作業の類型における単位時間や単位面積ごとの作業費用等の情報をデータベースに記憶しておき、それらの情報に基づいて、受託費用の算出を行ってもよい。例えば、算出部132は、受託者20の所在地に基づいて、受託する農地までの距離を算出し、算出した距離を加味して受託費用(経費等)を算出してもよい。
【0080】
(3.その他の実施形態)
上述した実施形態に係る処理は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0081】
例えば、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0082】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、
図1に示した農作業受委託システム1は、様々な異なる態様で実現されてもよい。一例として、管理装置100は、クラウド上で運営されるクラウドサーバであってもよい。
【0083】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0084】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0085】
(4.本開示に係る農作業受委託装置の効果)
上述してきたように、本開示に係る農作業受委託装置(実施形態では管理装置100)は、取得部(実施形態では取得部131)と、生成部(実施形態では算出部132)と、抽出部(実施形態では抽出部133)とを有する。取得部は、委託者が委託を依頼する農作業に関する情報である委託情報と、受託者が受託を希望する農作業に関する情報である受託情報とを取得する。算出部は、委託者が農作業を委託することによって得られる利益を試算した結果に基づいて、委託情報に関する委託費用を算出する。抽出部は、算出部によって算出された委託費用と、受託情報とを参照し、委託および受託の条件が適合する受託者を抽出する。
【0086】
このように、本開示に係る農作業受委託装置は、農作業の受委託において、委託者が農作業を委託することによって得られる利益を試算(シミュレーション)し、かかる試算結果に基づいて、受託者候補とのマッチングを行う。本開示に係る農作業受委託装置によれば、委託することによって委託者がどのくらいの利益を得られるかといったメリットを事前に提示できるので、積極的に農作業を委託しようとする動機付けを委託者に与えることができる。これにより、農作業受委託装置は、高技術農業法人等の高い技術を有する受託者と、委託農家とを積極的に結びつけることができるので、労働力が不足する農家と労働力を提供する者とをつなぐといった、持続可能な農業を実現することができる。
【0087】
また、算出部は、委託者から委託情報に係る農作業の規模を拡大する旨の入力を受け付けた場合に、拡大された当該規模に基づいて当該委託者が得られる利益を試算し、試算した結果に基づいて委託費用を算出する。
【0088】
このように、農作業受委託装置は、委託者の将来計画における利益を試算する。これにより、委託者は、農作業の一部を委託しても充分な利益が得られること等を事前に確認できるので、農作業を委託するという動機付けを高めることができる。
【0089】
また、算出部は、入力を受け付けた場合に、拡大された規模に基づいて当該委託者による自社労働力の不足分を算出し、当該不足分に対応する農作業を委託した場合の委託費用を算出してもよい。
【0090】
このように、農作業受委託装置は、委託者の将来計画において不足する労働力を算出し、算出した分を委託した場合の費用を試算する。これにより、委託者は、将来計画において過不足のない農作業委託の費用を確認することができる。
【0091】
また、算出部は、入力を受け付けた場合に、拡大された規模に対応する分の労働力を算出し、当該労働力に対応する農作業を委託した場合の委託費用を算出してもよい。
【0092】
このように、農作業受委託装置は、規模の増加分の労働を一括で委託した場合の費用を試算してもよい。これにより、委託者は、月ごとの自社労働力や作業時間を入力することなく、簡易に試算結果を確認することができる。
【0093】
(5.ハードウェア構成)
上述してきた実施形態に係る管理装置100や受託者端末200等の情報機器は、例えば
図10に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。以下、実施形態に係る管理装置100を例に挙げて説明する。
図10は、管理装置100の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM(Read Only Memory)1300、HDD(Hard Disk Drive)1400、通信インターフェイス1500、及び入出力インターフェイス1600を有する。コンピュータ1000の各部は、バス1050によって接続される。
【0094】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。例えば、CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムをRAM1200に展開し、各種プログラムに対応した処理を実行する。
【0095】
ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるBIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0096】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を非一時的に記録する、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。具体的には、HDD1400は、プログラムデータ1450の一例である本開示に係る農作業受委託処理を実行するプログラムを記録する記録媒体である。
【0097】
通信インターフェイス1500は、コンピュータ1000が外部ネットワーク1550(例えばインターネット)と接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、通信インターフェイス1500を介して、他の機器からデータを受信したり、CPU1100が生成したデータを他の機器へ送信したりする。
【0098】
入出力インターフェイス1600は、入出力デバイス1650とコンピュータ1000とを接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、キーボードやマウス等の入力デバイスからデータを受信する。また、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやスピーカーやプリンタ等の出力デバイスにデータを送信する。また、入出力インターフェイス1600は、所定の記録媒体(メディア)に記録されたプログラム等を読み取るメディアインターフェイスとして機能してもよい。メディアとは、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0099】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る管理装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされた農作業受委託処理プログラムを実行することにより、制御部130等の機能を実現する。また、HDD1400には、本開示に係る農作業受委託処理を実行するプログラムや、記憶部120内のデータが格納される。なお、CPU1100は、プログラムデータ1450をHDD1400から読み取って実行するが、他の例として、外部ネットワーク1550を介して、他の装置からこれらのプログラムを取得してもよい。
【0100】
以上、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 農作業受委託システム
100 管理装置
110 通信部
120 記憶部
121 委託情報記憶部
122 受託情報記憶部
130 制御部
131 取得部
132 算出部
133 抽出部
134 送受信部
200 受託者端末
300 委託者端末