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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042567
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】盛土評価システム及び盛土評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/203 20060101AFI20240321BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20240321BHJP
   E02D 1/08 20060101ALI20240321BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20240321BHJP
   G01V 3/08 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
G01N23/203
E02D17/18 Z
E02D1/08
G01N27/04 A
G01V3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147361
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡碩
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】小原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】米丸 佳克
(72)【発明者】
【氏名】福島 陽
(72)【発明者】
【氏名】岡本 遥河
【テーマコード(参考)】
2D043
2D044
2G001
2G060
2G105
【Fターム(参考)】
2D043AB06
2D044CA00
2G001AA04
2G001BA15
2G001CA04
2G001KA01
2G001LA03
2G001NA01
2G060AA14
2G060AD01
2G060AF03
2G060AF07
2G060AG03
2G060AG15
2G060GA01
2G060HA02
2G060KA09
2G105AA02
2G105BB04
2G105DD02
2G105EE01
2G105LL03
2G105LL04
(57)【要約】
【課題】盛土の評価の精度を高めることができる盛土評価システム及び盛土評価方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る盛土評価システム1は、盛土Bに対向した状態で盛土Bの比抵抗を測定する一対の電位電極、及び一対の電流電極を有する比抵抗測定装置10と、盛土Bに対向した状態で盛土Bの体積含水率を測定する散乱型RI水分計16を有する体積含水率測定装置15と、比抵抗測定装置10によって測定された盛土Bの比抵抗、及び散乱型RI水分計16による測定結果を組み合わせることにより、盛土Bの乾燥密度、及び盛土Bの含水比の少なくともいずれかを算出する盛土評価項目算出部32と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛土に対向した状態で前記盛土の比抵抗を測定する一対の電位電極、及び一対の電流電極を有する比抵抗測定装置と、
前記盛土に対向した状態で前記盛土の体積含水率を測定する散乱型RI水分計を有する体積含水率測定装置と、
前記比抵抗測定装置によって測定された前記盛土の比抵抗、及び前記散乱型RI水分計による測定結果を組み合わせることにより、前記盛土の乾燥密度、及び前記盛土の含水比の少なくともいずれかを算出する盛土評価項目算出部と、
を備える盛土評価システム。
【請求項2】
前記比抵抗測定装置によって測定された前記盛土の比抵抗から前記盛土の空気間隙率を算出する空気間隙率算出部を備え、
前記盛土評価項目算出部は、前記空気間隙率算出部によって算出された前記盛土の空気間隙率、及び前記体積含水率測定装置によって測定された前記盛土の体積含水率から、前記盛土の乾燥密度、及び前記盛土の含水比の少なくともいずれかを算出する、
請求項1に記載の盛土評価システム。
【請求項3】
一対の前記電位電極、及び一対の前記電流電極は、キャパシタ電極である、
請求項1又は2に記載の盛土評価システム。
【請求項4】
前記比抵抗測定装置は、
一対の前記電位電極、及び一対の前記電流電極のそれぞれを盛土に向けた状態で保持する複数の電極保持部と、
複数の前記電極保持部のそれぞれに対応して設けられ、各前記電極保持部を前記盛土側に付勢する複数のバネ機構と、
を有する、
請求項1又は2に記載の盛土評価システム。
【請求項5】
前記比抵抗測定装置及び前記体積含水率測定装置を互いに接続する第1線状体と、
前記比抵抗測定装置及び前記体積含水率測定装置のいずれかから延び出す第2線状体と、を備え、
前記第2線状体が引っ張られることによって前記比抵抗測定装置及び前記体積含水率測定装置が前記盛土上において牽引される、
請求項1又は2に記載の盛土評価システム。
【請求項6】
盛土に対向した一対の電位電極、及び一対の電流電極が前記盛土の比抵抗を測定する工程と、
前記盛土に対向した散乱型RI水分計が前記盛土の体積含水率を測定する工程と、
前記盛土の比抵抗から前記盛土の空気間隙率を算出する工程と、
前記盛土の空気間隙率、及び前記盛土の体積含水率から、前記盛土の乾燥密度、及び前記盛土の含水比の少なくともいずれかを算出する工程と、
を備える盛土評価方法。
【請求項7】
前記盛土が施工される前に前記盛土の転圧試験を行う工程と、
前記盛土の比抵抗と空気間隙率との関係を取得する工程と、
を備え、
前記転圧試験を行う工程、及び前記関係を取得する工程が同時に実行される、
請求項6に記載の盛土評価方法。
【請求項8】
一対の前記電位電極、及び一対の前記電流電極を有する比抵抗測定装置と、
前記散乱型RI水分計を有する体積含水率測定装置と、
を備え、
前記比抵抗を測定する工程、及び前記体積含水率を測定する工程は、前記比抵抗測定装置及び前記体積含水率測定装置を前記盛土上において牽引しながら行われる、
請求項6又は7に記載の盛土評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、盛土の評価を行う盛土評価システム及び盛土評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、取付構造を介してRI計測装置が取り付けられた振動ローラが記載されている。取付構造は、振動ローラの前輪と後輪の間において下方に延び出しており、路盤に載せられる車輪である第1回動体及び第2回動体を備える。第1回動体及び第2回動体は前後に並んでいる。RI計測装置は、第1回動体の内部に収容されている密度測定器と、第2回動体の内部に収容されている水分量測定器とを有する。
【0003】
特許文献2には、締固め機械と一体化された土質測定装置が記載されている。土質測定装置は、土の抵抗率を測定する抵抗率測定部と、土の体積含水率を測定する体積含水率導出部とを有する。抵抗率測定部は、締固め機械の進行方向の後方に配置された電極によって締固められた後の土の抵抗率を測定する。土の抵抗率と体積含水率から土の乾燥密度及び含水比が導出される。
【0004】
特許文献3には、基盤上にアスファルト等が締め固められてなる計測対象盤体である路盤を計測する盤質計測装置が記載されている。盤質計測装置は、路盤上を移動する車体を備える。車体にはRI線源と検出器が搭載されている。RI線源は、ガンマ線を下方に向けて散乱放射する。検出器は、散乱反射したガンマ線を検出し、当該ガンマ線をパルス信号として電気的に変換する。盤質計測装置は、パルス信号として電気的に変換されたガンマ線から路盤の平均的な密度を算出する。
【0005】
特許文献4には、計測機器を備えた地盤表面の計測システムが記載されている。計測機器は、γ線源及び中性子線源を有する線源部と、地盤表面で散乱した速中性子を計測する速中性子検出部と、地盤表面で散乱した熱中性子を計測する熱中性子検出部と、地盤表面で散乱したγ線を計測するγ線検出部とを備える。熱中性子線の計数率から地盤表面の水分が算出され、γ線の計数率から地盤表面の密度が測定される。
【0006】
特許文献5には、RI計器である表面散乱型水分密度計と、地表から地中にレーザ光を照射する地下レーダーとを備えたシステムが記載されている。表面散乱型水分密度計は、地表から10cm付近の含水比及び乾燥密度を測定する。地下レーダーは、レーザ光の地中からの反射波を測定し、計算式によって乾燥密度及び湿潤密度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-181982号公報
【特許文献2】特許第6730173号公報
【特許文献3】特開平6-323980号公報
【特許文献4】特許第2751839号公報
【特許文献5】特許第3108754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したRI計測装置及び土質測定装置は、振動ローラ等の締固め機械と一体化されている。前述した盤質計測装置及び計測システムでは、中性子線又はγ線を用いて地盤の水分及び密度が算出される。また、前述したシステムでは、地下レーダーが測定した反射波から地盤の乾燥密度及び湿潤密度が算出される。しかしながら、γ線等を用いて盛土の密度を測定する場合、測定機器と地面との離隔の影響を受けるため、盛土の密度の測定精度の点において改善の余地がある。
【0009】
また、測定機器と地面との離隔距離を測定し、測定した離隔距離を加味して密度を算出する方法が知られている。しかしながら、測定機器と地面との離隔距離は、重機の走行痕、又は粒度が異なる材料の混在に伴う不陸の影響を受けて頻繁に変化することがある。すなわち、不陸によって測定機器と地面との離隔距離は絶えず変化することがあるので、当該離隔距離を加味しても依然として盛土の密度の測定精度が改善されないことがある。従って、盛土の評価の精度についても改善の余地がある。
【0010】
本開示は、盛土の評価の精度を高めることができる盛土評価システム及び盛土評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る盛土評価システムは、(1)盛土に対向した状態で盛土の比抵抗を測定する一対の電位電極、及び一対の電流電極を有する比抵抗測定装置と、盛土に対向した状態で盛土の体積含水率を測定する散乱型RI水分計を有する体積含水率測定装置と、比抵抗測定装置によって測定された盛土の比抵抗、及び散乱型RI水分計による測定結果を組み合わせることにより、盛土の乾燥密度、及び盛土の含水比の少なくともいずれかを算出する盛土評価項目算出部と、を備える。
【0012】
この盛土評価システムは比抵抗測定装置を備え、比抵抗測定装置は盛土に対向する一対の電位電極、及び一対の電流電極によって盛土の比抵抗を測定する。このように、盛土に対向する一対の電位電極、及び一対の電流電極が比抵抗を測定することにより、RI線等を用いる場合と比較して、地面との離隔の影響を受けにくくすることができる。従って、盛土の乾燥密度の測定精度を高めることができる。更に、盛土評価システムは体積含水率測定装置と盛土評価項目算出部とを備え、盛土評価項目算出部は比抵抗と散乱型RI水分計による測定結果を組み合わせることによって、盛土の乾燥密度、及び盛土の含水比の少なくともいずれかを算出する。このように、比抵抗と散乱型RI水分計による測定結果から乾燥密度及び含水比の少なくともいずれかを算出することにより、乾燥密度及び含水比の測定精度を高めることができる。
【0013】
(2)上記(1)において、盛土評価システムは、比抵抗測定装置によって測定された盛土の比抵抗から盛土の空気間隙率を算出する空気間隙率算出部を備えてもよい。盛土評価項目算出部は、空気間隙率算出部によって算出された盛土の空気間隙率、及び体積含水率測定装置によって測定された盛土の体積含水率から、盛土の乾燥密度、及び盛土の含水比の少なくともいずれかを算出してもよい。この場合、盛土評価システムは空気間隙率算出部を備え、空気間隙率算出部は比抵抗測定装置によって測定された盛土の比抵抗から盛土の空気間隙率を算出する。更に、盛土評価システムは体積含水率測定装置と盛土評価項目算出部とを備え、盛土評価項目算出部は体積含水率及び空気間隙率から盛土の乾燥密度、及び盛土の含水比の少なくともいずれかを算出する。このように、体積含水率及び空気間隙率から乾燥密度及び含水比の少なくともいずれかを算出することにより、体積含水率及び比抵抗から直接乾燥密度及び含水比を算出する場合と比較して、乾燥密度及び含水比の測定精度を高めることができる。すなわち、比抵抗と乾燥密度との関係は体積含水率の影響を受けて一意に定まらないのに対し、比抵抗と空気間隙率との関係は一意に定まるので、比抵抗から空気間隙率を算出し、空気間隙率を用いて乾燥密度を算出することにより、乾燥密度を一層高精度に算出することができる。すなわち、最も現場の体積含水率と値が近い(比抵抗と乾燥密度との関係を示す)検量線を選ぶ、ということをしなくなることで精度が上がっている。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)において、一対の電位電極、及び一対の電流電極は、キャパシタ電極であってもよい。この場合、乾燥等の影響を受けにくくすることができるので、比抵抗の測定精度を高めることができる。
【0015】
(4)上記(1)~(3)のいずれかにおいて、比抵抗測定装置は、一対の電位電極、及び一対の電流電極のそれぞれを盛土に向けた状態で保持する複数の電極保持部と、複数の電極保持部のそれぞれに対応して設けられ、各電極保持部を盛土側に付勢する複数のバネ機構と、を有してもよい。この場合、一対の電位電極、及び一対の電流電極のそれぞれを盛土に向けた状態で保持する電極保持部がバネ機構によって盛土側に付勢される。従って、一対の電位電極、及び一対の電流電極のそれぞれがバネ機構によって盛土に押しつけられるように付勢されるので、不陸があった場合でも盛土に各電位電極及び各電流電極を追従させることができる。よって、盛土の比抵抗の測定を容易に且つ高精度に行うことができる。
【0016】
(5)上記(1)~(4)のいずれかにおいて、盛土評価システムは、比抵抗測定装置及び体積含水率測定装置を互いに接続する第1線状体と、比抵抗測定装置及び体積含水率測定装置のいずれかから延び出す第2線状体と、を備えてもよい。第2線状体が引っ張られることによって比抵抗測定装置及び体積含水率測定装置が盛土上において牽引されてもよい。この場合、比抵抗測定装置及び体積含水率測定装置が第1線状体を介して互いに連結されている。そして、比抵抗測定装置及び体積含水率測定装置のいずれかから第2線状体が延び出している。従って、第2線状体が引っ張られることによって比抵抗測定装置及び体積含水率測定装置を盛土上で走行させることができると共に、比抵抗測定装置及び体積含水率装置が共に走行しながら比抵抗及び体積含水率を測定できる。よって、盛土に対して面的に乾燥密度及び含水率の少なくともいずれかを評価できるので、盛土の評価を効率よく且つ高精度に行うことができる。
【0017】
本開示に係る盛土評価方法は、(6)盛土に対向した一対の電位電極、及び一対の電流電極が盛土の比抵抗を測定する工程と、盛土に対向した散乱型RI水分計が盛土の体積含水率を測定する工程と、盛土の比抵抗から盛土の空気間隙率を算出する工程と、盛土の空気間隙率、及び盛土の体積含水率から、盛土の乾燥密度、及び盛土の含水比の少なくともいずれかを算出する工程と、を備える。
【0018】
この盛土評価方法では、比抵抗を測定する工程において、盛土に対向した一対の電位電極、及び一対の電流電極が盛土の比抵抗を測定する。よって、RI線等を用いた場合と比較して、地面との離隔の影響を受けにくくすることができる。従って、盛土の乾燥密度の測定精度を高めることができる。盛土評価方法は空気間隙率を算出する工程を備え、空気間隙率は比抵抗から算出される。更に、盛土評価方法は体積含水率を測定する工程を備え、空気間隙率及び体積含水率から盛土の乾燥密度、及び盛土の含水比の少なくともいずれかが算出される。前述したように、比抵抗と乾燥密度との関係は体積含水率の影響を受けて一意に定まらないのに対し、比抵抗と空気間隙率との関係は一意に定まるので、比抵抗から算出された空気間隙率を用いて乾燥密度を算出することにより、乾燥密度を一層高精度に測定することができる。最も現場の体積含水率と値が近い(比抵抗と乾燥密度との関係を示す)検量線を選ぶ、ということをしなくなることで精度が上がっている。
【0019】
(7)上記(6)において、盛土評価方法は、盛土が施工される前に盛土の転圧試験を行う工程と、盛土の比抵抗と空気間隙率との関係を取得する工程と、を備え、転圧試験を行う工程、及び関係を取得する工程が同時に実行されてもよい。この場合、盛土の施工前に行われる転圧試験と共に比抵抗と空気間隙率の関係を取得することができる。従って、比抵抗と空気間隙率との関係を盛土の施工前に取得できるので、盛土の測定、及び盛土の品質評価を一層効率よく行うことができる。
【0020】
(8)上記(6)又は(7)において、盛土評価方法では、一対の電位電極、及び一対の電流電極を有する比抵抗測定装置と、散乱型RI水分計を有する体積含水率測定装置と、を備えてもよい。比抵抗を測定する工程、及び体積含水率を測定する工程は、比抵抗測定装置及び体積含水率測定装置を盛土上において牽引しながら行われてもよい。この場合、比抵抗測定装置及び体積含水率測定装置が盛土上で牽引されながら比抵抗及び体積含水率の測定を行う。よって、盛土上で移動しながら、比抵抗及び体積含水率を測定し、空気間隙率及び体積含水率から乾燥密度及び含水比を算出できる。従って、盛土に対して面的に乾燥密度及び含水比の少なくともいずれかの評価を行えるので、盛土の評価を効率よく且つ高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、盛土の評価の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る盛土評価システムの具体例を示す斜視図である。
図2図1の盛土評価システムの比抵抗測定装置を模式的に示す平面図である。
図3図2の比抵抗測定装置の電極の構成を模式的に示す図である。
図4図2の比抵抗測定装置の電極、電極保持部及びバネ機構を示す斜視図である。
図5図1の盛土評価システムの体積含水率測定装置を模式的に示す縦断面図である。
図6】盛土の体積含水率と検出された熱中性子線の数との関係を示すグラフである。
図7】空気間隙率と比抵抗との関係を示す検量線の例を示すグラフである。
図8図7の検量線を取得する検量線取得装置を模式的に示す斜視図である。
図9】実施形態に係る盛土評価方法の工程の例を示すフローチャートである。
図10】変形例に係る比抵抗測定装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る盛土評価システム及び盛土評価方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0024】
本実施形態に係る盛土評価システム1は、例えば、ダムが構築される現場Aにおいて用いられる。現場Aでは、一例として、ダンプトラックによって土砂が搬送され、ブルドーザーによって搬送された土砂が敷き均され、敷き均された土砂が振動ローラによって締め固められる。振動ローラは、現場Aにおいて複数回往復しながら土砂の締固めを行い、現場Aにおける盛土Bの転圧を行う。
【0025】
盛土評価システム1は、振動ローラ等の締固め機械によって締め固められた後の転圧面である地面Sを移動しながら現場Aの盛土B(土)の評価を行う。地面Sは、締固めによって形成された施工面である。盛土評価システム1は、例えば、盛土Bの乾燥密度、及び盛土Bの含水比の少なくともいずれかを盛土Bの評価項目として算出する。
【0026】
例えば、盛土評価システム1は、盛土Bの乾燥密度、及び盛土Bの含水比を測定することによって盛土Bを評価し、例えば、締固め機械による締固めの効果を測定する。盛土Bは、例えば、CSG、RCD又は放射性処分事業の覆土によって構成されたものであってもよい。
【0027】
例えば、盛土評価システム1は、盛土Bの比抵抗を測定する比抵抗測定装置10と、盛土Bの体積含水率を測定する体積含水率測定装置15とを備える。更に、盛土評価システム1は、盛土Bの比抵抗から盛土Bの空気間隙率を算出する空気間隙率算出部31と、盛土Bの乾燥密度、及び盛土Bの含水比を算出する盛土評価項目算出部32とを備える。
【0028】
例えば、盛土評価システム1は、比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15を互いに接続する第1線状体2と、比抵抗測定装置10から延び出す第2線状体3とを備える。一例として、第1線状体2及び第2線状体3のそれぞれは紐状体である。例えば、盛土評価システム1は、比抵抗測定装置10から見て体積含水率測定装置15とは反対側に設けられる牽引部30を備える。
【0029】
牽引部30は、例えば、複数の車輪30bと、複数の車輪30bの上部同士を連結する台部30cと、台部30cから上方に延びる取手部30dとを有する。台部30cは比抵抗測定装置10に連結されており、複数の車輪30bが地面Sに載せられた状態で取手部30dを手で持って地面Sで複数の車輪30bを転動させることにより、牽引部30、比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15を地面S上で移動させることができる。一例として、空気間隙率算出部31及び盛土評価項目算出部32は、台部30cに設けられる。しかしながら、空気間隙率算出部31及び盛土評価項目算出部32の場所は特に限定されない。
【0030】
図2は、比抵抗測定装置10を示す平面図である。比抵抗測定装置10は、例えば、可搬式の電気抵抗測定装置である。すなわち、比抵抗測定装置10は、持ち運びが可能な装置である。比抵抗測定装置10は、締固め機械によって締め固められた後の地面Sを移動しながら現場Aの盛土Bの比抵抗を測定する。
【0031】
比抵抗測定装置10はキャパシタ電極である4つの電極20を備える。例えば、比抵抗測定装置10における電極20の配置は、ダイポール・ダイポール法に準拠している。4つの電極20は、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22である。比抵抗測定装置10は、4電極法を用いて盛土Bの比抵抗を測定する。電位電極21及び電流電極22のそれぞれは、地面Sに近接するように配置される。
【0032】
一対の電位電極21、及び一対の電流電極22は、比抵抗測定装置10の移動方向である第1方向D1に沿って並ぶように配置されている。一例として、比抵抗測定装置10の移動方向の前側に一対の電位電極21が配置されると共に当該移動方向の後側に一対の電流電極22が配置される。例えば、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22は、ダイポール・ダイポール配置とされている。しかしながら、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22の配置は、ダイポール・ダイポール配置以外の配置とされていてもよく、特に限定されない。
【0033】
図3は、比抵抗測定装置10における電極20の構成の模式図である。図3に示されるように、電位電極21及び電流電極22は、例えば、地面Sの上に引き摺られる。電位電極21及び電流電極22のそれぞれは、地面Sに対向する誘電体23と、誘電体23に電気的に接続された導電体24を有する。誘電体23は、例えば、合成樹脂によって構成された板状部材である。
【0034】
誘電体23は、地面Sに接触しつつ地面Sの上で引き摺られるため、地面Sへの当接に耐えられる素材で構成されることが好ましい。誘電体23は、例えば、高密度ポリエチレン、硬質ポリウレタン、及びABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂の少なくともいずれかを含む。
【0035】
導電体24は、導電性を有する金属を含む平板である。比抵抗測定装置10は、更に、交流電源25及び電位計26を有する。交流電源25は、各電流電極22の導電体24に電気的に接続されている。電位計26は、各電位電極21の導電体24に電気的に接続されている。
【0036】
交流電源25は、一対の電流電極22の間に交流電圧を印加する。これにより、盛土Bに交流電流が流れる。例えば、地面Sに接触していない一対の電流電極22の導電体24に電圧が印加されると、導電体24と盛土Bとの間に電荷が溜まり電流電極22はキャパシタとなる。キャパシタとなった電流電極22が充電又は放電しきる前に、交流電源25が電圧の極性を切り替えれば、抵抗値を有する盛土Bに連続的に交流電流が流れる。電位計26は、電流電極22と同様にキャパシタとなった一対の電位電極21の間の電位を測定する。
【0037】
図4は、比抵抗測定装置10の一部を拡大した斜視図である。図2及び図4に示されるように、比抵抗測定装置10は、前述した電極20と、第1方向D1、及び地面Sに沿った方向であって且つ第1方向D1に交差する第2方向D2に延在する保持体41と、保持体41を地面Sから離隔させた状態で保持体41を走行可能に支持する複数のキャスタ42とを有する。第2方向D2は、例えば、第1方向D1に直交する方向である。
【0038】
電極20は、保持体41の下方に位置する。保持体41は、第1方向D1及び第2方向D2に延在する板状を呈する。この場合、保持体41は、第1方向D1及び第2方向D2の双方に交差する第3方向D3に厚みを有する。例えば、第3方向D3は鉛直方向である。一例として、保持体41は、矩形板状を呈する。キャスタ42は、例えば、平面視における保持体41の四隅のそれぞれに設けられている。比抵抗測定装置10は、例えば、保持体41を持ち上げるときに把持される取手部44を備える。
【0039】
取手部44は、例えば、保持体41の上面41bに固定されている。各取手部44は第1方向D1に延在している。保持体41は、例えば、2つの取手部44を有し、2つの取手部44は第2方向D2に並んでいる。よって、盛土Bの品質測定の作業を行う作業者は、両手で取手部44を持つことによって保持体41を容易に持ち上げることができる。
【0040】
例えば、複数の電極20のそれぞれは平面視において第1方向D1に沿って並ぶように配置されている。比抵抗測定装置10は、例えば、2台の保持体41と、2台の保持体41の間で第1方向D1に延びる線状体48とを有する。線状体48は、例えば、保持体41に対して着脱可能とされている。この線状体48を備える場合、2台の保持体41の一方(例えば電位電極21を保持する保持体41)を第1方向D1に牽引するときに、2台の保持体41の一方及び他方を第1方向D1に移動させることができる。また、互いに長さが異なる複数種類の線状体48を用意しておき、複数種類の線状体48から選択した線状体48を取り付けることにより、電位電極21と電流電極22との距離Xを変更することができる。距離Xは、電位電極21の中心から電流電極22の中心までの距離(中心間距離)を示している。
【0041】
比抵抗測定装置10は、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22の間隔を変更する可変機構45を備える。比抵抗測定装置10は、例えば、複数の可変機構45を有する。複数の可変機構45のそれぞれは、電位電極21と電流電極22の距離X、及び一対の電位電極21(又は一対の電流電極22)の間隔Yを変更する。間隔Yは、一方の電位電極21(又は一方の電流電極22)の中心から他方の電位電極21(又は他方の電流電極22)の中心までの距離(中心間距離)を示している。
【0042】
可変機構45は、例えば、保持体41を貫通するスリット45bと、スリット45bに挿通されると共にスリット45bに沿って移動可能とされた棒状部45cと、スリット45bの上部で棒状部45cを止める止め部45dとを有する。複数のスリット45bのそれぞれは、例えば、第1方向D1に延在している。電位電極21及び電流電極22のそれぞれは棒状部45cの下方に設けられている。よって、スリット45bに沿って棒状部45cを移動させることによって距離X及び間隔Yを変更することが可能である。なお、可変機構の構成は、上記の可変機構45に限られない。
【0043】
以上、比抵抗測定装置10では、電位電極21と電流電極22との距離X、及び一対の電位電極21間(一対の電流電極22間)の間隔Yを変更可能とされている。一対の電位電極21、及び一対の電流電極22によって比抵抗が測定されるときには、盛土Bにおける測定深度が距離X及び間隔Yに依存する。従って、距離X及び間隔Yが可変とされていることによって、盛土Bにおける比抵抗の測定の深度を可変とすることが可能となる。よって、比抵抗の測定の深度を容易に変更できるので、盛土Bの品質評価を一層効率よく且つ高精度に行うことができる。
【0044】
保持体41は、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22のそれぞれを盛土Bに向けた状態で保持する複数の電極保持部43を備える。例えば、電極保持部43は、棒状部45cの下端に接続された板状部43cと、板状部43cに第3方向D3に挿通された棒状部43dと、棒状部43dの下端に接続された電極取付部43fとを有する。板状部43cは、複数の棒状部45cの下端において第1方向D1及び第2方向D2に延在する。電極保持部43は、複数の棒状部43dを有する。複数の棒状部43dのそれぞれは板状部43cに形成された複数の孔43gのそれぞれにおいて第3方向D3に移動可能とされている。
【0045】
電極取付部43fは、複数の棒状部43dの下端が接続されており、各棒状部43dの第3方向D3への移動に伴って第3方向D3に移動する。電極取付部43fは、例えば、第1方向D1及び第2方向D2に延在する枠状とされており、電極取付部43fの枠状の部分に電極20が取り付けられている。例えば、電極20の上面20b及び下面は電極取付部43fから露出している。
【0046】
例えば、電極取付部43fは、第1方向D1及び第2方向D2に延びる矩形状を呈する。電極保持部43は、例えば、地面Sの凸部を乗り越える乗り越え部43hを有する。乗り越え部43hは、電極取付部43fの第1方向D1の一端において第2方向D2に延在する三角柱状を呈する。乗り越え部43hが設けられることにより、第1方向D1に地面Sの凸部が存在したとしても保持体41が当該凸部を乗り越えることができる。
【0047】
比抵抗測定装置10は、複数の電極保持部43に対応して設けられ、各電極保持部43を盛土B側(下方)に付勢する複数のバネ機構46を有する。バネ機構46は、例えば、前述した孔43gと、孔43gに挿通された棒状部43dと、棒状部43dを囲繞するバネ47とを有する。
【0048】
バネ47の一端(上端)は板状部43cに当接し、バネ47の他端(下端)は電極取付部43fに当接する。バネ47は、電極取付部43fを盛土Bに向けて付勢する。保持体41が走行して地面Sに不陸があった場合には、乗り越え部43hが不陸を乗り越え、電極取付部43f及び電極20が当該不陸に接触すると共に、電極取付部43f及び棒状部43dが板状部43cに対して第3方向D3に移動する。このとき、バネ47が電極取付部43f及び電極20を盛土Bに向けて付勢するので、地面Sに不陸があっても当該不陸を乗り越えると共に電極取付部43f及び電極20を当該不陸に追従させることが可能となる。
【0049】
図1に示されるように、例えば、体積含水率測定装置15は、散乱型RI水分計16と、走行体17と、走行体17の下面に取り付けられた状態で散乱型RI水分計16を保持する保持部18とを有する。走行体17は、複数の車輪17bと、複数の車輪17bの上部に設けられた台部17cとを有する。
【0050】
例えば、保持部18は、内部に散乱型RI水分計16を保持した状態で台部17cの下面に取り付けられている。保持部18は、例えば、金属製である。保持部18は、散乱型RI水分計16が収容される凹部を有し、当該凹部の下面部が地面Sに接触する。散乱型RI水分計16は当該下面部を介して地面Sに接触した状態で盛土Bの体積含水率を測定する。
【0051】
図5は、散乱型RI水分計16及び盛土Bを模式的に示す縦断面図である。図1及び図5に示されるように、散乱型RI水分計16は、盛土Bに対向した状態で盛土Bの体積含水率を測定する。散乱型RI水分計16は、前述した比抵抗測定装置10の移動と同時に、又は比抵抗測定装置10の移動後に続けて地面S上で移動して体積含水率を測定する。
【0052】
散乱型RI水分計16は、中性子線源16bと、熱中性子線検出部16cと、中性子線源16b及び熱中性子線検出部16cを収容する筐体16dとを有する。一例として、中性子線源16bは熱中性子線検出部16cよりも下方に位置する。中性子線源16bは、盛土Bに速中性子Z1を放出する。
【0053】
盛土Bに放出された速中性子Z1は散乱する。散乱した速中性子Z1のうちの一部は盛土Bの水素原子B1と衝突する。水素原子B1と衝突した速中性子Z1は、その速度を失い熱中性子線Z2となる。熱中性子線検出部16cは、盛土Bにおいて生じた熱中性子線Z2を検出することによって体積含水率を測定する。
【0054】
体積含水率をθとすると、体積含水率θと熱中性子線検出部16cが検出した熱中性子線Z2の数との関係は、例えば、図6に示されるようなグラフになる。熱中性子線検出部16cが検出した熱中性子線Z2が多いほど体積含水率θが大きく、熱中性子線検出部16cが検出した熱中性子線Z2が少ないほど体積含水率θが小さい。散乱型RI水分計16は、中性子線源16bが盛土Bに速中性子Z1を放出して熱中性子線検出部16cが熱中性子線Z2を検出することにより体積含水率θを求めることが可能である。
【0055】
ところで、透過型RI計測器では、線源棒を盛土Bの内部に挿入しなければならないので、地面S上を移動しながら体積含水率θを測定することは困難だった。これに対し、散乱型RI水分計16では、線源棒等を盛土Bに挿入する必要がなく、地面Sに載せられるだけで盛土Bの体積含水率θを測定することができる。
【0056】
更に、前述したように比抵抗測定装置10でも、盛土Bに挿入することが必要なものはなく、地面Sに載せられるだけで盛土Bの比抵抗を測定できる。従って、盛土評価システム1では、線源棒等を盛土Bに挿入しなくても、盛土Bの比抵抗、及び盛土Bの体積含水率θを地面Sを走行しながら測定可能である。
【0057】
図1に示されるように、空気間隙率算出部31は、例えば、比抵抗測定装置10と通信可能とされている。図7に例示されるように、盛土Bの空気間隙率Vと比抵抗ρとの関係である検量線Lを用いて比抵抗測定装置10によって測定された比抵抗ρから空気間隙率算出部31が空気間隙率Vを算出する。検量線Lは、比抵抗ρと空気間隙率Vとの間において盛土Bの含水比によらず一意に決定される土質工学における固有の相関関係である。
【0058】
検量線Lは、例えば、盛土Bの品質評価を行う前に予め求められている。図8に示されるように、一例として、検量線Lは、盛土Bの施工で使用される盛土材Cを収容する検量線取得装置50によって求められる。例えば、検量線取得装置50は有底筒状を呈する。一例として、検量線取得装置50は有底円筒状を呈する。
【0059】
例えば、検量線取得装置50の内径は300mmであり、検量線取得装置50の内部高さ(検量線取得装置50の軸線方向(図8では上下方向)への高さ)は600mmである。検量線取得装置50は、検量線取得装置50の底部50bに位置する第1電極51と、検量線取得装置50の蓋部50cに位置する第2電極52と、検量線取得装置50の側部50dにおいて検量線取得装置50の軸線方向Jに沿って並ぶ第3電極53及び第4電極54とを備える。
【0060】
一例として、第1電極51及び第2電極52のそれぞれは、アルミニウムによって構成されたシートである。検量線取得装置50は、盛土材Cを収容した状態で第2電極52を有する蓋部50cが側部50dの上端に載せられて第1電極51と第2電極52の間に電流が流される。なお、蓋部50cは、検量線取得装置50の筒部の中に入って盛土材Cの上に載せられてもよい。具体的には、盛土B(盛土材C)の乾燥密度ρ及び盛土B(盛土材C)の含水比wをパラメータとして盛土材Cを静的に締固めて第1電極51及び第2電極52の間で電流を流す。このとき、検量線取得装置50は、第3電極53及び第4電極54の電位差を測定することによって、所定の空気間隙率Vにおける比抵抗ρを得る。
【0061】
比抵抗ρは、例えば、以下の式(1)から求められ、空気間隙率Vは以下の式(2)から求められる。
ρ(Ω・m)=(測定された電位差/流した電流値)
×(盛土材Cの断面積/第3電極53から第4電極54までの距離)・・・(1)
=100(1-(ρ/ρ))-(w×ρ)・・・(2)
【0062】
なお、ρは、盛土Bの材料の土粒子密度である。ρは、土の基本的な物性値であり土質試験等において容易に求めることが可能である。検量線取得装置50の内部の盛土材Cの含水比wは、例えば、比抵抗ρを測定した後に炉乾燥法によって取得される。また、検量線取得装置50の容積、検量線取得装置50の内部における盛土材Cの湿潤重量、及び含水比wから乾燥密度ρが算出される。
【0063】
以上、検量線取得装置50を用いて事前に検量線Lを得る例について説明した。しかしながら、検量線Lを取得する方法は検量線取得装置50を用いない方法であってもよい。例えば、検量線Lは、盛土Bの施工前に実施される転圧試験(転圧試験を行う工程)において取得されてもよい。例えば、転圧試験において、前述した電位電極21及び電流電極22と同様のキャパシタ電極を備えた比抵抗測定装置によって比抵抗ρを測定して検量線Lを取得する。
【0064】
転圧試験は、締固め機械の盛土Bにおける走行回数をパラメータとして、締固めの精度が最も高い走行回数の取得を目的として行われる。締固め機械の走行回数において盛土Bの乾燥密度ρが上昇すると共に空気間隙率Vが低下することから、例えば、締固め機械が1回走行するたびに比抵抗ρを測定してもよい。そして、例えば、砂置換法によって含水比wと乾燥密度ρを取得することによって検量線Lが得られる。
【0065】
盛土評価項目算出部32は、空気間隙率Va、及び体積含水率測定装置15によって測定された盛土Bの体積含水率θから、盛土Bの乾燥密度ρ、及び盛土Bの含水比wを算出する。盛土評価項目算出部32は、例えば、以下の式(3)を用いて乾燥密度ρを算出する(θは体積含水率、Vは空気間隙率、ρは土粒子密度)。
θ+V+(ρ/ρ)=1 ・・・(3)
盛土評価項目算出部32は、例えば、以下の式(4)を用いて含水比wを算出する(ρは水の単位体積あたりの重量(通常は1))。
θ=(ρ/ρ)×(w/100) ・・・(4)
【0066】
次に、本実施形態に係る盛土評価方法について図9のフローチャートを参照しながら説明する。本実施形態に係る盛土評価方法は、例えば図1に示される盛土評価システム1を用いて行われる。まず、比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15を盛土Bの地面Sに載せる。例えば、牽引部30を押すことによって第1方向D1に沿って比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15を地面S上で牽引する。
【0067】
このとき、比抵抗測定装置10が盛土Bの比抵抗ρを測定する(比抵抗を測定する工程、ステップS1)。具体的には、盛土Bに対向した一対の電位電極21、及び一対の電流電極22が盛土Bの比抵抗ρを測定する。そして、比抵抗測定装置10によって測定された盛土Bの比抵抗ρから空気間隙率算出部31が盛土Bの空気間隙率Vを算出する(空気間隙率を算出する工程、ステップS2)。空気間隙率算出部31は、例えば、予め取得されている検量線L(図7参照)を用いて比抵抗測定装置10によって測定された比抵抗ρから空気間隙率Vを算出する。
【0068】
また、体積含水率測定装置15が盛土Bの体積含水率θを測定する(体積含水率を測定する工程、ステップS3)。このとき、盛土Bに対向した散乱型RI水分計16が盛土Bの体積含水率θを測定する。なお、体積含水率測定装置15による体積含水率θの測定は、例えば、比抵抗測定装置10による比抵抗ρの測定と同時に行われる。例えば、比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15のそれぞれが盛土Bの上を走行しながら比抵抗ρ及び体積含水率θのそれぞれを測定してもよい。
【0069】
続いて、盛土評価項目算出部32が空気間隙率V及び体積含水率θから盛土Bの乾燥密度ρを算出する(算出する工程、ステップS4)。例えば、盛土評価項目算出部32は、前述した式(3)を用いて、体積含水率θ、空気間隙率V及び土粒子密度ρから乾燥密度ρを算出する。そして、盛土評価項目算出部32は含水比wを算出する(算出する工程、ステップS5)。例えば、盛土評価項目算出部32は、前述した式(4)を用いて、体積含水率θ、乾燥密度ρ、及び水の単位体積あたりの重量ρから含水比wをを算出する。
【0070】
例えば、盛土評価項目算出部32による乾燥密度ρの算出、及び盛土評価項目算出部32による含水比wの算出は、盛土評価システム1(比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15)が盛土Bの上を走行している間に連続して行われる。この場合、盛土Bに対して面的に乾燥密度ρ及び含水比wの算出を行うことが可能となる。
【0071】
例えば、盛土評価システム1(一例として牽引部30)は、GNSSアンテナを備えていてもよく、GNSSアンテナによって測定された盛土Bの位置情報と紐付けて乾燥密度ρ及び含水比wの算出を行ってもよい。盛土評価システム1は、盛土Bにおける乾燥密度ρ及び含水比wのマッピングデータを生成及び表示してもよい。
【0072】
この場合、盛土Bの全体にわたって乾燥密度ρ及び含水比wのデータを得られるので、盛土Bの締固めの精度を全体的に評価することができる。更に、盛土評価システム1は、盛土Bのカメラ画像と共に乾燥密度ρ及び含水比wのマッピングデータをAR表示してもよい。この場合も盛土Bの全体の品質に関する情報を一目で把握することが可能となる。以上のように、乾燥密度ρ及び含水比wの算出が行われた後に一連の工程が完了する。
【0073】
次に、本実施形態に係る盛土評価システム1及び盛土評価方法から得られる作用効果についてより詳細に説明する。本実施形態に係る盛土評価システム1及び盛土評価方法は、比抵抗測定装置10を備え、比抵抗測定装置10は盛土Bに対向する一対の電位電極21、及び一対の電流電極22によって盛土Bの比抵抗ρを測定する。このように、盛土Bに対向する一対の電位電極21、及び一対の電流電極22が比抵抗ρを測定することにより、RI線等を用いる場合と比較して、地面Sとの離隔の影響を受けにくくすることができる。従って、盛土Bの乾燥密度ρの測定精度を高めることができる。
【0074】
盛土評価システム1は空気間隙率算出部31を備え、空気間隙率算出部31は比抵抗測定装置10によって測定された盛土Bの比抵抗ρから盛土Bの空気間隙率Vを算出する。更に、盛土評価システム1は体積含水率測定装置15と盛土評価項目算出部32とを備え、盛土評価項目算出部32は比抵抗と散乱型RI水分計16による測定結果を組み合わせることによって、盛土Bの乾燥密度、及び盛土Bの含水比の少なくともいずれかを算出する。例えば、盛土評価項目算出部32は体積含水率θ及び空気間隙率Vから盛土Bの乾燥密度ρ、及び盛土Bの含水比wの少なくともいずれかを算出する。このように、体積含水率θ及び空気間隙率Vから乾燥密度ρ及び含水比wの少なくともいずれかを算出することにより、体積含水率θ及び比抵抗ρから直接乾燥密度ρ及び含水比wを算出する場合と比較して、乾燥密度ρ及び含水比wの測定精度を高めることができる。
【0075】
ところで、比抵抗ρと乾燥密度ρとの関係は体積含水率θの影響を受けて一意に定まらない。これに対し、図7に示されるように比抵抗ρと空気間隙率Vaとの関係は一意に定まるので、比抵抗ρから空気間隙率Vを算出し、空気間隙率Vを用いて乾燥密度ρを算出することにより、乾燥密度ρを高精度に算出することができる。すなわち、最も現場の体積含水率θと値が近い(比抵抗ρと乾燥密度ρとの関係を示す)検量線を選ぶ、ということをしなくなることで精度が上がっている。
【0076】
本実施形態において、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22は、キャパシタ電極である。よって、乾燥等の影響を受けにくくすることができるので、比抵抗ρの測定精度を高めることができる。
【0077】
本実施形態において、図3及び図4に示されるように、比抵抗測定装置10は、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22のそれぞれを盛土Bに向けた状態で保持する複数の電極保持部43と、複数の電極保持部43のそれぞれに対応して設けられ、各電極保持部43を盛土B側に付勢する複数のバネ機構46と、を有する。よって、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22のそれぞれを盛土Bに向けた状態で保持する電極保持部43がバネ機構46によって盛土B側に付勢される。従って、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22のそれぞれがバネ機構46によって盛土Bに押しつけられるように付勢されるので、不陸があった場合でも盛土Bに各電位電極21及び各電流電極22を追従させることができる。よって、盛土Bの比抵抗の測定を容易に且つ高精度に行うことができる。
【0078】
本実施形態において、図1に示されるように、盛土評価システム1は、比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15を互いに接続する第1線状体2と、比抵抗測定装置10から延び出す第2線状体3と、を備える。第2線状体3が引っ張られることによって比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15が地面S上において牽引される。よって、比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15が第1線状体2を介して互いに連結されている。そして、比抵抗測定装置10から第2線状体3が延び出している。従って、第2線状体3が引っ張られることによって比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15を盛土B上で走行させることができると共に、比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15が共に走行しながら比抵抗ρ及び体積含水率θを測定できる。よって、盛土Bに対して面的に乾燥密度ρ及び含水比wの評価を行えるので、盛土Bの評価を効率よく且つ高精度に行うことができる。
【0079】
本実施形態に係る盛土評価方法は、盛土Bが施工される前に盛土Bの転圧試験を行う工程と、盛土Bの比抵抗ρと空気間隙率Vとの関係(例えば検量線L)を取得する工程と、を備え、転圧試験を行う工程、及び当該関係を取得する工程が同時に実行されてもよい。この場合、盛土Bの施工前に行われる転圧試験と共に比抵抗ρと空気間隙率Vの関係を取得することができる。従って、比抵抗ρと空気間隙率Vとの関係を盛土Bの施工前に取得できるので、盛土Bの測定、及び盛土Bの品質評価を一層効率よく行うことができる。
【0080】
本実施形態に係る盛土評価方法では、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22を有する比抵抗測定装置10と、散乱型RI水分計16を有する体積含水率測定装置15と、を備える。比抵抗ρを測定する工程、及び体積含水率θを測定する工程は、比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15を盛土B上において牽引しながら行われる。従って、比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15が盛土B上で牽引されながら比抵抗ρ及び体積含水率θの測定を行う。よって、盛土B上で移動しながら比抵抗ρ及び体積含水率θが測定されるので、空気間隙率V及び体積含水率θから乾燥密度ρ及び含水比wを効率よく算出できる。従って、盛土Bに対して面的に乾燥密度ρ及び含水比wの少なくともいずれかの評価を行えるので、盛土Bの評価を効率よく且つ高精度に行うことができる。
【0081】
次に、変形例に係る盛土評価システムについて図10を参照しながら説明する。図10は、変形例に係る盛土評価システムの比抵抗測定装置60を示す斜視図である。比抵抗測定装置60は、例えば、比抵抗測定装置10に代えて用いられる。図10に示されるように、比抵抗測定装置60は、車輪型電極である4つの電極61を備える。比抵抗測定装置60は、棒状を呈する軸62と、軸62の両端のそれぞれに回転可能に接続された2つの車輪63と、軸62から軸62の延在方向に交差する方向に延び出す4つの電極支持部64とを備え、各電極支持部64に各電極61が支持されている。
【0082】
電極支持部64によって支持される各電極61は、前述した電極20と同様、盛土Bの地面Sに対向して比抵抗を測定する。比抵抗測定装置60は、各電極支持部64から延び出す複数の電気配線65を有し、電気配線65を介して4つの電極61のうちの2つの電極61に交流電流を流す。そして、比抵抗測定装置60は、残り2つの電極61の電位差を測定することによって盛土Bの比抵抗を測定する。以上、比抵抗測定装置60を備える盛土評価システムでも、前述した盛土評価システム1と同様の効果が得られる。
【0083】
本開示に係る盛土評価システムは、変形例に係る盛土評価システムにも限定されず更に変形することが可能である。前述した実施形態では、盛土評価項目算出部32が、空気間隙率算出部31によって算出された盛土Bの空気間隙率、及び体積含水率測定装置15によって測定された盛土Bの体積含水率から、盛土Bの乾燥密度、及び盛土Bの含水比の少なくともいずれかを算出する盛土評価システム1について説明した。しかしながら、盛土評価システムは、比抵抗及び水分計の計測結果から直接乾燥密度及び含水比の少なくともいずれかを算出してもよい。すなわち、空気間隙率及び体積含水率を用いずに、乾燥密度又は含水比が算出されてもよい。例えば、盛土評価システムは、比抵抗測定装置10が測定した比抵抗と、散乱型RI水分計16で測定したカウント数(前述した熱中性子線Z2(図5参照)の数)を組み合わせて、直接乾燥密度及び含水比の少なくともいずれかを算出してもよい。
【0084】
前述した実施形態では、図2に示されるように、2台の保持体41が線状体48を介して互いに接続されている例について説明した。例えば、この線状体48は、伸縮することによって長さを変更可能な鞘管構造を有していてもよい。この場合、電位電極21と電流電極22との距離Xを線状体48を取り付けたまま容易に変更することができる。鞘管構造を有する線状体48がリモコン操作によって伸縮してもよい。更に、鞘管構造を有する線状体48が自動で伸縮してもよい。この場合、距離Xの調整を一層容易に行うことができる。
【0085】
例えば、前述した実施形態では、図1に示されるように、第2線状体3が比抵抗測定装置10から延び出している例について説明した。しかしながら、第2線状体は体積含水率測定装置15から延び出していてもよい。この場合、体積含水率測定装置15が比抵抗測定装置10よりも前に位置することとなるが、前述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0086】
前述した実施形態では、地面S上で牽引される比抵抗測定装置10及び体積含水率測定装置15について説明した。しかしながら、比抵抗測定装置及び体積含水率測定装置はリモコン操作によって地面S上を走行してもよい。比抵抗測定装置及び体積含水率測定装置は、クローラ型の走行部(例えば履帯)を備えていてもよい。更に、比抵抗測定装置及び体積含水率測定装置は、地面S上を自動走行してもよい。
【0087】
本開示に係る盛土評価システムが適用される対象は、土が含まれ、具体例として、CSG(CementedSand and Gravel)工法における建設現場で得られた砂礫等にセメントが添加及び混合されたもの、RCD(Roller CompactedDam-Concrete)工法におけるセメントの量を少なくした超硬練りのコンクリートが敷均されて振動ローラ等で締め固められたもの、及び放射性処分事業の覆土も含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1…盛土評価システム、2…第1線状体、3…第2線状体、10…比抵抗測定装置、15…体積含水率測定装置、16…散乱型RI水分計、16b…中性子線源、16c…熱中性子線検出部、16d…筐体、17…走行体、17b…車輪、17c…台部、18…保持部、20…電極、20b…上面、21…電位電極、22…電流電極、23…誘電体、24…導電体、25…交流電源、26…電位計、30…牽引部、30b…車輪、30c…台部、30d…取手部、31…空気間隙率算出部、32…盛土評価項目算出部、41…保持体、41b…上面、42…キャスタ、43…電極保持部、43c…板状部、43d…棒状部、43f…電極取付部、43g…孔、43h…乗り越え部、44…取手部、45…可変機構、45b…スリット、45c…棒状部、45d…止め部、46…バネ機構、47…バネ、48…線状体、50…検量線取得装置、50b…底部、50c…蓋部、50d…側部、51…第1電極、52…第2電極、53…第3電極、54…第4電極、60…比抵抗測定装置、61…電極、62…軸、63…車輪、64…電極支持部、65…電気配線、A…現場、B…盛土、B1…水素原子、C…盛土材、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、J…軸線方向、L…検量線、ρ…比抵抗、S…地面、X…距離、Y…間隔、Z1…速中性子、Z2…熱中性子線。
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