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特開2024-42577インシュレータ、ステータ、及び回転電機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042577
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】インシュレータ、ステータ、及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20240321BHJP
   H02K 11/25 20160101ALI20240321BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K11/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147378
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白砂 貴盛
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】松平 直忠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 涼太
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 雄大
【テーマコード(参考)】
5H604
5H611
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB03
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604PB03
5H604QA08
5H611AA01
5H611PP02
5H611QQ04
5H611UA02
5H611UB01
(57)【要約】
【課題】配線部に引張力が作用しても、温度センサ素子をコイルに押圧する部分に負荷が作用する事態を抑制すること。
【解決手段】ステータ(11)に設けられ、ステータコア(24)とコイル(22)の間に配置されるインシュレータ(20)において、温度センサ素子(43)をコイル(22)に向けて押圧する押圧部(52)と、温度センサ素子(43)に繋がる配線部(42)を固定する固定部(53)とを有し、押圧部(52)と固定部(53)は並んで配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(11)に設けられ、ステータコア(24)とコイル(22)の間に配置されるインシュレータにおいて、
温度センサ素子(43)を前記コイル(22)に向けて押圧する押圧部(52)と、
前記温度センサ素子(43)に繋がる配線部(42)を固定する固定部(53)と、を有し、
前記押圧部(52)と前記固定部(53)は並んで配置される
インシュレータ。
【請求項2】
前記押圧部(52)と前記固定部(53)は、前記インシュレータのステータ周方向中心を挟んで配置される
請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項3】
前記押圧部(52)は、前記コイル(22)との間に介挿された前記温度センサ素子を、前記コイル(22)に向けて付勢する板部材(61)と、前記板部材(61)を挟んで前記コイル(22)の反対側に配置される壁(70)とを備える
請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項4】
前記板部材(61)は、ステータ軸方向に延び、
前記壁(70)は、前記板部材(61)よりもステータ径方向外側に位置し、前記板部材(61)とステータ径方向で重なる
請求項3に記載のインシュレータ。
【請求項5】
前記押圧部(52)は、前記インシュレータに対する前記温度センサ素子(43)のステータ周方向の位置を位置決めする周方向位置決め部(72A)、及び/又は、前記インシュレータに対する前記温度センサ素子(43)のステータ軸方向の位置を位置決めする軸方向位置決め部(73A)を有する
請求項3に記載のインシュレータ。
【請求項6】
前記固定部(53)は、前記配線部(42)を、前記押圧部(52)からステータ周方向に離れるにつれて、前記インシュレータのコイル巻回部(32)からステータ径方向に離れるように案内する案内部(90)を有する
請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項7】
前記固定部(53)は、前記配線部(42)を支持する支持部(80)を有し、
前記支持部(80)は、前記配線部(42)を、ステータ軸方向一方側から支持する第1支持部(81)と、前記配線部(42)を、ステータ軸方向他方側から支持する第2支持部(821)とを有し、
前記第1支持部(81)と前記第2支持部(82)とは、ステータ周方向にずれて配置されている、
請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項8】
前記支持部(80)は、前記配線部(42)のステータ外周側への移動を規制する外側規制部(81B、82B)と、前記外側規制部(81B、82B)よりもステータ外周側に、前記配線部(42)のステータ内周側への移動を規制する第3支持部(81C)とを有する
請求項6に記載のインシュレータ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のインシュレータが用いられたステータ。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載のインシュレータが用いられた回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インシュレータ、ステータ、及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、回転電機の温度センサ固定構造に関する研究開発が行われている。
回転電機のステータに設けられるインシュレータには、コイル温度測定用の温度センサが固定されるセンサ固定部を備えたものがある(特許文献1参照)。特許文献1記載のセンサ固定部は、温度センサ素子を挿入すると、温度センサ素子によって片持梁状のアームが外側に弾性変形し、このアームに設けられた鉤状部が温度センサ素子に係止することにより、温度センサ素子がコイルに向けて押圧され、かつ、温度センサ素子の抜出が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-172478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、温度センサ取付構造に関する技術においては、温度センサ素子につながる配線部が引っ張られると、アームに負荷がかかり、アームが破損するおそれが生じる。アームに負荷が掛かると、アームが変形し、温度センサ素子がコイルに十分に接触しないおそれも生じる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、配線部に引張力が作用しても、温度センサ素子をコイルに押圧する部分に負荷が作用する事態を抑制することを目的としたものである。そして、温度センサ素子をコイルに押圧した状態を維持することで、コイル温度に基づく回転電機の保護や適切な制御を実現し、延いてはエネルギー効率の改善に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ステータに設けられ、ステータコアとコイルの間に配置されるインシュレータにおいて、温度センサ素子を前記コイルに向けて押圧する押圧部と、前記温度センサ素子に繋がる配線部を固定する固定部と、を有し、前記押圧部と前記固定部は並んで配置されるインシュレータを提供する。
【発明の効果】
【0006】
配線部に引張力が作用しても、温度センサ素子をコイルに押圧する部分に負荷が作用する事態を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態に係る回転電機のステータを示す図である。
図2】センサ保持部を有するインシュレータを周辺構成と共に示す斜視図である。
図3】押圧部を温度センサ及びコイルと共に示す側断面図である。
図4】押圧部を内周側から温度センサ及びコイルと共に示す斜視図である。
図5】押圧部をステータ内周側から周辺構成と共に示す斜視図である。
図6】押圧部を図5と異なる方向から示す斜視図である。
図7】固定部を周辺構成と共に示す平面図である。
図8】固定部を図7のVIII方向から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る回転電機10のステータ11を示す図である。
回転電機10は、例えば、電動自動車もしくは電動バイク等の車両に搭載される発電機、又は駆動モータを構成する部品であり、ステータ11と、ロータ12とを備える。図1中の符号C1は、ステータ11の軸、及びステータ軸方向を示し、ロータ12の軸、及び回転電機10の回転軸とも一致する。以下の説明における各方向は、特に明示しない限り、ステータ11を基準にした方向である。
【0010】
ステータ11は、ロータ12の外周側に配置され、複数のインシュレータ20と、インシュレータ20の各々に巻かれるコイル22と、ステータコア24とを有する。ステータコア24の円周上に設けられた凸と凹の部分が圧入で嵌合することでステータ11は円環形状に形成されている。
【0011】
複数のインシュレータ20の各々は、ステータ周方向に沿って並べられる。インシュレータ20は、コイル22の巻枠であり、具体的には、コイル巻回部32、内周側フランジ部34、及び外周側フランジ部36を有する。コイル巻回部32は、ステータ径方向に沿って延在するステータコアを覆っており、コイル巻回部32の外周面にコイル22が巻かれる。
【0012】
内周側フランジ部34は、インシュレータ20におけるステータ内周側の端部であり、コイル巻回部32と一体に形成される。外周側フランジ部36は、インシュレータ20におけるステータ外周側の端部であり、コイル巻回部32と一体に形成される。
【0013】
内周側フランジ部34、及び外周側フランジ部36は、コイル巻回部32に巻かれたコイル22よりもステータ軸方向一方側に突出している。
コイル22は、ステータ11から外部に延出するU相ケーブル、V相ケーブル、及びW相ケーブルのいずれかに電気的につながっている。U相ケーブル、V相ケーブル、及びW相ケーブルは、例えば三相交流インバータに接続される。
【0014】
ステータコア24は、円環状に形成されており、ステータ周方向に沿って並べられる複数のインシュレータ20の外周側に配置される。このステータコア24は、各々のインシュレータ20の外周側から、当該インシュレータ20が分離しないようにおさえることで、インシュレータ20の各々に巻かれたコイル22を固定する。
【0015】
本構成では、これらインシュレータ20のいずれかに、コイル22の温度を測定する温度センサ41を保持するセンサ保持部51(図2)が設けられる。センサ保持部51は、温度センサ41を取り付ける取付部と言うこともできる。なお、センサ保持部51を除いて、インシュレータ20を含む回転電機10の各部の形状及び構造については、従来の回転電機の形状及び構造を適用可能である。
【0016】
図2は、センサ保持部51を有するインシュレータ20を周辺構成と共に示す斜視図である。図2を含む各図において、符号INはインシュレータ20のステータ内周側を示し、符号OUTはインシュレータ20のステータ外周側を示している。図2中の符号LCはインシュレータ20のステータ周方向中心の位置を示している。
センサ保持部51は、温度センサ41をコイル22に接触した状態に保持する部分である。温度センサ41は、接触式温度センサの一つであり、柔軟性を有する配線部42の先端に小型の感温素子43を有している。なお、感温素子43は、感温部、サーミスタ素子、及びサーミスタセンサとも称される。配線部42は、導体となる芯線を絶縁体の外皮で被覆した屈曲自在な被覆配線であり、リード線、及びケーブルとも称される。感温素子43は、屈曲性や絶縁性等を有する保護チューブ44で覆われている。感温素子43は、本開示の「温度センサ素子」に相当している。
【0017】
図2に示すように、本構成のセンサ保持部51は、感温素子43をコイル22に向けて押圧する押圧部52と、感温素子43に繋がる配線部42を固定する固定部53とを備えている。押圧部52と固定部53とは、ステータ周方向に間隔を空けて、インシュレータ20の外周側フランジ部36に一体に設けられている。
押圧部52は、外周側フランジ部36に対し、ステータ周方向一方側に寄せた位置に設けられ、固定部53は、外周側フランジ部36に対し、ステータ周方向一方側に寄せた位置に設けられる。そのため、押圧部52と固定部53とは、配線部42の延びる方向に沿って並んで配置されており、より具体的には、インシュレータ20のステータ周方向中心LCを挟んで配置されている。
なお、図2等に記載する符号24Hは、ステータ11を、回転電機10のケースとして機能するモータケースに固定するためのボルトが入るボルト締結孔である。外周側フランジ部36は、ボルト締結孔24Hから待避するようにステータ内周側に湾曲する湾曲部36W(図2等)を有している。この湾曲部36Wを挟んで押圧部52と固定部53とが設けられている。
【0018】
押圧部52と固定部53とは、ステータ軸方向において、ステータコア24と重なる範囲内に位置する。そのため、押圧部52と固定部53のいずれもステータコア24よりも外側に張り出さず、ステータ11が実質的に大径化する事態が回避される。
ここで、図3は、押圧部52を温度センサ41及びコイル22と共に示す側断面図、図4は、押圧部52を内周側から温度センサ41及びコイル22と共に示す斜視図である。図3及び図4に示すように、押圧部52とコイル22との間には、温度センサ41の感温素子43の箇所が介挿される。固定部53には、温度センサ41の配線部42が通される。以下の説明において、温度センサ41のうち、感温素子43の箇所を「センサ端部41S」と表記し、センサ端部41Sから離れた配線部42の箇所を「センサ配線部42S」と表記する。
【0019】
押圧部52は、センサ端部41Sをコイル22に向けて付勢する板部材61を備えている。図3に示すように、板部材61は、外周側フランジ部36の一部からステータ軸方向一方側(図3の上側)に延び、コイル22に対し、ステータ外周側に所定の隙間SCを空けて配置される。この隙間SCに、センサ端部41Sが挿入されると、板部材61は、外周側フランジ部36との接続部分を基準にしてステータ径方向外側に弾性変形し、その反作用により、センサ端部41Sをコイル22に向けて付勢する。これにより、感温素子43がコイル22に向けて押圧された状態に保持される。つまり、板部材61は、コイル温度を測定可能に温度センサ41を付勢する付勢部材として機能する。
【0020】
図3及び図4に二点鎖線で示すように、板部材61を、ステータ外周側に更に弾性変形させることによって、センサ端部41Sを、板部材61とコイル22との間から容易に取り出すことが可能である。
外周側フランジ部36には、板部材61を挟んでコイル22の反対側に、ステータ軸方向一方側に立ち上がる壁70が設けられている。この壁70は、図4に示すように、板部材61に対し、ステータ外周側に位置する第1壁71と、板部材61に対し、ステータ周方向一方側に位置する第2壁72と、板部材61に対し、ステータ周方向他方側に位置する第3壁73とを一体に有している。これら第1壁71~第3壁73からなる壁70は、外周側フランジ部36と一体であり、板部材61と比べて弾性変形しない壁に形成されている。板部材61と第1壁71とを指等でつまむ動作によって、板部材61を第1壁71側に容易に弾性変形させ、温度センサ41のセンサ端部41Sの挿脱作業を容易に行うことが可能である。
【0021】
図5は、押圧部52をステータ内周側から周辺構成と共に示す斜視図である。図6は、押圧部52を図5と異なる方向から示す斜視図である。
図5及び図6に示すように、外周側フランジ部36は、板部材61よりもステータ内周側に位置するフランジ内周部36Sを備える。フランジ内周部36Sは、ステータ周方向に沿って連続する平面を有している。このフランジ内周部36Sは、板部材61とコイル22との間に位置する。本構成では、図3に示すように、このフランジ内周部36Sに、センサ端部41Sを載置し、板部材61でセンサ端部41Sをコイル22に押圧することで、スタータ軸方向において、感温素子43がコイル22の適切な位置に押圧した状態に保持される。つまり、フランジ内周部36Sは、感温素子43を載置する載置部、及び、スタータ軸方向において、感温素子43の位置を位置決めする位置決め部を兼用している。
【0022】
図4に示すように、第2壁72は、板部材61に対し、センサ端部41Sの先端側に相当するステータ周方向一方側に位置し、ステータ軸方向一方側に突出する壁に形成されている。この第2壁72は、板部材61よりもステータ内周側に突出する周方向位置決め部72Aを有している。この周方向位置決め部72Aには、センサ端部41Sの先端が当接することにより、感温素子43のステータ周方向一方側へのずれを規制する。つまり、周方向位置決め部72Aは、感温素子43のステータ周方向の位置を位置決めする位置決め部として機能する。
【0023】
第3壁73は、板部材61に対し、第2壁72の反対側に相当するステータ周方向他方側に位置し、ステータ軸方向一方側に突出する壁に形成されている。この第3壁73は、板部材61よりもステータ内周側、かつ、センサ端部41Sよりもステータ軸方向一方側に突出する軸方向位置決め部73Aを有している。この軸方向位置決め部73Aは、センサ端部41Sのステータ軸方向一方側へのずれを規制することによって、感温素子43のステータ軸方向一方側の位置を位置決めする位置決め部として機能する。
【0024】
図7は、固定部53を周辺構成と共に示す平面図、図8は、固定部53を図7のVIII方向(ステータ周方向に相当)から示す図である。説明の便宜上、図7には温度センサ41を二点鎖線で示している。
図7及び図5に示すように、固定部53は、温度センサ41のセンサ配線部42Sを支持する支持部80と、支持部80よりもステータ内周側に位置する案内部90とを備えている。
案内部90は、外周側フランジ部36からステータ軸方向一方側に立ち上がる傾斜壁に形成されている。図7中の符号θAは、案内部90の外周側フランジ部36の前面に対するステータ外周側への傾斜角度を示している。センサ配線部42Sは、案内部90に案内されることによって、コイル22に対して傾斜角度θAで配置される。そのため、センサ配線部2Sは、押圧部52からステータ周方向に離れるにつれて、インシュレータ20のコイル巻回部32からステータ径方向に離れるように配置される。これによって、感温素子43をコイル22に近づけ易くなる。
【0025】
なお、案内部90は、上記形状に限定されず、センサ配線部42Sを、押圧部52からステータ周方向に離れるにつれて、コイル巻回部32からステータ径方向に離すことが可能な形状や構造を広く採用可能である。また、傾斜角度θAについても適宜に変更してもよい。
【0026】
図8に示すように、支持部80は、センサ配線部42Sに対し、ステータ軸方向一方側(図8の上側)に位置する第1支持部81と、センサ配線部42Sに対し、ステータ軸方向他方側(図8の下側)に位置する第2支持部82とを有している。
第1支持部81は、ステータ軸方向一方側(図8の上側)に凹む部81Aを有する形状に形成され、外周側フランジ部36と一体に製作される。この凹み部81Aのステータ軸方向他方側(図8の下側)に、センサ配線部42Sを配置することによって、センサ配線部42Sは、ステータ軸方向一方側への移動が規制される。
【0027】
なお、凹み部81Aは、センサ配線部42Sの外周面に沿って湾曲する湾曲面に形成されている。凹み部81Aの一部81Bは、センサ配線部42Sのステータ外周側(図8の右側)に位置し、センサ配線部42Sのステータ外周側への移動を規制する。つまり、上記一部81Bは、センサ配線部42Sのステータ外周側への移動を規制する外側規制部として機能する。
これにより、センサ配線部42Sを第1支持部81の凹む部81Aに通す、といった容易な作業で、センサ配線部42Sを、ステータ軸方向一方側(図8の上側)への移動を規制すると共に、ステータ外周側への移動を規制することができる。
【0028】
第2支持部82は、ステータ軸方向他方側(図8の下側)に凹む凹み部82Aを有する形状に形成され、外周側フランジ部36と一体に製作される。この凹み部82Aのステータ軸方向一方側に、センサ配線部42Sを配置することによって、センサ配線部42Sは、ステータ軸方向他方側への移動が規制される。第2支持部82の凹み部82Aについても、第1支持部81の凹み部81Aと同様に、センサ配線部42Sの外周面に沿って湾曲する湾曲面に形成される。この凹み部82Aの一部82Bは、センサ配線部42Sのステータ外周側に位置し、センサ配線部42Sのステータ外周側への移動を規制する外側規制部として機能する。
【0029】
これにより、センサ配線部42Sを第2支持部82の凹む部82Aに通す、といった容易な作業で、センサ配線部42Sを、ステータ軸方向他方側(図8の下側)への移動を規制すると共に、ステータ外周側への移動を規制することができる。
【0030】
図8に示すように、本構成では、ステータ周方向から視て、第1支持部81と第2支持部82とが、センサ配線部42Sに対してステータ軸方向の一方側及び他方側にそれぞれ位置するように設けられる。そのため、センサ配線部42Sをステータ軸方向の両側に移動しないように支持できる。しかも、第1支持部81、及び第2支持部82は、センサ配線部42Sのステータ外周側への移動を規制する外側規制部として機能する部分81B、82Bを有するので、センサ配線部42Sをステータ外周側にも移動しないように支持できる。
【0031】
本構成では、図7に示すように、第1支持部81と第2支持部82とは、ステータ周方向に離間して配置されている。そのため、スライド型を使用せずに、第1支持部81と第2支持部82とを有する支持部80を一体成形することが可能となり、成形時の型抜き作業が容易になる。
【0032】
図7に示すように、センサ配線部42Sは、第1支持部81と第2支持部82に通された箇所よりも上流の部分42S1が、ステータ周方向の反対側に向けて屈曲され、第1支持部81のステータ外周側を通るように配策される。この場合、第1支持部81のステータ外周側端部81Cにより、上流の部分42S1のステータ内周側への移動が規制される。つまり、ステータ外周側端部81Cは、センサ配線部42Sの一部のステータ内周側への移動を規制する第3支持部として機能する。
【0033】
センサ配線部42Sのうち、ステータ外周側端部81Cよりも上流の部分42S2は、支持部80の最もステータ外周側に設けられた第4支持部84によって、ステータ外周側への移動が規制される。この第4支持部84は、外周側フランジ部36からステータ軸方向一方側に突出する柱形状に形成されている。
【0034】
このように、センサ配線部42Sは、第1支持部81、第2支持部82、第3支持部として機能するステータ外周側端部81C、及び、第4支持部84によって、ステータ外周側及びステータ内周側への移動が規制される。そのため、センサ配線部42Sに外力が作用しても、いずれかの支持部によって、ステータ外周側及びステータ内周側への移動を規制できる。これにより、センサ配線部42Sよりも下流に位置するセンサ端部41Sに、ステータ外周側及びステータ内周側等への移動力が作用する事態を抑制できる。
【0035】
例えば、センサ配線部42Sに図7に示すステータ外周側への引張力Fが作用した場合、少なくとも第4支持部84により、センサ配線部42Sのステータ外周側への移動が規制される。また、引張力Fの影響により、センサ配線部42Sを、ステータ周方向やステータ内周側へ移動させる外力が発生したとしても、ステータ外周側端部81C、第1支持部81及び第2支持部82のいずれかによって、センサ配線部42Sのステータ周方向やステータ内周側への移動が抑制される。
【0036】
仮に、センサ配線部42Sの上流側の部分42S2、又は42S1の箇所が、ステータ周方向(例えば、図7の左方向)に移動したとしても、センサ配線部42Sの途中が、ステータ周方向の反対側に折り返されているので、この折り返された箇所で、ステータ周方向の移動を吸収できる。したがって、折り返された箇所よりも下流側、つまり、第1支持部81及び第2支持部82に支持されるセンサ配線部42Sが、ステータ周方向に移動する事態を十分に抑制できる。
【0037】
この回転電機10を車両に搭載した場合、回転電機10自体の駆動や振動の影響、及び、車両から作用する振動等によって、センサ配線部42Sに引張力F等の負荷が作用することが想定される。そのような負荷が作用した場合でも、本構成では、センサ配線部42Sの移動を抑制できるので、センサ配線部42Sを固定する固定部53に対し、インシュレータ20のステータ周方向中心LC(図2)を挟んで配置された押圧部52に、負荷が作用する事態を抑制できる。
【0038】
以上説明したように、本構成では、感温素子43を含むセンサ端部41Sを、コイル22に向けて押圧する押圧部52と、センサ端部41Sに繋がるセンサ配線部42Sを固定する固定部53とを有し、押圧部52と固定部53は並んで配置されている。この構成によれば、センサ配線部42Sに引張力F等の負荷が作用しても、押圧部52に負荷が作用する事態を抑制できる。また、押圧部52と固定部53とを離して配置できるので、加温素子43のある配線部42の先端付近に相当するセンサ端部41Sに、固定部53側からの負荷が掛かることを抑制できる。したがって、押圧部52が破損する事態を抑制できると共に、感温素子43がコイル22に接触しない事態を抑制でき、コイル温度を適切に計測し続けることができる。その結果、コイル温度に基づく回転電機10の保護や適切な制御を実現しやすくなり、エネルギー効率の改善にも寄与する。
【0039】
しかも、本構成では、押圧部52と固定部53は、配線部42の延びる方向に沿って並んで配置されているので、配線部42の延びる方向に負荷が作用した場合(例えば、センサ配線部42Sに引張力Fが作用した場合)に、押圧部52に負荷が作用する事態を効果的に抑制できる。
さらに、押圧部52と固定部53は、インシュレータ20のステータ周方向中心LCを挟んで配置されるので、押圧部52と固定部53とをより効果的に離して配置できる。これにより、センサ端部41Sに、固定部53側からの負荷が掛かることをより抑制できる。
【0040】
また、押圧部52は、コイル22との間に介挿された感温素子43を、コイル22に向けて付勢する板部材61と、板部材61を挟んでコイル22の反対側に配置される壁70とを備える。この構成によれば、板部材61と壁70とをつまむ動作によって、板部材61を壁70側に待避させ、感温素子43を容易に挿脱することが可能になる。
【0041】
また、板部材61は、ステータ軸方向に延び、壁70は、板部材61よりも径方向外側に位置し、板部材61とステータ径方向で重なる。この構成によれば、板部材61と壁70とがステータ径方向に並び、かつ、板部材61がステータ軸方向に延びるので、板部材61をコイル22から待避させる作業が容易になる。
【0042】
また、押圧部52は、インシュレータ20に対する感温素子43のステータ周方向の位置を位置決めする周方向位置決め部72A、及び、インシュレータ20に対する感温素子43のステータ軸方向の位置を位置決めする軸方向位置決め部73Aを有している。この構成によれば、感温素子43をインシュレータ20に位置決めした上で、板部材61によってコイル22に押圧することができるので、板部材61の幅が小さくても感温素子43をコイル22に適切に接触させ易くなる。
なお、周方向位置決め部72A、及び軸方向位置決め部73Aの両方を備える場合を例示したが、これに限定されず、周方向位置決め部72A、及び軸方向位置決め部73Aのいずれか一方を備えるようにしてもよい。
【0043】
また、固定部53は、センサ配線部42Sを押圧部52からステータ周方向に離れるにつれて、インシュレータ20のコイル巻回部32からステータ径方向に離れるように案内する案内部90を有している。この構成によれば、感温素子43をコイル22に近づけ易くなり、押圧部52にて感温素子43をコイル22に適切に接触させ易くなる。
【0044】
また、固定部53は、センサ配線部42Sを支持する支持部80を有し、支持部80は、センサ配線部42Sを、ステータ軸方向一方側から支持する第1支持部81と、センサ配線部42Sをステータ軸方向他方側から支持する第2支持部82とを有している。そして、第1支持部81と第2支持部82とは、ステータ周方向にずれて配置されている。この構成によれば、センサ配線部42Sをステータ軸方向の両側に移動しないように支持しながら、スライド型を使用せずに、支持部80を一対成形することが可能となる。したがって、成形時の型抜き作業が容易になり、製造コストの低減等に有利である。
【0045】
また、支持部80は、センサ配線部42Sのステータ外周側への移動を規制する外側規制部として機能する部分81B、82Bと、外側規制部よりもステータ外周側に、センサ配線部42Sのステータ内周側への移動を規制する第3支持部として機能するステータ外周側端部81Cとを有している。この構成によれば、センサ配線部42Sのステータ外周側及びステータ内周側への移動を抑制でき、押圧部52に負荷が作用する事態を抑制し易くなる。
【0046】
上述の実施形態は本発明の一態様を示すものであり、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、押圧部52と固定部53とを、インシュレータ20のステータ周方向中心LCを挟んで配置する場合を説明したが、これに限定されない。また、押圧部52と固定部53は、配線部42の延びる方向に沿って並んで配置されているが、配線部42の延びる方向と異なる方向に並んで配置されていてもよい。また、本発明を図1に示す回転電機10、インシュレータ20及びステータ11に使用する場合を説明したが、回転電機10、インシュレータ20及びステータ11の各部の形状や構造については適宜に変更してもよい。また、本発明の趣旨に反しない範囲で、センサ保持部51の各部の形状や構造についても適宜に変更してもよい。
【0047】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0048】
(構成1)ステータに設けられ、ステータコアとコイルの間に配置されるインシュレータにおいて、温度センサ素子を前記コイルに向けて押圧する押圧部と、前記温度センサ素子に繋がる配線部を固定する固定部と、を有し、前記押圧部と前記固定部は並んで配置されるインシュレータ。
この構成によれば、配線部に引張力が作用しても、押圧部に負荷が掛かる事態を抑制することができる。また、押圧部と固定部とを離して配置できるので、温度センサ素子のある配線部の先端付近に、固定部の影響による負荷が掛かることを抑制できる。
【0049】
(構成2)前記押圧部と前記固定部は、前記インシュレータのステータ周方向中心を挟んで配置される構成1に記載のインシュレータ。
この構成によれば、押圧部と固定部とをより効果的に離して配置できるので、温度センサ素子のある配線部の先端付近に、固定部の影響による負荷が掛かることをより抑制できる。
【0050】
(構成3)前記押圧部は、前記コイルとの間に介挿された前記温度センサ素子を、前記コイルに向けて付勢する板部材と、前記板部材を挟んで前記コイルの反対側に配置される壁とを備える構成1又は2に記載のインシュレータ。
この構成によれば、板部材と壁とをつまむ動作によって、板部材を壁側に待避させ、温度センサ素子を容易に挿脱することが可能になる。
【0051】
(構成4)前記板部材は、ステータ軸方向に延び、前記壁は、前記板部材よりもステータ径方向外側に位置し、前記板部材とステータ径方向で重なる構成3に記載のインシュレータ。
この構成によれば、板部材と壁とがステータ径方向に並び、かつ、板部材がステータ軸方向に延びるので、板部材をコイルから待避させる作業が容易になる。
【0052】
(構成5)前記押圧部は、前記インシュレータに対する前記温度センサ素子のステータ周方向の位置を位置決めする周方向位置決め部、及び/又は、前記インシュレータに対する前記温度センサ素子のステータ軸方向の位置を位置決めする軸方向位置決め部を有する構成3又は4に記載のインシュレータ。
この構成によれば、温度センサ素子をインシュレータに位置決めした上で、板部材によってコイルに押圧することができるので、板部材の幅が小さくても温度センサ素子をコイルに適切に接触させ易くなる。
【0053】
(構成6)前記固定部は、前記配線部を、前記押圧部からステータ周方向に離れるにつれて、前記インシュレータのコイル巻回部からステータ径方向に離れるように案内する案内部を有する構成1から5のいずれか一項に記載のインシュレータ。
この構成によれば、温度センサ素子をコイルに近づけ易くなり、押圧部にて温度センサ素子をコイルに適切に接触させ易くなる。
【0054】
(構成7)前記固定部は、前記配線部を支持する支持部を有し、前記支持部は、前記配線部を、ステータ軸方向一方側から支持する第1支持部と、前記配線部を、ステータ軸方向他方側から支持する第2支持部とを有し、前記第1支持部と前記第2支持部とは、ステータ周方向にずれて配置されている構成1から6のいずれか一項に記載のインシュレータ。
この構成によれば、配線部をステータ軸方向の両側に移動しないように支持しながら、スライド型を使用せずに、支持部を一対成形し易くなる。
【0055】
(構成8)前記支持部は、前記配線部のステータ外周側への移動を規制する外側規制部と、前記外側規制部よりもステータ外周側に、前記配線部のステータ内周側への移動を規制する第3支持部とを有する構成6又は7に記載のインシュレータ。
この構成によれば、配線部のステータ外周側及びステータ内周側への移動を抑制でき、押圧部に負荷が作用する事態を抑制し易くなる。
【0056】
(構成9)構成1から8のいずれか一項に記載のインシュレータが用いられたステータ。
この構成によれば、温度センサ素子につながる配線部に引張力が作用しても、温度センサ素子をコイルに押圧する部分に負荷が作用する事態を抑制するステータを提供できる。
【0057】
(構成10)構成1から8のいずれか一項に記載のインシュレータが用いられた回転電機。
この構成によれば、温度センサ素子につながる配線部に引張力が作用しても、温度センサ素子をコイルに押圧する部分に負荷が作用する事態を抑制する回転電機を提供できる。
【符号の説明】
【0058】
10 回転電機
11 ステータ
12 ロータ
20 インシュレータ
22 コイル
24 ステータコア
32 コイル巻回部
36S フランジ内周部
41 温度センサ
41S センサ端部
42 配線部
42S センサ配線部
43 感温素子(温度センサ素子)
51 センサ保持部
52 押圧部
53 固定部
61 板部材
70 壁
72A 周方向位置決め部
73A 軸方向位置決め部
80 支持部
81 第1支持部
81B、82B 第1支持部の部分(外側規制部)
81C ステータ外周側端部(第3支持部)
82 第2支持部
90 案内部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8