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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042580
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ワークの反転方法および工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/00 20060101AFI20240321BHJP
   B23B 21/00 20060101ALI20240321BHJP
   B23B 15/00 20060101ALI20240321BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B23Q7/00 D
B23B21/00 C
B23B15/00 N
B23Q7/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147382
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諏訪田 航平
【テーマコード(参考)】
3C033
3C045
【Fターム(参考)】
3C033EE00
3C033HH05
3C045FA07
3C045GA10
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で様々な形態のワークを反転可能なワーク反転方法を開示する。
【解決手段】工作機械10において移動可能に設けられたハンド装置30が、主軸台18で保持されたワーク100の第一把持位置GPfを把持して、前記ワーク100を前記主軸台18から取り外し、その後、前記ワーク100の姿勢を反転させてから、前記ワーク100を前記主軸台18に再装着し、前記工作機械10は、前記ワーク100が載置可能な仮置台36を有し、前記ハンド装置30が、前記ワーク100の取り外しから再装着までの間に、前記ワーク100を前記仮置台36に載置したうえで、前記ワーク100の把持位置を前記第一把持位置GPfから第二把持位置GPsに変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの反転方法であって、
工作機械において移動可能に設けられたハンド装置が、主軸台で保持された前記ワークの第一把持位置を把持して、前記ワークを前記主軸台から取り外し、その後、前記ワークの姿勢を反転させてから、前記ワークを前記主軸台に再装着し、
前記工作機械は、前記ワークが載置可能な仮置台を有し、
前記ハンド装置が、前記ワークの取り外しから再装着までの間に、前記ワークを前記仮置台に載置したうえで、前記ワークの把持位置を前記第一把持位置から第二把持位置に変更する、
ことを特徴とするワークの反転方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワークの反転方法であって、
前記工作機械は、1以上の工具取付部を有し、前記工具取付部に取り付けられた工具の位置および姿勢を変更可能な刃物台を有し、
前記仮置台は、前記工具取付部に取り付けられており、
前記刃物台は、前記ワークの前記仮置台への載置に先立って、前記仮置台の姿勢を前記ワークが載置可能な姿勢に変更するとともに、前記仮置台を前記ハンド装置の可動範囲内に位置させる、
ことを特徴とするワークの反転方法。
【請求項3】
請求項1に記載のワークの反転方法であって、
前記ワークは、反転前に前記主軸台で保持される第一端部と、再装着された際に前記主軸台で保持される第二端部と、を有し、
前記第二把持位置は、前記第一把持位置よりも、前記第二端部から離れている、
ことを特徴とするワークの反転方法。
【請求項4】
請求項1に記載のワークの反転方法であって、
前記仮置台は、互いに離隔した一対の載置爪を有し、
前記ハンド装置は、前記ワークを前記仮置台に載置する際、前記ワークの重心を、前記一対の載置爪の間に位置させる、
ことを特徴とするワークの反転方法。
【請求項5】
工作機械であって、
ワークの端部を保持する主軸台と、
工作機械において移動可能に設けられたハンド装置であって、前記主軸台で保持された前記ワークの第一把持位置を把持して、前記ワークを前記主軸台から取り外し、その後、前記ワークの姿勢を反転させてから、前記ワークを前記主軸台に再装着するハンド装置と、
前記ワークが載置可能な仮置台と、
を備え、前記ハンド装置が、前記ワークの取り外しから再装着までの間に、前記ワークを前記仮置台に載置したうえで、前記ワークの把持位置を前記第一把持位置から第二把持位置に変更する、
ことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ワークを主軸台から取り外して反転させた後に主軸台に再装着するワークの反転方法、および、ワークの反転が可能な工作機械を開示する。
【背景技術】
【0002】
主軸台は、ワークの第一端部を回転可能に保持する。そして、ワークのうち主軸台より外側に露出する部分を、刃物台や主軸頭に取り付けられた工具で加工する。ワークに対して所定の加工が完了すれば、当該ワークを、主軸台から取り外して反転させ、ワークの第一端部と反対側端部である第二端部を主軸台に再装着することがある。再装着後は、ワークの第一端部周辺に対する加工を追加で行う。
【0003】
近年、オペレータの負荷を軽減するために、こうしたワークの反転および再装着を、ハンド装置を用いて自動的に行うことが提案されている。例えば、特許文献1には、水平移動可能なキャリアに、第一ワークハンドおよび第二ワークハンドを取り付けたローディング装置が開示されている。特許文献1では、第一ワークハンドでワークを把持した後、当該ワークを第二ワークハンドに受け渡し、第二ワークハンドが旋回することでワークの姿勢を180度反転させる。かかる特許文献1の技術によれば、ワークの反転および再装着を自動で行えるため、オペレータの負荷を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-55308号公報
【特許文献2】特開平5-16003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、二つのワークハンド(すなわちハンド装置)が必要であるため、工作機械の大型化やコスト増加等を招いていた。また、特許文献1では、第一ワークハンドから第二ワークハンドまでの水平方向距離を殆ど変更できない。そのため、特許文献1の技術では、ワークのうち、ワークハンドで把持できる位置が限られる。結果として、特許文献1の技術では、適切に反転可能なワークの形態が限られており、汎用性に乏しかった。
【0006】
なお、特許文献2には、ワークを一時的に載置できる仮受台を刃物台に取り付ける構成が開示されている。ただし、特許文献2には、ワークの反転に関しては何ら示唆されていない。
【0007】
そこで、本明細書では、簡易な構成で様々な形態のワークを反転可能なワーク反転方法および工作機械を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示するワークの反転方法は、ワークの反転方法であって、工作機械において移動可能に設けられたハンド装置が、主軸台で保持された前記ワークの第一把持位置を把持して、前記ワークを前記主軸台から取り外し、その後、前記ワークの姿勢を反転させてから、前記ワークを前記主軸台に再装着し、前記工作機械は、前記ワークが載置可能な仮置台を有し、前記ハンド装置が、前記ワークの取り外しから再装着までの間に、前記ワークを前記仮置台に載置したうえで、前記ワークの把持位置を前記第一把持位置から第二把持位置に変更する、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記工作機械は、1以上の工具取付部を有し、前記工具取付部に取り付けられた工具の位置および姿勢を変更可能な刃物台を有し、前記仮置台は、前記工具取付部に取り付けられており、前記刃物台は、前記ワークの仮置台への載置に先立って、前記仮置台の姿勢を前記ワークが載置可能な姿勢に変更するとともに、前記仮置台を前記ハンド装置の可動範囲内に位置させてもよい。
【0010】
また、前記ワークは、反転前に前記主軸台で保持される第一端部と、再装着された際に前記主軸台で保持される第二端部と、を有し、前記第二把持位置は、前記第一把持位置よりも、前記第二端部から離れていてもよい。
【0011】
また、前記仮置台は、互いに離隔した一対の載置爪を有し、前記ハンド装置は、前記ワークを前記仮置台に載置する際、前記ワークの重心を、前記一対の載置爪の間に位置させてもよい。
【0012】
本明細書で開示する工作機械は、ワークの端部を保持する主軸台と、工作機械において移動可能に設けられたハンド装置であって、前記主軸台で保持された前記ワークの第一把持位置を把持して、前記ワークを前記主軸台から取り外し、その後、前記ワークの姿勢を反転させてから、前記ワークを前記主軸台に再装着するハンド装置と、前記ワークが載置可能な仮置台と、を備え、前記ハンド装置が、前記ワークの取り外しから再装着までの間に、前記ワークを前記仮置台に載置したうえで、前記ワークの把持位置を前記第一把持位置から第二把持位置に変更する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本明細書で開示する技術によれば、ワークの取り外しから再装着までの間に、ハンド装置によるワークの把持位置を変更できるため、再装着時におけるハンド装置と主軸台との干渉を防止できる。そして、これにより、簡易な構成で様々な形態のワークを反転できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】工作機械の概略側面図である。
図2】工作機械の要部を上側からみた模式図である。
図3】ワークをチャックから取り外す様子を示す図である。
図4】ワークを、反転後、仮置台に載置した様子を示す図である。
図5】ハンド装置によるワークの把持位置を変更する様子を示す図である。
図6】ワークを再装着する様子を示す図である。
図7】テーパ部分を有するワークを把持する様子を示す図である。
図8】仮置台の他の例を示す斜視図である。
図9】ワークの把持位置を変更することなく、ワークを再装着する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して工作機械10の構成について説明する。図1は、工作機械10の概略側面図である。また、図2は、工作機械10の要部を上側からみた模式図である。以下の説明では、主軸17の回転軸と平行な方向をZ軸とする。また、刃物台20は、Z軸と平行な第一方向と、第一方向に直交する第二方向と、に移動するが、この第二方向と平行な方向をX軸とする。さらに、X軸およびZ軸に直交する方向をY軸とする。また、Z軸においては、主軸17から刃物台20に近づく向きをプラス方向、X軸においては、主軸17から刃物台20に近づく向きをプラス方向、Y軸においては、主軸17から上に向かう向きをプラス方向とする。
【0016】
この工作機械10は、ワーク100を回転保持する主軸17を有した旋盤である。より具体的には、本例の工作機械10は、複数種類の工具110を保持するタレット22を有したターニングセンタである。ただし、ここで例示する工作機械10は、一例であり、本明細書で開示する技術は、旋削加工が実行できるのであれば、他の形態の工作機械に適用されてもよい。例えば、本明細書で開示する技術は、旋盤とフライス盤を組み合わせた複合加工機に搭載されてもよい。なお、以下では、工作機械10は、ターニングセンタとして説明する。
【0017】
工作機械10の加工室12の周囲は、カバー16で覆われている。加工室12の前面には、大きな開口が形成されており、この開口は、ドア14により開閉される。オペレータは、この開口を介して、加工室12内の各部にアクセスする。加工中、開口に設けられたドア14は、閉鎖される。これは、安全性や環境性等を担保するためである。
【0018】
工作機械10は、ワーク100の一端を自転可能に保持する主軸台18と、工具110を保持する刃物台20と、を備えている。主軸台18は、図示しないモータにより回転可能な主軸17を有している。主軸17の端面には、ワーク100を着脱自在に保持するチャック24やコレットが設けられている。主軸17およびチャック24は、水平方向(Z軸方向)に延びる回転軸を中心として自転する。
【0019】
刃物台20は、工具110を保持する工具保持装置である。この刃物台20は、Z軸、すなわち、主軸17で保持されたワーク100と平行な方向に移動可能となっている。また、刃物台20は、X軸と平行な方向、すなわち、ワーク100の径方向にも進退できるようになっている。なお、図から明らかな通り、X軸は、加工室12の開口からみて、奥側に進むにつれ上方に進むように、水平方向に対して傾いている。
【0020】
刃物台20のZ方向端面には、複数の工具110を保持可能なタレット22が設けられている。タレット22は、Z軸方向視で多角形をしており、Z軸に平行な軸を中心として回転可能となっている。このタレット22の周面には、工具110が装着できる工具取付部26が複数設けられている。そして、タレット22を回転させることで、加工に使用する工具110を変更できるようになっている。
【0021】
加工室12内には、さらに、加工作業を補助するためのロボット28が設けられている。このロボット28は、関節を介して接続された複数のリンクを有する多関節ロボットまたはシリアルリンクマニピュレータである。ロボット28の先端には、エンドエフェクタが装着される。ロボット28に装着されるエンドエフェクタは、状況に応じて変更可能である。本例では、エンドエフェクタとして、ハンド装置30がロボット28の先端に取り付けられている。
【0022】
ハンド装置30は、対象物を把持する装置である。かかるハンド装置30は、例えば、互いに接近および離隔することで、対象物を把持および開放する複数(図示例では二つ)の把持アーム32を有する。このハンド装置30は、ベース部材34を介してロボット28の先端に取り付けられている。本例では、このハンド装置30を用いて、ワーク100の輸送を行う。
【0023】
コントローラ40は、オペレータからの指示に応じて、工作機械10の各部の駆動を制御する。このコントローラ40は、例えば、各種演算を行うプロセッサ42と、各種制御プログラムや制御パラメータを記憶するメモリ44と、を有する。また、コントローラ40は、通信機能を有しており、他の装置との間で各種データ、例えば、加工プログラムデータ等を授受できる。このコントローラ40は、例えば、工具110やワーク100の位置を随時演算する数値制御装置を含んでもよい。また、コントローラ40は、単一のコンピュータでもよいし、物理的に離隔している複数のコンピュータを組み合わせて構成されてもよい。
【0024】
コントローラ40は、例えば、ワーク100を工具110で加工する際に、主軸台18や刃物台20の動きを制御する。また、本例のコントローラ40は、さらに、ハンド装置30を駆動して、主軸17に取り付けられたワーク100を反転させるが、これについては後述する。
【0025】
次に、こうした工作機械10でワーク100を旋削加工する際の流れについて簡単に説明する。なお、以下では、ワーク100の軸方向一端を「第一端部Ef」、軸方向他端を「第二端部Es」と呼ぶ。
【0026】
ワーク100を旋削加工する場合、ワーク100は、主軸台18のチャック24に装着される。また、タレット22には、工具110が装着される。コントローラ40は、加工プログラムに従って、主軸17を回転させるとともに刃物台20を移動させ、ワーク100に対して加工を施す。
【0027】
ここで、こうしたワーク100の加工の途中で、ワーク100の向きを反転させることがある。例えば、まず、チャック24でワーク100の第一端部Efを保持した状態で、第二端部Es周辺および中間部分に対する加工を行う。以下、第一端部Efを保持した状態で行う加工を「一次加工」と呼ぶ。一次加工が完了した後、ワーク100をチャック24から取り外し、180度反転させたうえで、ワーク100の第二端部Esをチャック24に再装着する。そして、チャック24で第二端部Esを保持した状態で、第一端部Ef周辺および中間部分に対する加工を行う。以下、第二端部Esを保持した状態で行う加工を「二次加工」と呼ぶ。このように一次加工および二次加工を行うことで、ワーク全体を適切に加工できる。
【0028】
ところで、上述の説明で明らかな通り、一次加工の後、二次加工を行うためには、ワーク100をチャック24から取り外して、ワーク100の姿勢を反転させたうえで、ワーク100をチャック24に再装着する必要がある。本例では、こうしたワーク100の取り外し、反転、および、再装着をロボット28およびハンド装置30を用いて自動的に行う。かかる構成とすることで、オペレータの負担を軽減できる。
【0029】
しかしながら、ワーク100の形態によっては、ワーク100の反転および再装着が容易にできない場合があった。こうした問題を解決するために、本例では、ワーク100の取り外しから再装着までの間に、ワーク100を仮置台36に一時的に載置したうえで、ハンド装置30によるワーク100の把持位置を変更させる。以下、これについて、図3図6を参照して説明する。図3図6は、ワーク100をチャック24から取り外した後、再装着するまでの様子を示す模式図である。なお、図3図6では、ロボット28のリンクを、単純な破線の直線で模式的に図示している。
【0030】
はじめに、仮置台36について説明する。仮置台36は、上述した通り、再装着されるワーク100が一時的に載置される台である。かかる仮置台36は、加工室12内に固定配置されてもよいし、移動可能に設けられてもよい。本例では、仮置台36は、タレット22の工具取付部26に取り付けられる。また、仮置台36は、取り扱うワーク100の形態に合わせて複数種類、用意されていてもよい。この場合、取り扱えるワーク100の形態に応じて、タレット22に取り付ける仮置台36を変更してもよい。また、一つのタレット22に複数種類の仮置台36を予め装着しておき、取り扱うワーク100の形態に応じて、タレット22を回転させてもよい。
【0031】
一次加工が完了すると、コントローラ40は、ロボット28およびハンド装置30を駆動し、ハンド装置30にワーク100を把持させる。図3は、このときの様子を示している。図3から明らかな通り、このとき、チャック24は、ワーク100の第一端部Efを保持している。また、ハンド装置30は、第二端部Es近傍にある第一把持位置GPfを把持する。
【0032】
続いて、コントローラ40は、チャック24を開放するとともに、ロボット28を駆動して、ワーク100をチャック24から引き抜く。さらに、その後、コントローラ40は、ロボット28の姿勢を変更して、ワーク100の姿勢を180度反転させる。すなわち、第一端部EfがZ方向プラス側に向き、第二端部EsがZ方向をマイナス側を向く姿勢に変更する。
【0033】
ワーク100の姿勢を反転させた後、コントローラ40は、ロボット28を駆動して、ワーク100を仮置台36に載置する。図4は、仮置台36にワーク100を載置した様子を示している。このとき、コントローラ40は、予め、仮置台36を適切な位置および姿勢に変更しておく。具体的には、コントローラ40は、仮置台36の載置面がほぼ水平になるように、タレット22を回転させる。また、コントローラ40は、仮置台36が、ロボット28の可動範囲内に位置するように、刃物台20を移動させる。
【0034】
ワーク100を仮置台36に載置できれば、コントローラ40は、ハンド装置30によるワーク100の把持位置を、第一把持位置GPfから第二把持位置GPsに変更させる。図5は、把持位置を変更した様子を示す図である。図5から明らかな通り、第二把持位置GPsは、第一把持位置GPfよりも第一端部Efに近い。
【0035】
把持位置が変更できれば、コントローラ40は、ロボット28およびチャック24を駆動して、ワーク100をチャック24に再装着させる。図6は、再装着の様子を示す図である。図6から明らかな通り、このとき、チャック24は、第二端部Esを保持し、ハンド装置30は、第二端部Esから離れた第二把持位置GPsを把持する。ワーク100の再装着が完了すれば、コントローラ40は、ロボット28を所定の退避位置まで退避させ、ワーク100に対する二次加工を開始させる。
【0036】
以上の説明で明らかな通り、本例では、ワーク100を、取り外してから再装着するまでの間に、ハンド装置30によるワーク100の把持位置を変更している。かかる処理を行う理由について図9を参照して説明する。
【0037】
図9は、把持位置を変更することなく、ワーク100を再装着する様子を示す図である。図9に示すように、把持位置を変更しない場合、ハンド装置30は、第二端部Esに近い第一把持位置GPfを把持し続けることになる。この状態で、ワーク100の第二端部Esをチャック24に装着しようとすると、図9に示すように、ハンド装置30またはその周辺の部材が、チャック24または主軸台18と干渉することがある。図9では、第二端部Esをチャック24に装着しようとしても、ベース部材34がチャック24と干渉するため、ワーク100の再装着ができない。
【0038】
こうした問題は、当然ながら、ワーク100をチャック24から取り外す際(図3のとき)に、第二端部Esから離れた位置を把持する、すなわち、第一把持位置GPfを第二端部Esから離せば解決できる。しかし、ワーク100の形態によっては、第一把持位置GPfを第二端部Esから離すことが難しい場合もある。例えば、図3に示す例の場合、ワーク100の軸方向寸法が小さいため、ハンド装置30を他部材に干渉させることなく、ハンド装置30で把持できる位置は限られてしまう。結果として、第一把持位置GPfを第二端部Esから離すことは難しい。
【0039】
また、ワーク100の軸方向寸法が大きい場合でも、把持できる位置が限定される場合もある。例えば、図7に示すように、ワーク100の中央部分(図7においてクロスハッチングを施した部分)にテーパが形成されている場合がある。ハンド装置30の種類によっては、こうしたテーパが形成された部分を適切に把持できない。この場合、ハンド装置30は、チャック24からワーク100を取り外す際、ワーク100の第二端部Es近傍しか把持できない。結果として、第一把持位置GPfを第二端部Esから離すことは難しい。
【0040】
本例では、上述した通り、ワーク100をチャック24から取り外してから再装着するまでの間に、ワーク100を仮置台36に一時的に載置したうえで、把持位置を変更すればよい。これにより、図6に示すように、ハンド装置30と他部材との干渉を防止しつつ、ワーク100の第二端部Esをチャック24に再装着できる。
【0041】
なお、当然ながら、第一把持位置GPfを第二端部Esから十分に離せる場合には、ワーク100の仮置きおよび把持位置の変更を行うことなく、直接、ワーク100をチャック24に再装着してもよい。また、本例では、ワーク100の姿勢を反転させた後に、ワーク100を仮置台36に載置しているが、この順序は逆でもよい。すなわち、仮置台36にワーク100を載置して、ハンド装置30による把持位置を変更した後に、ワーク100の姿勢を180度反転させてもよい。
【0042】
また、ワーク100を仮置台36に載置する際には、図4に示すように、ワーク100の重心CGを、一対の載置爪38の間に位置させる。これにより、仮置き時に、ワーク100が仮置台36から転落することを効果的に防止できる。また、ワーク100の中には、図8に示すように、段付き形状のものがある。かかるワーク100を取り扱う場合には、二つの載置爪38の設置高さを、段差に応じて異ならせてもよい。
【0043】
また、本例では、仮置台36をタレット22に取り付けているが、仮置台36は、タレット22とは独立して設けられてもよい。例えば、仮置台36は、心押台(図示せず)や、ロボット28とは別のロボットに取り付けられてもよい。また、仮置台36は、加工室内に固定設置されてもよい。
【0044】
また、本例では、ハンド装置30をロボット28に取り付けているが、ハンド装置30は、移動可能であれば、他の部材に取り付けられてもよい。例えば、加工室12にガントリークレーンを設けておき、このガントリークレーンにハンド装置30を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 工作機械、12 加工室、14 ドア、16 カバー、17 主軸、18 主軸台、20 刃物台、22 タレット、24 チャック、26 工具取付部、28 ロボット、30 ハンド装置、32 把持アーム、34 ベース部材、36 仮置台、38 載置爪、40 コントローラ、42 プロセッサ、44 メモリ、100 ワーク、110 工具、CG 重心、Ef 第一端部、Es 第二端部、GPf 第一把持位置、GPs 第二把持位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9