(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042586
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】電力変換装置および発電システム
(51)【国際特許分類】
H02P 9/00 20060101AFI20240321BHJP
H02M 7/06 20060101ALI20240321BHJP
H02P 103/10 20150101ALN20240321BHJP
【FI】
H02P9/00 E
H02M7/06 Z
H02P103:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147398
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【弁理士】
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】児山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】金田 大成
(72)【発明者】
【氏名】石月 照之
(72)【発明者】
【氏名】森 淳二
【テーマコード(参考)】
5H006
5H590
【Fターム(参考)】
5H006AA03
5H006BB05
5H006CC02
5H006DB01
5H590AA21
5H590CA12
5H590CA14
5H590CC10
5H590CC18
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE01
5H590DD43
5H590FA08
5H590FC27
5H590GA02
5H590GA07
5H590JA02
(57)【要約】
【課題】無効電力を出力するまでの時間を短縮し、無効電力の出力応答を向上させる電力変換装置および発電システムを提供することである。
【解決手段】実施形態の電力変換装置は、インバータの直流側端子が接続される直流リンク部に、直流側端子が接続される発電システムのコンバータと、前記コンバータの無効電力指令最大値が前記発電システムの無効電力指令値以上の場合には、前記発電システムの無効電力指令値を前記コンバータの無効電力指令値として与え、前記コンバータのみから無効電力を出力させる制御装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータの直流側端子が接続される直流リンク部に、直流側端子が接続される発電システムのコンバータと、
前記コンバータの無効電力指令最大値が前記発電システムの無効電力指令値以上の場合には、前記発電システムの無効電力指令値を前記コンバータの無効電力指令値として与え、前記コンバータのみから無効電力を出力させる制御装置と、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記コンバータの出力電流最大値および前記コンバータの有効電流指令値に基づいて前記コンバータの無効電流指令最大値を算出し、前記無効電流指令最大値および前記コンバータの出力電圧に基づいて前記コンバータの無効電力指令最大値を算出し、前記コンバータの無効電力指令最大値が前記発電システムの無効電力指令値以上の場合、前記発電システムの無効電力指令値を前記コンバータの無効電力指令値として与える請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記無効電力を出力している期間に、前記インバータに接続される誘導発電動機の回転子を停止させる期間を設ける請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記発電システムは回転体、前記インバータに接続される誘導発電動機、および変圧器と前記誘導発電機との間を遮断する遮断器を備え、
前記制御装置は、前記無効電力を出力している期間に、誘導発電動機から無効電力を出力するための準備として、前記誘導発電機の回転子および前記回転体の所定の速度での回転、前記遮断器の閉極、および前記回転体に流入する水量の調整の少なくとも一つを実行させるように制御する請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
誘導発電動機に接続されるインバータの直流側端子が接続される直流リンク部に、直流側端子が接続される発電システムのコンバータと、
前記発電システムの無効電力指令値が時間で変動する場合には、前記コンバータに時間で変動する前記コンバータの無効電力指令値を与えるとともに、前記インバータに時間で変動しない前記誘導発電動機の無効電力指令値を与えることで、前記発電システムの無効電流指令値を前記コンバータの無効電力指令値および前記誘導発電動機の無効電力指令値の合計として与える制御装置と、
を備える電力変換装置。
【請求項6】
誘導発電動機に接続されるインバータの直流側端子が接続される直流リンク部に、直流側端子が接続される発電システムのコンバータと、
前記発電システムの無効電力指令値を所定の割合で前記コンバータの無効電流指令値および前記誘導発電動機の無効電力指令値に割り当てて与えることで、前記発電システムの無効電流指令値を前記コンバータの無効電力指令値および前記誘導発電動機の無効電力指令値の合計として与える制御装置と、
を備える電力変換装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記発電システムの無効電力指令値のうち所定よりも高い周波数の成分を前記コンバータの無効電力指令値として与え、前記発電システムの無効電力指令値のうち所定よりも低い周波数の成分を前記誘導発電動機の無効電力指令値として与える請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
請求項1、5、または6いずれかに記載の電力変換装置を備える発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置および発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
誘導発電動機の二次励磁変換器として使用される一般的な電力変換装置は、インバータおよびコンバータを備える。このような電力変換装置では、無効電力を電力系統に出力することで系統電圧を調整することができる。無効電力を電力系統に出力する際は、インバータは誘導発電動機に励磁電流を供給し、誘導発電動機の回転子は回転し、コンバータはインバータの直流電圧を維持するように動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように構成された電力変換装置において、電力系統へ無効電力を供給する場合、誘導発電動機の回転子を所定の速度まで回転させるのに時間がかかり、系統電圧を調整するための無効電力の出力応答が低下する可能性がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、無効電力を出力するまでの時間を短縮し、無効電力の出力応答を向上させる電力変換装置および発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態の電力変換装置は、インバータの直流側端子が接続される直流リンク部に、直流側端子が接続される発電システムのコンバータと、前記コンバータの無効電力指令最大値が前記発電システムの無効電力指令値以上の場合には、前記発電システムの無効電力指令値を前記コンバータの無効電力指令値として与え、前記コンバータのみから無効電力を出力させる制御装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る発電システムの構成を示す図。
【
図2】第1実施形態に係る発電システムからの無効電力出力の概略を示す図。
【
図3】第1実施形態に係る発電システムのコンバータからの無効電力出力の概略を示す図。
【
図4】第1実施形態に係る制御装置による制御フローを示すフローチャート。
【
図5】第1実施形態の変形例に係る制御装置による制御フローを示すフローチャート。
【
図6】第1実施形態の変形例に係る制御装置による制御フローを示すフローチャート。
【
図7】第1実施形態の変形例に係る制御装置による制御フローを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る発電システム1の構成を示す図である。発電システム1は、電力変換装置10と、制御装置20と、誘導発電動機30と、第1変圧器40と、第1遮断器50と、第2遮断器60と、を備える。
【0010】
電力変換装置10は、誘導発電動機30の二次励磁変換装置であり、コンバータ12と、インバータ14と、コンデンサ16と、第2変圧器18とを備える。
【0011】
コンバータ12は、交流側端子が後述の第2変圧器18に、直流側端子が後述のコンデンサ16にそれぞれ接続され、この交流側端子は第2変圧器18および後述の第1変圧器40を介して電力系統に接続されている。コンバータ12には、第1変圧器40および第2変圧器18を介して電力系統から電力が供給される。コンバータ12は、コンデンサ16の電圧を所定の値に保つよう動作する。
【0012】
インバータ14は、交流側端子が後述の誘導発電動機30の回転子巻線である二次励磁巻線に、直流側端子が後述のコンデンサ16にそれぞれ接続されているインバータ14である。インバータ14は、誘導発電動機30の二次励磁巻線に電力を供給して誘導発電動機30を励磁する。
【0013】
コンデンサ16は、インバータ14の直流側端子とコンバータ12の直流側端子とに接続されており、これらコンバータ12とインバータ14との共通の直流リンク部である。
【0014】
第2変圧器18は、コンバータ12と後述の第1変圧器40との間に設けられる。電力系統とコンバータ12との間は、これら第2変圧器18および第1変圧器40を介して電流が流れる。
【0015】
誘導発電動機30は、三相誘導発電動機であり、回転子が可変速揚水発電用の水車32に接続されている。誘導発電動機30の固定子巻線は後述の第1変圧器40を介して電力系統に、二次励磁巻線はインバータ14にそれぞれ接続されている。なお、誘導発電動機30は、水車32ではなく例えば風力発電用の風車等に接続されても良く、回転体に接続されていれば良い。以降の説明では、誘導発電動機30の回転子を回転させることを、単に誘導発電動機30を回転させるとも記載する。
【0016】
制御装置20は、例えばCPU、記憶装置等からなるコンピュータ装置により実現される。制御装置20は、発電システム1に接続され、指令を出力することで発電システム1の各種機器を制御する。制御装置20による制御の詳細な説明は後述する。
【0017】
第1変圧器40は、電力系統と誘導発電動機30との間、かつ電力系統と第2変圧器18との間に設けられる。
【0018】
第1遮断器50は、電力系統と第1変圧器40との間に設けられ、開極して電力系統と第1変圧器40との間の電流を止めることができる。第2遮断器60は、第1変圧器40と誘導発電動機30との間に設けられ、開極して第1変圧器40と誘導発電動機30との間の電流を止めることができる。
【0019】
次に、電力系統に発電システム1が無効電力Qを出力する場合について説明する。本実施形態では、
図2に示すように、コンバータ12が無効電力Qcを電力系統に出力し、誘導発電動機30が無効電力Qsを電力系統に出力し、発電システム1としてそれらの合計である無効電力Qを電力系統に出力している。つまり、以下の式(1)が成り立つ。
【0020】
Q=Qc+Qs …(1)
【0021】
ここで、制御装置20による演算と制御について説明する。制御装置20は、無効電力指令値Qcrをコンバータ12に与えることにより、コンバータ12から無効電力Qcを出力させる。同様に、制御装置20は、誘導発電動機30が無効電力Qsを出力するような無効電力指令値Qsrをインバータ14に与えることにより、誘導発電動機30から無効電力Qsを出力させる。
【0022】
コンバータ12が出力できる電力の範囲は、d軸とq軸(d軸に直交する軸)を用いた回転座標系で表される。コンバータ12の出力電流Icは、出力電流最大値Icmの範囲で出力する。直流電圧維持に必要な有効電流Icdがd軸上のベクトルIcdで表される場合、出力可能な無効電流Icqはq軸に平行なベクトルIcqで表される。このとき、コンバータ12の無効電流指令最大値Icqrmは以下の式(2)で算出される。
【0023】
(Icqrm)2=(Icm)2―(Icdr)2 …式(2)
【0024】
また、コンバータ12の有効電流指令値Icdr、コンバータ12の無効電流指令最大値Icqrm、コンバータ12の有効電圧指令値Vcdr、およびコンバータ12の無効電圧指令値Vcqrから、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが以下の式(3)のように算出される。
【0025】
Qcrm=Vcqr×Icdr―Vcdr×Icqrm …式(3)
【0026】
コンバータ12の無効電力指令値Qcrは、発電システム1の無効電力指令値Qrを超えてはならない。したがって、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが無効電力指令値Qrを超える場合、制御装置20はコンバータ12の無効電力指令値Qcrを-Qr以上Qr以下の範囲に入るように算出する。このとき、コンバータ12の無効電力指令値Qcrを発電システム1の無効電力指令値Qrと等しくすることで、発電システム1の無効電力指令値Qrをコンバータ12の無効電力指令値Qcrとしても良い。
【0027】
ここで、誘導発電動機30の無効電力指令値Qsrは、発電システム1の無効電力指令値Qrからコンバータ12の無効電力指令値Qcrを差し引いた値とすれば良く、以下の式(4)が成り立つ。
【0028】
Qsr=Qr-Qcr …式(4)
【0029】
制御装置20は、算出したコンバータ12の無効電力指令値Qcrをコンバータ12に与え、誘導発電動機30の無効電力指令値Qsrをインバータ14に与えることで、発電システム1の無効電力指令値Qrをそれらの合計として与える。発電システム1は、
図2に示すように、制御装置20からの指令に従って無効電力Qを電力系統に出力する。
【0030】
なお、発電システム1の無効電力指令値Qrとコンバータ12の無効電力指令値Qcrとが等しい場合は、式(4)の演算によって誘導発電動機30の無効電力指令値Qsrはゼロとなる。このとき、制御装置20は、発電システム1の無効電力指令値Qrをコンバータ12の無効電力指令値Qcrとして与える。つまり、発電システム1は、
図3に示すようにコンバータ12からの無効電力Qcのみで発電システム1としての無効電力Qを電力系統に供給する。
【0031】
なお、制御装置20の演算において、コンバータ12の有効電圧指令値Vcdrと無効電圧指令値Vcqrに変えて、コンバータ12の有効電圧出力値Vcdと無効電圧出力値Vcqを用いても良い。
【0032】
次に、
図4を参照して、発電システム1から電力系統に無効電力を供給する際の制御装置20による制御フローについて説明する。
【0033】
まず、管理者が制御装置20に、発電システム1から電力系統へ無効電力Qを出力する無効電力指令値Qrを入力する(ステップS100)。
【0034】
次に、制御装置20が、コンバータ12の出力電流最大値Icmの二乗から有効電流指令値Icdrの二乗を減算した偏差を算出し、この偏差の平方根をコンバータ12の無効電流指令最大値Icqrmとして算出する(ステップS102)。コンバータ12の出力電流最大値Icmは、設計上の任意の値である。ステップS102における演算は、式(2)に対応する。
【0035】
次に、制御装置20が、コンバータ12の無効電流指令値Icqrmにコンバータ12の有効電圧指令値Vcdrを乗じた値から、コンバータ12の有効電流指令値Icdrにコンバータ12の無効電圧指令値Vcqrを乗じた値を減算した偏差を、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmとして算出する(ステップS104)。このステップS104における演算は、式(3)に対応する。
【0036】
次に、制御装置20が、ステップS104で出力したコンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmと発電システム1の無効電力指令値Qrとを比較する(ステップS106)。コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが発電システム1の無効電力指令値Qr以上の場合(ステップS106のYES)、無効電力指令値Qrをコンバータ12の無効電力指令値Qcrとして算出する(ステップS108)。
【0037】
ステップS108の後、制御装置20が、発電システム1の無効電力指令値Qrをコンバータ12の無効電力指令値Qcrとしてコンバータ12に与え、コンバータ12から無効電力Qcを出力させる(ステップS110)。
【0038】
一方、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが発電システム1の無効電力指令値Qr未満の場合(ステップS106のNO)、この無効電力指令最大値Qcrmをコンバータ12の無効電力指令値Qcrとして算出する(ステップS112)。
【0039】
ステップS112の後、制御装置20が、発電システム1の無効電力指令値Qrから、コンバータ12の無効電力指令値Qcrを減算した偏差を誘導発電動機30の無効電力指令値Qsrとして算出する(ステップS114)。このステップにおける演算は、式(4)に対応する。
【0040】
ステップS114の後、制御装置20が、コンバータ12に無効電力指令値Qcrを、インバータ14に無効電力指令値Qsrをそれぞれ与えることで、発電システム1の無効電力指令値Qrをこれらの合計として与える。そして、制御装置20は、これら指令に従ってコンバータ12から無効電力Qcを、誘導発電動機30から無効電力Qsを出力させることで、これらの合計を発電システム1から電力系統への無効電力Qとして出力させる(ステップS116)。
【0041】
次に、ステップS110またはステップS116の後、制御装置20が、管理者からの無効電力指令値Qrの入力がないかどうかを判定する(ステップS118)。出力指令がない場合(ステップS118のYES)は、制御装置20がコンバータ12および誘導発電動機30に無効電力の出力を停止する指令を送信し、コンバータ12および誘導発電動機30は無効電力の出力を停止する(ステップS120)。出力指令があった場合(ステップS118のNO)は、ステップS102に戻りその出力指令に従った制御を行う。ここで、出力指令とは、ステップS100で入力された無効電力Qを継続して出力する指令でも良く、無効電力Qとは違う値の無効電力を出力する指令でも良い。
【0042】
なお、ステップS110において、コンバータ12の無効電力Qcのみで発電システム1としての無効電力Qを出力するように制御装置20からコンバータ12へ指令を与えた場合は、このステップS110で、第2遮断器60を開極する指令を制御装置20から第1遮断器50に与えて第2遮断器60を開極しても良い。つまり、ステップS110において、第2遮断器60を開極した状態でコンバータ12から無効電力Qcを電力系統に供給しても良い。
【0043】
なお、ステップS100において、時間によって変化する無効電力Qを出力する指令が制御装置20に入力された場合、無効電力Qの時間変化を考慮してステップS102以降の処理をしても良い。例えば、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが発電システム1の無効電力指令値Qr以上の期間(ステップS106のYES)と、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが発電システム1の無効電力指令値Qr未満の期間(ステップS106のNO)とが含まれている場合がある。この場合、コンバータ12の無効電力Qcのみで出力する期間(ステップS110)に、誘導発電動機30から無効電力Qsを出力させる(ステップS116)ための準備として、例えば制御装置20が、誘導発電動機30の回転子および水車32を所定の速度まで回転させる、第2遮断器60を閉極させる、または水車32内に流入する水量を調整する等の制御を実行しても良い。これにより、コンバータ12の無効電力Qcを出力しながら誘導発電動機30の無効電力Qsを出力する準備を完了させるので、無効電力Qをコンバータ12から早く出力し始めることができる。また、誘導発電動機30から無効電力Qsを出力する場合、無効電力指令値Qrを受けてから無効電力Qsを出力するまでの時間を短縮することができる。したがって、無効電力Qの出力応答を向上させることができる。
【0044】
なお、コンバータ12の無効電力Qcのみで無効電力Qを出力する場合(ステップS110)で、誘導発電動機30から無効電力Qsを出力する準備が不要の場合は、制御装置20が水車32および誘導発電動機30を停止させる期間を設けても良い。これにより、水車32および誘導発電動機30を回転させることによる機械損失を無くすことができる。
【0045】
なお、ステップS106の変形例として、ステップS100において時間によって変化する無効電力Qを出力する指令が制御装置20に入力された場合に、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが発電システム1の無効電力指令値Qr以上の期間のみを含む場合をステップS106のYESとし、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが発電システム1の無効電力指令値Qr以上の期間と、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが発電システム1の無効電力指令値Qr未満の期間とを含む場合をステップS106のNOとしても良い。これにより、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが発電システム1の無効電力指令値Qr以上の期間に誘導発電動機30から無効電力Qsを出力し始めるので、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが発電システム1の無効電力指令値Qr未満になる期間に誘導発電動機30からの無効電力Qsの出力に失敗し、無効電力Qを出力できなくなることを防ぐことができる。したがって、無効電力指令値Qrの変動に対する無効電力Qの出力応答を向上できる。
【0046】
なお、ステップS106は、ステップS100における発電システム1の無効電力指令値Qrの値によらず、常にNOに進んでも良い。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、発電システム1から電力系統に無効電力Qを出力する際に、コンバータ12の無効電力Qcのみで電力システムの無効電力Qを出力できる場合は、コンバータ12のみから無効電力Qcを無効電力Qとして出力する。また、このとき誘導発電動機30および水車32の回転を停止する。これにより、誘導発電動機30および水車32の回転による機械損失を無くすことができる。また、コンバータ12のみから無効電力Qcを出力するので、無効電力Qを出力するために誘導発電動機30および水車32を所定の速度まで回転させる等の準備が必要なく、無効電力Qを出力するまでの時間を短縮して無効電力Qの出力応答を向上させることができる。
【0048】
コンバータ12および誘導発電動機30から無効電力Qを出力する場合は、コンバータ12のみで無効電力Qを出力している期間に、誘導発電動機30から無効電力Qsを出力するための準備をする。これにより、誘導発電動機30の準備期間にも無効電力Qを出力でき、無効電力Qを出力するまでの時間を短縮して無効電力Qの出力応答を向上させることができる。
【0049】
ここで、コンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmが発電システム1の無効電力指令値Qr未満の場合(ステップS106のNO)のステップS112からステップS114の変形例について説明する。なお、ステップS100からステップS110、およびステップS114からステップS120は上述の説明と同様なため、詳細な説明を省略する。
【0050】
本実施形態の変形例として、
図5に示すように、制御装置20は、時間で変動する発電システム1の無効電力指令値Qrのうち、誘導発電動機30の無効電力指令値Qsrを一定の値とし、コンバータ12の無効電力指令値Qcrを時間で変動させるように制御しても良い。この変形例では、制御装置20はステップS106の後、無効電力指令値Qrのうち、時間で変動する成分をコンバータ12の無効電力指令値Qcrとして算出する(ステップS212)。なお、制御装置20は、コンバータ12の無効電力指令値Qcrを、無効電力指令最大値Qcrmを超えない範囲で算出する。次に、制御装置20は、式(4)に基づいて、発電システム1の無効電力指令値Qrのうち、時間に限らず出力される一定値の成分を、誘導発電動機30の無効電力指令値Qsrとして算出する(ステップS214)。ステップS214の後、ステップS116に進む。なお、このステップS212およびS214はこの順でなくても良く、ステップS214を先に処理しても良いし、同時に処理しても良い。この変形例により、本実施形態と同様の効果に加えて、早い出力応答に対応できるコンバータ12が無効電力指令値Qrの時間変動に対応するので、無効電力Qの応答を向上させることができる。
【0051】
本実施形態の別の変形例として、
図6に示すように、制御装置20は、発電システムの無効電力指令値Qrを、所定の割合でコンバータ12および誘導発電動機30に割り当てて無効電力Qを出力しても良い。この変形例では、制御装置20はステップS106の後、無効電力指令値Qrに任意の定数K(0<K<1)を乗算した値をコンバータ12の無効電流指令値Qcrとして算出する(ステップS312)。このとき、制御装置20は、算出したKQcrとコンバータ12の無効電力指令最大値Qcrmとを比較し、KQrが無効電力指令最大値Qcrmを超えないように、係数Kを決定する。つまり、制御装置20は、コンバータ12がKQrを出力できる範囲内でKを決定し、このKQcrをコンバータ12の無効電力指令値Qcrとして算出するので、式(5)が成立する。
【0052】
Qcr=KQr …式(5)
【0053】
この場合、式(4)および式(5)から、誘導発電動機30の無効電力指令値Qsrを表す式(6)が成立する。
【0054】
Qsr=(1-K)Qr …式(6)
【0055】
次に、制御装置20は、式(6)に基づいて誘導発電動機30の無効電力指令値Qsrを算出する(ステップS314)。ステップS314の後、ステップS116に進む。この変形例によって、発電システム1の無効電力指令値Qrから、コンバータ12の無効電力指令値Qcrを先に決定することができる。したがって、コンバータ12の無効電力Qcを任意に量に調整しつつ無効電力Qを出力でき、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
本実施形態の別の変形例として、
図7に示すように、制御装置20は、無効電力Qのうち高い周波数成分をコンバータ12から、低い周波数成分を誘導発電動機30から出力させるように、無効電流指令値Qrの周波数成分に基づいて制御しても良い。この変形例では、制御装置20はステップS106の後、発電システム1の無効電流指令値Qrのうち所定の周波数よりも高い成分をコンバータ12の無効電力指令値Qcrとして算出する(ステップS412)。次に、制御装置20は、発電システム1の無効電流指令値Qrのうち所定の周波数よりも低い成分を誘導発電動機30の無効電流指令値Qsrとして算出する(ステップS414)。ステップS414の後、ステップS116に進む。なお、この変形例における発電システム1は、無効電流指令値Qrのうち所定よりも低い周波数成分を抽出して出力するローパスフィルタ(図示省略)を備えても良い。なお、これらステップS412およびS414では、上述したステップS312およびS314と同様に、式(5)および式(6)を用いてコンバータ12の無効電力指令値Qcrおよび誘導発電動機30の無効電力指令値Qsrを算出して良い。無効電流指令値Qrの高周波成分は、無効電力指令値Qrのうち早い変動応答成分である。コンバータ12は誘導発電動機30よりも早い出力応答に対応できるので、本実施形態と同様の効果に加えて、無効電力Qの出力応答を向上させることができる。
【0057】
なお、これら変形例は、本実施形態と同様の効果に加えて、コンバータ12および誘導発電動機30から発電システム1の無効電力Qを出力するので、誘導発電動機30の無効電力Qsは、誘導発電動機30単独で出力する場合と比較してコンバータ12の無効電力Qcだけ低くなり、誘導発電動機30の力率を向上させることができる。また、誘導発電動機30から無効電力Qsを出力する場合は、無効電力Qsはインバータ14を介して誘導発電動機30から出力する。したがって、発電システム1の無効電力Qをコンバータ12の無効電力Qcおよび誘導発電動機30の無効電力Qsとして出力することにより、コンバータ12およびインバータ14に電流を分散して流すことができる。これにより、無効電力Qを誘導発電動機30単独で出力する場合と比較して、電流によるインバータ14の半導体素子の温度上昇を抑制することができ、この温度上昇に起因するインバータ14の劣化・損傷を防ぐことができる。
【0058】
上述した種々の変形例は、任意に組み合わせても良いものとする。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…発電システム、10…電力変換装置、12…コンバータ、14…インバータ、16…コンデンサ、18…第2変圧器、20…制御装置、30…誘導発電動機、32…水車、40…第1変圧器、50…第1遮断器、60…第2遮断器。