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特開2024-42599低反射フィルム、支持部付き低反射フィルム、書籍用カバー及び書籍
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042599
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】低反射フィルム、支持部付き低反射フィルム、書籍用カバー及び書籍
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/11 20150101AFI20240321BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240321BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240321BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240321BHJP
   B42D 1/00 20060101ALI20240321BHJP
   B42D 3/18 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G02B1/11
B32B7/023
G02B5/00 Z
G02B1/14
B42D1/00 Z
B42D3/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147418
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】管家 了
(72)【発明者】
【氏名】風間 美希
(72)【発明者】
【氏名】大橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】松永 淳一
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H042AA03
2H042AA07
2H042AA21
2K009AA02
2K009AA15
2K009BB28
2K009CC21
2K009DD02
4F100AA20A
4F100AK17A
4F100AK25A
4F100AK42C
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100DE04A
4F100EC182
4F100EH46
4F100EH46A
4F100EJ30
4F100GB71
4F100GB90
4F100HB31B
4F100JN01A
4F100JN06A
4F100JN18
4F100JN18A
(57)【要約】
【課題】外縁近傍が視認されにくい低反射フィルム、並びに当該低反射フィルムが用いられた支持部付き低反射フィルム、書籍用カバー及び書籍を提供することを目的とする。
【解決手段】
印刷領域35と透明領域34とを備え、透明領域34における可視光反射率が2%以下の低反射フィルム30である。低反射フィルム30は外縁30aを含む。低反射フィルム30に低反射フィルム30の面に垂直な光を照射した場合に、正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域であって、外縁30aの延びる方向に延び、かつ外縁30aからの距離が100μm以下である領域を、第1外縁領域30dと定めるとき、第1外縁領域30dの幅W1は100μmより小さい。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷領域と透明領域とを備え、前記透明領域における可視光反射率が2%以下の低反射フィルムであって、
前記低反射フィルムは外縁を含み、
前記低反射フィルムに前記低反射フィルムの面に垂直な光を照射した場合に、正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域であって、前記外縁の延びる方向に延び、かつ前記外縁からの距離が100μm以下である領域を、第1外縁領域と定めるとき、前記第1外縁領域の幅W1は100μmより小さい、低反射フィルム。
【請求項2】
前記低反射フィルムに前記低反射フィルムの面に垂直な光を照射した場合に前記外縁に沿って形成される、正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域を、第2外縁領域と定めるとき、前記第2外縁領域の幅W2と前記第1外縁領域の幅W1との合計が100μmより小さく、
前記第1外縁領域と前記第2外縁領域との間に形成され、かつ正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下である第1接続領域の幅が5μm以下となる、請求項1に記載の低反射フィルム。
【請求項3】
前記低反射フィルムに前記低反射フィルムの面に垂直な光を照射した場合に、前記第1外縁領域の前記外縁側とは反対側に形成されて前記外縁の延びる方向に延びる、正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域を、第3外縁領域と定めるとき、前記第3外縁領域の幅W3と前記第1外縁領域の幅W1との合計が100μmより小さく、
前記第1外縁領域と前記第3外縁領域との間に形成され、かつ正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下である第2接続部分の幅が5μm以下となる、請求項1に記載の低反射フィルム。
【請求項4】
前記外縁に沿った5mmをもつ帯状領域内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値が、前記帯状領域内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値に比べて2.0倍以下となる、請求項1に記載の低反射フィルム。
【請求項5】
膜厚が500μm以下である、請求項1に記載の低反射フィルム。
【請求項6】
2枚の前記低反射フィルムを、2枚の前記低反射フィルムの一方の面と他方の面とが平行となり、かつ2枚の前記低反射フィルムの一方と他方との距離が30cm以下となるように配置した場合に、可視光が2枚の前記低反射フィルムを通過する可視光透過率は、90%以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の低反射フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の低反射フィルムと、
前記低反射フィルムを支持する支持部と、を備える、支持部付き低反射フィルム。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の低反射フィルムを備える、書籍用カバー。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の低反射フィルムを備える、書籍。
【請求項10】
透明領域を備え、前記透明領域における可視光反射率が2%以下の低反射フィルムであって、
前記低反射フィルムは外縁を含み、
前記低反射フィルムに前記低反射フィルムの面に垂直な光を照射した場合に、正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域であって、前記外縁の延びる方向に延び、かつ前記外縁からの距離が100μm以下である領域を、第1外縁領域と定めるとき、前記第1外縁領域の幅W1は100μmより小さい、低反射フィルム。
【請求項11】
請求項10に記載の低反射フィルムと、
前記低反射フィルム上に固定された表示物と、を備える、表示物付き低反射フィルム。
【請求項12】
2枚の前記表示物付き低反射フィルムを、2枚の前記表示物付き低反射フィルムの一方の前記低反射フィルムの面と他方の前記低反射フィルムの面とが平行となり、かつ2枚の前記表示物付き低反射フィルムの一方と他方との距離が30cm以下となるように配置した場合に、可視光が2枚の前記表示物付き低反射フィルムの前記表示物を備えない部分を通過する可視光透過率は、90%以上である、請求項11に記載の表示物付き低反射フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低反射フィルム、支持部付き低反射フィルム、書籍用カバー及び書籍に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、透明な部分を有し、且つフィルムの面における光の反射を抑制することが可能な積層フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、表面を構成する表面反射防止層と、裏面を構成する裏面反射防止層とを備える透明積層フィルムが開示されている。このような透明積層フィルムによれば、表面反射防止層と裏面反射防止層とによって、表面及び裏面における光の反射が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-47477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、フィルムの面における光の反射が抑制された低反射フィルムに印刷領域を追加したり、低反射フィルム上に表示物を固定したりすることによって、従来にはない多様な表現を実現し得る。例えば、透明な低反射フィルムの一部に印刷領域を追加した上で、低反射フィルムの面が水平面に垂直となるように低反射フィルムを支持することによって、低反射フィルムを視認する者に、印刷領域が空中に浮いて見えるような印象を与えられる。ここで、低反射フィルムが、外縁近傍において視認されやすい場合があった。特に、低反射フィルムを切断することによって低反射フィルムに外縁を形成した際に、低反射フィルムの外縁近傍において、低反射フィルムによる光の反射を抑制する機能が損なわれる場合があった。例えば、低反射フィルムの外縁近傍において、低反射フィルムの面が平滑にならない場合があった。この場合に、低反射フィルムによる光の反射を抑制する機能が損なわれて、低反射フィルムの外縁近傍が視認されやすくなるおそれがあった。低反射フィルムの外縁近傍が視認されやすいと、低反射フィルムを用いて多様な表現を実現することが妨げられるおそれがあった。例えば、透明な低反射フィルムの一部に印刷領域を追加したとしても、低反射フィルムの外縁近傍が視認されることによって、印刷領域が空中に浮いて見えるような印象を与えられなくなるおそれがあった。
【0005】
本開示は、このような点を考慮してなされたものであり、外縁近傍が視認されにくい低反射フィルム、並びに当該低反射フィルムが用いられた支持部付き低反射フィルム、書籍用カバー及び書籍を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、印刷領域と透明領域とを備え、前記透明領域における可視光反射率が2%以下の低反射フィルムであって、
前記低反射フィルムは外縁を含み、
前記低反射フィルムに前記低反射フィルムの面に垂直な光を照射した場合に、正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域であって、前記外縁の延びる方向に延び、かつ前記外縁からの距離が100μm以下である領域を、第1外縁領域と定めるとき、前記第1外縁領域の幅W1は100μmより小さい、低反射フィルムである。
【0007】
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様による低反射フィルムにおいて、前記低反射フィルムに前記低反射フィルムの面に垂直な光を照射した場合に前記外縁に沿って形成される、正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域を、第2外縁領域と定めるとき、前記第2外縁領域の幅W2と前記第1外縁領域の幅W1との合計が100μmより小さく、
前記第1外縁領域と前記第2外縁領域との間に形成され、かつ正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下である第1接続領域の幅が5μm以下となってもよい。
【0008】
本開示の第3の態様は、上述した第1の態様又は上述した第2の態様による低反射フィルムにおいて、前記低反射フィルムに前記低反射フィルムの面に垂直な光を照射した場合に、前記第1外縁領域の前記外縁側とは反対側に形成されて前記外縁の延びる方向に延びる、正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域を、第3外縁領域と定めるとき、前記第3外縁領域の幅W3と前記第1外縁領域の幅W1との合計が100μmより小さく、
前記第1外縁領域と前記第3外縁領域との間に形成され、かつ正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下である第2接続部分の幅が5μm以下となってもよい。
【0009】
本開示の第4の態様は、上述した第1の態様から上述した第3の態様のそれぞれによる低反射フィルムにおいて、前記外縁に沿った5mmをもつ帯状領域内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値が、前記帯状領域内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値に比べて2.0倍以下となってもよい。
【0010】
本開示の第5の態様は、上述した第1の態様から上述した第4の態様のそれぞれによる低反射フィルムにおいて、膜厚が500μm以下であってもよい。
【0011】
本開示の第6の態様は、上述した第1の態様から上述した第5の態様のそれぞれによる低反射フィルムにおいて、2枚の前記低反射フィルムを、2枚の前記低反射フィルムの一方の面と他方の面とが平行となり、かつ2枚の前記低反射フィルムの一方と他方との距離が30cm以下となるように配置した場合に、可視光が2枚の前記低反射フィルムを通過する可視光透過率は、90%以上であってもよい。
【0012】
本開示の第7の態様は、上述した第1の態様から上述した第6の態様のそれぞれによる低反射フィルムと、
前記低反射フィルムを支持する支持部と、を備える、支持部付き低反射フィルムである。
【0013】
本開示の第8の態様は、上述した第1の態様から上述した第6の態様のそれぞれによる低反射フィルムを備える、書籍用カバーである。
【0014】
本開示の第9の態様は、上述した第1の態様から上述した第6の態様のそれぞれによる低反射フィルムを備える、書籍である。
【0015】
本開示の第10の態様は、透明領域を備え、前記透明領域における可視光反射率が2%以下の低反射フィルムであって、
前記低反射フィルムは外縁を含み、
前記低反射フィルムに前記低反射フィルムの面に垂直な光を照射した場合に、正反射した反射光の強度が前記低反射フィルムの中央領域から正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域であって、前記外縁の延びる方向に延び、かつ前記外縁からの距離が100μm以下である領域を、第1外縁領域と定めるとき、前記第1外縁領域の幅W1は100μmより小さい、低反射フィルムである。
【0016】
本開示の第11の態様は、上述した第10の態様による低反射フィルムと、
前記低反射フィルム上に固定された表示物と、を備える、表示物付き低反射フィルムである。
【0017】
本開示の第12の態様は、上述した第11の態様による表示物付き低反射フィルムにおいて、2枚の前記表示物付き低反射フィルムを、2枚の前記表示物付き低反射フィルムの一方の前記低反射フィルムの面と他方の前記低反射フィルムの面とが平行となり、かつ2枚の前記表示物付き低反射フィルムの一方と他方との距離が30cm以下となるように配置した場合に、可視光が2枚の前記表示物付き低反射フィルムの前記表示物を備えない部分を通過する可視光透過率は、90%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、外縁近傍が視認されにくい低反射フィルム、並びに当該低反射フィルムが用いられた支持部付き低反射フィルム、書籍用カバー及び書籍を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、低反射フィルム30を示す平面図である。
図2A図2Aは、一実施の形態による低反射フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2B図2Bは、一実施の形態による低反射フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2C図2Cは、一実施の形態による低反射フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2D図2Dは、一実施の形態による低反射フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2E図2Eは、一実施の形態による低反射フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2F図2Fは、一実施の形態による低反射フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2G図2Gは、一実施の形態による低反射フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2H図2Hは、一実施の形態による低反射フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2I図2Iは、一実施の形態による低反射フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2J図2Jは、一実施の形態による低反射フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2K図2Kは、一実施の形態による低反射フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図2L図2Lは、曲げ応力測定試験の方法を説明する図である。
図3A図3Aは、図1において符号IIIAが付された一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す平面図である。
図3B図3Bは、一実施の形態による支持部付き低反射フィルムの一例を示す斜視図である。
図3C図3Cは、一実施の形態による支持部付き低反射フィルムの別の一例を示す斜視図である。
図4A図4Aは、第1変形例による低反射フィルムの、外縁の近傍の一部を拡大して示す平面図である。
図4B図4Bは、低反射フィルムの、外縁の近傍における断面の一例を示す図である。
図4C図4Cは、第2変形例による表示物付き低反射フィルムを示す斜視図である。
図5図5は、第3変形例による書籍用カバーを示す斜視図である。
図6図6は、第4変形例による書籍を示す斜視図である。
図7A図7Aは、実施例1における低反射フィルムの外縁の近傍の領域のデジタル写真を示す図である。
図7B図7Bは、実施例2における低反射フィルムの外縁の近傍の領域のデジタル写真を示す図である。
図7C図7Cは、実施例3における低反射フィルムの外縁の近傍の領域のデジタル写真を示す図である。
図7D図7Dは、比較例1における低反射フィルムの外縁の近傍の領域のデジタル写真を示す図である。
図7E図7Eは、比較例2における低反射フィルムの外縁の近傍の領域のデジタル写真を示す図である。
図7F図7Fは、比較例3における低反射フィルムの外縁の近傍の領域のデジタル写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本実施の形態について説明する。図1乃至図3Cは本実施の形態を示す図である。以下に示す各図は、模式的に示した図である。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施できる。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されることなく、適宜選択して使用できる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含めて解釈することとする。
【0021】
(低反射フィルム)
まず、低反射フィルム30について説明する。図1は、本実施の形態による低反射フィルム30を示す平面図である。低反射フィルム30の形状は特に限定されず、用途に応じて適宜定められる。図1に示す例において、低反射フィルム30は、矩形の形状を有する。低反射フィルム30は、第1面301及び第1面301の反対側に位置する第2面302を有する。第1面301と第2面302とは、互いに平行である。
【0022】
図1に示す低反射フィルム30は、印刷領域35と透明領域34とを備える。透明領域34における可視光反射率は2%以下である。ここで、低反射フィルム30について、透明領域34における可視光反射率とは、可視光の正反射率を意味し、特に低反射フィルム30の透明領域34の、後述する中央領域30eに第1面301側から入射する可視光の正反射率を意味する。すなわち、可視光反射率が2%以下とは、低反射フィルム30の透明領域34に第1面301側から入射する可視光の正反射率が2%以下であることを意味する。これにより、低反射フィルム30の観察者が低反射フィルム30の透明領域34を第1面301側から見た場合に、低反射フィルム30の透明領域34に物体、例えば観察者自身の姿などが映り込むことが抑制される。これによって、観察者が低反射フィルム30の透明領域34の存在を認識しにくくなる。可視光反射率は、1%以下であることがより好ましい。低反射フィルム30の透明領域34に第1面301側から入射する可視光の正反射率が2%以下であり、且つ低反射フィルム30の透明領域34に第2面302側から入射する可視光の正反射率が2%以下であってもよい。これにより、低反射フィルム30の観察者が低反射フィルム30の透明領域34を第1面301側及び第2面302側のいずれから見た場合であっても、低反射フィルム30の透明領域34に物体、例えば観察者自身の姿などが映り込むことが抑制される。
【0023】
また、低反射フィルム30は、外縁30aを含む。図1に示す矩形の形状の低反射フィルム30は、外縁30aとして、一対の第1辺30cと、一対の第2辺30bとを有する。一対の第2辺30bの一方を上縁30b1と呼び、他方を下縁30b2と呼ぶ。また、一対の第1辺30cは、一対の側縁30cとも呼ぶ。
【0024】
図1に示す低反射フィルム30の印刷領域35には、「A」の文字が印刷されている。図示はしないが、印刷領域35には、別の文字が印刷されてもよく、文字以外の情報や意匠などを表示するものが印刷されてもよい。図1に示す例において、印刷領域35は、透明領域34に囲われている。また、低反射フィルム30の外縁30aの全体が、透明領域34によって形成されている。図示はしないが、低反射フィルム30の外縁30aの一部が、印刷領域35によって形成されていてもよい。
【0025】
次に、本実施の形態による低反射フィルム30について説明する。低反射フィルム30は、後述する支持部付き低反射フィルム100、書籍用カバー81、書籍82などに用いられてもよい。図2A乃至図2Iに示す例において、印刷領域35と透明領域34とを備える低反射フィルム30は、コア層32と印刷層33とを備えている。また、低反射フィルム30は、コア層32の一方の側に設けられ、第1面301を構成する第1面反射防止層40と、コア層32の他方の側に設けられ、第2面302を構成する第2面反射防止層50とを備えている。さらに、低反射フィルム30は、第1面反射防止層40とコア層32とを接着する第1透明接着層31aと、コア層32と第2面反射防止層50とを接着する第2透明接着層31bとを更に備えていてもよい。なお、第1面反射防止層40を構成する各層の位置関係の説明においては、第1面301側を「外側」と称する。また、第2面反射防止層50を構成する各層の位置関係の説明においては、第2面302側を「外側」と称する。
【0026】
低反射フィルム30における印刷層33の位置は、印刷層33によって印刷領域35が形成される限り、特に限られない。図2A乃至図2Hにおいて、印刷層33は、コア層32の第1面301側の面の一部または第2面302側の面の一部を覆っている。図2Iにおいて、低反射フィルム30は、印刷層33として、低反射フィルム30の第1面301の一部を形成する第1印刷層331と、低反射フィルム30の第2面302の一部を形成する第2印刷層332と、を備えている。特に図2Iにおいて、第1印刷層331は、低反射フィルム30の後述する第1面反射防止層40の一部を覆っている。また、第2印刷層332は、低反射フィルム30の後述する第2面反射防止層50の一部を覆っている。図示はしないが、低反射フィルム30は、印刷層33として、第1印刷層331及び第2印刷層332のいずれか一方を備えていてもよい。
【0027】
図2A図2Cおよび図2Eに示す例において、低反射フィルム30は、第1面301から第2面302に向かって、第1面反射防止層40と、第1透明接着層31aと、印刷層33と、コア層32と、第2透明接着層31bと、第2面反射防止層50とをこの順に備えている。この場合、低反射フィルム30において、第1面反射防止層40が、第1面301側から外方に露出する。また、低反射フィルム30において、第2面反射防止層50が、第2面302側から外方に露出する。
【0028】
また、図2B図2Dおよび図2Fに示す例において、低反射フィルム30は、第1面301から第2面302に向かって、第1面反射防止層40と、第1透明接着層31aと、コア層32と、印刷層33と、第2透明接着層31bと、第2面反射防止層50とをこの順に備えている。この場合においても、低反射フィルム30において、第1面反射防止層40が、第1面301側から外方に露出する。また、低反射フィルム30において、第2面反射防止層50が、第2面302側から外方に露出する。
【0029】
また、図2Gに示す例において、低反射フィルム30は、第1面301から第2面302に向かって、第1面反射防止層40と、印刷層33と、第1透明接着層31aと、コア層32と、第2透明接着層31bと、第2面反射防止層50とをこの順に備えている。この場合においても、低反射フィルム30において、第1面反射防止層40が、第1面301側から外方に露出する。また、低反射フィルム30において、第2面反射防止層50が、第2面302側から外方に露出する。
【0030】
また、図2Hに示す例において、低反射フィルム30は、第1面301から第2面302に向かって、第1面反射防止層40と、第1透明接着層31aと、コア層32と、第2透明接着層31bと、印刷層33と、第2面反射防止層50とをこの順に備えている。この場合においても、低反射フィルム30において、第1面反射防止層40が、第1面301側から外方に露出する。また、低反射フィルム30において、第2面反射防止層50が、第2面302側から外方に露出する。
【0031】
また、図2Iに示す例において、低反射フィルム30は、第1面301から第2面302に向かって、第1印刷層331と、第1面反射防止層40と、第1透明接着層31aと、コア層32と、第2透明接着層31bと、第2面反射防止層50と、第2印刷層332とをこの順に備えている。この場合、低反射フィルム30において、第1印刷層331が、第1面301側から外方に露出する。また、第1面反射防止層40の第1印刷層331に覆われていない部分が、第1面301側から外方に露出する。また、第2印刷層332が、第2面302側から外方に露出する。また、第2面反射防止層50の第2印刷層332に覆われていない部分が、第2面302側から外方に露出する。
【0032】
また、図2A乃至図2Iに示すように、第1面反射防止層40は、第1面301から第2面302に向かって順に配置された第1面反射防止機能層41と、第1面透明基材層42とを有している。また、第1面反射防止機能層41は、第1面301から第2面302に向かって順に配置された第1面屈折層43と、第1面ハードコート層44とを含んでいる。ここで、図2C乃至図2F及び図2Iに示すように、第1面屈折層43は、第1面301から第2面302に向かって順に配置された第1面低屈折率層45と、第1面高屈折率層46とを含んでいてもよい。また、図2Eおよび図2Fに示すように、第1面高屈折率層46は、第1面301から第2面302に向かって順に配置された第1の第1面高屈折率層47と、第2の第1面高屈折率層48とを含んでいてもよい。なお、図2Gおよび図2Hに示す例においては、第1面反射防止層40が、第1面反射防止機能層41と第1面透明基材層42とを有し、第1面反射防止機能層41が、第1面屈折層43と第1面ハードコート層44とを含んでいる。この場合、図2G及び図2Hに示す低反射フィルム30の第1面反射防止層40において、第1面屈折層43が、第1面低屈折率層45や第1面高屈折率層46等を含んでいてもよい。
【0033】
また、図2A乃至図2Iに示すように、第2面反射防止層50は、第2面302から第1面301に向かって順に配置された第2面反射防止機能層51と、第2面透明基材層52とを有している。また、第2面反射防止機能層51は、第2面302から第1面301に向かって順に配置された第2面屈折層53と、第2面ハードコート層54とを含んでいる。ここで、図2C乃至図2F及び図2Iに示すように、第2面屈折層53は、第2面302から第1面301に向かって順に配置された第2面低屈折率層55と、第2面高屈折率層56とを含んでいてもよい。また、図2Eおよび図2Fに示すように、第2面高屈折率層56は、第2面302から第1面301に向かって順に配置された第1の第2面高屈折率層57と、第2の第2面高屈折率層58とを含んでいてもよい。なお、図2Gおよび図2Hに示す例においては、第2面反射防止層50が、第2面反射防止機能層51と第2面透明基材層52とを有し、第2面反射防止機能層51が、第2面屈折層53と第2面ハードコート層54とを含んでいる。この場合、図2G及び図2Hに示す低反射フィルム30の第2面反射防止層50において、第2面屈折層53が、第2面低屈折率層55や第2面高屈折率層56等を含んでいてもよい。
【0034】
また、図2Jおよび図2Kに示すように、低反射フィルム30は、コア層32を備えていなくてもよい。具体的には、図2Jに示すように、低反射フィルム30は、第1面301から第2面302に向かって、第1面反射防止層40と、印刷層33と、透明接着層31と、第2面反射防止層50とをこの順に備えていてもよい。この場合においても、低反射フィルム30において、第1面反射防止層40が、第1面301側から外方に露出する。また、低反射フィルム30において、第2面反射防止層50が、第2面302側から外方に露出する。
【0035】
また、図2Kに示すように、低反射フィルム30は、第1面301から第2面302に向かって、第1面反射防止層40と、透明接着層31と、印刷層33と、第2面反射防止層50とをこの順に備えていてもよい。この場合においても、低反射フィルム30において、第1面反射防止層40が、第1面301側から外方に露出する。また、低反射フィルム30において、第2面反射防止層50が、第2面302側から外方に露出する。
【0036】
なお、図2Jおよび図2Kに示す例においては、第1面反射防止層40が、第1面反射防止機能層41と第1面透明基材層42とを有し、第1面反射防止機能層41が、第1面屈折層43と第1面ハードコート層44とを含んでいる。また、第2面反射防止層50が、第2面反射防止機能層51と第2面透明基材層52とを有し、第2面反射防止機能層51が、第2面屈折層53と第2面ハードコート層54とを含んでいる。この場合、図2J及び図2Kに示す低反射フィルム30の第1面反射防止層40において、第1面屈折層43が、第1面低屈折率層45等を含んでいてもよく、図2J及び図2Kに示す低反射フィルム30の第2面反射防止層50において、第2面屈折層53が、第2面低屈折率層55等を含んでいてもよい。
【0037】
上述したように、第1面反射防止層40は、第1面透明基材層42の外側に第1面高屈折率層46及び第1面低屈折率層45を有する基本構成からなっていてもよい。また、上述したように、第2面反射防止層50は、第2面透明基材層52の外側に第2面高屈折率層56及び第2面低屈折率層55を有する基本構成からなっていてもよい。第1面高屈折率層46(第2面高屈折率層56)及び第1面低屈折率層45(第2面低屈折率層55)は、光学干渉機能により反射防止機能を付与する役割を果たす。
【0038】
第1面反射防止層40(第2面反射防止層50)は、さらに中屈折率層を設ける等して3層以上の光学干渉機能による反射防止機能を付与してもよいが、あまりに多層構造にすると費用対効果の点から好ましくない。したがって、本実施の形態による第1面反射防止層40(第2面反射防止層50)は、第1面高屈折率層46(第2面高屈折率層56)及び第1面低屈折率層45(第2面低屈折率層55)の2層で光学干渉機能による反射防止機能を付与するものであることが好ましい。なお、第1面反射防止層40(第2面反射防止層50)は、第1面ハードコート層44(第2面ハードコート層54)を中屈折率化して、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層の3層で光学干渉機能による反射防止機能を付与してもよい。
【0039】
図示はしないが、低反射フィルム30は、第1面反射防止層40を備え、且つ第2面反射防止層50を備えなくてもよい。この場合であっても、第1面301側から入射する光の反射率を、小さく抑えられる。
【0040】
低反射フィルム30を厚み方向(第1面301に垂直な方向)から観察した場合に印刷層33が位置する領域が、低反射フィルム30の印刷領域35となる。また、低反射フィルム30を厚み方向(第1面301に垂直な方向)から観察した場合に印刷層33が位置しない領域が、低反射フィルム30の透明領域34となる。
【0041】
以下、低反射フィルム30の各層について説明する。
【0042】
<第1面反射防止層および第2面反射防止層>
第1面反射防止層40は、低反射フィルム30の第1面301側から入射する光の反射を抑制するための層である。低反射フィルム30が第1面反射防止層40を備えていることにより、低反射フィルム30の第1面301における光の反射を抑制することができる。また、第1面反射防止層40は、第1面301側から入射した光の反射だけでなく、第2面302側から入射した光の反射を抑制する役割も果たす。これにより、低反射フィルム30の観察者が、低反射フィルム30の透明領域34の存在を認識しにくくなる。
【0043】
一方、第2面反射防止層50は、主として低反射フィルム30の第2面302側から入射する光の反射を抑制するための層である。低反射フィルム30が第2面反射防止層50を備えていることにより、低反射フィルム30の第2面302における光の反射を抑制することができる。また、第2面反射防止層50は、第2面302側から入射した光の反射だけでなく、第1面301側から入射した光の反射を抑制する役割も果たす。これにより、低反射フィルム30の観察者が、低反射フィルム30の透明領域34の存在を認識しにくくなる。
【0044】
第1面反射防止層40は、上述したように、第1面反射防止機能層41と、第1面透明基材層42とを有している。また、第2面反射防止層50は、上述したように、第2面反射防止機能層51と、第2面透明基材層52とを有している。ここでは、まず、第1面透明基材層42および第2面透明基材層52について説明する。なお、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50は、上述した層構成以外の構成を有していてもよく、それぞれ樹脂フィルムによって構成されていてもよい。例えば、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50は、それぞれ低反射フィルム(シャープ株式会社製、FG-10MR1)を使用してもよい。また、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50は、一般的にモスアイとして知られる、透明基材上に設けられた樹脂の表面に凹凸が形成された構造であってもよい。この場合、透明基材と樹脂表面との間に、密着性を改善するためのプライマ層があってもよい。なお、凹凸が形成された樹脂は、透明基材の一方の側のみに設けられていてもよく、両側に設けられていてもよい。
【0045】
[第1面透明基材層および第2面透明基材層]
第1面透明基材層42および第2面透明基材層52は、例えば、第1面反射防止機能層41や第2面反射防止機能層51を支持するとともに、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50の全体の強度を高めるための層である。第1面透明基材層42および第2面透明基材層52の材料は、一般的なフィルムの基材として用いられる透明なものであれば特に限定されないが、材料コスト、生産性等の観点から、好ましくはプラスチックフィルム、プラスチックシート等を、用途に応じて適宜選択することができる。
【0046】
プラスチックフィルム又はプラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、セロファン等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;低密度ポリエチレン樹脂(線状低密度ポリエチレン樹脂を含む)、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、エチレンαオレフィン共重合体、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリブテン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマーあるいは、これらの混合物等のポリオレフィン樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル樹脂等のアクリル樹脂;ナイロン6又はナイロン66などで代表されるポリアミド樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;又はポリイミド樹脂等が好ましく挙げられる。また、第1面透明基材層42および第2面透明基材層52の材料は、シクロオレフィンポリマー(COP)系樹脂、シクロオレフィンコポリマー(COC)系樹脂であってもよい。
【0047】
第1面透明基材層42および第2面透明基材層52としては、上記したプラスチックフィルム、プラスチックシートの中から単独で、又は2種以上を選んで混合物として用いることができるが、柔軟性、強靭性、透明性などの観点から、第1面透明基材層42および第2面透明基材層52の材料としては、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂がより好ましい。また、柔軟性、強靭性、透明性などの観点から、第1面透明基材層42および第2面透明基材層52は、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレートを含んでいることが好ましい。
【0048】
第1面透明基材層42および第2面透明基材層52の厚みについては、特に制限はなく、用途に応じて適宜選択される。第1面透明基材層42および第2面透明基材層52の厚みは、それぞれ5μm以上130μm以下程度であってもよく、耐久性やハンドリング性等を考慮すると、10μm以上100μm以下であることが好ましい。なお、各層の厚みは、それぞれ、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から20箇所の厚みを測定し、20箇所の値の平均値から算出できる。測定する膜厚がμmオーダーの場合、SEMを用いることが好ましく、nmオーダーの場合、TEM又はSTEMを用いることが好ましい。SEMの場合、加速電圧は1kV以上10kV以下、倍率は1000倍以上7000倍以下とすることが好ましく、TEM又はSTEMの場合、加速電圧は10kV以上30kV以下、倍率は5万倍以上30万倍以下とすることが好ましい。なお、以下に説明する各層についても、各層の膜厚は、第1面透明基材層42および第2面透明基材層52の膜厚と同様の方法によって測定することができる。
【0049】
[第1面反射防止機能層および第2面反射防止機能層]
次に、第1面反射防止機能層41および第2面反射防止機能層51について説明する。第1面反射防止機能層41および第2面反射防止機能層51は、それぞれ第1面反射防止層40および第2面反射防止層50に対して、光の反射を抑制する機能を付与する役割を果たす。
【0050】
また、第1面反射防止機能層41は、第1面透明基材層42の外側にコーティングされたコーティング層であってもよく、第2面反射防止機能層51は、第2面透明基材層52の外側にコーティングされたコーティング層であってもよい。このように、第1面反射防止機能層41および第2面反射防止機能層51がコーティング層であることにより、第1面反射防止機能層41および第2面反射防止機能層51の厚みを容易に制御することができ、低反射フィルム30の光の反射率や全光線透過率といった所望の機能を容易に制御することができる。
【0051】
第1面反射防止機能層41および第2面反射防止機能層51は、それぞれアクリルモノマーを含む硬化物からなることが好ましい。これにより、短時間の加工によっても均一性が高い第1面反射防止機能層41および第2面反射防止機能層51を形成することができる。
【0052】
ここで、第1面反射防止機能層41は、上述したように、第1面屈折層43と、第1面ハードコート層44とを含んでいる。また、第2面反射防止機能層51は、上述したように、第2面屈折層53と、第2面ハードコート層54とを含んでいる。第1面ハードコート層44は、第1面透明基材層42の外側にコーティングされたコーティング層であってもよく、第1面屈折層43は、第1面ハードコート層44の外側にコーティングされたコーティング層であってもよい。また、第2面ハードコート層54は、第2面透明基材層52の外側にコーティングされたコーティング層であってもよく、第2面屈折層53は、第2面ハードコート層54の外側にコーティングされたコーティング層であってもよい。このように、第1面屈折層43、第1面ハードコート層44、第2面屈折層53および第2面ハードコート層54がコーティング層であることにより、各層の厚みを容易に制御することができ、低反射フィルム30の光の反射率や全光線透過率、場合により色味といった所望の機能を容易に制御することができる。
【0053】
次に、第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54について説明する。
【0054】
{第1面ハードコート層および第2面ハードコート層}
第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54は、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50の耐擦傷性を向上させる役割を果たす。ここで、ハードコートとは、JISK5600-5-4:1999で規定される引っかき硬度(鉛筆法)の測定試験で「H」以上の硬度を示すものをいう。第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54は、例えば、硬化性樹脂組成物を含むハードコート層塗布液から形成することができる。硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物又は電離放射線硬化性樹脂組成物が挙げられ、耐擦傷性の観点から電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0055】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0056】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0057】
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
【0058】
また、多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。また、好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。上記電離放射線硬化性化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。これら光重合開始剤は、融点が100℃以上であることが好ましい。光重合開始剤の融点を100℃以上とすることにより、透明導電膜形成時や結晶化工程の熱により残留した光重合開始剤が昇華し、透明導電膜の低抵抗化が損なわれることを防止することができる。後述する高屈折率層及び低屈折率層で光重合開始剤を用いる際も同様である。また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0060】
第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54の厚みは、それぞれ0.1μm以上100μm以下の範囲にあることが好ましく、0.8μm以上20μm以下の範囲にあることがより好ましい。第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54の厚みが、それぞれ上記範囲内にあれば、充分なハードコート性能が得られ、外部からの衝撃に対してクラック等の発生もなく割れにくくなる。
【0061】
第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54の屈折率は、第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56の屈折率より小さいことが好ましく、1.45以上1.70以下であることがより好ましく、1.45以上1.60以下であることがさらに好ましい。第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54の屈折率がこのような範囲にあれば、第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54が、それぞれ中屈折率層としての役割を有する。これにより、第1面ハードコート層44、第1面高屈折率層46および第1面低屈折率層45の3層による干渉作用、および、第2面ハードコート層54、第2面高屈折率層56および第2面低屈折率層55の3層による干渉作用が可能となる。このため、光の反射を効果的に抑制することができる。また、干渉縞を抑制する観点からは、第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54の屈折率と、第1面透明基材層42および第2面透明基材層52の屈折率との差を小さくすることが好ましい。
【0062】
第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54に中屈折率層としての役割を付与する手段としては、ハードコート層塗布液に屈折率の高い樹脂を配合する手段と、屈折率の高い粒子を配合する手段が挙げられる。屈折率の高い粒子を配合した場合、該粒子の凝集による白化や塗布欠陥が生じる場合があることから、前者の手段(屈折率の高い樹脂を配合)が好ましい。屈折率の高い樹脂としては、上述した熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性化合物に硫黄、リン、臭素を含有する基や芳香環等を導入したものが挙げられる。屈折率の高い粒子としては、後述する第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56に用いる高屈折率粒子と同様のものを用いることができる。
【0063】
第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54等の各層の屈折率は、例えば、反射光度計により測定した反射スペクトルと、フレネル係数を用いた多層薄膜の光学モデルから算出した反射スペクトルとのフィッティングにより算出することができる。
【0064】
第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54は、上述した硬化性樹脂組成物、必要に応じて配合する紫外線吸収剤やレベリング剤等の添加剤及び希釈溶剤によってハードコート層形成用塗布液を調整し、当該塗布液を透明基材上に従来公知の塗布方法によって塗布、乾燥、必要に応じて電離放射線を照射して硬化することにより形成することができる。
【0065】
{第1面屈折層および第2面屈折層}
次に、第1面屈折層43および第2面屈折層53について説明する。第1面屈折層43および第2面屈折層53は、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50の光の反射率を低下させる役割を果たす。第1面屈折層43は、上述したように、第1面低屈折率層45と、第1面高屈折率層46とを含んでいる。また、第2面屈折層53は、上述したように、第2面低屈折率層55と、第2面高屈折率層56とを含んでいる。ここでは、まず、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55について説明する。なお、図2A図2B等に示すように、第1面屈折層43および第2面屈折層53がそれぞれ単層で構成されている場合、第1面屈折層43は、第1面低屈折率層45のみによって構成されていてもよく、第2面屈折層53は第2面低屈折率層55のみによって構成されていてもよい。
【0066】
(第1面低屈折率層および第2面低屈折率層)
第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55は、それぞれ第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56の外側に設けられる層であり、第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56との屈折率の差を用いて、干渉作用により第1面反射防止層40および第2面反射防止層50の光の反射率を低下させる役割を果たす。第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55は、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50を超低反射率とするために、屈折率が1.26以上1.40以下であることが好ましく、1.28以上1.38以下であることがより好ましく、1.30以上1.32以下であることがさらに好ましい。第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の屈折率を低くすれば低くするほど、第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56の屈折率をそれほど高くしなくても第1面反射防止層40および第2面反射防止層50の屈折率を低くすることができる。その一方、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の屈折率を低くし過ぎると、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の強度が低下する傾向にある。このため、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の屈折率をそれぞれ上記範囲とすることにより、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の強度を保ちつつ、第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56の後述する高屈折率粒子の添加量を抑えることができ、色味及び白化の抑制につながる点で好適である。また、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の厚みは、それぞれ80nm以上120nmであることが好ましく、85nm以上110nmであることがより好ましく、90nm以上105nmであることがさらに好ましい。また、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55は、それぞれ上記屈折率の範囲を満たす複数の層から形成してもよいが、費用対効果の観点から、2層以下が好ましく、単層がより好ましい。
【0067】
第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55を形成する手法としては、ウェット法とドライ法とに大別できる。ウェット法としては、金属アルコキシド等を用いてゾルゲル法により形成する手法、フッ素樹脂のような低屈折率の樹脂を塗工して形成する手法、樹脂組成物に低屈折率粒子を含有させた低屈折率層形成用塗布液を塗工して形成する手法が挙げられる。ドライ法としては、後述する低屈折率粒子の中から所望の屈折率を有する粒子を選び、物理気相成長法又は化学気相成長法により形成する手法が挙げられる。ウェット法は生産効率の点で優れており、本実施の形態においては、ウェット法の中でも、樹脂組成物に低屈折率粒子を含有させた低屈折率層形成用塗布液により形成することが好ましい。
【0068】
低屈折率粒子は、その屈折率を低下させるため、すなわち反射防止特性を向上させる目的で、好ましく用いられ、シリカやフッ化マグネシウムなどの無機系、又は有機系のいずれであっても制限なく用いることができるが、反射防止特性をより向上させ、かつ良好な表面硬度を確保する観点から、それ自身が空隙を有する構造の粒子が好ましく用いられる。
【0069】
それ自身が空隙を有する構造をもつ粒子は、微細な空隙を内部に有しており、例えば、屈折率1.0の空気などの気体が充填されているので、それ自身の屈折率が低いものとなっている。このような空隙を有する粒子としては、無機系、又は有機系の多孔質粒子、中空粒子などが挙げられ、例えば、多孔質シリカ、中空シリカ粒子、又はアクリル樹脂などが用いられた多孔質ポリマー粒子や中空ポリマー粒子が挙げられる。無機系の粒子としては、特開2001-233611号公報で開示される技術を用いて調製した空隙を有するシリカ粒子などが好ましい一例として挙げられる。また、有機系の粒子としては、特開2002-80503号公報で開示される技術を用いて調製した中空ポリマー粒子などが好ましい一例として挙げられる。上記のような空隙を有するシリカ、又は多孔質シリカは、それらの屈折率が1.18以上1.44以下の範囲にあり、屈折率が1.45程度である一般的なシリカ粒子よりも屈折率が低いため、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の低屈折率化を図る観点から好ましい。
【0070】
中空状シリカ粒子は、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の塗膜強度を保持しつつ、その屈折率を下げる機能を有する粒子である。本実施の形態で用いる中空状シリカ粒子は、内部に空洞を有する構造のシリカ粒子である。中空状シリカ粒子は、シリカ粒子本来の屈折率(屈折率n=1.45程度)に比べて、内部の空洞の占有率に反比例して屈折率が低下するシリカ粒子である。このため、中空状シリカ粒子の粒子全体としての屈折率は1.18以上1.44以下となる。
【0071】
中空状シリカ粒子としては、特に限定されず、例えば、外殻を有し、その内部が多孔質または空洞になっている粒子であり、特開平6-330606号公報、特開平7-013137号公報、特開平7-133105号公報、特開2001-233611号公報で開示されている技術を用いて調製したシリカ粒子が挙げられる。
【0072】
低屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径は、5nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがより好ましく、10nm以上80nm以下であることがさらに好ましい。一次粒子の平均粒子径が上記範囲内にあれば、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の透明性を損なうことがなく、良好な粒子の分散状態が得られる。特に、低屈折率粒子として中空状粒子を用い、該中空状粒子の平均粒子径が70nm以上80nm以下のものは、強度不足とならない外殻の厚みを保持しつつ空隙率を上げて屈折率を低下させることができ、かつ反射率を低くするための、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の理想的な厚み(約100nm)とのバランスにも優れる点で好適である。
【0073】
本実施の形態で用いられる低屈折率粒子は、表面処理されたものが好ましい。低屈折率粒子の表面処理としては、シランカップリング剤を用いた表面処理がより好ましく、この中で、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤を用いた表面処理を行うことが好ましい。低屈折率粒子に表面処理を施すことにより、後述するバインダー樹脂との親和性が向上し、粒子の分散が均一となり、粒子同士の凝集が生じにくくなるので、凝集由来の大粒子化による第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の透明化の低下や、層形成用組成物の塗布性、該組成物の塗膜強度の低下が抑制される。
【0074】
また、シランカップリング剤が(メタ)アクリロイル基を有した場合、該シランカップリング剤は電離放射線硬化性を有するため、後述するバインダー樹脂と容易に反応するので、層形成用組成物の塗膜中において、低屈折率粒子がバインダー樹脂に良好に固定される。すなわち、低屈折率粒子がバインダー樹脂中で架橋剤としての機能を有することになる。これにより、該塗膜全体の引き締め効果が得られ、バインダー樹脂が本来有する柔軟性を残したまま、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55に優れた表面硬度を付与することが可能となる。従って、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55がそれ自体の柔軟性をいかして変形することにより、外部衝撃に対する吸収力や、復元力を有するため、傷の発生が抑制されて、耐擦傷性に優れた高い表面硬度を有するものとなる。
【0075】
低屈折率粒子の表面処理において好ましく用いられるシランカップリング剤としては、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0076】
第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55における低屈折率粒子の含有量は、それぞれ第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55の樹脂100質量部に対して10質量部以上250質量部以下であることが好ましく、50質量部以上200質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上180質量部以下であることがさらに好ましい。低屈折率粒子の含有量が上記範囲内にあれば、良好な反射防止特性と表面硬度とが得られる。また、第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55に含まれる全低屈折率粒子に占める中空粒子及び/又は多孔質粒子の割合は、それぞれ70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0077】
層形成用塗布液に含まれる樹脂組成物としては、まず硬化性樹脂組成物が挙げられる。硬化性樹脂組成物としては、第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54の説明で例示したものと同様のものを用いることができ、電離放射線硬化性樹脂組成物が好適である。また、樹脂組成物として、それ自体が低屈折率性を示す含フッ素ポリマーやフッ素モノマーも好ましく用いられる。含フッ素ポリマーは、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物の重合体であり、防汚性及び滑り性を付与できる点で好適である。含フッ素ポリマーは、分子中に反応性基を有して硬化性樹脂組成物として機能するものが好ましく、電離放射線硬化性反応性基を有して電離放射線硬化性樹脂組成物として機能するものがより好ましい。
【0078】
含フッ素ポリマーとしては、低屈折率層表面の汚れをはじくだけではなく、はじいた汚れの拭取り性を付与するために、フッ素とともにケイ素を含むものが好ましく、例えば、共重合体にシリコーン成分を含有させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体が好ましく挙げられる。この場合のシリコーン成分としては、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサンや、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、メタクリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。なかでも、ジメチルシロキサン構造を有するものが好ましい。
【0079】
第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55は、例えば、低屈折率粒子、樹脂組成物、必要に応じて配合する紫外線吸収剤やレベリング剤等の添加剤及び希釈溶剤によって層形成用塗布液を調整し、当該塗布液を第1面高屈折率層46または第2面高屈折率層56の外側に従来公知の塗布方法によって塗布、乾燥、必要に応じて電離放射線を照射して硬化することにより形成することができる。
【0080】
(第1面高屈折率層および第2面高屈折率層)
第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56は、それぞれ第1面低屈折率層45および第2面低屈折率層55との屈折率の差を用いて、干渉作用により第1面反射防止層40および第2面反射防止層50の光の反射率を低下させる役割を果たす。第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56は、それぞれ、例えば、硬化性樹脂組成物及び高屈折率粒子を含む層形成用塗布液から形成することができる。
【0081】
第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56は、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50を超低反射率化する観点からは屈折率を高くすることが好ましいが、屈折率を高くするには多量の高屈折率粒子が必要となり、高屈折粒子の凝集を招き、白化の原因となる。このため、屈折率は1.55以上1.85以下とすることが好ましく、1.56以上1.70以下とすることがより好ましい。また、第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56の厚みは、200nm以下であることが好ましく、50nm以上180nm以下であることがより好ましい。なお、第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56が、それぞれ後述する2層構成からなる場合、2層の合計厚みが前記値を満たすことが好ましい。また、第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56は、上記屈折率の範囲を満たす複数の層から形成してもよいが、費用対効果の観点から、2層以下が好ましく、単層がより好ましい。
【0082】
高屈折率粒子としては、五酸化アンチモン(1.79)、酸化亜鉛(1.90)、酸化チタン(2.3以上2.7以下)、酸化セリウム(1.95)、スズドープ酸化インジウム(1.95以上2.00以下)、アンチモンドープ酸化スズ(1.75以上1.85以下)、酸化イットリウム(1.87)及び酸化ジルコニウム(2.10)等が挙げられる。なお、上記かっこ内は、各粒子の材料の屈折率を示す。これら高屈折率粒子の中では、少量の添加で上記の好適な屈折率を達成する観点から、屈折率が2.0を超えるものが好ましい。また、五酸化アンチモン、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等の導電性を有する高屈折率粒子は、プラズマ振動数が近赤外域にある自由電子を有し、該自由電子のプラズマ振動を原因として、可視光域の光も一部吸収ないしは反射され、色味を抑制しづらくなる場合がある。このため、高屈折率粒子は非導電性のものが好ましい。以上のことから、上記に例示した高屈折率粒子の中では、酸化チタン及び酸化ジルコニウムが好適であり、さらに耐光性等の耐久安定性が高いという観点から、酸化ジルコニウムが最適である。なお、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50に帯電防止性を付与したい場合は、第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56を後述のように2層構成として、一方の層に導電性の高屈折率粒子を含有させることが好ましい。
【0083】
高屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径は、5nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがより好ましく、10nm以上80nm以下であることがさらに好ましい。高屈折率粒子及び後述する低屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径は、以下の(1)~(3)の作業により算出できる。
(1)粒子そのもの、または粒子の分散液を透明基材上に塗布乾燥させたものについて、SEM、TEMまたはSTEMの表面像を撮像する。
(2)表面像から任意の10個の粒子を抽出し、個々の粒子の長径及び短径を測定し、長径及び短径の平均から個々の粒子の粒子径を算出する。なお、長径は、画面上において最も長い径とし、短径は、長径を構成する線分の中点に直交する線分を引き、該直交する線分が粒子と交わる2点間の距離をいうものとする。
(3)同じサンプルの別画面の撮像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子の粒子径の数平均から得られる値を平均粒子径とする。
なお、粒子の平均粒子径を算出する際において、算出する平均粒子径がμmオーダーの場合、SEMを用いることが好ましく、算出する平均粒子径がnmオーダーの場合、TEM又はSTEMを用いることが好ましい。SEMの場合、加速電圧は1kV以上10kV以下、倍率は1000倍以上7000倍以下とすることが好ましく、TEM又はSTEMの場合、加速電圧は10kV以上30kV以下、倍率は5万以上30万倍以下とすることが好ましい。
【0084】
高屈折率粒子の含有量は、高屈折率化、色味抑制及び白化抑制のバランスの観点から、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、30質量部以上400質量部以下であることが好ましく、50質量部以上200質量部以下であることがより好ましく、80質量部以上150質量部以下であることがさらに好ましい。
【0085】
第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56は、高屈折粒子の過度な凝集を抑制するために、分散安定化することが好ましい。分散安定化の手段としては、例えば、ベースとなる高屈折粒子に対して、該粒子よりも表面電荷量が少ない別の高屈折率粒子を添加する手段が挙げられる。該手段によれば、該別の高屈折率粒子の周りにベースとなる高屈折率粒子が適度に集まり、ベースとなる高屈折粒子が過度に凝集することを抑制できる。また、別の分散安定化の手段として、高屈折率粒子として表面処理されたものを用いたり、層形成用塗布液中に分散剤を添加したりする手段が挙げられる。
【0086】
第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56を形成する硬化性樹脂組成物としては、第1面ハードコート層44および第2面ハードコート層54の説明で例示したものと同様のものを用いることができ、電離放射線硬化性樹脂組成物が好適である。また、高屈折率粒子の添加量を過度にすることなく上述した屈折率を得るために、屈折率の高い硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。硬化性樹脂組成物の屈折率は1.54以上1.70以下程度が好ましい。
【0087】
ここで、上述したように、第1面高屈折率層46は、第1の第1面高屈折率層47と、第2の第1面高屈折率層48とを含んでいてもよい。この場合、第1の第1面高屈折率層47の屈折率は、第2の第1面高屈折率層48の屈折率よりも高くすることが好ましい。これにより、第1面高屈折率層46と第1面低屈折率層45との間の屈折率差を大きくでき、第1面反射防止層40の反射率を低くできるとともに、第1面高屈折率層46と第1面ハードコート層44との屈折率差を小さくでき、干渉縞の発生を抑制できる。
【0088】
また、上述したように、第2面高屈折率層56は、第1の第2面高屈折率層57と、第2の第2面高屈折率層58とを含んでいてもよい。この場合、第1面高屈折率層46の場合と同様に、第1の第2面高屈折率層57の屈折率は、第2の第2面高屈折率層58の屈折率よりも高くすることが好ましい。これにより、第2面高屈折率層56と第2面低屈折率層55との間の屈折率差を大きくでき、第2面反射防止層50の反射率を低くできるとともに、第2面高屈折率層56と第2面ハードコート層54との屈折率差を小さくでき、干渉縞の発生を抑制できる。
【0089】
また、第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56をそれぞれ2層構成とする場合、第1の第1面高屈折率層47および第1の第2面高屈折率層57の屈折率は、それぞれ1.60以上1.85以下であることが好ましく、第2の第1面高屈折率層48および第2の第2面高屈折率層58の屈折率は、それぞれ1.55以上1.70以下であることが好ましい。さらに、上記2層構成において、一方の層に導電性の高屈折率粒子を含有させ、他方の層に非導電性の高屈折率粒子を含有させ、かつ、[導電性高屈折率粒子を含有する層の厚み<非導電性高屈折率粒子を含有する層の厚み]とすることが好ましい。当該構成とすることにより、色味の原因となり得る導電性高屈折率粒子の添加量を抑えつつ帯電防止性を付与することができる。また、導電性高屈折率粒子は、層内でネットワーク化させることにより、少ない添加量で帯電防止性を付与し、ひいては色味及び白化を抑制し得る点で好ましい。
【0090】
第1面高屈折率層46および第2面高屈折率層56は、高屈折率粒子、硬化性樹脂組成物、必要に応じて配合する紫外線吸収剤やレベリング剤等の添加剤及び希釈溶剤によって層形成用塗布液を調整し、当該塗布液を第1面ハードコート層44または第2面ハードコート層54の外側に従来公知の塗布方法によって塗布、乾燥、必要に応じて電離放射線を照射して硬化することにより形成することができる。
【0091】
[透明接着層並びに第1透明接着層および第2透明接着層]
透明接着層31、第1透明接着層31aおよび第2透明接着層31bといった透明接着層は、第1面反射防止層40、第2面反射防止層50、コア層32などを互いに接着するための層である。ここで、本明細書における「透明接着層」は、透明粘着層を含む概念である。透明接着層は、一般に粘着剤として用いられる様々なものを用いて形成することができる。例として、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤を挙げることができる。透明性が高く粘着力を大きくすることのできるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0092】
上記の各粘着剤は、透明度を阻害しない範囲で各種の機能化剤や安定化剤等を含有することができる。また、粘着付与剤を配合して粘着力を高めることもできる。また、それぞれの樹脂に合わせてイソシアネート、エポキシ、二重結合含有化合物などの架橋剤を用いて架橋構造とすることができる。
【0093】
透明接着層は、両面を剥離フィルムでラミネートしてあるタイプの粘着剤(OCA、Optical Clear Adhesive)を用いて形成することもできる。市販品を使用することもでき、例えば、光学用透明粘着シートLUCIACSシリーズ(日東電工株式会社製)、高透明両面テープ5400Aシリーズ(積水化学工業株式会社製)、光学粘着シートOpteriaシリーズ(リンテック株式会社製)、SANCUARYシリーズ(株式会社サンエー化研製)、光学透明粘着OADシリーズ(東洋包材株式会社製)、光学用芯無両面テープRAシリーズ(株式会社スミロン製)、パナクリーンシリーズ PD-S1(パナック株式会社製)等を挙げることができる。これら粘着剤の粘着力は一般的に10N/25mm以上である。
【0094】
透明接着層の厚みは、特に限定されないが、例えば、2μm以上200μm以下となっていることが好ましい。透明接着層の膜厚が2μm以上であれば、第1面反射防止層40と第2面反射防止層50等とを確実に接合することができ、また透明接着層の膜厚が200μm以下であれば、透明性(光透過性)を維持できる。透明接着層の膜厚の下限は、5μm以上、10μm以上、または15μm以上であることがより好ましく、上限は、150μm以下、160μm以下、または170μm以下であることがより好ましい。
【0095】
透明接着層の形成方法としては、特に限定されず、粘着テープ等の製造に用いられる公知の方法を採用することができる。具体的には、上記の透明接着層を形成する各成分を適当な有機溶剤または水に溶解または分散させた粘着剤組成物の塗料を、基材の表面に塗工し、乾燥および硬化する方法、上記の透明接着層を形成する各成分、二重結合含有モノマー、オリゴマー、架橋剤等を無溶剤で基材に塗工した後、放射線等で架橋する方法、押し出しラミネート方法などの任意の方法で形成することができる。
【0096】
OCAを用いる場合は、OCAの軽剥離側の剥離フィルムを剥がして粘着面を基材に貼り合わせるという方法で透明接着層を形成することができる。
【0097】
[コア層]
コア層32は、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50を支持する役割を果たす。コア層32は、ポリエチレンテレフタレートを含んでいることが好ましい。なお、コア層32の材料としては、上述した第1面透明基材層42および第2面透明基材層52の材料と同様のものを用いることができる。
【0098】
コア層32の厚みについては、特に制限はなく、用途に応じて適宜選択される。コア層32の厚みは、5μm以上130μm以下程度であってもよく、耐久性やハンドリング性等を考慮すると、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0099】
[印刷層]
印刷層33は、文字や絵柄等の印刷が施された層であり、低反射フィルム30に印刷領域35を形成するための層である。印刷層33としては、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。このようなインキビヒクルとしては、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。印刷方法は、グラビア印刷のほか、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷その他の印刷方式であってもよい。
【0100】
上述した低反射フィルム30は、膜厚が500μm以下であることが好ましい。また、上述した低反射フィルム30は、膜厚が60μm以上であってもよい。低反射フィルム30の膜厚が60μm以上であることにより、低反射フィルム30の形状を維持できるコシ、強度が得られる。これによって、後述する支持部付き低反射フィルム100、書籍用カバー81、書籍82などの多様な用途において低反射フィルム30を用いることができる。また、低反射フィルム30の厚みが500μm以下であることにより、低反射フィルム30の透明領域34の透明性を向上させることができる。低反射フィルム30は、膜厚が300μm以下であってもよく、250μm以下であってもよい。
【0101】
また、上述した低反射フィルム30は、復元性機能を有していることが好ましい。これにより、低反射フィルム30を折り曲げたり丸めたりした際に、低反射フィルム30は、平坦な形状に復元することができる。ここで、復元性機能とは、対象物(低反射フィルム30)を一定時間屈曲させた後であっても、屈曲させられた対象物に折り目が形成されることなく、対象物が平坦な形状に復元する機能を意味する。
【0102】
上記した低反射フィルム30は、例えば曲げ応力が6N/20mm以下である。なお、低反射フィルム30の曲げ応力は、以下の方法によって測定される。まず、低反射フィルム30から、20mm×50mmサイズのサンプルSを切り出す。また、測定器73を準備する。測定器73としては、引張圧縮試験機(A&D社製、MCT-2150)を用いることができる。図2Lに示すように、この測定器73は、一対の支持台71と、圧子72とを備えている。そして、一対の支持台71を互いに離間して配置し、この支持台71上にサンプルSを載置する。次に、圧子72をサンプルSに押し当てることにより、サンプルSを変形させる。そして、圧子72の先端と支持台71の上端との間の距離(すなわち、サンプルSの変形量)D2が2mmとなった際に、圧子72に加えられている荷重を、低反射フィルム30の曲げ応力とする。一対の支持台71間の距離は10mmとすることができる。支持台71としては、支持台71が互いに離間する方向および上下方向に沿った断面において、上端形状が半径5mmの半円形をもつ支持台71を用いることができる。また、圧子72としては、支持台71が互いに離間する方向および上下方向に沿った断面において、先端形状が半径5mmの半円形をもつ、支持台71と同様の部材を用いることができる。
【0103】
ここで、可視光反射率は、JISR3106:2019に準拠し、以下の方法により測定することができる。まず、低反射フィルム30の第1面301または第2面302に、入射角が5°となるように光を照射する。そして、入射光の正反射光に基づいて可視光反射率を測定することができる。ここで、本明細書において、可視光反射率は、JISR3106:2019に準拠して、380nmから780nmまでの波長を含む光を照射して、波長380nmから780nmまでの10nmごとに取得したスペクトルデータをもとに計算されるものである。
【0104】
低反射フィルム30の透明領域34における可視光反射率は、2%以下である。すなわち、上述したように、低反射フィルム30の透明領域34の中央領域30eに第1面301側から入射する可視光の正反射率は、2%以下である。低反射フィルム30の透明領域34に第1面301側から入射する可視光の正反射率は、以下のようにして測定する。まず、低反射フィルム30の透明領域34から、30mm×30mmサイズのサンプルを切り出す。次いで、サンプルの表面(低反射フィルム30の第1面301を形成していた面)に対して、入射角が5°となるように光を照射する。このとき、サンプルの表面に対して、380nmから780nmまでの波長を含む光を照射する。そして、分光光度計(日本分光株式会社社製、V-7100)を用いて、波長380nmから780nmまでの10nmごとに光の反射スペクトルを測定し、取得したスペクトルデータを元に、可視光反射率を算出する。
【0105】
また、低反射フィルム30の可視光透過率(JISR3106:2019)が90%以上であることが好ましい。低反射フィルム30の可視光透過率は、以下のようにして測定する。まず、低反射フィルム30から、30mm×30mmサイズのサンプルを切り出す。次に、サンプルの表面に対して、入射角が5°となるように、380nmから780nmまでの波長を含む光を照射する。そして、分光光度計(日本分光株式会社社製、V-7100)を用いて、5°の角度、すなわち入射角と同じ角度で低反射フィルム30を透過した光の透過スペクトルを測定する。光の透過スペクトルの測定は、380nmから780nmまでの10nmずつ異なる波長の全てにおいて行う。そして、測定された透過スペクトルに基づいて、可視光透過率を算出する。低反射フィルム30の可視光透過率が90%以上であることにより、低反射フィルム30を第1面301側から見た場合の視認性を更に向上させつつ、低反射フィルム30を第2面302側から見た場合の視認性を更に向上できる。また、低反射フィルム30は、可視光透過率が、92%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。また、低反射フィルム30は、ヘイズ(JISK7136:2000)が3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることが更に好ましい。
【0106】
上述したような低反射フィルム30によれば、低反射フィルム30の透明領域34における光の反射が抑制される。また、上述したような低反射フィルム30によれば、透明領域34における透明性が確保される。これによって、低反射フィルム30の観察者が、低反射フィルム30の透明領域34の存在を認識しにくくなる。このような低反射フィルム30によれば、低反射フィルム30の意匠性を向上できる。
【0107】
ここで、低反射フィルム30は、外縁30aの近傍において特に視認されやすくなる懸念がある。例えば、低反射フィルム30を切断することによって低反射フィルム30に外縁30aを形成した際に、外縁30aの近傍において、低反射フィルム30による光の反射を抑制する機能が損なわれる可能性がある。例えば、低反射フィルム30の面が平滑にならない可能性がある。特に、外縁30aの近傍が粗い形状となる可能性がある。また、外縁30aの近傍に、曲面が形成される可能性もある。これらの場合、外縁30a近傍において光が乱反射されることによって、低反射フィルム30が外縁30aの近傍において視認されやすくなる懸念がある。また、低反射フィルム30を切断することによって低反射フィルム30に外縁30aを形成した際に、外縁30aの近傍において第1面反射防止層40又は第2面反射防止層50が損傷し、これによって低反射フィルム30による光の反射を抑制する機能が損なわれる可能性もある。低反射フィルム30が外縁30aの近傍において視認されやすいと、低反射フィルム30を用いて多様な表現を実現することが妨げられるおそれがある。一例として、印刷領域35に形成された文字や絵柄等が空中に浮いているような印象を観察者に与えることを意図して、本実施の形態の低反射フィルム30を用いた場合について考える。この場合に、低反射フィルム30が外縁30aの近傍において視認されることによって、観察者に当該印象を与えることが妨げられるおそれがある。
【0108】
本件の発明者らは、外縁30aの近傍において視認されにくい低反射フィルム30について鋭意研究を重ねた結果、近傍において視認されにくい外縁30aの特徴を見出した。以下、本実施の形態の低反射フィルム30の外縁30aの近傍の特徴について説明する。
【0109】
図3Aは、図1において符号IIIAが付された一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す平面図である。低反射フィルム30に低反射フィルム30の面に垂直な光を照射した場合に、反射光の強度は、粗い形状になり得る外縁30aの近傍において特に大きくなり、外縁30aから遠ざかるにつれて小さくなりやすいと考えられる。このため、低反射フィルム30には、外縁30aに沿って、反射光の強度の大きな領域が形成されると考えられる。ここで、低反射フィルム30に低反射フィルム30の面に垂直な光を照射した場合に、正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域であって、外縁30aの延びる方向に延び、かつ外縁30aからの距離が100μm以下である領域を、第1外縁領域30dと定める。特に本実施の形態では、以下のように第1外縁領域30dを定める。低反射フィルム30に、低反射フィルム30の第1面301に垂直な光を照射して、低反射フィルム30の第1面301側から、かつ低反射フィルム30の第1面301に垂直な方向から低反射フィルム30を観察する。この場合に見出される、第1面301側で正反射した可視光である反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eの第1面301側で正反射した可視光である反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域であって、外縁30aの延びる方向に延び、かつ外縁30aからの距離が100μm以下である領域を、第1外縁領域30dと定める。
【0110】
なお、ここで言う「正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域」は、外縁30aの延びる方向に直交する方向において連続的に、正反射した反射光の強度が、低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となっている領域である。
【0111】
また、領域について「外縁30aからの距離が100μm以下」とは、当該領域の最も外縁30aに近い部分の外縁30aからの距離が100μm以下であることを意味する。図3Aにおいて、第1外縁領域30dは、外縁30aに沿って形成されている。図3Aにおいて、第1外縁領域30dは、外縁30aに接している。換言すれば、第1外縁領域30dと外縁30aとの距離は0となっている。
【0112】
また、低反射フィルム30の外縁30aの一部が印刷領域35によって形成されている場合など、外縁30aの近傍に印刷領域35が位置する場合には、以下のように第1外縁領域30dを定める。正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域であって、外縁30aの延びる方向に延び、かつ外縁30aからの距離が100μm以下である領域の、透明領域34によって形成されている部分を、第1外縁領域30dと定める。
【0113】
上記のように第1外縁領域30dを定めるとき、本実施の形態の低反射フィルム30において、第1外縁領域30dの幅W1は、100μmより小さい。なお、図3Aに示す例において、第1外縁領域30dの幅W1は、外縁30aの延びる方向において一定となっている。図示はしないが、第1外縁領域30dの幅W1は、外縁30aの延びる方向において一定でなくてもよい。外縁30aの全体にわたって、第1外縁領域30dの幅W1が、100μmより小さくてもよい。後述するように、低反射フィルム30が、外縁30aの一部が露出するように支持部70によって支持される場合には、外縁30aの露出する部分に沿って形成される第1外縁領域30dの幅W1が、100μmより小さくてもよい。なお、幅W1が100μmより小さい場合には、幅W1が0である場合、すなわち低反射フィルム30に第1外縁領域30dが形成されていない場合も含まれる。第1外縁領域30dの幅W1が100μmより小さいことによって、外縁30aに沿って形成される反射光の強度の大きな領域である第1外縁領域30dの幅W1が、十分に狭くなる。
【0114】
通常、正反射した反射光の強度が中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域である第1外縁領域30dは、外方からの観察において、白色に見える。そして、このような白色に見える領域が、低反射フィルム30の外縁30aの近傍に大きな幅を持って現れると、低反射フィルム30の外縁30aが目立つため、低反射フィルム30の存在が目立ってしまう。本実施の形態によれば、正反射した反射光の強度が中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域である第1外縁領域30dの幅W1を100μmより小さく抑えるため、低反射フィルム30の外縁30aおよび低反射フィルム30の存在自体が目立つことが抑制される。このため、低反射フィルム30の存在を目立たせることなく、観察者に対して、印刷領域35に形成された文字や絵柄等が空中に浮いているような印象を与えることができる。このように、第1外縁領域30dの幅W1が100μmより小さい低反射フィルム30によれば、低反射フィルム30が外縁30aの近傍において視認されにくくなり、低反射フィルム30を用いて多様な表現を実現できる。
【0115】
なお、外縁30aの近傍の領域との間で反射光の強度を比較される中央領域30eは、低反射フィルム30の透明領域34の、外縁30aから十分離れた位置にある領域である。中央領域30eとして、例えば外縁30aから1cm以上離れた、低反射フィルム30に傷のない領域を選択できる。
【0116】
低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域における正反射した反射光の強度の、中央領域30eから正反射した反射光の強度に対する比率は、以下の方法により算出される。まず、低反射フィルム30の第1面301側に、低反射フィルム30の第1面301に垂直な光を照射しつつ、低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域及び中央領域30eのデジタル写真を撮影する。デジタル写真の撮影は、低反射フィルム30の第1面301側から、かつ低反射フィルム30の第1面301に垂直な方向から行う。デジタル写真の撮影は、光学顕微鏡などを用いて拡大した外縁30aの近傍の領域及び中央領域30eの像を撮影することにより、行うことができる。この場合、光学顕微鏡の備える光源によって、低反射フィルム30の第1面301側に、低反射フィルム30の第1面301に垂直な光が照射され得る。その後に、撮影されたデジタル写真を解析して、低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域及び中央領域30eにおける輝度値を取得する。デジタル写真の解析による輝度値の取得は、画像処理ソフトウェアのImageJを用いて行うことができる。これによって、低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域の輝度値の中央領域30eの輝度値に対する比率を取得できる。取得された輝度値を、正反射した反射光の強度とみなすことができる。また、取得された輝度値の比率を、低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域における正反射した反射光の強度の、中央領域30eから正反射した反射光の強度に対する比率とみなすことができる。すなわち、第1外縁領域30dは、この輝度値の比率が1.2以上となる領域として特定できる。なお、この輝度値の比率の測定方法として、より具体的には、後述する実施例の「(1)第1外縁領域の幅の測定試験」における輝度値の比率の測定方法を採用できる。また、第1外縁領域30dの幅W1の測定方法として、後述する実施例の「(1)第1外縁領域の幅の測定試験」における第1外縁領域30dの幅W1の測定方法を採用できる。
【0117】
また、低反射フィルム30に低反射フィルム30の第2面302に垂直な光を照射した場合に外縁30aに沿って形成される、第2面302側で正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eの第2面302側で正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域であって、外縁30aの延びる方向に延び、かつ外縁30aからの距離が100μm以下である領域の幅が、100μmより小さくてもよい。すなわち、低反射フィルム30に低反射フィルム30の第2面302に垂直な光を照射して、低反射フィルム30の第2面302側において、第1外縁領域30dの条件を満たす領域を考えたときに、当該領域の幅が、100μmより小さくてもよい。
【0118】
また、外縁30aに沿った5mm幅をもつ帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値が、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値と比べて2.0倍以下となることが、より好ましい。ここで、「複数方向から光が照射される環境」とは、低反射フィルム30に光が照射される方向が一方向に限定されない環境であれば、特に限られない。複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定においては、反射光の強度を測定する基準位置として、光源からの入射光が低反射フィルム30の面で正反射した上で到達することがない位置を選択できる。例えば照明が点灯した一般的な室内であり、特に天井に点灯した蛍光灯を有する、一般的な明るさの室内である。また、「帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度」は、低反射フィルム30の第1面301側から、かつ低反射フィルム30の第1面301に垂直な方向から帯状領域30fを観察した場合における、可視光の反射光の強度である。帯状領域30fは、外縁30aに接し、外縁30aの延びる方向に延び、かつ外縁30aの延びる方向に直交する方向における幅が5mmの領域である。より具体的には、第1面301側での帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値が、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値と比べて2.0倍以下となることが好ましい。
【0119】
外縁30aに沿った5mm幅をもつ帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値が、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値と比べて2.0倍以下となることによって、以下の効果が得られる。外縁30aからの距離が5mm以下の位置の、特に外縁30aの近傍においては、正反射した反射光の強度のみならず、拡散反射した反射光の強度も大きくなりやすい。例えば、低反射フィルム30の外縁30aの近傍が粗い形状になることによって、外縁30aの近傍において光が乱反射されることによって、外縁30aの近傍において、拡散反射した反射光の強度が大きくなることが想定される。ここで、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度は、正反射した反射光の強度と、拡散反射した反射光の強度との和となっていると考えられる。このため、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値が、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値と比べて2.0倍以下となることによって、反射光の強度が特に大きくなりやすい当該位置において、正反射した反射光の強度と拡散反射した反射光の強度との両方が十分に小さくなることが特定される。これによって、低反射フィルム30が外縁30aの近傍において、より視認されにくくなる。
【0120】
帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値の、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値に対する比率の測定方法としては、後述する実施例の「(5)複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験」における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の比率の測定方法を採用できる。
【0121】
また、第2面302側での帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値が、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値と比べて2.0倍以下となることが好ましい。
【0122】
(支持部付き低反射フィルム)
次に、上述の低反射フィルム30が用いられた支持部付き低反射フィルム100について説明する。図3Bは、支持部付き低反射フィルム100の一例を示す斜視図である。図3Cは、支持部付き低反射フィルム100の別の一例を示す斜視図である。図3Bおよび図3Cに示すように、支持部付き低反射フィルム100は、低反射フィルム30と、低反射フィルム30を支持する支持部70と、を備える。
【0123】
支持部70は、低反射フィルム30の外縁30aの少なくとも一部が露出するように、低反射フィルム30を支持する。図3B及び図3Cに示す例において、支持部70は、低反射フィルム30の外縁30aを形成する辺の少なくとも1つが露出するように、低反射フィルム30を支持している。図3B及び図3Cに示す例において、支持部70は、矩形の形状の低反射フィルム30の外縁30aを形成する辺の1つを保持している。図3Bに示す例において、支持部70は、低反射フィルム30の下縁30b2を保持している。図3Cに示す例において、支持部70は、低反射フィルム30の上縁30b1を保持している。これによって、支持部70は、低反射フィルム30の外縁30aを形成する辺の3つが露出するように、低反射フィルム30を支持している。
【0124】
なお、上述したように、低反射フィルム30は、膜厚を大きくすること、特に膜厚を60μm以上とすることによって、低反射フィルム30の形状を維持できるコシ、強度が得られる。このようにコシ、強度が確保された低反射フィルム30を用いることによって、図3B及び図3Cに示すような外縁30aを形成する辺の1つのみを保持する支持部70によって、低反射フィルム30を支持できる。
【0125】
図3Bに示す例において、支持部70は、溝部79が形成された棒状の部材である。支持部70の溝部79には、低反射フィルム30の下縁30b2が差し込まれる。また、図3Bに示す例において、低反射フィルム30は、支持部70によって緩く保持されている。特に、低反射フィルム30は、支持部70に対して移動可能な状態で、支持部70に支持されている。
【0126】
図3Bに示す例において、支持部70は、湾曲している。特に、支持部70は、S字状に湾曲している。図3Bに示す例において、支持部70は、単一の部材によって構成されている。
【0127】
図3Bに示すように、支持部70に、低反射フィルム30の一対の第2辺30bのうち、下方に位置する第2辺30b(下縁30b2)が差し込まれる溝部79が形成されている。この溝部79は、水平方向に沿って延びている。また、溝部79は、低反射フィルム30が差し込まれる方向からの観察において、湾曲している。図示された例において、溝部79は、S字状に湾曲している。
【0128】
また、図3Bに示すように、低反射フィルム30と溝部79との間に、隙間が形成されている。具体的には、低反射フィルム30の厚み方向において、低反射フィルム30と溝部79との間に、隙間が形成されている。このように、低反射フィルム30が、遊びを持った状態で、溝部79に差し込まれている。これにより、低反射フィルム30が、支持部70に対して移動可能な状態で、支持部70に支持されている。なお、この場合、低反射フィルム30の第1辺(側縁)30cは、全体が外方に露出していてもよい。
【0129】
図3Bに示す例では、低反射フィルム30は、S字状に湾曲するように、弾性変形させた状態で、溝部79に差し込まれている。この場合、低反射フィルム30は、平面視において直線状に延びるように、溝部79内において変形する。これによって、低反射フィルム30は、湾曲した状態で、支持部70に支持されている。図3Bに示す例において、低反射フィルム30は、S字状に湾曲した状態で、支持部70に支持されている。低反射フィルム30が湾曲していることにより、低反射フィルム30が溝部79のみによって支持されている場合であっても、低反射フィルム30が上下方向に折れ曲がることを抑制できる。このため、低反射フィルム30を自立させることができる。
【0130】
図3Cに示す例において、支持部70は、低反射フィルム30の上縁30b1を挟むことによって保持する挟持部72aを有する棒状の部材である。図3Cに示す例において、支持部70は、基部72cと、基部72cから延び出す挟持部72aと、を有する。挟持部72aは、それぞれ基部72cから延び出す第1挟持部72d及び第2挟持部72eを有している。
【0131】
基部72cは、板状の部材である。基部72cは、上下方向に平行、且つ低反射フィルム30の厚み方向に平行な板面をもつ。第1挟持部72dは、基部72cの一端から、低反射フィルム30の中心に向かって延び出している。第2挟持部72eは、基部72cの他端から、低反射フィルム30の中心に向かって延び出している。なお、基部72cの一端及び他端は、低反射フィルム30の厚み方向における端部を意味する。図3Cにおいて、上縁30b1は、第1挟持部72dと第2挟持部72eとの間に挟まれている。
【0132】
図3Cに示す支持部70は、第1挟持部72dと第2挟持部72eとの間で低反射フィルム30を挟むことによって、第1挟持部72d及び第2挟持部72eの復元力により、低反射フィルム30を保持できる。図3Cに示す例において、支持部70は、第1挟持部72dと第2挟持部72eとの間で低反射フィルム30の上縁30b1を挟むことによって、低反射フィルム30の上縁30b1を保持している。
【0133】
図3Cに示す例において、支持部70は、低反射フィルム30を平坦化した状態で支持している。支持部70が低反射フィルム30を平坦化した状態で支持することにより、低反射フィルム30における光の反射を効果的に抑制できる。一例として、図3Cに示す支持部70の基部72cは、挟持部72aが延び出す側とは反対側において、天井に固定される。この場合、基部72cは、天井に直接接合することによって天井に固定されてもよいし、基部72cおよび天井の両方に接合する部材を介して天井に固定されてもよい。これにより、支持部70によって低反射フィルム30を天井から吊り下げ、重力の作用を利用して低反射フィルム30を平坦化した状態で支持できる。
【0134】
図3Bおよび図3Cに示すような支持部付き低反射フィルム100によれば、低反射フィルム30を視認した観察者に対して、印刷層33によって印刷領域35に形成された文字や絵柄等が空中に浮いているような印象を与えることができる。また、1つ又は複数の支持部70を用いて、複数の低反射フィルム30を、低反射フィルム30の厚み方向において並ぶように配置すれば、さらに以下の効果が得られる。観察者に、複数の低反射フィルム30の印刷領域35に形成された文字や絵柄等の各々が、低反射フィルム30の厚み方向の異なる位置において空中に浮いているような印象を与えることができる。これによって、観察者の観察方向に応じて見え方の変化する、三次元的な表現を実現し得る。
【0135】
低反射フィルム及び支持部付き低反射フィルムの製造方法
次に、本実施の形態による低反射フィルム30及び支持部付き低反射フィルム100の製造方法について説明する。ここでは、まず、低反射フィルム30の製造方法について説明する。一例として、図2A乃至図2Hに示すような、コア層32と、コア層32の一方の側に設けられた印刷層33と、第1面反射防止層40と、第2面反射防止層50とを備える低反射フィルム30の製造方法について説明する。
【0136】
まず、第1面反射防止層40を作製する。この際、例えば、まず、第1面透明基材層42を構成する樹脂フィルムを準備する。次に、樹脂フィルム上に、ハードコート層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、第1面ハードコート層44を形成する。次いで、この第1面ハードコート層44上に、高屈折率層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、第1面高屈折率層46を形成する。次いで、この第1面高屈折率層46上に、低屈折率層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、第1面低屈折率層45を形成する。このようにして、第1面反射防止層40を得られる。
【0137】
また、第2面反射防止層50を作製する。この際、例えば、まず、第2面透明基材層52を構成する樹脂フィルムを準備する。次に、樹脂フィルム上に、ハードコート層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、第2面ハードコート層54を形成する。次いで、この第2面ハードコート層54上に、高屈折率層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、第2面高屈折率層56を形成する。次いで、この第2面高屈折率層56上に、低屈折率層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、第2面低屈折率層55を形成する。このようにして、第2面反射防止層50を得られる。
【0138】
さらに、印刷層33が設けられたコア層32を作製する。この際、例えば、まず、コア層32として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備する。次に、コア層32上に、例えばグラビア印刷等によって印刷層33を形成する。
【0139】
そして、第1面反射防止層40およびコア層32を、第1透明接着層31aを介して互いに接着させるとともに、コア層32および第2面反射防止層50を、第2透明接着層31bを介して互いに接着させて積層する。
【0140】
次に、低反射フィルム30の外縁30aを形成する切断加工処理を行う。図1に示す外縁30aを含む低反射フィルム30を作製する場合には、低反射フィルム30に切断加工処理を施して、上縁30b1と、下縁30b2と、一対の側縁30cとを有する矩形の形状に切り出す。このようにして、外縁30aを含む低反射フィルム30を作製することができる。
【0141】
低反射フィルム30に切断加工処理を施す際には、切断加工処理の方法として、上述した近傍において視認されにくい外縁30aを形成できるような方法が選択される。すなわち、切断加工処理の方法として、第1外縁領域30dの幅W1が100μmより小さくなるような方法が選択される。切断加工処理の方法として、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値が、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値に比べて2.0倍以下となるような方法が選択されてもよい。
【0142】
近傍において視認されにくい外縁30aを形成できる切断加工の方法としては、低反射フィルム30を鋭い刃と高圧によって押し切る、抜き加工が挙げられる。抜き加工は、具体的には、デジタル電動サーボプレス装置(株式会社アマダプレスシステム社製、製品名「SDE-8013iIII」)を用いて、トムソン刃を用いたトムソン抜き加工によって行うことができる。
【0143】
また、近傍において視認されにくい外縁30aを形成できる切断加工の方法として、低反射フィルム30をレーザーの熱で焼き切る、レーザー加工が挙げられる。レーザー加工は、具体的には、レーザーカッター装置(コムネット株式会社製、製品名「GCCLaser Pro 180」)を用いて、CO2レーザーの2次元スキャンによるフィルム裁断によって行うことができる。
【0144】
特に、本件の発明者らは、外縁30aの近傍において視認されにくい低反射フィルム30について鋭意研究を重ねた結果、低反射フィルム30の膜厚が小さいと、外縁30aの近傍において、低反射フィルム30による光の反射を抑制する機能が損なわれやすいことを見出した。特に、低反射フィルム30の膜厚が小さいと、切断加工によって形成される外縁30aが、その近傍において粗い形状になりやすいことを見出した。これは、低反射フィルム30の膜厚が小さいと、切断加工を施す際に低反射フィルム30が延びやすくなり、切断面が平滑になりにくいためと考えられる。低反射フィルム30の外縁30aの近傍が粗い形状になると、外縁30aの近傍において光が乱反射されることによって、外縁30aの近傍が視認されやすくなると考えられる。ここで、上述した抜き加工やレーザー加工などの切断加工によれば、低反射フィルム30の膜厚が小さい場合、特に500μm以下、さらには300μm以下、さらには250μm以下の場合であっても、外縁30aの近傍において、低反射フィルム30による光の反射を抑制する機能が損なわれにくくなる。特に、低反射フィルム30の外縁30aの近傍が粗い形状になることを抑制し得る。これによって、近傍において視認されにくい外縁30aを形成し得る。特に、上述した抜き加工やレーザー加工などの切断加工によれば、低反射フィルム30の膜厚が500μm以下、さらには300μm以下、さらには250μm以下の場合であっても、第1外縁領域30dの幅W1が100μmより小さくなるように、外縁30aを形成し得る。
【0145】
また、本件の発明者らは、本実施の形態の、複数の層からなる低反射フィルム30は、単一の材料からなるフィルムと比較して、低反射フィルム30による光の反射を抑制する機能が損なわれやすいことを見出した。特に、複数の層からなる低反射フィルム30は、単一の材料からなるフィルムと比較して、切断加工によって形成される外縁30aが、その近傍において粗い形状になりやすいことを見出した。これは、複数の層からなる低反射フィルム30は、切断加工によって複数の層を切断する必要があるので、切断面が平滑になりにくいためと考えられる。さらに、本件の発明者らは、本実施の形態の、第1透明接着層31aや第2透明接着層31bなどの接着層を備える低反射フィルム30は、接着層を備えないフィルムと比較して、低反射フィルム30による光の反射を抑制する機能が損なわれやすいことを見出した。特に、第1透明接着層31aや第2透明接着層31bなどの接着層を備える低反射フィルム30は、接着層を備えないフィルムと比較して、切断加工によって形成される外縁30aが、その近傍において粗い形状になりやすいことを見出した。これは、接着層が他の層より比較的延びやすい材料から形成されるために、切断加工を施す際に低反射フィルム30が接着層において延びやすくなり、切断面が平滑になりにくいためと考えられる。ここで、上述した抜き加工やレーザー加工などの切断加工によれば、複数の層からなる低反射フィルム30、特に接着層を備える低反射フィルム30を切断する場合であっても、外縁30aの近傍において、低反射フィルム30による光の反射を抑制する機能が損なわれにくくなる。特に、低反射フィルム30の外縁30aの近傍が粗い形状になることを抑制し得る。これによって、近傍において視認されにくい外縁30aを形成し得る。特に、上述した抜き加工やレーザー加工などの切断加工によれば、複数の層からなる低反射フィルム30、特に接着層を備える低反射フィルム30を切断する場合であっても、第1外縁領域30dの幅W1が100μmより小さくなるように、外縁30aを形成し得る。これにより、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50を備えることによって透明領域34における光の反射率が小さく抑えられた低反射フィルム30を用いつつ、近傍において視認されにくい外縁30aを形成できる。以上より、低反射フィルム30を用いて多様な表現を実現できる。特に、観察者に対して、印刷領域35に形成された文字や絵柄等が空中に浮いているような印象を与えることができる。
【0146】
次いで、支持部付き低反射フィルム100を作製する。この際、支持部70によって、低反射フィルム30を支持する。図3Bに示す支持部付き低反射フィルム100を作製する際には、支持部70の溝部79に、低反射フィルム30の下縁30b2を差し込む。図3Cに示す支持部付き低反射フィルム100を作製する際には、支持部70の第1挟持部72dと第2挟持部72eとの間で、低反射フィルム30の上縁30b1を挟む。これによって、図3B及び図3Cに示すように、支持部付き低反射フィルム100を作製できる。
【0147】
以上のように本実施の形態によれば、低反射フィルム30の第1外縁領域30dの幅W1が、100μmより小さくなる。これにより、低反射フィルム30が外縁30aの近傍において視認されにくくなり、低反射フィルム30を用いて多様な表現を実現できる。特に、観察者に対して、印刷領域35に形成された文字や絵柄等が空中に浮いているような印象を与えることができる。
【0148】
また、本実施の形態によれば、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値が、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値に比べて2.0倍以下となる。これにより、低反射フィルム30が、外縁30aの近傍において、より視認されにくくなる。
【0149】
また、本実施の形態によれば、低反射フィルム30の膜厚が500μm以下である。これにより、透明領域34の透明性を向上させることができる。
【0150】
また、本実施の形態の低反射フィルム30を2枚準備して、当該2枚の低反射フィルム30を、2枚の低反射フィルム30の一方の面と他方の面とが平行となり、かつ2枚の低反射フィルム30の一方と他方との距離が30cm以下となるように配置した場合に、可視光が2枚の低反射フィルム30を通過する可視光透過率が、90%以上であってもよい。なお、この場合の可視光透過率は、光が低反射フィルム30の透明領域34を通過する可視光透過率である。
【0151】
換言すれば、本実施の形態の低反射フィルム30は、以下の条件を満たしてもよい。本実施の形態の低反射フィルム30を2枚準備し、一方を第1低反射フィルムと称し、他方を第2低反射フィルムと称する。そして、第1低反射フィルムの面と第2低反射フィルムの面とが平行となり、かつ第1低反射フィルムと第2低反射フィルムとの距離が30cm以下となるように配置する。この場合に、可視光が第1低反射フィルム及び第2低反射フィルムを通過する可視光透過率が、90%以上であってもよい。
【0152】
上述のように配置された2枚の低反射フィルム30を通過する可視光透過率が90%以上であることによって、以下の効果が得られる。上述したように、図3Bおよび図3Cに示すような支持部70を1つ又は複数用いて、複数の低反射フィルム30を、低反射フィルム30の厚み方向において並ぶように配置することも考えられる。これにより、観察者に、複数の低反射フィルム30の印刷領域35に形成された文字や絵柄等の各々が、低反射フィルム30の厚み方向の異なる位置において空中に浮いているような印象を与えることができる。これによって、観察者の観察方向に応じて見え方の変化する、三次元的な表現を実現し得る。ここで、上述した可視光透過率が90%以上であることによって、2枚の低反射フィルム30を、2枚の低反射フィルム30の一方の面と他方の面とが平行となり、かつ2枚の低反射フィルム30の一方と他方との距離が30cm以下となるように配置した場合に、観察者が、2枚の低反射フィルム30を介して、2枚の低反射フィルム30の先を十分明瞭に見通せるようになる。これによって、観察者に、2枚の低反射フィルム30の印刷領域35に形成された文字や絵柄等の各々を視認させると同時に、2枚の低反射フィルム30の先に配置された意匠などを十分明瞭に視認させることができる。このため、より多様な、三次元的な表現を実現し得る。
【0153】
なお、本実施の形態の低反射フィルム30を3枚以上準備して、当該3枚以上の低反射フィルム30を、3枚以上の低反射フィルム30の全ての面が平行となり、かつ3枚以上の低反射フィルム30の中から選ばれる任意の2枚の距離が30cm以下となるように配置した場合に、可視光が3枚以上の低反射フィルム30の全てを通過する可視光透過率が、85%以上であってもよい。この場合、準備される低反射フィルム30の枚数は、3枚でもよいし、4枚でもよいし、5枚でもよい。この場合には、観察者に、3枚以上の低反射フィルム30の印刷領域35に形成された文字や絵柄等の各々を視認させると同時に、当該3枚以上の低反射フィルム30の先に配置された意匠などを十分明瞭に視認させることができる。
【0154】
なお、上述したように、複数の、例えば2枚の低反射フィルム30を通過する可視光透過率を測定する方法は、例えば以下の通りである。可視光透過率の測定は、JISR3106:2019に準拠して行う。まず、低反射フィルム30から、30mm×30mmサイズのサンプルを切り出す。これらを2枚準備する。また、外寸30mm×30mm、内径25mm×25mm、且つ厚さ1mmの樹脂製の枠を準備する。樹脂製の枠は正方形であり、厚さ1mmの板状の樹脂製の部材において、中央の25mm×25mmの正方形の領域がくりぬかれたものに相当する形状を有する。次に、2枚のサンプルを樹脂製の枠の厚み方向の両面にセットする。セットの方法は、サンプルの面にゆがみなどが生じない限り、特に限られない。そして、サンプルの表面(樹脂製の枠にセットされているサンプルのいずれか一方の面)に対して、入射角が5°となるように光を照射する。このとき、サンプルの表面に対して、380nmから780nmまでの波長を含む光を照射する。そして、分光光度計(日本分光株式会社社製、V-7100)を用いて、波長380nmから780nmまでの10nmごとに、5°の角度で透過した光の透過スペクトルを取得し、取得したスペクトルデータを元に、可視光透過率を算出する。これにより、2枚のサンプルを、互いの面が平行となり、かつ一方と他方との距離が1mmとなるように配置して、可視光反射率を測定できる。3枚の低反射フィルム30を配置して可視光透過率を測定する場合は、以下のように測定を行う。まず、上述したように樹脂製の枠の厚み方向の両面にセットされた2枚のサンプルの一方に、上述した樹脂製の枠と同じ樹脂製の枠を固定する。次に、固定された当該樹脂製の枠の、サンプルに固定された側とは反対側に、3枚目のサンプルをセットする。そして、2枚の低反射フィルム30を配置して可視光透過率を測定する場合と同様に、サンプルの表面(樹脂製の枠にセットされているサンプルのいずれか一方の面)に対して光を照射して光の透過スペクトルを取得し、取得したスペクトルデータを元に可視光透過率を算出する。
【0155】
変形例
次に、低反射フィルム30および低反射フィルム30の利用の態様の変形例について説明する。
【0156】
(第1変形例)
上述の実施の形態においては、低反射フィルム30において、第1外縁領域30dが外縁30aに接している例について説明した。しかしながら、低反射フィルム30の形態は、これに限られない。図4Aは、第1変形例による低反射フィルム30の、外縁30aの近傍の一部を拡大して示す平面図である。
【0157】
第1変形例において、第1外縁領域30dは外縁30aから離れている。第1外縁領域30dの外縁30aからの距離は、100μm以下である。図4Bに示す低反射フィルム30において、低反射フィルム30は、低反射フィルム30に低反射フィルム30の面に垂直な光を照射した場合に外縁30aに沿って形成される、正反射した反射光の強度が低反射フィルムの中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域を有する。当該領域は、外縁30aに接している。第1外縁領域30dと外縁30aとの間に当該領域が形成されていることによって、第1外縁領域30dは外縁30aから離れている。
【0158】
ここで、低反射フィルム30に低反射フィルム30の面に垂直な光を照射した場合に外縁30aに沿って形成される、正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域を、第2外縁領域30gと定める。特に第1変形例では、以下の条件を満たす領域を、第2外縁領域30gと定める。低反射フィルム30に、低反射フィルム30の第1面301に垂直な光を照射して、低反射フィルム30の第1面301側から、かつ低反射フィルム30の第1面301に垂直な方向から低反射フィルム30を観察する。この場合に見出される、第1面301側で正反射した可視光である反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eの第1面301側で正反射した可視光である反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域を、第2外縁領域30gと定める。このとき、第1変形例において、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さくなる。なお、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さくなる場合には、幅W1及び幅W2の少なくともいずれか一方が0である場合、すなわち低反射フィルム30に第1外縁領域30d及び第2外縁領域30gの少なくともいずれか一方が形成されていない場合も含まれ得る。
【0159】
また、第1外縁領域30dと第2外縁領域30gとの間に形成され、かつ正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下である領域を、第1接続領域30mと定める。特に第1変形例では、以下の条件を満たす領域を、第1接続領域30mと定める。低反射フィルム30に、低反射フィルム30の第1面301に垂直な光を照射して、低反射フィルム30の第1面301側から、かつ低反射フィルム30の第1面301に垂直な方向から低反射フィルム30を観察する。この場合に見出される、第1面301側で正反射した可視光である反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eの第1面301側で正反射した可視光である反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下である連続する領域を、第1接続領域30mと定める。このとき、第1接続領域30mの幅(図4Aに示す幅W6)が、5μm以下となる。なお、第1接続領域30mの幅W6が5μm以下となる場合には、幅W6が0である場合、すなわち低反射フィルム30に第1接続領域30mが形成されていない場合も含まれる。
【0160】
また、第1変形例において、低反射フィルム30は、低反射フィルム30に低反射フィルム30の面に垂直な光を照射した場合に、第1外縁領域30dの外縁30a側とは反対側に形成されて外縁30aの延びる方向に延びる、正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域を有する。
【0161】
ここで、低反射フィルム30に低反射フィルム30の面に垂直な光を照射した場合に、第1外縁領域30dの外縁30a側とは反対側に形成されて外縁30aの延びる方向に延びる、正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域を、第3外縁領域30hと定める。特に第1変形例では、以下の条件を満たす領域を、第3外縁領域30hと定める。低反射フィルム30に、低反射フィルム30の第1面301に垂直な光を照射して、低反射フィルム30の第1面301側から、かつ低反射フィルム30の第1面301に垂直な方向から低反射フィルム30を観察する。この場合に見出される、第1面301側で正反射した可視光である反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eの第1面301側で正反射した可視光である反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域を、第3外縁領域30hと定める。第3外縁領域30hの外縁30aからの距離W5は、例えば200μm以下と定められる。なお、領域について「外縁30aからの距離が200μm以下」とは、当該領域の最も外縁30aに近い部分の外縁30aからの距離が200μm以下であることを意味する。このとき、第1変形例において、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さくなる。なお、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さくなる場合には、幅W1及び幅W3の少なくともいずれか一方が0である場合、すなわち低反射フィルム30に第1外縁領域30d及び第3外縁領域30hの少なくともいずれか一方が形成されていない場合も含まれ得る。
【0162】
また、第1外縁領域30dと第3外縁領域30hとの間に形成され、かつ正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下である領域を、第2接続領域30nと定める。特に第1変形例では、以下の条件を満たす領域を、第2接続領域30nと定める。低反射フィルム30に、低反射フィルム30の第1面301に垂直な光を照射して、低反射フィルム30の第1面301側から、かつ低反射フィルム30の第1面301に垂直な方向から低反射フィルム30を観察する。この場合に見出される、第1面301側で正反射した可視光である反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eの第1面301側で正反射した可視光である反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下である連続する領域を、第2接続領域30nと定める。このとき、第2接続領域30nの幅(図4Aに示す幅W7)が、5μm以下となる。なお、第2接続領域30nの幅W7が5μm以下となる場合には、幅W7が0である場合、すなわち低反射フィルム30に第2接続領域30nが形成されていない場合も含まれる。
【0163】
なお、第2外縁領域30g及び第3外縁領域30hに関して言う「正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域」は、外縁30aの延びる方向に直交する方向において連続的に、正反射した反射光の強度が、低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となっている領域である。また、第1接続領域30m及び第2接続領域30nに関して言う「正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下である連続する領域」は、外縁30aの延びる方向に直交する方向において連続的に、正反射した反射光の強度が、低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下となっている領域である。
【0164】
通常、正反射した反射光の強度が中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域である第2外縁領域30g及び第3外縁領域30hは、低反射フィルム30に低反射フィルム30の面に垂直な光を照射した状態で、正面から低反射フィルム30の第1面301を観察した場合には、黒色に見える。
【0165】
第2外縁領域30g及び第3外縁領域30hが生じる理由の完全な解明には、今後の研究を待たねばならないが、例えば以下の理由が考えられる。図4Bは、第2外縁領域30g及び第3外縁領域30hを有する低反射フィルム30の、外縁30aの近傍における断面の一例を示す図である。図4Bに示す例において、低反射フィルム30は、外縁30aの近傍において、低反射フィルム30の厚み方向に膨らんだ形状を有している。このような厚み方向に膨らんだ形状は、低反射フィルム30を切断することによって低反射フィルム30に外縁30aを形成した際に、形成される場合がある。低反射フィルム30は、当該形状を有するために、外縁30aの近傍において、第1面301に対してなす角度の比較的小さな第1領域30iと、第1面301に対してなす角度の比較的大きな第2領域30j及び第3領域30kと、を有する。第2領域30jは、第1領域30iの外縁30a側に位置する。第3領域30kは、第1領域30iの外縁30aとは反対側に位置する。第1領域30iにおいては、低反射フィルム30の面である第1面301に垂直な光が、第1面301に垂直な方向に近い方向に反射されやすいために、上述した測定方法によって測定される正反射した反射光の強度が大きくなると考えられる。第2領域30j及び第3領域30kにおいては、第1面301に垂直な光が、第1面301に垂直な方向に近い方向に反射されやすいために、上述した測定方法によって測定される正反射した反射光の強度が小さくなると考えられる。このような場合に、第1領域30iが第1外縁領域30dを形成し、第2領域30jが第2外縁領域30gを形成し、第3領域30kが第3外縁領域30hを形成するために、第2外縁領域30g及び第3外縁領域30hが生じると考えられる。
【0166】
第2外縁領域30g及び第3外縁領域30hのような、第1面301に垂直な光が照射された状態で黒色に見える領域が、低反射フィルム30の外縁30aの近傍に大きな幅を持って現れると、低反射フィルム30の外縁30aが目立つため、低反射フィルム30の存在が目立ってしまう。また、本件発明者は、このような第2外縁領域30g及び第3外縁領域30hを有する低反射フィルム30を、複数方向から光が照射される環境で観察した場合には、第2外縁領域30g及び第3外縁領域30hが白色に見えることも見出している。このため、第2外縁領域30g及び第3外縁領域30hが大きな幅を持って現れると、複数方向から光が照射される環境で低反射フィルム30を観察する場合であっても、第2外縁領域30g及び第3外縁領域30hが白色の部分として視認されることによって、低反射フィルム30の外縁30aが目立ってしまう。特に、第1接続領域30mの幅W6または第2接続領域30nの幅W7が5μm以下であり、第1外縁領域30dと第2外縁領域30gとの距離または第1外縁領域30dと第3外縁領域30hとの距離が近いと、低反射フィルム30の外縁30aが目立ちやすくなる。
【0167】
第1変形例の低反射フィルム30によれば、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計を100μmより小さく抑えるため、第2外縁領域30gと第1外縁領域30dとのために低反射フィルム30の外縁30aおよび低反射フィルム30の存在自体が目立つことが抑制される。また、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計を100μmより小さく抑えるため、第3外縁領域30hと第1外縁領域30dとのために低反射フィルム30の外縁30aおよび低反射フィルム30の存在自体が目立つことが抑制される。特に、第1接続領域30mの幅W6または第2接続領域30nの幅W7が5μm以下の場合であっても、低反射フィルム30の外縁30aおよび低反射フィルム30の存在自体が目立つことが抑制される。このため、低反射フィルム30の存在を目立たせることなく、観察者に対して、印刷領域35に形成された文字や絵柄等が空中に浮いているような印象を与えることができる。これにより、低反射フィルム30が外縁30aの近傍において視認されにくくして、低反射フィルム30を用いて多様な表現を実現できる。
【0168】
第2外縁領域30gの幅W2、第3外縁領域30hの幅W3、第1接続領域30mの幅W6及び第2接続領域30nの幅W7の測定方法として、後述する実施例の「(1)第1外縁領域の幅の測定試験」における第2外縁領域30gの幅W2、第3外縁領域30hの幅W3、第1接続領域30mの幅W6及び第2接続領域30nの幅W7の測定方法を採用できる。
【0169】
また、第1変形例において、低反射フィルム30に低反射フィルム30の第2面302に垂直な光を照射して、低反射フィルム30の第2面302側において、第1外縁領域30d、第2外縁領域30g、第3外縁領域30h、第1接続領域30m及び第2接続領域30nの条件を満たす領域を考えたときに、以下の関係が成立してもよい。第2外縁領域30gの条件を満たす領域の幅と第1外縁領域30dの条件を満たす領域の幅との合計が100μmより小さくてもよい。また、第3外縁領域30hの条件を満たす領域の幅と第1外縁領域30dの条件を満たす領域の幅との合計が100μmより小さくてもよい。また、第1接続領域30mの条件を満たす領域の幅が5μm以下となってもよい。また、第2接続領域30nの条件を満たす領域の幅が5μm以下となってもよい。
【0170】
(第2変形例)
上述の実施の形態においては、低反射フィルム30が印刷領域35を備える例について説明した。しかしながら、低反射フィルム30の形態は、これに限られない。図4Cは、第2変形例による低反射フィルム30、および低反射フィルム30を備える表示物付き低反射フィルム60を示す斜視図である。
【0171】
第2変形例の低反射フィルム30は、図4Cに示すように、印刷領域35を備えていない。第2変形例の低反射フィルム30は、印刷領域35を備えない以外は、上述の実施の形態の低反射フィルム30と同様である。上述の実施の形態において上述した印刷領域35を備える低反射フィルム30に関してした説明は、矛盾しない限り、第2変形例の印刷領域35を備えない低反射フィルム30の説明に適用できる。
【0172】
図4Cに示す表示物付き低反射フィルム60は、低反射フィルム30と、低反射フィルム30上に固定された表示物61とを備える。図4Cに示す例において、表示物61は、低反射フィルム30の第1面301上に固定されている。表示物61は、低反射フィルム30上に固定可能なものであれば、特に限られない。表示物61は、例えば低反射フィルム30上に貼り付けられるシールである。表示物付き低反射フィルム60を、製品を宣伝するための広告として用いる場合、表示物61として、宣伝の対象となる製品の実物を、低反射フィルム30上に固定してもよい。この場合、表示物61として低反射フィルム30上に固定される製品の実物は、例えばガムやキャンディーなどの菓子である。表示物61を低反射フィルム30上に固定する方法は、特に限られない。例えば、表示物61は、図示しない接着層を介して低反射フィルム30上に接着されることによって、低反射フィルム30上に固定される。
【0173】
表示物付き低反射フィルム60は、実施の形態において上述した支持部70と同様の支持部70により、実施の形態において上述した方法と同様の方法によって、支持できる。図4Cに示す例において、表示物付き低反射フィルム60は、図3Cに示す支持部70と同様の支持部70により、図3Cに示す方法と同様の方法によって支持されている。
【0174】
第2変形例の低反射フィルム30および表示物付き低反射フィルム60によっても、低反射フィルム30が外縁30aの近傍において視認されにくくなり、多様な表現を実現できる。特に、観察者に対して、低反射フィルム30上に固定された表示物61が空中に浮いているような印象を与えることができる。
【0175】
また、第2変形例の表示物付き低反射フィルム60を2枚準備して、当該2枚の表示物付き低反射フィルム60を、2枚の表示物付き低反射フィルム60の一方の低反射フィルム30の面と他方の低反射フィルム30の面とが平行となり、かつ2枚の表示物付き低反射フィルム60の一方と他方との距離が30cm以下となるように配置した場合に、可視光が2枚の表示物付き低反射フィルム60の表示物61を備えない部分を通過する可視光透過率が、90%以上であってもよい。なお、この場合の可視光透過率は、光が表示物付き低反射フィルム60の低反射フィルム30の透明領域34の、表示物61が重ならない部分を通過する可視光透過率である。
【0176】
上述のように配置された2枚の表示物付き低反射フィルム60の表示物61を備えない部分を通過する可視光透過率が90%以上であることによって、以下の効果が得られる。2枚の表示物付き低反射フィルム60を、2枚の表示物付き低反射フィルム60の一方の低反射フィルム30の面と他方の低反射フィルム30の面とが平行となり、かつ2枚の表示物付き低反射フィルム60の一方と他方との距離が30cm以下となるように配置した場合に、観察者が、2枚の表示物付き低反射フィルム60の表示物61を備えない部分を介して、2枚の表示物付き低反射フィルム60の先を十分明瞭に見通せるようになる。これによって、観察者に、2枚の表示物付き低反射フィルム60の表示物61の各々を視認させると同時に、2枚の表示物付き低反射フィルム60の先に配置された意匠などを十分明瞭に視認させることができる。このため、より多様な、三次元的な表現を実現し得る。
【0177】
なお、本実施の形態の表示物付き低反射フィルム60を3枚以上準備して、当該3枚以上の表示物付き低反射フィルム60を、3枚以上の表示物付き低反射フィルム60の低反射フィルム30の全ての面が平行となり、かつ3枚以上の表示物付き低反射フィルム60の中から選ばれる任意の2枚の距離が30cm以下となるように配置した場合に、可視光が3枚以上の表示物付き低反射フィルム60の全てを通過する可視光透過率が、85%以上であってもよい。この場合、準備される表示物付き低反射フィルム60の枚数は、3枚でもよいし、4枚でもよいし、5枚でもよい。この場合には、観察者に、3枚以上の表示物付き低反射フィルム60の表示物61の各々を視認させると同時に、当該3枚以上の表示物付き低反射フィルム60の先に配置された意匠などを十分明瞭に視認させることができる。
【0178】
複数の、例えば2枚の表示物付き低反射フィルム60を通過する可視光透過率を測定する方法としては、矛盾しない限り、上述した、複数の低反射フィルム30を通過する可視光透過率を測定する方法を採用できる。
【0179】
(第3変形例)
上述の実施の形態及び変形例において上述した低反射フィルム30は、書籍用カバー81に用いられてもよい。図5は、第3変形例による低反射フィルム30が用いられた書籍用カバー81を、書籍用カバー81によって覆われた書籍Bとともに示す斜視図である。
【0180】
図5に示す例において、書籍用カバー81は、上述の実施の形態及び変形例において上述した低反射フィルム30を備えている。特に、書籍用カバー81は、低反射フィルム30からなっている。書籍用カバー81の外縁は、低反射フィルム30の外縁30aによって形成されている。図5に示す例において、低反射フィルム30は、書籍Bの形状に対応するように折られて、書籍Bの表紙B1と裏表紙B2とを覆っている。図5に示す例において、低反射フィルム30は、低反射フィルム30の表紙B1を覆う部分に位置する、「A」の文字が印刷された印刷領域35を備えている。また、書籍Bの表紙B1には、「bcd」の文字が印刷されている。そして、書籍用カバー81が書籍Bを覆っている状態において、「A」の文字と「bcd」の文字とは同時に視認可能である。このように、低反射フィルム30を備える書籍用カバー81によれば、書籍Bに設けられた文字や絵柄等と、低反射フィルム30の印刷領域35に形成された文字や絵柄等とを重ねて表示することによって、多様な表現を実現できる。
【0181】
また、低反射フィルム30を備える書籍用カバー81によれば、比較的粗い形状を有することも想定される第1外縁領域30dの幅W1が100μmより小さいことにより、低反射フィルム30の外縁30aに触れた者が、ちくちくとした触感を感じることを抑制できる。これによって、書籍用カバー81の外縁を低反射フィルム30の外縁30aによって形成する場合であっても、書籍用カバー81の外縁に触れた者が、ちくちくとした触感を感じることを抑制できる。
【0182】
(第4変形例)
上述の実施の形態及び変形例において上述した低反射フィルム30は、書籍82に用いられてもよい。図6は、第4変形例による低反射フィルム30が用いられた書籍82を示す斜視図である。
【0183】
図6に示す例において、書籍82は、上述の実施の形態及び変形例において上述した低反射フィルム30を備えている。図6に示す例において、書籍82は、いわゆる飛び出す絵本であり、書籍82のページをめくると飛び出す部分が、低反射フィルム30からなっている。そして、低反射フィルム30は、「A」の文字が印刷された印刷領域35を備えている。このため、書籍82のページをめくると、「A」の文字が飛び出して見える。図6に示すように、飛び出す絵本である書籍82の、ページをめくると飛び出す部分を低反射フィルム30によって形成することによって、印刷領域35に形成された文字や絵柄等が空中に浮いているような印象を、書籍82を読むものに与えることができる。また、図6に示す例において、ページをめくると飛び出す部分の外縁は、低反射フィルム30の外縁30aによって形成されている。この場合、書籍82のページをめくると飛び出す部分の外縁に触れた者が、ちくちくとした触感を感じることを抑制できる。
【0184】
図示はしないが、低反射フィルム30を、飛び出す絵本ではない通常の書籍82の、通常のページとして用いてもよい。この場合においても、低反射フィルム30を用いて多様な表現を実現できる。低反射フィルム30を通常のページとして用いる場合に、通常のページの外縁は、低反射フィルム30の外縁30aによって形成されていてもよい。この場合、通常のページの外縁に触れた者が、ちくちくとした触感を感じることを抑制できる。
【実施例0185】
次に、上記実施の形態における具体的実施例について述べる。
【0186】
(実施例1)
まず、図2Iに示す低反射フィルム30を作製した。この際、まず、第1面反射防止層40を作製した。第1面反射防止層40を作製する際、まず、第1面透明基材層42として、厚み60μmのトリアセチルセルロースフィルム(屈折率1.49)を準備した。次に、トリアセチルセルロースフィルム上に、下記処方のハードコート層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、厚み7.3μm、屈折率1.54、鉛筆硬度2Hの第1面ハードコート層44を形成した。次いで、この第1面ハードコート層44上に、下記処方の高屈折率層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、厚み150nm、屈折率1.63の第1面高屈折率層46を形成した。次いで、この第1面高屈折率層46上に、下記処方の低屈折率層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、厚み100nm、屈折率1.30の第1面低屈折率層45を形成し、第1面反射防止層40を得た。
【0187】
<ハードコート層形成用塗布液の調製>
光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア127、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン)を1.6質量部、希釈溶剤(メチルイソブチルケトン/シクロヘキサノン=8/2)を58.3質量部入れ、溶け残りがなくなるまで撹拌した。ここに光硬化樹脂(荒川化学社製、ビームセット577)を20質量部、及び高屈折率樹脂(DIC株式会社製、ポリライトRX-4800)を20質量部入れ撹拌し、溶け残りがなくなるまで撹拌した。最後にレベリング剤(大日精化工業社製、セイカビーム10-28(MB))を0.1質量部入れ撹拌し、ハードコート層形成用塗布液を調製した。
【0188】
<高屈折率層形成用塗布液の調製>
光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア127)0.1質量部、希釈溶剤(メチルイソブチルケトン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン=4/2/4)を92.6質量部入れ、溶け残りがなくなるまで撹拌した。ここに光硬化樹脂(荒川化学社製、ビームセット577)を1.25質量部入れ、溶け残りがなくなるまで撹拌した。更に酸化ジルコニウム(住友大阪セメント社製、MZ-230X、固形分32.5質量%、平均一次粒子径15~50nm)を6質量部、レベリング剤(大日精化工業社製、セイカビーム10-28(MB))0.05質量部をそれぞれ入れ撹拌し、高屈折率層形成用塗布液を調製した。
【0189】
<低屈折率層形成用塗布液の調製>
光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア127)0.2質量部、希釈溶剤(MIBK/AN=7/3)を91.1質量部入れ、溶け残りがなくなるまで撹拌した。ここに光硬化樹脂(日本化薬社製、KAYARAD-PET-30)1.0質量部、中空シリカ粒子(固形分20質量%、平均一次粒子径60nm)7.6質量部、レベリング剤(大日精化工業社製、セイカビーム10-28(MB))0.1質量部をそれぞれ入れ撹拌し、低屈折率層形成用塗布液を調製した。
【0190】
次に、第2面反射防止層50を作製した。第2面反射防止層50を作製する際、まず、第2面透明基材層52として、厚み60μmのトリアセチルセルロースフィルム(屈折率1.49)を準備した。次に、トリアセチルセルロースフィルム上に、上記処方のハードコート層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、厚み7.3μm、屈折率1・54、鉛筆硬度2Hの第2面ハードコート層54を形成した。次いで、この第2面ハードコート層54上に、上記処方の高屈折率層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、厚み150nm、屈折率1.63の第2面高屈折率層56を形成した。次いで、この第2面高屈折率層56上に、上記処方の低屈折率層形成用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、厚み100nm、屈折率1.30の第2面低屈折率層55を形成し、第2面反射防止層50を得た。
【0191】
次に、第1面反射防止層40および第2面反射防止層50を、透明接着層(パナック株式会社製、パナクリーンシリーズ PD-S1、厚み25μm)と、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラー50U483)と、透明接着層(パナック株式会社製、パナクリーンシリーズ PD-S1、厚み25μm)と、を介して互いに接着させた。
【0192】
次に、第1面反射防止層40のポリエチレンテレフタレートフィルムに接着された側とは反対側、及び第2面反射防止層50のポリエチレンテレフタレートフィルムに接着された側とは反対側に、印刷層33を形成した。印刷層33によって形成される印刷領域35は、低反射フィルム30の第1面301側に、上下方向に最大20cm、水平方向に最大20cmの寸法を有する「線の太さが1cmであるゴシック体のA」の文字を示すものとした。
【0193】
次に、低反射フィルム30の外縁30aを形成する切断加工処理を行った。この際、低反射フィルム30に切断加工処理を施して、矩形の形状に加工した。切断加工処理の方法としては、抜き加工を用いた。抜き加工は、具体的には、デジタル電動サーボプレス装置(株式会社アマダプレスシステム社製、製品名「SDE-8013iIII」)を用いて、トムソン刃を用いたトムソン抜き加工によって行った。低反射フィルム30の上縁30b1及び下縁30b2の長さは、600mmとした。低反射フィルム30の側縁30cの長さは、400mmとした。
【0194】
得られた低反射フィルム30の層構成は、以下の通りである。
印刷/低屈/高屈/ハードコート/TAC/粘/PET/粘/TAC/ハードコート/高屈/低屈/印刷
上記において、「低屈」は、第1面低屈折率層または第2面低屈折率層を意味している(以下同様)。また、「高屈」は、第1面高屈折率層または第2面高屈折率層を意味している(以下同様)。また、「ハードコート」は、第1面ハードコート層または第2面ハードコート層を意味している(以下同様)。また、「TAC」は、トリアセチルセルロースフィルムを意味している(以下同様)。また、「粘」は透明接着層を意味している。「PET」はポリエチレンテレフタレートフィルムを表している。更に、「印刷」は印刷層を示している。実施例1による低反射フィルム30の膜厚は、245.1μmであった。
【0195】
次に、作製された低反射フィルム30を用いて、図3Cに示す支持部付き低反射フィルム100を作製した。この際、支持部70によって、低反射フィルム30を支持させ、支持部付き低反射フィルム100を作製した。
【0196】
(1)第1外縁領域の幅の測定試験
次に、低反射フィルム30に対して、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験を実施した。
【0197】
第1外縁領域30dの幅W1の測定試験は、以下の方法により行った。低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域の明るさの、中央領域30eの明るさに対する比率を、以下の方法により算出した。まず、低反射フィルム30を配置した。そして、低反射フィルム30の第1面301側から光を照射しつつ、第1面301側から低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域及び中央領域30eのデジタル写真を撮影した。低反射フィルム30の第1面301側への光の照射は、照射される光が、低反射フィルム30の第1面301に垂直となるように行った。得られた写真のピクセルサイズは1260×960ピクセルであった。デジタル写真の撮影に際しては、光学顕微鏡(AnMoElectronicsCorporation社製、製品名「Dino-Lite Premier」)を用いて200倍に拡大した外縁30aの近傍の領域及び中央領域30eの像を撮影した。低反射フィルム30の第1面301側への光の照射は、当該光学顕微鏡の備える光源であるLEDによって行った。その後に、撮影されたデジタル写真を解析して、低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域及び中央領域30eにおける輝度値を取得した。外縁30aの近傍の領域における輝度値の取得は、外縁30aの延びる方向に直交する方向に延びる輝度値の取得のための直線を定め、当該直線に沿って輝度値を取得することにより行った。デジタル写真の解析による輝度値の取得は、画像処理ソフトウェアのImageJを用いて行った。輝度値の取得は、デジタル写真に含まれるピクセル毎に行った。輝度値としては、ImageJにより表示される255諧調の相対的な明るさを利用した。低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域の輝度値の、中央領域30eの輝度値に対する比率として、低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域の明るさの中央領域30eの明るさに対する比率を取得した。そして、取得した輝度値の比率が1.2以上となる領域として、第1外縁領域30dを特定した。第1外縁領域30dの幅W1の特定など、光学顕微鏡を用いて撮影された写真上における寸法の特定は、以下の方法により行った。光学顕微鏡を用いて写真を撮影する際に用いたソフトウェアによって、取得した写真上に表示された200μmスケールと、写真のピクセルサイズとを比較することによって、123ピクセルが200μmに相当すると計算した。そして、123ピクセルが200μmに相当するとの対応関係に基づいて、第1外縁領域30dの幅W1の特定など、光学顕微鏡を用いて撮影された写真上における寸法の特定を行った。第1外縁領域30dの幅W1の特定においては、まず、輝度値の中央領域30eの輝度値に対する比率が1.2以上であるピクセルが連続して並ぶ領域を特定した。次に、当該領域においてピクセルが並ぶ数をカウントした。そして、カウントされたピクセルが並ぶ数から、123ピクセルが200μmに相当するとの対応関係に基づいて、当該領域の幅を特定した。そして、当該領域の幅を、正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて1.2倍以上となる連続する領域の幅とみなした。
【0198】
また、併せて、第2外縁領域30gの幅W2及び第3外縁領域30hの幅W3の測定を行った。具体的には、上述のように取得された、低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域の輝度値の、中央領域30eの輝度値に対する比率に基づいて、輝度値の中央領域30eの輝度値に対する比率が0.8以下であるピクセルが連続して並ぶ領域を特定した。次に、当該領域においてピクセルが並ぶ数をカウントした。そして、カウントされたピクセルが並ぶ数から、123ピクセルが200μmに相当するとの対応関係に基づいて、当該領域の幅を特定した。そして、当該領域の幅を、正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域の幅とみなした。このように特定された、正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍以下となる連続する領域の幅に基づいて、第2外縁領域30gの幅W2及び第3外縁領域30hの幅W3の測定を行った。
【0199】
また、併せて、第1接続領域30mの幅W6及び第2接続領域30nの幅W7の測定を行った。具体的には、上述のように取得された、低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域の輝度値の、中央領域30eの輝度値に対する比率に基づいて、輝度値の中央領域30eの輝度値に対する比率が0.8倍より大きく1.2倍以下であるピクセルが連続して並ぶ領域を特定した。次に、当該領域においてピクセルが並ぶ数をカウントした。そして、カウントされたピクセルが並ぶ数から、123ピクセルが200μmに相当するとの対応関係に基づいて、当該領域の幅を特定した。そして、当該領域の幅を、正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下である連続する領域の幅とみなした。このように特定された、正反射した反射光の強度が低反射フィルム30の中央領域30eから正反射した反射光の強度に比べて0.8倍より大きく1.2倍以下である連続する領域の幅に基づいて、第1接続領域30mの幅W6及び第2接続領域30nの幅W7の測定を行った。
【0200】
第1外縁領域30dの幅W1、第2外縁領域30gの幅W2及び第3外縁領域30hの幅W3の測定結果としては、外縁30aの近傍の5か所以上の異なる位置で測定された測定値の平均値をとった。なお、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験の結果、実施例1の低反射フィルム30において、第1外縁領域30dの幅W1は100μmより小さいことが確認された。また、実施例1の低反射フィルム30において、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さく、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さいことが確認された。また、実施例1の低反射フィルム30において、第1接続領域30mの幅W6が5μm以下となり、第2接続領域30nの幅W7が5μm以下となることが確認された
【0201】
(2)外縁の視認されやすさの官能評価試験
次に、低反射フィルム30に対して、外縁30aの視認されやすさの官能評価試験を実施した。
【0202】
外縁30aの視認されやすさの官能評価試験においては、支持部付き低反射フィルム100を、天井に蛍光灯の照明のある明るい部屋に、低反射フィルム30が被験者の目線の高さに位置するように吊り下げた。次に、10人の被験者に、低反射フィルム30が位置する平面に垂直な方向の、低反射フィルム30から2m離れた位置に立たせた。そして、被験者に、低反射フィルム30から1m離れた位置から、低反射フィルム30から3m離れた位置までの間を、自由に前後に動き回らせた。この条件において、低反射フィルム30の外縁30aが視認されるかどうかついて、ヒアリングした。
【0203】
この際、低反射フィルム30の外縁30aが視認されたと回答した被験者が2人以下であった場合には、外縁30aが特に視認されにくいと判定した。低反射フィルム30の外縁30aが視認されたと回答した被験者が3人以上4人以下であった場合には、外縁30aが視認されにくいと判定した。低反射フィルム30の外縁30aが視認されたと回答した被験者が5人以上6人以下であった場合には、外縁30aがやや視認されやすいと判定した。低反射フィルム30の外縁30aが視認されたと回答した被験者が7人以上8人以下であった場合には、外縁30aが視認されやすいと判定した。低反射フィルム30の外縁30aが視認されたと回答した被験者が9人以上であった場合には、外縁30aが特に視認されやすいと判定した。
【0204】
(3)印刷領域の表示が空中に浮いているような印象を受けるかの官能評価試験
次に、低反射フィルム30に対して、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けるかの官能評価試験を実施した。
【0205】
外縁30aの視認されやすさの官能評価試験においては、支持部付き低反射フィルム100を、天井に蛍光灯の照明のある明るい部屋に、低反射フィルム30が被験者の目線の高さに位置するように吊り下げた。次に、10人の被験者に、低反射フィルム30が位置する平面に垂直な方向の、低反射フィルム30から2m離れた位置に立たせた。この状態において、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けるかどうかついて、ヒアリングした。
【0206】
この際、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けたと回答した被験者が8人以上であった場合には、低反射フィルム30による印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を与える作用が十分に発揮されていると判定した。印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けたと回答した被験者が7人以下であった場合には、低反射フィルム30による印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を与える作用が不十分であると判定した。
【0207】
(4)可視光反射率の測定試験
次に、低反射フィルム30に対して、可視光反射率の測定試験を実施した。
【0208】
この際、まず、得られた低反射フィルム30の、透明領域34の中央領域30eに相当する部分から、30mm×30mmサイズのサンプルを切り出した。次いで、サンプルの表面に対して、入射角が5°となるように光を照射した。このとき、サンプルの表面に対して、380nmから780nmまでの波長を含む光を照射した。そして、分光光度計(日本分光株式会社社製、V-7100)を用いて、波長380nmから780nmまでの10nmごとに光の反射スペクトルを測定し、取得したスペクトルデータを元に、可視光反射率を算出した。この時、JISR3106:2019に記載されている、板ガラスにおけるスペクトルデータを得るための計算式と同様の計算式によりスペクトルデータを得て、得られたスペクトルデータから可視光反射率を計算した。
【0209】
(5)複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験
次に、低反射フィルム30に対して、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験を実施した。
【0210】
複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験においては、外縁30aに沿った5mmをもつ帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値の、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値に対する比率を算出した。複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験は以下の様に実施した。天井に蛍光灯の照明のある明るい実験室の机上に黒い紙を設置した。机の黒い紙が設置される面の、床面からの高さは80cmであった。黒い紙としては、株式会社カウネット製の色画用紙四つ切、黒色542×392mmサイズを用いた。また、黒い紙の周囲2mには、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験に関係する物体以外の物体が置かれていない状態とした。実験室の天井高は、床面から300cmであった。設置された黒い紙の短辺の延びる方向の一方を前方、他方を後方と称する。この場合に、実験室は、黒い紙が配置された位置を基準として、前方左斜め45°、前方右斜め45°、後方左斜め45°及び後方右斜め45°の各方向の、黒い紙が配置された位置から水平方向に2m離れた位置の天井に、32Wの蛍光灯が2本設置されて点灯している状態であった。このような蛍光灯の配置により、低反射フィルム30は、複数方向から光が照射される環境に置かれていた。また、黒い紙の真上の、黒い紙から35cm離れた位置にレンズ面が位置するように、デジタルカメラ(ニコン株式会社製のデジタルカメラD5600)を三脚で設置した。デジタルカメラに装着されたレンズとしては、ニコン株式会社製のAF-P DX NIKKOR 18-55mmf/3.5-5.6G VRを用いた。そして、低反射フィルム30を、第2面302側において黒い紙と向き合うように、黒い紙の上に配置した。低反射フィルム30は、外縁30aがデジタルカメラのレンズの真下に位置するように、黒い紙の上に配置した。そして、第1面301側から、低反射フィルム30のデジタル写真を撮影した。上述のようにデジタルカメラが設置されたことによって、デジタル写真の撮影は、低反射フィルム30の第1面301側から、かつ低反射フィルム30の第1面301に垂直な方向から行われた。撮影は、マニュアルモード、フラッシュなし、セルフタイマー10秒、iso感度100、絞りF14、シャッター時間1/2秒、画質モードはHighの条件にて、写真に低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域及び中央領域30eが含まれる様に行った。なお、低反射フィルム30が配置されて写真が撮影された箇所の照度は100lxであった。照度測定はiPhone(登録商標)7にインストールされた明るさ評価アプリのQUAPIX Lite(岩崎電気株式会社製)を使用した。次に、得られた写真データの一部を400×1000ピクセルにトリミングした。トリミングは、トリミングされた領域の長辺方向が外縁30aの延びる方向となるように行った。当該トリミングされた領域は、外縁30aに沿った5mm幅をもつ帯状領域30fに相当するものであった。トリミングは、トリミングされた領域に、外縁30aの近傍の領域、特に第1外縁領域30dが形成されることが想定される領域が含まれるように行った。その後に、トリミングされた領域をimageJで解析して、トリミングされた領域に含まれるピクセル毎に、輝度値の取得を行った。輝度値としては、各ピクセルの明るさをimageJにより白黒255諧調で数値化した数値データマトリクスに変換し、この255諧調の数値を利用した。そして、トリミングされた領域から、短辺方向に400ピクセル並ぶピクセル列を一列選択して、当該ピクセル列に含まれる最も輝度値の大きなピクセルにおける輝度値の、当該ピクセル列に含まれる全ピクセルにおける輝度値の平均値に対する比率を算出した。当該比率を、500列以上のピクセル列において算出し、500列以上のピクセル列における当該比率の平均値を算出した。算出された当該比率の平均値を、外縁30aに沿った5mmをもつ帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値の、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値に対する比率とした。
【0211】
(6)低反射フィルムの外縁の触感試験
次に、低反射フィルム30の外縁30aの触感試験を実施した。
【0212】
低反射フィルム30の外縁30aの触感試験においては、支持部付き低反射フィルム100を、低反射フィルム30が被験者の目線の高さに位置するように吊り下げた。次に、人差し指に、フィルムとしてパラフィルム(登録商標)を巻いた。次に、フィルムを巻いた人差し指で、低反射フィルム30の側縁30cを20cmにわたってなぞった。このように、人差し指にフィルムを巻いて低反射フィルム30の側方をなぞる操作を、5回繰り返した。ここで、パラフィルム(登録商標)とは、Bemis Flexible Packagingが製造しているプラスチックパラフィンフィルムである。パラフィルム(登録商標)は、柔らかい伸び性のあるフィルムである。パラフィルム(登録商標)を巻いた指で低反射フィルム30の側方をなぞってパラフィルム(登録商標)に切れ目が生じれば、低反射フィルム30の使用者が指で直接低反射フィルム30の側方に触れた場合に、使用者がちくちくとした触感を感じやすいと考えられる。
【0213】
低反射フィルム30の外縁30aの触感試験においては、上記の操作の5回の繰り返しにおいて、フィルムに切れ目が生じたのが1回以下であれば、使用者がちくちくとした触感を感じることが十分に抑制されていると判定した。フィルムに切れ目が生じたのが2回以上3回以下であれば、使用者がちくちくとした触感を感じることが十分に抑制されていないと判定した。フィルムに切れ目が生じたのが4回以上であれば、使用者がちくちくとした触感を感じることが特に十分に抑制されていないと判定した。
【0214】
(実施例2)
低反射フィルム30の外縁30aを形成する切断加工処理において、切断加工処理の方法としてレーザー加工を用いた。レーザー加工は、具体的には、レーザーカッター装置(コムネット株式会社製、製品名「GCCLaser Pro 180」)を用いて、低反射フィルム30の下にTRUSCO社製の気泡緩衝材エアクッションTK-0642を敷いた状態で、S設定=極細線、モード=Black&White、解像度=500dpi、スピード10、パワー15の設定で、CO2レーザーによるフィルム裁断を行った。上記以外は、実施例1と同様にして、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験、外縁30aの視認されやすさの官能評価試験、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けるかの官能評価試験、可視光反射率の測定試験、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験及び低反射フィルム30の外縁30aの触感試験を行った。なお、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験の結果、実施例2の低反射フィルム30において、第1外縁領域30dの幅W1は100μmより小さいことが確認された。また、実施例2の低反射フィルム30において、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さく、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さいことが確認された。また、実施例2の低反射フィルム30において、第1接続領域30mの幅W6が5μm以下となり、第2接続領域30nの幅W7が5μm以下となることが確認された
【0215】
(実施例3)
低反射フィルム30を作製する工程において、ポリエチレンテレフタレートフィルムとして東レ株式会社製ルミラー50U483ではなく、東洋紡株式会社製E5100(厚み12μm)を使用した。上記以外は、実施例1と同様にして、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験、外縁30aの視認されやすさの官能評価試験、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けるかの官能評価試験、可視光反射率の測定試験、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験及び低反射フィルム30の外縁30aの触感試験を行った。なお、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験の結果、実施例3の低反射フィルム30において、第1外縁領域30dの幅W1は100μmより小さいことが確認された。また、実施例3の低反射フィルム30において、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さく、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さいことが確認された。また、実施例3の低反射フィルム30において、第1接続領域30mの幅W6が5μm以下となり、第2接続領域30nの幅W7が5μm以下となることが確認された。
【0216】
(比較例1)
低反射フィルム30の外縁30aを形成する切断加工処理において、切断加工処理の方法としてはさみによる加工を用いた。はさみによる加工は、具体的には、市販の一般的なはさみを用いて、はさみの刃をカッターの様に1枚の刃として利用して低反射フィルム30を切断することによって行った。上記以外は、実施例3と同様にして、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験、外縁30aの視認されやすさの官能評価試験、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けるかの官能評価試験、可視光反射率の測定試験、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験及び低反射フィルム30の外縁30aの触感試験を行った。なお、第1外縁領域の幅の測定試験の結果、比較例1の低反射フィルム30において、第1外縁領域30dの幅W1は100μm以上であることが確認された。また、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験の結果、比較例1の低反射フィルム30において、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計は100μm以上であり、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計は100μm以上であることが確認された。
【0217】
(比較例2)
低反射フィルム30の外縁30aを形成する切断加工処理において、切断加工処理の方法としてはさみによる加工を用いた。はさみによる加工は、具体的には、市販の一般的なはさみを用いて、通常のはさみの使用方法通り、2枚の刃の間で低反射フィルム30をはさんで切断することによって行った。上記以外は、比較例1と同様にして、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験、外縁30aの視認されやすさの官能評価試験、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けるかの官能評価試験、可視光反射率の測定試験、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験及び低反射フィルム30の外縁30aの触感試験を行った。なお、第1外縁領域の幅の測定試験の結果、比較例2の低反射フィルム30において、第1外縁領域30dの幅W1は100μm以上であることが確認された。また、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験の結果、比較例2の低反射フィルム30において、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計は100μm以上であり、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計は100μm以上であることが確認された。
【0218】
(比較例3)
低反射フィルム30の外縁30aを形成する切断加工処理において、切断加工処理の方法としてレーザー加工を用いた。レーザー加工に用いるレーザーカッター装置の設定において、スピード15、パワー20の設定とした。上記以外は、実施例2と同様にして、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験、外縁30aの視認されやすさの官能評価試験、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けるかの官能評価試験、可視光反射率の測定試験、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験及び低反射フィルム30の外縁30aの触感試験を行った。なお、第1外縁領域の幅の測定試験の結果、比較例3の低反射フィルム30において、第1外縁領域30dの幅W1は100μm以上であることが確認された。また、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験の結果、比較例3の低反射フィルム30において、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計は100μm以上であり、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計は100μm以上であることが確認された。
【0219】
以上の結果を表1に示す。また、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験において撮影された、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2及び比較例3における低反射フィルム30の外縁30aの近傍の領域のデジタル写真を、それぞれ図7A乃至図7Fとして示す。
【0220】
【表1】
【0221】
上記表1の「第1外縁領域の幅の測定試験」の欄は、第1外縁領域30dの幅W1の測定試験において測定された第1外縁領域30dの幅W1(μm)を示している。
【0222】
上記表1の「外縁の視認されやすさの官能評価試験」の欄において、「1」は、外縁30aの視認されやすさの官能評価試験の結果、外縁30aが特に視認されにくいと判定されたことを意味する。すなわち、低反射フィルム30の外縁30aが視認されたと回答した被験者が2人以下であったことを意味する。「2」は、外縁30aが視認されにくいと判定されたことを意味する。すなわち、低反射フィルム30の外縁30aが視認されたと回答した被験者が3人以上4人以下であったことを意味する。「4」は、外縁30aが視認されやすいと判定されたことを意味する。すなわち、低反射フィルム30の外縁30aが視認されたと回答した被験者が7人以上8人以下であったことを意味する。「5」は、外縁30aが特に視認されやすいと判定されたことを意味する。すなわち、低反射フィルム30の外縁30aが視認されたと回答した被験者が9人以上であったことを意味する。
【0223】
上記表1の「印刷領域の表示が空中に浮いているような印象を受けるかの官能評価試験」の欄において、「〇」は、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けるかの官能評価試験の結果、低反射フィルム30による印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を与える作用が十分に発揮されていると判定されたことを意味する。すなわち、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けたと回答した被験者が8人以上であったことを意味する。「×」は、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けるかの官能評価試験の結果、低反射フィルム30による印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を与える作用が不十分であると判定されたことを意味する。すなわち、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けたと回答した被験者が7人以下であったことを意味する。
【0224】
上記表1の「可視光反射率の測定試験」の欄は、可視光反射率の測定試験において測定された可視光反射率(%)を示している。
【0225】
上記表1の「複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験」の欄は、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験における、外縁30aに沿った5mmをもつ帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値の、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値に対する比率の算出結果を示している。
【0226】
上記表1の「低反射フィルムの外縁の触感試験」の欄において、「〇」は、低反射フィルム30の外縁30aの触感試験の結果、使用者がちくちくとした触感を感じることが十分に抑制されていると判定されたことを意味する。すなわち、人差し指にフィルムを巻いて低反射フィルム30の側縁30cをなぞる操作の5回の繰り返しにおいて、フィルムに切れ目が生じたのが1回以下であったことを意味する。「△」は、低反射フィルム30の外縁30aの触感試験の結果、使用者がちくちくとした触感を感じることが十分に抑制されていないと判定されたことを意味する。すなわち、人差し指にフィルムを巻いて低反射フィルム30の側縁30cをなぞる操作の5回の繰り返しにおいて、フィルムに切れ目が生じたのが2回以上3回以下であったことを意味する。「×」は、低反射フィルム30の外縁30aの触感試験の結果、使用者がちくちくとした触感を感じることが特に十分に抑制されていないと判定されたことを意味する。すなわち、人差し指にフィルムを巻いて低反射フィルム30の側縁30cをなぞる操作の5回の繰り返しにおいて、フィルムに切れ目が生じたのが4回以上であったことを意味する。
【0227】
この結果、表1に示すように、実施例1、実施例2および実施例3においては、第1外縁領域30dの幅W1が100μmより小さかった。これに対して、比較例1、比較例2および比較例3においては、第1外縁領域30dの幅W1が100μm以上であった。また、実施例1、実施例2および実施例3においては、図7A図7Bおよび図7Cに示すように、撮影されたデジタル写真を観察する限りにおいても、低反射フィルム30の外縁30aの近傍に形成される白く視認される領域の幅W4が、小さくなっていることがわかった。これに対して、比較例1、比較例2および比較例3においては、図7D図7Eおよび図7Fに示すように、撮影されたデジタル写真を観察すると、低反射フィルム30の外縁30aの近傍に形成される白く視認される領域の幅W4が、実施例1、実施例2および実施例3に比べて、より大きくなっていることがわかった。このことから、実施例1、実施例2および実施例3のように、抜き加工やレーザー加工によって低反射フィルム30の外縁30aを形成し、特に加工の条件を調整することによって、第1外縁領域30dの幅W1を100μmより小さくできることがわかった。また、実施例1、実施例2および実施例3のように、抜き加工やレーザー加工によって低反射フィルム30の外縁30aを形成し、特に加工の条件を調整することによって、低反射フィルム30の外縁30aの近傍に形成される白く視認される領域の幅W4を小さくできることがわかった。また、図7A乃至図7Fを参照することによって、図7A乃至図7Fのそれぞれにおいて、低反射フィルム30の外縁30aの近傍に形成される白く視認される領域の幅W4は、外縁30aの延びる方向において、およそ一定となっていることがわかった。
【0228】
また、実施例1、実施例2および実施例3においては、上述したように、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さく、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さかった。これに対して、比較例1、比較例2および比較例3においては、上述したように、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計は100μm以上であり、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計は100μm以上であった。また、実施例1、実施例2および実施例3においては、図7A図7Bおよび図7Cに示すように、撮影されたデジタル写真を観察する限りにおいても、低反射フィルム30の外縁30aの近傍に形成される黒く視認される領域の幅が、小さくなっていることがわかった。これに対して、比較例1、比較例2および比較例3においては、図7Fに示すように、撮影されたデジタル写真を観察すると、低反射フィルム30の外縁30aの近傍に形成される黒く視認される領域の幅が、大きくなっていることがわかった。このことから、実施例1、実施例2および実施例3のように、抜き加工やレーザー加工によって低反射フィルム30の外縁30aを形成し、特に加工の条件を調整することによって、第2外縁領域30gの幅W2と第1外縁領域30dの幅W1との合計を100μmより小さくでき、第3外縁領域30hの幅W3と第1外縁領域30dの幅W1との合計が100μmより小さくできることがわかった。また、実施例1、実施例2および実施例3のように、抜き加工やレーザー加工によって低反射フィルム30の外縁30aを形成し、特に加工の条件を調整することによって、低反射フィルム30の外縁30aの近傍に形成される黒く視認される領域の幅を小さくできることがわかった。
【0229】
また、表1に示すように、外縁30aの視認されやすさの官能評価試験において、実施例1においては、外縁30aが視認されにくいと判定された。また、実施例2および実施例3においては、外縁30aが特に視認されにくいと判定された。これに対して、比較例1においては、外縁30aが特に視認されやすいと判定された。また、比較例2および比較例3においては、外縁30aが視認されやすいと判定された。このように、実施例1、実施例2および実施例3においては、外縁30aを視認されにくくすることができた。
【0230】
また、表1に示すように、印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を受けるかの官能評価試験において、実施例1、実施例2および実施例3においては、低反射フィルム30による印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を与える作用が十分に発揮されていると判定された。これに対して、比較例1、比較例2および比較例3においては、低反射フィルム30による印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を与える作用が不十分であると判定された。このように、実施例1、実施例2および実施例3においては、低反射フィルム30による印刷領域35の表示が空中に浮いているような印象を与えることができた。
【0231】
また、表1に示すように、可視光反射率の測定試験において、実施例1、実施例2および実施例3、並びに比較例1、比較例2および比較例3のいずれも、可視光反射率が2%以下であることがわかった。
【0232】
また、表1に示すように、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の測定試験において、実施例1、実施例2および実施例3においては、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値の、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値に対する比率が、それぞれ1.3、1.3、1.4であった。これに対して、比較例1、比較例2および比較例3においては、当該比率が、それぞれ3.4、2.2、2.3であった。このように、実施例1、実施例2および実施例3においては、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の最大値を、帯状領域30f内における、複数方向から光が照射される環境での反射光の強度の平均値に比べて2.0倍以下にできた。
【0233】
また、表1に示すように、低反射フィルム30の外縁30aの触感試験において、実施例1、実施例2および実施例3においては、使用者がちくちくとした触感を感じることが十分に抑制されていた。これに対して、比較例1および比較例2においては、使用者がちくちくとした触感を感じることが特に十分に抑制されていなかった。また、比較例3においては、使用者がちくちくとした触感を感じることが十分に抑制されていなかった。このように、実施例1、実施例2および実施例3においては、使用者がちくちくとした触感を感じることを、十分に抑制できた。
【0234】
上記各実施の形態及び各変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記各実施の形態及び各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0235】
30 低反射フィルム
30a 外縁
30d 第1外縁領域
30e 中央領域
30f 帯状領域
30g 第2外縁領域
30h 第3外縁領域
30m 第1接続領域
30n 第2接続領域
34 透明領域
35 印刷領域
60 表示物付き低反射フィルム
61 表示物
70 支持部
81 書籍用カバー
82 書籍
100 支持部付き低反射フィルム
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F