(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042606
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】支持地盤の試験方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20240321BHJP
E02D 7/20 20060101ALI20240321BHJP
E02D 7/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
E02D1/02
E02D7/20
E02D7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147425
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】522368075
【氏名又は名称】株式会社Kホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(72)【発明者】
【氏名】久保 春人
【テーマコード(参考)】
2D043
2D050
【Fターム(参考)】
2D043AA01
2D043BA03
2D050CB03
2D050CB23
2D050FF07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】重機の測定機器を用いたとき、杭打ち孔が支持地盤まで達しているか否かを正確に判定することは困難である。
【解決手段】杭打ち孔の想定支持地盤の数m前で掘削工事を止めて行う試験としてケリーバの先端にスクリューポイントを取り付けて、このスクリューポイントを支持地盤へ貫入させることで、支持地盤の強度を試験する。即ち、この発明の支持地盤の試験方法は、ケリーバの先端にスクリューポントを連結し、該スクリューポイントを回転させながらこれを支持地盤へ貫入させるステップと、ケリーバ及びスクリューポイントの重量Wを特定するステップと、スクリューポイントを所定量貫入したときの回転数nを測定するステップと、スクリューポイントが貫入するときの回転速度vを測定するステップと、換算強度N
1を演算するステップとを含み、近傍のボーリング調査で得られたN値との相関性を用いて、支持地盤の耐力と深度を把握することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打ち孔の掘削工事において想定支持地盤の深度の数m前で前記掘削工事を中断する工事中断ステップと、
スクリューポイントを用いた試験を行って前記支持地盤の強度の深度分布を把握する支持地盤強度の特定ステップと、
前記掘削工事を終了させる終了ステップと、を含む、
支持地盤の試験方法。
【請求項2】
前記特定ステップは、
ケリーバの先端にスクリューポントを連結し、該スクリューポイントを回転させながらこれを前記支持地盤へ貫入させるステップと、
前記ケリーバ及びスクリューポイントの重量Wを特定するステップと、
前記スクリューポイントを所定量貫入したときの回転数nを測定するステップと、
前記スクリューポイントが貫入するときの回転速度vを測定するステップと、
N1=(a・W + b・n)×(c+d・v)を演算する演算ステップと、
ここに、N‘は換算強度を示し、a、b、c、dは定数である、
を含む、
請求項1に記載の支持地盤の試験方法。
【請求項3】
参照地盤の強度とそれに対応する換算強度N1をとの関係を予め準備するステップと、
前記演算ステップで得られた換算強度N1を前記関係に照らして、地盤の強度の深度分布を特定する特定ステップと、更に含む
請求項2に記載の試験方法。
【請求項4】
前記回転数nを測定するときの前記所定量は10~50cmである、請求項2に記載の試験方法。
【請求項5】
前記特定ステップは、
ケリーバの先端にスクリューポントを連結し、該スクリューポイントを回転させながらこれを前記支持地盤へ貫入させるステップと、
前記スクリューポイントの先端にかかる重量Wを地上で事前に計測するステップと、
前記スクリューポイントを所定量貫入したときの回転数nを測定するステップと、
前記スクリューポイントが貫入するときの回転速度vを測定するステップと、
前記回転数nと前記回転速度vと積の関数に基づき、換算強度N1を演算する演算ステップと、を含む
請求項1に記載の試験方法。
【請求項6】
前記回転速度vは、前記スクリューポイントが前記所定量貫入したときの平均回転速度である、請求項2~5の何れかに記載の試験方法。
【請求項7】
前記スクリュウーポイントはSWS試験で用いるそれの、2~10倍の大きさである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は杭打ち孔の支持地盤の試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の強度の試験方法としてスクリューウェイト貫入試験(以下「SWS試験」と略す)やボーリング試験が提案されている。
SWS試験は戸建用として、比較的軟弱な地表の地盤の強度の調査に適している。
大規模建物の地盤調査において、杭打ち孔の支持地盤の強度の調査には一般的にボーリング試験が用いられている。
【0003】
杭打ち孔の掘削は一般的には次のようにして行われる。
最初にボーリング試験を実行して、硬質な地盤(支持地盤)の深さを想定する。
杭打ちが求められる地面の全ての領域(対象領域)に対してボーリング試験を実行することは現実的ではない。一般的には、得られたボーリング試験のデータから対象領域における支持地盤の深さを想定している。
【0004】
実際の杭打ち孔の掘削は次の様にして行われる。即ち、重機に回転機、ケリーバ及びドリルを取付ける。ケリーバを介して回転機の回転をドリルに伝え、支持地盤に達するまで孔を掘削する。
杭打ち孔を掘削した位置において実際の支持地盤の深さが、ボーリング試験により想定された深さと一致していれば何ら問題が生じないが、実際には、両者の深さが異なることがある。例えば、想定された深さまで孔の掘削をすすめたとしても、掘削抵抗に変化がないとき、杭打ち孔は支持地盤に到達していないおそれがある。そこで、一般的には、オペレータが重機に備えられた測定機器をモニタリングしながら更に掘削を進めて、掘削抵抗が強くなった時点で掘削作業を停止させ、杭打ち孔が実際の支持地盤まで達したものとしている。
【0005】
本願に関係する先行技術文献として特許文献1及び特許文献2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007―039985号公報
【特許文献2】特開2020-094350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
重機の測定機器を用いて得られる情報が、地盤の強度を正確に反映しているか否かは不明である。換言すれば、重機の測定機器を用いたとき、杭打ち孔が支持地盤まで達しているか否かを正確に判定することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた。
その結果、下記の発明に想到した。
即ち、杭打ち用の孔の底の支持地盤の試験方法であって、
ケリーバの先端にスクリューポントを連結し、該スクリューポイントを回転させながらこれを前記支持地盤へ貫入させるステップと、
前記ケリーバ及びスクリューポイントの重量Wを特定するステップと、
前記スクリューポイントを所定量貫入したときの回転数nを測定するステップと、
前記スクリューポイントが貫入するときの回転速度vを測定するステップと、
N1=(a・W + b・n)×(c+d・v) (式1) を演算する演算ステップと、
【0009】
ここに、N1は換算強度を示し、a、b、c、dは定数である、
を含む、
支持地盤の試験方法。
【0010】
このように規定されるこの発明の第1局面では、杭打ち孔の掘削工事を行う際に、想定支持地盤より数m前に達したときに、一旦掘削作業を中断し、ケリーバの先端にスクリューポイントを取り付けて、掘削工事を中断した孔の底面(試験対象面)へこのスクリューポイントを貫入させる。
そして、スクリューポイントを貫入させる試験を用い、スクリューポイントが存在する(位置)各深度の疑似強度N1を特定する。この疑似強度N1を特定することにより、実際の地層構成における強度の深度分布が把握できる。すなわち、杭打ち孔の実際の支持地盤の地層構成を自前で正確に判定できることとなる。
なお、支持地盤は硬質であるため、SWS試験に適用される疑似強度を演算するための式よりも、この発明で提案する(式1)を用いることが好ましい。
なお、(式1)の代わりに、下記(式2)を用いることもできる。
(式2):N1={a‘・f(W) + b’・f(n) + e・f(T)}×{c‘+d’・f(v)}
ここに、a‘、b’、c‘、d’及びeは定数。Tはトルクである。式中のf(x)はf(x)=x1/αと表すことができる。
【0011】
このように規定されるこの発明の支持地盤の試験方法は、構造上、ケリーバの先端のドリルをスクリューポイントに交換するだけで行えるので、試験を安価にかつ簡易に実行できる。
【0012】
ケリーバやスクリューポイントの重量Wは予め求めておこくことができる定数であるため、(式1):N1=(a・W + b・n)×(c+d・v)に従えば、スクリューポイントの回転数/所定の貫入距離と、貫入時のスクリューポイントの回転速度とから、換算強度N1を特定できる。回転数や回転速度の測定は容易であるので、換算強度N1を特定するための演算も容易に行える。
なお、この発明に用いられるスクリューポイントはSWS試験で通常用いられているスクリューポイントより大きく、ウェイトの関係から後者のそれは2倍から10倍程度大きくなる。
【0013】
強度が定義されている参照支持地盤について、(式1)を実行して換算強度N1を演算し、参照支持地盤の強度と換算強度N1との関係(換算関係)を予め定めておけば、試験対象となる支持地盤に対して(式1)を実行して得られる換算強度N1より、試験対象となる支持地盤の強度を特定することができる(第2局面)。
参照支持地盤の強度(耐力)として、杭打ち孔の近傍において実行されていた、若しくはあらたに実行するボーリング調査の結果を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1はこの発明の試験方法の実施形態を示す模式図である。
【
図2】
図2はボーリング試験結果とこの発明の試験結果を対比する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、この発明の実施形態の試験方法を示す。
図1において、符号1は杭打ち孔、符号3は支持地盤を示す。符号11はケリーバ、符号13はスクリューポイント、符号15は回転機である。
ケリーバ11の上端は、スイベル等を介して回転自在に図示しない重機に懸下される。ケリーバ11の下端にはスクリューポイント13が接続されている。孔1を掘削する際には、ケリーバ11の下端にはドリルが接続されていた。
【0016】
ケリーバ11に回転機15が外挿されている。この回転機15はケリーバ11の外周を把持し、これを回転させるとともに、ケリーバ11の軸方向の移動を許容する。回転機15の回転は図示しない制御装置により制御される。
回転機15には、貫入量測定部21、回転数測定部23、回転速度測定部25が備えられる。貫入量測定部21はケリーバ11の軸方向下方への移動量を測定する。回転数測定部23はケリーバ11の周方向の移動量を測定する。回転速度測定部25はケリーバ11の回転速度を測定する。
【0017】
貫入量測定部21により測定されるケリーバ11の軸方向の移動量はスクリューポイント13が支持地盤3へ貫入した量(距離)を示す。その貫入量が所定量になるまでに要したスクリューポイント13の回転数nが、回転数測定部23により求められる。
【0018】
ケリーバ11の重量をW1、スクリューポイント13の重量をW2とすると、スクリューポイント13の先端にかかる重量WはW1+W2となる。なお、回転機15の重量もスクリューポイント13の先端にかかるときは、その重量も考慮する必要がある。
スクリューポイント13の先端にかかる重量は、予め、地上において測定することができるので、手間がかからず、かつ正確な値が得られる。
【0019】
ケリーバ等の重量は、SWS試験に用いられる重りの重量Wswに比べて大きいので、硬質な支持地盤へスクリューポイント13を貫入可能となる。
【0020】
貫入量測定部21の出力と回転数測定部23の出力とにより、スクリューポイントを所定量貫入したときの回転数nを測定できる。回転数nを求めるときの基準となる貫入量は10~50cm、更に好ましくは20~30cmとする。
【0021】
スクリューポイント13の回転速度vは回転速度測定部25により測定される。この回転速度vは、回転機15のトルクを一定としたとき、支持地盤3の強度に依存する。即ち、その強度が大きくなると回転速度vは小さくなり、他方支持地盤3の強度が小さくなると回転速度vは大きくなる。この回転速度vは、回転数nの特定の基準となる貫入量(貫入距離)間における平均回転速度とすることができる。
【0022】
この発明において、回転速度vをパラメータとするのは、SWS試験が適用される地盤に比べて、試験対象となる支持地盤が硬いこと、及び、スクリューポイントの先端にかかる重量が大きいことに起因している。本発明者の検討によれば、換算強度N1を得るための式に回転速度vをパラメータに加えないと、得られる換算強度N1が安定しない。
【0023】
(式1)N1=(a・W + b・n)×(c+d・v)における定数a、b、c、dは、参照支持地盤の強度と換算強度N1とを関係(換算関係)付けられるように任意に設定可能である。
この発明の試験方法を実行するにあたり、スクリューポイントの先端にかかる重量Wを所定の重量に固定すれば、(式1)N1=(a・W + b・n)×(c+d・v)のa・Wの項は定数になる。よって、換算強度N1は回転数nと回転速度vの積の関数として表現できる。
【0024】
この発明による支持地盤の試験方法を
図1及び
図2を参照しながら説明する。
最初に、杭打ち孔1を掘削する予定の極近傍の参照地盤についてのボーリング調査を行う。ボーリング調査によって得られたN値の深度分布を
図2Aに示す。
図2の深度分布を参照にして、支持地盤の深度(ボーリング支持地盤)を想定する。かかるボーリング支持地盤を基準に、1m~10mの範囲で、かつN値の分布を参照しながら、調査開始深度を特定する。
次に、ケリーバ11の先端にドリルを取付て、杭打ち孔1として、調査開始深度まで掘削孔を掘削する。
【0025】
その後、ケリーバ11のドリルをスクリューポイント13に取り換えて、試験を開始する。
貫入測定部21、回転数測定部23及び回転速度測定部25の出力より、ケリーバ11の回転数n及び回転速度vを特定し、(式1)へ代入して、換算強度N
1を演算する。得られた換算強度N
1の深度分布を
図2Bに示す。このとき、スクリュードライバの先端の荷重Wは地上において測定してあるものとし、定数a、b、c、dを調整して、
図2Aのプロファイルへ
図2Bのプロファイルを近似させる。
この例では、
図2Bのデータを得た後に、ケリーバ11を引き上げてスクリューポイント13をドリルに取り換え、杭打ち孔1の掘削を再開し、
図2A若しくはBにおいて支持地盤と認定された深度まで、掘削を続行する。
【0026】
杭打ちが求められる領域の全てにおいてボーリング試験は行えないが、
図1及び
図2Bに示す通り、杭打ち孔1の掘削を中断し、その後、スクリューポイント13による本発明の試験を実行することで、ボーリング試験と同程度の正確さで支持地盤の深度を特定することができる。
ここに、杭打ち孔1の掘削を中断する深さは、ボーリング試験により想定される支持地盤の深度より1m~10m上とすることが作業効率の観点から好ましい。
【0027】
以上のように本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 杭打ち孔
3 支持地盤
11 ケリーバ
13 スクリューポイント