(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042638
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】フィルタ装置およびそれを備えた高周波フロントエンド回路
(51)【国際特許分類】
H03H 7/09 20060101AFI20240321BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20240321BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H03H7/09 Z
H01G4/40 321A
H01F27/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037586
(22)【出願日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2022147255
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 圭介
【テーマコード(参考)】
5E070
5E082
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB01
5E070CB03
5E070CB13
5E070CB17
5E070EA01
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5E082GG10
5J024AA01
5J024BA11
5J024CA04
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5J024CA09
5J024DA04
5J024DA29
5J024DA31
5J024DA33
5J024DA34
5J024DA35
5J024EA03
5J024KA02
5J024KA04
(57)【要約】
【課題】複数段の共振器を含む積層型のフィルタ装置において、装置サイズの増加を抑制しつつ、共振器間の結合度を増加する。
【解決手段】フィルタ装置100は、本体110と、入力端子T1と、出力端子T2と、接地端子GNDと、共振器RC2,RC3とを備える。共振器RC2,RC3は、本体110に配置され、互いに電磁界結合することによって入力端子T1から出力端子T2に信号を伝達する。共振器RC2,RC3の各々は、ノードN2B,N3BからキャパシタC2,C3を介して接地端子GNDに接続された第1経路と、当該ノードN2B,N3BからキャパシタC2,C3を介さずに接地端子GNDに接続された第2経路とを含む。共振器RC2の第2経路および共振器RC3の第2経路は、一部が共通化されている。フィルタ装置100は、共振器RC2のノードN2Bと、共振器RC3のノードN3Bとに接続された第3経路L23Aをさらに備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ装置であって、
本体と、
入力端子と、
出力端子と、
接地端子と、
前記本体に配置され、互いに電磁界結合することによって前記入力端子から前記出力端子に信号を伝達する第1共振器および第2共振器とを備え、
前記第1共振器および前記第2共振器の各々は、
第1ノードからキャパシタを介して前記接地端子に接続された第1経路と、
当該第1ノードからキャパシタを介さずに前記接地端子に接続された第2経路とを含み、
前記第1共振器の第2経路および前記第2共振器の第2経路は、一部が共通化されており、
前記フィルタ装置は、前記第1共振器の第1ノードと前記第2共振器の第1ノードとに接続された第3経路をさらに備える、フィルタ装置。
【請求項2】
前記第1共振器の第2経路、前記第2共振器の第2経路、および、前記第3経路によって環状構造が形成される、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記本体は複数の誘電体層が積層された構成を有しており、
前記環状構造は、前記本体の同一の層に形成されている、請求項2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記フィルタ装置は、
前記接地端子に接続された接地電極と、
前記接地電極に接続された共通ビアとをさらに備え、
前記第1共振器は、
前記接地電極に対向して配置された第1キャパシタ電極と、
前記第1キャパシタ電極に接続された第1ビアと、
前記第1ビアおよび前記共通ビアに接続された第1平板電極とを含み、
前記第2共振器は、
前記接地電極に対向して配置された第2キャパシタ電極と、
前記第2キャパシタ電極に接続された第2ビアと、
前記第2ビアおよび前記共通ビアに接続された第2平板電極とを含み、
前記フィルタ装置は、前記第1ビアおよび前記第2ビアに接続された第3平板電極をさらに備える、請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記第1キャパシタ電極と前記第1ビアによって、前記第1共振器の第1経路が構成され、
前記第1平板電極と前記共通ビアによって、前記第1共振器の第2経路が構成され、
前記第2キャパシタ電極と前記第2ビアによって、前記第2共振器の第1経路が構成され、
前記第2平板電極と前記共通ビアによって、前記第2共振器の第2経路が構成され、
前記第3平板電極によって、前記第3経路が構成される、請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記本体は複数の誘電体層が積層された構成を有しており、
前記環状構造は、前記本体の複数の層にわたって形成されている、請求項2に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記フィルタ装置は、
前記接地端子に接続された接地電極と、
前記接地電極と異なる誘電体層に配置された共通電極と、
前記接地電極と前記共通電極とに接続された共通ビアとをさらに備え、
前記第1共振器は、
前記接地電極に対向して配置された第3キャパシタ電極と、
前記第3キャパシタ電極に接続された第3ビアと、
前記共通電極に接続された第4ビアと、
前記第3ビアおよび前記第4ビアに接続された第4平板電極とを含み、
前記第2共振器は、
前記接地電極に対向して配置された第4キャパシタ電極と、
前記第4キャパシタ電極に接続された第5ビアと、
前記共通電極に接続された第6ビアと、
前記第5ビアおよび前記第6ビアとに接続された第5平板電極とを含み、
前記フィルタ装置は、前記第3ビアと前記第5ビアとを接続する第6平板電極をさらに備える、請求項6に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記第3キャパシタ電極と前記第3ビアによって、前記第1共振器の第1経路が構成され、
前記第4平板電極、前記第3ビア、前記第4ビア、前記共通電極および前記共通ビアによって、前記第1共振器の第2経路が構成され、
前記第4キャパシタ電極と前記第5ビアによって、前記第2共振器の第1経路が構成され、
前記第5平板電極、前記第5ビア、前記第6ビア、前記共通電極および前記共通ビアによって、前記第2共振器の第2経路が構成され、
前記第6平板電極によって、前記第3経路が構成される、請求項7に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
前記入力端子に接続され、前記第1共振器と電磁界結合する第3共振器と、
前記出力端子に接続され、前記第2共振器と電磁界結合する第4共振器とをさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
フィルタ装置であって、
入力端子と、
出力端子と、
接地端子と、
互いに電磁界結合することによって前記入力端子から前記出力端子に信号を伝達する第1共振器および第2共振器とを備え、
前記第1共振器は、
第1ノードと前記接地端子との間に接続された第1キャパシタと、
前記第1ノードに一方端が接続された第1インダクタと、
前記第1インダクタの他方端に接続された第2インダクタと、
前記第2インダクタの他方端と前記接地端子との間に接続された共通インダクタとを含み、
前記第2共振器は、
第2ノードと前記接地端子との間に接続された第2キャパシタと、
前記第2ノードに一方端が接続された第3インダクタと、
前記第3インダクタの他方端と前記共通インダクタとの間に接続された第4インダクタとを含み、
前記フィルタ装置は、前記第1インダクタの他方端と前記第3インダクタの他方端との間に接続された第5インダクタをさらに備える、フィルタ装置。
【請求項11】
前記フィルタ装置は、特定の周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタである、請求項1または請求項10に記載のフィルタ装置。
【請求項12】
フィルタ装置であって、
本体と、
入力端子と、
出力端子と、
接地端子と、
前記本体に配置され、互いに電磁界結合することによって前記入力端子から前記出力端子に信号を伝達する第5共振器および第6共振器とを備え、
前記第5共振器は、
第3ノードと前記入力端子との間に接続された第3キャパシタと、
前記第3ノードに一方端が接続された第6インダクタと、
前記第6インダクタの他方端に接続された第7インダクタと、
前記第7インダクタの他方端と前記接地端子との間に接続された共通インダクタとを含み、
前記第6共振器は、
前記出力端子と前記接地端子との間に接続された第4キャパシタと、
前記出力端子に一方端が接続された第8インダクタと、
前記第8インダクタの他方端と前記共通インダクタとの間に接続された第9インダクタとを含み、
前記フィルタ装置は、前記第6インダクタの他方端と前記第8インダクタの他方端との間に接続された第10インダクタをさらに備える、フィルタ装置。
【請求項13】
前記第5共振器および前記第6共振器に接続された第5キャパシタをさらに備える、請求項12に記載のフィルタ装置。
【請求項14】
フィルタ装置であって、
本体と、
入力端子と、
出力端子と、
接地端子と、
前記本体に配置され、互いに電磁界結合することによって前記入力端子から前記出力端子に信号を伝達する第5共振器および第7共振器とを備え、
前記第5共振器は、
第3ノードと前記入力端子との間に接続された第3キャパシタと、
前記第3ノードに一方端が接続された第6インダクタと、
前記第6インダクタの他方端に接続された第7インダクタと、
前記第7インダクタの他方端と前記接地端子との間に接続された共通インダクタとを含み、
前記第7共振器は、
第4ノードと前記出力端子との間に接続された第6キャパシタと、
前記第4ノードに一方端が接続された第8インダクタと、
前記第8インダクタの他方端と前記共通インダクタとの間に接続された第9インダクタとを含み、
前記フィルタ装置は、前記第6インダクタの他方端と前記第8インダクタの他方端との間に接続された第10インダクタをさらに備える、フィルタ装置。
【請求項15】
前記第5共振器および前記第7共振器に接続された第5キャパシタをさらに備える、請求項14に記載のフィルタ装置。
【請求項16】
請求項1,10,12,14のいずれか1項に記載のフィルタ装置を備えた、高周波フロントエンド回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ装置およびそれを備えた高周波フロントエンド回路に関し、より特定的には、複数の共振器により構成されるフィルタ装置のフィルタ特性を向上させるための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2022/071191号明細書(特許文献1)には、複数段の共振器を含む積層型のフィルタ装置が開示されている。このようなフィルタ装置においては、共振器間の結合度によってフィルタ特性を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/071191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共振器間の結合度を増加させる際、たとえば、対象の共振器を構成するインダクタのインダクタンス値を調整することによって実現する場合がある。インダクタンス値を大きくして調整する場合、インダクタを構成する電極あるいはビアを長くする必要がある。しかしながら、その場合、装置全体の大きさが大きくなるため、小型化および低背化が要求される製品においては、所望の製品サイズが実現できなくなる場合が生じ得る。
【0005】
逆に、インダクタンス値を小さくして調整する場合、所望の共振周波数を実現するためには、共振器を構成するキャパシタのキャパシタンス値を大きくすることが必要となる。この場合、キャパシタの構成する電極面積が確保できなかったり、共振器のインピーダンスが低下してしまうために、結果的に所望のフィルタ特性が得られない状態となる可能性がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数段の共振器を含む積層型のフィルタ装置において、装置サイズの増加を抑制しつつ、共振器間の結合度を増加することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の局面に係るフィルタ装置は、本体と、入力端子と、出力端子と、接地端子と、第1共振器および第2共振器とを備える。第1共振器および第2共振器は、本体に配置され、互いに電磁界結合することによって入力端子から出力端子に信号を伝達する。第1共振器および第2共振器の各々は、第1ノードからキャパシタを介して接地端子に接続された第1経路と、当該第1ノードからキャパシタを介さずに接地端子に接続された第2経路とを含む。第1共振器の第2経路および第2共振器の第2経路は、一部が共通化されている。フィルタ装置は、第1共振器の第1ノードと第2共振器の第1ノードとに接続された第3経路をさらに備える。
【0008】
本開示の第2の局面に係るフィルタ装置は、入力端子と、出力端子と、接地端子と、第1共振器および第2共振器とを備える。第1共振器および第2共振器は、互いに電磁界結合することによって入力端子から出力端子に信号を伝達する。第1共振器は、第1ノードと接地端子との間に接続された第1キャパシタと、第1ノードに一方端が接続された第1インダクタと、第1インダクタの他方端に接続された第2インダクタと、第2インダクタの他方端と接地端子との間に接続された共通インダクタとを含む。第2共振器は、第2ノードと接地端子との間に接続された第2キャパシタと、第2ノードに一方端が接続された第3インダクタと、第3インダクタの他方端と共通インダクタとの間に接続された第4インダクタとを含む。フィルタ装置は、第1インダクタの他方端と第3インダクタの他方端との間に接続された第5インダクタをさらに備える。
【0009】
本開示の第3の局面に係るフィルタ装置は、本体と、入力端子と、出力端子と、接地端子と、第5共振器および第6共振器とを備える。第5共振器および第6共振器は、本体に配置され、互いに電磁界結合することによって入力端子から出力端子に信号を伝達する。第5共振器は、第3ノードと入力端子との間に接続された第3キャパシタと、第3ノードに一方端が接続された第6インダクタと、第6インダクタの他方端に接続された第7インダクタと、第7インダクタの他方端と接地端子との間に接続された共通インダクタとを含む。第6共振器は、第4ノードと接地端子との間に接続された第4キャパシタと、第4ノードに一方端が接続された第8インダクタと、第8インダクタの他方端と共通インダクタとの間に接続された第9インダクタとを含む。フィルタ装置は、第6インダクタの他方端と第8インダクタの他方端との間に接続された第10インダクタをさらに備える。
【0010】
本開示の第4の局面に係るフィルタ装置は、本体と、入力端子と、出力端子と、接地端子と、第5共振器および第7共振器とを備える。第5共振器および第7共振器は、本体に配置され、互いに電磁界結合することによって入力端子から出力端子に信号を伝達する。第5共振器は、第3ノードと入力端子との間に接続された第3キャパシタと、第3ノードに一方端が接続された第6インダクタと、第6インダクタの他方端に接続された第7インダクタと、第7インダクタの他方端と接地端子との間に接続された共通インダクタとを含む。第7共振器は、第4ノードと出力端子との間に接続された第6キャパシタと、第4ノードに一方端が接続された第8インダクタと、第8インダクタの他方端と共通インダクタとの間に接続された第9インダクタとを含む。フィルタ装置は、第6インダクタの他方端と第8インダクタの他方端との間に接続された第10インダクタをさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るフィルタ装置においては、2つの共振器の各々において、キャパシタを介さずに接地端子に接続される経路(第2経路)同士が、第3経路によって接続されている。このような構成によって、装置サイズの増加を抑制しつつ、共振器間の結合度を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1のフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路を有する通信装置のブロック図である。
【
図2】実施の形態1のフィルタ装置の等価回路図である。
【
図3】実施の形態1のフィルタ装置の外形斜視図である。
【
図4】
図3のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
【
図5】実施の形態1のフィルタ装置の2-3段目のフィルタに対応する比較例1を示す図である。
【
図6】実施の形態1のフィルタ装置の2-3段目のフィルタにおける結合度を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1および比較例1のフィルタ装置における、共振周波数と共振器間結合度の関係を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1のフィルタ装置におけるフィルタ特性を説明するための図である。
【
図9】実施の形態1のフィルタ装置における2-3段目のフィルタの模式図である。
【
図10】変形例1のフィルタ装置における2-3段目のフィルタの模式図である。
【
図11】変形例2のフィルタ装置における2-3段目のフィルタの模式図である。
【
図12】変形例3のフィルタ装置における2-3段目のフィルタの模式図である。
【
図13】実施の形態2のフィルタ装置の等価回路図である。
【
図14】比較例2のフィルタ装置の等価回路図である。
【
図16】実施の形態2のフィルタ装置におけるフィルタ特性を説明するための図である。
【
図17】実施の形態3のフィルタ装置の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
[実施の形態1]
(通信装置の基本構成)
図1は、実施の形態1のフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路20を有する通信装置10のブロック図である。通信装置10は、たとえば、スマートフォンに代表される携帯端末、あるいは、携帯電話基地局である。
【0015】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナ12と、高周波フロントエンド回路20と、ミキサ30と、局部発振器32と、D/Aコンバータ(DAC)40と、RF回路50とを備える。また、高周波フロントエンド回路20は、バンドパスフィルタ22,28と、増幅器24と、減衰器26とを含む。なお、
図1においては、高周波フロントエンド回路20が、アンテナ12から高周波信号を送信する送信回路を含む場合について説明するが、高周波フロントエンド回路20はアンテナ12を介して高周波信号を受信する受信回路を含んでいてもよい。
【0016】
通信装置10は、RF回路50から伝達された送信信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ12から放射する。RF回路50から出力された送信信号である変調済みのデジタル信号は、D/Aコンバータ40によってアナログ信号に変換される。ミキサ30は、D/Aコンバータ40によってデジタル信号からアナログ信号に変換された送信信号を、局部発振器32からの発振信号と混合して高周波信号へとアップコンバートする。バンドパスフィルタ28は、アップコンバートによって生じた不要波を除去して、所望の周波数帯域の送信信号のみを抽出する。減衰器26は、送信信号の強度を調整する。増幅器24は、減衰器26を通過した送信信号を、所定のレベルまで電力増幅する。バンドパスフィルタ22は、増幅過程で生じた不要波を除去するとともに、通信規格で定められた周波数帯域の信号成分のみを通過させる。バンドパスフィルタ22を通過した送信信号は、アンテナ12から放射される。
【0017】
上記のような通信装置10におけるバンドパスフィルタ22,28として、本開示に対応したフィルタ装置を採用することができる。
【0018】
(フィルタ装置の構成)
次に、
図2~
図4を用いて、実施の形態1のフィルタ装置100の詳細な構成について説明する。
【0019】
図2は、フィルタ装置100の等価回路図である。
図2を参照して、フィルタ装置100は、入力端子T1と、出力端子T2と、共振器RC1~RC4を備える。共振器RC1~RC4の各々は、インダクタとキャパシタとが並列接続されたLC並列共振器である。
【0020】
共振器RC1は、入力端子T1と接地端子GNDとの間に直列に接続されたインダクタL1,L5と、当該インダクタL1,L5に並列に接続されたキャパシタC1とを含む。インダクタL1とキャパシタC1との間の接続ノードN1Aは、入力端子T1に接続されている。
【0021】
共振器RC2は、直列に接続されたインダクタL2A,L2B,L23B,L5と、当該インダクタL2A,L2B,L23B,L5に並列に接続されたキャパシタC2とを含む。インダクタL2AとキャパシタC2との接続ノードN2Aは、キャパシタC12を介して共振器RC1の接続ノードN1A(すなわち、入力端子T1)に接続されている。
【0022】
共振器RC3は、直列に接続されたインダクタL3A,L3B,L23B,L5と、当該インダクタL3A,L3B,L23B,L5に並列に接続されたキャパシタC3とを含む。インダクタL3AとキャパシタC3との接続ノードN3Aは、キャパシタC34を介して共振器RC4の接続ノードN4A(すなわち、出力端子T2)に接続されている。また、接続ノードN3Aは、キャパシタC23を介して、共振器RC2の接続ノードN2Aにも接続されている。さらに、インダクタL3AおよびインダクタL3Bの間の接続ノードN3Bと、共振器RC2におけるインダクタL2AおよびインダクタL2Bの間の接続ノードN2Bとの間に、インダクタL23Aが接続されている。
【0023】
共振器RC4は、出力端子T2と接地端子GNDとの間に直列に接続されたインダクタL4,L5と、当該インダクタL4,L5に並列に接続されたキャパシタC4とを含む。インダクタL4とキャパシタC4との接続ノードN4Aは、出力端子T2に接続されている。また、接続ノードN4Aは、キャパシタC14を介して、共振器RC1の接続ノードN1A(すなわち、入力端子T1)に接続されている。
【0024】
上記のように、インダクタL5は、共振器RC1~RC4で共用されている。また、インダクタL23Bは、共振器RC2,RC3で共用されている。
【0025】
各共振器同士は、磁気結合により結合している。このように、フィルタ装置100は、入力端子T1と出力端子T2との間に、互いに磁気結合する4段の共振器が配置された構成を有している。各共振器の共振周波数を調整することによって、フィルタ装置100は、所望の周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタとして機能する。
【0026】
図2における接続ノードN2B,N3Bは、本開示における「第1ノード」の一例である。この場合、共振器RC2においては、接続ノードN2BからインダクタL2AおよびキャパシタC2を経由して接地端子GNDに至る経路が本開示における「第1経路」に対応する。また、接続ノードN2BからインダクタL2B,L23B,L5を経由して接地端子GNDに至る経路が本開示における「第2経路」に対応する。同様に、共振器RC3においては、接続ノードN3BからインダクタL3AおよびキャパシタC3を経由して接地端子GNDに至る経路が本開示における「第1経路」に対応する。また、接続ノードN3BからインダクタL3B,L23B,L5を経由して接地端子GNDに至る経路が本開示における「第2経路」に対応する。そして、接続ノードN2Bと接続ノードN3Bとを接続するインダクタL23Aが、本開示における「第3経路」に対応する。
【0027】
なお、共振器RC1と共振器RC2とに接続されるキャパシタC12は、
図2における接続ノードN1Aと接続ノードN2Bとの間に接続されてもよい。また、共振器RC3と共振器RC4とに接続されるキャパシタC34は、
図2における接続ノードN3Bと接続ノードN4Aとの間に接続されてもよい。
【0028】
図3はフィルタ装置100の外観斜視図であり、
図4はフィルタ装置100の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
【0029】
図3および
図4を参照して、フィルタ装置100は、複数の誘電体層LY1~LY10が積層方向に積層された、直方体または略直方体の本体110を備えている。誘電体層LY1~LY10は、たとえば低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)などのセラミック、あるいは樹脂により形成されている。本体110の内部において、各誘電体層に設けられた複数の電極、および、誘電体層間に設けられた複数のビアによって、LC並列共振器のインダクタおよびキャパシタが構成される。なお、本明細書において「ビア」とは、異なる誘電体層に設けられた電極を接続するために、誘電体層中に設けられる導体を示す。ビアは、たとえば、導電ペースト、めっき、および/または金属ピンなどによって形成される。
【0030】
なお、以降の説明においては、本体110における誘電体層LY1~LY10の積層方向を「Z軸方向」とし、Z軸方向に垂直であって本体110の長辺に沿った方向を「X軸方向」とし、本体110の短辺に沿った方向を「Y軸方向」とする。また、以下では、各図におけるZ軸の正方向を上側、負方向を下側と称する場合がある。
【0031】
本体110の上面111(誘電体層LY1)には、フィルタ装置100の方向を特定するための方向性マークDMが配置されている。本体110の下面112(誘電体層LY10)には、当該フィルタ装置100と外部機器とを接続するための外部端子(入力端子T1、出力端子T2および接地端子GND)が配置されている。入力端子T1、出力端子T2および接地端子GNDの各々は平板形状の電極であり、本体110の下面112に規則的に配置されたLGA(Land Grid Array)端子である。
【0032】
フィルタ装置100は、
図2で説明したように、4段のLC並列共振器である共振器RC1~RC4を有している。より具体的には、共振器RC1は、ビアV10,V11,V12と、キャパシタ電極PC1と、平板電極PL10A,PL10B,PL11A,PL11Bとを含む。共振器RC2は、ビアV20と、キャパシタ電極PC2Aと、平板電極PL23A,PL23Bとを含む。共振器RC3は、ビアV30と、キャパシタ電極PC3Aと、平板電極PL23A,PL23Bとを含む。共振器RC4は、ビアV40,V41,V42と、キャパシタ電極PC4と、平板電極PL40A,PL40B,PL41A,PL41Bとを含む。
【0033】
入力端子T1は、ビアV10によって誘電体層LY8に配置されたキャパシタ電極PC1に接続されている。キャパシタ電極PC1は、X軸方向に延在する略矩形形状の電極である。キャパシタ電極PC1は、ビアV11によって、誘電体層LY5に配置された平板電極PL10A、および、誘電体層LY4に配置された平板電極PL10Bに接続されている。
【0034】
平板電極PL10A,PL10Bは、Z軸方向を巻回軸とする帯状の電極であり、互いに略同一形状を有している。平板電極PL10A,PL10Bの一方端に、ビアV11が接続されている。平板電極PL10A,PL10Bの他方端は、ビアV12によって、誘電体層LY3に配置された平板電極PL11A、および、誘電体層LY2に配置された平板電極PL11Bに接続されている。
【0035】
平板電極PL11A,PL11Bは、Z軸方向を巻回軸とする帯状の電極であり、互いに略同一形状を有している。平板電極PL11A,PL11Bの一方端には、ビアV12が接続されている。平板電極PL11A,PL11Bの他方端は、ビアVG1によって誘電体層LY9に配置された接地電極PG、および、誘電体層LY10の下面112に配置された接地端子GNDに接続されている。
【0036】
また、誘電体層LY8には、キャパシタ電極PC1に対してY軸の正方向に隣接した、略矩形形状のキャパシタ電極PC2Bが配置されている。キャパシタ電極PC1およびキャパシタ電極PC2Bは、互いに容量結合している。キャパシタ電極PC2Bは、ビアVG2によって誘電体層LY10に配置された接地端子GNDに接続されている。また、キャパシタ電極PC2Bは、複数のビアVG5によって、誘電体層LY9に配置された接地電極PGにも接続されている。接地電極PGは、ビアVG4によって誘電体層LY10に配置された接地端子GNDに接続されている。
【0037】
ビアV10,V11,V12および平板電極PL10A,PL10B,PL11A,PL11Bによって、
図2におけるインダクタL1が構成される。ビアVG1によって、
図2におけるインダクタL5が構成される。また、キャパシタ電極PC1,PC2Bによって、
図2におけるキャパシタC1が構成される。すなわち、ビアV10,V11,V12,VG1、平板電極PL10A,PL10B,PL11A,PL11B、および、キャパシタ電極PC1,PC2Bによって、共振器RC1が構成される。
【0038】
キャパシタ電極PC1は、積層方向から平面視した場合に、隣接する誘電体層LY7に配置された、略L字形状を有するキャパシタ電極PC2Aと部分的に重なっている。キャパシタ電極PC1,PC2Aによって、
図2におけるキャパシタC12が構成される。キャパシタ電極PC2Aは、積層方向から平面視した場合に、誘電体層LY8に配置されたキャパシタ電極PC2Bとも部分的に重なっている。キャパシタ電極PC2A,PC2Bによって、
図2におけるキャパシタC2が構成される。
【0039】
また、キャパシタ電極PC2Aは、ビアV20によって、誘電体層LY3に配置された平板電極PL23A、および、誘電体層LY2に配置された平板電極PL23Bに接続されている。平板電極PL23A,PL23Bの各々は、3つの端部を有する略Y字形状を有しており、第1端部にビアV20が接続されており、第2端部にビアV30が接続されており、第3端部にビアVG1が接続されている。
【0040】
ビアV20によって、
図2におけるインダクタL2Aが構成される。平板電極PL23A,PL23Bにおける、第1端部、第2端部および第3端部からの各経路の接続点と、第1端部との間の経路によって、
図2におけるインダクタL2Bが構成される。また、上記の接続点から第3端部との間の経路によって、
図2におけるインダクタL23Bが構成される。
【0041】
すなわち、ビアV20,VG1、平板電極PL23A,PL23B、およびキャパシタ電極PC2A,PC2Bによって、
図2における共振器RC2が構成される。
【0042】
平板電極PL23A,PL23Bの第2端部に接続されたビアV30は、誘電体層LY7に配置されたキャパシタ電極PC3Aに接続されている。キャパシタ電極PC3Aは、キャパシタ電極PC2Aと同様に略L字形状を有している。積層方向から平面視した場合に、キャパシタ電極PC3Aは、誘電体層LY8に配置されたキャパシタ電極PC3B,PC4の各々と、部分的に重なっている。キャパシタ電極PC3B,PC4の各々は、X軸方向に延在する略矩形形状の電極であり、互いにY軸方向に隣接して配置されている。キャパシタ電極PC3Bおよびキャパシタ電極PC4は、互いに容量結合している。
【0043】
キャパシタ電極PC4は、ビアV40によって、誘電体層LY10の下面112に配置された出力端子T2に接続されている。キャパシタ電極PC3Bは、ビアVG3によって誘電体層LY10に配置された接地端子GNDに接続されている。また、キャパシタ電極PC3Bは、複数のビアVG6によって、誘電体層LY9に配置された接地電極PGにも接続されている。
【0044】
キャパシタ電極PC3A、PC3Bによって、
図2におけるキャパシタC3が構成される。キャパシタ電極PC3A、PC4によって、
図2におけるキャパシタC34が構成される。ビアV30によって、
図2におけるインダクタL3Aが構成される。平板電極PL23A,PL23Bにおける接続点と、第2端部との間の経路によってインダクタL3Bが構成される。また、上記のように、平板電極PL23A,PL23Bにおける接続点から第3端部との間の経路によって、
図2におけるインダクタL23Bが構成され、ビアVG1によって
図2におけるインダクタL5が構成される。
【0045】
すなわち、ビアV30,VG1、平板電極PL23A,PL23B、およびキャパシタ電極PC3A,PC3Bによって、
図2における共振器RC3が構成される。
【0046】
キャパシタ電極PC4は、ビアV41によって、誘電体層LY5に配置された平板電極PL40A、および、誘電体層LY4に配置された平板電極PL40Bに接続されている。
【0047】
平板電極PL40A,PL40Bは、Z軸方向を巻回軸とする帯状の電極であり、互いに略同一形状を有している。平板電極PL40A,PL40Bの一方端に、ビアV41が接続されている。平板電極PL40A,PL40Bの他方端は、ビアV42によって、誘電体層LY3に配置された平板電極PL41A、および、誘電体層LY2に配置された平板電極PL41Bに接続されている。
【0048】
平板電極PL41A,PL41Bは、Z軸方向を巻回軸とする帯状の電極であり、互いに略同一形状を有している。平板電極PL41A,PL41Bの一方端には、ビアV42が接続されている。平板電極PL41A,PL41Bの他方端は、ビアVG1によって誘電体層LY9に配置された接地電極PG、および、誘電体層LY10の下面112に配置された接地端子GNDに接続されている。
【0049】
ビアV40,V41,V42および平板電極PL40A,PL40B,PL41A,PL41Bによって、
図2におけるインダクタL4が構成される。ビアVG1によって、
図2におけるインダクタL5が構成される。また、キャパシタ電極PC3B,PC4によって、
図2におけるキャパシタC4が構成される。すなわち、ビアV40,V41,V42,VG1、平板電極PL40A,PL40B,PL41A,PL41B、および、キャパシタ電極PC3B,PC4によって、共振器RC4が構成される。
【0050】
誘電体層LY7に配置されたキャパシタ電極PC2A,PC3Aの各々は、積層方向から平面視した場合に、誘電体層LY7に配置された、略矩形形状を有するキャパシタ電極PC23と部分的に重なっている。キャパシタ電極PC2A,PC3A,PC23によって、
図2におけるキャパシタC23が構成される。
【0051】
誘電体層LY8に配置されたキャパシタ電極PC1,PC4の各々は、積層方向から平面視した場合に、誘電体層LY9に配置された帯状のキャパシタ電極PC14と部分的に重なっている。キャパシタ電極PC1,PC4,PC14によって、
図2におけるキャパシタC14が構成される。
【0052】
誘電体層LY3において、平板電極PL23Aにおける第1端子および第2端子は、X軸方向に延在する帯状の平板電極PL50Aによって接続されている。また、誘電体層LY2において、平板電極PL23Bにおける第1端子および第2端子は、X軸方向に延在する帯状の平板電極PL50Bによって接続されている。平板電極PL50A,PL50Bによって、
図2におけるインダクタL23Aが構成される。
【0053】
誘電体層LY3において、平板電極PL23Aおよび平板電極PL50Aによって環状構造が形成されている。同様に、誘電体層LY2において、平板電極PL23Bおよび平板電極PL50Bによって環状構造が形成されている。以下で説明するように、平板電極PL50A,PL50Bによって構成されるインダクタL23Aを配置することで、共振器RC2と共振器RC3との間の結合度を強めることができる。
【0054】
なお、以降の説明において、平板電極PL50A,PL50Bを包括的に「平板電極PL50」と称し、平板電極PL23A,PL23Bを包括的に「平板電極PL23」と称する場合がある。
【0055】
(共振器間結合度の説明)
図5および
図6を用いて、本実施の形態1のフィルタ装置100における共振器RC2と共振器RC3との間の結合度について説明する。
図5は比較例1のフィルタ装置100Xの場合を示しており、
図6は本実施の形態1のフィルタ装置100の場合を示している。
【0056】
なお、
図5および
図6においては、説明を容易にするために、共振器RC2および共振器RC3の部分に対応する構成のみの等価回路が記載されている。また、
図2における接続ノードN2A,N3Aに対応する箇所が、
図5および
図6においては、それぞれ入力端子T10および出力端子T20として記載されている。
【0057】
まず、
図5においては、入力端子T10と出力端子T20との間に、インダクタL10およびインダクタL20が直列に接続されている。そして、インダクタL10とインダクタL20との間の接続ノードN10と、接地端子GNDとの間に、インダクタL30が接続されている。また、入力端子T10と接地端子GNDとの間にキャパシタC10が接続されており、出力端子T20と接地端子GNDとの間にキャパシタC20が接続されている。
【0058】
図2との関係においては、インダクタL10がインダクタL2A,L2Bに対応し、インダクタL20がインダクタL3A,L3Bに対応する。また、インダクタL30が、インダクタL23B,L5に対応する。そして、キャパシタC10,C20が、キャパシタC2,C3にそれぞれ対応する。すなわち、フィルタ装置100Xにおいては、
図2の共振器RC2,RC3の部分において、「インダクタL23A」が除かれた構成となっている。
【0059】
また、
図6においては、左図のインダクタL10A,L10Bが
図2におけるインダクタL2A,L2Bにそれぞれ対応し、インダクタL20A,L20Bが
図2におけるインダクタL3A,L3Bにそれぞれ対応する。そして、インダクタL12が、
図2におけるインダクタL23Aに対応する。
【0060】
図5のような構成において、共振器RC2と共振器RC3との結合度は、一般的に、インダクタL10のインダクタンス値に対するインダクタL30のインダクタンス値(L30/L10)、あるいは、インダクタL20のインダクタンス値に対するインダクタL30のインダクタンス値(L30/L20)によって表わすことができる。そのため、
図5において、共振器RC2と共振器RC3との結合度を増加させる場合、インダクタL30のインダクタンス値を大きくする、あるいは、インダクタL10,L20のインダクタンス値を小さくすることが考えられる。
【0061】
インダクタL30のインダクタンス値を大きくする場合、
図4のような構成においては、ビアVG1のインダクタンス値を大きくすることが必要となる。言い換えると、ビアVG1の長さを長くすることが必要となるが、その場合、フィルタ装置本体のZ軸方向の寸法を大きくすることとなる。そのため、装置の小型化の阻害となったり、装置の寸法制約から実現が困難になる可能性がある。
【0062】
一方、インダクタL10,L20のインダクタンス値を小さくする場合、共振器におけるトータルのインダクタンス値が小さくなるため、共振器の共振周波数を所望の周波数とするためには、共振器におけるキャパシタC10,C20のキャパシタンス値を大きくすることが必要となる。この場合、キャパシタC10,C20を構成するキャパシタンス電極の面積を大きくすることが必要となる。しかしながら、キャパシタンス電極の面積を大きくすると、誘電体層の面積の拡大が必要となって装置の大型化の要因となったり、要求される装置寸法での実現が困難になる可能性がある。さらに、共振器のインダクタンス値を小さくし、キャパシタンス値を大きくした場合、共振器自体のインピーダンスが低下してしまうため、それに伴って、要求されるフィルタ特性が得られなくなるおそれがある。
【0063】
一方、
図6の左図に示されるような本実施の形態1の構成は、インダクタL10A,L20A,L30の間に、インダクタL10B,L20B,L12で構成されるΔ結線(破線の領域AR10)が配置された構成となっている。この領域AR10の部分をΔ-Y変換すると、
図6の右図のように、インダクタL10Aに接続されるインダクタL10C、インダクタL20Aに接続されるインダクタL20C、および、インダクタL30に接続されるインダクタL30Cが、接続ノードN20において接続された構成と等価になる。
【0064】
ここで、Δ-Y変換を施した場合、インダクタL10Cのインダクタンス値はインダクタL10Bのインダクタンス値よりも小さくなり(L10B>L10C)、インダクタL20Cのインダクタンス値はインダクタL20Bのインダクタンス値よりも小さくなる(L20B>L20C)。
【0065】
図6の右図の構成を、
図5のフィルタ装置100Xの構成と比較すると、インダクタL10A,L10Cがフィルタ装置100XのインダクタL10に対応し、インダクタL20A,L20Cがフィルタ装置100XのインダクタL20に対応し、インダクタL30,L30Cがフィルタ装置100XのインダクタL30に対応することになる。上述のように、L10B>L10CおよびL20B>L20Cであり、かつ、L30C>0であるため、フィルタ装置100においては、インダクタL12を追加することによって、フィルタ装置100XのインダクタL10,L20のインダクタンス値を小さくし、インダクタL30のインダクタンス値を大きくした構成と等価になる。したがって、フィルタ装置100における共振器RC2と共振器RC3との間の結合度を、フィルタ装置100Xの場合よりも大きくすることができる。
【0066】
なお、この場合、
図4で示したように、平板電極PL50A,PL50Bの配置により実現することができるので、装置の大型化を抑制することができる。さらに、インダクタL10B,L20B,L12のインダクタンス値を適切に設定することにより、インピーダンスの低下も抑制することができる。
【0067】
図7は、実施の形態1および比較例1のフィルタ装置における、共振周波数と共振器間結合度の関係を説明するための図である。
図7の上段には、実施の形態1のフィルタ装置100および比較例1のフィルタ装置100Xにおける、共振器RC2,RC3の部分の内部斜視図が示されている。
図7の下段には、同程度の装置サイズを有するフィルタ装置100,100Xの場合における共振周波数と共振器間結合度の関係を表わすグラフが示されている。
【0068】
フィルタ装置100は、
図4で説明したように、誘電体層LY2,LY3においては、ビアV20,V30,VG1を接続する平板電極PL23と、ビアV20,V30を接続する平板電極PL50とによって環状構造が形成されている。一方、フィルタ装置100Xにおいては、略T字形状を有する平板電極PL23Xによって、ビアV20,V30,VG1が接続されている。
【0069】
図7の下段においては、横軸に共振周波数が示されており、縦軸に共振器RC2,RC3の共振器間結合度が示されている。なお、グラフ中において、実線LN10は実施の形態1のフィルタ装置100の場合を示しており、破線LN11は比較例1のフィルタ装置100Xの場合を示している。
【0070】
図7のグラフに示されるように、フィルタ装置100,100Xが同程度の装置サイズの場合、共振周波数が6.0GHz以上においては、同じ共振周波数ではフィルタ装置100の方が高い共振器間結合度が得られている。たとえば、6.5GHzの共振周波数の場合、フィルタ装置100における結合度は0.50であり、フィルタ装置100Xにおける結合度は0.30である。
【0071】
一方で、フィルタ装置100Xにおいて、0.50の結合度を得るためには、共振周波数をより高い周波数である8.0GHzとすることが必要となる。一般的に、共振周波数が高くなると必要な回路素子値が小さくなるため装置サイズが小さくなり、共振周波数が低くなると必要な回路素子値が大きくなるため装置サイズが大きくなる。そのため、たとえば所望の共振周波数が6.5GHzである場合に、フィルタ装置100Xの構成を用いて0.50の結合度を得ようとすると、結果としてフィルタ装置100よりも装置サイズが大きくなってしまう。逆に、所望の共振周波数が8.0GHzである場合にフィルタ装置100の構成を用いると、すでに十分な結合度が得られているため、共振周波数を高くするために回路素子値を小さくして装置サイズをさらに小さくすることができる。すなわち、より低い共振周波数で同等の結合度が実現できるフィルタ装置100の構成を用いることによって、装置全体の小型化を実現することができる。
【0072】
(フィルタ特性)
図8は、実施の形態1のフィルタ装置100におけるフィルタ特性を説明するための図である。
図8において、横軸には周波数が示されており、縦軸にはフィルタ装置100の挿入損失が示されている。
【0073】
図8においては、平板電極PL50のX軸方向の長さ、言い換えれば、共振器RC2および共振器RC3をそれぞれ構成するビアV20,V30の間隔を変化させた場合のフィルタ特性の変化が示されている。より具体的には、
図8における一点鎖線LN22は、
図4に示したようなビアV20,V30が最も離れた位置の場合の特性であり、破線LN21は、ビアV20,V30が
図4よりもX軸方向に沿って近づいた位置の場合の特性である。また、実線LN20は、ビアV20,V30が、破線LN21の場合の位置よりもさらに近づいた位置の場合の特性である。
【0074】
図8に示されるように、ビアV20,V30の間隔が短くなるほど、言い換えれば、共振器RC2と共振器RC3との間の結合度が強くなるほど、フィルタ装置の周波数帯域幅(通過帯域)が拡大していることがわかる。
【0075】
なお、実線LN20においては、通過帯域の高周波数側(f1付近)の損失がやや大きくなっているが、これについては、平板電極の線路幅の変更によるインダクタンス値の調整、および/または、キャパシタ電極の面積の変更によるキャパシタンス値の調整によって改善することができる。
【0076】
以上のように、複数段の共振器を含む積層型のフィルタ装置において、2つの共振器を接続するインダクタを設けて環状構造を構成することによって、装置サイズの増加を抑制しつつ、共振器間の結合度を増加することができる。これによって、フィルタ装置の所望の特性を実現することが可能となる。
【0077】
なお、上記の説明においては、4段の共振器を含むフィルタ装置の2段目と3段目の共振器間の結合度を増加させる構成を例として説明したが、4段の共振器の任意の2つの共振器間について上記の構成を適用することができる。
【0078】
実施の形態1における「共振器RC2」および「共振器RC3」は、本開示における「第1共振器」および「第2共振器」にそれぞれ対応する。また、実施の形態1における「共振器RC1」および「共振器RC4」は、本開示における「第3共振器」および「第4共振器」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「ビアVG1」は、本開示における「共通ビア」に対応する。実施の形態1における「キャパシタ電極PC2A」および「キャパシタ電極PC3A」は、本開示における「第1キャパシタ電極」および「第2キャパシタ電極」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「ビアV20」および「ビアV30」は、本開示における「第1ビア」および「第2ビア」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「平板電極PL23A,PL23B」は、本開示における「第1平板電極」および「第2平板電極」に対応する。実施の形態1における「平板電極PL50A,PL50B」は、本開示における「第3平板電極」に対応する。
【0079】
また、
図2で示した等価回路図において、実施の形態1における「キャパシタC2」および「キャパシタC3」は、本開示における「第1キャパシタ」および「第2キャパシタ」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「インダクタL2A」、「インダクタL2B」、「インダクタL3A」、「インダクタL3B」および「インダクタL23A」は、本開示における「第1インダクタ」~「第5インダクタ」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「インダクタL23B」および「インダクタL5」は、本開示における「共通インダクタ」に対応する。
【0080】
[変形例]
次に、
図9~
図12を用いて、実施の形態1に係る変形例のフィルタ装置の構成について説明する。
図9~
図12においては、
図2における共振器RC2,RC3の部分のみを概略的に記載した模式図である。
【0081】
図9は、
図4のフィルタ装置100に対応する図であり、
図4の誘電体層LY2,LY3において形成される環状構造の部分が示されている。また、キャパシタ電極PC2A,PC3Aに対向するキャパシタ電極PC2B,PC3Bが省略され、接地電極PGに対向するように示されている。フィルタ装置100においては、環状構造を形成する平板電極PL50および平板電極PL23が、同じ誘電体層に配置された配線パターンで構成されている。
【0082】
(変形例1)
変形例1においては、環状構造を形成する部分が、異なる誘電体層に配置された配線パターンと、それらを接続するビアによって構成された例について説明する。
【0083】
図10は、変形例1のフィルタ装置100Aを示す図である。フィルタ装置100Aにおいては、
図9のフィルタ装置100における平板電極PL23に対応する部分が、平板電極PL20,PL30,P23およびビアVL20,VL30によって構成されている。
【0084】
平板電極PL20は、略矩形形状の帯状の電極であり、平板電極PL50におけるビアV20が接続される端部からY軸の負方向に延在している。同様に、平板電極PL30は、略矩形形状の帯状の電極であり、平板電極PL50におけるビアV30が接続される端部からY軸の負方向に延在している。
【0085】
平板電極P23は、平板電極PL20,PL30が配置される誘電体層と、接地電極PGが配置される誘電体層との間の誘電体層に配置されている。平板電極P23は、X軸方向に延在する略矩形形状の帯状の電極であり、一方端がビアVL20によって、平板電極PL20におけるY軸の負方向の端部と接続されている。平板電極P23の他方端は、ビアVL30によって、平板電極PL30におけるY軸の負方向の端部と接続されている。そして、平板電極P23は、ビアVG1によって接地電極PGに接続されている。
【0086】
フィルタ装置100Aにおいては、共振器RC2を構成するインダクタは、ビアV20,VL20および平板電極PL20,P23によって構成され、共振器RC3を構成するインダクタは、ビアV30,VL30および平板電極PL30,P23によって構成される。そして、共振器RC2と共振器RC3とが、
図2におけるインダクタL23Aに対応する平板電極PL50によって互いに接続されている。すなわち、平板電極PL20,PL30,PL50とは異なる誘電体層に配置された平板電極P23をビアVL20,VL30を用いて接続することによって、複数の層にわたって環状構造が形成されている。
【0087】
このように、フィルタ装置100Aにおいても、共振器RC2および共振器RC3を接続するインダクタが配置され、環状構造が形成されることによって、共振器RC2と共振器RC3との結合度を強めることができる。
【0088】
なお、変形例1における「ビアVG1」は、本開示における「共通ビア」に対応する。変形例1における「平板電極P23」は、本開示における「共通電極」に対応する。変形例1における「ビアV20」、「ビアVL20」、「ビアV30」および「ビアVL30」は、本開示における「第3ビア」、「第4ビア」、「第5ビア」および「第6ビア」にそれぞれ対応する。変形例1における「キャパシタ電極PC2A]および「キャパシタ電極PC3A]は、本開示における「第3キャパシタ電極」および「第4キャパシタ電極」にそれぞれ対応する。変形例1における「平板電極PL20」、「平板電極PL30」および「平板電極PL50」は、本開示における「第4平板電極」、「第5平板電極」および「第6平板電極」にそれぞれ対応する。
【0089】
(変形例2)
図9のフィルタ装置100においては、各共振器におけるキャパシタを構成する接地電極、および、各共振器のインダクタが接続される接地電極の双方が、本体110の下面112側に配置された接地電極PGで構成される例について説明した。
【0090】
変形例2においては、本体110の上面111側および下面112側に接地電極を配置し、一方の接地電極を用いて共振器のキャパシタを構成し、他方の接地電極に各共振器のインダクタが接続される構成について説明する。
【0091】
図11は、変形例2のフィルタ装置100Bを示す図である。フィルタ装置100Bにおいては、本体110の下面112側に接地電極PG1が配置されており、上面111側に接地電極PG2が配置されている。接地電極PG1および接地電極PG2は、図示しないビアによって互いに接続され、さらに接地端子GNDに接続されている。
【0092】
共振器RC2のキャパシタC2を構成するキャパシタ電極PC2A、および、共振器RC3のキャパシタC3を構成するキャパシタ電極PC3Aは、接地電極PG1に対向して配置されている。キャパシタ電極PC2Aは、ビアV20Aによって接地電極PG2に接続されている。また、キャパシタ電極PC3Aは、ビアV30Aによって接地電極PG2に接続されている。
【0093】
ビアV20AおよびビアV30Aは、略矩形形状の平板電極PL23Cによって互いに接続されている。また、ビアV20AおよびビアV30Aは、平板電極PL23Cが配置される誘電体層と、キャパシタ電極PC2A,PC3Aが配置される誘電体層との間の誘電体層に配置された平板電極PL50Bによっても互いに接続されている。
【0094】
フィルタ装置100Bにおいて、ビアV20Aにおけるキャパシタ電極PC2Aと平板電極PL50Bとの間の部分が、
図9のフィルタ装置100におけるビアV20に対応する。また、ビアV30Aにおけるキャパシタ電極PC3Aと平板電極PL50Bとの間の部分が、
図9のフィルタ装置100におけるビアV30に対応する。ビアV20A,V30Aにおける平板電極PL50Bと平板電極PL23Cとの間の部分と、平板電極PL23Cとによって構成される部分が、
図9のフィルタ装置100における平板電極PL23に対応する。ビアV20A,V30Aにおける平板電極PL23Cと接地電極PG2との間の部分が、
図9のフィルタ装置100におけるビアVG1に対応する。平板電極PL50Bは、
図9のフィルタ装置100における平板電極PL50に対応する。すなわち、フィルタ装置100Bは、
図9に示されたフィルタ装置100と実質的に等価な構成となっており、ビアV20A,V20Bおよび平板電極PL23C,PL50Bによって環状構造が形成されている。
【0095】
このように、2つの接地電極の間に2つの共振器RC2,RC3を配置し、これらの共振器RC2,RC3をインダクタ(平板電極PL50B)で接続することによって、共振器RC2と共振器RC3との結合度を強めることができる。
【0096】
なお、フィルタ装置100Bにおいて、平板電極PL23Cと接地電極PG2とを接続するビアの部分が共通化されてもよい。
【0097】
(変形例3)
変形例3においては、共振器のキャパシタを構成するキャパシタ電極を個別に設けず、環状構造を形成する配線パターンと接地電極との間の容量成分によって、共振器のキャパシタを形成する構成について説明する。
【0098】
図12は、変形例3のフィルタ装置100Cを示す図である。フィルタ装置100Cは、同じ誘電体層に配置された平板電極PL20C,PL30C,PL23D,PL50CおよびビアVG1A,VG1Bによって、共振器RC2,RC3が構成される。
【0099】
平板電極PL20C,PL30Cの各々は、Y軸方向に延在する略矩形形状の帯状の電極である。平板電極PL20CのY軸の負方向の端部はビアVG1Aによって接地電極PGに接続されており、Y軸の正方向の端部は開放端となっている。同様に、平板電極PL30CのY軸の負方向の端部はビアVG2Aによって接地電極PGに接続されており、Y軸の正方向の端部は開放端となっている。
【0100】
平板電極PL23D,PL50Cは、X軸方向に延在する略矩形形状の帯状の電極である。平板電極PL20C,PL30Cは、Y軸の負方向の端部に近い位置において、平板電極PL23Dによって互いに接続されている。また、平板電極PL20C,PL30Cは、平板電極PL23DよりもY軸の正方向の位置において、平板電極PL50Cによって互いに接続されている。すなわち、平板電極PL20C,PL30C,PL23D,PL50Cによって環状構造が形成されている。
【0101】
フィルタ装置100Cにおいては、平板電極PL20C,PL30Cと接地電極PGとの間の容量成分によって共振器のキャパシタが構成され、当該容量成分と平板電極で構成されるインダクタによって、共振器RC2,RC3が構成される。
【0102】
このような構成においても、2つの共振器RC2,RC3がインダクタにより接続され、環状構造を構成することによって、共振器RC2と共振器RC3との結合度を強めることができる。
【0103】
なお、フィルタ装置100Cにおいて、ビアVG1A,VG1Bに代えて、平板電極PL23Dと接地電極PGとを接続するビアを配置してもよい。また、平板電極PL20C,PL30Cと接地電極PGとのキャパシタンス値を確保するために、平板電極PL20C,PL30Cの開放端に、平板電極PL20C,PL30Cよりも幅の広いキャパシタ電極を設けてもよい。
【0104】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、一部の共振器の構成が異なるフィルタ装置について説明する。
【0105】
図13は、実施の形態2のフィルタ装置200の等価回路図である。フィルタ装置200は、概略的には、入力端子T10と出力端子T20との間に、2つの共振器RC11A,RC12が配置された2段構成のフィルタ装置である。フィルタ装置200は、
図13のような2段構成の状態で単独で用いられてもよいし、実施の形態1のような4段構成のフィルタ装置における2-3段目の共振器として用いられてもよい。なお、実施の形態1との対応関係をわかりやすくするために、
図13および後述する
図14,
図17においては、
図6の回路と同じ参照符号を用いている。
【0106】
図13を参照して、フィルタ装置200において、共振器RC11Aは、キャパシタC10Aと、インダクタL10A,L10B,L30とを含む。キャパシタC10Aの一方端は、入力端子T10に接続されている。インダクタL10A,L10B,L30は、キャパシタC10Aの他方端と接地端子GNDとの間に、この順で直列に接続されている。
【0107】
共振器RC12は、
図6における共振器RC3と同様の構成を有しており、キャパシタC20と、インダクタL20A,L20B,L30とを含む。キャパシタC20は、出力端子T20と接地端子GNDとの間に接続されている。また、インダクタL20A,L20B,L30は、出力端子T20と接地端子GNDとの間にこの順で直列に接続されている。すなわち、直列接続されたインダクタL20A,L20B,L30は、出力端子T20と接地端子GNDとの間にキャパシタC20と並列に接続されている。なお、インダクタL30については、共振器RC11Aと共用されている。
【0108】
そして、キャパシタC10AとインダクタL10Aとの間の接続ノードN31と、出力端子T20との間に、キャパシタC30が接続されている。また、インダクタL10AとインダクタL10Bとの間の接続ノードN33と、インダクタL20AとインダクタL20Bとの間の接続ノードN34との間に、インダクタL12が接続されている。インダクタL12,L10B,L20Bによって、実施の形態1のフィルタ装置100と同様に環状構造が形成される(領域AR10)。なお、フィルタ装置200において、キャパシタC30は必ずしも必須ではなく、キャパシタC30のない構成であってもよい。
【0109】
図14は、比較例2のフィルタ装置200Xの等価回路図である。フィルタ装置200Xは、基本的には、実施の形態1のフィルタ装置100の2-3段目の共振器と同様の構成をしている。フィルタ装置200Xにおける共振器RC11,RC12は、フィルタ装置100のRC2,RC3にそれぞれ対応する。また、フィルタ装置200XにおけるキャパシタC30は、フィルタ装置100におけるキャパシタC23(
図1)に対応する。
【0110】
すなわち、実施の形態2のフィルタ装置200は、比較例2のフィルタ装置200Xと比較すると、キャパシタC10が削除され、入力端子T10との間にキャパシタC10Aが追加された構成となっている。
【0111】
図15は、
図14の回路を等価変換した回路図である。
図15におけるインダクタL10Dは、
図14におけるインダクタL10A,L10B,L30に対応する。
図15におけるインダクタL12Aは、
図14におけるインダクタL10A,L12,L20Aに対応する。
図15におけるインダクタL20Dは、
図14におけるインダクタL20A,L20B,L30に対応する。
【0112】
すなわち、フィルタ装置200は、
図15の領域AR20に含まれるキャパシタC10A,C30およびインダクタL10D、L12Aで構成されるハイパスフィルタ(HPF)と、領域AR21に含まれるキャパシタC20およびインダクタL20DのLC並列共振器で構成されるバンドパスフィルタ(BPF)とが、入力端子T10と出力端子T20との間に直列接続された構成に対応する。
【0113】
一方、比較例2のフィルタ装置200Xは、2つのLC並列共振器(すなわちバンドパスフィルタ)が入力端子T10と出力端子T20との間に直列接続された構成に対応する。
【0114】
図16は、実施の形態2のフィルタ装置200におけるフィルタ特性を説明するための図である。
図16においては、フィルタ装置200における挿入損失(実線LN30)、および、比較例2のフィルタ装置200Xにおける挿入損失(破線LN35)が示されている。
【0115】
フィルタ装置200においては、比較例2のフィルタ装置200Xの入力端子側のバンドパスフィルタをハイパスフィルタに置き換えた構成となっているため、フィルタ装置200Xに比べると、通過帯域よりも低周波数側における減衰量がやや少なくなる。しかしながら、シャントキャパシタが削除されているために、高周波数側においてはフィルタ装置200Xに比べると損失が低減され、通過特性が向上している。そして、フィルタ装置200においても、2つの共振器を接続するインダクタL12を設けて環状構造が形成されるため、装置サイズの増加を抑制しつつ、共振器間の結合度を増加することができる。
【0116】
実施の形態2における「共振器RC11A」および「共振器RC12」は、本開示における「第5共振器」および「第6共振器」にそれぞれ対応する。実施の形態2における「キャパシタC10A」、「キャパシタC20」および「キャパシタC30」は、本開示における「第3キャパシタ」~「第5キャパシタ」にそれぞれ対応する。実施の形態2における「インダクタL10A」、「インダクタL10B」、「インダクタL20A」、「インダクタL20B」および「インダクタL12」は、本開示における「第6インダクタ」~「第10インダクタ」にそれぞれ対応する。実施の形態2における「インダクタL30」は、本開示における「共通インダクタ」に対応する。実施の形態2における「接続ノードN31」は、本開示における「第3ノード」に対応する。
【0117】
[実施の形態3]
実施の形態3においては、実施の形態2のフィルタ装置200における共振器RC12がさらにハイパスフィルタとされた構成について説明する。
【0118】
図17は、実施の形態3のフィルタ装置200Aの等価回路図である。フィルタ装置200Aにおいては、実施の形態2のフィルタ装置200における共振器RC12が、共振器RC12Aに置き換わった構成となっている。
【0119】
より具体的には、フィルタ装置200におけるキャパシタC20が削除されるとともに、インダクタL20Aと出力端子T20との間にキャパシタC20Aが追加されている。そして、キャパシタC30は、キャパシタC10AとインダクタL10Aとの間の接続ノードN31と、キャパシタC20AとインダクタL20Aとの間の接続ノードN32との間に接続されている。すなわち、図示しないが、
図15のように
図17の回路を等価変換した場合には、入力端子T10と出力端子T20との間に2つのハイパスフィルタが配置された構成に対応する。そのため、フィルタ装置200Aは、フィルタ装置200と比べると、減衰量はやや少なくなるが、効率についてはさらに向上する。
【0120】
そして、フィルタ装置200Aにおいても、領域AR10に示されるように、2つの共振器が接続されるインダクタL12によって環状構造が形成されているため、装置サイズの増加を抑制しつつ、共振器間の結合度を増加することができる。
【0121】
実施の形態3における「共振器RC12A」は、本開示における「第7共振器」に対応する。実施の形態3における「キャパシタC20A」は、本開示における「第6キャパシタ」に対応する。実施の形態3における「接続ノードN32」は、本開示における「第4ノード」に対応する。
【0122】
[態様]
(第1項)フィルタ装置は、本体と、入力端子と、出力端子と、接地端子と、第1共振器および第2共振器とを備える。第1共振器および第2共振器は、本体に配置され、互いに電磁界結合することによって入力端子から出力端子に信号を伝達する。第1共振器および第2共振器の各々は、第1ノードからキャパシタを介して接地端子に接続された第1経路と、当該第1ノードからキャパシタを介さずに接地端子に接続された第2経路とを含む。第1共振器の第2経路および第2共振器の第2経路は、一部が共通化されている。フィルタ装置は、第1共振器の第1ノードと第2共振器の第1ノードとに接続された第3経路をさらに備える。
【0123】
(第2項)第1項に記載のフィルタ装置において、第1共振器の第2経路、第2共振器の第2経路、および、第3経路によって環状構造が形成される。
【0124】
(第3項)第2項に記載のフィルタ装置において、本体は複数の誘電体層が積層された構成を有している。環状構造は、本体の同一の層に形成されている。
【0125】
(第4項)第3項に記載のフィルタ装置は、接地端子に接続された接地電極と、接地電極に接続された共通ビアとをさらに備える。第1共振器は、接地電極に対向して配置された第1キャパシタ電極と、第1キャパシタ電極に接続された第1ビアと、第1ビアおよび共通ビアに接続された第1平板電極とを含む。第2共振器は、接地電極に対向して配置された第2キャパシタ電極と、第2キャパシタ電極に接続された第2ビアと、第2ビアおよび共通ビアに接続された第2平板電極とを含む。フィルタ装置は、第1ビアおよび第2ビアに接続された第3平板電極をさらに備える。
【0126】
(第5項)第4項に記載のフィルタ装置において、第1キャパシタ電極と第1ビアによって、第1共振器の第1経路が構成される。第1平板電極と共通ビアによって、第1共振器の第2経路が構成される。第2キャパシタ電極と第2ビアによって、第2共振器の第1経路が構成される。第2平板電極と共通ビアによって、第2共振器の第2経路が構成される。第3平板電極によって、第3経路が構成される。
【0127】
(第6項)第2項に記載のフィルタ装置において、本体は、複数の誘電体層が積層された構成を有している。環状構造は、本体の複数の層にわたって形成されている。
【0128】
(第7項)第6項に記載のフィルタ装置は、接地端子に接続された接地電極と、接地電極と異なる誘電体層に配置された共通電極と、接地電極と共通電極とに接続された共通ビアとをさらに備える。第1共振器は、接地電極に対向して配置された第3キャパシタ電極と、第3キャパシタ電極に接続された第3ビアと、共通電極に接続された第4ビアと、第3ビアおよび第4ビアに接続された第4平板電極とを含む。第2共振器は、接地電極に対向して配置された第4キャパシタ電極と、第4キャパシタ電極に接続された第5ビアと、共通電極に接続された第6ビアと、第5ビアおよび第6ビアとに接続された第5平板電極とを含む。フィルタ装置は、第3ビアと第5ビアとを接続する第6平板電極をさらに備える。
【0129】
(第8項)第7項に記載のフィルタ装置において、第3キャパシタ電極と第3ビアによって、第1共振器の第1経路が構成される。第4平板電極、第3ビア、第4ビア、共通電極および共通ビアによって、第1共振器の第2経路が構成される。第4キャパシタ電極と第5ビアによって、第2共振器の第1経路が構成される。第5平板電極、第5ビア、第6ビア、共通電極および共通ビアによって、第2共振器の第2経路が構成される。第6平板電極によって、第3経路が構成される。
【0130】
(第9項)第1項~第8項のいずれか1項に記載のフィルタ装置は、入力端子に接続され、第1共振器と電磁界結合する第3共振器と、出力端子に接続され、第2共振器と電磁界結合する第4共振器とをさらに備える。
【0131】
(第10項)他の態様に係るフィルタ装置は、入力端子と、出力端子と、接地端子と、第1共振器および第2共振器とを備える。第1共振器および第2共振器は、互いに電磁界結合することによって入力端子から出力端子に信号を伝達する。第1共振器は、第1ノードと接地端子との間に接続された第1キャパシタと、第1ノードに一方端が接続された第1インダクタと、第1インダクタの他方端に接続された第2インダクタと、第2インダクタの他方端と接地端子との間に接続された共通インダクタとを含む。第2共振器は、第2ノードと接地端子との間に接続された第2キャパシタと、第2ノードに一方端が接続された第3インダクタと、第3インダクタの他方端と共通インダクタとの間に接続された第4インダクタとを含む。フィルタ装置は、第1インダクタの他方端と第3インダクタの他方端との間に接続された第5インダクタをさらに備える。
【0132】
(第11項)第1項~第10項のいずれか1項に記載のフィルタ装置は、特定の周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタである。
【0133】
(第12項)他の態様に係るフィルタ装置は、本体と、入力端子と、出力端子と、接地端子と、第5共振器および第6共振器とを備える。第5共振器および第6共振器は、本体に配置され、互いに電磁界結合することによって入力端子から出力端子に信号を伝達する。第5共振器は、第3ノードと入力端子との間に接続された第3キャパシタと、第3ノードに一方端が接続された第6インダクタと、第6インダクタの他方端に接続された第7インダクタと、第7インダクタの他方端と接地端子との間に接続された共通インダクタとを含む。第6共振器は、出力端子と接地端子との間に接続された第4キャパシタと、出力端子に一方端が接続された第8インダクタと、第8インダクタの他方端と共通インダクタとの間に接続された第9インダクタとを含む。フィルタ装置は、第6インダクタの他方端と第8インダクタの他方端との間に接続された第10インダクタをさらに備える。
【0134】
(第13項)第12項に記載のフィルタ装置は、第5共振器および第6共振器に接続された第5キャパシタをさらに備える。
【0135】
(第14項)他の態様に係るフィルタ装置は、本体と、入力端子と、出力端子と、接地端子と、第5共振器および第7共振器とを備える。第5共振器および第7共振器は、本体に配置され、互いに電磁界結合することによって入力端子から出力端子に信号を伝達する。第5共振器は、第3ノードと入力端子との間に接続された第3キャパシタと、第3ノードに一方端が接続された第6インダクタと、第6インダクタの他方端に接続された第7インダクタと、第7インダクタの他方端と接地端子との間に接続された共通インダクタとを含む。第7共振器は、第4ノードと出力端子との間に接続された第6キャパシタと、第4ノードに一方端が接続された第8インダクタと、第8インダクタの他方端と共通インダクタとの間に接続された第9インダクタとを含む。フィルタ装置は、第6インダクタの他方端と第8インダクタの他方端との間に接続された第10インダクタをさらに備える。
【0136】
(第15項)第14項に記載のフィルタ装置は、第5共振器および第7共振器に接続された第5キャパシタをさらに備える。
【0137】
(第16項)第1項~第15項のいずれか1項に記載のフィルタ装置を備えた、高周波フロントエンド回路。
【0138】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0139】
10 通信装置、12 アンテナ、20 高周波フロントエンド回路、22,28 バンドパスフィルタ、24 増幅器、26 減衰器、30 ミキサ、32 局部発振器、40 D/Aコンバータ、50 RF回路、100,100A~100C,100X,200,200A,200X フィルタ装置、110 本体、111 上面、112 下面、C1~C4,C10,C10A,C12,C14,C20,C20A,C23,C30,C34 キャパシタ、DM 方向性マーク、GND 接地端子、L1,L2A,L2B,L3A,L3B,L4,L5,L10,L10A~L10D,L12,L12A,L20,L20A~L20D,L23A,L23B,L30,L30C インダクタ、LY1~LY10 誘電体層、N1A~N4A,N2B,N3B,N10,N20,N31~N34 接続ノード、P23,PL10A,PL10B,PL11B,PL11A,PL20,PL20C,PL23,PL23A~PL23D,PL23X,PL30,PL30C,PL40A,PL40B,PL41A,PL41B,PL50,PL50A~PL50C 平板電極、PC1,PC2A,PC2B,PC3A,PC3B,PC4,PC14,PC23 キャパシタ電極、PG,PG1,PG2 接地電極、RC1~RC4,RC11,RC11A,RC12,RC12A 共振器、T1,T10 入力端子、T2,T20 出力端子、V10~V12,V20,V20A,V20B,V30,V30A,V40~V42,VG1~VG6,VG1A,VG1B,VG2A,VL20,VL30 ビア。