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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042648
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】多段式除振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20240321BHJP
   F16F 15/027 20060101ALI20240321BHJP
   F16F 9/04 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F16F15/04 F
F16F15/027
F16F9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108386
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2022146702
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 清文
(72)【発明者】
【氏名】上原 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】羽場 信博
(72)【発明者】
【氏名】浅野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 亘平
【テーマコード(参考)】
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AB08
3J048AB11
3J048AC04
3J048AD01
3J048BE02
3J048CB13
3J048EA13
3J069AA27
3J069EE50
(57)【要約】
【課題】上下多段式の除振装置において、水平方向に柔らかなバネ特性を実現する。
【解決手段】除振装置1は、搭載物Dが搭載されるトッププレート12と、設置面Fに設置され、上下方向に伸縮する第1空気室S1が区画された下段側バネ要素Sp1と、下段側バネ要素Sp1に対してトッププレート12を支持するとともに、上下方向に伸縮する第2空気室S2が区画された上段側バネ要素Sp2と、第2空気室S2の天井面と第1空気室S1の天井面とを接続するとともに、トッププレート12に向かって上方に開口したピストンウエル41と、ピストンウエル41に挿入され、該ピストンウエル41の内底面とトッププレート12の下面12aとを連結するサポートロッド42と、を備える。ピストンウエル41及びサポートロッド42は、トッププレート12に対するピストンウエル41の揺動を許容するジンバルピストン40を構成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に対して被支持体を弾性的に支持する多段式除振装置であって、
前記被支持体が搭載される定盤と、
前記基礎に設置され、上下方向に伸縮する第1空気室が区画された下段側バネ要素と、
前記下段側バネ要素に対して前記定盤を支持するとともに、前記上下方向に伸縮する第2空気室が区画された上段側バネ要素と、
前記第2空気室の天井面と前記第1空気室の天井面とを連結する支柱部と、を備え、
前記支柱部は、
前記定盤に向かって上方に開口した有底筒状のピストンウエルと、
前記ピストンウエルに挿入され、該ピストンウエルの内底面と前記定盤の下面とを連結するサポートロッドと、を有し、
前記ピストンウエル及び前記サポートロッドは、前記定盤に対する前記ピストンウエルの揺動を許容するジンバルピストンを構成する
ことを特徴とする多段式除振装置。
【請求項2】
請求項1に記載された多段式除振装置において、
前記サポートロッドは、前記ピストンウエル及び前記定盤に対して着脱可能に構成され、
前記サポートロッドの代わりに装着されることで、前記ピストンウエルの上面と前記定盤の下面との間に配置されるアタッチメントをさらに備え、
前記ピストンウエル及び前記定盤に対し前記サポートロッドを装着した第1形態と、前記サポートロッドを前記アタッチメントに置き換えることで、前記定盤に対する前記ピストンウエルの揺動を規制した第2形態と、の間で切り替え可能に構成されている
ことを特徴とする多段式除振装置。
【請求項3】
請求項1に記載された多段式除振装置において、
前記サポートロッドの上端部は、球面状の上面を有する転動子を介して前記定盤の下面に当接し、
前記ジンバルピストンは、ドームジンバルピストンとして構成されている
ことを特徴とする多段式除振装置。
【請求項4】
請求項1に記載された多段式除振装置において、
前記第1空気室と前記第2空気室との間には、該第1空気室の天井面と前記第2空気室の底面とによって区画された中間空気室が介在し、
前記中間空気室は、前記第1空気室及び前記第2空気室の双方に対して非連通とされているとともに、大気に対して開放されている
ことを特徴とする多段式除振装置。
【請求項5】
請求項4に記載された多段式除振装置において、
前記第1空気室及び前記第2空気室は、互いに連通している
ことを特徴とする多段式除振装置。
【請求項6】
請求項1に記載された多段式除振装置において、
前記定盤によって天板部が構成され、前記上段側バネ要素を包囲するケーシングと、
前記基礎に対する前記定盤の振動状態を検出する振動センサと、を備え、
前記第2空気室は、前記サポートロッドの中心軸に関する径方向において、少なくとも一部の外壁部が、前記第1空気室の外壁部に比して縮小されており、
前記振動センサは、前記第2空気室における前記外壁部と、前記ケーシングの内壁部との間に配置されている
ことを特徴とする多段式除振装置。
【請求項7】
請求項4に記載された多段式除振装置において、
前記中間空気室と大気との連通部を縮径させた複数のオリフィスを備え、
前記複数のオリフィスは、前記上下方向まわりの周方向に沿って、等間隔で配置されている
ことを特徴とする多段式除振装置。
【請求項8】
請求項4に記載された多段式除振装置において、
前記中間空気室の内部に配置され、前記上下方向において、前記第1空気室の底面に対する該第1空気室の天井面の変位を減衰させる上下減衰部材を備える
ことを特徴とする多段式除振装置。
【請求項9】
請求項4に記載された多段式除振装置において、
前記中間空気室の内部に配置され、前記第1空気室の天井面と該第1空気室の底面とを接近させる方向に復元力を発揮する第1バネ部材を備える
ことを特徴とする多段式除振装置。
【請求項10】
請求項9に記載された多段式除振装置において、
前記第1空気室の内部に配置され、前記第1空気室の天井面と該第1空気室の底面とを離間させる方向に復元力を発揮する第2バネ部材を備える
ことを特徴とする多段式除振装置。
【請求項11】
請求項4に記載された多段式除振装置において、
前記中間空気室の内部に配置され、前記上下方向に直交する水平方向における、前記第1空気室の底面に対する該第1空気室の天井面の変位を減衰させる水平減衰部材を備える
ことを特徴とする多段式除振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多段式除振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、多段式除振装置として構成された気体バネ式除振装置が開示されている。具体的に、この特許文献1に係る気体バネ式除振装置は、ダイヤフラムによって区画された容積可変の2つの空気室を備えている。この気体バネ式除振装置では、それら2つの空気室によって、トッププレートを天板部として被支持体を支持する上段の空気バネと、ボトムプレートを底板部とする下段の空気バネと、が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-231875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被支持体の設置スペース等の観点から、フットプリントの小さな除振装置が求められるケースがある。その場合、被支持体の大型化、つまり搭載重量の増加にも対応させるべく、前記特許文献1に開示されているような上下多段式の除振装置を用いることが考えられる。
【0005】
近年、上下多段式の除振装置に対し、フットプリントの抑制と被支持体の高重量化への対応との両立を図るばかりでなく、水平方向にも柔らかなバネ特性を求めるニーズがある。しかしながら、従来知られた構成では、そうしたニーズを十分に満足させることはできなかった。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上下多段式の除振装置において、水平方向に柔らかなバネ特性を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、基礎に対して被支持体を弾性的に支持する多段式除振装置に係る。この多段式除振装置は、前記被支持体が搭載される定盤と、前記基礎に設置され、上下方向に伸縮する第1空気室が区画された下段側バネ要素と、前記下段側バネ要素に対して前記定盤を支持するとともに、上下方向に伸縮する第2空気室が区画された上段側バネ要素と、前記第2空気室の天井面と前記第1空気室の天井面とを連結する支柱部と、を備える。
【0008】
そして、本開示の第1の態様によると、前記支柱部は、前記定盤に向かって上方に開口した有底筒状のピストンウエルと、前記ピストンウエルに挿入され、該ピストンウエルの内底面と前記定盤の下面とを連結するサポートロッドと、を有し、前記ピストンウエル及び前記サポートロッドは、前記定盤に対する前記ピストンウエルの揺動を許容するジンバルピストンを構成する。
【0009】
前記第1の態様によれば、上下多段式の除振装置において、上段側バネ要素と下段側バネ要素とを連結する支柱部によって、ピストンウエル及びサポートロッドが構成されることになる。これにより、この除振装置においてジンバルピストンを構成し、水平方向に柔らかなバネ特性を実現することができる。そのことで、上下多段式の除振装置としたことによるフットプリントの抑制及び被支持体の高重量化への対応と、ジンバルピストンを設けたことによる水平方向のバネ特性とを両立させることができ、ひいてはより優れた除振性能を実現することが可能になる。
【0010】
また、本開示の第2の態様によると、前記サポートロッドは、前記ピストンウエル及び前記定盤に対して着脱可能に構成され、前記多段式除振装置は、前記サポートロッドの代わりに装着されることで、前記ピストンウエルの上面と前記定盤の下面との間に配置されるアタッチメントをさらに備え、前記多段式除振装置は、前記ピストンウエル及び前記定盤に対し前記サポートロッドを装着した第1形態と、前記サポートロッドを前記アタッチメントに置き換えることで、前記定盤に対する前記ピストンウエルの揺動を規制した第2形態と、の間で切り替え可能に構成されている。
【0011】
被支持体の重量等に応じて、除振装置に求められる仕様は多岐にわたることになる。例えば、前述したような水平方向に柔らかなバネ特性を求める代わりに、同方向において、若干硬めのバネ特性が要求されるケースも想定される。そうした場合、ジンバルピストンを当初から具備しない除振装置を用意することも考えられるが、仕様に応じて全く異なる除振装置を用意することは、部品の調達コスト、製品の管理等を考慮すると不都合である。
【0012】
これに対し、前記第2の態様によれば、サポートロッドを前記アタッチメントと置き換えるだけで、水平方向のバネ特性を調整することができる。これにより、除振装置の性能及び特性を使い分けることができ、異なる仕様に対応させることが可能になる。そのことで、可能な限り部品の共通化を図ることができ、部品の調達コストを抑制するとともに、製品を管理する際の手間を省くことが可能になる。特に、前記第2形態は、定盤の振動の整定性を確保する上で有効である。
【0013】
また、本開示の第3の態様によると、前記サポートロッドの上端部は、球面状の上面を有する転動子を介して前記定盤の下面に当接し、前記ジンバルピストンは、ドームジンバルピストンとして構成されている、としてもよい。
【0014】
上段側バネ要素と下段側バネ要素とを連結する支柱部によってピストンウエルを構成した場合、ピストンウエルの下端部が下段側バネ要素によって拘束されることになるため、水平方向のバネ特性を柔らかくする上で性能向上の余地が残る。
【0015】
これに対し、前記第3の態様のようにドームジンバルピストンを用いることで、水平方向により柔らかなバネ特性を実現し、ピストンウエルの下端部が下段側バネ要素によって拘束されたことによる影響を減殺することができる。このことは、水平方向に柔らかなバネ特性を実現する上で有効である。
【0016】
また、本開示の第4の態様によると、前記第1空気室と前記第2空気室との間には、該第1空気室の天井面と前記第2空気室の底面とによって区画された中間空気室が介在し、前記中間空気室は、前記第1空気室及び前記第2空気室の双方に対して非連通とされているとともに、大気に対して開放されている、としてもよい。
【0017】
前記第4の態様によれば、第1空気室と第2空気室との間に中間空気室を介在させたときに、これを大気開放することで、中間空気室の内圧が負圧に陥るのを抑制することができる。これにより、第1空気室及び第2空気室において弾性特性を実現する部材を、より適切に伸び縮みさせることが可能になる。
【0018】
また、本開示の第5の態様によると、前記第1空気室及び前記第2空気室は、互いに連通している、してもよい。
【0019】
前記第5の態様は、第1空気室及び第2空気室の内圧を同時に制御する上で有効である。
【0020】
また、本開示の第6の態様によると、前記多段式除振装置は、前記定盤によって天板部が構成され、前記上段側バネ要素を包囲するケーシングと、前記基礎に対する前記定盤の振動状態を検出する振動センサと、を備え、前記第2空気室は、前記サポートロッドの中心軸に関する径方向において、少なくとも一部の外壁部が、前記第1空気室の外壁部に比して縮小されており、前記振動センサは、前記第2空気室における前記外壁部と、前記ケーシングの内壁部との間に配置されている、としてもよい。
【0021】
定盤の振動状態を検出するセンサは、より正確かつ遅れのない検出を行うためには、可能な限り定盤に接近させることが好都合である。
【0022】
これに対し、前記第6の態様によれば、第1空気室に比して第2空気室をコンパクトに構成したことで、センサ類の収容スペースを確保することができる。第2空気室は、第1空気室に比して定盤に近接しているため、センサを可能な限り定盤に接近させることも可能になる。このことは、センサの検出信号に基づいた除振制御及び制振制御の性能向上に資する。
【0023】
また、センサ類を定盤に可能な限り接近させたことで、いわゆるセンサブラケット等、センサ類を取り付けるための部材を従来よりもコンパクト化し、当該部材の剛性を確保することができる。センサブラケット等の剛性を確保することは、各種制御の妨げとなる外乱を抑制する上でも有効である。
【0024】
このように、前記第6の態様によれば、除振制御及び制振制御の性能向上と、外乱の抑制と、被支持体の支持の安定化と、をそれぞれ両立させることができる。
【0025】
また、本開示の第7の態様によると、前記多段式除振装置は、前記中間空気室と大気との連通部を縮径させた複数のオリフィスを備え、前記複数のオリフィスは、前記上下方向まわりの周方向に沿って、等間隔で配置されている、としてもよい。
【0026】
前記第7の態様によれば、中間空気室と大気との連通部を縮径させることで、下段側バネ要素及び上段側バネ要素双方の伸縮に抵抗を付与することができる。これにより、上下方向における多段式除振装置全体の伸縮を減衰させるとともに、上下方向における多段式除振装置の高固有値化(高固有振動数化)を実現することができる。そのことで、被支持体から伝わる揺れを速やかに収束させることができるようになり、多段式除振装置の制振性能を向上させることができる。
【0027】
さらに、前記第7の態様によれば、単にオリフィスを具備するのではなく、各オリフィスを周方向に等間隔で配置することで、周方向にバランスよく減衰を付与することができる。そのことで、制振性能を向上させる上でさらに有利になる。
【0028】
また、第1空気室及び第2空気室ではなく、中間空気室に工夫を凝らすことで、第1空気室及び第2空気室それぞれの内圧制御に及ぼす影響を可能な限り抑制することができる。
【0029】
また、本開示の第8の態様によると、前記多段式除振装置は、前記中間空気室の内部に配置され、前記上下方向において、前記第1空気室の底面に対する該第1空気室の天井面の変位を減衰させる上下減衰部材を備える、としてもよい。
【0030】
前記第8の態様によれば、中間空気室に上下減衰部材を配置することで、下段側バネ要素及び上段側バネ要素双方の伸縮に抵抗を付与することができる。これにより、上下方向における多段式除振装置全体の伸縮を減衰させるとともに、上下方向における多段式除振装置の高固有値化(高固有振動数化)を実現することができる。そのことで、被支持体から伝わる揺れを速やかに収束させることができるようになり、多段式除振装置の制振性能を向上させることができる。
【0031】
なお、第1空気室及び第2空気室は、それぞれの伸縮による空気の圧縮又は膨張に伴って、その内部で温度変化を生じる可能性がある。そうした温度変化は、上下減衰部材の減衰特性を変化させ得るため不都合である。一方、中間空気室は、大気開放されている。そのため、中間空気室の内部では、第1空気室及び第2空気室の内部ほど温度変化は生じないと考えられる。そのため、前記第8の態様のように中間空気室の内部に上下減衰部材を配置することで、該上下減衰部材の減衰特性を安定させることができる。
【0032】
また、本開示の第9の態様によると、前記多段式除振装置は、前記中間空気室の内部に配置され、前記第1空気室の天井面と該第1空気室の底面とを接近させる方向に復元力を発揮する第1バネ部材を備える、としてもよい。
【0033】
前記第9の態様によれば、第1バネ部材は、第1空気室を上下に圧縮させる方向に復元力を発揮する。この復元力は、各空気室の内圧を高めるように作用する。各空気室の内圧の上昇と、第1バネ部材自身のバネ特性とが相まって、上下方向における多段式除振装置の高固有値化(高固有振動数化)を実現することができる。そのことで、被支持体から伝わる揺れの振幅を小さくすることができる。
【0034】
さらに、前記第9の態様によれば、第1バネ部材は、第1空気室の天井面を押し下げる方向に復元力を発揮する。この復元力によって、多段式除振装置に被支持体が搭載されていない非搭載状態において、中間空気室の底面と天井面との接触を抑制したり、第1空気室の天井面のふらつきを抑制したりすることができる。
【0035】
また、本開示の第10の態様によると、前記多段式除振装置は、前記第1空気室の内部に配置され、前記第1空気室の天井面と該第1空気室の底面とを離間させる方向に復元力を発揮する第2バネ部材を備える、としてもよい。
【0036】
前記第10の態様によれば、第2バネ部材は、第1空気室を上下に伸長させる方向に復元力を発揮する。第2バネ部材自身のバネ特性によって、上下方向における多段式除振装置の高固有値化(高固有振動数化)を実現することができる。そのことで、被支持体から伝わる揺れの振幅を小さくすることができる。
【0037】
さらに、前記第10の態様によれば、第2バネ部材は、第1空気室の天井面を押し上げる方向に復元力を発揮する。したがって、その復元力を利用して、より重い被支持体を支持することが可能になる。そのことで、多段式除振装置の搭載能力を高めることができる。
【0038】
さらに、前述のように、第1バネ部材は、第1空気室の天井面を押し下げる方向に復元力を発揮する。この復元力は、第1空気室に対して重力方向に作用することから、多段式除振装置の搭載能力を損なう可能性がある。一方、第2バネ部材は、第1空気室の天井面を押し上げる方向に復元力を発揮する。この復元力は、多段式除振装置の搭載能力を補強する方向に作用する。したがって、第1バネ部材と、複数の第2バネ部材とを併用することで、多段式除振装置の搭載能力を確保しつつ、高固有値化を実現することができる。
【0039】
また、本開示の第11の態様によると、前記多段式除振装置は、前記中間空気室の内部に配置され、前記上下方向に直交する水平方向における、前記第1空気室の底面に対する該第1空気室の天井面の変位を減衰させる水平減衰部材を備える、としてもよい。
【0040】
前記第11の態様によれば、中間空気室に水平減衰部材を配置することで、水平方向における変位に減衰を付与することができる。これにより、水平方向における多段式除振装置の高固有値化(高固有振動数化)を実現することができる。そのことで、被支持体から伝わる揺れを速やかに収束させることができるようになり、多段式除振装置の制振性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本開示によれば、上下多段式の除振装置において、水平方向に柔らかなバネ特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、第1の実施形態に係る多段式除振装置を用いた除振システムを例示する概略図である。
図2図2は、多段式除振装置の全体構成を例示する斜視図である。
図3図3は、多段式除振装置を一部分解して例示する図2対応図である。
図4図4は、第1形態における多段式除振装置を例示する縦断面図である。
図5図5は、第2形態における多段式除振装置を例示する図4対応図である。
図6図6は、ジンバルピストンの動作を説明するための図である。
図7A図7Aは、除振装置システムの制御系を例示するブロック図である。
図7B図7Bは、除振装置システムの制御系を例示するブロック図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る多段式除振装置の全体構成を例示する斜視図である。
図9図9は、多段式除振装置からベースプレートを取り外した状態を例示する図8対応図である。
図10図10は、多段式除振装置から下段側収容物を取り除いた状態を例示する図8対応図である。
図11図11は、第2の実施形態に係る図4対応図である。
図12図12は、第2の実施形態に係る図5対応図である。
図13図13は、図8のA-A断面の部分拡大図である。
図14図14は、図8のB-B断面の部分拡大図である。
図15図15は、プラグ及びオリフィスの構成を例示する縦断面図である。
図16図16は、オリフィスの実験データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0044】
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態に係る構成について、詳細に説明する。
【0045】
(全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る多段式除振装置(以下、単に「除振装置」ともいう)1を用いた除振システムSを例示する概略図である。また、図2は、除振装置1の全体構成を例示する斜視図であり、図3は、除振装置1を一部分解して例示する図2対応図である。さらに、図4は、第1形態における除振装置1を例示する縦断面図である。図4に例示した状態は、ベースプレート11に対してトッププレート12を所定の基準位置に配置した状態、言い換えると、ジンバルピストン40において揺動が生じていない状態に対応している。
【0046】
図1に示すように、除振システムSは、基礎としての設置面Fに設置された1つ又は複数(図例では1つ)の除振装置1と、コントローラ100と、アクチュエータを構成する3つのサーボ弁91と、を備えている。
【0047】
なお、紙面スペースの都合上、図1では除振装置1の外部にサーボ弁91をレイアウトしたが、図2図3に示すように、除振装置1の内部にサーボ弁91をレイアウトしてもよい。本実施形態では、後者のレイアウトについて詳細に説明する。後者のレイアウトを採用した場合、各サーボ弁91は、除振装置1の構成要素とみなすことができる。なお、後者のレイアウトを採用した場合であっても、全てのサーボ弁91を除振装置1の内部にレイアウトする必要はない。
【0048】
除振装置1は、設置面Fに対し、被支持体としての搭載物Dを弾性的に支持する。本実施形態における設置面Fは、略水平方向に沿って延びている。以下、設置面Fに沿って延びかつ互いに直交する水平2方向をそれぞれx方向及びy方向と呼称し、この設置面Fに対して直交する鉛直方向をZ方向と呼称する。x方向及びy方向を総称して「xy方向」、「水平方向」又は「側方」と呼称したり、z方向を「高さ方向」又は「上下方向」と呼称したりする場合もある。
【0049】
なお、設置面Fは、図1に例示されるような床面には限定されない。本実施形態における設置面Fには、上下方向において除振装置1を支えることができる一般の基礎が含まれる。
【0050】
また、以下の説明において、x方向に沿った一方向(図1の紙面右方向)を「+x方向」と呼称し、その反対方向(図1の紙面左方向)を「-x方向」と呼称する場合がある。同様に、z方向における上方向(図1の紙面上方向)を「+z方向」と呼称し、z方向における下方向(図1の紙面下方向)を「-z方向」と呼称する場合がある。
【0051】
また、本実施形態における搭載物Dには、半導体製造装置、電子顕微鏡等、振動の影響を避けることが好都合な精密機器が含まれる。除振装置1は、そうした機器を搭載するとともに、搭載した機器の振動を抑制するような制御力を適宜発生させるよう構成されている。
【0052】
図1に示すように、除振装置1は、設置面Fに設置されるベースプレート11と、搭載物Dが搭載されるトッププレート12と、を備えている。トッププレート12は、いわゆる定盤である。除振装置1は、このトッププレート12を介して、設置面Fに対して搭載物Dを支持するよう構成されている。
【0053】
除振装置1はまた、下段側サイドプレート13と、上段側サイドプレート14と、を備えている。下段側サイドプレート13は、ベースプレート11を構成する後述の縦壁部11bとともに、除振装置1における下段側の部位を側方から覆っている。上段側サイドプレート14は、除振装置1における上段側の部位を側方から覆っている。
【0054】
ベースプレート11、トッププレート12、下段側サイドプレート13及び上段側サイドプレート14によって、除振装置1の各要素を収容するためのケーシング10が構成されている。ここで、ベースプレート11は、ケーシング10の底板部を構成している。また、定盤としてのトッププレート12は、ケーシング10の天板部を構成している。その他、縦壁部11b、下段側サイドプレート13及び上段側サイドプレート14は、ケーシング10の側板部を構成している。ケーシング10は、後述の下段側収容物20及び上段側収容物30、並びに、上段側バネ要素Sp2を包囲している。ケーシング10を構成する各プレート部材は、例えば鋼製とすることができる。
【0055】
より詳細には、本実施形態に係るベースプレート11は、+z方向に向かって開口した略箱状に形成されており、底板部11aと、縦壁部11bと、を有している(図2図4を参照)。ここで、底板部11aは、xy方向の寸法に比してz方向の寸法が小さく形成された矩形薄板状に形成されている。縦壁部11bは、底板部11aの側縁部から+z方向に向かって立ち上がるように形成されている。ベースプレート11は、下段側サイドプレート13と連結されている。
【0056】
また、本実施形態に係るトッププレート12は、図2図4に示すように、xy方向の寸法に比してz方向の寸法が小さく形成された矩形薄板状に形成されている。図1に概略的に示したように、トッププレート12は、上段側サイドプレート14と連結されており、この上段側サイドプレート14と一体的に変位するように構成されている。
【0057】
また、本実施形態に係る下段側サイドプレート13は、図1では省略されているが、+z側に配置されかつxy方向の中央部に貫通孔13cが設けられた底板部13aと、その底板部13aの周縁から-z方向に向かって突出した縦壁部13bと、を有する有底筒状に形成されている(図4を参照)。
【0058】
また、本実施形態に係る上段側サイドプレート14は、除振装置1における+x側および-x側の側板部を構成する2枚の第1プレート部材14aと、同装置1における-y側および+y側の側板部を構成する2枚の第2プレート部材14bと、を有している。2枚の第2プレート部材14bのうち、-y側に配置される一方の第2プレート部材14bは、サーボ弁91との干渉・接触を防ぐべく、その一部を切り欠いている(図2を参照)。
【0059】
また、上段側サイドプレート14は、上述したようにトッププレート12と一体的に変位する一方、下段側サイドプレート13に対しては相対的な変位を許容するように組み付けられている。
【0060】
これらの部材によって包囲される構成要素として、本実施形態に係る除振装置1は、ベースプレート11を介して設置面Fに設置された下段側バネ要素Sp1と、下段側バネ要素Sp1に対してトッププレート12及び搭載物Dを支持する上段側バネ要素Sp2と、を備えている。下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2は、基礎としての設置面Fに対し、被支持体としての搭載物Dを弾性的に支持するように機能する。そうした機能を発揮させるべく、下段側バネ要素Sp1には、z方向に伸縮する第1空気室S1が区画されている。同様に、上段側バネ要素Sp2には、z方向に伸縮する第2空気室S2が区画されている。また、図4に例示するように、第1空気室S1と第2空気室S2との間には、大気に開放された中間空気室Smが介在している。
【0061】
なお、第1空気室S1及び第2空気室S2は、大気に代えて、窒素ガス等を封入してもよい。その意味で、各空気室S1、S2は、「気体室」と呼ぶこともできる。こうした変形例は、後述の第3空気室S3及び第4空気室S4にも適用可能である。
【0062】
このように、除振装置1は、z方向に沿って下段側バネ要素Sp1と上段側バネ要素Sp2とが積み重ねられた上下2段の除振装置として構成されている。上下2段の除振装置として構成したことで、フットプリントを抑制しつつ、より高重量な搭載物Dを支持することができるようになる。なお、除振装置1を上下2段とする構成は例示に過ぎない。例えば、下段側バネ要素Sp1と上段側バネ要素Sp2との間に1つ又は複数のバネ要素を介在させてもよい。本開示に係る除振装置は、上下3段以上の除振装置を含む。
【0063】
詳細は後述するが、この除振装置1は、図1に示すように、第2空気室S2の天井面と第1空気室S1の天井面とを接続する支柱部41、42を備えている。ここで、支柱部41、42は、有底筒状のピストンウエル41と、このピストンウエル41に挿入されるサポートロッド42と、を有する。ここで、ピストンウエル41は、第2空気室S2の天井面と第1空気室S1の天井面とを接続するとともに、トッププレート12に向かって上方に開口している。サポートロッド42は、ピストンウエル41に挿入され、該ピストンウエル41の底面とトッププレート12の下面12aとを連結している。
【0064】
ピストンウエル41によって第2空気室S2の天井面と第1空気室S1の天井面とを接続したことで、下段側バネ要素Sp1の伸縮と、上段側バネ要素Sp2の伸縮とが連動するようになる。例えば、第2空気室S2の天井面の沈み込みに伴って、第1空気室S1の天井面も沈み込むようになる。
【0065】
そして、ピストンウエル41及びサポートロッド42は、トッププレート12に対するピストンウエル41の揺動を許容するジンバルピストン40を構成している。これにより、xy方向において柔らかなバネ特性を発揮させることができる。ジンバルピストン40の構成は、後述する。
【0066】
除振装置1はまた、第3バネ要素Sp3と、第4バネ要素Sp4と、を備えている(図1等参照)。第3バネ要素Sp3は、x方向において、上段側バネ要素Sp2と+x側の第1プレート部材14aとの間に配置されている。第3バネ要素Sp3は、x方向に伸縮する第3空気室S3を有している。第4バネ要素Sp4は、x方向において、上段側バネ要素Sp2と-x側の第1プレート部材14aとの間に配置されている。第4バネ要素Sp4は、x方向に伸縮する第4空気室S4を有している。第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4は、それぞれ、第1プレート部材14a、すなわち上段側サイドプレート14を介して、トッププレート12に連結されている。
【0067】
なお、第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4は、必須ではない。また、x方向に弾性力を発揮する第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4に加え、y方向に弾性力を発揮する第5バネ要素及び第6バネ要素を設けてもよい。
【0068】
下段側バネ要素Sp1、上段側バネ要素Sp2、第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4は、空気によって荷重を弾性的に支持するばかりでなく、サーボ弁91とともに所謂「空気バネ」を構成する。すなわち、各バネ要素は、対応するサーボ弁91によって内圧(空気圧)が適宜制御されることで、各バネ要素自体がアクチュエータとして機能するように構成されている。この除振装置1は、いわゆるアクティブタイプの除振装置(アクティブ除振装置)として機能させることができる。各サーボ弁91を作動させるためのセンサ類の構成及びレイアウト、並びに、コントローラ100による具体的な制御内容については、後述する。
【0069】
なお、サーボ弁91を用いる構成は必須ではない。後述の変形例に示すようにリニアモータとサーボ弁91とを組み合わせて用いてもよいし、サーボ弁91を廃してリニアモータのみを用いてもよい。リニアモータは、トッププレート12に対し、z方向の制御力を付与する上で有効である。
【0070】
あるいは、リニアモータ及びサーボ弁91を双方とも廃してもよい。リニアモータ及びサーボ弁91を廃した場合、除振装置1は、いわゆるパッシブタイプの除振装置(パッシブ除振装置)として機能することになる。
【0071】
パッシブタイプの場合、除振装置1は、各空気室に気体を給排する制御弁を備えていてもよい。この場合、コントローラ100は、制御弁によって構成されるレベリング機構を制御することで、トッププレート12の上面を水平に保ち、かつその高さを一定に維持するための調整(レベリング調整)を行うことになる。その場合の制御弁としては、いわゆるトッププレート12の高さに応じて空気の供給及び排気を切替可能なレバー式のレベリングバルブを用いることができる。
【0072】
こうした変形例は、リニアモータに係る例を除き、上下方向のバネ要素(下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2)と、水平方向のバネ要素(第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4)と、の少なくとも一方に対して適用可能である。
【0073】
以下、除振装置1の詳細構造の説明を通じて、下段側バネ要素Sp1、上段側バネ要素Sp2、第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4、並びに、それらの要素を連結するジンバルピストン40について詳述する。
【0074】
(内部構造)
図4に示すように、本実施形態に係る除振装置1は、ケーシング10によって包囲された収容物として、-z側に位置する下段側収容物20と、+z側に位置する上段側収容物30と、を備えている。下段側収容物20は、下段側バネ要素Sp1に関連している。上段側収容物30は、上段側バネ要素Sp2、第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4に関連している。
【0075】
-下段側バネ要素Sp1-
図4に示すように、下段側収容物20は、第1インナーベース21と、ワッシャ22と、第1ダイヤフラム23と、を有している。下段側収容物20は、ベースプレート11及び下段側サイドプレート13とともに、下段側バネ要素Sp1を構成している。
【0076】
ここで、下段側収容物20のうち、第1ダイヤフラム23以外の構成要素は、鋼、アルミニウム合金等の金属製とすることができる。一方、第1ダイヤフラム23は、例えばポリエステル繊維の織物を補強材として埋設したゴム弾性膜によって構成することができる。
【0077】
第1インナーベース21は、略円板状に形成されている。第1インナーベース21は、xy方向においては、下段側サイドプレート13の内周側に配置されているとともに、少なくとも図4に例示した状態(つまり、トッププレート12に相対変位が生じていない状態)では、その中央部がサポートロッド42の中心軸Ozを通過するように配置されている。第1インナーベース21はまた、z方向においては、下段側サイドプレート13の底板部13aよりも-z側かつ縦壁部13bと略同じ高さに配置されている。
【0078】
なお、ここでいう「内周側」とは、「中心軸Oz側」又は「中心軸Ozに接近する一側」をいう。そして、ここでいう「中心軸Oz」とは、サポートロッド42の中心軸であって、略z方向に沿った軸を指す。同様に、以下で述べる「外周側」とは、「中心軸Ozの反対側」又は「中心軸Ozから離間する他側」をいう。
【0079】
また、以下の記載における「径方向」とは、サポートロッド42の中心軸Ozに関する径方向(つまり、中心軸Ozを始点として、該中心軸Ozから離れるように延びる方向)を指す。以下の記載における「大径」及び「小径」とは、この径方向に沿って見たときの長さの大小を示している。
【0080】
第1インナーベース21は、第1空気室S1の天板部及び天井面と、中間空気室Smの底板部及び底面と、を構成している。図4に示すように、第1インナーベース21の上面は、下段側サイドプレート13の底面(下面)に対し、z方向に間隔を空けて相対している。第1インナーベース21の下面は、ベースプレート11の底面(上面)に対し、z方向に間隔を空けて相対している。第1インナーベース21の下面には、第1ダイヤフラム23の内周側の上面が密着している。第1インナーベース21の外側面は、第1ダイヤフラム23の伸縮を許容すべく、下段側サイドプレート13の内周面に対して間隔を空けて相対している。
【0081】
ワッシャ22は、z方向の厚みが薄く、かつxy方向に広がる円環状に形成されている。ワッシャ22の下面は、ベースプレート11の底面(上面)に対し、z方向に間隔を空けて相対している。ワッシャ22の上面には、第1ダイヤフラム23の内周側の下面が密着している。ワッシャ22の外径は、第1インナーベース21の外径と略一致している。
【0082】
第1ダイヤフラム23は、例えばゴム材料によって構成されており、z方向の厚みが薄く、かつxy方向に広がる円環状に形成されている。第1ダイヤフラム23の内周側の周縁部は、第1インナーベース21とワッシャ22とによって挟み込まれている。第1ダイヤフラム23の外周側の周縁部は、ベースプレート11と下段側サイドプレート13とによって挟み込まれている。より詳細には、本実施形態に係る第1ダイヤフラム23は、ベースプレート11及び下段側サイドプレート13に対する第1インナーベース21及びワッシャ22の変位を許容するように、xy方向に撓んだ状態で挟み込まれている。
【0083】
第1ダイヤフラム23の両周縁部を挟持することで、除振装置1の内部に第1空気室S1が仕切られる。この第1空気室S1は、z方向の寸法に比してx方向及びy方向の寸法が長い略直方体形状を有している。また、本実施形態に係る第1ダイヤフラム23は、第1空気室S1を封止することで、第1空気室S1と中間空気室Smとの間の空気の流通を規制することができる。すなわち、本実施形態に係る中間空気室Smは、第1空気室S1に対して非連通とされている。
【0084】
また、第1ダイヤフラム23は、前述のように挟持された部位の間の部分(xy方向にたわんだ部分)が上下にうねるようにかつ全周にわたって大きくたわむことで、ピストンウエル41、第1インナーベース21、第2インナーベース31、第3締付リング36及び第5締付リング38等が相互に連結されてなる連結部材Tのz方向の変位に対して、大きな可撓性を有する。なお、第2インナーベース31、第3締付リング36及び第5締付リング38については後述する。また、第1ダイヤフラム23が+z側と-z側とで反対向きにたわむことで、連結部材Tは、水平方向の任意の軸まわりに容易に揺動するとともに、その揺動に伴って、中心軸Ozに対して傾動することになる(図6の傾斜角θを参照)。一方、第1ダイヤフラム23は、連結部材Tのx方向の変位に対しては可撓性が極めて小さく、このため、当該部材Tは、x方向には殆ど変位しないことになる。
【0085】
一方、下段側収容物20とともに下段側バネ要素Sp1を構成するベースプレート11は、前述のように、底板部11aと、縦壁部11bと、を有している。このうち、底板部11aは、第1空気室S1の底板部及び底面を構成している。一方、縦壁部11bは、第1空気室S1の側板部及び内壁面を構成している。また、縦壁部11bの外径は、ワッシャ22の外径よりも大きく形成されており、該縦壁部11bの上面には、第1ダイヤフラム23の外周側(中心軸Ozの反対側)の下面が密着している。
【0086】
さらに、下段側収容物20及びベースプレート11とともに下段側バネ要素Sp1を構成する下段側サイドプレート13は、前述のように、底板部13aと、縦壁部13bと、を有している。このうち、底板部13aは、中間空気室Smの天板部及び天井面の一部を構成している。一方、縦壁部13bは、中間空気室Smの側板部及び内壁面を構成している。また、縦壁部13bの外径は、第1インナーベース21の外径よりも大きく形成されており、該縦壁部13bの下面には、第1ダイヤフラム23の外周側(中心軸Ozの反対側)の上面が密着している。
【0087】
また、下段側サイドプレート13の底板部13aには、その中央部に設けられた貫通孔13cとは別に、その周縁部付近の部位をz方向に貫く貫通孔62が設けられている。これらの貫通孔62は、除振装置1の外部と繋がっている。中間空気室Smは、これらの貫通孔62を通じて大気に開放されている。
【0088】
-上段側バネ要素Sp2-
図4に示すように、上段側収容物30は、第2インナーベース31と、第2ダイヤフラム32と、第1締付リング33と、筒状体34と、第2締付リング35と、第3締付リング36と、第4締付リング37と、第5締付リング38と、第3ダイヤフラム39と、を有している。上段側収容物30は、前述のピストンウエル41とともに、上段側バネ要素Sp2を構成している。上段側収容物30は、第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4の一部も構成している。
【0089】
ここで、上段側収容物30のうち、第2ダイヤフラム32及び第3ダイヤフラム39以外の構成要素は、鋼、アルミニウム合金等の金属製とすることができる。一方、第2ダイヤフラム32及び第3ダイヤフラム39は、第1ダイヤフラム23と同様に、例えばポリエステル繊維の織物を補強材として埋設したゴム弾性膜によって構成することができる。
【0090】
第2インナーベース31は、第1インナーベース21と、底板部13a中央の貫通孔13cとよりも小径の略円板状に形成されている。第2インナーベース31は、xy方向においては、底板部13aの内周側に配置されているとともに、少なくとも図4に例示した状態(つまり、トッププレート12に相対変位が生じていない状態)では、その中央部がサポートロッド42の中心軸Ozを通過するように配置されている。第2インナーベース31はまた、z方向においては、第1インナーベース21よりも+z側かつ下段側サイドプレート13と略同じ高さに配置されている。
【0091】
第2インナーベース31は、中間空気室Smの側板部及び外壁面を構成している。図4に示すように、第2インナーベース31の上面は、ピストンウエル41の下面とともに、第2ダイヤフラム32の中央部を挟み込んでいる。これにより、第2インナーベース31は、第2ダイヤフラム32等が許容する範囲内で、ピストンウエル41と一体的に上下動したり、これと一体的に揺動したりするなど、ピストンウエル41と一体的に変位することになる。
【0092】
一方、第2インナーベース31の下面は、ボルト等の締結具を介して、第1インナーベース21の上面に締結されている。この締結により、第1インナーベース21は、第1ダイヤフラム23等が許容する範囲内で、第2インナーベース31及びピストンウエル41と一体的に上下動したり、これらと一体的に揺動したりするなど、第2インナーベース31及びピストンウエル41と一体的に変位することになる。
【0093】
第1締付リング33は、xy方向に広がる円環状に形成されている。第1締付リング33の内径は、第2インナーベース31の外径よりも大径である。第1締付リング33の外径は、底板部13a中央の貫通孔13cよりも小径である。第1締付リング33は、xy方向においては、第2インナーベース31よりも外周側、かつ下段側サイドプレート13の底板部13aよりも内周側に配置されている。第1締付リング33を円環とみなしたときの中心軸は、サポートロッド42の中心軸Ozと同軸になるように配置されている。第1締付リング33はまた、z方向においては、第1インナーベース21及び下段側サイドプレート13よりも+z側に配置されている。さらに、第1締付リング33の上面は、第2インナーベース31の上面と略同じ高さになるよう配置されている。
【0094】
第1締付リング33は、中間空気室Smの天板部及び天井面の他部を構成している。第1締付リング33の下面は、第1インナーベース21の上面に対し、z方向に間隔を空けて相対している。第1締付リング33の上面には、第2ダイヤフラム32の外周側の下面が密着している。第1締付リング33の上面は、筒状体34の下面とともに、第2ダイヤフラム32の外周側の周縁部を挟み込んでいる。また、第1締付リング33と筒状体34は、ボルト等の締結具を介して締結されている。この締結により、第1締付リング33は、ピストンウエル41との一体的な揺動が規制されることになる。
【0095】
筒状体34は、z方向に延びかつ上端部(+z側端部)と下端部(-z側端部)とを開口させた筒状に形成されている。筒状体34の内径は、ピストンウエル41の外径よりも大径である。筒状体34の外径は、中心軸Ozから上段側サイドプレート14の内壁面までの距離よりも短く形成されている。筒状体34は、xy方向においては、ピストンウエル41の外周側、かつ上段側サイドプレート14の内周側に配置されている。筒状体34を円筒とみなしたときの中心軸は、サポートロッド42の中心軸Ozと同軸になるように配置されている。筒状体34はまた、z方向においては、下段側サイドプレート13よりも+z側に配置されている。さらに、筒状体34の上面は、ピストンウエル41の上端部よりも-z側に位置している。
【0096】
筒状体34は、第2空気室S2の底板部及び底面と、第2空気室S2における外周側の側板部及び内壁面と、に加えて、第3空気室S3及び第4空気室S4それぞれの内周側の側板部及び外壁面も構成している。筒状体34の下面は、下段側サイドプレート13の上面と、第1締付リング33の上面とに対し、ボルト等の締結具を介して締結されている。この締結により、筒状体34は、ピストンウエル41との一体的な揺動が規制されることになる。一方、筒状体34の上面は、第2空気室S2を密閉するように第2締付リング35の下面に接続されている。
【0097】
第2ダイヤフラム32は、例えばゴム材料によって構成されており、z方向の厚みが薄く、かつxy方向に広がる円環状に形成されている。第2ダイヤフラム32の中央部は、前述のように、第2インナーベース31とピストンウエル41とによって挟み込まれている。第2ダイヤフラム32の外周側の周縁部は、第1締付リング33と筒状体34の下端部とによって挟み込まれている。より詳細には、本実施形態に係る第2ダイヤフラム32は、ベースプレート11及び下段側サイドプレート13に対する第1インナーベース21、第2インナーベース31及びピストンウエル41の変位を許容するように、xy方向に撓んだ状態で挟み込まれている。
【0098】
第1ダイヤフラム23に加えて第2ダイヤフラム32を挟持することで、除振装置1の内部に中間空気室Smが仕切られる。この中間空気室Smは、その中央部に第2インナーベース31が挿入された略円環形状を有している。また、本実施形態に係る第2ダイヤフラム32は、第1ダイヤフラム23とともに中間空気室Smを封止することで、第2空気室S2と中間空気室Smとの間の空気の流通を規制することができる。すなわち、本実施形態に係る中間空気室Smは、第2空気室S2に対しても非連通とされている。
【0099】
そして、第1ダイヤフラム23と同様に、第2ダイヤフラム32は、前述のように挟持された部位の間の部分(xy方向にたわんだ部分)が上下にうねるようにかつ全周にわたって大きくたわむことで、前記連結部材Tのz方向の変位に対して、大きな可撓性を有する。また、第2ダイヤフラム32が+z側と-z側とで反対向きにたわむことで、連結部材Tは、水平方向の任意の軸まわりに容易に揺動するとともに、その揺動に伴って、中心軸Ozに対して傾動することになる(図6の傾斜角θを参照)。一方、第2ダイヤフラム32は、連結部材Tのx方向の変位に対しては可撓性が極めて小さく、このため、当該部材は、x方向には殆ど変位しないことになる。
【0100】
また、ピストンウエル41の下端部と、第2ダイヤフラム32と、第2インナーベース31の中央部と、第1インナーベース21の中央部とには、図4に示すような貫通孔61が設けられている。第1空気室S1及び第2空気室S2は、この貫通孔61を介して互いに連通している。貫通孔61を設けた場合、第1空気室S1と第2空気室S2との間で空気が流通し、それらの内圧が略一致した状態に保たれることになる。
【0101】
なお、図4に示すように、-z側から+z側に向かって、第1空気室S1、中間空気室Sm及び第2空気室S2の順番で各空気室がレイアウトされている。言い換えると、本実施形態に係る中間空気室Smは、前述のように、z方向において第1空気室S1と第2空気室S2との間に介在しているとみなすことができる。中間空気室Smの底面は、第1インナーベース21の上面(つまり第1空気室S1の天井面)によって区画されている。中間空気室Smの天井面は、下段側サイドプレート13の底面(底板部13aの下面)及び筒状体34の下面(つまり、第2空気室S2の底面)によって区画されている。
【0102】
貫通孔61を設けたことで、下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2は、サーボ弁91等が設けられた場合には、双方ともアクティブ型の除振装置として機能させる一方、そうしたアクチュエータが設けられない場合(レベリングバルブ等の制御弁を設けた場合)には、前述のようなパッシブ型の除振装置として機能させることができる。この場合、アクティブ型又はパッシブ型の一段式の除振装置と比較して、より優れた除振性能を発揮させることが可能になる。
【0103】
なお、貫通孔61は必須ではない。貫通孔61を廃した場合、下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2のうち一方のみの内圧を、サーボ弁91によって制御することが可能になる。その場合、下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2のうちの一方をアクティブ型の除振装置として機能させ、他方をパッシブ型の除振装置として機能させることができる。この場合、アクティブ型の除振装置とパッシブ型の除振装置とを水平方向に並べた構成と比較して、フットプリントを抑制することが可能になる。
【0104】
第2締付リング35は、xy方向に広がる円板状に形成された底板部と、その底板部における外周側の周縁部から+z側に向かって突出した縦壁部と、を有する略有底筒状に形成されている。第2締付リング35の底板部の内径は、筒状体34の内径と略一致する。第2締付リング35の縦壁部の内径は、筒状体34の外径よりも大径である。第3締付リング全体の外径は、中心軸Ozから上段側サイドプレート14の内壁面までの距離よりも短く形成されている。第2締付リング35は、xy方向においては、ピストンウエル41の外周側、かつ上段側サイドプレート14の内周側に配置されている。第2締付リング35を円環とみなしたときの中心軸は、サポートロッド42の中心軸Ozと同軸になるように配置されている。第2締付リング35はまた、z方向においては、筒状体34の上端部よりも+z側に配置されている。さらに、第2締付リング35の上面は、ピストンウエル41の上端部よりも-z側に位置している。
【0105】
第2締付リング35は、第2空気室S2における外周側の側板部及び内壁面を構成している。第2締付リング35の下面は、前述のように、筒状体34の上面に締結されている。一方、第2締付リング35の上面は、第4締付リング37の下面とともに、第3ダイヤフラム39の外周側の周縁部を挟み込んでいる。また、第2締付リング35の上面は、ボルト等の締結具を介して、第4締付リング37の下面に締結されている。この締結により、第2締付リング35及び第4締付リング37は、ピストンウエル41との一体的な揺動が規制されることになる。
【0106】
第4締付リング37は、xy方向に広がる円環状に形成されている。第4締付リング37の内径は、第2締付リング35における縦壁部の内径と略一致している。第4締付リング37の外径は、第2締付リング35における縦壁部の外径と略一致している。第4締付リング37は、xy方向においては、第5締付リング38の外周側、かつ上段側サイドプレート14の内周側に配置されている。第4締付リング37を円環とみなしたときの中心軸は、サポートロッド42の中心軸Ozと同軸になるように配置されている。第4締付リング37はまた、z方向においては、第2締付リング35の上端部よりも+z側に配置されている。さらに、第4締付リング37の上面は、ピストンウエル41の上端部と略同じ高さに位置している。
【0107】
前述のように、第4締付リング37の下面は、第3ダイヤフラム39の外周側の周縁部を挟み込むべく、第2締付リング35の上面に締結されている。また、第4締付リング37の上面は、トッププレート12の下面に対し、z方向に間隔を空けて配置されている。
【0108】
第3締付リング36は、xy方向に広がる円環状に形成されている。第3締付リング36の内径は、ピストンウエル41の外径と略一致する。第3締付リング36の外径は、第2締付リング35における縦壁部の内径よりも若干小径である。第3締付リング36は、xy方向においては、ピストンウエル41の外周側、かつ、上段側サイドプレート14と、第2締付リング35の縦壁部との内周側に配置されている。第3締付リング36を円環とみなしたときの中心軸は、少なくとも図4に例示した状態(つまり、トッププレート12に相対変位が生じていない状態)では、サポートロッド42の中心軸Ozと同軸になるように配置されている。第3締付リング36はまた、z方向においては、筒状体34の上端部よりも+z側に配置されている。さらに、第3締付リング36の上面は、ピストンウエル41の上端部よりも-z側に位置している。
【0109】
より詳細には、第3締付リング36には、ピストンウエル41が上方から挿し通されている。第3締付リング36の内周面は、ピストンウエル41の外周面に密着している。第3締付リング36の上面は、ピストンウエル41の上端部に設けられた縦壁部に当接している。
【0110】
第3締付リング36は、ピストンウエル41の外周面とともに、第2空気室S2における内周側の側板部及び内壁面を構成している。第3締付リング36の下面は、第2締付リング35の上面に対し、z方向に間隔を空けて相対している。一方、第3締付リング36の上面は、第5締付リング38の下面とともに、第3ダイヤフラム39の内周側部分を挟み込んでいる。また、第3締付リング36の上面は、ボルト等の締結具を介して、第5締付リング38の下面に締結されている。この締結と、前述のように第3締付リング36にピストンウエル41を挿し通したこととが相まって、第3締付リング36及び第5締付リング38は、ピストンウエル41と一体的に揺動することになる。
【0111】
第5締付リング38は、xy方向に広がる円環状に形成されている。第5締付リング38の内径は、第3締付リング36の内径よりも大径となるように形成されている。第5締付リング38の外径は、第3締付リング36の外径と略一致しており、第4締付リング37の内径よりも若干小径である。第5締付リング38は、xy方向においては、ピストンウエル41の外周側、かつ上段側サイドプレート14及び第4締付リング37の内周側に配置されている。第5締付リング38を円環とみなしたときの中心軸は、少なくとも図4に例示した状態(つまり、トッププレート12に相対変位が生じていない状態)では、サポートロッド42の中心軸Ozと同軸になるように配置されている。第5締付リング38はまた、z方向においては、第3締付リング36の上面よりも+z側に配置されている。さらに、第5締付リング38の上面は、サポートロッド42の上端部よりも-z側に配置されている。
【0112】
前述のように、第5締付リング38の下面は、第3ダイヤフラム39の内周側部分を挟み込むべく、第3締付リング36の上面に締結されている。また、第5締付リング38の上面は、トッププレート12の下面に対し、z方向に間隔を空けて配置されている。
【0113】
第3ダイヤフラム39は、例えばゴム材料によって構成されており、z方向の厚みが薄く、かつxy方向に広がる円環状に形成されている。第3ダイヤフラム39の中央に位置する開口には、ピストンウエル41及びサポートロッド42が挿し通されている。また、第3ダイヤフラム39の内周側部分は、前述のように、第3締付リング36と、第5締付リング38と、によって挟み込まれている。一方、第3ダイヤフラム39における外周側の周縁部は、前述のように、第2締付リング35の縦壁部と、第4締付リング37と、によって挟み込まれている。より詳細には、本実施形態に係る第3ダイヤフラム39は、第4締付リング37、第2締付リング35、筒状体34、下段側サイドプレート13及びベースプレート11に対する第1インナーベース21、第2インナーベース31、ピストンウエル41、第3締付リング36及び第5締付リング38の変位を許容するように、xy方向に撓んだ状態で挟み込まれている。
【0114】
第2ダイヤフラム32に加えて第3ダイヤフラム39を挟持することで、除振装置1の内部に第2空気室S2が仕切られる。この第2空気室S2は、その中央部にピストンウエル41及びサポートロッド42が挿入された略円筒形状を有している。また、本実施形態に係る第3ダイヤフラム39は、第2ダイヤフラム32とともに第2空気室S2を封止することで、ケーシング10の内部空間と第2空気室S2との間の空気の流通を規制することができる。すなわち、本実施形態に係る第2空気室S2は、ケーシング10の内部空間に対して非連通とされている。
【0115】
そして、第1ダイヤフラム23及び第2ダイヤフラム32と同様に、第3ダイヤフラム39は、前述のように挟持された部位の間の部分(xy方向にたわんだ部分)が上下にうねるようにかつ全周にわたって大きくたわむことで、前記連結部材Tのz方向の変位に対して、大きな可撓性を有する。また、第2ダイヤフラム32が+z側と-z側とで反対向きにたわむことで、連結部材Tは、水平方向の任意の軸まわりに容易に揺動するとともに、その揺動に伴って、中心軸Ozに対して傾動することになる(図6の傾斜角θを参照)。一方、第3ダイヤフラム39は、連結部材Tのx方向の変位に対しては可撓性が極めて小さく、このため、当該部材Tは、x方向には殆ど変位しないことになる。
【0116】
また図4に示すように、第2空気室S2は、サポートロッド42の中心軸Ozに関する径方向(xy平面に沿った径方向)において、少なくとも一部の外壁部15が、第1空気室S1の外壁部に比して縮小(縮径)されている(外壁部15については、図3及び図4を参照)。特に本実施形態では、第2空気室S2の外壁部のうち、第2締付リング35によって構成される部分と、筒状体34によって構成される部分と、の双方が、第1空気室S1の外壁部よりも縮小されている。
【0117】
すなわち、本実施形態では、上段側バネ要素Sp2の受圧面積は、下段側バネ要素Sp1の受圧面積に比して小さくなるように設定されている。
【0118】
さらに詳細には、第2空気室S2における前記縮小された外壁部15のうち、筒状体34によって構成される部分は、第2締付リング35によって構成される部分よりもさらに、前記径方向において縮小(縮径)されている。本実施形態に係る第2空気室S2は、z方向に沿った断面視(図4に例示する断面視)において、略V字の横断面を有している。
【0119】
また、第2空気室S2における前記外壁部15は、+x側、-x側、+y側及び-y側の4方向において縮小されている。図3に示すように、+x側の縮小部には第3バネ要素Sp3が配置されていて、-x側の縮小部には第4バネ要素Sp4が配置されている。図3及び4に示ように、第3バネ要素Sp3は、+x側の縮小部から+x方向に突出している。第4バネ要素Sp4は、-x側の縮小部から-x方向に突出している。また、-y側の縮径部には、アクチュエータを構成する2つのサーボ弁91が配置されている。
【0120】
その他のスペースには、各種センサ類、それらのセンサ類を取り付けるためのブラケット類、及び、制御基板がレイアウトされている。例えば、+x側かつーy側の角部における+z側端部には、上下方向フィードバック加速度センサ(以下、「第1FB加速度センサ」という)81と、水平方向フィードバック加速度センサ(以下、「第2FB加速度センサ」という)83と、が配置されている。
【0121】
このうち、第1FB加速度センサ81は、基礎(設置面F)に対するトッププレート12の振動状態(具体的には、z方向における、設置面Fに対するトッププレート12の加速度)を検出することができる。図1に示すように、第1FB加速度センサ81は、コントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100に対して検出信号を入力することができる。第1FB加速度センサ81は、本実施形態における「振動センサ」の例示である。
【0122】
第1FB加速度センサ81は、下段側バネ要素Sp1、上段側バネ要素Sp2及びサーボ弁91を用いて実行される、上下方向における除振フィードバック制御(以下、「第1除振FB制御」ともいう)に用いることができる。
【0123】
また、図2図4に示すように、振動センサとしての第1FB加速度センサ81は、第2空気室S2における少なくとも一部の外壁部(第1空気室S1に比して縮径された部分)15と、ケーシング10の内壁部16との間に配置されるようになっている(内壁部16は、図4のみに示す)。ここでいうケーシング10の内壁部16とは、トッププレート12及び上段側サイドプレート14の内壁部を指す。第1FB加速度センサ81の上端部は、トッププレート12の下面に当接している。また、第1FB加速度センサ81の下方には、制御基板86が収容されている。この制御基板86も、第1FB加速度センサ81と同様にケーシング10に収容されている。
【0124】
また、第2FB加速度センサ83は、x方向における、基礎(設置面F)に対するトッププレート12及び上段側サイドプレート14の加速度を検出することができる。第2FB加速度センサ83は、トッププレート12の下面に固定されている。図1に示すように、第2FB加速度センサ83は、コントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100に対して検出信号を入力することができる。
【0125】
第2FB加速度センサ83は、第3バネ要素Sp3、第4バネ要素Sp4及びサーボ弁91を用いて実行される、x方向における除振フィードバック制御(以下、「第2除振FB制御」ともいう)に用いることができる。
【0126】
その他、-x側かつ-y側の角部には、上下方向フィードバック変位センサ(以下、「第1FB変位センサ」という)82と、水平方向フィードバック変位センサ(以下、「第2FB変位センサ」という)84と、フィードフォワード加速度センサ(以下、「FF加速度センサ」という)85と、が配置されている。
【0127】
このうち、第1FB変位センサ82は、z方向における、ベースプレート11に対するトッププレート12及び上段側サイドプレート14の相対変位を検出することができる。第1FB変位センサ82は、板状の第1センサブラケット82aを介して外壁部15に締結されており、その+z側端部は、トッププレート12の下面12aに対して間隔を空けて配置されている。図1に示すように、第1FB変位センサ82は、コントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100に対して検出信号を入力することができる。第1FB変位センサ82は、トッププレート12の振動状態(相対変位)を検出することができ、第1FB加速度センサ81と同様に本実施形態における「振動センサ」を例示している。振動センサとしての第1FB変位センサ82も、前記外壁部15と、ケーシング10の内壁部16との間に配置されるようになっている。
【0128】
第1FB変位センサ82は、下段側バネ要素Sp1、上段側バネ要素Sp2及びサーボ弁91を用いて実行される、z方向における制振フィードバック制御(以下、「第1制振FB制御」ともいう)に用いることができる。
【0129】
また、第2FB変位センサ84は、x方向における、ベースプレート11に対するトッププレート12及び上段側サイドプレート14の相対変位を検出することができる。第2FB変位センサ84は、板状の第2センサブラケット84aを介して前記外壁部15に締結されており、その-x側端部は、上段側サイドプレート14の内壁部16に対して間隔を空けて配置されている。図1に示すように、第2FB変位センサ84は、コントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100に対して検出信号を入力することができる。
【0130】
第2FB変位センサ84は、第3バネ要素Sp3、第4バネ要素Sp4及びサーボ弁91を用いて実行される、x方向における制振フィードバック制御(以下、「第2制振FB制御」ともいう)に用いることができる。
【0131】
また、FF加速度センサ85は、z方向におけるベースプレート11の加速度(床振動)を検出することができる。FF加速度センサ85は、下段側サイドプレート13の上面に当接している。図1に示すように、FF加速度センサ85は、コントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100に対して検出信号を入力することができる。
【0132】
FF加速度センサ85は、下段側バネ要素Sp1、上段側バネ要素Sp2及びサーボ弁91を用いて実行可能な除振フィードフォワード制御(以下、「除振FF制御」ともいう)に用いることができる。
【0133】
-ジンバルピストン40-
図4に例示するように、ジンバルピストン40は、前述のピストンウエル41及びサポートロッド42に加え、キャップ部材43と、弾性リング44と、鋼球42bと、転動子42aと、を有している。
【0134】
このうち、ピストンウエル41は、前述のように、第2空気室S2の天井面と第1空気室S1の天井面とを接続するとともに、トッププレート12に向かって上方に開口した有底筒状に形成されている。ピストンウエル41の中心軸は、少なくとも図4に例示した状態(つまり、トッププレート12に相対変位が生じていない状態)では、サポートロッド42の中心軸Ozと同軸に配置されている。
【0135】
特に、本実施形態に係るピストンウエル41は、例えばアルミ合金製であり、第2空気室S2の天井面としての第3締付リング36と、第1空気室S1の天井面としての第1インナーベース21の上面と、を接続している。
【0136】
ここで、ピストンウエル41の上端部は、図4に示すように中心軸Ozから離れる方向に突出した鍔状に形成されている。ピストンウエル41は、その鍔状部を第3締付リング36に係止することで、該第3締付リング36に対して気密状に密着している。ピストンウエル41の上端部は、トッププレート12の下面に対し、z方向に間隔を空けて相対している。ピストンウエル41の上端部は、第3締付リング36、第5締付リング38、第3ダイヤフラム39、第4締付リング37、第2締付リング35及び筒状体34を介して、第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4、ひいては上段側サイドプレート14及びトッププレート12と連結されている。
【0137】
また、ピストンウエル41の下端部は、前述のように、第2インナーベース31と共に第2ダイヤフラム32を挟み込んでいる。つまり、ピストンウエル41は、第1インナーベース21の上面に対しては、第2インナーベース31の上面を介して間接的に接続されているとみなすことができる。ピストンウエル41の下端部は、第2インナーベース31、第1インナーベース21、ワッシャ22及び第1ダイヤフラム23を介して下段側サイドプレート13及びベースプレート11と連結されている。
【0138】
キャップ部材43は、ピストンウエル41の内底部に配置されている。このキャップ部材43は、例えば鋼製とすることができ、円盤状に形成されている。キャップ部材43の上面には、サポートロッド42の下端部を支持するために、表面硬度を高める熱処理加工が施されたウエルスラグ(不図示)が形成されている。
【0139】
弾性リング44は、キャップ部材43よりも若干上方(少なくとも、ピストンウエル41を上下方向に2分したときの中央部よりも下方)に配置されている。弾性リング44には、サポートロッド42の下端側部分が挿入されている。この弾性リング44は、芯体(不図示)の埋設された、ゴム弾性を有するリング状に形成されている。
【0140】
また、サポートロッド42は、前述のようにピストンウエル41に挿入されており、このピストンウエル41の内底面とトッププレート12の下面12aとを連結するように構成されている。
【0141】
詳しくは、サポートロッド42は、z方向に延びる柱状に形成されており、その上端部は、トッププレート12の下面略中央部に連結している。このサポートロッド42は、ピストンウエル41の上端部の開口を貫通して-z方向に延びている。
【0142】
サポートロッド42の下端部には、鋼球42bが設けられている。サポートロッド42は、この鋼球42bを介してキャップ部材43のウエルスラグに接している。鋼球42bは、ウエルスラグに対して転動自在に当接している。また、サポートロッド42の下端部周辺の部位には、前述のように弾性リング44が挿入されている。弾性リング44が挿入されることで、サポートロッド42の下端部は、常に中心軸Oz上に位置付けられることになる。
【0143】
このように構成することで、トッププレート12は、サポートロッド42を介してピストンウエル41の底部に枢支されることになる。これにより、トッププレート12は、ピストンウエル41に対し、xy方向に沿った任意の軸の周りに回動自在になる。なお、前述の図6は、同図の紙面に直交するy方向の周りに回動させた状態に相当する。
【0144】
一方、サポートロッド42の上端部は、球面状の上面を有する転動子42aを介してトッププレート12の下面12aに当接している。詳しくは、本実施形態に係る転動子42aは、サポートロッド42の上端部に設けられており、厚肉の円盤状に形成されている。この転動子42aの上面は、球面状(ドーム状)とされていて、そこにトッププレート12の下面12aが当接するようになっている。転動子42aの上面は、トッププレート12の下面12aに対して転動自在に支持されている。
【0145】
したがって、本実施形態においてピストンウエル41及びサポートロッド42によって構成されるジンバルピストン40は、ドーム状の曲面を介してサポートロッド42の上端部とトッププレート12の下面12aとを接触させた、いわゆるドームジンバルピストンとして構成されている。
【0146】
なお、ジンバルピストン40をドームジンバルピストンとすることは必須ではない。ジンバルピストン40は、ドーム状の曲面を用いない通常のジンバルピストンとしてもよい。通常のジンバルピストンによって除振装置1が構成された場合、サポートロッド42の上端部は、トッププレート12の下面12aに締結されることになる。
【0147】
ところで、使用者が求める仕様によっては、ジンバルピストン40が望まれない場合がある。そうした需要を満たすべく、本実施形態に係るサポートロッド42は、ピストンウエル41及びトッププレート12に対して着脱可能に構成されている。サポートロッド42の着脱は、図3に例示するように除振装置1からトッププレート12を取り外した状態においては、ピストンウエル41に対してサポートロッド42を挿抜することで実現することができる。その際、キャップ部材43及び弾性リング44等をサポートロッド42と同時に着脱してもよい。
【0148】
そして、ピストンウエル41からサポートロッド42を引き抜いた状態で、ピストンウエル41の上方からアタッチメント71を挿入することで、図5に例示するような除振装置1の第2形態が実現される。
【0149】
すなわち、本実施形態に係る除振装置1は、サポートロッド42の代わりに装着されることで、ピストンウエル41の上面とトッププレート12の下面12aとの間に配置されるアタッチメント71をさらに備えている。そして、この除振装置1は、ピストンウエル41及びトッププレート12に対しサポートロッド42を装着した第1形態(図4参照)と、サポートロッド42をアタッチメント71に置き換えることで、トッププレート12に対するピストンウエル41の揺動を規制した第2形態(図5参照)と、の間で切り替え可能に構成されている。
【0150】
図5に示すように、アタッチメント71は、-z側に向かって開口した有底円筒状(或いは、その凹部を-z側に向けた皿状)に形成されている。アタッチメント71の内側面は、ピストンウエル41の上端部の外壁面に対応した形状を有しており、前者の内側面を後者の外側面に接触させることができる。また、アタッチメント71の上面は、トッププレート12の下面12aに固定される一方、アタッチメント71の下面は、第3締付リング36の上面に接触している。これらの固定及び接触により、ピストンウエル41、ひいては前記連結部材Tの揺動及び傾動が規制される。
【0151】
なお、図例ではアタッチメント71の上面がトッププレート12の下面12aに締結されているが、そうした締結は必須ではない。
【0152】
-第4バネ要素Sp4(第3バネ要素Sp3)-
続いて、第4バネ要素Sp4について説明する。以下の説明は、図4図6の各図において鏡映対称である点を除き、第3バネ要素Sp3についても同一である。
【0153】
図4に示すように、本実施形態に係る第4バネ要素Sp4は、円筒部51と、締付リング52と、第4ダイヤフラム53と、円盤部材54と、締付プレート55と、突出部56と、を有している。
【0154】
円筒部51は、x方向に沿って延びる中心軸を有する略円筒状に形成されており、第4空気室S4の側壁部及び内側面を区画する。円筒部51は、締付リング52とともに、第4ダイヤフラム53の周縁部を挟持している。
【0155】
円盤部材54は、第1プレート部材14aの内壁面に締結されており、第4空気室S4において、+x側に面する頂面を区画する。円盤部材54は、円板状の締付プレート55とともに、第4ダイヤフラム53の中央部を挟持している。その際、第4ダイヤフラム53は、z方向にたわんだ状態で挟持されるようになっている。なお、第4空気室S4において-x側に面する底面は、前述の筒状体34の外壁面によって区画されている。
【0156】
ここで、第4ダイヤフラム53は、円板状の薄膜によって構成されており、例えばポリエステル繊維の織物を補強材として埋設したゴム弾性膜によって構成することができる。
【0157】
また、円盤部材54及び締付プレート55とには、+x側から突出部56が締結されている。この突出部56が筒状体34の外壁面に当接することにより、中心軸Ozに近接する方向への円盤部材54及び上段側サイドプレート14の変位が規制される。
【0158】
第4ダイヤフラム53の説明に戻ると、この第4ダイヤフラム53は、前述のように挟持された部位の間の部分(z方向にたわんだ部分)が水平方向にうねるようにかつ全周にわたって大きくたわむことで、円盤部材54、締付プレート55及び突出部56等が相互に連結された部材のx方向の変位に対して、大きな可撓性を有する。また、第4ダイヤフラム53が+x側と-x側とで反対向きにたわむことで、前記相互に連結された部材は、紙面方向の任意の軸まわりに容易に揺動するとともに、その揺動に伴って、x方向に対して傾動することになる。一方、第4ダイヤフラム53は、前記相互に連結された部材のz方向の変位に対しては可撓性が極めて小さく、このため、当該部材は、z方向には殆ど変位しないことになる。
【0159】
なお、円盤部材54、締付プレート55及び突出部56を中空とし、その中空部に上段側サイドプレート14と接するようなサポートロッドを挿入することで、第4バネ要素Sp4にジンバルピストンを構成することもできる。その場合に用いられるジンバルピストンは、前述の如きドームジンバルピストンであってもよい。
【0160】
(各バネ要素の動作)
-第1形態-
第1空気室S1及び第2空気室S2に適正な空気圧が供給されている状態では、第1空気室S1及び第2空気室S2の内圧は、貫通孔61を通じて同圧となる。一方、中間空気室Smは、大気に開放されているため大気圧となる。
【0161】
この場合、除振装置1は、搭載物D及びトッププレート12に加えて、ピストンウエル41が含まれた前記連結部材Tが略一体としてz方向に変位するように、z方向の下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2を機能させる。
【0162】
ここで、トッププレート12は、サポートロッド42を介してピストンウエル41に枢支されている。トッププレート12は、第1ダイヤフラム23、第2ダイヤフラム32及び第3ダイヤフラム39によってピストンウエル41等の揺動が許容されるように(言い換えると、揺動自在となるように)支持されていて、それらピストンウエル41及びサポートロッド42によっていわゆるジンバルピストン40が構成されている。
【0163】
その際、空気バネの軸方向であるz方向の振動に関しては、上下2段にしたことで、フットプリントを抑制しつつ、より高重量な搭載物Dを支持することができるようになる。
【0164】
また、xy方向の振動に対しては、例えば図6のδxに示すように、トッププレート12及び上段側サイドプレート14とサポートロッド42とがx方向に変位すると、ピストンウエル41は、第3ダイヤフラム39により保持されつつ、水平方向の任意の軸(例えば、y方向に沿って延びる軸)の周りに揺動し、これにより振動が吸収されることになる。この際、そのピストンウエル41の第3ダイヤフラム39による保持位置よりも、サポートロッド42の下端部が前記ウエルスラグに枢支されている位置の方が低いことから、第3ダイヤフラム39のバネ特性は非常に柔らかなものとなり、このことで、図6に一例を示すように、除振装置1によるxy方向の除振性能が優れたものとなる。
【0165】
さらに本実施形態に係るジンバルピストン40は、いわゆるドームジンバルピストンとして構成されている。ドームジンバルピストンとしてのジンバルピストン40は、水平方向としてのxy方向に荷重が入力されたときに、トッププレート12と転動子42aとが相対的に転動することによって、振動を吸収することができる。
【0166】
すなわち、上段側バネ要素Sp2においては、xy方向の振動に対し、ピストンウエル41の揺動運動のみならず、トッププレート12と転動子42aとの間の転動運動によっても振動が吸収されることになる。その結果、除振装置1におけるxy方向のバネ特性がより一層、柔らかなものとなって、除振性能のさらなる向上が図られる。
【0167】
また、除振装置1は、上段側サイドプレート14に加えて、円盤部材54、締付プレート55及び突出部56等の相互に連結された部材が略一体としてx方向に変位するように、+x側の第3バネ要素Sp3及び-x側の第4バネ要素Sp4を機能させる。
【0168】
これにより、空気バネの軸方向であるx方向の振動に関しては、固有振動数を低下させる(すなわち、x方向の低固有値化が実現される)ことができる。その際、下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2によるxy方向の振動抑制と相まって、x方向において優れた除振性能を発揮させることができる。
【0169】
-第2形態-
一方、第2形態では、除振装置1には、もはやジンバルピストン40は構成されていない。この場合、xy方向のバネ特性は、第1形態と比べて硬めに設定されることになる。また、xy方向におけるトッププレート12の整定性は、第1形態に比して高くなる。
【0170】
(アクティブ制御)
図7A及び図7Bは、除振システムSの制御系を例示するブロック図である。なお、図7Aは下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2に関連しており、図7Bは第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4に関連している。
【0171】
コントローラ100は、前述の各センサ81~85から入力される信号に基づいて、3つのサーボ弁91を制御する。コントローラ100は、各サーボ弁91を制御することで、各サーボ弁91を通じた圧縮空気の供給流量及び排気流量を調整する。この調整によって、4つの空気バネSp1~Sp4それぞれの内圧が調整される。
【0172】
コントローラ100は、信号を入出力可能な制御基板等によって構成されている。コントローラ100は、そうしたハードウェアによって実現される機能ブロックとして、図7Aに例示する第1除振FB制御部101、第1制振FB制御部102及び除振FF制御部103と、図7Bに例示する第2除振FB制御部111及び第2制振FB制御部112と、を有している。これらの機能ブロックは、いずれも、アクティブな除振及び制振に関連したものである。
【0173】
コントローラ100は、それらの機能ブロックを通じてサーボ弁91へと制御信号を入力することにより、除振装置1(特にトッププレート12)に対し、その振動を抑えるような制御力を付与するよう構成されている。
【0174】
図7Aに示すように、サーボ弁91への入力は、主に、第1FB加速度センサ81からの出力に基づいて第1除振FB制御部101により演算される除振フィードバック操作量と、第1FB変位センサ82からの出力に基づいて第1制振FB制御部102により演算される制振フィードバック操作量と、FF加速度センサ85からの出力に基づいて除振FF制御部103により演算される除振フィードフォワード操作量と、を含んでいる。
【0175】
第1除振FB制御部101は、第1FB加速度センサ81の検出値、すなわちトッププレート12のz方向における加速度に基づいて、その振動が減衰するような制御力を下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2により発生させるものである。例えば、加速度の検出値、その微分値及び積分値にそれぞれフィードバックゲインを乗算し、それら三者を足し合わせた後に反転することにより、サーボ弁91への制御入力(除振フィードバック操作量)とすることができる。これにより、z方向においてトッププレート12に剛性を加えたり、トッププレート12の質量を増やしたりするのと同様の効果が得られる。
【0176】
また、第1制振FB制御部102は、第1FB変位センサ82の検出値、すなわちトッププレート12の上下位置(z方向で見た高さ位置)の変化量(相対変位)に基づいて、その相対変位が小さくなるように下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2の内圧を制御することにより、このトッププレート12の傾きや、この傾きにより発生する揺れを抑える(減衰させる)ものである。例えば、変位の検出値を目標値(零)から減算した後にPID制御則にしたがって、サーボ弁91への制御入力(制振フィードバック操作量)を求めることができる。これにより、トッププレート12の上下位置を、所定の基準位置(例えば、図4に例示する位置関係)に収束させることができる。
【0177】
さらに、除振FF制御部103は、FF加速度センサ85による検出値、すなわち基礎(図1の斜線部を参照)の振動状態に基づいて、そこから除振対象物(搭載物D)へ伝わる振動を打ち消すような逆位相の振動を発生させるためのものであり、例えばディジタルフィルタを用いてサーボ弁91への制御入力を求めることができる。このディジタルフィルタの特性は、床振動が下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2を介してトッププレート12に伝わるときの伝達関数H(s)と、下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2によって構成される補償系の伝達関数K(s)を用いて、-H(s)・K(s)-1として表される。
【0178】
そして、前述のような制御入力を受けてサーボ弁91が作動し、下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2の内圧が制御されることで、除振対象物であるトッププレート12に適切な制御力が付与されることになる。すなわち、基礎としての設置面Fから伝わる振動(特に、z方向の新道)については、除振FF制御部103が除振フィードフォワード制御を行うことによって振動の伝達を抑えつつ、それでも伝達される微小な振動については、第1除振FB制御部101が第1除振フィードバック制御を行うことによって減殺することで、非常に高い除振性能が得られる。
【0179】
一方で、比較的大きな振動、つまり、搭載物Dの作動等に伴ってトッププレート12に生じる振動(揺れ)については、前述の第1除振フィードバック制御に加えて、第1制振FB制御部102が第1制振フィードバック制御を行うことで減殺されることになる。
【0180】
図7Bについても同様である。同図に示すように、サーボ弁91への入力は、主に、第2FB加速度センサ83からの出力に基づいて第2除振FB制御部111により演算される除振フィードバック操作量と、第2FB変位センサ84からの出力に基づいて第2制振FB制御部112により演算される制振フィードバック操作量と、を含んでいる。
【0181】
第2除振FB制御部111は、第2FB加速度センサ83の検出値、すなわちトッププレート12のx方向における加速度に基づいて、その振動が減衰するような制御力を第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4により発生させるものである。例えば、加速度の検出値、その微分値及び積分値にそれぞれフィードバックゲインを乗算し、それら三者を足し合わせた後に反転することにより、サーボ弁91への制御入力(除振フィードバック操作量)とすることができる。これにより、サーボ弁91は、上段側サイドプレート14を介してトッププレート12に制御力を加える。そのことで、x方向においてトッププレート12に剛性を加えたり、トッププレート12の質量を増やしたりするのと同様の効果が得られる。
【0182】
また、第2制振FB制御部112は、第2FB変位センサ84の検出値、すなわちトッププレート12の水平位置(x方向で見た位置)の変化量(相対変位)に基づいて、その相対変位が小さくなるように第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4の内圧を制御することにより、このトッププレート12の傾きや、この傾きにより発生する揺れを抑える(減衰させる)ものである。例えば、変位の検出値を目標値(零)から減算した後にPID制御則にしたがって、サーボ弁91への制御入力(制振フィードバック操作量)を求めることができる。これにより、トッププレート12の水平位置を、前述の基準位置に収束させることができる。
【0183】
そして、前述のような制御入力を受けてサーボ弁91が作動し、第3バネ要素Sp3及び第4バネ要素Sp4の内圧が制御されることで、除振対象物であるトッププレート12に適切な制御力が付与されることになる。すなわち、基礎としての設置面Fから伝達されるx方向の微小振動については、第2除振FB制御部111が第2除振フィードバック制御を行うことによって減殺することで、非常に高い除振性能が得られる。
【0184】
一方で、比較的大きな振動、つまり、搭載物Dの作動等に伴ってトッププレート12に生じるx方向の振動については、前述の第2除振フィードバック制御に加えて、第2制振FB制御部112が第2制振フィードバック制御を行うことで減殺されることになる。その際の制御力は、上段側サイドプレート14を介してトッププレート12に加わることになる。
【0185】
なお、アクチュエータにリニアモータを用いる場合は、第1除振FB制御部101及び第2除振FB制御部111等の構成が変更され得る。しかしながら、基本的な制御態様に関しては、前記実施形態とほぼ同様となる。
【0186】
(まとめ)
以上説明したように、本実施形態によれば、上下多段式の除振装置1において、上段側バネ要素Sp2と下段側バネ要素Sp1とを連結する支柱部41、42によって、ピストンウエル41及びサポートロッド42が構成されることになる(図1及び図4等を参照)。これにより、この除振装置1においてジンバルピストン40を構成し、水平方向(x方向)に柔らかなバネ特性を実現することができる。そのことで、上下多段式の除振装置1としたことによるフットプリントの抑制及び搭載物Dの高重量化への対応と、ジンバルピストン40を設けたことによる水平方向のバネ特性とを両立させることができ、ひいてはより優れた除振性能を実現することが可能になる。
【0187】
また、本実施形態に係る除振装置1は、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)のうち、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0188】
また、被支持体としての搭載物Dの重量等に応じて、除振装置1に求められる仕様は多岐にわたることになる。例えば、前述したような水平方向に柔らかなバネ特性を求める代わりに、同方向において、若干硬めのバネ特性が要求されるケースも想定される。そうした場合、ジンバルピストン40を当初から具備しない除振装置を用意することも考えられるが、仕様に応じて全く異なる除振装置を用意することは、部品の調達コスト、製品の管理等を考慮すると不都合である。
【0189】
これに対し、本実施形態によれば、図4及び図5を用いて説明したように、サポートロッド42をアタッチメント71と置き換えるだけで、水平方向のバネ特性を調整することができる。これにより、除振装置1の性能及び特性を使い分けることができ、異なる仕様に対応させることが可能になる。そのことで、可能な限り部品の共通化を図ることができ、部品の調達コストを抑制するとともに、製品を管理する際の手間を省くことが可能になる。特に、前記第2形態は、トッププレート12の振動の整定性を確保する上で有効である。
【0190】
また、上段側バネ要素Sp2と下段側バネ要素Sp1とを連結する支柱部41、42によってピストンウエル41を構成した場合、ピストンウエル41の下端部が下段側バネ要素Sp1によって拘束されることになるため、水平方向のバネ特性を柔らかくする上で性能向上の余地が残る。
【0191】
これに対し、図4等に示したように、ジンバルピストン40としてドームジンバルピストンを用いることで、水平方向により柔らかなバネ特性を実現し、ピストンウエル41の下端部が下段側バネ要素Sp1によって拘束されたことによる影響を減殺することができる。このことは、水平方向に柔らかなバネ特性を実現する上で有効である。
【0192】
また、図4等に示したように、第1空気室S1と第2空気室S2との間に中間空気室Smを介在させたときに、これを大気開放することで、中間空気室Smの内圧が負圧に陥るのを抑制することができる。これにより、第1空気室S1及び第2空気室S2において弾性特性を実現する部材(具体的には、第1ダイヤフラム23及び第2ダイヤフラム32)を、従来よりも適切に伸び縮みさせることが可能になる。
【0193】
また、図4等に示したように第1空気室S1と第2空気室S2とを相互に連通させたことは、第1空気室S1及び第2空気室S2の内圧を同時に制御する上で有効である。すなわち、下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2の各々にサーボ弁91を設けずとも、1つのサーボ弁91によって内圧を制御することが可能になる。
【0194】
また、トッププレート12の振動状態を検出するセンサ(特に、第1FB加速度センサ81及び第1FB変位センサ82)は、より正確かつ遅れのない検出を行うためには、可能な限りトッププレート12に接近させることが好都合である。
【0195】
これに対し、図2図4を用いて説明したように、第1空気室S1に比して第2空気室S2をコンパクトに構成したことで、センサ類の収容スペースを確保することができる。第2空気室S2は、第1空気室S1に比してトッププレート12に近接しているため、第1FB加速度センサ81及び第1FB変位センサ82をトッププレート12に可能な限り接近させることも可能になる。このことは、第1FB加速度センサ81及び第1FB変位センサ82の検出信号に基づいた除振制御及び制振制御の性能向上に資する。
【0196】
また、第1FB変位センサ82をトッププレート12に可能な限り接近させたことで、第1センサブラケット82aを従来よりもコンパクト化し、該第1センサブラケット82aの剛性を確保することができる。第1センサブラケット82aの剛性を確保することは、各種制御の妨げとなる外乱を抑制する上でも有効である。
【0197】
このように、本実施形態によれば、除振制御及び制振制御の性能向上と、外乱の抑制と、搭載物Dの支持の安定化と、をそれぞれ両立させることができる。
【0198】
<第2の実施形態>
続いて、第2の実施形態に係る構成について説明する。以下、第2の実施形態と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0199】
ここで、図8は、第2の実施形態に係る除振装置1の全体構成を例示する斜視図であり、図9は、除振装置1からベースプレート11を取り外した状態を例示する図8対応図であり、図10は、除振装置1から下段側収容物20を取り除いた状態を例示する図8対応図である。
【0200】
また、図11は、第2の実施形態に係る図4対応図であり、図12は、第2の実施形態に係る図5対応図である。また、図13は、図8のA-A断面の部分拡大図であり、図14は、図8のB-B断面の部分拡大図である。図13は、図11の下部を拡大した図に相当する。また、図15は、プラグ77及びオリフィス63の構成を例示する縦断面図であり、図16は、オリフィス63の実験データを示すグラフである。
【0201】
(詳細構造)
第2の実施形態では、主に、第1空気室S1及び中間空気室Smの内部構造が、第1の実施形態に係る内部構造と相違している。例えば、第2の実施形態に係る除振装置1は、第1の実施形態に係る貫通孔62の代わりに、複数のオリフィス63を備えている(図10図11図12及び図13を参照)。
【0202】
-オリフィス63-
複数のオリフィス63は、中間空気室Smと大気との連通部である貫通孔62を縮径させる。この中間空気室Smは、第1空気室S1及び第2空気室S2に対し、第1の実施形態と同様に非連通とされている。中間空気室Smは、各オリフィス63を介して大気に開放されている。
【0203】
図11図12及び図13に示すように、各貫通孔62には、プラグ77が挿入されている。各プラグ77は、第2の実施形態に係るオリフィス63を有している。例えば図15に示すように、各オリフィス63は、上下方向に延び、かつ第1の実施形態に係る貫通孔62よりも小径の貫通孔によって構成されている。各オリフィス63が、下段側サイドプレート13の底板部13aを上下に貫いている。なお、プラグ77を用いてオリフィス63を構成することは必須ではない。貫通孔62の内径を調整することでオリフィス63を構成してもよい。
【0204】
また、複数のオリフィス63は、上下方向まわりの周方向に沿って、等間隔で配置されている。具体的に、第2の実施形態に係る除振装置1は、4つのオリフィス63を備えている。4つのオリフィス63は、周方向において、90度おきに等間隔で配置されている。
【0205】
また、各オリフィス63は、第2空気室S2よりも径方向の外側に配置されている。詳しくは、各オリフィス63は、後述する各第1バネ部材74、各第2バネ部材75、各第1減衰部材72及び水平減衰部材76よりも径方向の外側に配置されている。また、各オリフィス63は、径方向において、各第2減衰部材73と略同じ位置に配置されている。
【0206】
そして、各オリフィス63は、上下方向における第1インナーベース21の変位を減衰させるべく、前記貫通孔62よりも小径となっている。例えば図15に示すように、各オリフィス63の内径をφとすると、内径φの大きさは、0.3mm以上0.7mm以下、さらに詳しくは0.4mm以上0.6mm以下の範囲内に設定されている。
【0207】
その他、第2の実施形態に係る除振装置1は、図9図14に示すように、複数の第1減衰部材72、複数の第2減衰部材73、複数の第1バネ部材74、複数の第2バネ部材75及び水平減衰部材76を備えている。これらの部材は、いずれも、中間空気室Sm又は第1空気室S1の内部に配置されている。
【0208】
なお、複数のオリフィス63、複数の第1減衰部材72、複数の第2減衰部材73、複数の第1バネ部材74、複数の第2バネ部材75、及び水平減衰部材76は、前述した第1形態及び第2形態の双方において利用可能である。
【0209】
-第1減衰部材72及び第2減衰部材73-
複数の第1減衰部材72は、中間空気室Smの内部に配置されている。これらの第1減衰部材72は、それぞれ、上下方向における下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2の伸縮を減衰させるダンパとして機能する。
【0210】
複数の第1減衰部材72は、それぞれ、ブロック状の高減衰ゴムによって構成されている。各第1減衰部材72は、上下方向に延びる円筒形状を有している。各第1減衰部材72の中央の貫通孔には、第1インナーベース21の上面から突出する締結具(ボルト)が挿入されている。
【0211】
また、各第1減衰部材72は、中間空気室Smの天井面(下段側サイドプレート13の底板部13aの下面)と底面(第1インナーベース21の上面)との間に配置されている。各第1減衰部材72は、前述した除振制御等が実行されているか否かにかかわらず、圧縮された状態で配置されている。各第1減衰部材72は、除振装置1に付与される振動のうち、特に上下方向に付与される振動に、減衰を付与する。
【0212】
また、複数の第1減衰部材72は、前記周方向に沿って等間隔で配置されている。具体的に、第2の実施形態に係る除振装置1は、4つの第1減衰部材72を備えている。図10に示すように、4つの第1減衰部材72は、周方向において、90度おきに等間隔で配置されている。
【0213】
複数の第1減衰部材72は、第1空気室S1の底面に対する該第1空気室S1の天井面の変位を減衰させるという点で、それぞれ、第2の実施形態における「上下減衰部材」を例示している。
【0214】
複数の第2減衰部材73は、第1空気室S1の内部に配置されている。これらの第2減衰部材73は、それぞれ、上下方向における第1空気室S1の伸縮を減衰させるダンパとして機能する。
【0215】
複数の第2減衰部材73は、それぞれ、ブロック状の高減衰ゴムによって構成されている。各第2減衰部材73は、上下方向に延びる円筒形状を有している。各第2減衰部材73の中央の貫通孔には、第1インナーベース21の下面から突出する締結具(ボルト)が挿入されている。各第2減衰部材73は、ワッシャ22を介して第1インナーベース21の下面に取り付けられている。
【0216】
また、各第2減衰部材73は、第1空気室S1の天井面(第1インナーベース21の下面)と底面(ベースプレート11の底板部11aの上面)との間に配置されている。各第2減衰部材73は、前述した除振制御等が実行されているか否かにかかわらず、圧縮された状態で配置されている。各第2減衰部材73は、除振装置1に付与される振動のうち、特に上下方向に付与される振動に、減衰を付与する。
【0217】
また、複数の第2減衰部材73は、前記周方向に沿って等間隔で配置されている。具体的に、第2の実施形態に係る除振装置1は、4つの第2減衰部材73を備えている。図9に示すように、4つの第2減衰部材73は、周方向において、90度おきに等間隔で配置されている。
【0218】
第1インナーベース21は、複数の第1減衰部材72と、複数の第2減衰部材73とによって、上下から挟持されている。図9図10との比較、又は、図13図14との比較から見て取れるように、径方向において、各第2減衰部材73は、各第1減衰部材72及び後述の各第2バネ部材75の外側に配置されている。また、これらの比較から見て取れるように、周方向において、各第2減衰部材73は、各第1減衰部材72に対してオフセットするように配置されている。また、各第2減衰部材73を外側に配置することで、ピストンウエル41の傾き、ふらつきを抑制することができる。
【0219】
-第1バネ部材74-
複数の第1バネ部材74は、中間空気室Smの内部に配置されている。これらの第1バネ部材74は、それぞれ、第1空気室S1の天井面と該第1空気室S1の底面とを接近させる方向に復元力F1を発揮する付勢部材として機能する(図14を参照)。
【0220】
複数の第1バネ部材74は、それぞれ、上下方向に伸縮するコイルバネによって構成されている。各第1バネ部材74は、中間空気室Smの天井面と底面との間に配置されている。各第1バネ部材74は、上下方向に圧縮されることで、中間空気室Smの天井面と底面との近接に抗する方向、すなわち天井面と底面とを離間させる方向に復元力F1を発揮する。この復元力F1は、第1インナーベース21の上方への変位に抗する方向に作用するものであって、下段側バネ要素Sp1のバネ上(第1インナーベース21)を押し下げる方向に作用する。これにより、各第1バネ部材74は、下段側バネ要素Sp1の伸長に抗するスプリングとして機能することになる。また、各第1バネ部材74が及ぼす復元力F1は、第2空気室S2にも作用し、第1及び第2空気室S1,S2の各々の内圧を高めるようにも作用する。
【0221】
また、複数の第1バネ部材74は、2つ1組のペアを複数備えている。各ペアは、前記周方向に沿って等間隔で配置されている。具体的に、第2の実施形態に係る除振装置1は、8つの第1バネ部材74を備えている。8つの第1バネ部材74は、2つ1組のペアを4組構成している。図10に示すように、4つのペアは、周方向において、90度おきに等間隔で配置されている。
【0222】
-第2バネ部材75-
複数の第2バネ部材75は、第1空気室S1の内部に配置されている。これらの第2バネ部材75は、それぞれ、第1空気室S1の天井面と該第1空気室S1の底面とを離間させる方向に復元力F2を発揮する付勢部材として機能する(図13を参照)。
【0223】
複数の第2バネ部材75は、それぞれ、上下方向に伸縮するコイルバネによって構成されている。各第2バネ部材75は、第1空気室S1の天井面と底面との間に配置されている。各第2バネ部材75は、上下方向に圧縮されることで、第1空気室S1の天井面と底面との近接に抗する方向、すなわち天井面と底面とを離間させる方向に復元力F2を発揮する。この復元力F2は、第1インナーベース21の下方への変位に抗する方向に作用するものであって、下段側バネ要素Sp1のバネ上(第1インナーベース21)を押し上げる方向に作用する。これにより、各第2バネ部材75は、下段側バネ要素Sp1の圧縮に抗するスプリングとして機能することになる。また、各第2バネ部材75が及ぼす復元力F2は、第2空気室S2にも作用する。
【0224】
また、複数の第2バネ部材75は、前記周方向に沿って等間隔で配置されている。具体的に、第2の実施形態に係る除振装置1は、4つの第2バネ部材75を備えている。図9に示すように、4つの第2バネ部材75は、周方向において、90度おきに等間隔で配置されている。
【0225】
なお、除振装置1に搭載物Dが搭載されていない非搭載状態において、複数の第1バネ部材74全体が第1インナーベース21に及ぼす復元力F1(図14を参照)は、複数の第2バネ部材75全体が第1インナーベース21に及ぼす復元力F2(図13を参照)を上回るように設定されている。この設定は、非搭載状態において下式(1)を満足することで実現される。
【0226】
Ka・ΔXa・Na > Kb・ΔXb・Nb …(1)
上式(1)において、Kaは各第1バネ部材74のバネ定数であり、ΔXaは非搭載状態における各第1バネ部材74のたわみ量であり、Naは第1バネ部材74の数(本実施形態では8つ)である。同様に、上式(1)において、Kbは各第2バネ部材75のバネ定数であり、ΔXbは非搭載状態における各第2バネ部材75のたわみ量であり、Nbは第2バネ部材75の数(本実施形態では4つ)である。第2の実施形態では、上式(1)が満足されるようになっている。なお、前記設定は、非搭載状態、かつ、サーボ弁91の非作動時(各空気室にエアが供給されていない状態)において、上式(1)を満足することで実現されるものとしてもよい。
【0227】
上式(1)が満足されることで、第1インナーベース21を押し下げようとする力が、第1インナーベース21を押し上げようとする力を上回ることになる。これにより、非搭載状態、好ましくは非搭載状態かつ前記非作動時において、第1インナーベース21を浮上させることなく、該第1インナーベース21の支持を安定させることができる。
【0228】
第1インナーベース21は、複数の第1バネ部材74と、複数の第2バネ部材75とによって、上下から挟持されている。図9図10との比較、又は、図13図14との比較から見て取れるように、径方向において、各第1バネ部材74は、各第2バネ部材75の外側に配置されている。また、これらの比較から見て取れるように、周方向において、各第1バネ部材74は、各第2減衰部材75に対してオフセットするように配置されている。
【0229】
-水平減衰部材76-
水平減衰部材76は、中間空気室Smの内部に配置されている。この水平減衰部材76は、上下方向に直交する水平方向における、第1空気室S1の底面に対する該第1空気室S1の天井面の変位を減衰させるダンパとして機能する。
【0230】
水平減衰部材76は、板状かつリング状の高減衰ゴムによって構成されている。水平減衰部材76の中央の貫通孔は、第2インナーベース31の外周面に挿入されている。水平減衰部材76の周縁部は、下段側サイドプレート13の内周面に接している。水平減衰部材76は、水平方向に予圧縮された状態で配置されている。水平減衰部材76は、上下方向には予圧縮されておらず、図13及び図14等に示すように、第1インナーベース21の上面に対して隙間を空けて配置されている。
【0231】
水平減衰部材76は、第2インナーベース31を介して第1インナーベース21と一体的に変位する。その変位に際して水平方向に圧縮されることで、水平減衰部材76は、第1インナーベース21の水平移動を減衰させる。この減衰は、第1空気室S1の底面に対する天井面の水平移動に抗するものであって、下段側バネ要素Sp1のバネ上の水平移動を抑制する方向に作用する。これにより、水平減衰部材76は、水平方向における下段側バネ要素Sp1の変形を減衰させるダンパとして機能することになる。
【0232】
また、第1インナーベース21は、第2インナーベース31を介してピストンウエル41と連結されている。ピストンウエル41は、前述したように第2空気室S2を区画する。したがって、第2インナーベース31の外周面に水平減衰部材76を装着することで、この水平減衰部材76は、上段側バネ要素SP2のバネ上の水平移動を抑制することもできる。これにより、水平減衰部材76は、水平方向における上段側バネ要素Sp2の変形を減衰させるダンパとしても機能することになる。
【0233】
(各部材の作用)
第2の実施形態によれば、図13等に示したように、中間空気室Smと大気との連通部をオリフィス63によって縮径させることで、下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2双方の伸縮に抵抗を付与することができる。これにより、上下方向における除振装置1全体の伸縮を減衰させるとともに、上下方向における除振装置1の高固有値化(高固有振動数化)を実現することができる。そのことで、搭載物Dから伝わる揺れを速やかに収束させることができるようになり、除振装置1の制振性能を向上させることができる。
【0234】
さらに、図10に示したように、各オリフィス63を等間隔で配置することで、周方向にバランスよく減衰を付与することができる。そのことで、制振性能を向上させる上でさらに有利になる。
【0235】
また、第1空気室S1及び第2空気室ではなく、中間空気室Smにオリフィス63を配置することで、第1空気室S1及び第2空気室それぞれの内圧制御に及ぼす影響を、可能な限り抑制することができる。
【0236】
ここで、図16の横軸は周波数であり、その縦軸は共振倍率である。また、図16の2点鎖線は、4つの貫通孔62が設けられているものの、各貫通孔62にプラグ77が挿入されていない場合を示している。同様に、図16の1点鎖線は、4つの貫通孔62のうちの3つを閉塞し、1つをオリフィス63によって大気開放させた場合を示している。図16の破線は、4つの貫通孔62をいずれも閉塞せず、4つ全てをオリフィス63によって大気開放させた場合を示している。この場合、4つのオリフィス63は、図10に例示したように90度おきに等間隔で配置されている。また、図16の実線は、4つの貫通孔62を全て閉塞した場合を示している。また、図16の各データにおいて、オリフィス63の内径は、φ=0.5±0.02[mm]に設定されている。
【0237】
図16の囲み部Ciに示すように、4つのオリフィス63を具備したケースでは、共振時におけるピークの高さが、他のケースよりも低くなっている。このことは、周方向に等間隔でオリフィス63を配置したことが、そのオリフィス63によって減衰を付与する上で好適に作用したことを示している。
【0238】
また、図10及び図13等に示したように、中間空気室Smに各第1減衰部材72を配置することで、下段側バネ要素Sp1及び上段側バネ要素Sp2双方の伸縮に抵抗を付与することができる。これにより、上下方向における除振装置1全体の伸縮を減衰させるとともに、上下方向における除振装置1の高固有値化(高固有振動数化)を実現することができる。そのことで、搭載物Dから伝わる揺れを速やかに収束させることができるようになり、除振装置1の制振性能を向上させることができる。
【0239】
なお、第1空気室S1及び第2空気室S2は、それぞれの伸縮による空気の圧縮又は膨張に伴って、その内部で温度変化を生じる可能性がある。この温度変化は、各第1減衰部材72の減衰特性を変化させ得るため不都合である。こうした不都合は、前記第2の実施形態のように、各第1減衰部材72に高減衰ゴムを用いたときに顕著なものとなる。
【0240】
一方、中間空気室Smは、大気開放されている。そのため、中間空気室Smの内部では、第1空気室S1及び第2空気室の内部ほど温度変化は生じないと考えられる。そのため、第2の実施形態のように中間空気室Smの内部に各第1減衰部材72を配置することで、該各第1減衰部材72の減衰特性を安定させることができる。
【0241】
また、図14に示したように、第1バネ部材74は、第1空気室S1を上下に圧縮させる方向に復元力F1を発揮する。この復元力F1は、第1空気室S1及び第2空気室S2の内圧を高めるように作用する。各空気室S1,S2の内圧の上昇と、第1バネ部材74自身のバネ特性とが相まって、上下方向における除振装置1の高固有値化(高固有振動数化)を実現することができる。そのことで、搭載物Dから伝わる揺れの振幅を小さくすることができる。
【0242】
さらに、図14によれば、第1バネ部材74が発揮する復元力F1は、第1空気室S1の天井面を押し下げる方向に作用する。この復元力F1によって、除振装置1に搭載物Dが搭載されていない非搭載状態において、中間空気室Smの底面と天井面との接触を抑制したり、第1空気室S1の天井面のふらつきを抑制したりすることができる。
【0243】
また、図9及び図13等に示したように、第2バネ部材75は、第1空気室S1を上下に伸長させる方向に復元力F2を発揮する。第2バネ部材75自身のバネ特性により、上下方向における除振装置1の高固有値化(高固有振動数化)を実現することができる。そのことで、搭載物Dから伝わる揺れの振幅を小さくすることができる。
【0244】
さらに、図13に示すように、第2バネ部材75が発揮する復元力F2は、第1空気室S1の天井面を押し上げる方向に作用する。したがって、その復元力F2を利用して、より重い搭載物Dを支持することが可能になる。そのことで、除振装置1の搭載能力を高めることができる。
【0245】
また、図10図13及び図14等に示したように、中間空気室Smに水平減衰部材76を配置することで、水平方向の変位に減衰を付与することができる。これにより、水平方向における除振装置1の高固有値化(高固有振動数化)を実現することができる。そのことで、搭載物Dから伝わる揺れを速やかに収束させることができるようになり、除振装置1の制振性能を向上させることができる。
【0246】
さらに、図11及び図12等に示したように、第1インナーベース21及びピストンウエル41は、第2インナーベース31を介して連結されている。したがって、第2インナーベース31の外周面に水平減衰部材76を装着することで、この水平減衰部材76は、上段側バネ要素SP2のバネ上の水平移動を抑制することもできる。これにより、水平減衰部材76は、水平方向における上段側バネ要素SP2の高固有値化(高固有振動数化)を実現することもできる。そのことで、搭載物Dから伝わる揺れを速やかに収束させることができるようになり、除振装置1の制振性能を向上させることができる。
【0247】
なお、複数の第1バネ部材74と、複数の第2バネ部材75とを双方とも具備することは必須ではないが、少なくとも複数の第1バネ部材74を用いるときには、複数の第2バネ部材75を併用することが有用である。すなわち、前述のように、複数の第1バネ部材74は、第1インナーベース21を押し下げる方向に復元力F1を発揮する。この復元力F1は、第1空気室S1の内圧制御に影響を及ぼさないという利点を有するものの、第1空気室S1に対して重力方向に作用することから、除振装置1の搭載能力(搭載物Dの重量の上限)を損なう可能性がある。一方、複数の第2バネ部材75は、第1インナーベース21を押し上げる方向に復元力F2を発揮する。この復元力F2は、除振装置1の搭載能力を補強する方向に作用する。
【0248】
このように、複数の第1バネ部材74と、複数の第2バネ部材75とを併用することで、除振装置1の搭載能力を確保しつつ、高固有値化を実現することができる。
【0249】
また、複数の第1減衰部材72と複数の第2減衰部材73とを併用することで、搭載物Dが除振装置1に及ぼす荷重が増減する場合に、取り分け有効となる。例えば、搭載物Dとして、定盤の上をスライド移動するステージを用いるとともに、その搭載物Dを、複数の除振装置1によって支持する場合を考える。この場合、搭載物Dの移動に伴って、一の除振装置1に作用する荷重が減少したり、当該荷重が増加したりする。前者の場合、第1減衰部材72が圧縮される一方、第2減衰部材73は伸長することになる。後者の場合、第1減衰部材72が伸長する一方、第2減衰部材73は圧縮されることになる。第1減衰部材72と第2減衰部材73を併用することで、各減衰部材72、73に作用する荷重を分散させることができる。
【符号の説明】
【0250】
S 除振システム
1 除振装置(多段式除振装置)
10 ケーシング
12 トッププレート(定盤、天板部)
12a トッププレートの下面(定盤の下面)
15 外壁部
40 ジンバルピストン
41 ピストンウエル(支柱部)
42 サポートロッド(支柱部)
42a 転動子
62 貫通孔
63 オリフィス
71 アタッチメント
72 第1減衰部材(上下減衰部材)
74 第1バネ部材
75 第2バネ部材
76 水平減衰部材
77 プラグ
85 FF加速度センサ(振動センサ)
100 コントローラ
D 搭載物(被支持体)
F 設置面(基礎)
Oz サポートロッドの中心軸
Sp1 下段側バネ要素
Sp2 上段側バネ要素
S1 第1空気室
S2 第2空気室
Sm 中間空気室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16