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特開2024-42655インサート整列装置及びインサート整列装置を用いたインサート挿入方法
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  • 特開-インサート整列装置及びインサート整列装置を用いたインサート挿入方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042655
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】インサート整列装置及びインサート整列装置を用いたインサート挿入方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
B23P19/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138147
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2022147370
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519028597
【氏名又は名称】株式会社三友精機
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】五島 環
(57)【要約】
【課題】インサート挿入工具にインサートを装着する際の危険性を排除しつつ装着時におけるインサートの共回りを防止して確実にインサートをインサート挿入工具に装着することができるインサート整列装置及びインサート整列装置を用いたインサート挿入方法を提供する。
【解決手段】インサートIを整列させる整列穴111が形成される上面11と、上面11の下層に配置され、整列穴111の奥側に入れられたインサートIの一端の全周にわたって接触する共回り防止部材13と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサートを整列させる整列穴が形成される上面と、
前記上面の下層に配置され、前記整列穴の奥側に入れられた前記インサートの一端の全周にわたって接触する共回り防止部材と、
を備えることを特徴とするインサート整列装置。
【請求項2】
前記共回り防止部材は、エラストマーで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインサート整列装置。
【請求項3】
前記共回り防止部材には、前記インサートを装着するために前記整列穴に挿入されたインサート挿入工具の先端部を収容する収容部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインサート整列装置。
【請求項4】
前記整列穴の前記上面における表面から前記上面と前記共回り防止部材とが接する面までの距離は、整列の対象となる前記インサートの種類ごとに設定されることを特徴とする請求項1に記載のインサート整列装置。
【請求項5】
前記上面の周囲には、整列のために前記インサートが投入された際に、前記上面から投入された前記インサートが落下することを防止する壁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインサート整列装置。
【請求項6】
前記上面及び前記共回り防止部材は、前記整列穴に入りきらなかった余剰の前記インサートを排出する際に傾斜可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインサート整列装置。
【請求項7】
前記壁の一部は、余剰の前記インサートを排出する際に開口部となるように形成されていることを特徴とする請求項6に記載のインサート整列装置。
【請求項8】
前記壁は、余剰の前記インサートを排出する際に、前記壁の全体が前記上面の表面に沿ってスライド可能に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のインサート整列装置。
【請求項9】
前記上面と、前記共回り防止部材とは、共回り防止カートリッジを構成し、
前記共回り防止カートリッジは、インサート整列装置に着脱可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインサート整列装置。
【請求項10】
前記共回り防止カートリッジは、さらに、前記共回り防止部材の下層であって、前記上面との間で前記共回り防止部材を挟持する調整プレートを備えていることを特徴とする請求項9に記載のインサート整列装置。
【請求項11】
前記共回り防止カートリッジにおいて、前記上面から前記調整プレートまでの距離は、前記インサートの種類に応じて設定される前記上面の表面から前記共回り防止部材までの距離の如何に拘わらず一定であることを特徴とする請求項10に記載のインサート整列装置。
【請求項12】
前記調整プレートには、前記共回り防止部材が配置される側とは反対側に向けて突出する固定部が形成されていることを特徴とする請求項10に記載のインサート整列装置。
【請求項13】
前記共回り防止カートリッジは、整列のために前記インサートが投入された際に、前記上面から投入された前記インサートが落下することを防止するために設けられる壁と前記インサート整列装置の基部の上部に配置される下面との間に形成されるカートリッジ受け部に、前記調整プレートが前記下面と対向する位置となるように装着されることを特徴とする請求項10に記載のインサート整列装置。
【請求項14】
インサートをインサート整列装置に投入するステップと、
投入された前記インサートを整列穴に入れて整列させるステップと、
整列されて余剰となった前記インサートを前記インサート整列装置から排出するステップと、
整列された前記インサートをインサート挿入工具に装着するステップと、
装着された前記インサートを被加工物に挿入するステップと、
を備えることを特徴とするインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
【請求項15】
前記インサート挿入工具に対して前記インサートを装着するステップにおいて、前記インサート挿入工具は、前記インサート挿入工具の進行方向に向けて前記インサートを押しつけるように前記インサートを装着することを特徴とする請求項14に記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
【請求項16】
前記インサート挿入工具が前記インサートを前記被加工物に挿入するステップにおいて、前記インサート挿入工具は、挿入される前記インサートの種類ごとに設定される挿入時間が経過した後反転し、前記インサートの前記被加工物への挿入動作を終了することを特徴とする請求項14に記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
【請求項17】
前記インサート挿入工具が前記インサートを前記被加工物に挿入するステップにおいて、前記インサート挿入工具は、前記インサートを予め設定される挿入距離挿入した後反転し、前記インサートの前記被加工物への挿入動作を終了することを特徴とする請求項14に記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
【請求項18】
余剰となった前記インサートの前記インサート整列装置からの排出は、前記インサート整列装置を傾けた際に、前記インサート整列装置において前記整列穴が形成されている上面を囲むように形成されている壁の一部が開口することにより行われることを特徴とする請求項14に記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
【請求項19】
余剰となった前記インサートの前記インサート整列装置からの排出は、前記インサート整列装置において前記整列穴が形成されている上面を囲むように形成されている壁が前記上面をスライドすることにより行われることを特徴とする請求項14に記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
【請求項20】
上面と、前記共回り防止部材とが、共回り防止カートリッジを構成し、前記インサート整列装置に着脱可能とされている場合に、
前記インサートを前記インサート整列装置に投入するステップの前に、
前記インサート挿入工具に装着する前記インサートの種類に応じた前記共回り防止カートリッジを、前記インサート整列装置のカートリッジ受け部に装着するステップを備えていることを特徴とする請求項14ないし請求項19のいずれかに記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、インサート整列装置及びインサート整列装置を用いたインサート挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、雌ネジの耐久性が要求される場合や強い締め付けが必要となる場合など、強硬な雌ネジが求められる場合には、例えばコイルインサートやネジインサートなどと呼ばれるインサートが用いられる。インサートは、ステンレスなどの線材がコイル状に巻かれて形成されており、インサート挿入工具により樹脂やアルミ合金などの被加工物のタップ穴(ネジ穴)にねじ込まれて挿入される(埋め込まれる)。
【0003】
そして当該インサートの端部には、例えば、コイルの直径方向に折り曲げられたタングが形成されている。このタング付きインサートをタップ穴に挿入する場合には、ユーザがインサート挿入工具を用いて、インサート挿入工具の先端部でタングを挟み、あるいは、インサート挿入工具の先端部をタングに引っかける。そしてこの状態で、タングを介してインサートを回転させてタップ穴にねじ込む。
【0004】
このようにタングは、タップ穴へのインサート挿入時に用いられるものであり、インサート挿入後には不要であり、残っていると雄ネジの締め込みの際にその進入を阻害しかねない。そこでインサート挿入後にタングを折り取って除去する必要がある。
【0005】
一方、インサート挿入後に当該タングを折り取らずに済むようにタングが形成されていないインサートも存在する。このようなタングが形成されていないインサート(以下、このようなインサートを適宜「タングレスインサート」と表す。)をタップ穴にねじ込む場合には、インサート挿入工具の先端部に設けられている爪をタングレスインサートの端部に形成されている切り欠きに引っ掛けてタングレスインサートを回転させる。
【0006】
具体的に上述した特許文献1に開示されているタング無し螺旋状コイル挿入体(タングレスインサート)を取付ける工具を用いる場合、作業者が、タングレスインサートが装着される端部とは反対側端部に設けられるクランクハンドルを回転させて被加工物にタングレスインサートを挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60-191774号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら被加工物に形成されるタップ穴が多数である場合、当然当該タップ穴にねじ込まれるタングレスインサートの数も多数となる。そして被加工物によってはねじ込まれるタングレスインサートの数が百を超えるような場合もあり、これらを全て作業者の手作業によってねじ込むのは非常な労力である。このような不都合を回避すべく、近年タップ穴にタングレスインサートをねじ込む取り付け工具を電動化し、作業者の労力を軽減することが行われている。
【0009】
ここで取り付け工具が手動であるか電動であるかを問わず、被加工物にインサートをねじ込むに当たっては、事前に取り付け工具(マンドレル)の先端にインサートを装着する必要がある。手動の取り付け工具の場合は、マンドレル、或いは、インサートのいずれかを作業者が手で回転させることによってインサートを取り付け工具に装着していた。
【0010】
一方取り付け工具が電動の場合、作業者がインサートを一方の手で挟み持って他方の手に持っている電動の取り付け工具のマンドレルをインサートの端部に接触させてマンドレルを回転させることでマンドレルにインサートを装着する。そしてマンドレルを回転させる間、作業者はインサートを保持しておく必要がある。これはインサートを保持しておかなければマンドレルの回転に伴ってインサートも回転してしまうという共回りが生じてしまうからである。
【0011】
このようにインサートの共回りを防止するためにインサートを保持しなければならないものの、インサートを保持する作業者の手の直近でマンドレルが回転している。そのため、何かの拍子でインサートを保持している手とマンドレルとが接触しないとも限らない。また手袋をはめた状態でインサートを保持するような場合、インサート装着の際に回転するマンドレルが手袋を巻き込むことも考えられる。
【0012】
インサートには複数の大きさが存在するが、インサートの大きさが小さくなればなるほど電動の取り付け工具にインサートを装着する際にインサートを保持する手と回転するマンドレルとの位置は近くなる。そのため、両者の接触が懸念される。
【0013】
本発明は、インサート挿入工具にインサートを装着する際の危険性を排除しつつ装着時におけるインサートの共回りを防止して確実にインサートをインサート挿入工具に装着することができるインサート整列装置及びインサート整列装置を用いたインサート挿入方法を提供する。
【0014】
また多数のインサートを被加工物に挿入する際のインサートの員数管理、挿入管理を容易に行うことができるインサート整列装置及びインサート整列装置を用いたインサート挿入方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施の形態におけるインサート整列装置は、インサートを整列させる整列穴が形成される上面と、上面の下層に配置され、整列穴の奥側に入れられたインサートの一端の全周にわたって接触する共回り防止部材と、を備える。
【0016】
上記インサート整列装置における共回り防止部材は、エラストマーで形成されているとともに、共回り防止部材には、インサートを装着するために整列穴に挿入されたインサート挿入工具の先端部を収容する収容部が形成されている。
【0017】
インサート整列装置の整列穴の上面における表面から上面と共回り防止部材とが接する面までの距離は、整列の対象となるインサートの種類ごとに設定される。
【0018】
インサート整列装置の上面の周囲には、整列のためにインサートが投入された際に、上面から投入されたインサートが落下することを防止する壁が設けられている。また、上面及び共回り防止部材は、整列穴に入りきらなかった余剰のインサートを排出する際に傾斜可能に形成されている。
【0019】
インサート整列装置の壁の一部は、余剰のインサートを排出する際に開口部となるように、或いは、壁は、余剰のインサートを排出する際に、壁の全体が上面の表面に沿ってスライド可能に形成されている。
【0020】
インサート整列装置における上面と、共回り防止部材とは、共回り防止カートリッジを構成し、当該共回り防止カートリッジは、インサート整列装置に着脱可能に形成されている。そしてこの共回り防止カートリッジは、さらに、共回り防止部材の下層であって、上面との間で共回り防止部材を挟持する調整プレートを備えている。
【0021】
当該共回り防止カートリッジにおいて、上面から調整プレートまでの距離は、インサートの種類に応じて設定される上面の表面から共回り防止部材までの距離の如何に拘わらず一定である。また調整プレートには、共回り防止部材が配置される側とは反対側に向けて突出する固定部が形成されている。
【0022】
共回り防止カートリッジは、整列のためにインサートが投入された際に、上面から投入されたインサートが落下することを防止するために設けられる壁とインサート整列装置の基部の上部に配置される下面との間に形成されるカートリッジ受け部に、調整プレートが下面と対向する位置となるように装着される。
【0023】
本発明の実施の形態に係るインサート整列装置を用いたインサート挿入方法は、インサートをインサート整列装置に投入するステップと、投入されたインサートを整列穴に入れて整列させるステップと、整列されて余剰となったインサートをインサート整列装置から排出するステップと、整列されたインサートをインサート挿入工具に装着するステップと、装着されたインサートを被加工物に挿入するステップと、を備える。
【0024】
インサート整列装置を用いたインサート挿入方法は、インサート挿入工具に対してインサートを装着するステップにおいて、インサート挿入工具は、インサート挿入工具の進行方向に向けてインサートを押しつけるようにインサートを装着する。
【0025】
インサート整列装置を用いたインサート挿入方法は、インサート挿入工具がインサートを被加工物に挿入するステップにおいて、インサート挿入工具は、挿入されるインサートの種類ごとに設定される挿入時間が経過した後反転し、インサートの被加工物への挿入動作を終了する。
【0026】
またインサート整列装置を用いたインサート挿入方法は、インサート挿入工具がインサートを被加工物に挿入するステップにおいて、インサート挿入工具は、インサートを予め設定される挿入距離挿入した後反転し、インサートの前記被加工物への挿入動作を終了する。
【0027】
インサート整列装置を用いたインサート挿入方法は、余剰となったインサートのインサート整列装置からの排出は、インサート整列装置を傾けた際に、インサート整列装置において整列穴が形成されている上面を囲むように形成されている壁の一部が開口することにより行われる。
【0028】
インサート整列装置を用いたインサート挿入方法は、余剰となったインサートのインサート整列装置からの排出は、インサート整列装置において整列穴が形成されている上面を囲むように形成されている壁が上面をスライドすることにより行われる。
【0029】
上面と、共回り防止部材とが、共回り防止カートリッジを構成し、インサート整列装置に着脱可能とされている場合に、インサート整列装置を用いたインサート挿入方法において、インサートをインサート整列装置に投入するステップの前に、インサート挿入工具に装着するインサートの種類に応じた共回り防止カートリッジを、インサート整列装置のカートリッジ受け部に装着するステップを備えている。
【発明の効果】
【0030】
このような本発明の実施の形態におけるインサート整列装置またはインサート整列装置を用いたインサート挿入方法であれば、インサート挿入工具にインサートを装着する際の危険性を排除しつつ装着時におけるインサートの共回りを防止して確実にインサートをインサート挿入工具に装着することができる。また多数のインサートを被加工物に挿入する際のインサートの員数管理、挿入管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施の形態に係るインサート挿入システムの全体構成を示す平面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るインサート整列装置を示す斜視図である。
図3図2に示す本発明の実施の形態に係るインサート整列装置をA-A線で切断して示す切断断面図である。
図4】本発明の実施の形態におけるインサート整列装置に封止部材を取り付けた状態を示す平面図である。
図5】本発明の実施の形態におけるインサート整列装置に別の封止部材を取り付けた状態を示す平面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係るインサート整列装置において、基部より整列部を傾けた状態を示す斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係るインサート整列装置を用いたインサート挿入方法の流れを示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態に係るインサート整列装置を用いたインサート挿入方法において、インサート整列装置にインサートが投入された状態を示す平面図である。
図9】本発明の第1の実施の形態に係るインサート整列装置を用いたインサート挿入方法において、インサート整列装置から余剰のインサートを排出した状態を示す平面図である。
図10】本発明の実施の形態に係るインサート整列装置を用いたインサート挿入方法において、インサート整列装置に整列したインサートをインサート挿入工具に装着する状態を示す斜視図である。
図11】本発明の実施の形態に係るインサート整列装置を用いたインサート挿入方法において、インサート挿入工具に装着されたインサートを被加工物に挿入した状態を示す斜視図である。
図12】本発明の第2の実施の形態に係るインサート整列装置を示す斜視図である。
図13】本発明の第2の実施の形態に係るインサート整列装置にインサートが投入された状態を示す平面図である。
図14】本発明の第2の実施の形態に係るインサート整列装置から余剰のインサートを排出する状態を示す平面図である。
図15】本発明の第3の実施の形態に係るインサート整列装置を示す斜視図である。
図16】本発明の第3の実施の形態に係るインサート整列装置を示す平面図である。
図17】本発明の第3の実施の形態に係るインサート整列装置から共回り防止カートリッジを取り外した状態を示す斜視図である。
図18】本発明の第3の実施の形態に係る共回り防止カートリッジを示し、(A)は平面図であり、(B)は、当該平面図をB-B線で切断して示す切断断面図である。
図19図15に示す本発明の第3の実施の形態に係るインサート整列装置をC-C線で切断して示す切断断面図である。
図20図17に示す本発明の第3の実施の形態に係るインサート整列装置をD-D線で切断して示す切断断面図である。
図21】本発明の第3の実施の形態に係る共回り防止カートリッジの切断断面図を示し、(A)はこれまで説明してきた共回り防止カートリッジの切断断面図であり、(B)は、共回り防止カートリッジにおける上面と調整プレートとの厚みを変更した状態を切断断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態に係るインサート挿入システムSの全体構成を示す平面図である。インサート挿入システムSは、インサート整列装置1と、フィーダ2と、回収装置3と、インサート挿入工具4と、を備えている。フィーダ2は、当該インサート整列装置1にインサートを投入する。回収装置3は、インサート整列装置1から排出された余剰のインサートを受ける。インサート挿入工具4は、インサート整列装置1においてインサートを装着し、被加工物Wの指定場所に挿入する。
【0034】
なお上述したように、インサートには、タング付きインサートとタングレスインサートの2種類が存在する。以下の説明において、本発明の実施の形態におけるインサート挿入システムSで利用されるインサートは、タングレスインサートであることを前提とする。但し、タング付きインサートの利用も可能である。
【0035】
インサート整列装置1は、インサートIをインサート挿入工具4に装着させるべく、インサートIを整列させるために用いられる。そのため、インサート整列装置1には、フィーダ2から複数のタングレスインサートが投入される。
【0036】
フィーダ2からインサート整列装置1に投入されるインサートIの数は、少なくとも整列させる個数である。さらには、整列させる個数を大きく上回る個数であることが好ましい。例えば、図1に示すインサート整列装置1の上面11には整列させる個数として、25個の整列穴111が形成されている。従ってこの場合には、整列されるインサートIの数は25個であることから、インサート整列装置1に投入されるインサートIの個数は25個以上である。一方で、例えばインサート整列装置1の上面11からあふれてしまわないような個数である。
【0037】
なおここで整列させる個数とは、例えば、インサート整列装置1の上面11に形成されている整列穴111の個数である。或いは、後述する封止部材を用いて形成されている整列穴111の数を調整するような場合には、調整後の個数である。
【0038】
またインサートIをインサート整列装置1に投入する場合には、フィーダ2のような機構を用いずに、例えば作業者が直接インサートIをインサート整列装置1に投入しても良い。
【0039】
インサート整列装置1に隣接し、フィーダ2の直下には、インサート整列装置1から排出される余剰のインサートIを受ける回収装置3が配置されている。回収装置3については、インサート整列装置1から排出された余剰のインサートIを保持したままとすることができる。或いは、回収装置3とフィーダ2とを連結し、回収装置3にて回収された余剰のインサートIを改めてフィーダ2に送る機構を備えていても良い。
【0040】
インサート挿入工具4は、インサート整列装置1において整列されたインサートIをマンドレルの先端に装着し、図1に示すようにインサート挿入システムSの左右方向、前後方向、或いは、上下方向に移動する。そして被加工物Wの指定場所であるタップ穴W1に装着されたインサートIを挿入する。
【0041】
さらに、本発明の実施の形態において使用されるインサート挿入工具4は、動力を基に駆動されるものであって、作業者が手動で被加工物WにインサートIを挿入するものではない。なお、動力を基に駆動されるものであれば、電動式やエンジン式等、動力源として何が用いられるかについては問わない。
【0042】
また、インサート挿入工具4の詳細な構造についてはここでは説明を省略するが、インサートを被加工物Wに挿入する際に通常用いられるものである。そしてインサート挿入工具4の先端にはインサートIをタップ穴W1に挿入するためのマンドレルが設けられており、当該マンドレルの先端にはタングレスインサートのノッチを引っかけるための爪が形成されている。当該爪は付勢部材によって通常はマンドレルの外径よりも外側に飛び出した状態である。
【0043】
すなわち、タングレスインサートをタップ穴に挿入するに当たっては、まずマンドレルの先端がタングレスインサートの他端に接する。この際、爪はタングレスインサートの内径に押されて引っ込む。そしてタングレスインサートをマンドレルに装着中は爪がタングレスインサートの内径に接触しながら移動し、タングレスインサートのノッチの部分に至ると、付勢部材によって爪が飛び出してノッチに引っ掛かる。これによって、タングレスインサートがマンドレルに固定され、装着されたことになる。
【0044】
さらに、インサート挿入工具4の駆動制御を行うための制御装置がインサート挿入工具4の内部、或いは、外部に設けられている。インサート挿入工具4が被加工物Wに対してインサートIを挿入するに当たって、本発明の実施の形態におけるインサート挿入システムSで使用されるインサート挿入工具4は、挿入時間、或いは、挿入距離を基にその挿入が制御される。すなわち、インサート挿入工具4がインサートIを被加工物Wに挿入する際、その一部が被加工物Wの表面に接触してしまうことが考えられる。
【0045】
しかしながら、業界によっては被加工物Wの表面に傷(擦り傷)等が付くことを嫌う場合がある。このような場合に、例えば、被加工物Wの表面にインサート挿入工具4の一部が接触したことを検知してインサートIの挿入を終了させるような制御を行ってしまうと、傷が付くことを回避できない。
【0046】
そこで本発明の実施の形態におけるインサート挿入工具4の制御では、予めインサートIの種類ごとに予め挿入時間を定めておく。そして、挿入開始から所定の挿入時間が経過した場合には、インサートIの挿入時におけるマンドレルの回転を逆転させて、被加工物WへのインサートIの挿入を終了させることとしている。
【0047】
或いは、本発明の実施の形態におけるインサート挿入工具4の制御方法として、挿入時間に替えて、挿入距離を基に制御することも考えられる。すなわち、インサートIを被加工物Wに挿入する際に、インサートIの一端部の被加工物Wへの接触位置を基準位置とした場合に、この基準位置からインサートIが被加工物Wに挿入される距離を検出する検出センサからの検出信号を取得する。そして、予め設定される挿入距離に到達したと判定した場合に、インサートIの被加工物Wへの挿入動作を終了する方法を採用しても良い。
【0048】
このように挿入時間、或いは、挿入距離のいずれかを基にインサート挿入工具4の制御を行うことで、インサートIを被加工物Wに挿入する際に、被加工物Wの表面に傷(擦り傷)等が付くことを効果的に防止することができる。
【0049】
被加工物Wは、インサートIが挿入される対象である。図1では、例えば、被加工物Wに3つのタップ穴W1が形成されており、これらのタップ穴W1にインサートIが挿入される。図1に示す被加工物Wでは、3つ形成されているタップ穴W1の1つにインサートIが挿入されている。そしてタップ穴W1の直径は、インサートIの直径よりも小さい。
【0050】
次に、本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1について、さらに詳しく説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るインサート整列装置1を示す斜視図である。また図3は、図2に示す本発明の実施の形態に係るインサート整列装置1をA-A線で切断して示す切断断面図である。
【0051】
上述したように、本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1は、インサート挿入工具4のマンドレル先端にインサートIを装着するために、インサートIを整列させるために用いられる。
【0052】
図2、或いは、図3に示されているように、インサート整列装置1は、インサートIを整列させる整列部10と、当該整列部10を支える基部20と、から構成される。整列部10は、さらに3層に分かれ、上面11と、下面12と、共回り防止部材13とを備えている。
【0053】
上面11は、インサートIを整列させるための整列穴111を備えている。下面12は上面11及び次に説明する共回り防止部材13を支える土台の役割を果たす。また共回り防止部材13は、上面11と下面12との間に挟まれ、インサート挿入工具4のマンドレルにインサートIを装着する際にインサートIが回転することを防止する。
【0054】
図2、或いは、図3に示されているように、インサート整列装置1は、その上面11に投入されたインサートIを整列させるための整列穴111が複数形成されている。整列穴111は、インサートIを整列させるために形成されている穴である。この整列穴111にインサートIが入ることによって、インサートIはインサート挿入工具4に装着可能に整列される。
【0055】
すなわち、本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1では、インサートIはインサート整列装置1における上下方向に直立するように整列穴111に入ることによって、整列する。なお、以下、整列穴111に入ったインサートIのうち整列穴111の奥側に位置するインサートIの端部を一端、その反対側の端部を他端と表す。
【0056】
また、上述したように整列穴111に入りきらなかったインサートIは回収装置3に回収されることになるため、整列穴111の数がすなわち整列したインサートIの数を示す。従って整列穴111は、インサートIの員数管理の機能も備えている。
【0057】
整列穴111は、上面11を上下方向に貫通するように形成されている。そして、上面11と共回り防止部材13とが接する面の反対側の面(以下、この面を「表面」と表す。)には、テーパ部111aが形成されている。整列穴111の表面部分がテーパ状に形成されているのは、整列部10に投入されたインサートIが整列穴111に入りやすくするためである。
【0058】
テーパ部111aの一端は、図3に示されているように、上面11の表面に連続し、その他端は実際にインサートIが入る収納部111bに連続する。そして、収納部111bは上下方向に共回り防止部材13と接するまで上面11を貫通するように形成されている。
【0059】
なお、テーパ部111aの傾きについては、インサートIの種類を問わず同じであっても良い。或いは、より整列穴111にインサートIを入れやすくするために、例えば、インサートIの種類ごとに変化させても良い。
【0060】
収納部111bの周方向における直径は、装着の対象となるインサートIの直径よりも若干大きな値となるように形成されている。これは、インサートIをインサート挿入工具4に装着する際に、装着しにくくなることを回避するためである。すなわち収納部111bの直径がインサートIの直径よりも大分大きくなってしまうと、インサート挿入工具4にインサートIを装着する際のマンドレルの回転によりインサートIが収納部111bの中で大きく動いてしまうからである。
【0061】
そのため図3の断面図に示す収納部111bにおける周方向の直径L1は、装着の対象となるインサートIの直径よりも大きい。そして、上面11の表面に接するテーパ部111aの一端における直径L2は上記直径L1よりも大きな値となる。なお、テーパ部111aの他端における直径は収納部111bにおける周方向の直径L1と同じである。
【0062】
このようにテーパ部111aの一端の直径L2が収納部111bの直径L1よりも大きく形成されていることによって、上述したように整列のためにインサートIが整列穴111に入りやすくなる。
【0063】
また収納部111bの上下方向の長さは、装着の対象となるインサートIの装着前の長手方向の長さに対応して決定される。これはインサートIの長手方向の長さに比して収納部111bの上下方向の長さが長すぎる(深すぎる)と、インサート挿入工具4がインサートIを装着することができないからである。従って、上面11の上下方向の長さ(高さ)Hは、インサートIの種類によって異なり、それぞれのインサートIに合わせた長さとなるように形成される。
【0064】
そのため、上述したインサートIの直径がインサートIの種類ごとに異なることとも合わせて、整列穴111の各部の大きさについてはインサートIの種類ごとに異なる。そのため、整列部10は、インサートIの種類ごとに用意される。
【0065】
そして蝶番40を取り外し、インサートIの種類ごとに用意される整列部10を選択して取り付けることによって、基部20はそのままに様々なインサートIの種類に対応することができるインサート整列装置1を得ることができる。
【0066】
なお、このように整列部10全体を交換するのではなく、インサートIの種類ごとに作製された当該上面11、或いは、上面11と共回り防止部材13との組み合わせを複数用意しておき、使用するインサートIの種類に合わせて適切な上面11を選択し、整列部10に嵌め込むことも可能である、このように交換の対象を上面11のみとすることで、整列部10全体を交換するよりもよりリーズナブルに運用が可能となる。なお、この点についての一態様については、実施の形態を改めて説明する。
【0067】
上述したように、本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1においては、前後方向5行、左右方向5列の合計25個の整列穴111が形成されている。従って、このインサート整列装置1において整列されるインサートIの数は25個である。
【0068】
但し、整列させるインサートIの数は自由に設定することができる。すなわち、そもそも上面11に設けられる整列穴111の数は25個に限定されず、様々な数に設定し形成することができる。また、別の方法によっても整列穴111の数を設定することができる。
【0069】
図4は、本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1に封止部材30を取り付けた状態を示す平面図である。また、図5は、本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1に別の封止部材31を取り付けた状態を示す平面図である。なお、図4及び図5においては、把持部60の描画を省略している。
【0070】
図4に示す封止部材30は、1つの整列穴111を塞ぐことができるように形成されている。そのため、1つの整列穴111に嵌め込むことができるような、例えば、キャップ状である。図4に示す封止部材30は、その形状から1つの整列穴111しか塞ぐことができない。但し例えば、封止部材30を複数連ねることによって、連結された封止部材30の数だけ整列穴111を塞ぐことができるようにされていても良い。
【0071】
図4では、インサート整列装置1の各整列穴111の内部にインサートIが入れられ、整列されている状態が示されている。そして、当該整列穴111は25個形成されているが、その中央の整列穴111には、封止部材30が嵌め込まれている。そのため、当該封止部材30が嵌め込まれた整列穴111には、インサートIは入らない。その結果、整列穴111は25個形成されているが、整列されているインサートIの数は24個、となる。
【0072】
また図5に示す封止部材31のように、封止部材は、例えば板状に形成され、上面11に設けられている整列穴111の、例えば1列分をまとめて塞ぐことができるようにされていても良い。当該封止部材31の場合、インサート整列装置1に複数のインサートIが投入されて整列穴111に整列させられる間封止部材31が動かないように、図示しない固定部によって固定される。
【0073】
図5に示すインサート整列装置1においても、前後方向5行、左右方向5列の合計25個の整列穴111が形成されており、前後方向の3行目、全ての列を塞ぐように封止部材31が配置されている。このような封止部材31が整列穴111に配置されることによって、整列されるインサートIの数は20個となる。
【0074】
このようにインサート整列装置1に形成された整列穴111を任意の数で調整することができる封止部材を用いることによって、インサート整列装置1が使用される国、地域や業界によって単位とするインサートIの数が異なる場合であっても、柔軟に対応することができる。従ってインサート整列装置1の汎用性をより高めることができる。
【0075】
次に、下面12について説明する。下面12は上面11及び次に説明する共回り防止部材13を支える土台の役割を果たす。また、下面12は、基部20の載置面21と対向する位置に配置され、上面11との間に共回り防止部材13を挟み込む。
【0076】
そして本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1においては、例えば図1に示すように、下面12は蝶番40によって載置面21と連結される。このような位置で下面12と載置面21とが連結されることで、上述したように、当該蝶番40の部分においてインサート整列装置1の前後方向を回転軸として整列部10全体を傾けることができる。
【0077】
なお、下面12及び上面11については、例えば、金属素材や樹脂素材等、様々な素材を用いて形成することができる。また、上面11と下面12とで素材を異ならせても良い。
【0078】
また、上面11や下面12においては、素材の色について自由に選択することができる。但し上面11については、整列穴111にインサートIが入っているか否かを見分けることができるように、整列の対象となるインサートIの色とは異なる色で形成されていることが好ましい。また、整列の対象となるインサートIの色との関係で上面11の色を選択する場合には、上面11全体を同じ色としても、或いは、その表面のみインサートIの色とは異なるようにしても良い。
【0079】
さらに、投入されたインサートIがそれぞれ整列穴111に入りやすいように、或いは、余剰のインサートIをインサート整列装置1の外に排出するに当たってインサートIが上面11の表面に引っかかることがないように、例えば、その表面が平滑になるように加工されていても良い。また、上面11の表面のみ異なる素材を採用することで平滑さを確保するようにしても良い。
【0080】
共回り防止部材13は、インサート挿入工具4にインサートIを容易かつ確実に装着するために用いられる。そのため共回り防止部材13は、エラストマーで形成されている。そのため、例えばポリプロピレン等の素材を採用することができるが、より好適にはゴム部材を採用することができる。共回り防止部材13がエラストマーで形成されていることによって、共回り防止部材13がマンドレルにインサートIが装着される際におけるインサートIの共回りを防止することができる。
【0081】
すなわち、上述した整列穴111とインサートIとの大きさの関係からすれば、整列穴111にインサートIが入って整列された状態のままだとインサートIには何ら力が掛かっておらず、インサートIを整列穴111の中で自由に動かすことができる。
【0082】
しかしながら、インサート挿入工具4にインサートIを挿入するに当たっては、マンドレルが回転している間、装着されるインサートIが固定されていなければマンドレルの回転に合わせてインサートIも一緒に回転してしまう。
【0083】
そのため、インサート挿入工具4にインサートIを装着する動作の間、インサートIが回転しないように固定しておく必要がある。そこで本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1においては、上述したような共回り防止部材13を設けている。具体的な作用については以下の通りである。
【0084】
インサートIが整列穴111に入って整列された状態にある場合、インサートIの他端は上面11の表面側に位置し、その一端は整列穴111の奥側に配置される。そして上述したように整列穴111は上面11を上下方向に貫通するように形成されており、上面11は共回り防止部材13と整列穴111の奥側において接している。このため、整列穴111に入れられたインサートIの一端は共回り防止部材13に接している。
【0085】
このような状態で、上面11の表面側に配置されるインサートIの他端にマンドレルの先端が接触してインサート挿入工具4へのインサートIの装着が開始される。
【0086】
すなわち、回転するマンドレルが上面11の表面側から下面12側に向けて挿入され、マンドレルの先端がまずインサートIの他端に接触する。その後、インサート挿入工具4を下側に押しつけるようにマンドレルにインサートIを装着させる。
【0087】
マンドレルが回転しながら整列穴111を下方向に向けて進むことによってマンドレルにインサートIが装着される。その際、マンドレル(インサート挿入工具4)の下側に向けた力がインサートIに掛かることになるため、インサートIの一端は共回り防止部材13に力が掛かった状態で押しつけられる。
【0088】
共回り防止部材13は、上述したような素材からなるため、インサートIの一端が共回り防止部材13に強く押しつけられることでマンドレルの回転によるインサートIの回転が抑制され、共回りを防止することができる。
【0089】
また、場合によってはインサートIの一端部が共回り防止部材13に食い込むことも考えられる。このような状態になれば、インサート挿入工具4にインサートIを装着する間、より一層インサートIを確実に固定しておくことができる。
【0090】
このように本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1においては、インサート挿入工具4にインサートIを装着する際、整列穴111の奥側に位置するインサートIの一端が共回り防止部材13に接触することで固定される。
【0091】
一方、整列穴111の直径L1はインサートIの直径よりも大きい。従って、インサート挿入工具4がインサートIを装着している間、整列穴111におけるインサートIの挿入方向の途中において、整列穴111とインサートIとは概ね接触することはない。そのため、インサート挿入工具4がインサートIを装着する際に、インサートIの一端と他端とをつなぐ長手方向のいずれかの領域において整列穴111がインサートIの固定のために用いられることはない。
【0092】
また、共回り防止部材13には、整列穴111に挿入されたマンドレルの先端を収容する収容部131が形成されている。インサート挿入工具4のマンドレルが整列穴111に進入した後、徐々にインサートIをマンドレルに巻き付けながら(装着させながら)整列穴111の奥へと進む。
【0093】
上述したように、本発明の実施の形態において使用されるインサートIはタングレスインサートである。タングレスインサートの場合、マンドレルの先端に設けられている爪がタングレスインサートの一端部近傍に設けられているノッチに引っ掛かけられる。このようにマンドレルの爪がインサートIのノッチに引っ掛かることによって、被加工物Wへの挿入中のインサートIをマンドレルの先端に保持することが可能となり、インサートIを回転させながら被加工物Wのタップ穴に挿入することができる。
【0094】
当該マンドレルの爪がインサートIのノッチに引っ掛かるためには、マンドレルの先端が整列穴111の奥まで十分に進入してインサートIのノッチまで到達する必要がある。但し爪がノッチに引っ掛かる状態になると、マンドレルの先端は装着されたインサートIの一端部から突出した状態となる。
【0095】
ここで、上面11と共回り防止部材13とが接する面において、共回り防止部材13が整列穴111を塞ぐように形成されていると、次のような不都合が生ずる。すなわち、マンドレルの爪がインサートIの端部近傍に形成されているノッチに引っ掛かる前にマンドレルの先端が整列穴111の奥で共回り防止部材13によってそれ以上の進入を拒まれてしまうことになる。
【0096】
そこで本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1では、共回り防止部材13に収容部131を設け、マンドレルの先端が整列穴111の奥で共回り防止部材13と接しているインサートIの一端部を超えて進入することを可能としている。このように共回り防止部材13にマンドレルの先端を収容するための収容部131を形成することによって、インサート挿入工具4への装着の際にインサートIのノッチにマンドレルの爪を確実に引っかけることができる。
【0097】
従って収容部131は、マンドレルの直径よりも大きな径を備えるように形成される。なお本発明の実施の形態における収容部131は、図3に示すように、共回り防止部材13を上下方向に貫通するように形成されている。但し、収容部131を共回り防止部材13を貫通するように形成せず、例えば、収容部131をマンドレルの先端を収容できるだけの深さを備える凹部となるように形成することもできる。
【0098】
基部20は、整列部10を載置する載置面21と、載置面21に接続されインサート整列装置1全体を支える脚22と、から構成される。そして、蝶番40を介して載置面21と下面12とを連結することによって、基部20は、整列部10と着脱可能にされている。
【0099】
このように整列部10と基部20とが着脱可能とされているのは、上述したように、整列の対象となるインサートIの大きさによって整列穴111が異なることから、インサートIの種類によって整列部10を取り替える必要があるからである。
【0100】
またこのように整列部10と基部20との一部のみを蝶番40で連結していることから、図2の矢印の方向に蝶番40を基点として整列部10を持ち上げて蝶番40側へと傾けることができるようにされている。このように整列部10を基部20から持ち上げて傾けることによって、投入されたインサートIのうち整列穴111に入らない余剰のインサートIを整列部10の外に排出することができる。
【0101】
そしてインサート整列装置1から排出された余剰のインサートIは、回収装置3で回収される。そのため、インサート整列装置1が、例えば作業台等に載置された場合における作業台に設置する脚22の端部から載置面21における下面12と対向する面までの距離は、回収装置3の配置位置との関係で設定される。
【0102】
なお載置面21の大きさは、本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1では整列部10の下面12の大きさ(面積)と略同じとなるように形成されている。但し、整列部10を確実に載置することができるのであれば、その大きさは自由に設定することができる。
【0103】
また脚22についても、本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1では4本設けられている。しかし、整列部10を確実に支えることができるのであれば、例えば、その本数や形状は自由に設定可能である。
【0104】
図2図3に示すように、インサート整列装置1の上面11の周囲には、壁50が設けられている。すなわち、本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1は四角形に形成されていることから、当該壁50も上面11と接し上面11を囲むように4辺に設けられている。
【0105】
当該壁50は、整列のためにインサートIが投入された際に、投入されたインサートIが上面11から落下することを防止する。従って壁50の上下方向の長さ(高さ)は、投入時、或いは、投入された後にインサートIがインサート整列装置1の外側に落ちない高さがあれば足り、任意に設定することができる。
【0106】
また壁50は、壁50の上部から下向きに貫通する固定穴50aに図示しない固定具を挿入することによって、上面11に固定されている。固定具としては、例えば、ネジを用いることができる。また、固定穴50aは少なくとも上面11に達していれば足り、下面12まで達して整列部10と一体に固定されるように形成されていても良い。また、固定箇所についても図2に示すように4カ所に限定されない。
【0107】
本発明の第1の実施の形態におけるインサート整列装置1の壁50の一部は、余剰のインサートIを排出する際に開口部となる開口壁51として形成されている。そしてインサート整列装置1が傾くことで開口壁51が開き、壁50を構成する他の壁との間で開口部Oを形成することになる。
【0108】
具体的には、開口壁51は、壁50を構成する4辺のうちの1辺に設けられている。従って、開口壁51は、その他の3辺とは異なり別部材で形成されている。すなわち、3辺はU字状に形成され、残りの1辺がU字状の開放部分を塞いでいる。そして、この開口壁51となる1辺の上部と、当該1辺と接する2辺の上部とが蝶番40で連結される。このような構造を採用することで、整列部10を傾けた場合に、開口壁51のうち連結されていない下部が開き、開口部Oとなる。
【0109】
また、開口壁51とはならない3辺の壁50のうち、図2において前側に配置される壁50には、把持部60が設けられている。当該把持部60は、整列部10に投入され、整列穴111に入りきらず余剰となったインサートIをインサート整列装置1の外に排出するために整列部10を傾けるために使用される。
【0110】
すなわち、作業者が当該把持部60を把持して上側に整列部10を持ち上げることによって、整列部10は基部20から持ち上がる。作業者がさらに把持部60を移動させることで整列部10は、蝶番40で連結される下面12と載置面21との境界を回転軸として図2に示す矢印の方向に傾く。
【0111】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係るインサート整列装置1において、基部20より整列部10を傾けた状態を示す斜視図である。作業者が把持部60を持って上述したような動作を行うことで、インサート整列装置1は図6に示されるような状態となる。
【0112】
開口壁51は、上述したように壁50の他の3辺のうち接する2辺との間で蝶番40で互いに連結され、その下方は連結されておらず自由に動くことができるようにされている。そのため、整列部10が傾いていくと、蝶番40で連結される開口壁51と壁50との連結部分を回転軸として徐々に開口壁51が開く。
【0113】
但し、開口壁51の上部は固定されていることから、開口壁51自体の姿勢は重力に従ってその向きを大きく変化させることなく、整列部10が傾けられていない状態同様、概ね上下方向と平行な状態を保つ。そして、開口壁51がこのような状態となることで開口部Oが形成される。
【0114】
整列部10が傾いて開口部Oが形成されることで、図6ではその図示を省略しているが、整列部10において整列穴111に入りきらなかった余剰のインサートIが整列部10から外部へと排出され、回収装置3において受け止められる。
【0115】
[動作]
次に、本発明の実施の形態におけるインサート挿入システムSを用いたインサート挿入方法の処理の流れについて、図7ないし図11を用いて説明する。図7は、本発明の実施の形態に係るインサート整列装置1を用いたインサート挿入方法の流れを示すフローチャートである。
【0116】
なお、図7のフローチャートは、インサート挿入工具4を用いた被加工物WのインサートIの挿入に当たって、挿入時間を基にインサート挿入工具4を制御する場合の流れを示していることから、以下では、挿入時間を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0117】
まずインサート整列装置1にインサートIが投入される(ST1)。本発明の実施の形態におけるインサート挿入システムSでは、フィーダ2から上面11に形成された整列穴111の数以上のインサートIがインサート整列装置1に投入される。
【0118】
図8は、本発明の実施の形態に係るインサート整列装置1を用いたインサート挿入方法において、インサート整列装置1にインサートIが投入された状態を示す平面図である。なお、図8においては把持部60の描画を省略している。
【0119】
図8に示されているように、投入直後には、インサートIは整列穴111に入るものもあるが、全ての整列穴111に入るわけではない。また、整列穴111に入らずに重なるように配置されるインサートIも存在する。
【0120】
そこで次に、全ての整列穴111にインサートIが入るように、例えば、インサート整列装置1全体に振動を与える等の処理を施し、全ての整列穴111にインサートIを入れる(ST2)。そして、整列穴111に入りきらなかった余剰のインサートIをインサート整列装置1の外部へと排出する(ST3)。
【0121】
この余剰のインサートIの排出は、図6に示したように整列部10を基部20から離れるように傾けることで行われる。整列部10が傾くことによって、開口壁51が開き、開口部Oが形成される。余剰のインサートIは当該開口部Oからインサート整列装置1の外部へと排出される。そして、排出された余剰のインサートIは回収装置3にて回収される。
【0122】
図9は、本発明の第1の実施の形態に係るインサート整列装置1を用いたインサート挿入方法において、インサート整列装置1から余剰のインサートを排出した状態を示す平面図である。なお、図9においては、フィーダ2及び把持部60の図示を省略している。
【0123】
図9に示すように、整列穴111の個数以上のインサートIは余剰のインサートIとして回収装置3に回収される。一方、余剰のインサートIが排出された後のインサート整列装置1には、全ての整列穴111にインサートIが入り、整列されている。
【0124】
この状態でインサート挿入工具4へのインサートIの装着が可能となる。そこで、装着対象となるインサートIの直上にインサート挿入工具4を移動させて(ST4)、インサートIに向けて降下させることで整列穴111の内部において整列されているインサートIをマンドレルに装着する(ST5)。
【0125】
インサートIをマンドレルに装着させる際には、上述したように、インサートIに向けて力を加えるようにインサート挿入工具4を下向きに整列穴111に進入させる。この際、インサートIの一端部が共回り防止部材13に密着することになるため、マンドレルが回転していてもインサートIの共回りを防止することができる。
【0126】
また、共回り防止部材13には収容部131が形成されていることから、整列穴111の奥まで進入したマンドレルの先端は共回り防止部材13によってその進入を妨げられることなく進むことができる。従って、確実に爪をインサートIのノッチに引っかけることができる。
【0127】
図10は、本発明の実施の形態に係るインサート整列装置1を用いたインサート挿入方法において、インサート整列装置1に整列したインサートIをインサート挿入工具4に装着する状態を示す斜視図である。なお、図10においては、基部20の図示を省略している。
【0128】
図10に示すように、インサート挿入工具4が整列しているインサートIに対してその上部から接近し、マンドレルを回転させながらインサートIを装着する。図10では、マンドレルへのインサートIの装着が完了した状態を示している。この状態では、マンドレルの爪はインサートIのノッチに引っ掛かっているとともに、マンドレルの先端は収容部131に収容されている。
【0129】
そしてこの後、インサートIを装着したインサート挿入工具4を引き上げて、インサート挿入工具4を被加工物Wのタップ穴W1の直上に移動させる(ST6)。そしてタップ穴W1に向けてインサート挿入工具4を降下させつつ、タップ穴W1にインサートIを挿入する(ST7)。
【0130】
図11は、本発明の実施の形態に係るインサート整列装置1を用いたインサート挿入方法において、インサート挿入工具4に装着されたインサートIを被加工物Wに挿入した状態を示す斜視図である。図11においてもフィーダ2の図示を省略している。タップ穴W1はインサートIの外径よりも小さく形成されており、このタップ穴W1にインサートIをねじ込むことによって、被加工物Wに雌ネジが配置される。
【0131】
インサート挿入工具4では、被加工物WへのインサートIの挿入時間として所定時間が経過したか否かを判定する(ST8)。所定の時間が経過していない場合には(ST8のNO)、まだインサートIの挿入中であるので、引き続き挿入を継続する。一方、所定時間が経過した場合には(ST8のYES)、インサート挿入工具4はマンドレルを逆転させながらタップ穴W1から引き上げる(ST9)。
【0132】
そしてインサート整列装置1に挿入すべきインサートIが残っているか否かを確認の上(ST10)、残っている場合には(ST10のYES)、ステップST4に戻り、改めて上述した処理を実行する。一方、挿入すべきインサートIが残っていない場合には(ST10のNO)、インサート整列装置1を用いたインサートの挿入処理は終了となる。
【0133】
以上説明したインサート整列装置1、または、インサート整列装置1を用いたインサート挿入方法を用いることによって、インサート挿入工具にインサートを装着する際の危険性を排除しつつ装着時におけるインサートの共回りを防止して確実にインサートをインサート挿入工具に装着することができる。また多数のインサートを被加工物に挿入する際のインサートの員数管理、挿入管理を容易に行うことができる。
【0134】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0135】
第2の実施の形態におけるインサート整列装置100においても、整列部10及び基部20の構造についてはこれまでのインサート整列装置1と同様である。一方、第2の実施の形態におけるインサート整列装置100は、第1の実施の形態におけるインサート整列装置1と余剰のインサートIを外部に排出する方法が異なる。
【0136】
図12は、本発明の第2の実施の形態に係るインサート整列装置100を示す斜視図である。インサート整列装置100においても、上面11の周囲を囲むように壁101が設けられていることは同じである。
【0137】
しかし、当該壁101の構造は、インサート整列装置1における壁50とはその構造が異なる。また、第2の実施の形態においては、当該壁101が図12に示す矢印の方向にスライドすることによって、余剰となったインサートIをインサート整列装置100の外部へと排出する。
【0138】
なお、壁101については、第1の実施の形態におけるインサート整列装置1の壁50とは異なり、上面11の周囲を囲むのではなく、整列部10と略同じ大きさの四角い板状に形成されている。また、整列穴111が形成されている領域には、円形状の貫通穴101aが形成されている。
【0139】
また、当該壁101の底面101bは、上面11の表面と対向している。底面101bと上面11の表面とは接していても良く、或いは、投入されたインサートIを排出する際に、上面11の表面との間で余剰のインサートIを挟み込むことがない程度の空間が設けられていても良い。
【0140】
図13は、本発明の第2の実施の形態に係るインサート整列装置100にインサートIが投入された状態を示す平面図である。また、図14は、本発明の第2の実施の形態に係るインサート整列装置100から余剰のインサートIを排出する状態を示す平面図である。
【0141】
図13に示すように、インサート整列装置100に投入されたインサートIは、これまで説明した通り、整列穴111の数よりも多い。従って、整列穴111に入ったインサートIもあれば、入らずに重なるように配置されているものもある。但し、上述した壁101が存在していることから、投入されたインサートIの数が多かったとしても、投入直後にインサート整列装置100から外にインサートIが落ちてしまうことはない。
【0142】
そして整列穴111にインサートIを入れることでインサートIを整列させる。また、整列穴111に入りきらなかった余剰のインサートIについては、インサート整列装置100の外へと排出される。その状態を示しているのが図14である。
【0143】
図14に示されているように、例えば、図12に示されている把持部60を作業者が矢印の方向に移動させることで壁101の全体が上面11の表面をスライドする。この壁101がスライドすることによって、余剰となったインサートIがインサート整列装置100の外の回収装置3へと排出される。
【0144】
以上説明したインサート整列装置100、または、インサート整列装置100を用いたインサート挿入方法を用いることによって、インサート挿入工具にインサートを装着する際の危険性を排除しつつ装着時におけるインサートの共回りを防止して確実にインサートをインサート挿入工具に装着することができる。また多数のインサートを被加工物に挿入する際のインサートの員数管理、挿入管理を容易に行うことができる。
【0145】
インサートIをインサート挿入工具4に装着するに当たっては、インサート挿入工具4のマンドレルの回転に伴ってインサートI自身が回転してしまう共回りを防止する必要がある。すなわち、インサート挿入工具4に装着される間インサートIを固定しておかなければならないが、本発明の第1、或いは、第2の実施の形態におけるインサート整列装置1,100では、整列穴111が形成される上面11と下面12との間に挟まれるように共回り防止部材13が配置されている。
【0146】
このため、整列穴111に入れられたインサートIはその一端が共回り防止部材13に接触する。従って、インサートIを装着するために整列穴111に進入したインサート挿入工具4のマンドレルは、装着されるインサートIの一端を共回り防止部材13に押しつけることになり、インサートIの一端が共回り防止部材13に強く押しつけられることでインサートIが固定され、共回りが防止される。
【0147】
一方、整列穴111の周方向の直径はインサートIの直径よりも大きいことから、整列穴111の中で整列しているインサートIは収納部111bには接触していない。そのためインサート挿入工具4にインサートIを装着する際にインサートIを固定することには寄与していない。
【0148】
このように本発明の実施の形態におけるインサート整列装置1においては、インサート挿入工具4にインサートIを装着する際の共回りを防止するために、共回り防止部材13を用いることとし、インサートIの固定のために作業者の手を使わないので安全性を確保することができる。
【0149】
また、本発明の第1、或いは、第2実施の形態におけるインサート整列装置1,100を用いることによって、インサート挿入工具4がインサートIの他端に接触してから装着、引き上げて被加工物Wに移動するまでを連続して行うことができることから、被加工物WへのインサートIの挿入を効率よく行うことができる。
【0150】
(第3の実施の形態)
次に本発明における第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態において、上述の第1、第2の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0151】
第3の実施の形態におけるインサート整列装置200では、これまでの第1、或いは、第2の実施の形態で説明したインサート整列装置1,100とは異なり、少なくとも上面と共回り防止部材とが着脱可能な共回り防止カートリッジとして構成されている例を示している。
【0152】
上述したように、インサートIについては、その径、巻き数について複数の種類がある。また、同じ径であっても異なる巻き数となるインサートIもある。そのため、これまでの第1、及び、第2の実施の形態におけるインサート整列装置1,100においても、整列部10をインサートIの種類ごとに用意することを前提としていた。
【0153】
しかし、整列部10と基部20とは、蝶番40で固定されていることから、整列部10を装着の対象となるインサートIごとに変更する場合には、蝶番40を取り外す必要があった。そこで蝶番40を取り外さずに、整列部10を変更できれば、より容易に複数の種類のインサートIへの対応が可能となる。
【0154】
そこで、以下に説明する第3の実施の形態に係るインサート整列装置200では、整列部10のうち、特に、上面11と共回り防止部材13とをインサート整列装置200に対して着脱可能な共回り防止カートリッジCとして構成した。
【0155】
図15は、本発明の第3の実施の形態に係るインサート整列装置200を示す斜視図である。当該図15に示すインサート整列装置200では、共回り防止カートリッジCが装着された状態が示されており、インサートIを整列させるための上面が見えている。
【0156】
すなわち、インサートIを整列させるための整列部10がインサート整列装置200との間で着脱可能に構成されている点、及び、インサート整列装置200側に共回り防止カートリッジCを受け入れるためのカートリッジ受け部70が形成されていることがこれまで第1、第2の実施の形態において説明したインサート整列装置1,100と異なる。一方、これらを除けば、これまで説明したインサート整列装置1,100とその他の構造は同じである。
【0157】
また、このようなインサート整列装置200を平面で見た状態を示すのが図16である。図16は、本発明の第3の実施の形態に係るインサート整列装置200を示す平面図である。なお、図16においては、把持部60、及び、共回り防止カートリッジCのうちインサート整列装置200から突出している部分における角部の面取りの描画を省略している。また、図16では、整列穴111の中にインサートIが入った状態が示されている。
【0158】
一方、図17は、本発明の第3の実施の形態に係るインサート整列装置200から共回り防止カートリッジCを取り外した状態を示す斜視図である。図17では、インサート整列装置200において、共回り防止カートリッジCを受け入れるためのカートリッジ受け部70が示されている。
【0159】
カートリッジ受け部70は、その底面がこれまで説明してきた下面12である。そして、当該下面12の周囲には、壁(挿入壁71)が設けられている。本発明の第3の実施の形態におけるインサート整列装置200では、特に基部20の部分を除き、概ね矩形状に形成されている。従って、挿入壁71も下面12の3つの辺に沿って設けられている。
【0160】
下面12の3つの辺にのみ挿入壁71が設けられているのは、残りの1つの辺は、共回り防止カートリッジCを装着する際の受入れ口となる挿入口72を構成するからである。共回り防止カートリッジCをインサート整列装置200に挿入する際には、当該挿入口72から共回り防止カートリッジCを挿入し、図15ないし図17に示す左の方向へと共回り防止カートリッジCを移動させる。
【0161】
上述したように、挿入壁71は、下面12において挿入口72を除く3つの辺に設けられている。そして図15に示すように、挿入口72における前後方向の距離は、同じ方向における共回り防止カートリッジCの距離と概ね同じである。すなわちこの挿入口72の大きさは、挿入壁71によって決定される。
【0162】
そして図16図17に示されているように、挿入口72から左方向に続く2つの挿入壁71,71は、左右方向に平行である。挿入壁71,71がこのように形成されていることによって、共回り防止カートリッジCは、挿入口72から当該挿入壁71,71にガイドされるようにインサート整列装置200に挿入される。
【0163】
挿入壁71,71にガイドされるようにインサート整列装置200に挿入された共回り防止カートリッジCは、挿入口72に対向する位置に配置される挿入壁71に接触してその位置に留まることになる。すなわち、当該位置に設けられている挿入壁71によって、挿入時において共回り防止カートリッジCがこれ以上左方向に移動することができないようにされている。
【0164】
以上のことから、カートリッジ受け部70における挿入壁71は、挿入時、及び、挿入後において、共回り防止カートリッジCのインサート整列装置200における位置を画定する。
【0165】
さらに、特に図17に示されているように、下面12の3つの辺に形成されている挿入壁71は、壁50の土台となる役割も果たしている。ここで第1、或いは、第2の実施の形態におけるインサート整列装置1,100では、壁50は上面11の上部に形成されていた。
【0166】
これに対して、第3の実施の形態におけるインサート整列装置200では、上面、及び、共回り防止部材はいずれもインサート整列装置200に着脱可能な共回り防止カートリッジCとして構成されている。そのため、壁50を上面11の上部に形成することができない。そこで、カートリッジ受け部70(挿入壁71)の上部に壁50を配置、固定することで、上述した壁50の役割を維持することとしている。
【0167】
図17に示されているように、カートリッジ受け部70の底面に該当する下面12には、挿入口72の近傍に、2つの嵌合部73,73が形成されている。当該嵌合部73,73は、共回り防止カートリッジCをインサート整列装置200に装着した後、外れてしまうことを防止するために共回り防止カートリッジCに設けられている固定部C3a,C3aが嵌め合わされる。なお、当該固定部C3aについては、後述する。
【0168】
次に、共回り防止カートリッジCについて説明する。 図18は、本発明の第3の実施の形態に係る共回り防止カートリッジCを示し、(A)は平面図であり、(B)は、当該平面図をB-B線で切断して示す切断断面図である。
【0169】
図18(B)に示すように、共回り防止カートリッジCは3層構造とされている。最も上から下に向けて、順に上面C1、共回り防止部材C2、及び、調整プレートC3である。ここで上面C1と共回り防止部材C2の機能、構成はこれまで第1、及び、第2の実施の形態において説明してきた、上面11、及び、共回り防止部材13と同じである。
【0170】
すなわち図18(A)、及び、図18(B)に示すように、上面C1には、整列穴が形成されている。そして、その表面につながる部分にテーパ部C1a、当該テーパ部C1aから連続し、インサート挿入工具4への装着対象となるインサートIを収納する収納部C1bが設けられている。この上面C1は、インサートIの種類ごとに用意されるものであって、インサートIの種類によって、収納部C1bの直径、及び、上下方向の深さについてそれぞれ異なる。
【0171】
テーパ部C1a、及び、収納部C1bについては、当該共回り防止カートリッジCがインサート整列装置200における所望の位置に装着された際に、図16に示すように、インサート整列装置200の概ね中央部に配置されるように形成される。
【0172】
また、共回り防止部材C2には、インサートIを装着したマンドレルの先端部を収容するための収容部C2aが形成されている。そして共回り防止部材C2の材料についても、これまで同様、エラストマー、特にゴム部材を好適に採用することができる。
【0173】
一方で、上面C1と共回り防止部材C2との大きさには差がある。すなわち、図18(B)の切断断面図に明らかなように、上面C1の方が共回り防止部材C2よりも左右方向に大きい。
【0174】
すなわち、図18(B)に示すように、共回り防止カートリッジCの各部における図面左側の端部を揃えた場合、上面C1は共回り防止部材C2よりも右側に突出した状態となる。この突出した部分が、例えば、図15において示されているように、インサート整列装置200に共回り防止カートリッジCを装着した場合における突出した部分に該当する。
【0175】
この突出した部分は把持部CGである。当該把持部CGは、作業者がこの把持部CGを掴んでインサート整列装置200に対して共回り防止カートリッジCを着脱することが可能なように設けられている。そして、上面C1よりも下層に配置される共回り防止部材C2や調整プレートC3よりも大きくすることで、上面C1の厚みだけとして薄く形成することができるので作業者が握り易い。
【0176】
共回り防止部材C2の下層には、調整プレートC3が設けられている。調整プレートC3は、後述するように上面C1の厚さを変更した場合に、その変更に合わせて厚さを変更することが可能とされている。これにより、上面C1の厚さの如何に拘わらず、共回り防止カートリッジCの全体の高さhを一定に保つことができる。
【0177】
また、共回り防止カートリッジCがインサート整列装置200に装着する際には、上述したように、挿入口72から共回り防止カートリッジCを差し込むようにする。そのため、カートリッジ受け部70において、共回り防止カートリッジCが引っかかるような状態になると、共回り防止カートリッジCのスムーズな着脱が困難になる。
【0178】
そこで、共回り防止カートリッジCにおいて、カートリッジ受け部70の底面を構成する下面12と対向する位置に、調整プレートC3を配置している。そして当該調整プレートC3について、例えば、下面12との間で滑りの良い材質を選択することによって、カートリッジ受け部70に共回り防止カートリッジCを装着する際のスムーズな着脱を可能としている。
【0179】
また後述するように、調整プレートC3は、インサートIの種類に応じて上面C1の高さを変更する場合に、併せてその高さが変更され、共回り防止カートリッジC全体の高さを一定にする役割を担う。従って、調整プレートC3の高さも上面C1に合わせた適切な高さのものが選択される。
【0180】
但し、もし上面C1との関係で調整プレートC3の高さを非常に低くする必要がある場合には、例えば、板材のような高さのある素材ではなく、例えば、フィルム状の非常に薄い素材を採用することもできる。
【0181】
さらに、調整プレートC3には、共回り防止部材C2が配置される側とは反対側に向けて突出する固定部C3a,C3aが形成されている。この固定部C3a,C3aは、共回り防止カートリッジCがインサート整列装置200に装着された際、下面12に形成されている嵌合部73,73に嵌まる。
【0182】
具体的には、共回り防止カートリッジCをインサート整列装置200に装着する際、挿入口72から共回り防止カートリッジCが挿入され、例えば、図15に示す左側の方向に向けて押し込まれる。そして、あるところまで押し込まれると、固定部C3aが挿入口72に接触する。
【0183】
これは固定部C3aが下面12側に向けて突出しているからであるが、固定部C3aが挿入口72の下面12に接触した状態でさらに共回り防止カートリッジCが左方向に押し込まれると、固定部C3aは上方向に移動する。これは、固定部C3aが調整プレートC3から下向きに突出するように付勢されているからである。
【0184】
そして固定部C3aが下面12に接触したまま共回り防止カートリッジCが左方向に押し込まれ、下面12に形成された嵌合部73の位置に到達すると、付勢力により、固定部C3aが下向きに移動し、嵌合部73に嵌め込まれる。
【0185】
そのため、共回り防止カートリッジCがインサート整列装置200に挿入された後、固定部C3a,C3aが共回り防止カートリッジCのインサート整列装置200からの脱落を防止することができる。
【0186】
一方、共回り防止カートリッジCがインサート整列装置200から取り外される場合には、共回り防止カートリッジCが右方向に引っ張り出される。この場合に、固定部C3aは嵌合部73の縁に接触するとともに、下面12との間で調整プレートC3において上向きに移動する。
【0187】
すなわち、固定部C3aは下面12と接触しつつ調整プレートC3に押し込まれた状態で共回り防止カートリッジCが右方向に移動する。そして、固定部C3aが挿入口72から出ると、付勢力により、再度調整プレートC3から下向きに突出する。
【0188】
なお、本発明の実施の形態における共回り防止カートリッジC、及び、インサート整列装置200においては、固定部C3a,C3a、及び、嵌合部73,73がそれぞれ2カ所設けられている。但し、これら固定部、嵌合部の形成個数、形成位置等については、任意に設定することができる。また、形成位置等についても同様に自由に設定することができる。
【0189】
次に、これまで図15ないし図18を用いて説明してきた第3の実施の形態におけるインサート整列装置200について、切断断面図を用いて改めて説明する。図19は、図15に示す本発明の第3の実施の形態に係るインサート整列装置200をC-C線で切断して示す切断断面図である。同様に、図20は、図17に示す本発明の第3の実施の形態に係るインサート整列装置200をD-D線で切断して示す切断断面図である。
【0190】
すなわち、図19はインサート整列装置200に共回り防止カートリッジCが挿入された状態を示し、図20は、インサート整列装置200から共回り防止カートリッジCが抜き取られた状態を示している。
【0191】
まず図19に示されるように、インサート整列装置200に共回り防止カートリッジCが挿入された状態では、把持部CGは、インサート整列装置200から突出した状態である。この把持部CGは、上述したように作業者がインサート整列装置200に対して共回り防止カートリッジCを着脱する際に掴む部分であることから、インサート整列装置200に装着した状態でもその後引き抜くことができるように、突出している。
【0192】
共回り防止カートリッジCがインサート整列装置200に装着された状態は、例えば、第1の実施の形態において図3を用いて説明したのと同様である。すなわち、インサート挿入工具4に装着されるインサートIは、上面C1の収納部C1bに収納される。
【0193】
そして、インサート挿入工具4がインサート整列装置200の上部から下降してマンドレルにインサートIを装着した後、再度上昇して対象となる被加工物Wのタップ穴W1へと挿入する。
【0194】
一方、共回り防止カートリッジCにおいて把持部CGとは左右方向反対側の部分は、カートリッジ受け部70の挿入壁71に接触している。共回り防止カートリッジCが当該挿入壁71に接触するまで押し込まれてその位置で固定されることによって、インサートIの配置位置は、インサートIの種類によって共回り防止カートリッジCが変更されても、常に設定された位置とすることができる。
【0195】
なお、この状態では、調整プレートC3に設けられている固定部C3aと当該固定部C3aが嵌まる嵌合部73は見えていない。但し、固定部C3aは嵌合部73に嵌まっており、たとえインサート整列装置200の全体を傾けても共回り防止カートリッジCがカートリッジ受け部70から外れることはない。
【0196】
一方作業者が把持部CGを掴んで共回り防止カートリッジCを右方向に移動させることによって、インサート整列装置200から共回り防止カートリッジCを取り外すことができる。この状態を示すのが図20である。
【0197】
図20では、カートリッジ受け部70の挿入壁71と挿入口72が示されている。共回り防止カートリッジCは、左右方向に伸びる挿入壁71に沿って左右方向に移動可能である。また、カートリッジ受け部70における壁50の下端から下面12の上端までの距離(高さ)hは、共回り防止カートリッジCの高さhと同じである。
【0198】
次に、第3の実施の形態における共回り防止カートリッジCの特徴について、図21を用いて、以下説明する。
【0199】
上述したように、インサート挿入工具4に装着する対象となるインサートIごとにその直径や高さ(巻き数)については、様々な種類が存在する。また、インサート挿入工具4にインサートを装着するに当たっては、対象となるインサートIを収容する空間(収容部C2a)の高さが適切である必要がある。そのため、インサートIの種類に応じて、上面C1の上下方向の高さも異なる。
【0200】
一方で、上面C1の厚さが変化した場合に、共回り防止カートリッジCを構成するその他の部材、すなわち、共回り防止部材C2、及び、調整プレートC3の厚さに変化がないとすると、上面C1の高さによって、共回り防止カートリッジCの高さhが変化してしまう。
【0201】
共回り防止カートリッジCの高さhが変化すると、インサート整列装置200におけるカートリッジ受け部70の上下方向の高さ(図19図20参照)も対応して変化させなければならない。その結果として、インサート挿入工具4に装着されるインサートIの種類ごとにインサート整列装置200も用意しなければならず、経済的ではない。
【0202】
そこで、本発明の第3の実施の形態における共回り防止カートリッジCでは、インサートIの高さに応じて上面C1の高さが変化したとしても、共回り防止カートリッジC全体の高さhは変化させないように構成している。
【0203】
すなわち、上面C1の高さはインサートIの種類によって変化する可能性があるため、上面C1の高さに合わせて調整プレートC3の高さを変化させる。より具体的には、もし上面C1の高さが高くなった場合には、調整プレートC3の高さを低くする。反対に、もし上面C1の高さを低くする場合には、調整プレートC3の高さを高くする。このことを説明したのが、図21である。
【0204】
図21は、本発明の第3の実施の形態に係る共回り防止カートリッジCの切断断面図を示し、(A)はこれまで説明してきた共回り防止カートリッジCの切断断面図である。また図21(B)は、上面C1と調整プレートC3との厚みを変更した状態の共回り防止カートリッジCを切断して示す切断断面図である。
【0205】
図21(A)に示している共回り防止カートリッジCは、例えば、図18(B)の切断断面図に示す共回り防止カートリッジCと同じものである。従って、図18(B)に示す共回り防止カートリッジCも図21(A)に示す共回り防止カートリッジCも、いずれも共回り防止カートリッジCを構成する上面C1の高さh1、共回り防止部材C2の高さh2、及び、調整プレートC3の高さh3は同じである。
【0206】
ここでは便宜上、当該図21(A)に示す共回り防止カートリッジCの各部の高さを基準に説明する。一方、図21(B)に示す共回り防止カートリッジC’を見ると、一見して、図21(A)の共回り防止カートリッジCとは、上面、及び、調整プレートの高さが異なることが分かる。
【0207】
すなわちここで、図21(B)に示す共回り防止カートリッジC’における上面C1’の高さを高さh1’、共回り防止部材C2’の高さを高さh2’、及び、調整プレートC3’の高さを高さh3’とする。
【0208】
まず、上面C1の高さh1は、上面C1’の高さh1’よりも低い。すなわち、共回り防止カートリッジCにおける上面C1の厚さは、共回り防止カートリッジC’の上面C1’の厚さよりも薄い。
【0209】
これに対して、調整プレートC3の高さh3は、調整プレートC3’の高さh3’よりも高い。すなわち、共回り防止カートリッジCにおける調整プレートC3の厚さは、共回り防止カートリッジC’の調整プレートC3’の厚さよりも厚い。
【0210】
一方で、共回り防止カートリッジCと共回り防止カートリッジC’の全体の高さをみると、いずれも高さhであり、共通である。すなわち、上面、及び、調整プレートの高さが変化しても、共回り防止カートリッジ全体の高さは維持される。
【0211】
このように、装着されるインサートIの種類に応じて上面C1が変更されたとしても、調整プレートC3の高さを調整することで、共回り防止カートリッジCの高さhを一定に保っている。このようにすることによって、どのようなインサートIが用いられる場合であっても、共回り防止カートリッジCは異なるかもしれないが、1つのインサート整列装置200を利用することができる。
【0212】
[動作]
次に、本発明の第3の実施の形態におけるインサート挿入システムSを用いたインサート挿入方法の処理の流れについて説明する。但し基本的な流れは、これまで図7を用いて説明してきた通りである。これまでの流れと異なるのは、最初のステップよりも前にインサート整列装置200に共回り防止カートリッジCを装着する作業がある、ということである。ここでは、作業者が手作業で共回り防止カートリッジCをインサート整列装置200に装着する例を挙げて以下説明する。
【0213】
上述したように、共回り防止カートリッジCは、インサート挿入工具4に装着する対象となるインサートIごとに設けられている。そこで、作業者は、装着の対象となるインサートIに合った共回り防止カートリッジCを選択する。その上で、選択した共回り防止カートリッジCをインサート整列装置200に嵌め込む。
【0214】
具体的には、共回り防止カートリッジCをインサート整列装置200に嵌め込む場合には、作業者は把持部CGを掴み、共回り防止カートリッジCにおける把持部CGとは反対側を挿入口72からカートリッジ受け部70へと進入させる。そして挿入口72と対向する位置に配置されている挿入壁71に向けて、共回り防止カートリッジCを移動させる。
【0215】
カートリッジ受け部70において共回り防止カートリッジCを移動させる場合、例えば、図17に示す左右方向に伸びる挿入壁71に沿って移動させることができる。共回り防止カートリッジCを挿入口72と対向する位置に配置されている挿入壁71に接触するまでインサート整列装置200に押し込むと、共回り防止カートリッジCをこれ以上移動させることができなくなる。
【0216】
併せて、共回り防止カートリッジCの調整プレートC3に設けられている固定部C3aが、下面12の嵌合部73に嵌まる。このことによって、作業者が把持部CGを掴んで引き抜くまで共回り防止カートリッジCがインサート整列装置200から抜け落ちることはない。
【0217】
そして共回り防止カートリッジCがインサート整列装置200に装着された後、図7を用いて説明した流れでインサート挿入システムSを用いたインサート挿入方法の処理が実行される。
【0218】
以上説明したインサート整列装置200、または、インサート整列装置200を用いたインサート挿入方法を用いることによって、インサート挿入工具にインサートを装着する際の危険性を排除しつつ装着時におけるインサートの共回りを防止して確実にインサートをインサート挿入工具に装着することができる。また多数のインサートを被加工物に挿入する際のインサートの員数管理、挿入管理を容易に行うことができる。
【0219】
特に、装着時におけるインサートの共回りを防止する機構が、装着されるインサートIの種類ごとに共回り防止カートリッジCにまとめられている。そのため、インサートIに合わせた共回り防止カートリッジCを選択するだけで容易にインサートIの種類に合わせた共回りの防止を行うことができる。
【0220】
また、第3の実施の形態におけるインサート整列装置200には、少なくとも上面C1と共回り防止部材C2とが一体となった共回り防止カートリッジCが取り付けられる。そしてこれら上面C1と共回り防止部材C2との機能については、第1、及び、第2の実施の形態におけるインサート整列装置1,100において説明した通りであり、その機能に異なるところはない。従って、共回り防止カートリッジCをインサート整列装置200に取り付ける態様であっても、上述した効果を奏する。
【0221】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、本発明の一例を示したものである。実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化でき、また、上記実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【0222】
例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよく、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0223】
これまでの説明において、整列部10を傾ける際には、作業者が把持部60を動かすことを前提に、インサート整列装置1を構成していたが、例えば、なんらかの動力を用いた傾斜機構を設けて、当該傾斜機構によって整列部10を傾斜させても良い。
【0224】
同様に、壁101をスライドさせる方法については、上述した作業者による把持部60を介した壁101の移動方法の他、何らかの動力を用いて壁101をスライドさせる方法も採用することができる。
【0225】
また、インサート挿入システムSにおける各部を構成する機器についての動作は、上述したように、自動化を図ることができる。第3の実施の形態における共回り防止カートリッジCを用いる場合も同様であり、例えば、インサートIの種類に応じた共回り防止カートリッジCを選択し、インサート整列装置200への着脱を自動化することが可能である。
【0226】
また、上述した第1の実施の形態においては、整列部10が傾けられることによって壁50の一部である開口壁51が開くことで開口部Oが形成されて余剰のインサートIがインサート整列装置1から排出される。開口壁51は壁50の上部と蝶番40と固定されその下部は固定されていないことから上述した動きによって開口部Oが形成されるが、開口部Oが形成される方法については、このような方法に限られない。例えば、壁50の一部をスライドさせる、或いは、その一部を取り外すことによって開口部Oが形成されるようにしても良い。
【0227】
また、インサート整列装置1における整列部10の傾け方についても、例えば、図6を用いて説明した通り、これまでは壁50の1つの辺である開口壁51全体が下側となるように傾けている。但し例えば、壁50によって形成される角部に開口部Oができるように、角部が下になるように整列部10が傾く構成を採用することもできる。
【0228】
或いは、例えば壁50において対向する1対の壁50をそれぞれ開口壁51として形成するとともに、整列部10もそれぞれの開口壁51が下側となるように傾けることが可能とする構造を採用することもできる。このように整列部10をシーソーのように傾けることが可能とされることで、より迅速に余剰のインサートIを排出することができる。
【0229】
なお、第3の実施の形態における共回り防止カートリッジCにおいては、上述したように、上面C1の高さの変化を調整プレートC3でのみ調整していた。従って、上面C1と調整プレートC3とに挟まれる共回り防止部材C2については、高さの変化についての調整に寄与していなかった。但し、上面C1の高さの変化を、共回り防止部材C2の高さを調整することで共回り防止カートリッジCの全体の高さを維持することとしても良い。
【0230】
また、これまで第1、及び、第2の実施の形態においては整列部10を、一方第3の実施の形態においては共回り防止カートリッジCを、それぞれインサート挿入工具4に装着するインサートIの種類に応じて変更可能であることを説明してきた。これは、インサートIの種類によって、径の大きさと巻き数とが異なることに起因する。
【0231】
そこで、径の大きさに対しては、収納部111b,C1bの径を変更することで対応する。一方、同じ径ではあるが巻き数が異なる場合には、収納部111b,C1bの高さを変更することで対応する。そしてこの収納部111b,C1bの高さが変更されることで上面11,C1の厚さ(高さ)も異なってくる。
【0232】
但し例えば、巻き数が異なるだけで同じ径である場合には、収納部111b,C1bの高さの変更を行うのではなく、例えば、テーパ部111a,C1aの角度を調整することで、収納部111b,C1bの高さを変更することも可能である。このような変更の態様であれば、収納部111b,C1bの高さが変更されても上面11,C1の厚さ(高さ)を変更させずに済む場合が考えられる。
【0233】
さらに、インサートIを収納部111b,C1bに収納して整列させた際に、必ずしもインサートIの全体を収納部111b,C1bに収納できず、インサートIの他端がテーパ部111a,C1aの領域に突出する状態でも足りるとすることも考えられる。このように考える場合、テーパ部111a,C1aの角度、収納部111b,C1bの高さを調整することで、同じ径ではあるものの、巻き数が異なる複数種類のインサートIに対して1種類の上面11,C1で対応可能となる。
【0234】
従って、インサートIの種類に応じた整列部10や共回り防止カートリッジCを用意する必要がある一方で、同じ径であるが巻き数が異なるだけで種類が異なるインサートIに対しては、ある程度整列部10や共回り防止カートリッジCを共通化させることができる可能性がある。
【0235】
第3の実施の形態における共回り防止カートリッジCにおいて、当該共回り防止カートリッジCをインサート整列装置200に装着した際の固定の仕方として、固定部C3aが下面12の嵌合部73に嵌め込まれることで固定されることを例に挙げて説明した。但し、固定の方法については、このような方法に限定されない。
【0236】
例えば、下面12の挿入口72直下の部分に、移動防止部材を設けることもできる。この移動防止部材は、例えば長板形状であり、長手方向の一部が回転可能に下面12に固定されている。
【0237】
またその長手方向の長さは、回転させてインサート整列装置200の上下方向と平行とした場合に、インサート整列装置200に装着された共回り防止カートリッジCの調整プレートC3、及び、共回り防止部材C2の上下方向の高さを超えない長さである。
【0238】
当該移動防止部材は、インサート整列装置200に共回り防止カートリッジCが装着されていない状態では、その長手方向が前後方向となるような向きに配置されている。このような向きに配置されていることから、移動防止部材が挿入口72を塞ぐことはない。
【0239】
一方、インサート整列装置200に共回り防止カートリッジCが装着された後は、移動防止部材をその長手方向が上下方向となるように回転させる。この状態では、共回り防止カートリッジCがインサート整列装置200から抜き出ようとしても、移動防止部材が調整プレートC3、及び、共回り防止部材C2の部分に接触して共回り防止カートリッジCが左右方向に移動することを押さえることができる。
【0240】
また、上述したように、移動防止部材の長手方向の長さは、移動防止部材を上下方向と平行となるように回転させても調整プレートC3、及び、共回り防止部材C2の上下方向の高さを超えない長さである。従って、移動防止部材が上面C1に干渉することもない。
【0241】
このように、インサート整列装置200に装着された共回り防止カートリッジCの脱落を防止するための固定部については、様々な構造、機構を採用することができる。
【0242】
さらに、本発明の実施の形態において説明した技術については、以下のような構成を採用することもできる。
(1)インサートを整列させる整列穴が形成される上面と、
前記上面の下層に配置され、前記整列穴の奥側に入れられた前記インサートの一端の全周にわたって接触する共回り防止部材と、
を備えることを特徴とするインサート整列装置。
(2)前記共回り防止部材は、エラストマーで形成されていることを特徴とする上記(1)に記載のインサート整列装置。
(3)前記共回り防止部材には、前記インサートを装着するために前記整列穴に挿入されたインサート挿入工具の先端部を収容する収容部が形成されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のインサート整列装置。
(4)前記整列穴の前記上面における表面から前記上面と前記共回り防止部材とが接する面までの距離は、整列の対象となる前記インサートの種類ごとに設定されることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のインサート整列装置。
(5)前記上面の周囲には、整列のために前記インサートが投入された際に、前記上面から投入された前記インサートが落下することを防止する壁が設けられていることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のインサート整列装置。
(6)前記上面及び前記共回り防止部材は、前記整列穴に入りきらなかった余剰の前記インサートを排出する際に傾斜可能に形成されていることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のインサート整列装置。
(7)前記壁の一部は、余剰の前記インサートを排出する際に開口部となるように形成されていることを特徴とする上記(6)に記載のインサート整列装置。
(8)前記壁は、余剰の前記インサートを排出する際に、前記上面の表面に沿ってスライド可能に形成されていることを特徴とする上記(5)に記載のインサート整列装置。
(9)前記上面と、前記共回り防止部材とは、共回り防止カートリッジを構成し、
前記共回り防止カートリッジは、インサート整列装置に着脱可能に形成されていることを特徴とする上記(1)に記載のインサート整列装置。
(10)前記共回り防止カートリッジは、さらに、前記共回り防止部材の下層であって、前記上面との間で前記共回り防止部材を挟持する調整プレートを備えていることを特徴とする上記(9)に記載のインサート整列装置。
(11)前記共回り防止カートリッジにおいて、前記上面から前記調整プレートまでの距離は、前記インサートの種類に応じて設定される前記上面の表面から前記共回り防止部材までの距離の如何に拘わらず一定であることを特徴とする上記(10)に記載のインサート整列装置。
(12)前記調整プレートには、前記共回り防止部材が配置される側とは反対側に向けて突出する固定部が形成されていることを特徴とする上記(10)または(11)に記載のインサート整列装置。
(13)前記共回り防止カートリッジは、整列のために前記インサートが投入された際に、前記上面から投入された前記インサートが落下することを防止するために設けられる壁と前記インサート整列装置の基部の上部に配置される下面との間に形成されるカートリッジ受け部に、前記調整プレートが前記下面と対向する位置となるように装着されることを特徴とする上記(10)ないし(12)のいずれかに記載のインサート整列装置。
(14)インサートをインサート整列装置に投入するステップと、
投入された前記インサートを整列穴に入れて整列させるステップと、
整列されて余剰となった前記インサートを前記インサート整列装置から排出するステップと、
整列された前記インサートをインサート挿入工具に装着するステップと、
装着された前記インサートを被加工物に挿入するステップと、
を備えることを特徴とするインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
(15)前記インサート挿入工具に対して前記インサートを装着するステップにおいて、前記インサート挿入工具は、前記インサート挿入工具の進行方向に向けて前記インサートを押しつけるように前記インサートを装着することを特徴とする上記(14)に記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
(16)前記インサート挿入工具が前記インサートを前記被加工物に挿入するステップにおいて、前記インサート挿入工具は、挿入される前記インサートの種類ごとに設定される挿入時間が経過した後反転し、前記インサートの前記被加工物への挿入動作を終了することを特徴とする上記(14)または(15)に記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
(17)前記インサート挿入工具が前記インサートを前記被加工物に挿入するステップにおいて、前記インサート挿入工具は、前記インサートを予め設定される挿入距離挿入した後反転し、前記インサートの前記被加工物への挿入動作を終了することを特徴とする上記(14)または(15)に記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
(18)余剰となった前記インサートの前記インサート整列装置からの排出は、前記インサート整列装置を傾けた際に、前記インサート整列装置において前記整列穴が形成されている上面を囲むように形成されている壁の一部が開口することにより行われることを特徴とする上記(14)ないし(17)のいずれかに記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
(19)余剰となった前記インサートの前記インサート整列装置からの排出は、前記インサート整列装置において前記整列穴が形成されている上面を囲むように形成されている壁が前記上面をスライドすることにより行われることを特徴とする上記(14)ないし(17)のいずれかに記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
(20)前記上面と、前記共回り防止部材とが、共回り防止カートリッジを構成し、前記インサート整列装置に着脱可能とされている場合に、
前記インサートを前記インサート整列装置に投入するステップの前に、
前記インサート挿入工具に装着する前記インサートの種類に応じた前記共回り防止カートリッジを、前記インサート整列装置のカートリッジ受け部に装着するステップを備えていることを特徴とする上記(14)ないし(19)のいずれかに記載のインサート整列装置を用いたインサート挿入方法。
【符号の説明】
【0243】
1・・・インサート整列装置
10・・・整列部
11・・・上面
111・・・整列穴
12・・・下面
13・・・共回り防止部材
131・・・収容部
20・・・基部
21・・・載置面
22・・・脚
2・・・フィーダ
3・・・回収装置
4・・・インサート挿入工具
30・・・封止部材
31・・・封止部材
40・・・蝶番
50・・・壁
51・・・開口壁
60・・・把持部
70・・・カートリッジ受け部
71・・・挿入壁
72・・・挿入口
73・・・嵌合部
100・・・インサート整列装置
101・・・壁
200・・・インサート整列装置
C・・・共回り防止カートリッジ
C1・・・上面
C2・・・共回り防止部材
C3・・・調整プレート
I・・・インサート
S・・・インサート挿入システム




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21