(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042676
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ用モノマー組成物、コンタクトレンズ用重合体、並びにコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20240321BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G02C7/04
C08F220/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148016
(22)【出願日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2022146674
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】岩切 規郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 良樹
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 俊祐
【テーマコード(参考)】
2H006
4J100
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB03
2H006BB08
2H006BB09
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100AL08S
4J100AL09Q
4J100AL31R
4J100AL66T
4J100AL67T
4J100AQ08T
4J100BA32P
4J100BA32S
4J100BA66P
4J100BA66S
4J100BA75R
4J100BA76R
4J100BA81P
4J100BA81R
4J100CA03
4J100CA23
4J100DA37
4J100DA62
4J100EA03
4J100JA34
(57)【要約】
【課題】良好な表面の親水性、良好な防汚性及び良好な酸素透過性により優れた装用感を装用者に提供するコンタクトレンズを製造できる、コンタクトレンズ用モノマー組成物、コンタクトレンズ用重合体、並びに、コンタクトレンズを提供することにある。
【解決手段】ホスホリルコリン基含有モノマー、ホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマー、式(2)で表されるホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマー以外のシリコーンモノマーあるいはマクロマー、水酸基含有親水性モノマー、アミド基含有親水性モノマー及び架橋剤を含有する組成物をコンタクトレンズ用組成物として使用することにより、上記課題を解決できることを確認して、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表されるホスホリルコリン基含有モノマーと、
(B)下記式(2)で表されるホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマーと、
(C)下記式(2)で表されるホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマー以外のシリコーンモノマーあるいはマクロマーと、
(D)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールモノビニルエーテル、グリセロールメタクリレート、およびジエチレングリコールモノビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の水酸基含有親水性モノマーと、
(E)N-ビニル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-ビニルアセトアミドからなる群から選択される1種以上のアミド基含有親水性モノマーと、
(F)架橋剤と、を含有するコンタクトレンズ用モノマー組成物であり、
前記組成物中の(A)~(F)成分の合計100質量%に対して、(A)成分の含有割合が5~25質量%、(B)成分の含有割合が10~60質量%、(C)成分の含有割合が5~40質量%、(D)成分の含有割合が5~40質量%、(E)成分の含有割合が0~20質量%、および(F)成分の含有割合が0~2.5質量%である、組成物。
【化1】
[式(1)中、R
1はHまたはCH
3であり、W
1はOまたはNR
4、ここで、R
4はHまたは炭素数1~4のアルキル基である。]
【化2】
[式(2)中、R
1はHまたはCH
3であり、W
1はOまたはNR
4、ここで、R
4はHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、aは1~100の整数であり、A
1は式(3)で表される。]
【化3】
[式(3)中、Yは式(4)で表され、Zは式(6)で表されるホスホリルコリン基である。]
【化4】
[式中、bは2または3であり、cは0または1で表される。]
【化5】
【請求項2】
前記(C)成分が下記式(9)または式(10)で表される水酸基含有シリコーンモノマーである、請求項1記載のコンタクトレンズ用モノマー組成物。
【化6】
【化7】
【請求項3】
前記(A)~(F)成分からなるコンタクトレンズ用モノマー組成物中の、ホスホリルコリン基の割合が10質量%以上、かつケイ素の割合が10%以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ用モノマー組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ用モノマー組成物の重合体である、
コンタクトレンズ用重合体。
【請求項5】
請求項4に記載のコンタクトレンズ用重合体の水和物を含有する、
コンタクトレンズ。
【請求項6】
酸素透過係数Dkが50×10-11(cm2 /sec)・(mLO2/ mL×mmHg)以上である、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ用モノマー組成物、コンタクトレンズ用重合体、並びにコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、1950年代以来、視力改善のために使用されてきている。最初のコンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズであり、これらのレンズは現在も使用されてはいるが、初期快適性に劣ることから、広くは使用されていない。1960年には、含水ゲルから成るソフトコンタクトレンズが誕生し、その手軽さや便利さゆえに装用者が急増しており、現在では広く一般に用いられている。
しかし、従来型のソフトコンタクトレンズは、眼の角膜への酸素供給量が不十分であり、長時間装用時の安全性に問題があった。これは、角膜が他の組織のように血液から酸素の供給を受けないためである。十分な酸素が角膜に到達しない場合、角膜障害を起こす可能性があり、長期間の酸素の欠乏は、角膜にとって好ましくない。一方、近年、この欠点を解決すべく、安全性を向上させたコンタクトレンズとして、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが開発されている。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズでは、十分な酸素がコンタクトレンズを通して角膜に浸透し、角膜の健康に対する悪影響を最小限にすることを可能にする。
しかし、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、疎水性のシリコーンモノマーあるいはマクロマーを配合するため、それだけでは装用感の良好なコンタクトレンズを得ることは困難であり、親水化処理が必要である。また、装用中に涙液中の脂質がレンズに沈着し、不快感を引き起こし、また、装用者の眼の健康に悪影響を及ぼす可能性があり、防汚性にも優れたコンタクトレンズが求められている。
【0003】
コンタクトレンズの親水化処理方法として、例えば、プラズマ処理を施したコンタクトレンズ表面に親水性モノマーをグラフト重合させて表面の親水性や防汚性を付与する方法などが開示されている(特許文献1)。他にも、ポリマーをコンタクトレンズ表面にコーティングすることによって、親水性と潤滑性に富むコンタクトレンズの製造方法が開示されている(特許文献2)。これら表面処理には煩雑な工程を踏む必要があり、量産化において望ましくない。
特許文献3、4では、一級水酸基を有するシロキサニル基含有イタコン酸ジエステルモノマーと、MPCとを含む組成物が開示されており、その重合体がコンタクトレンズに利用できることが記載されている。特許文献3に記載のコンタクトレンズは、レンズ表面の親水性および酸素透過性の点で良好な結果が得られており、特許文献4に係るコンタクトレンズは、これらに加えて破断伸びと剥離性の点でも良好な結果が得られている。これらの特許文献では、表面処理なしで、簡便にコンタクトレンズが得られるが、防汚性に関する検討は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-215509
【特許文献2】特開2018-022174
【特許文献3】国際公開第2018/135421号
【特許文献4】国際公開第2020/054711号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、良好な表面の親水性、良好な防汚性(コーティング性)及び良好な酸素透過性により優れた装用感を装用者に提供するコンタクトレンズを製造できる、コンタクトレンズ用モノマー組成物、コンタクトレンズ用重合体、並びに、コンタクトレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ホスホリルコリン基含有モノマー、ホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマー、下記式(2)で表されるホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマー以外のシリコーンモノマーあるいはマクロマー、水酸基含有親水性モノマー、アミド基含有親水性モノマー及び架橋剤を含有する組成物をコンタクトレンズ用組成物として使用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.(A)下記式(1)で表されるホスホリルコリン基含有モノマーと、
(B)下記式(2)で表されるホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマーと、
(C)下記式(2)で表されるホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマー以外のシリコーンモノマーあるいはマクロマーと、
(D)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールモノビニルエーテル、グリセロールメタクリレート、およびジエチレングリコールモノビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の水酸基含有親水性モノマーと、
(E)N-ビニル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-ビニルアセトアミドからなる群から選択される1種以上のアミド基含有親水性モノマーと、
(F)架橋剤と、を含有するコンタクトレンズ用モノマー組成物であり、
前記組成物中の(A)~(F)成分の合計100質量%に対して、(A)成分の含有割合が5~25質量%、(B)成分の含有割合が10~60質量%、(C)成分の含有割合が5~40質量%、(D)成分の含有割合が5~40質量%、(E)成分の含有割合が0~20質量%、および(F)成分の含有割合が0~2.5質量%である、組成物。
【化1】
[式(1)中、R
1はHまたはCH
3であり、W
1はOまたはNR
4、ここで、R
4はHまたは炭素数1~4のアルキル基である。]
【化2】
[式(2)中、R
1はHまたはCH
3であり、W
1はOまたはNR
4、ここで、R
4はHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、aは1~100の整数であり、A
1は式(3)で表される。]
【化3】
[式(3)中、Yは式(4)で表され、Zは式(6)で表されるホスホリルコリン基である。]
【化4】
[式中、bは2または3であり、cは0または1で表される。]
【化5】
2.前記(C)成分が下記式(9)または式(10)で表される水酸基含有シリコーンモノマーである、前項1記載のコンタクトレンズ用モノマー組成物。
【化6】
【化7】
3.前記(A)~(F)成分からなるコンタクトレンズ用モノマー組成物中の、ホスホリルコリン基の割合が10質量%以上、かつケイ素の割合が10%以上であることを特徴とする、前項1又は2に記載のコンタクトレンズ用モノマー組成物。
4.前項1又は2に記載のコンタクトレンズ用モノマー組成物の重合体である、
コンタクトレンズ用重合体。
5.前項4に記載のコンタクトレンズ用重合体の水和物を含有する、
コンタクトレンズ。
6.酸素透過係数Dkが50×10
-11(cm
2 /sec)・(mLO
2 / mL×mmHg)以上である、前項5に記載のコンタクトレンズ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコンタクトレンズは、本発明のコンタクトレンズ用モノマー組成物を用いて製造されるため、非常に良好な表面の親水性、非常に良好な含水率、良好なコーティング性及び良好な酸素透過性を同時に示し得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、濃度や重量平均分子量の範囲など)を段階的に記載した場合、各下限値及び上限値は、それぞれ独立して組合せることができる。例えば、「好ましくは10以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは90以下」という記載において、「好ましい下限値:10」と「より好ましい上限値:90」とを組合せて、「10以上90以下」とする事ができる。さらに、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載においても、同様に「10~90」とすることができる。
【0010】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタアクリル(メタクリル)を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルまたはメタアクリロイル(メタクリロイル)を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレート(メタクリレート)を意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドまたはメタアクリル(メタクリル)アミドを意味し、「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルを意味する。
【0011】
本明細書において、親水性とは、コンタクトレンズ表面の水膜保持性を意味する。
本明細書において、コーティング性(防汚性)とは、コンタクトレンズに付着する脂質などの疎水性物質のコンタクトレンズへの付着量を低減させる効果を意味する。
本明細書において、酸素透過性とは、ISO18369-4に記載の手法に従って測定した酸素透過係数のことを意味する。
【0012】
<コンタクトレンズ用モノマー組成物>
本発明のコンタクトレンズ用モノマー組成物は、必須成分として後述する(A)~(F)成分を含有し、更に任意成分として後述する(G)成分、(H)成分及び(I)成分を含有していてもよい。
以後、本発明のコンタクトレンズ用モノマー組成物を、単に、本発明の組成物又は組成物と称することもある。本発明のコンタクトレンズ用モノマー組成物の重合体であるコンタクトレンズ用重合体を、単に、本発明の重合体、あるいは重合体と称することもある。本発明のコンタクトレンズ用重合体の水和物を含有するコンタクトレンズを、単に、本発明のコンタクトレンズ、あるいはコンタクトレンズと称することもある。
【0013】
(A);ホスホリルコリン基含有モノマー
(A)成分は、下記式(1)で表されるホスホリルコリン基含有モノマーである。
好適な例として、W1がOである2-(メタ)アクリロイルオキシエチル(2-(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート、W1がNR4、R4がHである2-(メタ)アクリルアミドエチル(2-(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートが挙げられ、より好ましくはR1がメチル基、W1がOである2-メタクリロイルオキシエチル(2-(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート、R1が水素原子、W1がNR4であり、R4がHである2-アクリルアミドエチル(2-(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートである。入手性の観点により、さらに好ましくは2-メタクリロイルオキシエチル(2-(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(MPC:(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスホリルコリン)である。
(A)成分は、本発明のコンタクトレンズの表面の親水性と潤滑性を良好にすることができる。
【0014】
【0015】
式(1)中、R1はHまたはCH3であり、W1はOまたはNR4、ここで、R4はHまたは炭素数1~4のアルキル基である。
(A)成分の含有量は、本発明の組成物中の(A)~(F)成分の合計100質量%に対して5~25質量%であり、好ましくは7~20質量%であり、より好ましくは8~18質量%である。
5質量%未満は、コンタクトレンズ表面への十分な親水性を付与できない場合がある。25質量%超は、組成物中への(A)成分の溶解が困難となり、また、コンタクトレンズの酸素透過性の低下が懸念される。
【0016】
(B);ホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマー
(B)成分は、下記式(2)で表されるホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマーであり、本発明のコンタクトレンズの酸素透過性、透明性、親水性および潤滑性を良好にする成分である。
(B)成分の含有量は、本発明の組成物中の(A)~(F)成分の合計100質量%に対して10~60質量%であり、好ましくは15~55質量%、さらに好ましくは20~45質量%である。10質量%未満では、コンタクトレンズの透明性が低下する可能性、及び、コンタクトレンズの酸素透過性が低下する可能性がある。60質量%超では、本発明の組成物の粘性が高くなり、取り扱いが困難になる可能性がある。
【0017】
【0018】
式(2)中、R1はHまたはCH3であり、W1はOまたはNR4、ここで、R4はHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、aは1~100の整数であり、A1は式(3)で表される。
aは1~100の範囲内であれば特に限定されないが、好ましくは2~50、より好ましくは、2~40、さらに好ましくは2~30である。
【0019】
【0020】
式(3)中、Yは式(4)で表され、Zは式(6)で表されるホスホリルコリン基である。
【0021】
【0022】
式中、bは2または3であり、cは0または1で表される。
【0023】
【0024】
(B)の一実施形態としては、以下の式(2-1)で表される化合物を例示することができる。なお、aは1~100の整数である。
【0025】
【0026】
(C)式(2)で表されるホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマー以外のシリコーンモノマーあるいはマクロマー
(C)成分は、式(2)で表されるホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマー以外のシリコーンモノマーあるいはマクロマーである。(C)成分は、本発明の組成物から得られるコンタクトレンズの酸素透過性を良好にする成分であり、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
(C)成分の含有量は、本発明の組成物中の(A)~(F)成分の合計100質量%に対して5~40質量%であり、好ましくは8~30質量%、さらに好ましくは10~25質量%である。5質量%未満では、十分酸素透過性が得られない可能性がある。40質量%超では、コンタクトレンズの親水性が低下する可能性がある。
(C)成分の一実施形態としては式(9)、式(10)、式(11)、または式(12)で表される化合物を例示することができる。
【0027】
【0028】
(D);水酸基含有親水性モノマー
(D)成分は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールモノビニルエーテル、グリセロールメタクリレートおよびジエチレングリコールモノビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の水酸基含有親水性モノマーである。(D)成分は、本発明の組成物の透明性、本発明の組成物から得られるコンタクトレンズの透明性を良好にする成分であり、これらのモノマーのいずれか1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
(D)成分の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールモノビニルエーテル、およびジエチレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
(D)成分の含有量は、本発明の組成物中の(A)~(F)成分の合計100質量%に対して、5~40質量%であり、好ましくは10~35質量%であり、より好ましくは15~30質量%である。5質量%未満では、組成物中への(A)成分の溶解が困難となる可能性や、コンタクトレンズの透明性が低下する可能性がある。40質量%超では、十分な酸素透過性が得られない可能性がある。
【0029】
(E);アミド基含有親水性モノマー
(E)成分は、N-ビニルピロリドン(N-ビニル-2-ピロリドン)、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-ビニルアセトアミドからなる群から選択される1種以上のアミド基含有親水性モノマーである。
(E)成分は、本発明の組成物の含水率などの物性値を調整する成分であり、これらのモノマーのいずれか1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
(E)成分の含有量は、本発明の組成物中の(A)~(F)成分の合計100質量%に対して、0~20質量%又は0.01~20質量%が好ましく、18質量%以下が好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。20質量%超では、十分酸素透過性が得られない、または防汚性が低下する可能性がある。
【0030】
(F);架橋剤
(F)成分は、架橋剤である。本発明のコンタクトレンズの物性の調整等を目的として配合することができる。
(F)成分の例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、および、ポリジメチルシロキサンジメタクリレートなどの架橋剤が挙げられる。
(F)成分は、これらのいずれか1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
(F)成分の含有量は、本発明の組成物中の(A)~(F)成分の合計100質量%に対して、0~2.5質量%又は0.005~2.5質量%が好ましく、0.1~2.0質量%がより好ましく、0.2~1.5質量%がさらに好ましい。2.5質量%超では、コンタクトレンズが脆くなる恐れがある。
【0031】
(G);重合開始剤
本発明の組成物は、任意成分である(G)重合開始剤を含有する組成物であってもよい。(G)成分を含有する場合、本発明の組成物の保管等に留意が必要であるが、本発明の組成物を加熱等するだけで本発明のコンタクトレンズ用重合体が安定した品質で簡便に得られるという利点がある。(G)成分としては、特に限定されないが、公知の熱重合開始剤や光重合開始剤を用いることができる。
【0032】
熱重合開始剤の例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジハイドレート、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-{1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル}プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などのアゾ系重合開始剤、およびベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシヘキサノエート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
光重合開始剤の例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、カンファーキノン、およびエチル-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートが挙げられる。また、商品名で示される光重合開始剤の例として、イルガキュア(Irgacure)819、イルガキュア1700、イルガキュア1800、イルガキュア819、イルガキュア1850、ダロキュア(Darocur)1173、ダロキュア2959等が挙げられる。(G)成分として、これら光重合開始剤のいずれか1種類を配合しても、2種類以上を配合してもよい。
(G)成分として、これらの熱重合開始剤のいずれか1種類を配合しても、2種類以上を配合してもよい。
【0033】
(G)成分を含有する場合、その含有量は、本発明の組成物中の(A)~(F)成分の合計量100質量部に対して0.01~3質量部が好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。0.01質量部未満の場合、組成物中のモノマーの重合性が不十分で、(G)成分を配合する利点が得られないおそれがある。3質量部超では、重合により得られるコンタクトレンズ用重合体を洗浄してコンタクトレンズを製造するときに、(G)成分の反応分解物の抽出除去が不十分になるおそれがある。
【0034】
(H);(A)~(F)以外のモノマー
(H)成分は、(A)~(F)以外のモノマーである。(H)成分は任意成分であり、本発明のコンタクトレンズの物性の調整等を目的として配合することができる。
(H)成分の例としては、N-ビニルピペリジン-2-オン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリル酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレートなどの親水性モノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの疎水性モノマー、などが挙げられる。
(H)成分は、これらのいずれか1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
(H)成分を含有する場合、本発明の組成物中の(A)~(F)成分の合計量100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。(H)成分の含有量が20質量部超であると、コンタクトレンズの透明性や耐久性が低下するおそれがある。
【0035】
(I);溶剤
(I)成分は、水酸基を有する溶剤である。(I)成分は任意成分であり、(A)成分の本発明の組成物中への溶解性をより良好にする目的で配合してもよい。具体的には、(I)成分を配合することにより本発明の組成物中での(A)成分の溶解速度が高くなり、その溶解が容易になるという利点を有する。
(I)成分の例としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、tert-アミルアルコール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、グリコール酸、乳酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられる。(I)成分は、これら溶剤のいずれか1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。好ましくは、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールおよび1-ヘキサノール、プロピレングリコールである。
(I)成分を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、本発明の組成物中の(A)~(F)成分の合計量100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、配合しないのがとくに好ましい。
【0036】
(他成分)
本発明の組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、さらに、上記成分以外の成分を含有させることができる。他成分としては、重合性紫外線吸収剤、着色剤としての重合性色素などが挙げられる。紫外線吸収剤を配合することにより、本発明のコンタクトレンズは日光などの紫外線による目の負担を低減し得る。また、色素を配合することにより、本発明のコンタクトレンズをカラーコンタクトレンズとすることができる。
本発明の組成物中の他成分の含有量は、本発明の組成物中の(A)~(I)成分の合計量100質量部に対して、7質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。
【0037】
(本発明の組成物の特性)
本発明の組成物(特に、(A)~(F)、さらに、(H)成分からなるコンタクトレンズ用モノマー組成物)は、ホスホリルコリン基の割合が10質量%以上、かつケイ素の割合が10%以上であることを特徴とする。下記表1に記載から明らかなように、これらの範囲であれば、本発明の効果を奏することができる。
【0038】
<本発明の組成物の製造方法>
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、各成分を任意の順または一括して撹拌(混合)装置に投入して、40℃以下で各配合成分が均一になるまで撹拌混合することにより製造することができる。ただし、(G)成分を含む場合は、混合時に重合反応が開始するのを避けるために、(G)成分が熱重合開始剤である場合、40℃以下で、かつ開始剤の10時間半減期温度よりも10℃以上低い温度で混合するのが好ましく、(G)成分が光重合開始剤である場合は、遮光して混合するのが好ましい。
【0039】
<本発明の重合体の製造方法>
本発明の重合体の製造方法の実施形態について説明する。なお、以下に示す製造方法は、本発明の重合体を得るための一実施形態であり、本発明の重合体を当該製造方法によって得られる重合体に限定するものではない。
重合体は、ポリプロピレン製などの疎水性表面を有するモールド(金型)を用い、本発明の組成物を該モールドに充填して重合させることにより製造することができる。(G)成分を含まない組成物の場合は、(G)成分と同様の重合開始剤及び該剤の配合量と同程度になるように組成物に添加、溶解させてモールドに充填する。
熱重合開始剤により重合させる場合は、45~140℃の間の、含有される熱重合開始剤に適した温度で、1時間以上反応させる。
光重合開始剤により重合させる場合は、含有される光重合開始剤に適した波長の紫外線の照射により、0.3mW/cm2以上の放射照度で5分以上反応させる。重合終了後、製造された重合体をモールドから取り出す。
重合雰囲気は、特に限定されないが、窒素またはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下とすることが、重合率が向上する点で好ましい。当該不活性ガス雰囲気下を使用する方法としては、組成物への不活性ガスの通気や、モールドへの組成物充填場所を当該雰囲気下とする方法、重合を当該雰囲気下とする方法を例示できる。
モールド内の圧力は、大気圧~微加圧でよく、不活性ガス雰囲気下で重合する場合には、ゲージ圧で1kgf/cm2以下の圧力であることが好ましい。
【0040】
<本発明のコンタクトレンズの製造方法>
本発明のコンタクトレンズの製造方法の実施形態について説明する。なお、以下に示す製造方法は、本発明のコンタクトレンズを得るための1実施形態であり、本発明のコンタクトレンズを当該製造方法によって得られるコンタクトレンズに限定するものではない。
本発明のコンタクトレンズは、好ましくは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、本発明の重合体の水和物である。ここで、水和物とは水を含んでいることを意味し、重合体が含水してヒドロゲル形態を示しているものが本発明のコンタクトレンズ(本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)である。
本発明のコンタクトレンズの含水率(コンタクトレンズの総質量に対する水の割合)は、35%以上60%以下が好ましく、40%以上、55%以下がより好ましい。含水率が35%未満の場合、レンズが硬くなる恐れがあり、60%超の場合、酸素透過性が低下する懸念がある。
本明細書中において、「シリコーンヒドロゲル」とは、重合体中にシリコーン部(シロキサン結合)を有するヒドロゲルのことをいう。本発明の組成物は、(B)および(C)成分を含有するので、該組成物の重合体は、該重合体中にシリコーン部を有しており、水和(含水)することによりシリコーンヒドロゲルを形成する。
【0041】
本発明の重合体中には、未反応物や副生物等、および任意成分である(I)溶剤が含まれていることもあるので、水和の前に、重合体を洗浄等により精製してもよい。
洗浄方法の一つとしては、溶剤での洗浄方法がある。溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、またはそれらの混合物を使用することができる。洗浄は、例えば、本発明の重合体を10~40℃で、上記溶剤に10分間~5時間浸漬し、次に水に10分間~5時間浸漬する等のように実施できる。また、溶剤洗浄と水洗浄との間に、溶剤濃度20~50質量%の水溶液に10分間~5時間浸漬する洗浄を加えてもよいし、これらの洗浄を複数回実施してもよい。水としては、蒸留水、イオン交換水、RO水等の精製水や、注射用水等が好ましい。
洗浄により精製した本発明の重合体を、生理食塩水に浸漬し、水和させることによってコンタクトレンズを得ることができる。生理食塩水としては、ホウ酸緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水を使用してもよい。これらの生理食塩水は、ソフトコンタクトレンズ用保存液に使用されているので、重合体をソフトコンタクトレンズ用保存液に浸漬して水和させてもよい。これらの生理食塩水の浸透圧は250~400mOsm/kgが好ましい。
【0042】
<本発明のコンタクトレンズの特性>
本発明のコンタクトレンズは、酸素透過係数Dkが50×10-11(cm2/sec)・(mLO2 / mL×mmHg)以上であることが好ましい。下記表1に記載から明らかなように、これらの範囲であれば、本発明の効果を奏することができる。
【0043】
本発明のコンタクトレンズにおいて、「非常に良好な親水性」とは、数値は特に限定されないが、好ましくは実施例で詳述するWBUT(water film break up time)の評価において10秒以上であることを意味する。
「非常に良好な含水率」とは、数値は特に限定されないが、好ましくは実施例で詳述する含水率の評価において40%以上~55%以下であることを意味する。
「非常に良好な酸素透過性」及び「良好な酸素透過性」とは、数値は特に限定されないが、好ましくは実施例で詳述する酸素透過性測定において、それぞれ、酸素透過係数が「70以上」及び「50以上~70未満」であることを意味する。
「非常な良好なコーティング性」及び「良好なコーティング性」とは、数値は特に限定されないが、好ましくは実施例で詳述する防汚性の評価において、それぞれ、「0.05未満」及び「0.05以上~0.10未満」であることを意味する。
【実施例0044】
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。まず、実施例及び比較例で用いた組成物の成分を以下に示す。
【0045】
(A);ホスホリルコリン基含有モノマー
MPC;(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスホリルコリン
(B);ホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマー
・SiPC1:式(2-1){a=6}の化合物
・SiPC2:式(2-1){a=19}の化合物
・SiPC3:式(2-1){a=34}の化合物
(C);シリコーンモノマーと
・ETS:式(9)の化合物
・SiGMA:式(10)の化合物
・MCR-M11:式(11)の化合物
・TRIS:式(12)の化合物
(D);水酸基含有親水性モノマー
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・HBMA:2-ヒドロキシブチルメタクリレート
(E);アミド基含有親水性モノマー
・NVP:N-ビニルピロリドン
(F);架橋剤
・TEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート
・TMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート
(G);重合開始剤
・AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)
・I-819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド
(I);溶剤
・EtOH:エタノール
・NPA:1-プロパノール(ノルマルプロパノール)
【0046】
[合成例1-1]式(2-B){a:6}で表される中間化合物の合成
メタクリル酸3-(クロロジメチルシリル)プロピル 10.8g(49.4mmol)を、テトラヒドロフラン 43.6gに溶解させて、水酸化リチウム 2.36g(98.5mmol)を添加した。30分経過後、ヘプタン 43.6gを添加して加圧ろ過を行い、不溶物を取り除いた。(この反応により、ビニル基を有するシラノール基含有化合物を得た。)
前記加圧ろ過のろ液に、テトラヒドロフラン 71.2gを添加して、ヘキサメチルシクロトリシロキサン 22.0g(98.8mmol)を添加した。続いて、触媒溶液(別のフラスコで、ジアザビシクロウンデセン0.74gをテトラヒドロフラン7.52gに溶解させて調製した)全量を添加した。4時間経過後、トリエチルアミン 6.60gを添加し、クロロジメチルシラン 5.14gを添加して反応を停止させた。
反応後の溶液をエバポレーターにて濃縮して、ヘプタンで希釈したのちにイオン交換水を用いて洗浄した。ヘプタン層を回収して、硫酸ナトリウムを用いて脱水を行い、最後にエバポレーターにて濃縮することで、式(2-B){a:6}で表される中間化合物を26.2g得た。
【0047】
【0048】
[合成例1-2]式(2-B){a:19}で表される中間化合物の合成
合成例1-1と同様の手法で、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの仕込み量を変更させることで、式(2-B){a:19}で表される中間化合物を得た。
【0049】
[合成例1-3]式(2-B){a:34}で表される中間化合物の合成
合成例1-1と同様の手法で、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの仕込み量を変更させることで、式(2-B){a:34}で表される中間化合物を得た。
【0050】
[合成例2-1]式(2-1){a:6}で表される化合物の合成
合成例1-1にて得られた式(2-B){a:6}で表される化合物 3.00g、2-(2-プロペニルオキシ)エチル-2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート(WO2019/194264等に記載の合成方法によって得られる) 1.36gを2-プロパノール 5.40g、ヘプタン3.00gに溶解させたのちに、4重量%の2-プロパノール溶液に調整したヘキサクロロ白金酸六水和物(東京化成工業社製) 55μL加えて75℃で4時間ヒドロシリル化反応を行った。活性炭を0.01g加えて30分間攪拌を行い、加圧ろ過で活性炭を取り除いた。
イオン交換水 18.0g、エタノール 6.00g、酢酸エチル24.0g、ヘプタン 12.0gを混合し、攪拌した。静置後2層に分離し、下層を廃棄した。その後さらに、イオン交換水、酢酸エチルで精製を行った後に、エバポレーターにて濃縮を行い、透明の粘性物 5.0gを得た。
1H NMR分析により式(2-1){a:6}であることが確認された。
【0051】
合成例2-1の1H NMR分析の帰属結果を以下に示す。
1H N M R (DMSO-d6) : δ = 0.0ppm(Si-CH
3
)、0.5ppm(Si-CH
2
-)、1.5~1.8ppm(-CH2-CH
2
-CH2-)、1.9ppm(-C-CH3)、3.2ppm(N-CH
3
)、3.3~3.8ppm(O-CH
2
-、N-CH
2
-)、4.0~4.5ppm(C(=O)-O-CH
2
-、-P-O-CH
2
-)、5.6ppm,6.1ppm(CH
2
=C-)
【0052】
[合成例2-2]式(2-1){a:19}で表される化合物の合成
合成例1-2で得られた式(2-B){a:19}で表される中間化合物を用いた以外は合成例2-1と同様に合成した。
1H NMR分析により式(2-1){a:19}であることが確認された。
【0053】
合成例2-2の1H NMR分析の帰属結果を以下に示す。
1H N M R (DMSO-d6) : δ = 0.0ppm(Si-CH
3
)、0.5ppm(Si-CH
2
-)、1.5~1.8ppm(-CH2-CH
2
-CH2-)、1.9ppm(-C-CH3)、3.2ppm(N-CH
3
)、3.3~3.8ppm(O-CH
2
-、N-CH
2
-)、4.0~4.5ppm(C(=O)-O-CH
2
-、-P-O-CH
2
-)、5.6ppm,6.1ppm(CH
2
=C-)
【0054】
[合成例2-3]式(2-1){a:34}で表される化合物の合成
合成例1-3で得られた式(2-B){a:34}で表される中間化合物を用いた以外は合成例2-1と同様に合成した。
【0055】
合成例2-3の1H NMR分析の帰属結果を以下に示す。
1H N M R (DMSO-d6) : δ = 0.0ppm(Si-CH
3
)、0.5ppm(Si-CH
2
-)、1.5~1.8ppm(-CH2-CH
2
-CH2-)、1.9ppm(-C-CH3)、3.2ppm(N-CH
3
)、3.3~3.8ppm(O-CH
2
-、N-CH
2
-)、4.0~4.5ppm(C(=O)-O-CH
2
-、-P-O-CH
2
-)、5.6ppm,6.1ppm(CH
2
=C-)
【0056】
<各評価方法>
各評価項目について説明する。本発明外である各比較例の組成物、重合体、コンタクトレンズも、実施例と同様、単に、組成物、重合体、コンタクトレンズと称する。
【0057】
[a.組成物の透明性]
目視により透明性を以下の基準で評価した。スコアが低いものほど、透明性が良好であることを示している。
透明 :スコア「0」
半透明 :スコア「1」
白濁 :スコア「2」
【0058】
[b.コンタクトレンズの透明性]
本発明のコンタクトレンズの厚みが100±30μmとなるように作製し、目視により透明性を以下の基準で評価した。スコアが低いものほど、透明性が良好であることを示している。
透明 :スコア「0」
半透明 :スコア「1」
白濁 :スコア「2」
【0059】
[c.WBUT]
コンタクトレンズの濡れ性はWBUT(Water-film Break Up Time)で評価した。ピンセット等を用いて、コンタクトレンズを生理食塩水中からゆっくり取り出し、水膜が切れるまでの時間を測定した。これをWBUTとし、以下の基準で評価した。スコアが低いものほど、コンタクトレンズの濡れ性(親水性)が良好であることを示している。
10秒以上 :スコア「0」
5秒以上、10秒未満 :スコア「1」
5秒未満 :スコア「2」
【0060】
[d.含水率]
コンタクトレンズの含水率は、ISO-18369-4に記載の方法で含水率を測定し、以下の基準で評価した。スコアが低いものほど、含水率が良好であることを示している。
40%以上、55%以下 :スコア「0」
30%以上、40%未満又は55%超、60%以下 :スコア「1」
30%未満、60%超 :スコア「2」
【0061】
[e.酸素透過係数]
コンタクトレンズの酸素透過係数は、ISO18369-4に記載の手法に従って測定し、以下の基準で評価した。
スコアが低いものほど、酸素透過係数が良好であることを示している。詳しくは、ISO18369-4に記載のポーラログラフィー法による測定方法に従い、酸素透過係数を測定した。測定にはRehderDevelopmentCompany社のO2 PermeometerModel 201Tを用いた。 レンズの厚さをx軸に、測定により求められた電流値の逆数をy軸にプロットし、回帰線の傾きの逆数から酸素透過係数を算出した。なお、酸素透過係数の単位(barrer)は×10-11(cm2/sec)/(mLO2/(mL×mmHg))である。
70以上 :スコア「0」
50以上、70未満 :スコア「1」
50未満 :スコア「2」
【0062】
[f.防汚性]
防汚性の評価として、以下に示す手順でコーティング性を評価した。
〇コーティング性評価方法
スーダンブラックB0.05gをトコフェロール10gに溶解させ、流動パラフィン40gを加えて均一に混合した。これを染色液とした。評価用レンズをガラスバイアルから取り出し、レンズ表面の水分を拭き取り、1mLの染色液に5分間浸漬させた。コンタクトレンズを取り出し、余分な染色液は生理食塩液と生理食塩液で湿らせた正常な布で除去した。染色液で染色したコンタクトレンズを生理食塩液1.5mLに浸漬し、600nmの吸光度を測定した。染色前のコンタクトレンズの吸光度をA0、染色後のコンタクトレンズの吸光度をA1とした。
以下の式(A)に従い、染色により増加した吸光度を算出し、以下の判定基準に基づいてスコア化し、コーティング性を評価した。
スーダンブラックBは疎水性であり、疎水性物質に吸着するため、疎水性のレンズ表面や疎水性のスポットで吸着されやすい。そのため、吸光度が低くなる、つまりスコアが低いほど、レンズ表面が親水性の重合体でコーティングされており、コーティング性が良好であることを示している。
吸光度=A1-A0 ・・・式(A)
0.05未満 :スコア「0」
0.05以上、0.10未満 :スコア「1」
0.10以上、0.20未満 :スコア「2」
0.20以上 :スコア「3」
【0063】
[実施例1]
MPC 0.50g(10.0質量%)、合成例2-1の化合物 2.00g(40.0質量%)、SiGMA 1.00g(20.0質量%)、HBMA 1.10g(22.0質量部)を容器中で混合し、室温下で、MPCが溶解するまで撹拌した。さらに、NVP 0.375g(7.0質量%)、TEGDMA 0.025g(1.0質量%)、AIBN 0.025g(0.5質量部)を容器に添加し、室温下で、均一になるまで撹拌して組成物を得た。
組成物を、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートシートをスペーサーとして2枚のポリプロピレン板の間に挟みこんだ25mm×70mm×0.1mmのセル内に充填した。組成物を充填したレンズ成形型を、オーブンに入れ、オーブン内を窒素置換した。次いで、オーブン内を80℃まで昇温し、80℃で12時間維持することで組成物を重合させて重合体を作製した。各重合体をレンズ成形型から取り出し、コンタクトレンズ形状の重合体を得た。重合体を50質量%2-プロパノール水溶液100mLに4時間浸漬後、イオン交換水100mLに4時間浸漬して未反応物等を除去して精製した。精製後の重合体を、ISO-18369-3に記載の生理食塩水中に浸漬し、膨潤(水和)させて、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを調製した。コンタクトレンズを上記各評価に適するサイズおよび形状に分割し、各評価を行った。組成物中の各成分の配合割合、重合条件、および各評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例2~4]
組成物中の各成分の配合割合、および重合条件を表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを調製した。各実施例のコンタクトレンズについて実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
なお、実施例4に関し、UV-LED照射器(照射光波長 405nm)で室温下、1.5mW/cm2の放射照度で、30分間UV照射することで組成物を重合させて重合体を得た。
【0065】
[比較例1~4]
組成物中の各成分の配合割合、および重合条件を表2に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして、実施した。各比較例のコンタクトレンズについて実施例1と同様に評価した。組成物中の各成分の配合割合、重合条件、および各評価結果を表2に示す。
比較例1は、実施例とは異なり、ホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマーを含まず、かつ、アミド基含有親水性モノマーの含有量が高い。なお、組成物の透明性の評価が「2」であったので、以後の重合体の作製はしていない。
比較例2は、実施例とは異なり、ホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマーを含まない。なお、重合体の透明性の評価が「2」であったので、以後のWBUT等の評価を行っていない。
比較例3は、実施例とは異なり、ホスホリルコリン基含有シリコーンマクロマーの含有量が低い。
【0066】
【0067】
【0068】
[実施例の評価]
表1の評価結果を以下で説明する。
実施例1~実施例4は、いずれも組成物均一性評価にて「0」、重合物透明性評価にて「0」のスコアが与えられたことから、本発明の組成物及び重合物は、親水性モノマーや親水性ポリマーとの非常に良好な相溶性を示した。
実施例1~実施例4は、いずれも濡れ性(親水性)評価にて「0」のスコアが与えられたことから、本発明のコンタクトレンズは非常に良好な親水性を示した。
実施例1~実施例4は、いずれも含水率評価にて「0」のスコアが与えられたことから、本発明のコンタクトレンズは非常に良好な含水率を示した。
実施例1~実施例3は、いずれも酸素透過性にて「0」のスコアが与えられ、実施例4は、「1」のスコアが与えられた。本発明のコンタクトレンズは、非常に良好又は良好な酸素透過性を示した。
実施例1、実施例2及び実施例4は、いずれも防汚性評価にて「0」のスコアが与えられ、実施例3は、「1」のスコアが与えられた。本発明のコンタクトレンズは、非常に良好又は良好な防汚性(コーティング性)を示した。
以上の結果より、本発明のコンタクトレンズは、表面処理なしで、非常に良好な親水性、非常に良好な含水率、非常に良好又は良好な酸素透過性、並びに、非常に良好又は良好な防汚性(コーティング性)を同時に示すことにより、優れた装用感を装用者に提供することができる。
【0069】
[比較例の評価]
比較例3は、濡れ性(親水性)評価にて「3」のスコア及び防汚性(コーティング性)評価にて「2」のスコアが与えられたことから、比較例3のコンタクトレンズは親水性及び防汚性(コーティング性)を示さなかった。
本発明は、コンタクトレンズ用モノマー組成物、並びに、該組成物から得られた非常に良好な表面の親水性、非常に良好な含水率、良好なコーティング性及び良好な酸素透過性を同時に示し得るコンタクトレンズを提供することができる。