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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042720
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】豆臭の原因物質の除去方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/30 20160101AFI20240322BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20240322BHJP
   F26B 9/06 20060101ALI20240322BHJP
   B01D 53/38 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A23L11/30
A23L11/00 Z
F26B9/06 Z
B01D53/38 120
B01D53/38 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147482
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(71)【出願人】
【識別番号】598036311
【氏名又は名称】相模屋食料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】江原 寛一
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 智香子
(72)【発明者】
【氏名】恩田 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬賀 悟史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶行
(72)【発明者】
【氏名】吉野 功
【テーマコード(参考)】
3L113
4B020
4D002
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AC07
3L113BA24
3L113CA08
3L113DA30
4B020LB27
4B020LC01
4B020LG07
4B020LP03
4B020LP11
4D002AA32
4D002AB02
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA04
4D002CA06
4D002CA07
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA05
4D002DA06
4D002DA11
4D002DA12
4D002DA33
4D002DA35
4D002DA41
4D002DA45
4D002DA46
4D002DA70
4D002GA01
4D002GB11
4D002HA03
(57)【要約】
【課題】 豆腐製造時に副生するおからにはヘキサナールなどの豆臭原因物質が含まれるため、おからを樹脂に混練した場合、豆臭によって混練機や成形機周辺の作業環境も悪化する懸念がある。現状、おからから豆臭を除去する方法には有機溶媒への浸漬が挙げられるが、揮発性有機溶媒の排気設備の設置、おから浸漬後の有機溶剤の適切な廃液処理も必要となる。また、樹脂に有機溶媒が混入した場合には成形品の物性に影響する懸念がある。
【解決手段】 おからに不活性ガスなどの減圧環境下、適度な温度および時間熱処理することでおからに含まれる豆臭原因の物質を除去する。さらに、熱処理部より排出される豆臭は捕捉液や吸収材により捕捉することで外気へ豆臭が放出されることもない。これにより、有機溶剤などを使用することなく、おからに含まれる豆臭を除去でき、本発明が循環型社会における樹脂やおからのリサイクルに十分貢献できる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆腐製造において発生したおからを、低酸素雰囲気下のもと、かつ100℃以上ないし180℃以下で、10分以上ないし60分以内で加熱する低酸素雰囲気の熱処理工程を通過させる豆臭原因物質の除去方法。
【請求項2】
前記低酸素雰囲気の熱処理工程における熱処理温度が、140℃以上ないし180℃以下の場合には熱処理時間が10分以上ないし30分以下、熱処理温度が100℃以上ないし140℃未満の場合には熱処理時間が30分以上ないし60分以下である請求項1に記載の豆臭原因物質の除去方法。
【請求項3】
前記低酸素雰囲気が、不活性ガス雰囲気下であり、線速度を1.3m/h以上ないし67m/h以下で流通させる請求項1に記載の豆臭原因物質の除去方法。
【請求項4】
前記低酸素濃度の熱処理工程で発生した豆臭を、捕捉液入り容器に回収する工程を通過させる請求項1に記載の豆臭原因物質の除去方法。




















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はおからの豆臭の原因物質を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐製造の工程で生成されるおからは、一部が食品、飼料、肥料といった用途でリサイクルされている。しかし、その多くは廃棄処分されているのが現状である。このため、例えば、熱硬化性あるいは熱可塑性樹脂と、おからとを150℃前後で加熱しながら攪拌混合した後、任意の成形方法で成形する方法が特許文献1で提案されている。
【0003】
このように、食品バイオマスの一種であるおからを樹脂フィラーとして活用し、樹脂成形品に占める樹脂割合を低減するだけでなく、例えば樹脂成形品の外観や強度、吸湿性といった特性を制御することも可能となる。
【0004】
しかしながら、おから混練樹脂ペレット作製時やおから混練樹脂ペレットを用いた成形を行う時に、豆臭と呼ばれる不快臭が発生する。これにより成形品に豆臭が付着し、製品としての価値が低下するだけでなく、作業環境の観点からみても好ましくないといった課題がある。このため、おから混練樹脂製品を製造する前におからに含まれる豆臭を除去することが不可欠である。
【0005】
豆臭の主成分は大豆油に多量に含まれるリノール酸の酸化により生成されるn-ヘキサナールのようなアルデヒド化合物である。このようなおからに含まれる豆臭を除去する方法として特許文献2に示すように、おからを100℃以上の常圧過熱水蒸気で30分以上乾燥し、更に二次乾燥として180℃以下の空気を主体とする熱風で乾燥する方法が提案されている。
【0006】
なお、この方法によれば、おからに含まれる豆臭を除去できるだけでなく、おからの殺菌や不飽和脂質を酸化して臭気を発生させるリポキシゲナーゼを失活させることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-145055号
【特許文献2】特開2002-355002号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載された方法では、おからを空気雰囲気下で加熱するため、おから主成分である炭水化物が分解し、熱処理後のおからは濃茶や黒色に変色してしまう。また、大豆油成分そのものが酸化し、劣化が促進され、熱処理後もおからに豆臭原因物質が残存する懸念もある。そこで、本発明は上述の課題を解決し、おからの二次利用を促進できるように、大豆油の含有量をあまり変化させることなく、発生する豆臭の原因物質を除去する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成させるための手段1は、
上述のような先行技術の課題を解決しようとするものであり、酸素がほとんど存在しない低酸素濃度雰囲気下の環境で、おからを100℃以上ないし180℃以下の温度域で、10分以上ないし60分以内で加熱する低酸素雰囲気の熱処理工程を通過させる豆臭の原因物質を除去する方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、豆腐の製造において、発生するおからの二次利用の妨げになる豆臭を、大豆油の含有量をほとんど変化させることなく残存させ、おからの豆臭の原因物質を除去する方法を提供することができる。
【0011】
(課題を解決するためのその他の手段)
上記目的を達成させるための手段2は、
手段2として、豆腐製造において、発生するおからを、低酸素濃度下となる具体的な手段である不活性ガス流通下や減圧雰囲気下で、140℃以上ないし180℃以下の場合、熱処理時間を10分以上ないし30分以下とする。また、熱処理時間が100℃以上ないし140℃未満の場合、熱処理時間を30分以上ないし60分以下とする。温度が高ければそれに反比例して時間を短くすることが可能である。このような不活性雰囲気の加熱工程や減圧雰囲気下の加熱工程を通過させ、豆臭の原因物質を除去する方法を提供することである。このような不活性ガス流通下または減圧流通下は低酸素雰囲気下なので、酸素との反応がほとんどない中でn-ヘキサナールのようなアルデヒド化合物を気化させることが可能になる。そうすることにより、大豆油を含んだまま豆臭のない乾燥したおからとすることができるのである。このようなおからであれば、合成樹脂材料であるペレットの青臭みがなく、樹脂との親和性の高い大豆油含有の増量剤として利用が可能になる。しかも、親和性を向上するため相溶化剤を添加する必要がなく、安価な増量材料とすることが可能である。
【0012】
さらに、雰囲気中に酸素がほとんど存在しないため、おから主成分である炭水化物の熱分解も抑制できる。また、おからの熱重量曲線(図1)からも、融点が180℃以下の樹脂に混練する場合であれば、おから混練樹脂ペレットの調製やおから混練樹脂ペレットを用いた場合の成形時におからの変色を抑制できることが分かる。
【0013】
また、手段1の下位概念である手段2の豆臭の原因物質を除去する方法の使用により得られたおからであれば、青臭みをなくすための組み合わせでなくても、パン製品、練製品あるいは肉製品などへ、吸水性や分散性の素材あるいはアミノ酸含有材料として需要を喚起できる素材としても利用が可能になる。
併せて、本発明によれば生おからの乾燥、殺菌、さらには豆臭発生に関与する酵素であるリポキシゲナーゼを失活させることも可能なため、おからの長期保存も可能となる。
【0014】
上記目的を達成させるための手段3は、
上述の手段1の低酸素雰囲気が、不活性ガス雰囲気下とした場合、その線速度を1.3m/h以上ないし67m/h以下で流通させることにより、効率よく意図通りの豆臭の原因物質を取り除くことが可能となる。不活性ガスの流通速度を1.3m/hから67m/hという広い範囲で可能となるので、制御しやすい装置とすることが可能となる。
【0015】
上記目的を達成させるための手段4は、
上述の手段1で発生した豆臭の原因物質を捕捉液に回収する工程を有する豆臭の原因物質を除去する方法である。この場合、低酸素濃度下、すなわち、不活性ガス流通下で加熱した場合、おからから揮発する豆臭の原因物質は不活性ガスとともに排出する。あるいは減圧条件下で加熱した場合、おからから揮発する豆臭の原因物質は、わずかな加熱空気ガスとともに排出し回収する方法を提供する。こうすることにより、手段1に付随させる工程の装置として、周囲に青臭の原因物質を放出することなく回収することができる。すなわち、周囲の空間を汚染させない方法として機能させることができる。
【0016】
上記目的を達成させるための手段5は、
上述の手段2の不活性ガスが、たとえば、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、二酸化炭素から選択された一種以上を主成分とする上述の手段1に記載された豆臭除去方法である。こうすることにより、二次利用しようとするおからから豆臭を除去したおからとすることができる。また、上述した同様の方法で、豆臭を含む排出ガスを回収させることが可能でもある。万一、選択した不活性ガスが不足した場合、他の不活性ガスの中から選択して混合不活性ガスとして、供給することが可能であり、手短な不活性ガスを選択することが可能なのである。
【0017】
上記目的を達成させるための手段6は、
上述の手段4の発生した豆臭を捕捉液に回収することができるのである。すなわち、その工程の捕捉液が、水やクロロホルム-メタノール混合液といった豆臭の原因物質の捕捉液や、活性炭やゼオライトといった豆臭の原因物質の吸着材に接触させることにより、外気中に豆臭の原因物質が放散されないようにする回収する方法をとることができる。すなわち、本発明の方法を可能にする設備を付設することにより、持続可能性の高い方法とし機能するようにできる。
【0018】
上記目的を達成させるための手段7は、
上述の手段1や2における減圧加熱工程において、真空ポンプのベント部分に上記豆臭の原因物質の捕捉液や豆臭の原因物質の吸着材を設置する方法により、外気中に豆臭が放散されないようにすることが可能であり、持続可能性の高い方法として提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】おからの熱重量曲線を示した図である。
図2】不活性ガス環境下でおからに含まれる豆臭の原因物質を除去する熱処理装置を模式的に示した図である。
図3】不活性ガス環境下でおからに含まれる豆臭の原因物質を除去し、なおかつ、不活性ガスとともに排出される豆臭の原因物質について、捕捉液を用いて外気へ放出させないような熱処理装置を模式的に示した図である。
図4】不活性ガス環境下でおからに含まれる豆臭の原因物質を除去し、なおかつ不活性ガスとともに排出される豆臭の原因物質について、吸着材を用いて外気へ放出させないような熱処理装置を模式的に示した図である。
図5】減圧環境下でおからに含まれる豆臭の原因物質を除去し、なおかつ、不活性ガスとともに排出される豆臭の原因物質については捕捉液を用いて、外気へ放出させないような熱処理装置を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、好ましい発明の実施態様の一例を記載するものであり、特許請求の範囲に記載された本発明の構成要件を限定するものではない。
【0021】
(おからの性状)
豆腐製造時、豆乳を分離する工程で大豆は細かく粉砕され、粉粒体形状のおからが発生する。また、このおからの形状は、本発明の熱処理により変化することはない。
【0022】
(おからの大きさ)
おからの平均粒形は10μm以上ないし1000μm未満が好ましく、50μm以上ないし500μm未満がより好ましく、70μm以上ないし200μm未満が最も好ましい。おからの平均粒形が10μm未満の場合には加熱時に飛散しやすくなり、操作性が低下する懸念がある。また、おからの平均粒形が1000μmよりも大きい場合、おからに含まれる豆臭の原因物質の成分が揮発するのに時間がかかり、十分に除去できない可能性があるためである。必要に応じて、おからの平均粒形を上述の範囲に整えるために、粉砕工程や篩工程を通過させることができる。
【0023】
(おからに含まれる油分割合)
おからに含まれる油分は、樹脂との相溶性を向上させ、均一な混練をするために不可欠である。このため、おからの油分含有率は1重量%以上ないし20重量%以下が好ましく、7重量%以上ないし15重量%以下がより好ましく、11重量%以上ないし13重量%以下が最も好ましい。おからの油分含有率が1重量%未満の場合には樹脂と混練する場合、混練が不均一となり、成形性が低下する懸念がある。また、おからの油分含有率が20重量%より多い場合、加熱処理中におからから油分がブリードし、混練機などの機械装置の腐食原因となる懸念があるためである。万一、おからに含まれる油分量が不足していれば、豆油を追加すればよい。多すぎるようなことがあれば、洗い落とすクロロホルムやメタノールなど有機溶剤や熱水などの洗浄工程を通せば良い。一般的に、豆腐の製造で発生されるおからの油分量は、使用する大豆や豆腐の製造工程での差が生ずるものの、10~20重量%前後なので、調整する必要性は、ほとんどないものと思われる。
【0024】
(低酸素雰囲気における熱処理工程前のおからに含まれる水分率)
熱処理に供するおからの水分率は85重量%未満であることが好ましく、50重量%未満がより好ましく、15重量%未満が最も好ましい。おからの水分率が3重量%未満の場合、混合時に飛散し、混合割合のばらつきが大きくなる懸念がある。また、おからの水分率が85重量%よりも多い場合、加熱時の水蒸気発生量が多く、また熱処理時におから主成分である炭水化物の加水分解が促進される懸念があるためである。水分率の調整は、保管状態で変化するので、保管を長くしないで、本発明を適用後、すぐに使用することが好ましい。豆腐製造時の水分率は、50重量%前後である。乾きすぎの場合、霧吹き装置で水分調整をする。また、水分率が高すぎる場合、乾燥させればよい。
【0025】
なお、豆腐製造工程で発生したおからは、平均粒形が10μm以上ないし1000μm未満の範囲にあり、また、油分割合1重量%ないし以上20重量%以下の範囲にあり、さらに水分率85重量%未満であるため、実用上は豆腐の製造工程で発生したおからをそのまま低酸素雰囲気での加熱工程へ送ればよい。また、豆腐製造工程で発生したおからを予備乾燥し、水分率をある程度低下させてから低酸素雰囲気の熱処理工程へ移送することも可能である。
【0026】
(不活性ガスを用いた低酸素雰囲気における熱処理工程の概要)
(不活性ガスを用いた熱処理)
本発明における不活性ガス環境でのおから加熱装置を図2に示す。おから1の加熱工程は、不活性ガスが充填された不活性ガス充填高圧ガスボンベ2からおから1の配置された熱処理部3に、配管4を通じて不活性ガスが供給される。この時、配管4と熱処理部3は栓5により接続されており、配管4と熱処理部3との境界から不活性ガスが漏出することはない。不活性ガス充填高圧ガスボンベ2からの不活性ガスは、調圧弁6やマスフローコントローラー7により流量調整が可能となっている。熱処理部3に配置されたおから1は、電気炉8により加熱される。これにより豆臭の原因物質が加熱によって揮発化し、不活性ガスとともに出口ガス部から排出される。なお、熱処理部3内に配置されたおからの実温については、熱処理部3内に導入した熱電対9および温度表示器10により把握できる。
【0027】
(不活性ガスを用いた低酸素雰囲気熱処理工程における豆臭の原因物質除去の概要)
低酸素雰囲気における熱処理工程により、熱処理部3から排出されるヘキサナールやヘプタナールといった豆臭の原因物質は、そのまま外気に放出された場合、作業環境を損なうことや、成形品に豆臭の原因物質が付着する可能性が考えられる。そこで図3に示すように熱処理部3の後段にチューブ11を設置し、容器12に入った豆臭の原因物質の捕捉液13へ出口ガスを導入することで豆臭の原因物質が大気中に放出されないようにする。また、この時、豆臭の捕捉液13をウォーターバス14内の水15により冷却することで豆臭の原因物質の捕捉量を増加できる。また、豆臭の原因物質の捕捉液13の代わりに、図4に示すように活性炭やゼオライトといった豆臭の原因物質の吸着材16を容器12に入れても良い。
【0028】
(減圧による低酸素雰囲気の熱処理工程における豆臭の原因物質除去の概要)
本発明における、減圧環境でのおから加熱装置を図5に示す。おから1の加熱工程は、栓5を取り外しておから1を熱処理部3内に設置した後、栓5を設置し、さらにバルブ17を閉めた状態で真空ポンプ18aで熱処理部3内を減圧にしながら電気炉8で加熱する。電気炉8により加熱されることにより豆臭の原因物質が熱によって揮発し、真空ポンプのベント部分18bより熱処理部3の外部へ排出される。なお、熱処理部3内に設置されたおからの実温については、熱処理部3内に導入した熱電対9および温度表示器10により把握できる。なお、減圧となった熱処理部3内を常圧に戻す場合にはバルブ17を開ければ良い。
【0029】
(減圧による低酸素雰囲気の熱処理工程後における豆臭原因物質回収の概要)
熱処理部3より排出される豆臭の原因物質がそのまま外気に放出されないようにするには、図5に示すように真空ポンプのベント部分17bにチューブ11を設置し、容器12に入った豆臭の原因物質の捕捉液13へ出口ガスを導入することで豆臭の原因物質をおからから除去することができる。
【0030】
(低酸素雰囲気の熱処理工程における熱処理条件)
(熱処理部へのおからの配置量)
熱処理部3へのおからを配置する際、おからの嵩体積、樹脂の嵩体積および撹拌容器の容積との間には以下の数1式を満たすことが好ましい。なお、数1式中のV1およびVは、それぞれおからの嵩体積および熱処理部3の容積をそれぞれ表す。
【0031】
【数1】
【0032】
熱処理部3へのおからの配置量については、数1式の範囲が0.1以上0.8以下であることが好ましく、0.3以上0.6以下であることがより好ましく、0.4以上0.5以下であることが最も好ましい。数1式の数値が0.1未満の場合には熱処理部3の内壁などに付着する分の損失割合が多くなる。また、0.8より大きい場合には熱処理部3内が閉塞し、不活性ガスが流れなくなる懸念や、減圧環境下における豆臭原因物質の除去でも熱処理部3内のガスを全て排出するのが困難となる懸念があるためである。
【0033】
(熱処理部内におけるおからの温度)
熱処理部3内に設置されたおからの熱処理温度は、100℃以上ないし180℃以下が好ましく、120℃以上ないし160℃以下がより好ましく、145℃以上ないし155℃以下が最も好ましい。おからの熱処理温度が100℃未満の場合、豆臭の原因物質が十分に除去されない懸念がある。また、熱処理温度が180℃よりも高い場合、熱分解によりおからが変色し、また、分解生成ガスも発生するためである。
【0034】
(熱処理時間)
熱処理部3内に配
置されたおからの熱処理時間は、熱処理温度が140℃以上ないし180℃以下の場合、10分以上30分以下が好ましく、12分以上ないし25分以下がより好ましい。また、15分以上ないし20分以下が最も好ましい。おからの熱処理時間が10分未満の場合には豆臭の原因物質が十分に除去されない懸念がある。また、熱処理時間が30分よりも長い場合、熱分解によりおからの変色や分解生成ガスも発生が顕著となるためである。
【0035】
一方、熱処理温度が100℃以上ないし140℃未満の場合、30分以上ないし60分以下が好ましく、35分以上ないし55分以下がより好ましい。また、40分以上ないし50分以下が最も好ましい。おからの熱処理時間が30分未満の場合、豆臭が十分に除去されない懸念があり、また、熱処理時間が60分よりも長い場合、熱分解によりおからの変色や分解生成ガスの発生が顕著となるためである。
【0036】
(不活性ガスの種類)
不活性ガスを用いた低酸素雰囲気の熱処理工程において、流す不活性ガスの種類は窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、二酸化炭素が好ましく、窒素、アルゴン、二酸化炭素がより好ましく、窒素が最も好ましい。この窒素は高圧ガスボンベの他、空気中の窒素を分離する窒素発生装置により供給できるためである。
【0037】
(不活性ガスの線速度)
おから熱処理時における不活性ガスの線速度は1.3m/h以上ないし67m/h以下が好ましく、13m/h以上ないし40m/h以下がより好ましく、23m/h以上ないし27m/h以下が最も好ましい。不活性ガスの線速度が1.3m/h未満の場合には、おからから発生した豆臭の原因物質が熱処理部より十分に排出されない懸念があり、また67m/hを超える場合には、豆臭の原因物質除去の程度に大きな違いが見られず、産業技術上の意義が希薄になるためである。
【0038】
(熱処理部の材質)
熱処理部3の材質にはガラス、石英、セラミック、ステンレスおよびサーメットを用いることが好ましく、ガラス、石英、セラミックがより好ましく、ガラス、石英が最も好ましい。おからの熱処理では、ガラスや石英であれば腐食することが無く、なおかつ透明であるため、熱処理部3内部の様子を目視で確認できるためである。
【0039】
(減圧による低酸素雰囲気熱処理工程における熱処理部内の圧力)
減圧環境下で豆臭の原因物質を除去する場合、熱処理部3内の内圧は0.2気圧以下が好ましく、0.1気圧以下がより好ましく、0.05気圧以下が最も好ましい。熱処理部3内の内圧が0.2気圧よりも高くなると、おからに含まれる大豆油の分解が始まり促進されるようになる。その結果、新たに豆臭の原因物質が生成され、本発明の低酸素雰囲気の熱処理工程後もおからに豆臭原因物質が残存する懸念があるためである。
【0040】
(チューブの材質)
熱処理部3から豆臭の捕捉液13の入った容器12に排出ガスを導入するためのチューブ11の材質は、シリコン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム、ポリエチレン、ガラス、石英、ステンレスが好ましく、シリコン、PTFE、スチレン・ブタジエンゴム、ポリエチレンがより好ましく、PTFEが最も好ましい。PTFEはガスバリア性が高く、なおかつ柔軟性もあり、熱処理部3と容器12を接続する際に操作性に優れるためである。
【0041】
(栓の材質)
熱処理部3に設置する栓5の材質は、シリコン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム、ポリエチレン、ガラス、石英、ステンレスが好ましく、シリコン、PTFE、スチレン・ブタジエンゴム、ポリエチレンがより好ましく、PTFEが最も好ましい。PTFEはガスバリア性が高く、なおかつ柔軟性もあり、熱処理部3に取り付ける場合に、熱処理部3が破損しにくく操作性に優れるためである。
【0042】
(豆臭原因物質の回収の条件)
(豆臭捕捉液容器の材質)
容器12の材質にはガラス、石英、セラミック、ステンレスおよびサーメットを用いることが好ましく、ガラス、石英、セラミックがより好ましく、ガラス、石英が最も好ましい。おからの熱処理ではガラスや石英であれば腐食することが無く、なおかつ透明であるため、容器12内部の様子を目視で確認できるためである。
【0043】
(豆臭捕捉液の種類)
熱処理部3から排出される豆臭の原因物質をトラップすることを目的とした豆臭捕捉液13には、水、クロロホルム、四塩化炭素、クロロホルム-メタノール混合溶液、アセトン、ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテルが好ましく、水、クロロホルム、四塩化炭素、クロロホルム-メタノール混合溶液がより好ましく、水が最も好ましい。水は取り扱いが最も容易で、比熱が最も高く、熱処理部3からの排出ガスに接触しても昇温しにくいためである。なお、豆臭の原因物質の捕捉液13にはいずれか1種類を選択して使用しても良いし、複数種類を混合して使用しても良い。
【0044】
(豆臭の原因物質の吸収材の種類)
図3に示すように豆臭の原因物質回収の捕捉液13の代わりに、図4に示すように豆臭の原因物質の吸着材16を用いて豆臭の原因物質を除去することも可能である。この時、豆臭の原因物質の吸着材16には活性炭、ゼオライト、シリカ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが好ましく、活性炭、ゼオライト、シリカ、酸化カルシウム、水酸化カルシウムがより好ましく、活性炭が最も好ましい。これは活性炭が中性で取り扱いが比較的容易であり、かつ豆臭の原因物質の吸着能が高いためである。
【0045】
(捕捉液を用いた豆臭の原因物質の回収時の温度)
豆臭の原因物質の捕捉液13を用いて豆臭の原因物質を除去する際、容器12内の温度については0℃以上ないし30℃以下が好ましく、10℃以上ないし25℃以下がより好ましく、15℃以上ないし20℃以下が最も好ましい。容器12内の温度が0℃未満の場合、熱処理部3からの排出ガスに含まれる水分が凝固し、配管が閉塞する懸念があり、また30℃より高い場合には豆臭の原因物質の揮発により回収効率が低下する懸念があるためである。
【0046】
(豆臭の原因物質吸着材を用いた豆臭の原因物質の回収時の温度)
豆臭の原因物質の吸着材16を用いて豆臭を除去する際、容器12内の温度は、0℃以上ないし50℃以下が好ましく、10℃以上ないし35℃以下がより好ましく、20℃以上ないし25℃以下が最も好ましい。容器12内の温度が0℃未満の場合、熱処理部3からの排出ガスに含まれる水分が凝固し、配管が閉塞する懸念があり、また50℃より高い場合には豆臭吸着材16から豆臭の原因物質が脱離しやすく、十分に豆臭の原因物質を回収できなくなる懸念があるためである。
【0047】
以下に、好ましいおからの低酸素雰囲気の熱処理工程および豆臭原因物質の回収方法についての実施例を示し、より詳細に説明する。なお、実験設備による実施例は発明を詳細に説明するためのものであり、本発明を限定的に解釈するものではない。
〔実施例1〕
【0048】
(おから)
本実施例で用いたおからは、80℃に設定した乾燥機内に設置し、水分率が10重量%としたものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は102μmだった。さらに、おからに含まれる油分量を日本食品標準成分表分析マニュアルに記載のクロロホルム・メタノール混液抽出法に準拠して行ったところ10.2重量%だった。
【0049】
(おからの熱処理条件)
本実施例のおから15gを図3に示すように熱処理部3に配置した。なお、熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vによる計算結果は0.45だった。その後、不活性ガスとして窒素を線速度26.5m/hで供給しながら電気炉8により熱処理温度150℃で15分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスはチューブ11を通じて豆臭の原因物質の捕捉液13として蒸留水500mlの入った容器12に通じた。また、容器12内は水15を入れたウォーターバス14により20℃に保持した。
【0050】
(熱処理したおからの外観評価)
熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行った。なお、外観指標が4以上の場合、「適」と評価した。
【0051】
【表1】
【0052】
その結果、本実施例により熱処理したおからの外観評価は5だった。
【0053】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
種々の条件で熱処理を行った乾燥おからに含まれるヘキサナール分析には、試料2gを容量20mlのバイアル瓶に入れ、3mlの蒸留水を添加して密栓後、高橋らの方法(高橋仁恵、清水浩二、和田智史、宮下喜好;食品の保管条件と品質変化の検討、群馬県産業技術センター研究報告(2010))に準拠してヘッドスペース法によるGC/MS分析を行った。ヘッドスペースの加熱条件は、80℃、30分とし、測定にはGC/MS装置(ヘッドスペースサンプラー:HP7694、ガスクロマトグラフ:6980PlusGC、四重極型質量分析計:5973NMSD、アジレント製)を用いた。また、カラムにはキャピラリ管(DB-WAX 60m, 0.25mm φi.d、アジレント製)を使用し、カラムの昇温条件は35℃~240℃(昇温5℃/min)とした。なお、キャリヤーガスにはヘリウムを用いた。また、熱処理によるおからに含まれるヘキサナール除去については、以下の数2に示す式により除去率を算出した。
【0054】
【数2】
【0055】
この時、Rはヘキサナール除去率(%)を、M0は熱処理前のおから1gに含まれるヘキサナール量(μmol)を、Mは熱処理後のおから1gに含まれるヘキサナール量(μmol)をそれぞれ表す。なお、ヘキサナール除去率が50%より大きい場合には有意に豆臭を除去できたと考えられるため、「適」と評価した。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.7μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は0.6μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は89.5%だった。
【0056】
(熱処理による油分減少率)
また、熱処理によるおからに含まれる油分減少について評価するため、熱処理の前後のおからに含まれる油分割合を測定し、それを基に以下の数3に示す式により油分減少率を算出した。なお、油分減少率が20%以下の場合には、熱処理後でも相溶化剤を添加することなく樹脂と均一に混練できると考えられるため、「適」と評価した。
【0057】
【数3】
【0058】
この時、Dは油分減少率(%)を、A0は熱処理前のおからに含まれる油分含有割合量(重量%)を、Aは熱処理後のおからに含まれる油分含有割合量(重量%)をそれぞれ表す。その結果、本実施例により熱処理したおからの油分量は10.1重量%だった。このため、数3式により計算された油分減少率は1.0%だった。
【0059】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭の評価)
本実施例で得られたおから1gとポリプロピレン(日本ポリプロ製、ノバテック)1とを混練機(芝浦機械製、TEM-41SX)を用いて混練温度180℃で混練した時の豆臭について表2に基づき評価した。なお、豆臭指標は3以上で「適」と評価した。
【0060】
【表2】
【0061】
(おから混練樹脂の豆臭評価)
本実施例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は5だった。
【0062】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、ヘキサナール除去率、油分減少割合およびおから混練樹脂の豆臭評価いずれも基準に適合したため、本実施例の総合評価は適であった。
〔実施例2〕
【0063】
(おから)
本実施例で用いたおからは、80℃に設定した乾燥機内に配置し、水分率を3重量%に調整されたものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は90μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ10.3重量%だった。
【0064】
(おからの熱処理条件)
本実施例のおから10gを図3に示すように熱処理部3に配置した。なお熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vによる計算値は0.3だった。その後、不活性ガスとして窒素を線速度123.9m/hで供給しながら電気炉8により熱処理温度160℃で30分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の原因物質の吸収は、容器12内に水15を入れたウォーターバス14により25℃に保持した他は実施例1と同様の方法で行った。
【0065】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は4だった。
【0066】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本実施例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析に、実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.7μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は0.4μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は93.0%だった。
【0067】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を実施例1と同様の方法で測定したところ10.2重量%だった。このため、数3式により計算した結果の油分減少率は1.0%だった。
【0068】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は、実施例1と同様の方法で行った。その結果、本実施例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は5だった。
【0069】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、ヘキサナール除去率、油分減少割合およびおから混練樹脂の豆臭評価いずれも基準に適合したため、本実施例の総合評価は適であった。
〔実施例3〕
【0070】
(おから)
本実施例で用いたおからについては、80℃に設定した乾燥機内に設置し、水分率を20重量%としたものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は75μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ10.1重量%だった。
【0071】
(おからの熱処理条件)
本実施例のおから20gを図3に示すように熱処理部3に設置した。なお熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.6だった。その後、不活性ガスとしてアルゴンを線速度13.3m/hで供給しながら電気炉8により熱処理温度180℃で15分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の吸収は、捕捉液13をクロロホルムとし、また容器12内に水15を入れたウォーターバス14により10℃に保持した以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0072】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は4だった。
【0073】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本実施例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析に実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.6μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は0.5μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は91.1%だった。
【0074】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を実施例1と同様の方法で測定したところ9.5重量%だった。このため、数3式により計算した油分減少率は5.9%だった。
【0075】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は実施例1と同様の方法で行った。その結果、本実施例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は5だった。
【0076】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、ヘキサナール除去率、油分減少割合およびおから混練樹脂の豆臭評価いずれも基準に適合したため、本実施例の総合評価は適であった。
〔実施例4〕
【0077】
(おから)
本実施例で用いたおからは、80℃に設定した乾燥機内に配置し、水分率を9重量%に調整されたものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は75μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ10.4重量%だった。
【0078】
(おからの熱処理条件)
本実施例のおから3.3gを図3に示すように熱処理部3に配置した。なお、熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.1だった。その後、不活性ガスとして窒素を線速度1.3m/hで供給しながら電気炉8により熱処理温度100℃で30分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の原因物質の吸収は、容器12内を水15の入ったウォーターバス14により30℃に保持した以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0079】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0080】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本実施例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析に実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.8μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は2.7μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は52.6%だった。
【0081】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を実施例1と同様の方法で測定したところ10.2重量%だった。このため、数3により油分減少率は1.9%だった。
【0082】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は実施例1と同様の方法で行った。その結果、本実施例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は3だった。
【0083】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、ヘキサナール除去率、油分減少割合およびおから混練樹脂の豆臭評価いずれも基準に適合したため、本実施例の総合評価は適であった。
〔実施例5〕
【0084】
(おから)
本実施例で用いたおからについては、80℃に設定した乾燥機内に配置し、水分率を15重量%に調整したものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は50μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ9.9重量%だった。
【0085】
(おからの熱処理条件)
本実施例のおから27gを図3に示すように熱処理部3に配置した。なお熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.8だった。その後、不活性ガスとして窒素を線速度26.5m/hで供給しながら電気炉8により熱処理温度140℃で60分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の原因物質の吸収は実施例1と同様の方法で行った。
【0086】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0087】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本実施例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析を、実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても、実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.7μmolだった。これに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は2.4μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は58.6%だった。
【0088】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を、実施例1と同様の方法で測定したところ9.8重量%だった。このため、数3式により計算した結果の油分減少率は1.0%だった。
【0089】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は、実施例1と同様の方法で行った。その結果、本実施例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかった。このことから、豆臭の指標についての評価は3だった。
【0090】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、ヘキサナール除去率、油分減少割合およびおから混練樹脂の豆臭の評価は、いずれも基準に適合したため、本実施例の総合評価は適であった。
〔実施例6〕
【0091】
(おから)
本実施例で用いたおからは、豆腐製造工程で発生したおからをそのまま使用した。なお、おからの水分率は80重量%だった。また、おからを絶対乾燥し、光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は250μmだった。さらに、実施例1と同様の方法で、おからに含まれる油分量を測定したところ、10.2重量%だった。
【0092】
(おからの熱処理条件)
本実施例のおから16gを図3に示すように熱処理部3に配置した。なお熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1に示したV1/Vの計算結果の数値は0.5だった。その後、不活性ガスとして二酸化炭素を線速度66.3m/hで供給しながら電気炉8により熱処理温度150℃で25分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の原因物質の吸収は、捕捉液13を四塩化炭素とした以外は実施例1と同様の方法で行った。実施例1と同様の方法で行った。
【0093】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0094】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本実施例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析に実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても、実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は、5.7μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は0.5μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は91.2%だった。
【0095】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を、実施例1と同様の方法で測定したところ10.0重量%だった。このため、数3式により計算した結果の油分減少率は2.0%だった。
【0096】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は実施例1と同様の方法で行った。その結果、本実施例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は5だった。
【0097】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、ヘキサナール除去率、油分減少割合およびおから混練樹脂の豆臭評価は、いずれも基準に適合したため、本実施例の総合評価は適であった。
〔実施例7〕
【0098】
(おから)
本実施例で用いたおからを、80℃に設定した乾燥機内に配置し、水分率を10重量%に調整したものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は148μmだった。さらに、実施例1と同様の方法で、おからに含まれる油分量を測定したところ、10.2重量%だった。
【0099】
(おからの熱処理条件)
本実施例のおから15gを図3に示す装置の熱処理部3に配置した。なお熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.45だった。その後、不活性ガスとしてヘリウムを線速度26.5m/hで供給しながら、電気炉8により熱処理温度180℃で10分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の原因物質の吸収は、容器12内を水15の入ったウォーターバス14により15℃に保持した以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0100】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は、4だった。
【0101】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本実施例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析を、実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても、実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.5μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は0.8μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は85.5%だった。
【0102】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を、実施例1と同様の方法で測定したところ、9.9重量%だった。このため、数3式により計算した結果の油分減少率は2.9%だった。
【0103】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は、実施例1と同様の方法で行った。その結果、本実施例で得られたおから混練樹脂からは、豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は4だった。
【0104】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、ヘキサナール除去率、油分減少割合およびおから混練樹脂の豆臭評価いずれも基準に適合したため、本実施例の総合評価は適であった。
〔実施例8〕
【0105】
(おから)
本実施例で用いたおからは、80℃に設定した乾燥機内に配置し、水分率を20重量%に調整したものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は75μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ10.5重量%だった。
【0106】
(おからの熱処理条件)
本実施例のおから20gを図4に示す装置の熱処理部3に配置した。なお熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示されたV1/Vの計算結果は0.6だった。その後、不活性ガスとしてクリプトンを線速度39.8m/hで供給しながら電気炉8により、熱処理温度180℃で12分間、加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の原因物質の吸収は、固体吸収材16として活性炭(富士フィルム・和光純薬製、顆粒状)200gの入った容器12を用い、また、容器12内を水15の入ったウォーターバス14により20℃に保持した。
【0107】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0108】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本実施例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析に、実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても、実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.7μmolだった。これに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は、0.5μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は91.2%だった。
【0109】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を、実施例1と同様の方法で測定したところ、9.7重量%だった。このため、数3式により計算した結果の油分減少率は7.6%だった。
【0110】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は実施例1と同様の方法で行った。その結果、本実施例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は5だった。
【0111】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、ヘキサナール除去率、油分減少割合およびおから混練樹脂の豆臭評価いずれも基準に適合したため、本実施例の総合評価は適であった。
〔実施例9〕
【0112】
(おから)
本実施例で用いたおからを、80℃に設定した乾燥機内に配置した。そのおからの水分率は、10重量%のものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は94μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ10.3重量%だった。
【0113】
(おからの熱処理条件)
本実施例のおから15gを、図5に示すように熱処理部3に配置した。なお、熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は、0.45だった。その後、真空ポンプ17で熱処理部3内を減圧しながら電気炉8により熱処理温度150℃で30分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の原因物質の吸収は実施例1と同様の方法で行った。
【0114】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0115】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本実施例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析は、実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても、実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は、5.8μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は、0.6μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は89.7%だった。
【0116】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を実施例1と同様の方法で測定したところ10.1重量%だった。このため、数3式により計算した油分減少率は1.9%だった。
【0117】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は実施例1と同様の方法で行った。その結果、本実施例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は5だった。
【0118】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、ヘキサナール除去率、油分減少割合およびおから混練樹脂の豆臭評価いずれも基準に適合したため、本実施例の総合評価は適であった。
〔実施例10〕
【0119】
(おから)
本実施例で用いたおからは、80℃に設定した乾燥機内に配置し、水分率を50重量%に調整したものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は116μmだった。さらに、実施例1と同様の方法で、おからに含まれる油分量を測定したところ1、0.1重量%だった。
【0120】
(おからの熱処理条件)
本実施例のおから15gを図5に示すように熱処理部3に設置した。なお熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.45だった。その後、おからの熱処理は、熱処理温度を160℃とした以外は実施例9と同様の方法で行った。
【0121】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0122】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本実施例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析に実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても、実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.8μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は0.4μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は93.1%だった。
【0123】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を実施例1と同様の方法で測定したところ10.0重量%だった。このため、数3により油分減少率は1.0%だった。
【0124】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は、実施例1と同様の方法で行った。その結果、本実施例で得られたおから混練樹脂は、豆臭が感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は5だった。
【0125】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、ヘキサナール除去率、油分減少割合およびおから混練樹脂の豆臭評価いずれも基準に適合したため、本実施例の総合評価は適であった。
〔比較例1〕
【0126】
(おから)
本比較例で用いたおからを、80℃に設定した乾燥機内に配置した。そのおからの水分率が10重量%のものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は97μmだった。さらに、実施例1と同様の方法で、おからに含まれる油分量を、測定したところ10.0重量%だった。
【0127】
(おからの熱処理条件)
本比較例のおから15gを図3に示すように熱処理部3に配置した。なお、熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.45だった。その後、空気を線速度26.5m/hで供給しながら電気炉8により熱処理温度160℃で15分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の原因物質の吸収は、実施例1と同様の方法で行った。
【0128】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は1だった。
【0129】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本比較例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析に実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても、実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は、5.7μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は、2.4μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は57.1%だった。
【0130】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を実施例1と同様の方法で測定したところ、9.9重量%だった。このため、数3式により計算した油分減少率は1.0%だった。
【0131】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は実施例1と同様の方法で行った。その結果、本比較例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は4だった。
【0132】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価が基準を満たさなかったため、本比較例の総合評価は不適であった。これは熱処理時、熱処理部3内に空気を供給したことにより、おからが燃焼したためと考えられた。
〔比較例2〕
【0133】
(おから)
本比較例で用いたおからについては、80℃に設定した乾燥機内に配置した。そのおからは、水分率を10重量%にしたものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は75μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ10.1重量%だった。
【0134】
(おからの熱処理条件)
本比較例のおから15gを図3に示すように、熱処理部3に配置した。なお、熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.45だった。その後、不活性ガスとして窒素を線速度0.1m/hで供給しながら電気炉8により熱処理温度150℃で15分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の吸収は、実施例1と同様の方法で行った。
【0135】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は1だった。
【0136】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本比較例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析は、実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.7μmolだったのに対し、本比較例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は1.1μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は80.7%だった。
【0137】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を、実施例1と同様の方法で測定したところ10.0重量%だった。このため、数3式により計算した結果の油分減少率は1.0%だった。
【0138】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は、実施例1と同様の方法で行った。その結果、本比較例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は4だった。
【0139】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価が基準を満たさなかったため、本比較例の総合評価は不適であった。これは熱処理時、熱処理部3内への窒素導入量が少なく熱処理部3内に空気が混入したことにより、おからが燃焼したためと考えられた。
〔比較例3〕
【0140】
(おから)
本比較例で用いたおからは、80℃に設定した乾燥機内に配置した。そのおからの水分率は、10重量%に調整したものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は149μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ9.9重量%だった。
【0141】
(おからの熱処理条件)
本比較例のおから15gを図3に示すように、熱処理部3に配置した。なお、熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1に示したV1/Vは0.45だった。その後、不活性ガスとして窒素を線速度26.5m/hで供給しながら電気炉8により熱処理温度80℃で30分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の吸収は実施例1と同様の方法で行った。
【0142】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0143】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本比較例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析は、実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は、5.5μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は、5.4μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は1.8%だった。
【0144】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を、実施例1と同様の方法で測定したところ9.7重量%だった。このため、数3式により計算した結果の油分減少率は2.0%だった。
【0145】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は実施例1と同様の方法で行った。その結果、本比較例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は5だった。
【0146】
(総合評価)
以上の結果から、ヘキサナールの除去率が基準を満たさなかったため、本比較例の総合評価は不適であった。これは熱処理温度が低く、豆臭を除去できなったためと考えられた。
〔比較例4〕
【0147】
(おから)
本比較例で用いたおからは、80℃に設定した乾燥機内に配置し、水分率を10重量%に調整したものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は149μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ10.2重量%だった。
【0148】
(おからの熱処理条件)
本比較例のおから15gを図3に示すように熱処理部3に設置した。なお、熱処理部3において、おからを設置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.45だった。その後、不活性ガスとして窒素を線速度26.5m/hで供給しながら電気炉8により熱処理温度220℃で30分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の吸収は、実施例1と同様の方法で行った。
【0149】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は1だった。
【0150】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本比較例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析は、実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.6μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は、0.2μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は96.4%だった。
【0151】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を、実施例1と同様の方法で測定したところ、8.1重量%だった。このため、数3式により計算した結果の油分減少率は20.6%だった。
【0152】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は、実施例1と同様の方法で行った。その結果、本比較例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は4だった。
【0153】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価および油分減少率が基準を満たさなかったため、本比較例の総合評価は不適であった。外観評価については熱処理温度が高く、おから主成分である炭水化物の熱分解が顕著だったことが、また、油分減少率については熱処理温度が高く、大豆油が一部揮発したことが原因と考えられた。
〔比較例5〕
【0154】
(おから)
本比較例で用いたおからについては、80℃に設定した乾燥機内に配置し、水分率は、10重量%調整したものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は149μmだった。さらに、実施例1と同様の方法で、おからに含まれる油分量を測定したところ10.2重量%だった。
【0155】
(おからの熱処理条件)
本比較例のおから15gを図3に示すように熱処理部3に配置した。なお熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.45だった。その後、不活性ガスとして窒素を線速度26.5m/hで供給しながら、電気炉8により熱処理温度180℃で1分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の原因物質の吸収は実施例1と同様の方法で行った。
【0156】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0157】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本比較例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析は、実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.7μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は4.7μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は17.5%だった。
【0158】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を、実施例1と同様の方法で測定したところ、10.1重量%だった。このため、数3式により計算した結果の油分減少率は1.0%だった。
【0159】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は実施例1と同様の方法で行った。その結果、本比較例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は4だった。
【0160】
(総合評価)
以上の結果から、ヘキサナール除去率が基準を満たさなかったため、本比較例の総合評価は不適であった。これは熱処理時間が短く、豆臭を十分に除去できなかったためと考えられた。
〔比較例6〕
【0161】
(おから)
本比較例で用いたおからは、80℃に設定した乾燥機内に配置し、水分率を10重量%に調整したものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は94μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ10.1重量%だった。
【0162】
(おからの熱処理条件)
本比較例のおから15gを図5に示すように熱処理部3に配置した。なお、熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.45だった。その後、真空ポンプ17により熱処理3内を減圧しながら電気炉8により熱処理温度80℃で30分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の吸収は実施例1と同様の方法で行った。
【0163】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0164】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本比較例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析に実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.8μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は5.6μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は3.4%だった。
【0165】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を実施例1と同様の方法で測定したところ10.1重量%だった。このため、数3により油分減少率は0.0%だった。
【0166】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は実施例1と同様の方法で行った。その結果、本比較例で得られたおから混練樹脂に豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は5だった。
【0167】
(総合評価)
以上の結果から、ヘキサナール除去率が基準を満たさなかったため、本比較例の総合評価は不適であった。これは減圧環境下における豆臭原因物質除去であっても熱処理温度が低い場合には、豆臭を十分に除去できないためと考えられた。
〔比較例7〕
【0168】
(おから)
本比較例で用いたおからは、80℃に設定した乾燥機内に配置し、そのおからの水分率は、10重量%に調整したものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は116μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ10.0重量%だった。
【0169】
(おからの熱処理条件)
本比較例のおから15gを図5に示すように熱処理部3に配置した。なお、熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.45だった。その後、真空ポンプ17により熱処理3内を減圧しながら電気炉8により熱処理温度180℃で1分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の吸収は実施例1と同様の方法で行った。
【0170】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は4だった。
【0171】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本比較例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析は、実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても、実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.7μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は5.2μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は8.8%だった。
【0172】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を、実施例1と同様の方法で測定したところ、9.9重量%だった。このため、数3式により計算した結果の油分減少率は1.0%だった。
【0173】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は実施例1と同様の方法で行った。その結果、本比較例で得られたおから混練樹脂に、豆臭は感じられなかったことから、豆臭の指標についての評価は5だった。
【0174】
(総合評価)
以上の結果から、ヘキサナール除去率が基準を満たさなかったため、本比較例の総合評価は不適であった。これは減圧環境下における豆臭の原因物質除去であっても熱処理時間が短い場合には、豆臭を十分に除去できないためと考えられた。
〔比較例8〕
【0175】
(おから)
本比較例で用いたおからは、80℃に設定した乾燥機内に配置した。そのおからの水分率は10重量%に調整したものを使用した。また、おからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は102μmだった。さらに、実施例1と同様の方法でおからに含まれる油分量を測定したところ10.1重量%だった。
【0176】
(おからの熱処理条件)
本比較例のおから15gを図2に示すように熱処理部3に設置した。なお熱処理部3において、おからを配置した箇所の内径は24mmであり、数1式に示したV1/Vの計算結果は0.45だった。その後、不活性ガスとして窒素を線速度26.5m/hで供給しながら電気炉8により熱処理温度150℃で30分間加熱した。また、熱処理部3より排出されるガスに含まれる豆臭の吸収は行わず、排出ガスはそのまま外気へ放出した。
【0177】
(熱処理したおからの外観評価)
本実施例で熱処理したおからの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0178】
(おからに含まれるヘキサナール量の定量方法)
本比較例で熱処理したおからに含まれるヘキサナール分析は、実施例1と同様の方法で行った。また、熱処理したおからに含まれるヘキサナール除去率の算出についても、実施例1と同様の方法で行った。その結果、熱処理前のおから1gあたりのヘキサナール量は5.7μmolだったのに対し、本実施例での熱処理したおから1gあたりのヘキサナール量は0.6μmolに減少し、ヘキサナールの除去率は89.5%だった。
【0179】
(熱処理による油分減少率)
さらに、本実施例により熱処理したおからの油分量を、実施例1と同様の方法で測定したところ、9.9重量%だった。このため、数3式により計算した結果の油分減少率は2.0%だった。
【0180】
(熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価)
熱処理したおからを混練した樹脂ペレットの豆臭評価は実施例1と同様の方法で行った。その結果、混練機周辺で強い豆臭が感じられたことから、豆臭の指標についての評価は1だった。
【0181】
(総合評価)
以上の結果から、豆臭評価が基準を満たさなかったため、本比較例の総合評価は不適であった。これは豆臭を吸収しなかったため、おから熱処理により排出された豆臭がそのまま外気へ放出されたためと考えられた。
【0182】
実施例1~10および比較例1~8で行った乾燥おからの熱処理条件を表3に、また得られた熱処理おからの外観評価、熱処理前後のヘキサナール含有量から算出したヘキサナール除去率、おから混練樹脂製造時の豆臭指標、および総合評価を表4にまとめて示した。
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】
【0185】
以上の表3および表4に示した結果から、乾燥おからを適切な条件で熱処理し、なおかつ生成する豆臭の原因物質を吸収することで外気に出ない。このことから、相溶化剤などを添加することがないので、熱分解による弊害をなくした吸湿材料とすることもできる。また、本発明は非常にシンプルであり、循環社会のリサイクル化に十分貢献できるものであり、サステナビリティの高い手法である。
【0186】
(産業上の利用可能性)
本発明の説明において使用した装置は実験的な規模として説明したが、事業として実施する際には、産業規模にふさわしい材料・材質の装置として設計する。たとえば、熱処理部は本発明において、電気炉の中にガラス管を配置した装置として説明した。実務的には1回の処理量にふさわしい容積割合の断面がドーム状の金属容器を用いる。また、おからの出し入れを容易にするのにふさわしいレールを金属容器の底面部に設け、そのレール上に、車輪付きトレーを配設する。おからの豆臭除去する際には、トレー内に均一に広げ、不活性ガス雰囲気にしたのち、その上面に適切な間隔をあけて配設される加熱手段で加熱する。この加熱手段はおからを加熱させるのにふさわしい容量で、おからの上面を覆うような広さの遠赤外線パネルヒーターなどの熱源とする。なお、車輪付きトレーに設置されたおからを出し入れする側は、部分開放型の蓋状の扉にするのが好ましい。おからを出し入れする際には、ガス雰囲気を無駄にしない工夫が必要である。たとえば、不活性ガスの導入ラインにバルブを設け、おからを出し入れするために部分開放型の蓋状の扉を開けている時は、バルブを閉めることで不活性ガスを止める。おからが金属容器内に移送され、部分開放型の蓋状の扉を閉じた後に、バルブを開けて金属容器内が不活性ガス雰囲気となるようにすることなどが可能となる。
【符号の説明】
【0187】
1 おから
2 不活性ガス充填高圧ボンベ
3 熱処理部
4 SUS管
5 栓
6 調圧弁
7 マスフローコントローラー
8 電気炉
9 熱電対
10 温度表示器
11 チューブ
12 容器
13 豆臭の原因物質の捕捉液
14 ウォーターバス
15 水
16 豆臭の原因物質吸着材
17 バルブ
18a 真空ポンプ本体
18b 真空ポンプベント
図1
図2
図3
図4
図5