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  • 特開-バイオマスガス化炉 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042723
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】バイオマスガス化炉
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/02 20060101AFI20240322BHJP
   C10J 3/32 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C10J3/02 M
C10J3/02 C
C10J3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147485
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 正紀
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 拓朗
(57)【要約】
【課題】堆積したバイオマス原料の崩落と、堆積したバイオマス原料における反応の偏りを抑制することで、効率よく燃料ガスを生成すること可能な、バイオマスガス化炉を提供する。
【解決手段】バイオマスガス化炉1は、バイオマス原料Fを加熱してガス化し、燃料ガスGを生成する。バイオマスガス化炉1は、外筒10と、内筒20と、外筒10を外方から加熱する反応炉30と、燃焼空気供給部40と、を備えている。バイオマス原料Fは、内筒20の内側に、上方から供給されて、堆積部100を形成し、堆積部100において燃料ガスGが生成される。内筒20は、下側に位置して内側に堆積部100が形成される下側内筒23と、上側に位置する上側内筒21を備え、下側内筒23は、上側内筒21よりも、断面積が小さくなるように形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質のバイオマス原料を加熱してガス化し、燃料ガスを生成する、バイオマスガス化炉であって、
軸線が上下方向に延在するように設けられた外筒と、
前記外筒の内側に、軸線が上下方向に延在し、下端が前記外筒の下端よりも上方に位置するように設けられた内筒と、
前記外筒を外方から加熱する反応炉と、
前記内筒の内側に設けられて、燃焼空気を供給する燃焼空気供給部と、
を備え、
前記バイオマス原料は、前記内筒の内側に、上方から供給されて、堆積部を形成し、当該堆積部において前記燃料ガスが生成され、
前記内筒は、下側に位置して内側に前記堆積部が形成される下側内筒と、上側に位置する上側内筒を備え、前記下側内筒は、前記上側内筒よりも、断面積が小さくなるように形成されている、バイオマスガス化炉。
【請求項2】
前記上側内筒と、前記下側内筒は、断面が円形となるように形成され、
前記上側内筒の直径に対し、前記下側内筒の直径は、1/3以上2/3以下である、請求項1に記載のバイオマスガス化炉。
【請求項3】
前記内筒は、前記上側内筒と前記下側内筒の間に、下方に向かうにつれて断面積が漸次小さくなるように形成された中間内筒を備え、前記上側内筒と前記下側内筒は、前記中間内筒により接続されている、請求項1または2に記載のバイオマスガス化炉。
【請求項4】
前記外筒と前記下側内筒との間の断面積は、前記外筒と前記上側内筒との間の断面積よりも大きくなるように形成されている、請求項1または2に記載のバイオマスガス化炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスガス化炉に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス原料をバイオマスガス化炉により乾溜させて燃料ガスを生成し、燃料ガスを内燃機関で燃焼させて発電することが行われている。
【0003】
このようなバイオマスガス化炉として、例えば特許文献1には、炉本体内で上下方向に延びるように配置された内筒と外筒とを有する二重管を備えた、バイオマスガス化装置が開示されている。内筒の内側空間は、バイオマス原料をガス化する空間とされている。二重管の上部から供給されたバイオマス原料は、内筒の内側空間の下部に、回転可能に設けられた柱状体の、頂部の受け面上に堆積する。バイオマス原料は、内筒の内側空間を順次下方へと移動しながら順次反応して燃料ガスを生成する。内筒と外筒の間の空間は、生成された燃料ガスが流通する空間とされている。外筒の上端に設けられた生成ガス排出管には吸引ファンが設けられ、これによって生成された燃料ガスが外部へと排出される。
また、受け面には、酸化剤を供給する酸化剤供給口が形成されており、この酸化ガスにより、バイオマス原料の反応を促進させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/008934号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたような構成では、柱状体からの酸化剤の供給や、柱状体の回転等によって、堆積したバイオマス原料に外部から力が作用することにより、バイオマス原料の堆積が崩れてしまうことがある。
また、特許文献1のような構成においては、吸引ファンによって内筒と外筒の間の空間の燃料ガスを吸引することで、内筒と外筒の間の空間に負圧が生じ、内筒と外筒の間の空間と、当該空間とは内筒の内側空間に堆積したバイオマス原料を挟んで位置する、バイオマス原料よりも上の空間との間に、圧力差が生じる。この圧力差によって、堆積したバイオマス原料に下方への力が作用することで、バイオマス原料の堆積が崩れてしまうこともある。
質の良い燃料ガスを生成するには、バイオマス原料を一定の高さ以上堆積させ、バイオマス原料を十分に反応させる必要がある。しかし、バイオマス原料の堆積が崩れると、バイオマス原料を十分に反応させるだけのバイオマス原料の高さが不足し、生成される燃料ガスの質が低下してしまうことがある。
また、特許文献1に記載されたような構成では、堆積したバイオマス原料に対し、柱状体から酸化剤が均一に供給されず、酸化剤の供給に偏りが生じることもある。その結果、生成される燃料ガスの質が低下してしまうことがある。
【0006】
本発明の目的は、堆積したバイオマス原料の崩落と、堆積したバイオマス原料における反応の偏りを抑制することで、効率よく燃料ガスを生成することが可能な、バイオマスガス化炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のバイオマスガス化炉は、木質のバイオマス原料を加熱してガス化し、燃料ガスを生成する、バイオマスガス化炉であって、軸線が上下方向に延在するように設けられた外筒と、前記外筒の内側に、軸線が上下方向に延在し、下端が前記外筒の下端よりも上方に位置するように設けられた内筒と、前記外筒を外方から加熱する反応炉と、前記内筒の内側に設けられて、燃焼空気を供給する燃焼空気供給部と、を備え、前記バイオマス原料は、前記内筒の内側に、上方から供給されて、堆積部を形成し、当該堆積部において前記燃料ガスが生成され、前記内筒は、下側に位置して内側に前記堆積部が形成される下側内筒と、上側に位置する上側内筒を備え、前記下側内筒は、前記上側内筒よりも、断面積が小さくなるように形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、堆積したバイオマス原料の崩落と、堆積したバイオマス原料における反応の偏りを抑制することで、効率よく燃料ガスを生成することが可能な、バイオマスガス化炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るバイオマスガス化炉の構成を示す断面図である。
図2図1の、反応炉近傍の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るバイオマスガス化炉の構成を示す断面図を図1に示す。図1の、反応炉近傍の模式的な断面図を図2に示す。以下においては、主に図2を用いて説明する。
バイオマスガス化炉1は、木質のバイオマス原料Fを間接加熱してガス化し、燃料ガスGを生成する。バイオマスガス化炉1は、外筒10と、内筒20と、反応炉30と、燃焼空気供給部40と、制御部80と、を主に備えている。
【0011】
外筒10は、軸線Cが上下方向に延在するように設けられている。外筒10は、軸線Cに沿って上下方向に延びる円筒状の筒状部11と、筒状部11の上端を閉塞する天板部12と、筒状部11の下端を閉塞する底板部13と、を一体に備えている。外筒10の筒状部11は、上端から下端まで、上下方向に同一の直径(内径)D10を有して形成されている。
【0012】
内筒20は、外筒10に対し、軸線Cを中心とした径方向の内側に間隔をあけて設けられている。内筒20は、軸線Cが上下方向に延在するよう、円筒状に形成されている。これにより、外筒10と内筒20とは、同一の軸線Cを中心とした二重筒構造とされている。内筒20の内側には、上下方向に延びる円柱状の内部空間S1が形成されている。内筒20の下端20bは、外筒10の下端10bよりも上方に位置するように設けられている。内筒20の上部20tは、外筒10の天板部12を貫通して上方に突出している。
【0013】
内筒20の上端には、上方に向けて開口する開口部20hが形成されている。開口部20hは、バイオマス原料Fの投入口である。バイオマス原料Fは、外部からフライトコンベア等のバイオマス搬送機60(図1参照)によって内筒20の上方へと搬送され、スクリューフィーダ等のバイオマス原料供給機61(図1参照)によって、開口部20hの上方から供給されて、内筒20の内側の内部空間S1に投入される。投入されたバイオマス原料Fは、内筒20の内側と、外筒10の下端10bから内筒20の下端20bの間において堆積し、堆積部100を形成する。
【0014】
内筒20の内側には、回転管41が設けられている。回転管41は、外筒10と内筒20と同一の軸線Cを中心として、軸線Cに沿って上下方向に筒状に延びるように設けられている。回転管41の上部41tは、内筒20の下端20bよりも上方に延びて、内筒20の内側で終端している。回転管41の下端部41bは、外筒10の底板部13を貫通して下方に突出している。回転管41は、底板部13の下方に設けられたモータ等の回転機構43(図1参照)により、軸線C周りの周方向に回転駆動される。
【0015】
燃焼空気供給部40は、回転管41の上部41tに形成されている。燃焼空気供給部40は、内筒20の内側に設けられている。燃焼空気供給部40は、複数の空気流通孔42を有している。複数の空気流通孔42は、内筒20の下端20bから上方に離間して設けられている。複数の空気流通孔42は、内筒20の下端20bよりも上方の部分に、回転管41の内外を貫通するように形成されている。回転管41内には、回転管41の下端部41bに設けられた燃焼空気供給口44から燃焼空気Aが送り込まれる。燃焼空気供給部40は、回転管41内に送り込まれた燃焼空気Aを、複数の空気流通孔42から、軸線Cを中心とした径方向の外側の堆積部100内に供給する。回転管41を軸線C周りの周方向に回転させながら、燃焼空気供給部40から燃焼空気Aを吹き出すことで、堆積部100内の全周にわたって、燃焼空気Aを均等に供給することができる。
ここで、燃焼空気Aとしては、純度の高い酸素(純酸素)を用いるのが好ましい。空気を燃焼空気Aとして用いても良いが、空気に多く含まれる窒素が、バイオマスガス化炉1内に導入され、これが堆積部100における化学反応に使用されずに、生成される燃料ガスGに混ざることにより、燃料ガスGが薄まってしまう。これに対し、燃焼空気Aとして、反応に使用される酸素の純度を高めることで、燃料ガスGが薄まるのを抑えることができる。
【0016】
内筒20と外筒10との間には、上方から見て円環状をなす空間Sが形成されている。この空間Sは、内筒20の下端20bから外筒10の天板部12まで、上下方向に連続して延びている。内筒20の下端20bより下に位置する、外筒10内の底部には、上方から見て円形の底部空間S3が形成されている。底部空間S3は、内部空間S1、及び空間Sの下側に形成されている。内部空間S1と、空間Sとは、底部空間S3を介して互いに連通している。
内筒20の内部空間S1において、堆積部100から生成された燃料ガスGは、後に説明するファン17により吸引されることで、底部空間S3を介して外周側へと誘導され、内筒20と外筒10の間の空間Sを上昇していく。
【0017】
内筒20は、上側内筒21と、中間内筒22と、下側内筒23と、を有している。
上側内筒21は、内筒20の上部に形成されている。上側内筒21は、中間内筒22、及び下側内筒23の上側に形成されている。上側内筒21は、断面が円形となるように形成されている。上側内筒21は、上下方向に一定の直径D21を有して円筒状に形成されている。
【0018】
下側内筒23は、上側内筒21、及び中間内筒22の下側に形成されている。下側内筒23は、断面が円形となるように形成されている。下側内筒23は、上下方向に、一定の直径D23を有して円筒状に形成されている。下側内筒23の直径D23は、上側内筒21の直径D21よりも小さい。これにより、下側内筒23の内側の空間S1bの断面積は、上側内筒21の内側の空間S1tの断面積よりも小さくなるように形成されている。堆積部100は、内筒20においては、下側内筒23の内側に形成される。
【0019】
中間内筒22は、上下方向において、上側内筒21と下側内筒23との間に形成されている。中間内筒22は、断面が円形となるように形成されている。中間内筒22は、上方から下方に向かって直径が漸次縮小するようテーパ筒状に形成されている。中間内筒22の上端は、上側内筒21の下端に接続され、上側内筒21と同じ直径D21を有している。中間内筒22の下端は、下側内筒23の上端に接続され、下側内筒23と同じ直径D23を有している。これにより、中間内筒22は、下方に向かうにつれて、その内側の断面積が漸次小さくなるように形成されている。
【0020】
ここで、下側内筒23の直径D23は、上側内筒21の直径D21に対し、例えば、1/3以上2/3以下であるように形成するのが好ましい。下側内筒23の直径D23を上側内筒21の直径D21よりも小さくすることで、下側内筒23においては堆積部100が径方向の外側から拘束され、堆積部100の崩壊が抑制される。ここで、下側内筒23の直径D23が上側内筒21の直径D21の2/3以上となると、この拘束が弱まり、堆積部100が崩壊してしまう可能性がある。また、下側内筒23の直径D23が上側内筒21の直径D21の1/3以下となると、バイオマス原料Fが下側内筒23の内側に詰まり、下側内筒23を閉塞してしまう可能性がある。
下側内筒23の直径D23は、上側内筒21の直径D21に対し、例えば、1/2とするのが、より好ましい。例えば、上側内筒21の直径D21を400mmとすると、下側内筒23の直径D23を200mmとするのが望ましい。
【0021】
また、外筒10の直径D10は、上下方向で一定であるため、外筒10と下側内筒23との間の空間Sbの断面積は、外筒10と上側内筒21との間の空間Stの断面積よりも大きくなっている。
ここで、外筒10の直径D10は、下側内筒23の直径D23の、例えば、2倍以上4倍以下となるように形成するのが好ましい。外筒10の直径D10は、下側内筒23の直径D23の、例えば、3.25倍となるように形成するのが好ましい。例えば、上記のように、上側内筒21の直径D21を400mm、下側内筒23の直径D23を200mmとした場合においては、外筒10の直径D10を650mmとするのが望ましい。
【0022】
反応炉30は、外筒10を外方から加熱する。反応炉30は、外筒10の筒状部11を、外筒10の径方向の外方から取り囲むように形成されている。反応炉30は、外周壁部31と、上壁部32と、底壁部33と、を一体に有している。外周壁部31は、外筒10の筒状部11に対して、軸線Cを中心とした径方向の外側に間隔をあけて設けられている。外周壁部31は、上下方向に延びる筒状または角管状に形成されている。外周壁部31を上方から見た際の断面形状は、円形、楕円形、多角形状等、いかなる形状であってもよい。上壁部32は、外筒10の筒状部11の上端よりも下方に配置されている。上壁部32は、外周壁部31の上端と、外筒10の筒状部11との間を上方から閉塞している。底壁部33は、外筒10の底板部13と、ほぼ同じ高さに配置されている。底壁部33は、外周壁部31の下端と、外筒10の筒状部11との間を下方から閉塞している。反応炉30の全体は、断熱材38(図1参照)によって覆われた構成となっている。
【0023】
反応炉30は、流体入口34と、流体出口35と、を更に備えている。流体入口34は、反応炉30の下部に形成されている。流体入口34は、反応炉30の外部から供給される高温流体Hを、反応炉30内に送り込むためのものである。高温流体Hとしては、例えば1000℃以上のガスが用いられる。流体入口34から反応炉30内に送り込まれた高温流体Hは、外筒10を外方から加熱する。外筒10を加熱する高温流体Hの熱エネルギーは、輻射伝熱等により外筒10から空間Sを通して内筒20にも伝播し、外筒10及び内筒20を外方から加熱する。流体出口35は、反応炉30の上部に形成されている。流体出口35は、反応炉30内に送り込まれた高温流体Hを、反応炉30外に排出するためのものである。流体出口35から排出される、反応処理に用いられた後の高温流体Hの余剰熱エネルギーは、例えば、適宜のボイラー、熱交換器等で利用することができる。
【0024】
外筒10は、燃料ガス排出部15と、堆積物排出部16と、を更に備えている。
燃料ガス排出部15は、外筒10の上側(上部)に、内筒20と外筒10の間の空間Sと外筒10の外部とが連通するように形成されている。燃料ガス排出部15は、空間S内の燃料ガスGを、外筒10の外部に排出する。燃料ガス排出部15の外側には、ファン17が設けられている。ファン17は、モータ等の駆動源(図示無し)によって回転駆動される。ファン17は、空間Sに負圧を生じさせて空間S内の燃料ガスGを吸引し、燃料ガス排出部15へと誘導するように設けられている。燃料ガス排出部15は、外部のダクト(図示無し)に接続されている。燃料ガス排出部15からダクトに排出された燃料ガスGは、高温フィルタで除塵され、ガス冷却器で例えば40℃以下に冷却される。冷却された燃料ガスGは、ファン17により、内燃機関等の適宜の下流側設備へと供給される。
【0025】
堆積物排出部16は、外筒10の下端10bに設けられている。堆積物排出部16は、外筒10の底板部13から下方に延びる筒状または角管状をなしている。堆積物排出部16は、上端開口16hを有している。上端開口16hは、底板部13において、外筒10内で上方に向けて開口している。堆積物排出部16を介して、堆積部100の下端に位置する堆積物Tが、排出物Zとして、外筒10の外部に排出される。
【0026】
バイオマスガス化炉1は、排出促進部18を備えている。排出促進部18は、例えば、回転管41の外周面に接合された旋回翼19を有している。旋回翼19は、回転管41の外周面から、軸線Cを中心とした径方向の外側に延びている。旋回翼19は、軸線Cを中心とした周方向に、複数枚(例えば4枚)が配置されている。旋回翼19は、回転管41と一体に軸線C周りの周方向に回転または揺動する。
本実施形態において、旋回翼19は、内筒20の下端部近傍に設けられた、上側の旋回翼19Aと、外筒10内の下端(底部)に設けられた、下側の旋回翼19Bと、を備えている。上側の旋回翼19Aは、堆積部100の中で、外筒10の下端10bから内筒20の下端20bの間の底部空間S3の、上側に位置する堆積物Tを、下方へと押しやる。下側の旋回翼19Bは、外筒10内の下端(底部)に位置する堆積物Tを、堆積物排出部16へと誘導する。このようにして、排出促進部18は、堆積物排出部16を通した堆積物Tの排出を促進せしめる。堆積物Tは、堆積部100の下端においては、炭化して流動化した状態となっている。排出促進部18は、外筒10内の底部で、流動化した状態となった堆積物Tを下方へと押し出す。下方へと押し出された堆積物Tは、上端開口16h及び堆積物排出部16を通して、外筒10の外部へと排出される。
【0027】
制御部80は、バイオマスガス化炉1の動作を制御する。バイオマスガス化炉1は、センサ81を備えている。センサ81は、内筒20内の、堆積部100の高さ、すなわち堆積部100の上端の位置を検出する。制御部80は、センサ81で検出される堆積部100の高さに基づいて、バイオマス原料供給機61と排出促進部18の動作を制御する。制御部80は、センサ81で検出される堆積部100の高さが、燃焼空気供給部40よりも上方に位置する所定の高さ閾値以下の場合には、排出促進部18を停止させ、バイオマス原料供給機61からバイオマス原料Fを供給する。制御部80は、センサ81で検出される堆積物Tの高さが、高さ閾値を越えた場合に、バイオマス原料供給機61からのバイオマス原料Fの供給を継続しつつ、排出促進部18を稼働させる。
【0028】
既に説明したように、燃焼空気供給部40は、回転管41内に送り込まれた燃焼空気Aを、回転管41を軸線C周りの周方向に回転させながら、複数の空気流通孔42から、軸線Cを中心とした径方向の外側の堆積部100内に供給する。このような、堆積部100内への燃焼空気Aの供給や、回転管41の回転動作によって、堆積部100に外部から力が作用することにより、堆積部100が崩れてしまうことがある。
また、ファン17によって内筒20と外筒10の間の空間Sの燃料ガスGを吸引することで、内筒20と外筒10の間の空間Sに負圧が生じ、内筒20と外筒10の間の空間Sと、当該空間Sとは堆積部100を挟んで位置する、内筒20の内部空間S1との間に、圧力差が生じる。この圧力差によって、堆積部100に下方への力が作用することで、堆積部100が崩れてしまうこともある。
質の良い燃料ガスGを生成するには、堆積部100を一定の高さ以上として、堆積部100において十分に反応が行われるようにする必要がある。しかし、堆積部100が崩れると、堆積部100を十分に反応させるだけの高さが不足し、生成される燃料ガスGの質が低下してしまうことがある。
【0029】
本実施形態においては、堆積部100は、下側内筒23の内側の空間S1bに形成される。この下側内筒23は、上側内筒21よりも断面積が小さくなるように形成されているため、堆積部100が径方向の外側から強く拘束される。これにより、燃料ガスGの生成中に、堆積部100の崩落が生じることが抑制される。
このように、本実施形態においては、堆積部100の崩落が生じにくい構造となっているが、万が一、堆積部100に崩落が生じた場合に、堆積部100の崩落を迅速に解消するために、バイオマスガス化炉1は、第一圧力センサ91と、第二圧力センサ92と、を備えている。第一圧力センサ91は、内筒20と外筒10の間の空間Sの圧力を検出する。第二圧力センサ92は、内筒20の内部空間S1の圧力を検出する。
堆積部100の崩落が生じていない場合、堆積部100によって、内筒20と外筒10の間の空間Sと内筒20の内部空間S1とは隔離される。このため、ファン17によって生じる負圧により、内筒20と外筒10の間の空間Sは、内筒20の内部空間S1よりも、気圧が小さくなっており、内筒20と外筒10の間の空間Sと内筒20の内部空間S1の間には、差圧が生じている。
これに対し、堆積部100に崩落が生じると、内筒20と外筒10の間の空間Sと、内筒20の内部空間S1とが連通する。このため、内筒20と外筒10の間の空間Sと、内筒20の内部空間S1の差圧は小さくなる。
【0030】
制御部80は、第一圧力センサ91で検出される空間Sの圧力と、第二圧力センサ92で検出される内部空間S1の圧力との差(差圧)に基づいて、排出促進部18の回転を制御する。制御部80は、第一圧力センサ91で検出される空間Sの圧力と、第二圧力センサ92で検出される内部空間S1の圧力との差圧が、予め設定された圧力閾値以上である場合、堆積部100の崩落が生じていないと判断し、排出促進部18を稼働させる。
また、制御部80は、第一圧力センサ91で検出される空間Sの圧力と、第二圧力センサ92で検出される内部空間S1の圧力との差圧が、予め設定された圧力閾値未満である場合、堆積部100の崩落が生じていると判断し、排出促進部18の稼働を停止させる。これにより、排出促進部18の停止後、バイオマス原料供給機61からバイオマス原料Fが継続して供給されることで、内筒20の下側内筒23の内側に、バイオマス原料Fの堆積量が増加し、堆積部100の崩落が解消される。堆積部100の崩落が解消されると、第一圧力センサ91で検出される空間Sの圧力と、第二圧力センサ92で検出される内部空間S1の圧力との差圧が、予め設定された圧力閾値以上に回復するので、制御部80は、排出促進部18の稼働を再開させる。
【0031】
このようなバイオマスガス化炉1においては、バイオマス原料Fが、開口部20hの上方から供給される。バイオマス原料Fは、例えば、枝葉、樹皮等である。バイオマス原料Fは、バイオマスガス化炉1への投入に先立ち、細かく砕かれる。バイオマス原料Fは、粒状のものであれば、10mm程度の粒径のものが最も多くなるような粒度分布とするのが好ましい。また、細長い形状の、いわゆるピンチップであれば、最大の長さが50mm程度となるようにするのが好ましい。
【0032】
開口部20hから内筒20の内側の内部空間S1に投入されたバイオマス原料Fは、外筒10の下端10bから内筒20の下端20bの間の底部空間S3と、内筒20の下側内筒23の内側の空間S1b(内部空間S1)と、において堆積し、堆積部100を形成する。
【0033】
堆積部100は、外筒10の底板部13から、下側内筒23の内側で、燃焼空気供給部40の回転管41の上端よりも上の位置まで堆積する。外筒10内で堆積部100の下端に位置する堆積物Tは、排出促進部18によって堆積物排出部16へと誘導され、外筒10の外部に順次排出される。これにより、堆積部100を形成する堆積物Tは、上方から下方へと順次下降(沈降)していく。堆積物Tが下降しても、バイオマス原料供給機61からバイオマス原料Fが継続的に投入されるため、堆積部100の高さは維持される。
【0034】
下側内筒23の内側の内部空間S1に投入されたバイオマス原料Fからは、堆積部100を形成する堆積物Tが上方から下方に向かって順次下降していく過程で、可燃性を有する一酸化炭素、水素を多く含む、燃料ガスGが生成される。
堆積部100においては、高分子炭化水素であるタール成分が生成され得る。タール成分は、冷却されて液化すると粘性を発現する。このため、バイオマスガス化炉1により生成される燃料ガスGにタール成分が多量に含まれると、例えば燃料ガスGを使用する後段の設備の機械駆動部にタール成分が付着することで、機械駆動部に動作不良が生じる可能性がある。したがって、燃料ガスGに含まれるタール成分の量は、少ないほうが望ましい。このようなタール成分は、堆積部100に供給される燃焼空気Aによって酸化され、分解される。
堆積部100は、下側内筒23の内側の空間S1bに形成される。この下側内筒23は、上側内筒21よりも断面積が小さくなるように形成されているため、堆積部100が径方向の外側から強く拘束される。これにより、燃料ガスGの生成中に、堆積部100の崩落が生じることが抑制される。
【0035】
生成された燃料ガスGは、堆積部100の堆積物Tの下端部で、ファン17により吸引されることで、径方向の外側へと誘導され、内筒20と外筒10の間の空間Sを、下方から上方に向かって上昇していく。この過程で、燃料ガスGは、反応炉30からの熱によって、タール成分の分解が促進される。
既に説明したように、下側内筒23は、上側内筒21よりも断面積が小さくなるように形成されている。換言すれば、外筒10と下側内筒23との間の空間Sbの断面積は、外筒10と上側内筒21との間の空間Stの断面積よりも大きくなるように形成されている。これにより、燃料ガスGが内筒20と外筒10の間の空間Sを上昇するに際し、特に下側内筒23の位置する高さにおいては、内容積が大きくなるため、燃料ガスGが緩やかに上昇するようになり、内筒20と外筒10の間の空間Sにおける燃料ガスGの滞留時間が長くなる。これにより、タール成分の分解が、より促進される。
【0036】
燃料ガスGを生成するのに使用された、堆積部100の下端に位置する堆積物Tは、炭化して流動化した状態となっている。排出促進部18は、流動化した状態となった堆積物Tを、下方へと押し出して、堆積物排出部16を通して、外筒10の外部へと排出する。
堆積部100の全体が下方へと移動すると、堆積部100の高さが低くなる。センサ81は、堆積部100の高さを随時検出し、制御部80は、堆積部100の高さが所定の高さ閾値以下となると、バイオマス原料供給機61からバイオマス原料Fが継続して供給されることにより、堆積部100の高さが増加して、所定の高さ閾値以上となるまで、排出促進部18を停止させて堆積物Tの排出を停止する。制御部80は、堆積部100の高さが所定の高さ閾値を越えた場合に、排出促進部18を稼働させて、堆積物Tを排出する。
【0037】
また、堆積部100の崩落が生じた場合、第一圧力センサ91で検出される空間Sの圧力と、第二圧力センサ92で検出される内部空間S1の圧力との差圧が小さくなる。制御部80は、第一圧力センサ91で検出される空間Sの圧力と、第二圧力センサ92で検出される内部空間S1の圧力との差圧が、予め設定された圧力閾値未満となった場合、堆積部100の崩落が生じていると判断し、排出促進部18の稼働を停止させる。これにより、排出促進部18の停止後、バイオマス原料供給機61からバイオマス原料Fが継続して供給されることで、内筒20の下側内筒23の内側に、バイオマス原料Fの堆積量が増加し、堆積部100の崩落が解消される。堆積部100の崩落が解消されると、第一圧力センサ91で検出される空間Sの圧力と、第二圧力センサ92で検出される内部空間S1の圧力との差圧が、予め設定された圧力閾値以上に回復するので、制御部80は、排出促進部18の稼働を再開させる。
【0038】
上述したようなバイオマスガス化炉1は、木質のバイオマス原料Fを間接加熱してガス化し、燃料ガスGを生成する。バイオマスガス化炉1は、軸線Cが上下方向に延在するように設けられた外筒10と、外筒10の内側に、軸線Cが上下方向に延在し、下端20bが外筒10の下端10bよりも上方に位置するように設けられた内筒20と、外筒10を外方から加熱する反応炉30と、内筒20の内側に設けられて、燃焼空気Aを供給する燃焼空気供給部40と、を備えている。バイオマス原料Fは、内筒20の内側に、上方から供給されて、堆積部100を形成し、この堆積部100において燃料ガスGが生成される。内筒20は、下側に位置して内側に堆積部100が形成される下側内筒23と、上側に位置する上側内筒21を備え、下側内筒23は、上側内筒21よりも、断面積が小さくなるように形成されている。
このようなバイオマスガス化炉1によれば、バイオマス原料Fは、内筒20の内側に、上方から供給される。供給されたバイオマス原料Fは、内筒20に堆積して堆積部100を形成する。ここで、堆積部100には、外筒10の外側に設けられた反応炉30によって、十分な熱が供給される。その結果、バイオマス原料Fから、燃料ガスGが生成される。
上記のような反応が進行する堆積部100は、主に内筒20の内部に設けられる。内筒20は、外筒10を挟んで外側から、反応炉30により加熱される。このため、内筒20の内部の堆積部100においては、燃料ガスGを生成する効率が高まる。
また、堆積部100が加熱されて反応の効率が高まるため、反応に必要となる酸素の量が抑えられる。したがって、燃焼空気供給部40から供給する燃焼空気Aの量を抑えることができる。これにより、生成される燃料ガスGの主成分となる一酸化炭素や水素が、酸素と過剰に反応して失われることが抑制され、燃料ガスGの質の低下を抑制可能である。
上記のような反応が進行する堆積部100は、上側内筒21よりも断面積が小さくなるように形成された下側内筒23の内側に形成される。この下側内筒23は、上側内筒21よりも断面積が小さくなるように形成されているため、例えば下側内筒23を上側内筒21と同一の、より大きな直径とした場合よりも、堆積部100が径方向の外側から強く拘束される。これにより、堆積部100の崩落が抑制される。同時に、径方向における燃焼空気供給部40から供給される燃焼空気Aの偏りも抑制される。
したがって、堆積したバイオマス原料Fの崩落と、堆積したバイオマス原料Fにおける反応の偏りを抑制することで、効率よく燃料ガスGを生成すること可能となる。
【0039】
また、生成された燃料ガスGは、堆積部100から、内筒20の下端20bの下方を、外筒10に向けて誘導された後、内筒20と外筒10の間の空間Sを上方へと誘導されて、外部へと排出される。
このような構成においては、下側内筒23は、上側内筒21よりも、断面積が小さくなるように形成されているため、外筒10と下側内筒23との間の空間Sbの容積を大きくすることができる。このため、生成された燃料ガスGが、堆積部100から、内筒20の下方を通った後、内筒20と外筒10の間の空間Sを、上方へと誘導されて、排出されるに際し、燃料ガスGが緩やかに上昇するようになり、内筒20と外筒10の間の空間Sにおける燃料ガスGの滞留時間が長くなって、燃料ガスGが長時間、加熱される。これにより、燃料ガスG中のタール成分等の分解が促進され、燃料ガスGの質がより向上する。
【0040】
また、上側内筒21と、下側内筒23は、断面が円形となるように形成され、上側内筒21の直径D21に対し、下側内筒23の直径D23は、1/3以上2/3以下である。
このような構成により、上側内筒21よりも下側内筒23の断面積が小さくなるように形成することによって得られる、堆積部100の崩落の抑制、燃焼空気Aの偏りの抑制を、より効果的に実現することができる。
【0041】
また、内筒20は、上側内筒21と下側内筒23の間に、下方に向かうにつれて断面積が漸次小さくなるように形成された中間内筒22を備え、上側内筒21と下側内筒23は、中間内筒22により接続されている。
このような構成により、内筒20の内側に、上方から供給されるバイオマス原料Fが、上側内筒21から中間内筒22を経て下側内筒23の内側に堆積する際に、下側内筒23の上端に引っ掛かるのを抑えることができる。
【0042】
また、外筒10と下側内筒23との間の断面積は、外筒10と上側内筒21との間の断面積よりも大きくなるように形成されている。
このような構成により、生成された燃料ガスGが、内筒20と外筒10の間の空間Sを、上方へと誘導される際、外筒10と下側内筒23との間における燃料ガスGの流速が、外筒10と上側内筒21との間における燃料ガスGの流速よりも遅くなる。これにより、生成された燃料ガスGの、バイオマスガス化炉1内における滞留時間が確保され、燃料ガスG中のタール成分等の分解を効率良く行うことができる。
【0043】
なお、本発明のバイオマスガス化炉は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、堆積部100は、下側内筒23の内部に形成されるものとして説明したが、これに限られない。堆積部100は、上端が、中間内筒22に位置する高さまで堆積するようにしてもよいし、上端が、上側内筒21に位置する高さまで堆積するようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 バイオマスガス化炉
10 外筒
10b 下端
20 内筒
20b 下端
21 上側内筒
22 中間内筒
23 下側内筒
30 反応炉
40 燃焼空気供給部
100 堆積部
A 燃焼空気
C 軸線
F バイオマス原料
G 燃料ガス
S 内筒と外筒の間の空間
図1
図2