IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人豊橋技術科学大学の特許一覧

<>
  • 特開-ワイヤレス給電用受電装置の整合回路 図1
  • 特開-ワイヤレス給電用受電装置の整合回路 図2
  • 特開-ワイヤレス給電用受電装置の整合回路 図3
  • 特開-ワイヤレス給電用受電装置の整合回路 図4
  • 特開-ワイヤレス給電用受電装置の整合回路 図5
  • 特開-ワイヤレス給電用受電装置の整合回路 図6
  • 特開-ワイヤレス給電用受電装置の整合回路 図7
  • 特開-ワイヤレス給電用受電装置の整合回路 図8
  • 特開-ワイヤレス給電用受電装置の整合回路 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042725
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電用受電装置の整合回路
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20240322BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20240322BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20240322BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H02J50/05
B60L53/12
B60L5/00 B
B60M7/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147487
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】崎原 孫周
(72)【発明者】
【氏名】新藤 竹文
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
(72)【発明者】
【氏名】水谷 豊
【テーマコード(参考)】
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5H105AA17
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC02
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC04
5H125AC12
5H125AC25
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】給電効率を低下させることなく小型化、軽量化することが可能な、ワイヤレス給電用受電装置の整合回路を提供する。
【解決手段】第1の受電電極17aと第2の受電電極17bとに接続して設けられる電動車両に搭載するワイヤレス給電用受電装置の整合回路1であって、複数の金属製棒状体19と、金属芯にリング状の複数のフェライトコアを数珠状に取り付けた複数の第1のコイルユニット21と、を備え、前記複数の金属製棒状体19と、前記複数の第1のコイルユニット21とは、長さ方向の向きを揃えて平行に整列配置され、その端部を電気的に直列となるように接続されてインピーダンスを形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の受電電極と第2の受電電極とに接続して設けられる電動車両に搭載するワイヤレス給電用受電装置の整合回路であって、
複数の金属製棒状体と、
金属芯にリング状の複数のフェライトコアを数珠状に取り付けた複数の第1のコイルユニットと、を備え、
前記複数の金属製棒状体と、前記複数の第1のコイルユニットとは、長さ方向の向きを揃えて平行に整列配置され、その端部を電気的に直列となるように接続されてインピーダンスを形成する、ワイヤレス給電用受電装置の整合回路。
【請求項2】
前記複数の金属製棒状体と、前記複数の第1のコイルユニットとは、相互に交換可能に配置される、請求項1に記載のワイヤレス給電用受電装置の整合回路。
【請求項3】
銅線をリング状のフェライトコアに巻き付けた第2のコイルユニットを備える、請求項1または2に記載のワイヤレス給電用受電装置の整合回路。
【請求項4】
前記複数の金属製棒状体と前記複数の第1のコイルユニットと前記第2のコイルユニットとを含む回路は、前記第1の受電電極側と前記第2の受電電極側とで対称に配置されている、請求項3に記載のワイヤレス給電用受電装置の整合回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電用受電装置の整合回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やロボットなどの移動体には、その移動時に、高周波電源(直流から高周波に電力を周波数変換する装置)に接続した送電電極と、移動体に搭載した受電電極との間に発生する電界のエネルギーによって電力をワイヤレスで移動体に給電する無線給電(ワイヤレス給電)を採用しているものがある。このような電界結合方式の無線給電の場合、高周波電源と送電電極間の送電側整合回路および受電電極と整流回路間の受電側整合回路によって無線給電システム全体のインピーダンスを最適化し、伝送効率の向上を実現する必要がある。
【0003】
また、整合回路を含む受電装置を取付ける移動体が公道を走行する自動車の場合、最低地上高の確保が課題となる。国土交通省が定める「道路運送車両保安基準の細目を定める告知〈第3節〉第163条」では、「全面における地上高は9cm以上」と規定されている。市販の小中型EVの最低地上高は例えば14cm~15cm程度であり、省令を遵守するには、移動体底部に取付ける受電装置は、厚み5cm程度に薄くする必要がある。この薄型化の課題に加え、機器の能力や搭載性の観点から小型化、軽量化することが要求されている。
【0004】
特許文献1には、受電側整合回路部と共振回路部とが、送電側装置に設けられた無線給電システムが開示されている。この無線給電システムでは、共振回路部において、送電電極部と受電電極部との間の電気的な容量、および一対の送電電極部の相互間における容量を打ち消し、送電電極部と受電電極部との間を、電気的に等価な伝送経路とすることを実現している。すなわち、特許文献1では、受電側の整合回路を送電側装置に設けることによって、受電側装置の小型化、軽量化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-045013号公報
【特許文献2】特開2016-058839号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】居村岳広 他,“非接触電力伝送用メアンダラインアンテナの提案”,2008年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会,2008年9月,B-9-1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の無線給電システムでは、送電電極部と受電電極部との間の電気的な容量は、送電電極部と受電電極部の間の距離、電極周囲の空間や材料の電気定数(誘電率・透磁率など)が一定の条件であれば想定した一定の値となるが、実際は、電極間距離や環境の違いによって、変動する。したがって、この共振回路部によってのみで打ち消されることはなく、想定した等価的な伝送経路とみなすことができないため、伝送効率が低下する恐れがある。また、特許文献1に限らず、移動体に搭載する受電側装置は、コイル素子およびコンデンサ素子といった能動素子で構成されている。このため、受電する電力が増大すると能動素子が大型化する。特にコイル素子は電力の増加に伴って磁気飽和を招くことから特に大型化が顕著となる。
【0008】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、給電効率を低下させることなく小型化、軽量化することが可能な、ワイヤレス給電用受電装置の整合回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の整合回路は、第1の受電電極と第2の受電電極とに接続して設けられる電動車両に搭載するワイヤレス給電用受電装置の整合回路であって、複数の金属製棒状体と、金属芯にリング状の複数のフェライトコアを数珠状に取り付けた複数の第1のコイルユニットと、を備え、前記複数の金属製棒状体と、前記複数の第1のコイルユニットとは、長さ方向の向きを揃えて平行に整列配置され、その端部を電気的に直列となるように接続されてインピーダンスを形成する。
【0010】
本発明によれば、複数の金属製棒状体と、複数の第1のコイルユニットと、を平行に整列配置し、その端部を電気的に直列となるように接続してインピーダンスを形成するので、整合回路を小型化、軽量化することができる。
【0011】
本発明の一態様においては、前記複数の金属製棒状体と、前記複数の第1のコイルユニットとは、相互に交換可能に配置される。
この一態様によれば、複数の金属製棒状体と、複数の第1のコイルユニットとは、相互に交換可能とされるので、インピーダンスの調整が容易となる。
【0012】
本発明の一態様においては、銅線をリング状のフェライトコアに巻き付けた第2のコイルユニットを備える。
この一態様によれば、銅線をリング状のフェライトコアに巻き付けた第2のコイルユニットで整合回路を構成するので、小型化、軽量化を満たしながら適切な構成部品で整合回路を構成することができる。
【0013】
本発明の一態様においては、前記複数の金属製棒状体と前記複数の第1のコイルユニットと前記第2のコイルユニットとを含む回路は、前記第1の受電電極側と前記第2の受電電極側とで対称に配置されている。
この一態様によれば、各構成部材による整合回路が第1の受電電極側と第2の受電電極側とで対称に配置されるので、インピーダンスを適切に整合して給電効率の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、給電効率を低下させることなく小型化、軽量化することが可能な、ワイヤレス給電用受電装置の整合回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の受電装置の整合回路が利用されるワイヤレス給電システムの概略を説明する模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る受電装置の整合回路の構成を示す模式的投影図である。
図3図2の要部の拡大斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る第1のコイルユニットの構成を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る第2のコイルユニットの構成を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態に係る整合回路のメアンダ形状による電気的特性を説明するモデル図である。
図7】本発明の実施形態に係る整合回路を含むワイヤレス給電システムの等価回路である。
図8】従来例における可変型整合回路の構造を示す図である。
図9】従来例における整合回路の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<ワイヤレス給電システム>
まず、本発明が受電装置の整合回路として利用される電界結合方式によるワイヤレス給電システムについて説明する。
図1は、本発明の受電装置の整合回路が利用されるワイヤレス給電システムの概略を説明する模式図である。図に示すように、ワイヤレス給電システム10は、送電側に、高周波電源11、送電側整合回路13、及び送電電極15、を備える。受電側には、整合回路1、整流回路7、負荷9、及び受電電極17を備える。整合回路1、整流回路7、及び負荷9は、電気自動車等の移動体3に搭載される。ここで負荷9とは、DC/DC変換機などの車載機器やバッテリーを含み、整合回路1から伝達された電力は、DC/DC変換機などを介してバッテリーに給電される。送電電極15は、移動体3がその上を通行する道路5に設置される。受電電極17は、送電電極15からの電力を受け取るように、移動体3の底部に配置される。受電側、送電側のそれぞれの構成要素は、ケーブル等で接続されている。
【0017】
送電電極15は数m~数100mの長さを想定している。受電電極17は5m以下の長さであり、送電電極15上を移動するため送受電電極15、17間の位置が相対的に変化することを想定している。
【0018】
高周波電源11に接続した送電電極15には、高周波(本発明では、6.78MHz、13.56MHzを想定するが、技術的には100kHz程度以上の周波数であればワイヤレス給電は可能)のエネルギーが送電され、周囲に電磁界が発生する。送電電極15に受電電極17が対抗すると送受電電極15、17間の電界の作用によって非接触で電力伝送が可能となる。さらに、受電電極17を整流回路7(高周波のエネルギーを直流に変換する装置)に接続することで移動体3のバッテリー(負荷9)などの充電が可能になる。
【0019】
送電側(道路5)および受電側(移動体3)に設けられる、整合回路1、送電側整流回路13は、高周波電源、結合系(送電電極15および受電電極17)、整流回路7の伝送経路のインピーダンスを最適化する役割を持ち、無線給電の伝送効率を向上するために必須の装置である。
【0020】
<実施形態>
以下、添付図面を参照して、本発明によるワイヤレス給電用受電装置の整合回路について、説明する。図2は、本発明の実施形態に係る受電装置の整合回路の構成を示す模式的投影図である。図2(a)は、正面図、(b)は、下面図、(c)は、左側面図である。図3は、図2(a)の要部の拡大図である。図3に示すように、本実施形態に係るワイヤレス給電用受電装置の整合回路1は、第1の受電電極17aと第2の受電電極17bとに接続して設けられる電動車両に搭載するワイヤレス給電用受電装置の整合回路1である。整合回路1は、複数の金属製棒状体19と、複数の第1のコイルユニット21と、第2のコイルユニット23とを備えている。図2(b)に示すように、整合回路1は、電位をグランドに設定されたシールドボックス33内に設けられている。図2図3では、内部の構成を説明する為に、シールドボックス33の内部が描写されている。整合回路1は、電線31a、31bを入力端子として、第1の受電電極17a、第2の受電電極17bに接続されている。この電線31a、31bは、同一の長さ、同一の太さ、同一の材質の金属線であり、好適には、10cm以下の長さである。この長さは、図2(b)における、道路5(及び送電電極)と受電電極17a、17bとの距離、及び、受電側グランドとなるシールドボックスの底面33aとの距離を含む諸条件から総合的に判断して設定される。また、整合回路1は、電線31c、31dを出力端子として、整流回路(図示せず)に接続されている。
【0021】
図4は、第1のコイルユニット21の構成を示す模式図である。図に示すように、第1のコイルユニット21は、金属芯21aにリング状の複数のフェライトコア21bを数珠状に取り付けた構成とされている。図4では、構造を説明するため、2個のフェライトコア21bが示されているが、実際は、図3に示すように、金属芯21a全体を覆うようにフェライトコア21bが取り付けられて、第1のコイルユニット21を構成している。金属芯21aは、直径3cm以下の金属線もしくは金属パイプ(銅、アルミ、銀、金、錫、SUS304など非磁性の金属)である。フェライトコアは、内径3cm以下、外径5cm以下のリング状の形状とされる。金属製棒状体19と金属芯21aは、同じものであって良い。
【0022】
図3に示すとおり、複数の金属製棒状体19と、複数の第1のコイルユニット21とは、コイル支持体27に支持されている。複数の金属製棒状体19と、複数の第1のコイルユニット21とは、長さ方向の向きを揃えて平行に整列配置され、その端部を電気的に直列となるように接続されてインピーダンスを形成している。図3では、接続板29を介して、金属製棒状体19間、第1のコイルユニット21間、または金属製棒状体19と第1のコイルユニット21の間を電気的に接続している。図3では、複数の金属製棒状体19と、複数の第1のコイルユニット21とで、L1、L1、L3のインピーダンスが形成されている。ここで、複数の金属製棒状体19と、複数の第1のコイルユニット21とは、相互に交換可能に設けられている。インピーダンスL1、L1、L3の調整には、金属製棒状体19を第1のコイルユニット21へ、または、第1のコイルユニット21を金属製棒状体19へ交換することによって行うことができる。ここで、L1、L1は、左右に対称に形成されているインピーダンスである。L3は、自分自身が左右対称に形成されている。
【0023】
図3において、インピーダンスL1、L1の下部の第1のコイルユニット21の一端は受電電極17a、17bに接続し、別の一端から直列接続が開始され8段接続している。8段のうち6段は第1のコイルユニット21、2段は銅パイプによる金属製棒状体19である。ここで、前述したように、第1のコイルユニット21および金属製棒状体19は金属からなる接続板29で接続する。また、第1のコイルユニット21、金属製棒状体19、接続板29は、コイル支持体27に支持されながら、シールドボックス33内に絶縁体で固定されている。受電電極17a、17bは、シールドボックス33と絶縁されて碍子25を介して固定されている。
【0024】
図5は、第2のコイルユニット23の構成を示す模式図である。第2のコイルユニット23は、銅線をリング状のフェライトコア23bに巻き付けた構成とされている。本実施形態では、銅線として平角銅線23aが使用されている。本実施形態では、リング状のフェライトコア23bに巻き付ける金属線の材料として銅が用いられているが、これに限定されず、銅に代えて、金、銀、錫など非磁性材料の導体であればよい。第2のコイルユニット23は、基板23c上に、基板配線23dとともに、ハンダ23fで固定されている。また、第2のコイルユニット23は、外部配線23e、23eとハンダ23g、23gを介して電気的に接続されている。第2のコイルユニット23は、図3上でインピーダンスL2、L2を構成している。
【0025】
図3に示すように、インピーダンスL1、L1、L2、L2、L3を含む整合回路1は、第1受電電極19aと第2受電電極19bとに対応して、対称に配置されている。
【0026】
図3に示す、L1、L1、L3を構成する金属製棒状体19、第1のコイルユニット21の配置はメアンダ形状(メアンダライン)と呼ばれている。特許文献2、非特許文献1には、このようなメアンダラインにおけるインピーダンスの解析、算出方法が開示されている。図6は、このメアンダラインをモデル化した電気的特性を示す模式図である。図6(a)には、全体の形状モデル、図6(b)には、抵抗成分と容量性リアクタンスを分離したモデル、図6(c)には、誘導性リアクタンスを分離したモデルが示されている。このモデルでは、長手方向に長さL、横手方向に幅Wの寸法を有したメアンダラインを想定している。このLとWの寸法、及びライン間の間隙の距離a、ラインの幅b等のパラメータから、特許文献2、非特許文献1に記載の方法を用いて、図6(b)に示す抵抗成分と容量性リアクタンスの成分、及び図6(c)に示す誘導性リアクタンスの成分を導出することができる。
【0027】
実際、本実施形態では、以下の要素をパラメータにして、受電側整合回路を構築することによって誘導性リアクタンスXを調整する。
(1)第1のコイルユニット21に利用する金属線もしくは金属パイプの径a[mm]
(2)フェライトコアの材質および形状(主に内径と外径)
(3)フェライトコアの接続数
(4)金属線もしくは金属パイプ、第1のコイルユニット21の長さW[mm]
(5)金属線もしくは金属パイプ、第1のコイルユニット21の接続数n(メアンダ形状の段数と接続する比率)
(6)金属線もしくは金属パイプ、第1のコイルユニット21の各段の間隔b[mm]
(7)a[mm]、b[mm]および接続数nによって決定する長さL
【0028】
図7は、ワイヤレス給電システム10の全体の構成を示す等価回路である。送電側には、高周波電源11、送電側整合回路13、第1の送電電極15a、第2の送電電極15bが配置されている。受電側には、第1の送電電極15a、第2の送電電極15bに対向して配置される、第1の受電電極17a、第2の受電電極17b、及び、整合回路1、整流回路7、負荷9が配置されている。図3におけるL1、L1、L2、L2、L3を含む等価回路が図7において、整合回路1として示されている。ここで、Cは、メアンダラインの解析から算出されたライン間の寄生容量である。本実施形態では、特にキャパシタンスユニットは、設けていないが、必要に応じて追加配置してもよい。
【0029】
以上述べたように、本実施形態におけるワイヤレス給電用受電装置の整合回路1は、複数の金属製棒状体19と、金属芯21aにリング状の複数のフェライトコア21bを数珠状に取り付けた複数の第1のコイルユニット21と、を備え、複数の金属製棒状体19と、複数の第1のコイルユニット21とは、メアンダ形状に配置されてインピーダンスを形成する。また、インダクタンスを構成する平角銅線23aをリング状のフェライトコア23bに巻き付けた第2のコイルユニット23も共に用いるため、インダクタンスを含むインピーダンスのユニットとして薄型化、小型化、軽量化が可能となる。
【0030】
図8に、従来例における可変型整合回路100の構造を、図9に従来例における整合回路110の構造を示す。図に示すとおり、従来例では、インダクタンスを構成するコイルLは、金属線および金属パイプをソレノイド形状に巻いたコイルを用い、所望のインダクタンスを得ている。これらのコイルはソレノイド形状であるため、大きな厚みが必要になる。本発明においては、このようなコイルLは用いず、複数の金属製棒状体19と、複数の第1のコイルユニット21、及び第2のコイルユニット23によってインダクタンスを得るので、薄型化が可能となる。インダクタンスの部材が薄型化することに伴い、電源装置も薄型化する。これにより移動体の底部への取り付けが容易となる。したがって、所望の回路定数の部材を使用して、給電効率を低下させることなく小型化、軽量化することが可能な、ワイヤレス給電用受電装置の整合回路を提供することができる。
【0031】
金属製棒状体19と、第1のコイルユニット21とは、相互に交換可能に設けられているので、それらを交換することによって、インピーダンスの調整が容易である。また、複数の金属製棒状体19と複数の第1のコイルユニット21と第2のコイルユニット23とを含む回路は、第1の受電電極19a側と第2の受電電極19b側とで対称に配置されているので、整合回路として、給電効率の低下を極力抑えた構成を実現している。また、インダクタンスとして利用される第1のコイルユニット21、第2のコイルユニット23は、図8図9に示すコイルLのように、金属線および金属パイプを螺旋状に加工する必要がないので、製造が容易で有り、かつ複雑な形状を有しないので、精度良く同じ寸法に構成が可能となる。そのため、対称性の向上に寄与することが可能である。
【0032】
本実施形態では、整合回路1として、L1、L1、L2、L2、L3のユニットを用いた回路を使用したが、これに限定されることなく、金属製棒状体19、第1のコイルユニット21、第2のコイルユニット23を用いて、他の回路構成を実現してよい。したがって、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 ワイヤレス給電用受電装置の整合回路
17a 第1の受電電極
17b 第2の受電電極
19 金属製棒状体
21 第1のコイルユニット
21a 金属芯
21b フェライトコア
23 第2のコイルユニット
23a 銅線(平角銅線)
23b リング状のフェライトコア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9