(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042726
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】車両用シェード装置
(51)【国際特許分類】
B60J 3/00 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
B60J3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147488
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】塩田 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】井岡 康晟
(72)【発明者】
【氏名】角田 孝敬
(57)【要約】
【課題】非使用位置からの落下を防止する車両用シェード装置を提供する。
【解決手段】車両用シェード装置100は、非使用位置から車両のウインドの内面を覆う使用位置に、下方に向けて引き出し可能に設けられるシェード1と、非使用位置のシェード1が格納される格納部と、シェード1の引き出し側の端部に取り付けられ、軸線に沿って略水平方向に延在する可動軸101と、を備える。格納部は、非使用位置から使用位置へシェード1が引き出されるときに可動軸101が通過する開口を規定するフラップ8を有し、フラップ8は、シェード1の引き出し動作時に、可動軸101により押動されて開口の面積が拡大するように弾性変形可能に設けられる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非使用位置から車両のウインドガラスの内面を覆う使用位置に、下方に向けて引き出し可能に設けられるシェードと、
前記非使用位置の前記シェードが格納される格納部と、
前記シェードの引き出し側の端部に取り付けられ、軸線に沿って略水平方向に延在する軸部と、を備え、
前記格納部は、前記非使用位置から前記使用位置へ前記シェードが引き出されるときに前記軸部が通過する開口を規定する弾性体を有し、
前記弾性体は、前記シェードの引き出し動作時に、前記軸部により押動されて前記開口の面積が拡大するように弾性変形可能に設けられることを特徴とする車両用シェード装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シェード装置において、
前記弾性体は、前記開口を挟んで対向配置された第1弾性体と第2弾性体とを有し、
前記格納部は、前記第1弾性体の基端部と前記第2弾性体の基端部とをそれぞれ支持する基部をさらに有し、
前記開口は、前記第1弾性体の先端部と前記第2弾性体の先端部との間に設けられ、
前記第1弾性体および前記第2弾性体は、それぞれの先端部が屈曲可能に設けられることを特徴とする車両用シェード装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シェード装置において、
前記第1弾性体および前記第2弾性体は、それぞれ前記基部の先端部から突設されるとともに、前記基部の先端部を支点にして屈曲可能に設けられることを特徴とする車両用シェード装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車両用シェード装置において、
前記弾性体は、上方および下方に屈曲可能に設けられるとともに、下方に屈曲されるときの支点の位置が上方に屈曲されるときの支点の位置よりも前記開口に接近して設定されるように前記基部に支持されることを特徴とする車両用シェード装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用シェード装置において、
前記弾性体は、前記シェードの引き出し動作時に前記軸部の軸方向両端部により押動されるように、前記軸部の軸方向両端部に対応する位置に設けられることを特徴とする車両用シェード装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用シェード装置において、
前記軸部は、その軸方向両端部に、前記軸部の外周面を形成するキャップ部を有することを特徴とする車両用シェード装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用シェード装置において、
前記弾性体は、前記軸部が前記開口の上方から前記開口を通過するために要する力が、前記開口の下方から前記開口を通過するために要する力よりも大きくなるように、弾性変形可能に設けられることを特徴とする車両用シェード装置。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用シェード装置において、
前記軸部は第1軸部であり、
前記格納部に格納され、前記シェードが巻回される第2軸部をさらに備え、
前記第2軸部は、前記シェードが前記第2軸部に巻き取られるように前記シェードを付勢する付勢部を有することを特徴とする車両用シェード装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用シェード装置において、
前記第2軸部は、前記第2軸部への前記シェードの巻き取りを停止する停止機構をさらに有することを特徴とする車両用シェード装置。
【請求項10】
請求項8に記載の車両用シェード装置において、
前記弾性体は、前記第1軸部が下方から前記開口を通過するために要する力が、前記付勢部による付勢力よりも小さくなるように、弾性変形可能に設けられることを特徴とする車両用シェード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シェード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のフロントガラスの内側を覆う使用位置と当該使用位置からルーフ側に退避した非使用位置とに、スクリーンないしシェードを移動可能に設けるようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、付勢手段によりスクリーンが上方かつ後方に引っ張られて非使用位置に付勢されるように構成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、付勢手段の経年劣化や破損等が生じた場合に、スクリーンが重力によって非使用位置から落下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である車両用シェード装置は、非使用位置から車両のウインドガラスの内面を覆う使用位置に、下方に向けて引き出し可能に設けられるシェードと、非使用位置のシェードが格納される格納部と、シェードの引き出し側の端部に取り付けられ、軸線に沿って略水平方向に延在する軸部と、を備える。格納部は、非使用位置から使用位置へシェードが引き出されるときに軸部が通過する開口を規定する弾性体を有し、弾性体は、シェードの引き出し動作時に、軸部により押動されて開口の面積が拡大するように弾性変形可能に設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シェードの非使用位置からの落下を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の実施形態に係る車両用シェード装置の車両への適用例を示す斜視図。
【
図1B】本発明の実施形態に係る車両用シェード装置の車両への適用例を示す背面図。
【
図2】
図1Aのルーフコンソールを斜め下方から見た斜視図。
【
図3】
図1Aのルーフコンソールを斜め上方から見た斜視図。
【
図5】
図4のシェードユニットの全体構成を示す斜視図。
【
図7】
図1Aのシェードの使用位置への下げ動作の一例を示す斜視図。
【
図9A】
図8の矢視IX図であり、シェードの非使用位置に対応する図。
【
図9B】
図9Aの状態からキャップをフラップの下方に移動した状態を示す図。
【
図10A】フラップの開口部を介してキャップを下方へ移動する状態を概略的に示す図。
【
図10B】フラップの開口部を介してキャップを上方へ移動する状態を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1A~
図11Bを参照して本発明の一実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る車両用シェード装置は、車両のウインドガラスの内面を覆う使用位置と使用位置から退避した非使用位置とに移動可能に設けられたシェードを有する。以下では、フロントガラスの内面を覆うように車両用シェード装置を設ける例を説明する。
【0009】
図1Aは、本発明の実施形態に係る車両用シェード装置100の車両への適用例を示す斜視図(左斜め後方から見た図)であり、
図1Bは、背面図(後方から見た図)である。以下では、図示のように前後方向(車両長さ方向)、左右方向(車幅方向)および上下方向(車両高さ方向)を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。車両用シェード装置100は、全体が左右対称に構成される。
【0010】
図1A,
図1Bに示すように、車両用シェード装置100は、フロントガラス3の内面に沿って配置された遮光性を有する布または他の部材(例えばビニール)からなるシェード1を有する。車室内のルーフ200の前端部にはルーフコンソール2が取り付けられ、シェード1とルーフコンソール2とは車両用シェード装置100を構成する。ルーフコンソール2には、シェード1が巻回される軸部(固定軸)が設けられる。固定軸は回転可能かつ移動不能に設けられ、シェード1の一端部(基端部)は固定軸に固定され、固定軸の回転に伴いシェード1の他端部(先端部)が繰り出される。すなわち、シェード1はロールシェードとして構成される。
【0011】
シェード1の先端部には、その左右方向中央部にフック11(
図6参照)が設けられる。車室内の前部のダッシュボード(インストルメントパネルとも呼ぶ)4の上面には、ホルダ41が設けられる。ホルダ41にはフック11が係合され、これによりシェード1を使用位置に固定することができる。ホルダ41からフック11を離脱すると、シェード1をルーフコンソール2内の固定軸に巻回することができ、これによりシェード1を、フロントガラス3の内面から退避した非使用位置に移動することができる。
【0012】
ルーフコンソール2は、車室内のルーフ200に後付け可能な車両のオプション品である。
図2は、ルーフコンソール2を左斜め下方から見た斜視図であり、
図3は、左斜め上方から見た斜視図である。
図2,
図3は、それぞれシェード1が固定軸に巻き取られた状態を示し、シェード1は非使用位置にある。
【0013】
図2,
図3に示すように、ルーフコンソール2は、車幅方向全体にわたって左右方向に延在するとともに前後方向に所定長さだけ延在する樹脂製の容器部材20を有する。容器部材20の上面には、左右方向に細長に延在する凹状の収容部201と、左右一対の凹状の収容部202とが設けられる。収容部202は収容部201の後方に配置され、収容部201と収容部202との間に、容器部材20の右端部から左端部にかけて補強材21が延設される。なお、補強材21は省略することもできる。
【0014】
後側の収容部202は、ルーフ200(
図1B)との間に、後面が開口された略ボックス状の空間を形成する。収容部202には、後面の開口から小物を収容することができ、ルーフコンソール2は収納ケースとして機能する。収容部202の底面には、左右方向に細長のスリット孔202aが開口され、収容部202にティッシュボックスが収容されるとき、スリット孔202aを介してティッシュペーパーを取り出すことができる。前側の収容部201には、左右方向に延在するシェードユニット10が配置される。シェードユニット10は、最上部に、収容部201の左右方向全長にわたって延在する上カバー6を有する。上カバー6は、固定部材65により上方から押さえ付けられて、ルーフコンソール2に固定される。
図2に示すように、容器部材20の前端部には、左右方向にスリット孔23が開口され、スリット孔23を介して容器部材20の下方にシェード1を引き出すことができる。
【0015】
図4は、
図3の左右方向中央部のIV-IV線に沿って切断した車両用シェード装置100の要部断面図である。
図4に示すように、上カバー6は断面略円弧状を呈し、内側に略半円形状の凹部6aを有する。シェードユニット10は、シェード1と上カバー6とに加え、上カバー6の内側の凹部6aに配置され、左右方向に細長の固定軸12と、ユーザにより操作される操作部材16とを有する。
図5は、シェードユニット10の全体構成を示す斜視図であり、シェード1の非使用位置に対応する。
図5に示すように、上カバー6の左右両端部には、側面カバー7が取り付けられる。上カバー6と側面カバー7とは、ルーフコンソール2とともに、シェード1を格納する格納部を構成する。
【0016】
図4に示すように、固定軸12は、左右方向の軸線CL1を中心として左右方向に延在する略円筒形状のシリンダ13を有する。シリンダ13は、軸線CL1に沿って延在するシャフト(不図示)を介して側面カバー7(
図5)から回転可能に支持される。シリンダ13の外周面には、シェード1の基端部が固定され、シリンダ13の周囲にシェード1が巻回される。シェード1の先端部は、左右方向の軸線CL2に沿って左右方向に延在する略円柱形状の棒体17に固定される。棒体17の径はスリット孔23の幅よりも小さく、棒体17はスリット孔23を通過することができる。
【0017】
図4,
図5に示すように、操作部材16は、シェード1の左右方向中央部に設けられる。
図6は、操作部材16の単体の構成を示す斜視図である。
図4,
図6に示すように、操作部材16は、左右方向に延在し、棒体17を支持する略円筒形状の保持部161と、保持部161の下端部から後方に延在する略板状の把持部162と、保持部161の下端部から前方かつ把持部162よりも下方(斜め下方)に延在する突起部163とを有する。突起部163の前端部には、左右方向に向けて略棒状の係合突起164が突設される。突起部163と係合突起164とによりフック11(
図1A)が構成され、操作部材16はフック11を一体に有する。
【0018】
図4に示すように、容器部材20の底面には、スリット孔23の前方において、上方に向けて凹んだ凹部24が設けられる。ユーザが、操作部材16の突起部163を上方(
図4の矢印A方向)に押動すると、突起部163が凹部24内に移動し、保持部161を支点にして操作部材16が回動する。これにより、把持部162が下方(
図4の矢印B方向)に移動し、ユーザは把持部162を容易に把持することができる。詳細な図示は省略するが、
図5に示すように、シリンダ13の内部には、軸線CL1(
図4)に沿ってばね(例えばコイルばね)18が設けられる。ばね18の一端部は非回転部材(例えばシリンダ13内のシャフト)に固定され、他端部は回転部材(例えばシリンダ13)に固定される。これにより、シリンダ13には、
図5の矢印方向にシェード1を巻き取るような付勢力F0が常時作用する。
【0019】
図7は、シェード1の使用位置への下げ動作の一例を示す斜視図である。
図7に示すように、ダッシュボード4の上面には、ホルダ41が取り付けられる。例えば両面テープによりホルダ41が接着して取り付けられる。ホルダ41は、底面から後面および上面にかけて断面略U字状に構成され、ホルダ41の上面に、前縁部から後方にかけて切り欠き41aが設けられる。切り欠き41aには、操作部材16の突起部163が前方から挿入され、ホルダ41の上面の下方に係合突起164が配置される。これによりホルダ41にフック11が係合され、ばね18の付勢力に抗してシェード1を使用位置に保持することができる。
【0020】
なお、詳細な図示は省略するが、
図5に示すように、シリンダ13の軸方向端部には、ばね18によるシェード1の巻き取りを停止するストッパ19が設けられる。ストッパ19は例えばラチェット機構により構成することができる。これにより、シェード1を任意の位置に繰り出した状態で保持することができる。
【0021】
以上の構成において、車両の走行中には、車両用シェード装置100に振動が作用するため、ばね18の取付部に緩みが生じ、シェード1を非使用位置に付勢するためのばね18の付勢力が低下するおそれがある。また、経年劣化によっても、ばね18の付勢力が低下するおそれがある。ばね18の付勢力が低下すると、車両の走行中に振動や衝撃が発生した場合に、シェード1を非使用位置に保持することが困難となるおそれがある。そこで、ばね18の付勢力が低下した場合であっても、シェード1を非使用位置に安定して保持することができるよう、本実施形態は、さらに以下のように車両用シェード装置100を構成する。
【0022】
図8は、本実施形態に係る車両用シェード装置100の要部構成を示す斜視図(斜め前方から見た図)、すなわち
図5の矢視VIII図である。
図8に示すように、棒体17の左右方向両端部は、シェード1の左右方向端面よりも左右方向外側に突設され、その突設部には、略リング状のローラ141と略円筒形状のキャップ14とが装着される。キャップ14は例えば硬質の樹脂材により構成され、ローラ141よりも左右方向外側に配置される。キャップ14は棒体17と同一の軸線CL2上に延在する。キャップ14の外周面は、ローラ141よりも小径かつ棒体17よりも大径である。棒体17とキャップ14とは、軸線CL2に沿って延在し、移動可能な可動軸101を構成する。
【0023】
図9Aは、側面カバー7を左右方向内側から見た側面図(
図8の矢視IX図)である。なお、
図9Aには非使用位置に対応するキャップ14も示される。
図8,
図9Aに示すように、側面カバー7は、上側面カバー7Aと、上側面カバー7Aに連なり、上側面カバー7Aの前方および下方に延設された下側面カバー7Bとを有する。側面カバー7は、樹脂を構成材として一体成型により構成され、前後方向および上下方向に延在する略板状のベース部70を基準として形成される。
【0024】
図9Aに示すように、上側面カバー7Aの左右方向内表面には、軸線CL1を中心に固定軸12を回転可能に支持するための支持部71、より詳しくは、シリンダ13内のシャフトを支持する支持部71が設けられる。さらに上側面カバー7Aの左右方向内表面には、支持部71の周囲(上側、前側、後側)を覆うように、軸線CL1を中心とした略半円形状のカバー支持部72が左右方向内側に向けて突設される。カバー支持部72の前端部および後端部には、それぞれ後方および前方に向けてねじ孔72aが設けられる。
【0025】
図4,
図8に示すように、上カバー6は、上方に向けて凸状に形成された略半円筒形状の円弧部61と、円弧部61の前端部から前方に略水平に延設された平板部62とを有する。
図8に示すように、カバー支持部72の外周面には上カバー6の左右方向端部が取り付けられる。カバー支持部72のねじ孔72aには、上カバー6を貫通したボルト72bが螺合され、これにより上カバー6が側面カバー7に固定される。このとき、上カバー6の平板部62は、下側面カバー7Bの上端部(上板部76)を覆うように配置される。
【0026】
図9Aに示すように、下側面カバー7Bの左右方向内表面には、略矩形状のフラップ支持部73が左右方向内側に向けて突設される。フラップ支持部73の左右方向の突出量は、カバー支持部72の左右方向の突出量と等しく、フラップ支持部73の左右方向内側端面とカバー支持部72の左右方向内側端面とは同一の鉛直面上に位置する。フラップ支持部73は、上下方向に延在する前板部74および後板部75と、前後方向に延在する上板部76および下板部77とを有する。前板部74および後板部75の上端部と上板部76の前後方向両端部とは、傾斜部78を介して接続され、フラップ支持部73の上端角部は傾斜して構成される。
【0027】
下側面カバー7Bの左右方向内表面には、さらに前板部74の後方および後板部75の前方に、それぞれ前板部74および後板部75から所定距離隔てて、左右方向内側に向けて内板部79が突設される。内板部79は、下板部77および傾斜部78から所定の隙間を空けて、前板部74および後板部75と略平行に上下方向に延在する。下板部77には、その前後方向中央部に開口部77aが設けられる。開口部77aの前縁部は、前側の内板部79よりも後方に位置し、開口部77aの後縁部は、後側の内板部79よりも前方に位置する。開口部77aの前後方向長さL1は、キャップ14の外周面の径D1よりも長い。
図8,
図9Aに示すように、前板部74および後板部75には、その左右方向内側端面から左右方向外側に向けて上下一対の切り欠き74a,75aが設けられる。
【0028】
フラップ支持部73の内側には、フラップ8が配置される。フラップ8は、フラップ支持部73の内側形状に沿って略矩形枠状を呈する。すなわち、
図9Aに示すように、フラップ8は、前後一対の前板部81および後板部82と、上下一対の上板部83および下板部84とを有する。前板部81は、フラップ支持部73の前板部74と前側の内板部79との間に配置される。後板部82は、フラップ支持部73の後板部75と後側の内板部79との間に配置される。これによりフラップ8は、フラップ支持部73により位置決めされる。フラップ8は、全体が例えば可撓性を有するゴム材により構成される。
【0029】
フラップ8の下板部84には、前後方向中央部に開口部84aが設けられる。開口部84aの前後方向長さL2は、開口部77aの前後方向長さL1よりも短く、キャップ14の径D1よりも短い。フラップ8の前板部81および後板部82には、上下一対の係合軸81a,82aがそれぞれ前方および後方に向けて突設される。係合軸81a,82aは、フラップ支持部73の切り欠き74a,75aに圧入される。
図8,
図9Aに示すように、係合軸81a,82aの先端部には切り欠き74a,75aよりも大径のフランジ部81b,82bが設けられ、係合軸81a,82aが切り欠き74a,75aに圧入された状態では、フランジ部81b,82bがフラップ支持部73の前後方向外側に位置する。
【0030】
図9Aは、シェード1が最大に巻き取られた状態であり、シェード1の非使用位置に相当する。このとき、キャップ14はフラップ8の内側に位置する。
図9Bは、
図9Aの状態からシェード1を所定量繰り出した状態を示す図である。シェード1とキャップ14とは一体に設けられるため、シェード1が繰り出されると、キャップ14は、開口部84aを介して側面カバー7よりも下方に移動する。
【0031】
図10Aは、この場合のフラップ8の変形の態様を模式的に示す図である。
図10Aに示すように、可動軸101を構成するキャップ14が下方に移動するとき、フラップ8の下板部84の先端(開口端)がキャップ14により下方に押動され、下板部84の先端が下方に向けて弾性変形する。このとき下板部84は、フラップ支持部73の下板部77の開口部77aの上端角部を支点P1にして屈曲する。キャップ14が下板部84を下方に屈曲させて開口部84aを通過するために必要な力を、必要押し下げ力F1と呼ぶ。必要押し下げ力F1には、ばね18の付勢力F0に抗する力は含まれない。キャップ14が下板部84の開口部84aを通過すると、
図9Bに示すように、下板部84は弾性変形により元の形状に戻る。
【0032】
一方、シェード1を使用位置から非使用位置に移動する場合には、キャップ14はフラップ8の下板部84の開口部84aを通過してフラップ8の内側に移動する。
図10Bは、この場合のフラップ8の変形の態様を模式的に示す図である。
図10Bに示すように、キャップ14が上方に移動するとき、フラップ8の下板部84の先端がキャップ14により上方に押動され、下板部84の先端が上方に向けて弾性変形する。このとき下板部84は、内板部79の下端部の前後方向内側の角部を支点P2にして屈曲する。キャップ14が下板部84を上方に屈曲させて開口部84aを通過するために必要な力を、必要押し上げ力F2と呼ぶ。キャップ14が下板部84の開口部84aを通過すると、
図9Aに示すように、下板部84は弾性変形により元の形状に戻る。
【0033】
図10Aと
図10Bとを比較すると、下板部84が下方に屈曲するときの支点P1の位置は上方に屈曲するときの支点P2の位置よりも前後方向内側(開口部84a側)に位置する。このため、シェード1を下方に屈曲するときの必要押し下げ力F1は、上方に屈曲するときの必要押し上げ力F2よりも大きく、可動軸101の重力よりも大きい。これにより、ばね18(
図5)の付勢力F0が低減した状態で、車両に振動が作用した場合であっても、シェード1が非使用位置から落下することを防止することができる。
【0034】
本実施形態では、ばね18の付勢力F0が必要押し上げ力F2よりも大きい値に設定される。これにより、ばね18の付勢力F0によりフラップ8の下板部84を弾性変形させてシェード1を自動的に非使用位置に移動させることができる。
【0035】
本実施形態による車両用シェード装置100の動作をまとめると以下のようになる。シェード1を非使用位置から使用位置へ移動する場合、ユーザは、まず
図2の状態からルーフコンソール2の下方に露出した操作部材16を操作して可動軸101を下方に引っ張り、シェード1を引き出す。より具体的には、
図4に示すように、操作部材16の突起部163を上方(矢印A方向)に押し上げることにより把持部162を下方(矢印B方向)に回動させ、把持部162を把持する。次いで、ユーザは、ばね18(
図5)の付勢力F0に抗して可動軸101を下降する。
【0036】
可動軸101が所定量下降すると、
図10Aに示すように可動軸101の左右両端部のキャップ14が必要押し下げ力F1により、フラップ8の下板部84に当接し、下板部84が下方に押動される。より詳細には、フラップ支持部73の下板部77の開口端を支点P1にして、下板部84は弾性変形により下方に屈曲される。これにより開口部84aが押し広げられ、キャップ14が開口部84aを通過する。シェード1が使用位置まで引き出されると、
図7に示すように、操作部材16のフック11が、ダッシュボード4の上面に取り付けられたホルダ41の切り欠き41aに係合される。これによりシェード1が使用位置に保持され、
図1Aに示すようにフロントガラス3の内面がシェード1で覆われる。
【0037】
シェード1を使用位置から非使用位置へ移動する場合、ユーザは、操作部材16の把持部162を把持して、フック11をホルダ41の切り欠き41aから離脱させる。これによりシェード1がばね18の付勢力F0により巻き取られ、可動軸101が上方に移動する。ばね18の付勢力F0はフラップ8の必要押し上げ力F2よりも大きい。このため、可動軸101の上方移動により、キャップ14がフラップ8の下板部84に当接すると、
図10Bに示すように下板部84が上方に押動される。より詳細には、フラップ支持部73の内板部79の下端部を支点P2にして、下板部84は弾性変形により上方に屈曲される。これにより開口部84aが押し広げられ、キャップ14が開口部84aを通過してシェード1が非使用位置に移動する。シェード1が非使用位置に移動した状態では、
図2に示すように操作部材26のみがルーフコンソール2から露出する。このため、乗員からシェード1は見えず、車室内の見栄えがよい。
【0038】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用シェード装置100は、非使用位置から車両のフロントガラス3の内面を覆う使用位置に、下方に向けて引き出し可能に設けられるシェード1と、非使用位置のシェード1が格納される格納部(ルーフコンソール2、上カバー6,側面カバー7)と、シェード1の引き出し側の端部に取り付けられ、軸線CL2に沿って略水平方向に延在する可動軸101と、を備える(
図1A,
図8)。格納部は、非使用位置から使用位置へシェード1が引き出されるときに可動軸101(キャップ14)が通過する開口部84aを規定するフラップ8を有する(
図9A)。フラップ8は、シェード1の引き出し動作時に、キャップ14により押動されて開口部84aの面積が拡大するように弾性変形可能に設けられる(
図9A)。
【0039】
これにより、ばね18の経年劣化や破損等が生じた場合であっても、車両走行時の振動に拘わらず、シェード1を非使用位置に安定して保持することができる。このため、走行中にフロントガラス3がシェード1によって覆われることを確実に防止することができ、走行中のドライバの視界を良好に確保できる。シェード1は、非使用時に格納されるため、乗員からは見えず、車室内の見栄えもよい。
【0040】
(2)フラップ8は、開口部84aを挟んで対向配置された前後一対の下板部84を有する(
図9A)。側面カバー7は、前後一対の下板部84の基端部を支持するフラップ支持部73(下板部77)を有する(
図9A)。開口部84aは、前後一対の下板部84の先端部の間に設けられ、前後一対の下板部84は、それぞれの先端部が屈曲可能に設けられる。これにより、簡易な構成で、シェード1の非使用位置からの落下を防止できる。
【0041】
(3)前後一対の下板部84は、それぞれフラップ支持部73の前後一対の下板部77の先端部から突設されるとともに、当該先端部を支点P1にして屈曲可能に設けられる(
図10A)。これによりフラップ8の屈曲支点の位置を容易に変更することができ、可動軸101が開口部84aを通過するために必要な必要押し下げ力F1の設定が容易である。
【0042】
(4)前後一対の下板部84は、上方および下方に屈曲可能に設けられるとともに、下方に屈曲されるときの支点P1の位置が上方に屈曲されるときの支点P2の位置よりも開口部84aに接近して設定されるようにフラップ支持部73に支持される(
図10A,
図10B)。これにより、シェード1の繰り出しに要する力を巻き上げに要する力よりも大きく設定することができる。
【0043】
(5)フラップ8は、シェード1の引き出し動作時に可動軸101の軸方向両端部により押動されるように、可動軸101の軸方向両端部に対応する位置に設けられる。より具体的には、フラップ8は、係合軸81a,82aがフラップ支持部73の切り欠き74a,75aに圧入することでフラップ支持部73に固定される(
図8,
図9A)。フラップ8を側面カバー7以外に設ける場合、フラップ8を支持するためのステイ等を別途設ける必要があるが、本実施形態では、側面カバー7でフラップ8が支持されるため、そのようなステイが不要である。
【0044】
(6)可動軸101は、その軸方向両端部に可動軸101の外周面を形成するキャップ14を有する(
図8)。これにより、キャップ14の径を変更するだけで、シェード1の必要押し下げ力F1を容易に調整することができる。
【0045】
(7)フラップ8は、可動軸101が開口部84aの上方から開口部84aを通過するために要する必要押し下げ力F1が、開口部84aの下方から開口部84aを通過するために要する必要押し上げ力F2よりも大きくなるように、弾性変形可能に設けられる(
図10A,
図10B)。これにより、シェード1の繰り出し時に要する力が巻き取り時に要する力よりも大きくなり、シェード1の巻き取りを容易としながら、シェード1を非使用位置に安定して保持できる。
【0046】
(8)車両用シェード装置100は、格納部(ルーフコンソール2、上カバー6)に格納され、シェード1が巻回される固定軸12をさらに備える(
図4)。固定軸12は、シェード1が固定軸12(シリンダ13)に巻き取られるようにシェード1を付勢するばね18を有する(
図5)。これにより、シェード1を非使用位置でコンパクトに格納することができる。また、シェード1を自動的に巻き取ることができ、シェード1の使用位置から非使用位置への移動が容易である。
【0047】
(9)固定軸12は、固定軸12へのシェード1の巻き取りを停止するストッパ19をさらに有する(
図5)。これによりシェード1を任意の繰り出し位置に保持できる。
【0048】
(10)フラップ8は、可動軸101が下方から開口部84aを通過するために要する必要押し上げ力F2が、ばね18による付勢力F0よりも小さくなるように、弾性変形可能に設けられる。これにより、ばね18の付勢力F0により可動軸101がフラップ8の下板部84を押し広げて、可動軸101が自動的に開口部84aを通過することができ、シェード1を即座に使用位置から非使用位置に移動できる。
【0049】
本実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、いくつかの変形例について説明する。上記実施形態では、フラップ8が開口部84a(開口)を挟んで前後一対の下板部84(第1弾性体、第2弾性体)を有するようにしたが、弾性体の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、フラップ8が、略矩形枠状に構成されるとともに、側面カバー7のフラップ支持部73に支持されるようにしたが、弾性体を支持する基部の構成は上述したものに限らない。
図11A,
図11Bは、弾性体と基部の他の例を示す図であり、
図10A,
図10Bの変形例を示す。
図11A,
図11Bの例では、空隙211aを介して配置された前後一対のステイ211に、空隙212aを介して配置された前後一対のフラップ212が、リベット213により固定される。ステイ211は、例えば二点鎖線で示すルーフコンソール210の底部に固定される。
【0050】
フラップ212は、略板状に構成され、フラップ212の上面が、空隙214aを介して配置された前後一対の押さえ板214により支持される。空隙214aはキャップ14の径よりも長く、空隙211aよりも短い。空隙212aはキャップ14の径よりも短い。可動軸101が上方から空隙212aを通過するとき、
図11Aに示すように、フラップ212はステイ211の端部を支点P1にして下方に屈曲される。可動軸101が下方から空隙212aを通過するとき、
図11Bに示すように、フラップ212は押さえ板214の端部を支点P2して上方に屈曲される。このとき、支点P2は支点P1よりも前後方向内側、すなわち空隙212a側(開口側)に位置する。これにより、
図10A,
図10Bと同様、可動軸101を下方に移動するための必要押し下げ力F1は、上方に移動するための必要押し上げ力F2よりも大きくなる。
【0051】
上記実施形態では、ルーフコンソール2の上方にシェード1を格納するようにしたが、格納部の構成は上述したものに限らない。ルーフコンソール2を省略し、上カバー6と側面カバー7とで格納部を構成してもよい。シェードユニット10を、ルーフコンソール2を介さずに、ウインドガラスに隣接したルーフ200に設けるようにしてもよい。上記実施形態では、軸部および第1軸部としての可動軸101の軸方向両端部にキャップ14を設けるようにしたが、軸部の他の位置にキャップ部を設けるようにしてもよい。上記実施形態では、シェード1を、固定軸12(第2軸部)に巻回されるロールシェードとして構成したが、シェード1の構成はこれに限らない。上記実施形態では、固定軸12の内部にばね18(付勢部)を設けるようにしたが、付勢部を固定軸12の支持部等、他の位置に設けるようにしてもよい。上記実施形態では、固定軸12の端部にストッパ19(停止機構)を設けるようにしたが、停止機構の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、ばね18の付勢力F0を必要押し上げ力F2よりも大きい値に設定したが、付勢力F0が大きすぎると、ユーザがシェード1を下方に引き出すときに大きな労力が必要となる。そこで、ユーザの労力を抑えるために、付勢力F0の下限だけでなく上限を設定することが好ましい。例えば、付勢力F0を、必要押し下げ力F1よりも小さい値に設定するようにしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、フロントガラス3に車両用シェード装置100を適用したが、本発明の車両用シェード装置は、フロントガラス3に限らずリアやサイドのウインドガラスにも同様に適用することができる。
【0053】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 シェード、2 ルーフコンソール、6 上カバー、7 側面カバー、8 フラップ、10 シェードユニット、12 固定軸、14 キャップ、17 棒体、18 ばね、19 ストッパ、73 フラップ支持部、77 下板部、77a 開口部、79 内板部、84 下板部、84a 開口部、100 車両用シェード装置、101 可動軸、P1,P2 支点