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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042732
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】冷媒処理装置および冷媒処理方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 45/00 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
F25B45/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147498
(22)【出願日】2022-09-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305062457
【氏名又は名称】プロステップ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】砂原 宏光
(72)【発明者】
【氏名】松崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 茂
(72)【発明者】
【氏名】内田 稔
(72)【発明者】
【氏名】根市 浩
(72)【発明者】
【氏名】橘和 尚史
(57)【要約】
【課題】本発明の一目的は、冷媒の回収率が高く作業効率のよい冷媒処理装置および冷媒処理方法を提供する。
【解決手段】
本発明の一解決手段に係る冷媒処理装置は、第1経路と第2経路と第3経路とを備え、
第1経路は、空調システムの高圧側と接続する高圧管と、空調システムの低圧側と接続する低圧管とから構成され、第2経路は、空調システムから冷媒を回収するコンプレッサと、コンプレッサを駆動させ第1経路を通過した冷媒を分離するオイルセパレータと、オイルセパレータで再生した冷媒を貯留するタンクと、タンクに貯留される冷媒を計量する計量器とから構成され、第3経路は、タンクと空調システムの高圧側とが接続するよう構成される。第1経路と第2経路では、空調システムの冷媒を回収し再生する回収再生工程が行われ、第3経路では、空調システムに気体冷媒を注入する注入工程が行われ、気体冷媒は、タンクに流入する冷媒が定める量以下のときに注入される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調システムで用いられる冷媒を処理する冷媒処理装置であって、
前記冷媒処理装置は、第1経路と第2経路と第3経路とを備え、
前記第1経路は、
前記空調システムの高圧側と接続する高圧管と、
前記空調システムの低圧側と接続する低圧管とから構成され、
前記第2経路は、
前記空調システムから冷媒を回収するコンプレッサと、
前記コンプレッサを駆動させ第1経路を通過した冷媒を分離するオイルセパレータと、
前記オイルセパレータで再生した冷媒を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留される冷媒を計量する計量器とから構成され、
前記第3経路は、
前記タンクと前記空調システムの高圧側とが接続するよう構成され、
前記第1経路と前記第2経路では、空調システムの冷媒を回収し再生する回収再生工程が行われ、
前記第3経路では、前記空調システムに気体冷媒を注入する注入工程が行われ、
前記気体冷媒は、前記タンクに流入する冷媒が定める量以下のときに注入される
ことを特徴とする冷媒処理装置。
【請求項2】
前記注入工程が繰り返し実行される、
ことを特徴とする請求項1記載の冷媒処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒処理装置および冷媒処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調システム内の冷媒を回収する技術として特許文献1のような冷媒処理装置が知られている。特許文献1の冷媒処理装置は、空調システム内に充填されている冷媒を冷媒処理装置に内蔵されるコンプレッサで回収し、回収した冷媒の不純物をオイルセパレータで取り除き、再び空調システム内に充填している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6055647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的に冷媒をコンプレッサで回収し始めると空調システム内の圧力が低下し、冷媒が低温凝縮してしまう。冷媒が低温凝縮すると冷媒に混入した冷凍機油が凍結してしまい、空調システム内の管路が閉塞され冷媒が回収されにくくなってしまう。この現象は冷媒寝込み(以下、寝込み冷媒とも言う)と言われている。この現象が起こると冷媒の回収速度が低下し、回収時間がかかってしまう。そのため回収作業を行う作業者にとっては作業効率が悪くなるため問題であった。また、空調システム内の管路が閉塞されるため冷媒の回収率が下がってしまうという問題もあった。
【0005】
本発明の一目的は、冷媒の回収率が高く作業効率のよい冷媒処理装置および冷媒処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一解決手段に係る冷媒処理装置は、第1経路と第2経路と第3経路とを備え、
第1経路は、空調システムの高圧側と接続する高圧管と、空調システムの低圧側と接続する低圧管とから構成される。第2経路は、空調システムから冷媒を回収するコンプレッサと、コンプレッサを駆動させ第1経路を通過した冷媒を分離するオイルセパレータと、オイルセパレータで再生した冷媒を貯留するタンクと、タンクに貯留される冷媒を計量する計量器とから構成される。第3経路は、タンクと空調システムの高圧側とが接続するよう構成される。
第1経路と第2経路では、空調システムの冷媒を回収し再生する回収再生工程が行われ、
第3経路では、空調システムに気体冷媒を注入する注入工程が行われる。気体冷媒は、タンクに流入する冷媒が定める量以下のときに注入される。
【0007】
また、本発明の一解決手段に係る冷媒処理装置は、注入工程を繰り返し実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一解決手段によれば、冷媒の回収率が高く作業効率のよい冷媒処理装置および冷媒処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る冷媒処理装置および空調システムの概略構成図である。
図2図1に示す冷媒処理装置の制御系のブロック図である。
図3図1に示す冷媒処理装置の回収再生工程のフロー図である。
図4図1に示す冷媒処理装置の回収再生工程のフロー図である。
図5】回収再生工程における注入工程のフロー図である。
図6図1に示す冷媒処理装置の充填工程のフロー図である。
図7】冷媒回収率を比較したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る冷媒処理装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る冷媒処理装置および空調システムの概略構成図である。本実施形態における冷媒処理装置100は、空調システムU(例えば、車両用空調システム)で用いられる冷媒(例えば、HFC134a、HFO1234yf)をコンプレッサ12で引き抜きながら不純物を取り除き(以下、再生するとも言う)つつタンク19へ回収し、回収した冷媒を再び空調システムUへ充填することができる。
【0013】
冷媒処理装置100は、空調システムUに充填される冷媒が通流する第1経路96を備えている。第1経路96は、高圧ホース2と低圧ホース3を備えている。高圧ホース2の一端はカプラ4を、低圧ホース3の一端はカプラ5を備えている。カプラ4は空調システムUの高圧バルブVHに、カプラ5は空調システムUの低圧バルブVLにそれぞれ接続されている。また、高圧ホース2は、カプラ4を備えていない側の端部において高圧管路6と接続されており、中途に高圧管路6の圧力を測る高圧用圧力センサ8を備えている。低圧ホース3は、カプラ5を備えていない側の端部において低圧管路7と接続されており、中途に低圧管路7の圧力を測る低圧用圧力センサ9を備えている。また、高圧管路6と低圧管路7は接続管75により接続されている。
【0014】
第1経路96は、真空ポンプ14を備えている。真空ポンプ14を備えることにより空調システムU内を真空引きすることができる。
【0015】
冷媒処理装置100は、冷媒に混入する不純物を取り除き、ろ過した冷媒を回収する第2経路97を備えている。第2経路97は、流入する冷媒に含まれる不純物を取り除く第1オイルセパレータ10を備えている。第1オイルセパレータ10は、例えば蒸留式の分離装置で、冷媒が第1オイルセパレータ10に流入すると冷媒の一部が気化し、含まれる不純物(例えば冷凍機油、スラッジ)は第1オイルセパレータ10の底に沈殿する。それにより、冷媒に含まれる不純物を取り除くことができる。また、沈殿した不純物は第1オイルセパレータ10の下部に設けられた冷凍機油受け20に排出される。冷凍機油受け20はロードセル25を備えている。ロードセル25は、オイルセパレータ10により取り除かれた不純物を計量することができる。
【0016】
第2経路97は、ドライヤ11を備えている。ドライヤ11は第1オイルセパレータ10で気化された冷媒に含まれる水分を取り除くことができる。
【0017】
また、第2経路97は、コンプレッサ12を備えている。コンプレッサ12は、入力側が空調システムUへ通じる管路と接続されており、出力側が後述するタンク19側へと通じる管路と接続されている。そのため、冷媒処理装置100は空調システムUの冷媒をタンク19へと貯留することができる。
【0018】
第2経路97は、第2オイルセパレータ13を備えている。第2オイルセパレータ13は、冷媒に含まれる不純物を取り除く装置である。第2オイルセパレータ13により冷媒の一部が気化し、含まれる不純物を取り除くことができる。
【0019】
第2経路97は、循環管74を備えている。循環管74は一端が第2オイルセパレータ13の下部と接続され、他端が第1オイルセパレータ10へと通じる管路と接続されている。そのため、循環管74を通流する冷媒は第2オイルセパレータ13から第1オイルセパレータ10へと通流することができる。
【0020】
第2経路97は、コンデンサ17、18を備えている。コンデンサ17は、第1オイルセパレータ10内に設けられ、第2オイルセパレータ13で気化された冷媒の一部を凝縮することができる。コンデンサ18は、コンデンサ18内に冷媒を通流させることで冷媒を液化させることができる。
【0021】
第2経路97はタンク19を備えている。タンク19はオイルセパレータ10、13により不純物が取り除かれた冷媒を貯留することができる。また、コンデンサ17、18により一部が凝縮された冷媒はタンク19に流入することで一部が再び気化される。そのため、タンク19内には気化された冷媒と液化された冷媒が貯留される。また、タンク19にはロードセル24が設けられ、タンク19に貯留される冷媒の重量を計測している。また、タンク19はタンク内の圧力を測定する図示しないタンク圧力センサ35を備えている。
【0022】
また、タンク19の下部には充填管73が接続されている。充填管73は一端がタンク19の下部と接続し、他端は、接続管78と接続されている。また、接続管78は、低圧管路7と接続管75とに接続されている。不純物が取り除かれた冷媒(以後、再生冷媒とも言う)は、充填管73、接続管78、接続管75の順に通り、高圧管路6へと通流する。そのため、冷媒処理装置100は、タンク19内の再生冷媒を空調システムUへ供給(充填)することができる。
【0023】
また、第2経路97は、接続管69を備えている。接続管69は、一端が充填管73に接続され、他端が第1オイルセパレータ10へと通じる管路と接続されている。タンク19に貯留される液化冷媒は充填管73と接続管69を通り、第1オイルセパレータ10へと流入することができる。
【0024】
また、冷媒処理装置100は、第1補充部33を備えている。第1補充部33は、新しい冷媒と冷凍機油を空調システムUへ充填するためのものである。新しい冷媒とは、充填する再生冷媒が空調システムUで用いられる冷媒より少ないときに補充する冷媒である。第1補充部33は、補充管71を備え、補充管71は一端が接続管78と接続され、他端が冷媒缶32とオイル缶30、31とに連通する。オイル缶30、31は、例えばポリアルキレングリコールやポリオールエステルなどを貯留する缶であり、冷媒缶32は、新しい冷媒を貯留する缶である。
【0025】
また、第1経路96の中途には、再生した冷媒を空調システムUへ充填する時、冷凍機油を補充する第2補充部34が備えられている。第2補充部34はオイルタンク28、29を備えており、オイルタンク28、29は、例えばポリアルキレングリコールやポリオールエステルなどを貯留する。第2補充部34は、所定量の冷凍機油を補充管72を通じて高圧管路6に供給することができ、ひいてはその新しい冷凍機油を空調システムUへと補充することができる。尚、第2補充部34には液化した冷凍機油が貯留されたオイルタンクを用いる。液体の冷凍機油は気体の冷凍機油(オイル缶30、31)より安価に手に入るため、消費者のニーズに合わせて提供することができる。
【0026】
また、冷媒処理装置100は、再生した冷媒を空調システムUに注入する第3経路98を備えている。第3経路98は注入管70を備えている。注入管70は一端が冷媒を回収するタンク19の上部と接続され、他端が高圧ホース2と接続されている。注入管70はタンク19の上部と接続することで気体の冷媒を注入管70へ流入させることができる。また、注入管70が空調システムUの高圧バルブVH近傍の高圧ホース2と接続されているため、高圧冷媒を気体のまま空調システムUへ注入することができる。前述したように、コンプレッサ12を駆動すると、空調システムU内は減圧され、冷媒寝込みが起こってしまう。しかし、注入管70により高圧冷媒を気体のまま空調システムUに注入することで、寝込んだ冷媒を溶かすことができる。
【0027】
冷媒処理装置100は、空調システムUの回路を洗浄する第4経路99を備えている。第4経路99は洗浄管77を有している。洗浄管77は、一端が充填管73と接続され、他端が高圧プラグ26と低圧プラグ27とを有している。また、第4経路99は、接続ホース79を備えている。接続ホース79は高圧プラグ26と空調システムUの高圧バルブVHと接続することで、タンク19内の液体冷媒を空調システムUに注入することができる。液体の再生冷媒を注入することで、空調システムUの管路内に付着する冷凍機油、スラッジなどの不純物を洗い流すことができる。
【0028】
冷媒処理装置100は、管路切り替え用の電磁弁40~54を備えている。電磁弁40は高圧管路6に設けられている。電磁弁41は、低圧管路7に設けられている。電磁弁42は接続管75の端部に設けられた真空ポンプ14より空調システムU側に設けられている。電磁弁43は、接続管78に設けられている。電磁弁44は、接続管69に設けられている。電磁弁54は、接続管76に設けられている。電磁弁45は循環管74に設けられている。電磁弁46は、冷凍機油受け20と接続する排油パイプ21に設けられている。電磁弁47、49、50は補充管71に設けられている。電磁弁51、52は補充管72に設けられている。電磁弁48は、洗浄管77に設けられている。電磁弁53は、注入管70に設けられている。
【0029】
冷媒処理装置100は、管路内を流通する流体の逆流を防止する逆止弁80~91を備えている。逆止弁86は電磁弁42と真空ポンプ14との間に設けられている。逆止弁90は、接続管76に設けられている。逆止弁80、81は補充管72に設けられている。逆止弁82、83、91は補充管71に設けられている。逆止弁85は、接続管78に設けられている。逆止弁87は、循環管74に設けられている。逆止弁88は、接続管69に設けられている。逆止弁84は、洗浄管77に設けられている。逆止弁89は、注入管70に設けられている。
【0030】
また、冷媒処理装置100は、安全弁22を備えている。安全弁22は、冷媒処理装置100内の圧力が所定外になると大気開放を行う。そうすることで装置内の圧力を調整することができる。
【0031】
図2は、冷媒処理装置100の制御系を示すブロック図である。冷媒処理装置100は、制御部36を備えている。制御部36は、高圧用圧力センサ8と低圧用圧力センサ9、タンク圧力センサ35、ロードセル24、25、コンプレッサ12、真空ポンプ14、電磁弁40~54、および操作ボード37と電気的に接続されている。制御部36は、操作ボード37からの指令に基づいて記憶されたプログラムを実行し、各圧力センサ8、9、35、ロードセル24、25からの信号に基づいてコンプレッサ12、真空ポンプ14、電磁弁40~54を作動させる種々の機能を有している。
【0032】
操作ボード37は、冷媒の充填量を表示する充填量表示部、高圧管路6の圧力を表示する高圧用圧力表示部、低圧管路7の圧力を表示する低圧用圧力表示部といった表示部を備えている。操作ボード37は、冷凍機油の種類(例えば、ポリアルキレングリコールやポリオールエステル)を選択する冷凍機油選択キー、コース選択キー、充填量等を調整する調整キー、スタートキー、作業を一時中断させるための一時停止キー、途中停止した作業を再開させる再開キー、全作業終了後、装置を初期状態に戻すための終了キー、管路内を洗浄するクリーニングキーといった入力部を備えている。また、操作ボード37は、空調システムUと冷媒処理装置100とを接続するカプラ4、5が外れていることなどを作業者に報知する報知部を備えている。
【0033】
次に、冷媒処理装置100を用いた冷媒処理方法について、冷媒を回収および再生し充填する『回収充填コース(全自動コース)』をもとに説明する。回収充填コースでは、空調システムUからほぼ全量の冷媒を回収しつつ、冷凍機油を分離等して再生する回収再生工程(図3、4)と、適量の冷媒を空調システムUに充填する充填工程(図6)が順次実行される。
【0034】
冷媒の回収再生処理を行う作業者は、準備作業として、車両のエンジンを停止し、操作ボード37に空調システムUに充填されている冷凍機油の種類を冷凍機油選択キーとで選択する。その後、冷媒処理装置100の高圧ホース2のカプラ4を空調システムUの高圧バルブVHへ接続し、低圧ホース3のカプラ5を低圧バルブVLへ接続する。カプラ4、5を接続後、作業者は冷媒を回収から充填までを行う『回収充填コース(全自動コース)』を選択する。また、作業者は、車両に示されている冷媒充填量表示部を見ながら調整キーで充填する所定冷媒量Cを設定する。また、作業者は、調整キーで充填する所定冷凍機油量Dも設定し、スタートキーを入力する。スタートキーが入力されると冷媒処理装置100は、『回収充填コース(全自動コース)』の<回収再生工程>を開始する。なお、開始時においてコンプレッサ12は停止し、電磁弁40~54は閉じた状態である。
【0035】
<回収再生工程>
図3、4は、冷媒の回収再生工程S100を示すフロー図である。回収再生工程では、スタートキーが入力されると、高圧ホース2と低圧ホース3が空調システムUと接続されているかを確認する。まず、冷媒処理装置100は、高圧用圧力センサ8により、高圧管路6内の圧力P1を測定する(S101)。この時、圧力P1が所定値PH(例えば0.1MPa)より高いと、高圧ホース2が高圧バルブVHと接続されていると判断する。圧力P1が所定値PHより低いと、高圧ホース2が接続されていないと判断し、作業者に向けてその旨を報知する。
【0036】
高圧ホース2が接続されていると判断すると、電磁弁41を開き(S102)低圧用圧力センサ9により低圧管路7内の圧力を測定する(S103)。圧力P2が所定値PL(0.05Mpa)より高いと、低圧ホース3が低圧バルブVLと接続されていると判断する。圧力P2が所定値PLより低いと、低圧ホース3が接続されていないと判断し、作業者にその旨を報知する。
【0037】
低圧ホース3が接続されていると判断すると、冷媒処理装置100は、電磁弁40、54を開き、電磁弁41を閉め(S104)、コンプレッサ12を駆動させる(S105)。
【0038】
コンプレッサ12が駆動されると、冷媒処理装置100は、高圧ホース2から冷媒を高圧液体の状態で取り込み、第2経路97へと送り込む。第2経路97を通流する冷媒は、第1オイルセパレータ10へ流入する。液状の冷媒は一部が減圧気化し、含有する劣化した冷凍機油が分離される。気化された冷媒は、ドライヤ11により含有する水分が取り除かれ、コンプレッサ12で圧縮され再度液化し、第2オイルセパレータ13に流入する。第2オイルセパレータ13へ流入する冷媒は、一部が気化し、再び含有する冷凍機油が分離される。気化し再生した冷媒は、第1オイルセパレータ10に内蔵されるコンデンサ17を通過することで液化される。ここで、第1オイルセパレータ10に内蔵したコンデンサ17に液化冷媒を通すことで、第1オイルセパレータ10が加熱され、冷媒の熱交換を促進することができる。コンデンサ17を通過した後、冷媒は、さらにコンデンサ18を通過し、タンク19で回収される。また、ロードセル24により、回収した冷媒を計量することができる。
【0039】
次に、冷媒処理装置100は、低圧管路7の低圧用圧力センサ9で検出される圧力P3が所定値PH(例えば0.5Mpa)未満になると(S106)、空調システムUの高圧側に残留している冷媒が減圧気化され気体状態であると判断する。そして冷媒処理装置100は、低圧管路7の電磁弁41を開き(S107)、空調システムUの高圧側及び低圧側の双方から残留している気体冷媒をタンク19に回収する。この時、冷媒処理装置100は、残留する冷媒を第1経路96と第2経路97を通過されることによりタンク19に回収する。また、タンク19に回収された冷媒はロードセル24により計量される。
【0040】
次に、低圧管路7の低圧用圧力センサ9が検出する圧力P4が所定値PL(例えば0.2Mpa)以下になる(S108)と、電磁弁40、41を閉じ(S109)再び低圧管路7の圧力を測定する(S110)。低圧管路7の圧力P5が所定値PL(例えば0.00Mpa)未満になると電磁弁54を閉じ、コンプレッサ12を停止し(S112)する。そして、電磁弁45、46を開き(S113)冷凍機油を回収する。電磁弁45を開くことで、第1オイルセパレータ10内に冷媒が流入する。そのため、流入する圧力により第1オイルセパレータ10に沈殿する不純物が冷凍機油受け20に排出できる。冷凍機油を回収し終わると冷媒処理装置100は、電磁弁45、46を閉じる(S114)。
【0041】
<注入工程>
図5は、回収再生工程において注入工程S200を示すフロー図である。冷凍機油を回収し終わると、冷媒処理装置100は、再びコンプレッサ12を駆動し(S201)、電磁弁40、41、54を開き(S202)、空調システムU内に残留する冷媒を回収する。
【0042】
この時、空調システムU内は減圧されているため冷媒寝込みが起こっている可能性がある。そこで、冷媒処理装置100は、例えば、90秒毎にタンク19に流入する冷媒量をロードセル24で計量する。その計量値から冷媒処理装置100は、タンク19で回収される毎秒の流量を算出する。その算出した流量(以下、回収流量A1という)が所定値(タンクG1)以下のとき空調システムU内で冷媒寝込みが起きている可能性があると判断する(S203)。すると、冷媒処理装置100は、電磁弁40、41、54を閉じ(S204)、電磁弁53を開け(S205)、注入管70に高温高圧の気体冷媒を所定量g注入する(S206)。空調システムU内は減圧されているため圧力差により空調システムUの高圧側へと高温高圧の冷媒が流れる。すると、高温高圧の気体冷媒は、空調システムU内の低温冷媒の気化を促進することができる。その後、冷媒処理装置100は、電磁弁53を閉じ(S207)、電磁弁40、41、54を開け(S208)、冷媒をタンク19に回収する。冷媒を空調システムUの高圧側に注入後、冷媒を回収すると、気化された冷媒が回収しやすくなる。その後、冷媒処理装置100は、再び(例えば90秒後)回収流量A2を算出し、算出した流量が所定値(タンクG2)以下になるまで注入工程S204~S209を繰り返し行う。そして回収流量A2が所定値(タンクG2)以下になると、空調システム内で冷媒寝込みは起きていない(寝込み冷媒を溶かした)と判断し、注入工程を終了する。
【0043】
一方、工程S203のとき、冷媒処理装置100は、回収流量A1が所定値(例えば0.4g/秒)より大きいと判断すると、空調システムU内で冷媒寝込みが起きていないと判断し、引き続き、空調システムU内の冷媒を回収する。その後(例えば90秒後)、冷媒処理装置100は、再び回収流量A1を測定する。
【0044】
注入工程が終了すると図4の回収再生工程のS115へと戻る。S115では、低圧管路7の圧力を測定する工程を行う。冷媒処理装置100は、低圧管路7の低圧用圧力センサ9で検出される圧力PLが所定値P6(-0.03Mpa)以下になると(S115)、冷媒処理装置100は冷媒回収が終了したと判断し、電磁弁40、41、54を閉じ、コンプレッサ12を停止する。これにより、回収再生工程は終了となり、次の充填工程へと移行する。この時、冷媒処理装置100は、作業者に対して次の工程に移行することを報知する(S118)。
【0045】
<充填工程>
図6は、充填工程を示すフロー図である。本工程では、充填する冷凍機油をオイルタンク28(液体)から充填することを例にして説明する。
【0046】
充填工程では、まず、第1補充部34から冷凍機油が空調システムUに補充される。具体的に説明すると、オイルタンク28の冷凍機油を高圧管路6に供給(補充)するため電磁弁51を開ける(S301)。空調システムU内は、回収再生工程により減圧されているため、電磁弁51を開くとオイルタンク28の冷凍機油が空調システムU側へ吸引される。これにより、新しい冷凍機油が空調システムUに供給(補充)される。尚、オイルタンク28は例えば、図示しない冷凍機油の重量を計量するロードセルが備えられている。そのため、所定冷凍機油量Dを空調システムUに供給(補充)することができる。その後、冷媒処理装置100は、空調システムUに冷凍機油が供給されると電磁弁51を閉じる(S303)。
【0047】
続いて、充填工程では、高圧の再生冷媒を空調システムUに充填する。タンク19から空調システムUの高圧側へと通じる管路に設けられた電磁弁43、40を開ける(S304)。電磁弁43、40を開けると、空調システムU内は、回収再生工程により減圧されているため、空調システムUの高圧側へ再生冷媒は吸引される。
【0048】
冷媒処理装置100は、タンク19から所定冷媒量C分減少したことを検出すると(S305)、空調システムU内に所定冷媒量Cが充填されたと判断する。その後、電磁弁43、40を閉じる(S306)。
【0049】
以上の工程により充填工程が終了する。充填工程が終了したら、冷媒処理装置100は、作業者に案内を出力する(S307)。
【0050】
また、冷媒処理装置100は、空調システムUの管路(回路)を洗浄する洗浄工程を行うことができる。例えば、洗浄工程では、空調システムUの冷媒をほぼ全量回収し終わったとき、空調システムの管路に付着した冷凍器油やスラッジなどを洗い流す。この洗浄工程では、タンク19内の再生した高圧液体冷媒を直接空調システム内に流入させることで、空調システムU内の管路(回路)を洗浄する。
【0051】
このように冷媒処理装置100では、空調システムU内の冷媒を回収再生し、充填することができる。また、空調システムU内で冷媒寝込みが起こっても、注入工程を行うことで、空調システムUの高圧側に気体冷媒を注入することができる。そのため、冷媒寝込みを解消することができる。
【0052】
図7は、冷媒回収率を表したグラフである。このグラフでは、空調システムUに充填される冷媒規程量Cから冷媒処理装置100で回収された冷媒の回収率(%)を求め、注入工程を行ったときと行わなかったときとで比較している。このグラフから読み取れるように、注入工程を行わないとき(注入工程なし)も高い冷媒回収率を表しているが、注入工程を行ったとき(注入工程あり)はより高い冷媒回収率を示している。具体的に比べると、注入工程なしよりも注入工程ありの方が約10%多くの冷媒を回収することができる。これにより、冷媒処理装置100は、注入工程を行うことで空調システムU内の寝込み冷媒を解消し、残留する冷媒を回収することができる。
【0053】
以上により、本発明に係る冷媒処理装置100および冷媒処理方法について説明した。本発明は前記実施例に限定されるものではなく、形状や構成はその要旨を逸脱しない範囲で変更可能としている。
【符号の説明】
【0054】
2 高圧ホース、 3 低圧ホース、 4、5 カプラ、 6 高圧管路、 7 低圧管路、 8 高圧用圧力センサ、 9 低圧用圧力センサ、 10 第1オイルセパレータ、 11 フィルタドライヤ、 12 コンプレッサ、 13 第2オイルセパレータ、 14 真空ポンプ、 17、18 コンデンサ、 19 タンク、 20 冷凍機油受け、 21 排油パイプ、 22 安全弁、 24、25 ロードセル、 28、29 オイルタンク、 30、31 オイル缶、 32 フロン缶、 33 第1補充部、 34第2補充部、 40~54 電磁弁、 70 注入管、 71、72 補充管、 73 充填管、 74 循環管、 69、75、76、78 接続管、 77 洗浄管、 80~91 逆止弁、 96 第1経路、 97 第2経路、 98 第3経路、 99 第4経路、 100 冷媒処理装置、 VH 高圧バルブ、 VL 低圧バルブ、 U 車両用空調システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
空調システム内の冷媒を回収する技術として特許文献1のような冷媒処理装置が知られている。特許文献1の冷媒処理装置は、空調システム内に充填されている冷媒を冷媒処理装置に内蔵されるコンプレッサで回収し、回収した冷媒の不純物をオイルセパレータで取り除き、再び空調システム内に充填している。
一般的に、冷媒をコンプレッサで回収し始めると管路内の圧力が低下し、冷媒が低温凝縮して管路内に残留してしまうという現象が起こる(冷媒寝込み、またその冷媒を寝込み冷媒と言う。)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
特許文献1のような冷媒処理装置を用いた場合であっても、空調システム内で冷媒寝込みの現象が起こると、冷媒の回収速度が低下し、回収時間がかかってしまう。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調システムで用いられる冷媒を処理する冷媒処理装置であって、
前記冷媒処理装置は、第1経路と第2経路と第3経路とを備え、
前記第1経路は、
前記空調システムの高圧側と接続する高圧管と、
前記空調システムの低圧側と接続する低圧管と、
前記高圧管の圧力を検知する高圧圧力センサと、
前記低圧管の圧力を検知する低圧圧力センサと、から構成され、
前記第2経路は、
前記空調システムから冷媒を回収するコンプレッサと、
前記コンプレッサを駆動させ第1経路を通過した冷媒を分離するオイルセパレータと、
前記オイルセパレータで再生した冷媒を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留される冷媒を計量する計量器とから構成され、
前記第3経路は、
前記タンクと前記空調システムの高圧側とが接続するよう構成され、
前記第1経路と前記第2経路では、空調システムの冷媒を回収し再生する回収再生工程が行われ、
前記第3経路では、前記空調システムに気体冷媒を注入する注入工程が行われ、
前記気体冷媒は、前記低圧圧力センサで検知する前記低圧管の圧力が所定の圧力値より低く、前記タンクに流入する冷媒量が所定の第1流量値よりも低いときに注入される、
ことを特徴とする冷媒処理装置。
【請求項2】
前記注入工程は、前記第1流量値よりも低く、前記タンクに流入する冷媒量が所定の第2流量値よりも高いときに繰り返し実行される、
ことを特徴とする請求項1記載の冷媒処理装置。