(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042733
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】メガネフレーム及びメガネフレームの支持部材
(51)【国際特許分類】
G02C 5/00 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
G02C5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147499
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】505442576
【氏名又は名称】有限会社 ブリッヂコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】宮下 務
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006AA00
2H006AA03
2H006AB03
(57)【要約】
【課題】 フロント部に鼻当てパットを備えることなくツルに支持部材を取付けたメガネフレームの提供。
【解決手段】 上記支持部材8は細長い軟質樹脂の軸心に弾性変形に優れた芯金10を挿通し、円弧状に滑らかに湾曲してツル2の内側であってフロント部側に取付け、ツル2とほぼ同一水平面内に配置され、コメカミに当たって撓み変形することが出来るようにツル2との間には適当な空間を設けている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロント部に鼻当てパットを備えることなくツルに支持部材を取付けたメガネフレームにおいて、上記支持部材は細長い軟質樹脂の軸心に弾性変形に優れた芯金を挿通し、円弧状に滑らかに湾曲してツルの内側であってフロント部側に取付け、ツルと同一水平面内に配置され、コメカミに当たって撓み変形することが出来るようにツルとの間には適当な空間を設けていることを特徴とするメガネフレーム。
【請求項2】
支持部材はツルに固定される止着部とコメカミに当接して変形する当接部から成る請求項1記載のメガネフレーム。
【請求項3】
当接部の樹脂層は芯金から抜き取ることが出来るようにした請求項2記載のメガネフレーム。
【請求項4】
上記支持部材は芯金を樹脂層から延ばして嵌入部を設け、該嵌入部をツルに設けた穴に嵌入して取付けた請求項1記載のメガネフレーム。
【請求項5】
フロント部に鼻当てパットを備えることなくメガネフレームの支持部材において、上記支持部材は細長い軟質樹脂の軸心に弾性変形に優れた芯金を挿通し、円弧状に滑らかに湾曲してツルの内側であってフロント部側に取付け、ツルと同一水平面内に配置され、コメカミに当たって撓み変形することが出来るようにツルとの間には適当な空間を設けていることを特徴とするメガネフレームの支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフロント部に鼻当てパットを備えることなく、ツル(テンプル)に支持部材を取付け、該支持部材をコメカミに当接して支持することが出来るメガネフレーム及び支持部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は従来の一般的なメガネフレームを示している。メガネフレームはフロント部(イ)と2本のツル(ロ)、(ロ)から成り、ツル(ロ)、(ロ)はフロント部(イ)の両側に設けているヨロイ(ハ)、(ハ)に蝶番(ニ)、(ニ)などの継手を介して折畳み出来るように取付けられている。フロント部(イ)は連結部材(ホ)の両側にリム(ヘ)、(ヘ)が設けられ、リム(ヘ)、(ヘ)の外側には上記ヨロイ(ハ)、(ハ)をロウ付けしている。そして、リムの内側(中央側)には鼻当てパット(ト)、(ト)が取付けられている。
【0003】
ところで、メガネを顔に掛ける場合には、鼻当てパット(ト)、(ト)を鼻の両脇に当てると共に、ツル(ロ)、(ロ)の先端部に挿着している樹脂製のモダン(チ)、(チ)が耳に係止される。鼻当てパット(ト)、(ト)を介してフロント部(イ)は鼻で支えられるが、長時間にわたってメガネを着用しているならば、鼻当てパット(ト)、(ト)が当っている鼻の両脇が赤く変色し、化粧が剥がれる。従って、メガネを外した際には化粧が剥がれて赤くなった鼻両脇が目立ち、特に若い女性にとっては大きな問題となる。
【0004】
近年のメガネフレームはバネ製に優れた軽い材質としてチタン材が多用され、又レンズもプラスチックレンズが用いられることで、フロント部が非常に軽くなっている。
ステンレス材を使用したメガネフレームにガラスレンズを嵌めた昔のメガネに比較すれば非常に軽い。しかし、鼻当てパットにてフロント部を支えることは必要であり、その為に鼻両脇の化粧の剥がれ落ちを避けることは出来ない。
鼻当てパットの材質を軟らかいシリコン樹脂で構成している場合もあるが、赤い変色や化粧の剥がれを完全に防止することは出来ない。
【0005】
従来、ツルの内側にパットを取付け、該パットを顔のコメカミ部分に当てることでフロント部を支えるように構成したメガネフレームが知られている。
しかし、ツルの内側に取付けたパットをコメカミ部分に押し当てても、滑り落ちる為にフロント部を完全に支持することが出来ない場合もある。パットをコメカミ部に強く押圧するならば、コメカミが痛く成ってメガネを長時間掛けることは出来ない。
一方、フロント部に鼻当てパットが無いメガネフレームでは、該フロント部が降下することで、リムの下縁又はレンズの下縁が顔の頬に接してしまい、メガネを外した場合には頬に跡が残ってしまうという問題もある。
【0006】
特開2008-20678号に係る「メガネフレーム」は、鼻の両脇に当ててフロント部を支える鼻当てパットを備えないメガネフレームであり、ツルからアームを斜め下方へ延ばし、該アーム先端にはパットを取付け、該パットが顔の頬骨に当ってフロント部を支えるようにしている。
そして、パットはその向きを変えることが出来る構造としている為に、頬骨の位置や形状に違いがあってもパットはフィットできる構造となっている。
【0007】
図7はツル(ロ)にパット(リ)を取付けた従来の具体例である。ツル(ロ)には基板(ヌ)がネジ止めされ、この基板(ヌ)にアーム(ル)が固定され、基板(ヌ)から延びるアーム(ル)の先端には上記パット(リ)を取付けている。
該パット(リ)は円盤状であり、円盤状パット(リ)は頬骨に載置されるが、コメカミ部に当たって押圧する。
アーム(ル)はバネ性の金属線であり、その為に、パット(リ)に作用する押圧力はアーム(ル)の撓み変形に基づき、該コメカミ部に痛みを感じる。
【0008】
ところで、従来のメガネフレームではツル(ロ)に取付けたパット(リ)が顔のコメカミ部に当たることで、該パット(リ)に作用する押圧力の反力によってツル(ロ)が撓み、その為に耳に係止するツル先端部のモダンが後頭部から浮き上がり、ツルの安定性が損なわれる。
すなわち、小さなパット(リ)だけでメガネフレームを支えるようになり、パット(リ)を中心として揺動し、フロント部が降下すると共にツル先端部は上昇し、メガネフレームは前屈み状態となる。その為に、リムの下縁又はレンズの下縁が頬に当たってしまい、メガネを外すと頬に跡が残ってしまう。
【0009】
また、ツル(ロ)から斜め下方へ延びるアーム(ル)の先端にパット(リ)を取付けることで、ツル(ロ)からアーム(ル)及びパット(リ)は大きく食み出してしまい、メガネフレームの外観は損なわれる。
【特許文献1】特開2008-20678号に係る「メガネフレーム」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、フロント部に鼻当てパットを取付けたメガネフレーム、そして鼻当てパットを備えることなくツルから延びるアームの先端にパットを取付けたメガネフレームには上記のごとき問題がある。
本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、ツルが位置ズレすることなく、また、ツル先端部が浮上しないように安定して掛けることが出来るメガネフレーム、さらに外観が損なわれないように構成したメガネフレーム及びメガネフレームの支持部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るメガネフレームは、フロント部に鼻当てパットを備えておらず、ツルの内側には支持部材を取付けている。該支持部材は顔のコメカミ部に接し、フロント部を支える為に、ツルのフロント部側に取付けられている。
支持部材は細長くて滑らかに湾曲した円弧状を成し、コメカミ部にはほぼ全長が当たるように撓み変形する。そして、支持部材はシリコンなどの軟質樹脂で構成され、軸部には芯金を埋着し、その基部はツルに固定される。
【0012】
支持部材は円弧状に湾曲しているが、基部は継手付近に固定され、該基部から内側に向いて湾曲して延び、その為にツルとの間に適度な空間を形成している。
したがって、支持部材がコメカミに当たって外方向へ撓み変形することが出来るように成っている。そして、湾曲して延びる支持部材はほぼ水平をなし、ツルとほぼ同一面に位置している。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るメガネフレームは、ツルに取付けた支持部材が顔のコメカミに当たってフロント部が支えられる。したがって、従来のメガネフレームのように鼻当てパットが当って鼻の両脇が赤く変色することがなく、又鼻の両脇の化粧が剥がれることもない。
また、細長く延びる支持部材は弾性変形に優れた芯金の周りにシリコンなどの肌当りの良い樹脂層を設けている為に、コメカミの痛みはなく、長時間にわたってメガネを着用することが出来る。
【0014】
そして、該支持部材は従来のような概略円盤状の小さいパットとは異なり、湾曲した細長い部材で構成している為に、ほぼ全長がコミカミに当接し、支持部材を中心としてツルが上下方向に揺動することはなく、メガネを安定して掛けることが出来る。
一方、本発明の支持部材は細長く延びる湾曲部材であるが、ほぼ水平に位置してツルと同一面に配置される。その為に、メガネを掛けた場合に支持部材はツルによって被覆され、外から見えることはなく、外観上も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るメガネフレームを示す実施例であり、(a)は平面図、(b)は正面図。
【
図2】本発明に係るメガネフレームを示す実施例であり、(a)は側面図、(b)はツルの内側からの側面図。
【
図4】本発明に係るメガネフレームを示す他の実施例であり、(a)は平面図、(b)は正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係るメガネフレームの1形態を示す実施例で、
図1(a)は平面図、
図1(b)は正面図をそれぞれ表している。また、
図2(a)は側面図であり、(b)はツルの内側からの側面図を夫々表している。
同図の1はフロント部、2はツルを示し、ツル2,2はフロント部1の両側に蝶番などの継手3,3を介して折畳み出来るように取付けられている。
フロント部1を構成するリム4,4は連結部材5によって左右対称に連結され、リム4,4にはレンズ6,6が嵌められる。そして、フロント部1の両側にはヨロイ7,7が固定され、該ヨロイ7,7には継手3,3を介して上記ツル2,2が折畳み出来るように取付けられている。
【0017】
そして、本発明のメガネフレームはフロント部1に鼻当てパットを取付けておらず、その代わりにツル2,2の内側に支持部材8,8を設けている。
ツル2はフロント部側に円弧状に外方向へ湾曲した膨出部9を有し、この膨出部9の内側に上記支持部材8を取付けている。支持部材8は滑らかに湾曲した軟質樹脂製であり、軸芯には芯金10を備え、該芯金10の周囲は軟質樹脂層11としている。
芯金10は弾性に優れた細い線材であって、軟質樹脂層11はシリコンなどの肌当りが良くて柔らかい樹脂が使用されている。
【0018】
したがって、メガネを掛けるならば支持部材8はコメカミになじんで変形し、支持部材8は変形して全体がコメカミに接することが出来る。該支持部材8は細長く延びて滑らかな円弧状に湾曲しているが、各自のコメカミに全体が当接することが出来るような形状となっており、完全フットするように簡単に交換出来る取付け構造としている。
【0019】
ところで、支持部材8は基部側に止着部12を有し、該止着部12はツル2の表面に表面材14を当ててビス止めされる。
図3は支持部材8の止着構造を示す具体例である。
表面材14には2本のナットピン15,15が突出し、ツル2の内側に配置した支持部材8の止着部12をビス16,16が貫通してナットピン15,15のネジ穴に螺合して止着される。
ここで、支持部材8の軟質樹脂層11はコメカミとの当接部13とツル2との止着部12との間は分離面17にて分離することが出来、当接部13だけを芯金10から抜き取って新たな当接部13と交換することが出来るようにしている。すなわち、コメカミと接する当接部13が汚れた時には交換可能としている。
【0020】
ところで、支持部材8は滑らかに湾曲しているが、水平面内にて湾曲し、ツル2とほぼ同一面と成っている。
図2(a)、(b)は本発明のメガネフレームの側面図であって、支持部材8とツル2の位置関係を表しているが、フロント部1から後方へ延びるツル2とは同一水平面内に配置され、その為にメガネを掛けた場合、支持部材8はツル2とコメカミの間に挟まれた状態となり、露出する部分は殆どなく、外観上はツル2によってカバーされて支持部材8は見えない。
すなわち、前記
図7に示すような従来のパット(リ)のように表面化することなく、外観的に好ましいメガネフレームとなる。
【0021】
図4は本発明のメガネフレームを示す他の実施例である。基本的な構造は前記
図1に示しているメガネフレームの場合と同じであって、フロント部1の両側にヨロイ7,7を固定し、該ヨロイ7,7に継手を介してツル18,18が折畳み出来るように取付けられている。同図に示すメガネフレームのツル18は金属製でなく樹脂製としていて、該ツル18の内側に支持部材19を取付けているが、支持部材19の取付け構造が前記実施例の場合と異なっている。
【0022】
支持部材19はシリコンなどの軟質樹脂の軸心部に芯金20を挿通しているが、基部から芯金20を延ばして嵌入部21としている。そして、該嵌入部21はツル18に設けた嵌入穴に嵌入して固定されている。
支持部材19は内側へ湾曲して延びていて、メガネを掛けた際には外側へ撓み変形することが出来るように、ツル18との間には適度な空間22を設けている。そして、基部から延びている嵌入部21は円形断面ではなく非円形断面とし、支持部材19が回転して向きが変わらないように成っている。
図5は該支持部材19の断面図を示している。
【0023】
1 フロント部
2 ツル
3 継手
4 リム
5 連結部材
6 レンズ
7 ヨロイ
8 支持部材
9 膨出部
10 芯金
11 軟質樹脂層
12 止着部
13 当接部
14 表面材
15 ナットピン
16 ビス
17 分離面
18 ツル
19 支持部材
20 芯金
21 嵌入部
22 空間