(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042736
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】アルコール飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20240322BHJP
A23L 29/212 20160101ALN20240322BHJP
【FI】
C12G3/04
A23L29/212
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147506
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹下 祐見
【テーマコード(参考)】
4B025
4B115
【Fターム(参考)】
4B025LG28
4B025LG36
4B025LG43
4B025LP19
4B115LG02
4B115LH03
4B115LH11
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】 コクみ付与に利用される低DEの澱粉分解物は、アルコール溶液中では老化・白濁しやすく、他方、溶解性が良好な高DEの澱粉分解物は、アルコール飲料に不要な甘味を付与してしまう。本発明の目的は、アルコール含有飲料に低DEの澱粉分解物を利用したときに生じる白濁を改善する方法、その白濁が改善されたアルコール含有飲料、及びそのアルコール含有飲料の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 0.5~30%のアルコール飲料中に、以下(A)~(D)を充足する澱粉分解物を、喫飲時濃度で0.1~3.0%、好ましくは0.2~1.0%含まれるようにすれば、コクみ付与と白濁低減が同時に達成される:(A)DEが1.2~1.7、(B)30℃における30質量%水溶液の粘度が250~700mPa・s、(C)分子量5,000以上の糖組成物含有量が固形分当たり90質量%以上、(D)ワキシータピオカ澱粉を原料とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温(0℃以上10℃以下)で流通するアルコール飲料であって、アルコール濃度が0.5~10%であり、下記(A)~(D)を満たす澱粉分解物を0.1~3.0質量%含む、アルコール飲料:
(A)DEが1.2~1.7、
(B)30℃における30質量%水溶液の粘度が250~700mPa・s、
(C)分子量5,000以上の糖組成物含有量が固形分当たり90質量%以上、
(D)ワキシータピオカ澱粉を原料とする。
【請求項2】
常温(10℃以上20℃以下)で流通するアルコール飲料であって、アルコール濃度が0.5~20%であり、下記(A)~(D)を満たす澱粉分解物を0.1~3.0質量%含む、アルコール飲料:
(A)DEが1.2~1.7、
(B)30℃における30質量%水溶液の粘度が250~700mPa・s、
(C)分子量5,000以上の糖組成物含有量が固形分当たり90質量%以上、
(D)ワキシータピオカ澱粉を原料とする。
【請求項3】
常温以上(20℃以上)で流通するアルコール飲料であって、アルコール濃度が0.5~30%であり、下記(A)~(D)を満たす澱粉分解物を0.1~3.0質量%含む、アルコール飲料:
(A)DEが1.2~1.7、
(B)30℃における30質量%水溶液の粘度が250~700mPa・s、
(C)分子量5,000以上の糖組成物含有量が固形分当たり90質量%以上、
(D)ワキシータピオカ澱粉を原料とする。
【請求項4】
下記(A)~(D)を満たす澱粉分解物を0.1~3.0質量%となるよう添加する、アルコール濃度0.5~30%のアルコール飲料の製造方法:
(A)DEが1.2~1.7、
(B)30℃における30質量%水溶液の粘度が250~700mPa・s、
(C)分子量5,000以上の糖組成物含有量が固形分当たり90質量%以上、
(D)ワキシータピオカ澱粉を原料とする。
【請求項5】
下記(A)~(D)を満たす澱粉分解物を0.1~3.0質量%となるよう添加する、アルコール濃度0.5~30%のアルコール飲料の味質改善方法:
(A)DEが1.2~1.7、
(B)30℃における30質量%水溶液の粘度が250~700mPa・s、
(C)分子量5,000以上の糖組成物含有量が固形分当たり90質量%以上、
(D)ワキシータピオカ澱粉を原料とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化が抑制されたアルコール飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉分解物(デキストリン)は、飲食品に甘味、ボディ感、コクみを与える目的で使用される飲食品等原料素材のひとつである。最近では、低アルコール・低糖質・低果汁といった健康志向の飲料が販売されているが、アルコールや糖質は飲食品の味に厚みを与える役割を果たすことから、低アルコール・低糖質の飲料は、ボディ感やコクみが足りないものとなる。そこで、その不足するボディ感やコクみを、先述の澱粉分解物で補うこととなる。しかし、ボディ感やコクみを付与する目的で使用される澱粉分解物は、低分解度(低DE)であることから、溶液中で経時的に老化して白濁しやすいという問題がある。
【0003】
そこで、そのような澱粉分解物の老化を解消するため、まず、澱粉分解物の製造方法を検討し変更することが考えられる。例えば、特許文献1には、澱粉加水分解物に分岐酵素を反応させる方法と、そのようにして得られたDE2~9の分岐デキストリンが老化しにくく濃厚感を付与できることが開示され、特許文献2には、澱粉懸濁液をα-アミラーゼで二段分解して得たDE1.2~1.7の澱粉分解物が、老化耐性が高く濃厚感を付与できることが開示されている。
【0004】
しかし、先行文献に開示される低DEの澱粉分解物は、いまだアルコールを含む溶液中では老化・白濁しやすく、そうかといって、溶解性が良好な高分解度(高DE)の澱粉分解物を使用すると、アルコール飲料に不要な甘味が付与されることとなり、コクみと甘味のバランスが悪くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-80518号公報
【特許文献2】特開2019-089932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アルコール含有飲料のコクみ付けのために低DEの澱粉分解物を使用すると老化しやすいところ、老化の問題が回避されたアルコール含有飲料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく種々検討したところ、アルコール飲料中に、ワキシータピオカを原料とする特定の澱粉分解物を喫飲時濃度で0.1~3.0%、好ましくは0.2~1.0%含まれるようにすれば、コクみ(濃厚感)が付与されながらも白濁しにくいものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、以下の〔1〕~〔5〕から構成されるものである。
[1]低温(0℃以上10℃以下)で流通するアルコール飲料であって、アルコール濃度が0.5~10%であり、下記(A)~(D)を満たす澱粉分解物を0.1~3.0質量%含む、アルコール飲料:
(A)DEが1.2~1.7、
(B)30℃における30質量%水溶液の粘度が250~700mPa・s、
(C)分子量5,000以上の糖組成物含有量が固形分当たり90質量%以上、
(D)ワキシータピオカ澱粉を原料とする。
[2]常温(10℃以上20℃以下)で流通するアルコール飲料であって、アルコール濃度が0.5~20%であり、前記(A)~(D)を満たす澱粉分解物を0.1~3.0質量%含む、アルコール飲料。
[3]常温以上(20℃以上)で流通するアルコール飲料であって、アルコール濃度が0.5~30%であり、前記(A)~(D)を満たす澱粉分解物を0.1~3.0質量%含む、アルコール飲料。
[4]前記(A)~(D)を満たす澱粉分解物を0.1~3.0質量%となるよう添加する、アルコール濃度0.5~30%のアルコール飲料の製造方法。
[5]前記(A)~(D)を満たす澱粉分解物を0.1~3.0質量%となるよう添加する、アルコール濃度0.5~30%のアルコール飲料の味質改善方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アルコール飲料、特に、濃厚感が足りない低アルコール飲料や低糖質アルコール飲料の外観及び風味を損なうことなく、濃厚感を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にいう「アルコール飲料」は、喫飲時のアルコール濃度が0%を超えて10%(v/v)以下である飲料をいう。本発明にいう「アルコール飲料」には、希釈して飲用するタイプの「濃縮アルコール飲料」を含むが、「濃縮アルコール飲料」そのもの(「希釈タイプアルコール飲料」ともいう。)の場合は、アルコール濃度は10~25%である。喫飲時のアルコール濃度が10%を超えると、アルコールの刺激感があまりにも強いため、本発明における澱粉分解物の添加効果を感じにくくなり、また、保存流通時にアルコール濃度が25%を超えると、澱粉分解物が急激に老化して白濁する傾向が認められるという理由から、上記数値範囲とすることが好ましい。アルコール飲料中の糖質含量は制限されないが、低糖質、例えば糖質含量が0.5%未満の場合に、味が薄くもの足りない飲料となるため、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0011】
本発明の「アルコール飲料」は、先述のとおり、喫飲時のアルコール濃度が0%を超えて10%以下であれば、種別をとくに限定するものではないが、具体的には、チューハイ、ハイボール、カクテル、発泡酒、ビールテイスト飲料などが例示され、また、「濃縮アルコール飲料」の場合は、サワーの素、サワーコンク、濃縮リキュール、濃縮カクテル、カクテルコンクなどが挙げられる。
【0012】
本発明における「澱粉分解物」は、「水飴」、「デキストリン」、「マルトデキストリン」などとも呼ばれ、澱粉を酵素により加水分解する、又は酸や熱により解重合させて得られるものを指す。
【0013】
本発明のアルコール飲料に用いる澱粉分解物の「DE」は、1以上2未満が好ましく、より好ましくは1.2~1.7であり、最も好ましくは1.3~1.6である。なお、本発明における「DE」とは、「[(直接還元糖(ブドウ糖として表示)の質量)/(固形分の質量)]×100」の式により求められる値で、後述するウイルシュテッターシューデル法による分析値である。
【0014】
本発明のアルコール飲料に用いる澱粉分解物の「粘度」は、30質量%水溶液の30℃におけるBM型粘度計により測定した場合、240mPa・sを越えて800mPa・s未満であることが好ましく、より好ましくは250~700mPa・s、さらに好ましくは250~600mPa・sであり、最も好ましくは300~550mPa・sである。
【0015】
本発明のアルコール飲料に用いる澱粉分解物の性状を特定するため利用されるパラメーターには「濁度」があり、30質量%水溶液の720nm(10cmセル)における吸光度により確認できる。より詳細には、30質量%水溶液を一晩-18℃で冷凍した後に自然解凍したとき(以下、「冷凍解凍1回実施後」ともいう。)の「濁度」を利用すれば、本発明で用いられる澱粉分解物とその他の澱粉分解物との区別が明瞭となる。本発明のアルコール飲料に用いられる澱粉分解物の当該濁度は1.0以下であり、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.5以下である。
【0016】
本発明のアルコール飲料に用いる澱粉分解物は、澱粉の分解により生じる糖組成物であり、分子量5,000以上の画分が、固形分当たり90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上又は95質量%以上であることがより好ましい。この分子量5,000以上の組成物の含有率は、ゲルろ過によるHPLC(株式会社島津製作所製)で得られる分子量分布から求めることができる。HPLCの分析条件は以下のとおりであり、プルラン標準品、マルトトリオース及びグルコースを用いて検出時間に対する分子量の検量線を作成し、この検量線に基づいて分子量5,000の検出時間を算出し、この算出された検出時間より前に検出されるピークの面積%を分子量5,000以上の糖組成物含有量とする。
[カラム]:TSKgel G2500PWXL,G3000PWXL、
G6000PWXL(東ソー(株)製)
[カラム温度]:80℃、
[移動相]:蒸留水、
[流速]:0.5ml/min、
[検出器]:示差屈折率計、
[サンプル注入量]:1質量%水溶液100μL、
[検量線]:プルラン標準品(昭和電工(株)製)、マルトトリオース及びグルコース
【0017】
本発明のアルコール飲料に用いられる澱粉分解物は、ワキシータピオカ澱粉、ワキシーコーン澱粉、ワキシーポテト澱粉など、糯種の澱粉を原料とするものであり、そのなかでもワキシータピオカ澱粉を分解したものが好適である。
【0018】
本発明のアルコール飲料に用いられる澱粉分解物を得るために用いられる液化酵素は、α-アミラーゼである。「α-アミラーゼ」とは、澱粉のα-1,4グルコシド結合を加水分解するエンド型の酵素をいい、例えば、クライスターゼSD-KM(天野エンザイム社製)や、ターマミル120L(ノボザイムズジャパン社製)などが挙げられる。このα-アミラーゼの使用量は、一段階目の液化工程においては、原料澱粉の固形分質量に対して0.01~0.1質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.02~0.09質量%であり、二段階目の糖化工程においては、原料の固形分質量に対して0.004~0.05であることが好ましく、より好ましくは、0.007~0.02質量%である。
【0019】
上記の液化工程および糖化工程のいずれにおいても、温度は、好ましくは70~100℃、より好ましくは80~95℃であり、pHは、好ましくは5.0~7.0、より好ましくは5.5~6.5であり、その処理時間は、好ましくは3~40分、より好ましくは5~30分である。液化工程における原料澱粉の濃度は、15~40質量%程度であることが好ましい。これら液化工程および糖化工程においては、加熱加圧蒸煮釜やジェットクッカーなどの加熱装置を用いてもよい。液化工程では、液化液の70℃における25質量%水溶液の粘度が所定の範囲、例えば、25~120mPa・sに到達した時点で、0.2MPa程度の加圧処理又はシュウ酸などの酸により反応を終了させてもよい。一方、糖化工程では、糖化液の70℃における25質量%水溶液の粘度が所定の範囲、例えば、23~60mPa・sに到達した時点で、0.2MPa程度の加圧処理又はシュウ酸などの酸により反応を終了させてもよい。
【0020】
液化工程および糖化工程を経て得られた反応溶液は、精製工程としての珪藻土によるろ過及びイオン交換樹脂による脱塩を経て、濃縮して液状品とするか、噴霧乾燥等により粉末化して粉末品とすることができる。そして、さらに、精製後の澱粉分解物の液を還元(水素添加)して還元型澱粉分解物とすることもできる。
【0021】
このようにして得られる本発明のアルコール飲料に用いられる澱粉分解物は、30℃における30質量%水溶液の粘度が250~700mPa・sであり、DE値が1.2~1.7と非常に低い。また、一晩-18℃で冷凍した後、自然解凍した際の濁度は1.0以下である。
【0022】
上述の澱粉分解物は、水溶液中では比較的老化しにくいものではあるが、発明者らが詳細に検討したところ、アルコールが併存すると少なからず老化し、その使用方法には工夫を要することがわかった。まず、その澱粉分解物の添加量についていえば、本発明の目的であるコクみ付与の観点からは、0.1~10質量%、0.1~5質量%、0.1~3質量%又は0.2~1質量%となるよう添加することが望ましい。また、アルコール濃度が低い、例えば、0.5~10%(w/v)未満の場合(低温で流通又は喫飲される場合)は、0.1~3質量%となるよう添加することが好ましく、アルコール濃度が高い、例えば、10~30%(w/v)の場合(主に常温で流通する場合)は、0.1~3質量%又は0.2~1質量%となるよう添加することが好ましい。
【0023】
上述の澱粉分解物の添加方法は、特に限定されないが、長期保存及び流通における老化防止の観点から、撹拌機などを用いて溶け残りがないよう完全に溶解させることが望ましい。また、アルコール飲料の原料が複数に渡り、複雑なものとなる場合には、製造工程の比較的初期の段階で投入して溶解させておくことが望ましい 。
【0024】
以下、本発明の実施形態を記載するが、実施例に特に限定されるものではない。
【実施例0025】
(澱粉分解物の調製例1)
原料となるワキシータピオカ澱粉の22質量%水懸濁液を消石灰でpH6.0に調整し、原料固形分に対して0.09質量%となるようα-アミラーゼ(クライスターゼSD-KM、天野エンザイム社製)を添加した。この酵素-澱粉水懸濁液を、80℃に保温された加熱加圧蒸煮釜へ投入して酵素反応を行い、0.1MPaにて酵素を失活して液化液を得た(以上、一段目の液化工程。DE1.46。)。次に、この液化液を、蓚酸または消石灰を用いてpHを6.0に調整し、原料固形分に対して0.009質量%となるよう上述のα-アミラーゼを再度添加し、85℃で反応後、蓚酸を添加し、pH3.5以下に調整して酵素を失活することにより糖化液を得た(以上、二段目の糖化工程。DE1.8。)。このようにして得られた糖化液を、珪藻土によるろ過及びイオン交換樹脂による脱塩によって精製した後、15質量%まで濃縮し、噴霧乾燥により粉末化して、DE値が1.6、30℃における30質量%水溶液の粘度が300mPa・sの澱粉分解物(以降、試作品1という。)を得た。
【0026】
(澱粉分解物の調製例2)
上述の澱粉分解物1の調製手順において、澱粉懸濁液濃度を22%とし、一段目のα-アミラーゼ添加量は0.03%、失活時点はDE0.85とし、二段目のαアミラーゼ添加量は0.01%、失活時点はDE1.8とし、脱塩・精製後の濃縮濃度15質量%とすること以外は同様の手順で澱粉分解物を調製し、DE1.4かつ粘度472mPa・sの澱粉分解物(以降、試作品2という。)を得た。
【0027】
(澱粉分解物の調製例3)
上述の澱粉分解物1の調製手順において、澱粉懸濁液濃度を22%とし、一段目のα-アミラーゼ添加量は0.03%、失活時点はDE0.87とし、二段目のαアミラーゼ添加量は0.004%、失活時点はDE1.5とし、脱塩・精製後の濃縮濃度15質量%とすること以外は同様の手順で澱粉分解物を調製し、DE1.3かつ粘度694mPa・sの澱粉分解物(以降、試作品3という。)を得た。
【0028】
(澱粉分解物の調製例4)
上述の澱粉分解物1の調製手順において、澱粉懸濁液濃度を21%とし、一段目のα-アミラーゼ添加量は0.2%、失活時点はDE4.9とし、二段目のαアミラーゼ添加量は0.06%、失活時点はDE7.9とし、脱塩・精製後の濃縮濃度を32質量%とすること以外は同様の手順で澱粉分解物を調製し、DE8.3かつ粘度13.6mPa・sの澱粉分解物(以降、試作品4という。)を得た。
【0029】
(澱粉分解物の調製例5)
上述の澱粉分解物1の調製手順において、澱粉懸濁液濃度を20%とし、一段目のα-アミラーゼ添加量は0.09%、失活時点はDE1.9とし、二段目のαアミラーゼ添加量は0.05%、失活時点はDE4.4とし、脱塩・精製後の濃縮濃度を24質量%とすること以外は同様の手順で澱粉分解物を調製し、DE4.2かつ粘度33.4mPa・sの澱粉分解物(以降、試作品5という。)を得た。
【0030】
(澱粉分解物の水溶液の粘度)
各澱粉分解物の粘度は、その30質量%水溶液を30℃に保ち、60回転/分に設定した粘度計(BM形 東機産業社製)及びローター番号2又は3を用いて30秒間測定したときの値とした。
【0031】
(分解処理中の分解物又は最終的に得られる澱粉分解物のDE値)
製造工程段階の分解処理物、又は最終的に得られる澱粉分解物のDE値は、ウイルシュテッターシューデル法(「澱粉糖関連工業分析法」、食品化学新聞社発行(平成3年11月1日発行))により測定した値である。
【0032】
(分子量5,000以上の糖組成物の含有量)
分子量5,000以上の糖組成物の含有量は、ゲルろ過によるHPLCより得られる分子量分布から求めた。HPLCの分析条件は以下であり、プルラン標準品、マルトトリオース及びグルコースを用いて検出時間に対する分子量の検量線を作成し、この検量線より分子量5,000の検出時間を算出したのち、算出された検出時間より前に検出されるピークの面積%を分子量5,000以上の糖組成物含有量とした。
[カラム]:TSKgel G2500PWXL,G3000PWXL、G6000PW
XL(東ソー(株)製)
[カラム温度]:80℃、
[移動相]:蒸留水、
[流速]:0.5ml/min、
[検出器]:示差屈折率計、
[サンプル注入量]:1質量%水溶液100μL、
[検量線]:プルラン標準品(昭和電工(株)製)、マルトトリオース及びグルコース
【0033】
以降の実験で用いる澱粉分解物の分析値を表1に示す。
【0034】
【0035】
まず、各澱粉分解物を適宜溶解した水溶液に対しエタノール(99.5%(v/v))を混和し、澱粉分解物が10、20又は30%であり、かつアルコール濃度が10、20又は30%(v/v)である各液を調製した。次に、これらを0℃、5℃、10℃又は20℃で一晩静置したときの状態を観察し、3段階(1点:完全に白濁、2点:やや白濁、3点:透明)で評価を行った(表2~表6)。その状態観察時の一例として、澱粉分解物「試作品2」を用いたときのアルコール溶液の写真を示す(表7)。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
試作品2は、低DEであるため老化安定性に劣るとも予測されたが、実際には、アルコール溶液中での老化安定性が最も良好であり、詳細には、10℃以上の保存であれば、アルコール濃度20%に対して10%濃度で溶解させても老化安定性は良好であり、5℃の低温保存では、アルコール濃度が10%程度であれば、20%という高濃度で溶解させても老化安定性は良好であった。また、試作品1、3、4、及び5についても同様の試験を行ったところ、試作品1及び3については、試作品2の結果と同様であった一方、試作品4については、5℃以下の低温保存ではアルコール濃度が10%程度であれば溶液は透明であったが、アルコール濃度が20%以上になると白濁した。試作品5については、10℃以上の保存であっても、アルコール濃度20%になると白濁し、老化安定性は低かった。
【0043】
<レモンチューハイ1:果汁3%、アルコール9%(v/v)、澱粉分解物1%>
下表8の配合のレモンチューハイを4℃・7日間保存後、その白濁の状態(1点:完全に白濁、2点:やや白濁、3点:透明)を目視で確認し、コクみ(1点(弱い)→5点(強い))とフレーバーリリース(1点(弱い)→5点(強い))についてはパネラー10名 で官能評価を行い、評価点を平均化した。その結果、試作品1~3を1%用いた試験区(実施例1~3)では 白濁は認められず、また、コントロール(澱粉分解物無添加)と比べたときのコクみ・フレーバーリリースともに良好であった(表9)。
【0044】
【0045】
【0046】
<マンゴーチューハイ:果汁30%、アルコール9%(v/v)、澱粉分解物0.2%>
下表10の配合のマンゴーチューハイを4℃・7日間保存後、その白濁の状態(1点:完全に白濁、2点:やや白濁、3点:透明)を目視で確認し、コクみ(1点(弱い)→5点(強い))、フレーバーリリース(1点(弱い)→5点(強い))についてはパネラー10名で官能評価を行い、評価点を平均化した。その結果、試作品2(0.2%)を用いた試験区では白濁は認められず、また、コントロール(無添加)と比べてコクみ・フレーバーリリースともに良好であった(表11)。
【0047】
【0048】
【0049】
<オレンジチューハイ:果汁30%、アルコール3%(v/v)、澱粉分解物3%>
下表12の配合のオレンジチューハイを4℃・7日間保冷後の白濁の状態(1点:完全に白濁、2点:やや白濁、3点:透明)を目視で確認し、コクみ(1点(弱い)→5点(強い))、フレーバーリリース(1点(弱い)→5点(強い))についてはパネラー10名で官能評価を行い、評価点を平均化した。その結果、試作品2(3%)を用いた試験区では白濁は認められず、コントロール(無添加)と比べてコクみ・フレーバーリリースともに良好であった(表13)。
【0050】
【0051】
【0052】
<レモンチューハイ2:果汁3%、アルコール4%(v/v)、澱粉分解物0.5%>
下表14の配合のレモンチューハイを4℃・7日間保冷後、その白濁状態(1点:完全に白濁、2点:やや白濁、3点:透明)を目視で確認し、コクみ(1点(弱い)→5点(強い))、フレーバーリリース(1点(弱い)→5点(強い))についてはパネラー10名で官能評価を行い、評価点を平均化した。その結果、試作品2(0.5%)を用いた試験区では白濁は認められず、コントロール(無添加)に比べてコクみ・フレーバーリリースともに良好であった(表15)。
【0053】
【0054】
【0055】
<パインチューハイ:果汁4%、アルコール0.5%(v/v)、澱粉分解物1%>
下表16の配合のパインチューハイを4℃・7日間保冷後、その白濁状態(1点:完全に白濁、2点:やや白濁、3点:透明)を目視で確認し、コクみ(1点(弱い)→5点(強い))、フレーバーリリース(1点(弱い)→5点(強い))についてはパネラー10名で官能評価を行い、評価点を平均化した。その結果、試作品2(1%)を用いた試験区では白濁は認められず、コントロール(無添加)と比べてコクみ・フレーバーリリースともに良好であった(表17)。
【0056】
【0057】
【0058】
<ハイボール:アルコール0.5%(v/v)、澱粉分解物0.5%>
下表18の配合のハイボールを4℃・7日間保冷後、その白濁状態(1点:完全に白濁、2点:やや白濁、3点:透明)を目視で確認し、コクみ(1点(弱い)→5点(強い))、フレーバーリリース(1点(弱い)→5点(強い))についてはパネラー10名で官能評価を行い、評価点を平均化した。その結果、試作品2(0.5%)を用いた試験区には白濁は認められず、コントロール(無添加)と比べてコクみ・フレーバーリリースともに良好であった(表19)。
【0059】
【0060】
【0061】
<濃縮リキュール:レモン果汁12%、アルコール25%(v/v)、澱粉分解物2.5%>
下表20の配合の濃縮リキュールを4℃・7日間保冷したときの白濁状態(1点:完全に白濁、2点:やや白濁、3点:透明)を目視で確認し、コクみ(1点(弱い)→5点(強い))、フレーバーリリース(1点(弱い)→5点(強い))についてはパネラー10名で評価を行い、評価点を平均化した。その結果、試作品2(2.5%)を用いた試験区ではやや白濁は認められるものの、希釈飲用時(5倍希釈のため試験品2を0.5%含む)はコントロール(無添加)と比べてコクみ・フレーバーリリースともに良好であった(表21)。
【0062】
【0063】