(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042737
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】杭体と鉄骨柱との一体化工法及び杭体と鉄骨柱との一体化構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20240322BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E02D27/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147508
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】504198474
【氏名又は名称】加藤 三晴
(74)【代理人】
【識別番号】100073287
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 聞一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 三晴
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA17
2D046CA03
(57)【要約】
【課題】基礎構築工程が長期化し且つ高額となる。
【解決手段】地盤Gに孔Hを掘削する工程と、この掘削孔Hに杭体1を挿設し地盤Gに埋設する工程と、複数本のアンカーボルト3、3a…が上端部を突出させて設置された独立基礎2を前記杭体1の上端に構築する工程と、鉄骨柱4のベースプレート5に形成されたボルト挿通孔6、6a…に前記アンカーボルト3、3a…の突出端を貫通させナット7、7a…を螺嵌締結して、独立基礎2の上面に鉄骨柱4を立設する工程とを有する杭体1と鉄骨柱4との一体化工法であって、独立基礎2の構築工程における配筋作業において、杭体1の上端部に設けられた複数本の杭頭補強筋8、8a…と、アンカーボルト3、3a…の下端部との重合部位に複数本のフープ筋9、9a…を配筋することで、地中梁が不要となって、基礎躯体自体を大幅に削減し、且つ基礎構築時の残土量の大幅に削減し、而も工期短縮を図ることで総工事費の削減を可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に孔を掘削する工程と、この掘削孔に杭体を挿設し地盤に埋設する工程と、複数本のアンカーボルトが上端部を突出させて設置された独立基礎を前記杭体の上端に構築する工程と、鉄骨柱のベースプレートに形成されたボルト挿通孔に前記アンカーボルトの突出端を貫通させナットを螺嵌締結して、独立基礎の上面に鉄骨柱を立設する工程とを有する杭体と鉄骨柱との一体化工法であって、
独立基礎の構築工程における配筋作業において、杭体の上端部に設けられた複数本の杭頭補強筋と、前記アンカーボルトの下端部との重合部位に複数本のフープ筋を配筋する様にしたことを特徴とする杭体と鉄骨柱との一体化工法。
【請求項2】
地盤に埋設された杭体の上端に独立基礎を構築し、該独立基礎に埋設されたアンカーボルトの突出端を鉄骨柱下端のベースプレートのボルト挿通孔に貫通させナットを螺嵌締結して独立基礎上面に鉄骨柱を立設し、杭体の上端部に設けられた複数本の杭頭補強筋と、前記アンカーボルトの下端部との重合部位に複数本のフープ筋を配筋したことを特徴とする杭体と鉄骨柱との一体化構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立基礎を支える杭体と、独立基礎に立設する鉄骨柱とを一体化する工法及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、独立基礎は地盤に埋設した杭の上端に構築され、この独立基礎に上方構造物を構築することとなるが、この工法の場合、隣接する基礎間どうしを連結する地中梁で曲げモーメントを負担するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、上述の杭は、その重量を支えるとともに地震時の水平力にも抵抗しており、この時杭の杭頭も、鉄骨柱の水平移動に追随するので、曲げモーメント及びせん断力が生じる。
【0004】
尚、ここでの上方構造物は、免震装置を介して構築されているが、ここでの独立基礎上に鉄骨柱を立設する場合は、該鉄骨柱のベースプレートにおけるボルト挿通孔に、独立基礎に下端側が埋設されたアンカーボルトの突端部を貫通させナットを螺嵌締結して、独立基礎上面に鉄骨柱を立設するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来技術にあっては、基礎及び地中梁を構築する工事は、掘削、捨てコン、配筋、型枠、コンクリート打設、型枠脱型、埋め戻しと数多くの工程と、それに伴い長い工期及び高額な工事費が必要となるなど、解決せねばならない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記従来技術に基づく、基礎構築工程が長期化し且つ高額となる課題に鑑み、地盤に孔を掘削する工程と、この掘削孔に杭体を挿設し地盤に埋設する工程と、複数本のアンカーボルトが上端部を突出させて設置された独立基礎を前記杭体の上端に構築する工程と、鉄骨柱のベースプレートに形成されたボルト挿通孔に前記アンカーボルトの突出端を貫通させナットを螺嵌締結して、独立基礎の上面に鉄骨柱を立設する工程とを有する杭体と鉄骨柱との一体化工法であって、独立基礎の構築工程における配筋作業において、杭体の上端部に設けられた複数本の杭頭補強筋と、前記アンカーボルトの下端部との重合部位に複数本のフープ筋を配筋する様にしたことによって、地中梁を不要とすることで、基礎躯体自体を大幅に削減し、且つ基礎構築時の残土量の大幅に削減し、而も工期短縮を図ることで総工事費の削減を可能にして、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
要するに本発明は、地盤に孔を掘削する工程と、この掘削孔に杭体を挿設し地盤に埋設する工程と、複数本のアンカーボルトが上端部を突出させて設置された独立基礎を前記杭体の上端に構築する工程と、鉄骨柱のベースプレートに形成されたボルト挿通孔に前記アンカーボルトの突出端を貫通させナットを螺嵌締結して、独立基礎の上面に鉄骨柱を立設する工程とを有する杭体と鉄骨柱との一体化工法であって、独立基礎の構築工程における配筋作業において、杭体の上端部に設けられた複数本の杭頭補強筋と、前記アンカーボルトの下端部との重合部位に複数本のフープ筋を配筋する様にしているので、地中梁を不要とすることで、基本的には削孔作業及び独立基礎構築のための最小限の土壌だけを取り除くに止めることが出来ることから、独立基礎構築時の残土も少なくすることが出来るため、廃棄処分量が少なくなって環境に及ぼす影響を軽減出来、而も基礎の配筋作業に少し手間をとられるが、基礎躯体自体が大幅に削減され、全体としての工期を短縮することが出来、よって総工事費の削減を図ることが出来る。
そして、杭体の上端に設けた杭頭補強筋を、鉄骨柱を固定し且つ複数本のフープ筋が配筋されたアンカーボルトで囲われたスペース内に配して独立基礎を構築することで、地中梁の無い独立基礎の柱脚モーメントを杭体だけで対応させることが出来る。
【0009】
アンカーボルトと杭頭補強筋を必要な定着長さ以上重ね合わせ、それらを包含するようにフープ筋が設けられているため、フープ筋内のコンクリートの拘束効果によりアンカーボルトと杭頭補強筋との応力を直接伝達し確実なものにすることが出来、よって従来技術の様な地中梁を省略することが出来、更に独立基礎の基礎底は、前記定着長さに必要なかぶり厚を加えた寸法さえあれば良いことから、浅くすることが可能となることと相俟って、独立基礎コンパクト化を図ることが出来、よって施工手間を軽減することが出来る。
【0010】
更に、従来の独立基礎は、
図5に示す様に、杭aの上端に構築され杭頭補強筋を定着させる基礎盤bと、該基礎盤bの上部に位置して鉄骨柱cのアンカーボルトdを定着させる柱型eとを有しているのが一般的で、柱型eの配筋が基礎盤bに定着されており、柱型eの上部に鉄骨柱cが立設されることから、コンクリート、型枠、配筋の量が多くなる傾向にあり、而も鉄骨柱cの応力はアンカーボルトdにより柱型eに、該柱型eの応力は基礎盤bに、該基礎盤bの応力が杭頭補強筋により杭aに順次伝えられることとなるため、応力の伝達経路が長くて効率が悪くなってしまい、更に独立基礎に対し複数の杭aが配置されることとなれば、鉄骨柱cが杭aの直上に配置されなくなるため、応力の伝達経路が複雑になってしまうが、本願発明によれば、アンカーボルトと1本の杭体における杭頭補強筋との応力が直接伝達されるため、応力の伝達経路が短く伝達効率の向上を図ることが出来、而も独立基礎は直方体状であっても対応可能なため、コンクリート、型枠、配筋の量の低減化を図ることが出来る。
又、
図5に示されてはいないが、杭aの上端部が基礎盤bに食い込んだ状態で独立基礎を構築することで、杭aと基礎盤bとの一体性を向上させることも一般的に成されることであるが、本願発明によれば、杭体と一体化された該杭体の一部となる杭頭補強筋と、独立基礎側の配筋及びアンカーボルトが現場打ちコンクリートで一体化されるため、杭体と独立基礎の更なる一体化を図ることが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る杭体と鉄骨柱との一体化構造を示す断面図である。
【
図2】
図1の杭体と鉄骨柱との一体化構造の一部断面平面図である。
【
図3(b)】掘削孔への杭体の挿入工程を示す断面図である。
【
図3(c)】独立基礎の構築後の状態を示す断面図である。
【
図3(d)】独立基礎に鉄骨柱を立設した状態を示す断面図である。
【
図4(a)】フープ筋が多角形となるアンカーボルトと杭頭補強筋の重合部位の断面図である。
【
図4(b)】フープ筋が円形となるアンカーボルトと杭頭補強筋の重合部位の断面図である。
【
図5】従来の独立基礎に鉄骨柱を立設した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る杭体と鉄骨柱との一体化構造にあっては、基本的に、地盤Gに削孔した孔H内に挿設し地盤Gに埋設した杭体1と、該杭体1の上端に構築した独立基礎2と、該独立基礎2に下端部が埋設された複数本のアンカーボルト3、3a…の独立基礎2上面からの突出端を鉄骨柱4の下端のベースプレート5のボルト挿通孔6、6a…に貫通させナット7、7a…を螺嵌締結して独立基礎2の上面に鉄骨柱4を立設している。
【0013】
アンカーボルト3、3a…で囲われたスペースに、杭体1の上端部に設けられた複数本の杭頭補強筋8、8a…の上端部を配し、アンカーボルト3、3a…と杭頭補強筋8、8a…の重合部位の外側に複数本のフープ筋9、9a…が配筋されている。
【実施例0014】
図1は、本発明に係る杭体と鉄骨柱との一体化構造を示す断面図、
図2は、
図1の杭体と鉄骨柱との一体化構造の一部断面平面図であり、杭体1は、鉄筋コンクリート製の既製杭で、上端に複数本の杭頭補強筋8、8a…が所定間隔毎に周設されている。
【0015】
独立基礎2は直方体状に形成され、上下面は杭体1及び鉄骨柱4の断面積より広く、4本のアンカーボルト3、3a、3b、3cの上端部が独立基礎2の上面より突出しており、独立基礎2に埋設されたアンカーボルト3、3a、3b、3cの下端部で囲われたスペース内に杭頭補強筋8、8a…の上端部を配し、且つアンカーボルト3、3a、3b、3cの下端部に複数本のフープ筋9、9a…を上下方向に所定間隔毎に配筋している。
【0016】
つまり、杭体1の杭頭補強筋8、8a…と、鉄骨柱4を独立基礎2に固定するアンカーボルト3、3a、3b、3cの下端部との重合部位を、該アンカーボルト3、3a、3b、3cに配筋されたフープ筋9、9a…で囲い、独立基礎2を構成するコンクリートにより相互の一体性を高めることで、杭体1と鉄骨柱4の一体性が向上する。
【0017】
次に、本発明の上方構造物と杭体との一体化工法を、
図3(a)~
図3(d)に基づき説明する。
(1)地盤Gを掘りながら、所定の深さの孔Hを掘削しセメントミルクMを充填する(
図3(a)参照)。
(2)孔Hに杭体1を挿入する(
図3(b)参照)。
(3)独立基礎2の型枠(図示せず)を組み、鉄骨柱4を固定する4本のアンカーボルト3、3a、3b、3cを、独立基礎2の上面より上端部を突出させる様に設置し、杭体1の上端部に設けられた複数本の杭頭補強筋8、8a…と、アンカーボルト3、3a、3b、3cの下端部との重合部位に複数本のフープ筋9、9a…を、上下方向に等間隔に固定する作業を含む配筋作業を行った後、型枠内にコンクリートを打設し、養生硬化後に型枠を撤去して、独立基礎2を構築する(
図3(c)参照)。
(4)独立基礎2の上面に柱底均しモルタル(無収縮モルタル)層10を介して鉄骨柱4を立設し、該鉄骨柱4のベースプレート5に形成されたボルト挿通孔6、6a、6b、6cにアンカーボルト3、3a、3b、3cの突出端を貫通させナット7、7a、7b、7cを螺嵌締結して、独立基礎2のに鉄骨柱4を立設する(
図3(d)参照)。
【0018】
尚、上記実施例1にあっては、アンカーボルト3、3a…の本数を4本としているが、例えば8本、12本とするなど、4本に限定されない。
【0019】
又、上記実施例1にあっては、杭体1を鉄筋コンクリート製の既製杭としているが、例えば鋼管製の既製杭とするなど、鉄筋コンクリート製の既製杭に限定されない。
又、杭体1は既製杭でなくても良く、例えば現場打ちコンクリート製のものであったり、原地盤Gを削孔しながら孔内の土壌と孔内に投入したセメントミルク等の地盤固化材を撹拌混合し、所定長さ掘削した後に必要に応じて鉄筋を配筋し、地盤固化材の固化により形成することで地盤Gに埋設された地盤改良杭であっても良い。
【0020】
又、上記実施例1のフープ筋9、9a…の形状は四角形状であるが、鉄骨柱4のサイズと杭体1の径の関係で、アンカーボルト3、3a…と杭頭補強筋8、8a…の夫々の包絡線の内、外の関係は決まっていないので、フープ筋9、9a…の形も、アンカーボルト3、3a…の包絡線の方が大きければ、
図2に示す様な矩形、その逆であれば、
図4(b)に示す様な円形、同じような大きさであれば、
図4(a)に示す様な多角形とするなどして対応することとしている。
【0021】
又、フープ筋9、9a…を配筋するため、或いはアンカーボルト3、3a…及び杭頭補強筋8、8a…の間隔が大きいことから、その間隔を狭くしてフープ筋9、9a…内のコンクリートの拘束効果を高めるべく、アンカーボルト3、3a…及び杭頭補強筋8、8a…と平行とした軸方向筋(図示せず)を設けることもある。